(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】装柱バンド
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20240927BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20240927BHJP
G09F 7/18 20060101ALI20240927BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02G7/00
F16B2/08 F
F16B2/08 M
G09F7/18 T
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2020193723
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】神野 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 育久
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】実公昭39-029628(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
F16B 2/08
G09F 7/18
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状構造物に巻き付けるバンド部材と、
前記バンド部材に取り付けられる引張構造であって、前記柱状構造物側に進出することで前記バンド部材を前記柱状構造物の径外方向に向けて突っ張る突張状態と、前記柱状構造物から離間する方向に退避することで前記バンド部材への突っ張りを解除した突張解除状態とに切替可能な突張部を有する引張構造と、を備
え、
前記引張構造は、
前記バンド部材が取り付けられるベースであって、前記柱状構造物の径方向と同方向で貫通するネジ穴が形成されたベースと、
前記ネジ穴に螺合する軸部を含む雄ねじ部材と、を有し、
前記雄ねじ部材は、前記突張部を構成するとともに、前記ネジ穴への締め込み操作によって前記突張状態となり、前記ネジ穴への締め込みを緩める操作によって前記突張解除状態となるように構成される、
装柱バンド。
【請求項2】
前記引張構造は、
前記バンド部材が取り付けられるベースと、
前記ベースに回転可能に取り付けられるカム部材と、を有し、
前記カム部材の外周面には、前記カム部材の回転周方向において一端側から他端側に向かうにつれて前記カム部材の回転中心との距離が徐々に大きくなるカム面が含まれ、
前記カム部材は、前記突張部を構成するとともに、
前記カム部材の前記回転周方向における一方側への回転によって前記突張状態となり、前記カム部材の前記回転周方向における他方側への回転によって前記突張解除状態となるように構成されている、
請求項1に記載の装柱バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の柱状構造物に装柱物を取り付けるための装柱バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の装柱バンドは、柱状構造物に巻き付けた状態で固定することによって、装柱物を取り付けるためのベースとして用いるものであり、例えば、特許文献1の
図3に図示されているような、電柱を介在させた状態で対面配置される一対の円弧部(電柱を中心とする円周の1/2周分の円弧部)と、一対の円弧部の両端部同士を締結するネジとナットとを備えた装柱バンドが知られている。
【0003】
かかる装柱バンドを用いて装柱物であるクロージャ取付金物を電柱に取り付けるには、電柱の一方側と他方側とに円弧部を一つずつ配置し、且つ装柱物であるクロージャ取付金物を各円弧部の一方の端部の間に配置した状態で、各円弧部の端部とクロージャ取付金物とに挿通したネジをナットに螺合させている。
【0004】
そして、ネジがナットに締め込まれるに伴い、一対の円弧部が協働して電柱を締め付けつつクロージャ取付金物を挟持し、これにより、電柱にクロージャ取付金物が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の装柱バンドは、一対の円弧部の端部同士をネジとナットで締結する構造となっているが、一対の円弧部の端部の位置を合わせた後に手に持っているネジとナットを螺合させる作業が困難であることが、装柱作業を複雑なものにしているという問題が起きている。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、装柱作業の簡素化を図ることができる装柱バンドの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の装柱バンドは、
柱状構造物に巻き付けるバンド部材と、
前記バンド部材に取り付けられる引張構造であって、前記柱状構造物側に進出することで前記バンド部材を前記柱状構造物の径外方向に向けて突っ張る突張状態と、前記柱状構造物から離間する方向に退避することで前記バンド部材への突っ張りを解除した突張解除状態とに切替可能な突張部を有する引張構造と、を備える。
【0009】
上記構成の装柱バンドによれば、バンド部材に取り付けられる引張構造の突張部を突張解除状態から突張状態に切り替えると、バンド部材が柱状構造物から離れる方向(柱状構造物の径外方向)に引っ張られた状態が維持され、これにより、バンド部材が柱状構造物に対して固定される。
【0010】
このように、上記構成の装柱バンドでは、バンド部材を柱状構造物に設置する際、従来の装柱バンドのようなボルトとナットを手に持って互いに螺合させる作業ではなく、突張部を柱状構造物側に進出させる操作によりバンド部材を柱状構造物に固定できるため、装柱バンドの設置作業が簡単になる。
【0011】
本発明の装柱バンドにおいて、
前記引張構造は、
前記バンド部材が取り付けられるベースと、
前記ベースに回転可能に取り付けられるカム部材と、を有し、
前記カム部材の外周面には、前記カム部材の回転周方向において一端側から他端側に向かうにつれて前記カム部材の回転中心との距離が徐々に大きくなるカム面が含まれ、
前記カム部材は、前記突張部を構成するとともに、前記カム部材の前記回転周方向における一方側への回転によって前記突張状態となり、前記カム部材の前記回転周方向における他方側への回転によって前記突張解除状態となるように構成されていてもよい。
【0012】
上記構成の装柱バンドによれば、突張部を構成するカム部材を回転させることによって突張解除状態から突張状態に切り替えることができるため、簡単な操作でバンド部材を柱状構造物に固定することができるようになる。
【0013】
本発明の装柱バンドにおいて、
前記引張構造は、
前記バンド部材が取り付けられるベースであって、前記柱状構造物の径方向と同方向で貫通するネジ穴が形成されたベースと、
前記ネジ穴に螺合する軸部を含む雄ねじ部材と、を有し、
前記雄ねじ部材は、前記突張部を構成するとともに、前記ネジ穴への締め込み操作によって前記突張状態となり、前記ネジ穴への締め込みを緩める操作によって前記突張解除状態となるように構成されていてもよい。
【0014】
上記構成の装柱バンドによれば、突張部を構成する雄ねじ部材をネジ穴に締める操作によって突張解除状態から突張状態に切り替えることができるため、簡単な操作でバンド部材を柱状構造物に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の装柱バンドは、バンド部材を柱状構造物に固定する作業を簡単に行えるようにすることで、装柱作業の簡素化を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る装柱バンドの斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る装柱バンドの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る装柱バンドの部分断面を側方から見た図である。
【
図4】
図4において、(a)はカム部材が突張解除状態に切り替えられている状態の説明図であり、(b)はカム部材が突張状態に切り替えられた状態の説明図であり、(c)はカム部材が突張状態に切り替えられた後に回り止めされた状態の説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二実施形態に係る装柱バンドの斜視図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る装柱バンドの分解斜視図である。
【
図7】
図7において、(a)は雄ねじ部材が突張解除状態に切り替えられている状態の説明図であり、(b)は雄ねじ部材が突張状態に切り替えられた状態の説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係る装柱バンドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一実施形態にかかる装柱バンドについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
装柱バンドは、装柱に使用する器具である。なお、本実施形態における装柱とは、電柱等の柱状構造物に装柱物を取り付ける行為を指し、装柱物には、配電用の資材や設備の他、通信機器、標識等の物品の他、電柱のカバーや、鉢、プランター等の柱状構造物を装飾するような物品も含まれる。
【0019】
本実施形態の装柱バンド1は、
図1に示すように、柱状構造物Pに巻付可能であるバンド部材2と、バンド部材2に取り付けられる引張構造3と、を備えている。
【0020】
なお、以下の説明において、柱状構造物Pの軸線が延びる方向を軸線方向、該軸線方向を中心とする周方向は周方向、前記軸線方向と前記周方向とに直交する方向(すなわち、柱状構造物Pの径方向に対応する方向)は径方向と称する。また、径方向において外側に向かう方向を径外方向、径方向において内側に向かう方向を径内方向と称する。
【0021】
バンド部材2は、前記周方向に沿って湾曲した形状となるように構成され、且つ引張構造3により互いに連結された状態と、引張構造3による連結が解除された状態とに切替可能な一対の端部2Sを有する。
【0022】
本実施形態のバンド部材2は、
図2に示すように、前記周方向において分割可能となるように構成されている。より具体的に説明すると、バンド部材2は、前記周方向に並べて配置される複数の分割体20を有する。なお、本実施形態のバンド部材2は、2つの分割体20で構成されているが、分割体20の数は2つ以上であってもよい。
【0023】
分割体20は、前記周方向に沿って円弧状に湾曲している。本実施形態の分割体20は、他の分割体20に連結される端部となる連結端部200と、引張構造3に取り付けられる被取付端部201と、を有している。
【0024】
各分割体20は、互いの連結端部200が直接的又は間接的に連結可能となるように構成されるが、本実施形態では互いの連結端部200が直接的に連結可能となるように構成されている。
【0025】
より具体的に説明すると、一方の分割体20の連結端部200には、連結端部200の厚み方向で貫通する連結孔2000が形成されている。なお、一方の分割体20の連結端部200には、複数の連結孔2000が前記周方向で間隔を空けて並べて形成されている。
【0026】
他方の分割体20の連結端部200には、前記連結孔2000に引掛可能な連結用引掛部2001が形成されている。
【0027】
各分割体20の被取付端部201は、フック状、より具体的には、前記径内方向に屈曲した形状に形成されており、引張構造3の後述するベース本体部300に掛止可能となっている。そのため、本実施形態では、分割体20の被取付端部201がバンド部材2の端部2Sを構成している。
【0028】
なお、本実施形態の装柱バンド1は、2つの分割体20を一組にしたバンド部材2を二つ備えているが、バンド部材2を一つだけ備える構成であってもよい。
【0029】
引張構造3は、バンド部材2が取り付けられるベース30と、ベース30に回転可能に取り付けられるカム部材31と、ベース30の前記径内方向側の一面に設けられている一対の脚部32と、を有する。
【0030】
ベース30は、柱状構造物に当接配置されるベース本体部300と、ベース本体部300の前面(柱状構造物側とは反対側に向けて配置される一面)に形成された一対の取付片301であって、カム部材31が回転可能に連結される一対の取付片301と、一対の取付片301のそれぞれとカム部材31とに挿通される回転軸302と、を有する。なお、ベース本体部300は、装柱物を取り付けるための装柱物被取付部でもある。
【0031】
ベース本体部300の前記径方向における両端部には、分割体20の被取付端部201を掛止するための掛止孔300aが形成され、ベース本体部300の前記径方向における中央部には、カム部材31を配置するための配置用開口300bが形成されている。
【0032】
配置用開口300bは、カム部材31の外形よりも大きくなるように形成されている。すなわち、配置用開口300bを画定する開口周縁部300cは、カム部材31に干渉しないように形成されている。
【0033】
一対の取付片301は、それぞれ前記径方向における配置用開口300bの一方側と他方側とに形成され、且つ互いに対向している。各々の取付片301には、回転軸302を同時に挿通可能な軸孔301aが貫通形成されている。
【0034】
回転軸302は、前記軸線方向に対して直交する一方向であり、一対の取付片301が並ぶ方向に対応する方向に沿って延びた姿勢で一対の取付片301のそれぞれとカム部材31とに挿通されている。
【0035】
カム部材31は、
図3に示すように、回転操作を可能とするための回転操作構造310と、回転操作構造310による回転動作によって、柱状構造物Pに向かって(前記径内方向に向かって)進出し且つ柱状構造物Pの外周面に圧接した状態と、柱状構造物Pから離間する方向に向かって(前記径外方向に向かって)退避し且つ柱状構造物Pの外周面に対して非接触の状態とに切替可能なカム面311と、回転操作構造310による前記回転動作を規制することによりカム面311の前記突張状態を維持するための回止部312と、を有する。なお、
図3は、ベース30のみを断面で表した部分断面図である。
【0036】
回転操作構造310は、ハンドルH(
図4(b)参照)を連結可能なハンドル連結部3100と、回転軸302を挿通する挿通孔3101と、を有する。
【0037】
ハンドル連結部3100には、ハンドルHを抜差可能な抜差凹部3100aが形成されている。
【0038】
挿通孔3101は、回転軸302を挿通可能な貫通孔である。回転軸302は、カム部材31を一対の取付片301の間に配置し、挿通孔3101の位置を一対の軸孔301aの位置に合わせた状態で、一対の軸孔301a及び挿通孔3101に挿通される。これにより,カム部材31は、一対の取付片301に対して回転軸302まわりに回転可能に支持される。
【0039】
そのため、引張構造3が装柱構造物Pに設置されると、回転軸302(軸孔301a及び挿通孔3101に対する回転軸302の挿通方向)が前記軸線方向に対して直交する一方向であり、一対の取付片301が並ぶ方向に対応する方向に向いた状態で、ベース30とカム部材31とが柱状構造物Pに固定される。
【0040】
また、挿通孔3101は、回転軸302の挿通方向から見ると長孔であり、カム面311が柱状構造物Pの外周面に圧接している状態においては、長手方向が前記軸線方向に一致するように形成されている。
【0041】
そのため、本実施形態のカム部材31は、回転軸302が挿通孔3101の長手方向における一端3101aに配置されている状態と、他端3101bに配置されている状態とを切替可能となっているが、回転軸302が挿通孔3101の長手方向における一端3101aに配置されている状態においてのみ、カム部材31の回転動作が許容されるように構成されている。
【0042】
カム面311は、カム部材31の外周面の一部により構成されている。本実施形態のカム面311は、カム部材31の通孔3101の一端3101aを起点として外側に向かって膨らむように湾曲している。
【0043】
カム面311は、湾曲周方向における一端から他端に向かうにつれて、挿通孔3101の一端からの距離が徐々に大きくなるように形成されている。そのため、カム面311では、前記一端が挿通孔3101の一端に最も近い位置に配置された近位端311aとなり、前記他端が挿通孔3101の一端から最も離れた位置に配置された遠位端311bとなっている。
【0044】
本実施形態のカム部材31は、カム面311が前記径方向において柱状構造物Pと対向するようにして一対の取付片301に取り付けられている。
【0045】
また、カム部材31は、回転軸302が挿通孔3101の一端3101aに配置されている状態においては、該回転軸302を中心とする一方側(
図3において時計まわりの方向であり、以下、順回転方向と称する)と、他方側(
図3において反時計まわりの方向であり、以下、逆回転方向と称する)とに回転可能となる。
【0046】
そして、カム部材31が前記順回転方向に回転すると、カム面311のうち柱状構造物Pに対向する部分が近位端311a側から遠位端311b側に変わり、カム部材31が前記逆回転方向に回転すると、カム面311のうち柱状構造物Pに対向する部分が遠位端311b側から近位端311a側に変わる。
【0047】
また、カム面311の遠位端311bは、柱状構造物Pに対向した状態で柱状構造物Pに圧接し(
図4(b)参照)、カム面311の近位端311aは、柱状構造物Pに対向した状態で柱状構造物Pから前記径外方向に離れるように構成されている(
図4(a)参照)。
【0048】
そのため、本実施形態では、ベース本体部300から柱状構造物P側に進出することでバンド部材2を前記径外方向に向けて突っ張る突張状態と、柱状構造物Pから離間する方向に退避することで前記バンド部材2への突っ張りを解除した突張解除状態とに切替可能な突張部がカム部材31によって構成されている。
【0049】
回止部312は、カム面311に連続する平面により構成されている。また、回止部312は、挿通孔3101の長手方向においても、挿通孔3101が貫通する方向においても、挿通孔3101に対して平行となるように形成されている。なお、挿通孔3101は、回止部312が柱状構造物Pに当接している状態においては、長手方向が前記軸線方向に一致するように形成されている
【0050】
回止部312は、カム面311の遠位端311bに連続しており、カム面311の遠位端311bとともに、柱状構造物Pに当接するように形成されている。
【0051】
ここで、カム部材31の回転中心(回転軸302)の位置と、カム面311、回止部312との位置関係について説明する。
【0052】
図4(b)に示すように、カム面311の遠位端311bと回止部312とが柱状構造物Pに当接し、且つ挿通孔3101の長手方向における一端部が回転軸302の位置に合わせて配置されている状態(すなわち、前記回転中心が挿通孔3101の一端3101aに配置された状態の回転軸302の位置に設定されている状態)である場合、前記回転中心からカム面311の遠位端311bまでの直線距離L1は、前記径方向における前記回転中心から柱状構造物Pまでの距離(以下、基準距離と称する)L0と同等になる。
【0053】
また、前記回転中心から回止部312の先端Tまでの直線距離L2は、前記基準距離L0よりも長くなるため、前記回転方向における一方側へのカム部材31の回転が規制される。
【0054】
図4(c)に示すように、カム面311の遠位端311bと回止部312とが柱状構造物Pに当接し、且つ挿通孔3101の長手方向における他端部が回転軸302の位置に合わせて配置されている状態(すなわち、前記回転中心が挿通孔3101の前記他端部側に設定されている状態)である場合、前記回転中心Cからカム面311の遠位端311bまでの直線距離L1も、前記回転中心から回止部312の先端Tまでの直線距離L2も、前記基準距離L0よりも大きくなるため、前記回転方向における一方側及び他方側へのカム部材31の回転が規制される。
【0055】
一対の脚部32は、
図2に示すように、ベース部30の前記径方向における両端部に設けられている。なお、脚部32の柱状構造物に当接する面は、柱状構造物の外面形状に沿って湾曲していることが好ましい。
【0056】
本実施形態の装柱バンド1の構成は以上の通りである。続いて、本実施形態の装柱バンド1の使用方法を説明する。
【0057】
本実施形態の装柱バンド1を使用して装柱する作業では、バンド部材2を柱状構造物Pに巻き付ける巻付作業と、引張構造3でバンド部材2を前記径外方向に向けて引っ張ることでバンド部材2を柱状構造物Pに固定する固定作業と、装柱バンド1に装柱物を取り付ける取付作業とが行われる。
【0058】
巻付作業では、分割体20同士を連結してバンド部材2を組み立て、このバンド部材2で柱状構造物Pを取り囲む。そして、各分割体20の被取付端部201をベース本体部300の掛止孔300aに掛け止めすると、各分割体20とベース本体部300とで柱状構造物を取り囲んだ状態になり、巻付作業が完了する。
【0059】
続いて、固定作業では、ハンドルHを抜差凹部3100aに挿し込み、ハンドルHを操作してカム部材31を前記順回転方向に回転させる(
図4(a),
図4(b)参照)。このようにすると、カム部材31の前記順回転方向への回転に伴って、カム面311のベース本体部300から前記径内方向への進出量が徐々に増加し、カム面311の近位端311aと遠位端311bの間の途中位置が柱状構造物Pに当接する。
【0060】
この状態でカム部材31を同方向にさらに回転させ続けると、カム面311のベース本体部300から前記径内方向への進出量がさらに増加する。これに伴い、カム部材31の下端側(カム面311側)が柱状構造物Pから離れる方向に動き、回転軸302とともにベース30も柱状構造物Pから離れる方向に動くとともに、ベース本体部300の掛止孔300aに係止されている被取付端部201が前記径外方向に向けて引き操作されるため、バンド部材2が前記径外方向に向けて引っ張られた状態、すなわち、カム部材31が柱状構造物Pに対してバンド部材2を突っ張った突張状態に切り替わる。
【0061】
さらに、カム面311の遠位端311bが柱状構造物Pに当接している状態で、カム部材31を動かすことによって挿通孔3101の他端3101bの位置を回転軸302の位置に合わせると、前記回転中心となる回転軸302からカム面311の遠位端311bまでの直線距離L1と、前記回中心から回止部312の先端Tまでの直線距離L2とが前記基準距離L0よりも大きくなるため、前記順回転方向及び前記逆回転方向へのカム部材31の回転が規制される。
【0062】
取付作業では、ベース本体部300に装柱物を取り付ける作業が行われ、これにより、装柱作業が完了する。
【0063】
以上のように、本実施形態の装柱バンド1によれば、バンド部材2を柱状構造物Pに設置する際、カム部材31を回転させる操作により、突張部を構成しているカム部材31を突張解除状態から突張状態に切り替えてバンド部材2を柱状構造物Pに固定できるため、従来の装柱バンドのようなボルトとナットを手に持って互いに螺合させる作業を行わずにバンド部材2を柱状構造物Pに固定する作業を行うことができる。
【0064】
従って、本実施形態の装柱バンド1は、バンド部材2を柱状構造物Pに固定する作業を簡単に行えるようにすることで、装柱作業の簡素化を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【0065】
また、本実施形態の装柱バンド1では、カム部材31の回転中心の位置を挿通孔3101の一端3101aと他端3101bとに変更できるように構成されており、カム面311の遠位端311bと回止部312とが柱状構造物Pに当接し、且つ挿通孔3101の長手方向における他端部が回転軸302の位置に合わせて配置されている状態にすれば、カム部材31の前記順回転方向への回転だけでなく、前記逆回転方向への回転も規制されるため、カム部材31が突張状態から突張解除状態に不用意に切り替わってしまうことを抑制できる。
【0066】
さらに、本実施形態においては、一方の分割体20の連結端部200には複数の連結孔2000が形成されているため、連結孔2000への連結用引掛部2001の掛け方を変えることにより、バンド部材2のサイズを柱状構造物Pの外径に合わせて調整できるようになっている。
【0067】
続いて、本発明の第二実施形態にかかる装柱バンドについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0068】
本実施形態の装柱バンドも、装柱に使用する器具であり、装柱とは、電柱等の柱状構造物に装柱物を取り付ける行為を指し、装柱物には、配電用の資材や設備の他、通信機器、標識等の物品の他、電柱のカバーや、鉢、プランター等の柱状構造物を装飾するような物品も含まれる。
【0069】
本実施形態の装柱バンドは、
図5に示すように、柱状構造物Pに巻付可能であるバンド部材2と、バンド部材2に取り付けられる引張構造3と、柱状構造物Pに当接させた状態で、柱状構造物Pと引張構造3との間に配置される基台部4と、基台部4に対して接離する方向での動きをガイドするガイド構造5と、を備えている。
【0070】
なお、以下の説明においても、柱状構造物Pの軸線が延びる方向を軸線方向、該軸線方向を中心とする周方向は周方向、前記軸線方向と前記周方向とに直交する方向(すなわち、柱状構造物Pの径方向に対応する方向)は径方向と称する。また、径方向において外側に向かう方向を径外方向、径方向において内側に向かう方向を径内方向と称する。
【0071】
バンド部材2は、前記周方向に沿って湾曲した形状となるように構成され、且つ引張構造3により互いに連結された状態と、引張構造3による連結が解除された状態とに切替可能な一対の端部2Sを有する。
【0072】
本実施形態のバンド部材2は、
図6に示すように、前記周方向において分割可能となるように構成されている。より具体的に説明すると、バンド部材2は、前記周方向に並べて配置される複数の分割体20を有する。なお、本実施形態のバンド部材2は、2つの分割体20で構成されているが、分割体20の数は2つ以上であってもよい。
【0073】
分割体20は、前記周方向に沿って円弧状に湾曲している。本実施形態の分割体20は、他の分割体20に連結される端部となる連結端部200と、引張構造3に取り付けられる被取付端部201と、を有している。
【0074】
各分割体200は、互いの連結端部200が直接的又は間接的に連結可能となるように構成されるが、本実施形態では互いの連結端部200が直接的に連結可能となるように構成されている。
【0075】
より具体的に説明すると、一方の分割体20の連結端部200には、連結端部200の厚み方向で貫通する連結孔2000が形成されている。なお、一方の分割体20の連結端部200には、複数の連結孔2000が前記周方向で間隔を空けて並べて形成されている。
【0076】
他方の分割体20の連結端部200には、前記連結孔2000に引掛可能な連結用引掛部2001が形成されている。
【0077】
各分割体20の被取付端部201は、フック状、より具体的には、前記径内方向に屈曲した形状に形成されており、引張構造3の後述するベース本体部300に掛止可能となっている。そのため、本実施形態では、分割体20の被取付端部201がバンド部材2の端部2Sを構成している。
【0078】
引張構造3は、バンド部材2が取り付けられるベース30と、ベース30に貫通形成されたネジ穴300に螺合する軸部310を含む雄ねじ部材31と、を有する。なお、ベース30は、装柱物を取り付けるための構成でもある。
【0079】
ネジ穴300は、ベース30の中央部に形成されている。装柱バンド1は、ネジ穴300を前記径方向へ向けた状態で柱状構造物Pに固定される。そして、ベース30の前記径方向における両端部には、分割体20の被取付端部201を掛止するための掛止孔301が形成されている。
【0080】
雄ねじ部材31は、前記軸部310と、該軸部310の長手方向における一端(基端)に設けられ、且つ軸部310よりも外径が大きい頭部311とを有する。
【0081】
また、雄ねじ部材31は、頭部311がベース30よりも前記径外方向に配置された状態で軸部310がネジ穴300に螺合されている。
【0082】
基台部4は、平板状であり、且つベース30に対して平行に配置される基板部40と、基板部40の前記径内方向に向けて配置される一面に設けられている一対の脚部41と、を有する。
【0083】
一対の脚部41は、基板部40の前記周方向における両端部に設けられている。なお、脚部41の柱状構造物に当接する面は、柱状構造物の外面形状に沿って湾曲していることが好ましい。
【0084】
ガイド構造5は、ベース30の前記径内方向側の一面から延出する複数のガイドバー50と、基台部4に形成され且つガイドバー50がスライド可能な状態で挿し込まれる複数のガイド孔51と、を有する。
【0085】
複数のガイドバー50のそれぞれは、ベース30の四隅に設けられている。また、複数のガイド孔51のそれぞれは、基板部40の四隅に形成されている。なお、基板部40に形成されているガイド孔51は、脚部41に至るように形成されていてもよいし、ベース3の動き代が十分に確保できる場合は基板部40のみに形成されていてもよい。
【0086】
本実施形態では、ベース30から柱状構造物側に進出し、ベース30を基台部4に対して前記径外方向へ移動させることでバンド部材2を柱状構造物Pの前記径外方向に向けて突っ張る突張状態と、柱状構造物Pから離間する方向に退避し,ベース30を基台部4に対して前記径内方向へ移動させることで前記バンド部材2への突っ張りを解除した突張解除状態とに切替可能な突張部が雄ねじ部材31によって構成されている。
【0087】
本実施形態の装柱バンド1の構成は以上の通りである。続いて、本実施形態の装柱バンド1の使用方法を説明する。
【0088】
本実施形態の装柱バンド1を使用して装柱する作業では、バンド部材2を柱状構造物に巻き付ける巻付作業と、引張構造3でバンド部材2を前記径外方向に向けて引っ張ることでバンド部材2を柱状構造物に固定する固定作業と、装柱バンド1に装柱物を取り付ける取付作業とが行われる。
【0089】
巻付作業では、分割体20同士を連結してバンド部材2を組み立て、このバンド部材2で柱状構造物を取り囲む。そして、各分割体20の被取付端部201をベース30の掛止孔301に掛け止めすると、各分割体20とベース30とで柱状構造物を取り囲んだ状態になり、巻付作業が完了する。
【0090】
続いて、固定作業では、雄ねじ部材31をネジ穴300に締め込む操作を行う。雄ねじ部材31の軸部310の先端が基板部40に突き当てられた状態で、雄ねじ部材31をネジ穴300に締め込む操作を行い、雄ねじ部材31のベース30から前記径内方向への進出量を増加させると、雄ねじ部材31に対してベース30が前記径外方向に移動する。
【0091】
ベース30が前記径外方向に移動すると、ベース30とともに分割体20の被取付端部201が前記径外方向に向けて引っ張られた状態になり、雄ねじ部材31が柱状構造物Pに対してバンド部材2を突っ張った状態になる(
図7(a)、
図7(b)参照)。また、雄ねじ部材31は、回転しなければ軸部310の軸線が延びる方向においては動かないようになっているため、バンド部材2を突っ張った状態が維持される。
【0092】
そして、取付作業では、ベース30に装柱物を取り付ける作業が行われることにより、装柱作業が完了する。
【0093】
以上のように、本実施形態の装柱バンド1によれば、突張部を構成する雄ねじ部材31をネジ穴300に締める操作によって、該雄ねじ部材31を突張解除状態から突張状態に切り替えることができるため、ネジ穴300に螺合されている雄ねじ部材31を締めるという簡単な操作でバンド部材2を柱状構造物Pに固定することができる。
【0094】
従って、本実施形態の装柱バンド1は、バンド部材2を柱状構造物Pに固定する作業を簡単に行えるようにすることで、装柱作業の簡素化を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【0095】
また、本実施形態の装柱バンド1では、雄ねじ部材31の軸部310がネジ穴300に螺合するように構成されているため、雄ねじ部材31を締め込み操作することで軸部310のベース30から前記径内方向への進出量を増加させることができ、雄ねじ部材31を緩めることで軸部310のベース30から前記径内方向への進出量を減少させることができる。すなわち、雄ねじ部材31の進出量を無段階で調整することができるため、バンド部材2に与える引張力の強さを調整し易くなる。
【0096】
さらに、本実施形態の装柱バンド1では、湾曲した柱状構造物Pの外面ではなく、基台部4の平らな面に雄ねじ部材31の軸部310を突き当てるように構成されているため、雄ねじ部材31の姿勢が安定し易くなり、雄ねじ部材31の突張状態も維持され易くなる。
【0097】
そして、本実施形態においても、一方の分割体20の連結端部200には複数の連結孔2000が形成されているため、連結孔2000への連結用引掛部2001の掛け方を変えることにより、バンド部材2のサイズを柱状構造物Pの外径に合わせて調整できるようになっている。
【0098】
なお、本発明に係る装柱バンドは、上記第一実施形態、及び第二実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0099】
上記第一実施形態において、バンド部材2は、複数の分割体20を備えるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、バンド部材2は、単一の部材により構成されたものであってもよい。また、上記第二実施形態のバンド部材2も同様に、単一の部材により構成されたものであってもよい。
【0100】
上記第一実施形態では、装柱バンド1の使用方法において、固定作業の後に取付作業が行われると説明したが、この構成に限定されない。例えば、ベース本体部300に予め装柱物が取り付けられている場合は、固定作業が完了するとともに、取付作業も完了する。
【0101】
また、上記第二実施形態においても、ベース3に予め装柱物が取り付けられている場合は、固定作業が完了するとともに、取付作業も完了する。
【0102】
上記第一実施形態において、カム部材31は、回止部312とカム面311の遠位端311bとに亘る領域全体が平面となるように形成されていたが、この構成に限定されない。カム部材31は、例えば、
図8に示すように、カム面311の遠位端311b側が回止部312によりも外側に膨出するように形成されていてもよい。
【0103】
なお、上記実施形態のカム部材31は、挿込孔3101の長手方向において、挿込孔3101の延びる方向と平面で構成される回止部312とが平行となるように構成されていたが、
図8のカム部材31の挿込孔3101は、一端3101aから他端3101bに向かうにつれて回止部312から徐々に離れるように形成されている。すなわち、挿込孔3101は、回止部312に対しては傾斜するように形成されている。
【0104】
図8のカム部材31は、前記順回転方向に回転して柱状構造物Pに対向する部分が近位端311a側から遠位端311b側に変わる際、カム面311は遠位端311bよりも手前側(近位端311a側)の位置(接触開始位置311cと称する)で柱状構造物Pに接触する。
【0105】
また、カム面311は近位端311a側から遠位端311b側になるにつれて回転中心からの距離が大きくなるように形成されているため、カム部材31は、接触開始位置311cで柱状構造物Pに接触している状態からさらに前記順回転方向に回転すると、柱状構造物Pから受ける反力が高まり、時計回りの方向(
図8における時計回りの方向)に付勢された状態になる。これにより、カム部材31の反時計回りの方向(
図8における反時計回りの方向)への回転が防止され、装柱バンド1の固定状態が解除されてしまうことが防止される。
【0106】
なお、カム部材31を突張状態にすると、際に先端Tが柱状構造物Pに当接するため、カム部材31の前記順回転方向への回転が規制された状態にもなる。また、カム部材31が、先端Tが基端よりも柱状構造物Pに近付くように傾いた姿勢となるため、挿通孔3101の一端3101aに回転軸302を配置している状態から挿通孔3101の他端3101bに回転軸302を配置している状態に切り替える前にカム部材31が不用意に前記逆回転方向に回転してしまうことも抑えられる。
【符号の説明】
【0107】
1…装柱バンド、2…バンド部材、3…引張構造、4…基台部、5…ガイド構造、S…柱状構造物