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7561326ナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法およびその管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法およびその管理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240927BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20240927BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240927BHJP
   G09B 29/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
G09B29/10 A
G09B29/00 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021018928
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121930
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雅
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】古川 優史
(72)【発明者】
【氏名】丸子 敬生
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181449(JP,A)
【文献】特開2014-174032(JP,A)
【文献】特開2007-205764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/0969
G09B 29/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の走行経路についてそれぞれ、車両のユーザにとって好ましい体験となるポジティブな体験が期待できると共に好ましい度合いが大きいほど大きな値とされる期待値と、走行に伴うリスクの度合いが大きいほど大きな値とされたリスク値と、を記憶したデータベースを有し、
車両のユーザが希望する出発地点から目的地に向かうための複数の走行経路のそれぞれについて、前記データベースに照合して、前記期待値の総計と前記リスク値の総計とを得る第1ステップと、
前記期待値の総計が前記リスク値の総計よりも大きくなる範囲で、該リスク値の総計がもっとも大きくなる走行経路をユーザに提示する第2ステップと、
を備えていることを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記データベースには、走行経路が多数の区間に区分けされて、各区間について前記期待値および前記リスク値が記憶されており、
前記第1ステップでは、前記複数の走行経路についてそれぞれ、前記データベースに照合して、前記区間毎の前記期待値を合計することにより該期待値の総計を得ると共に、前記区間毎の前記リスク値を合計することにより該リスク値の総計を得る、
ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記データベースに記憶されている前記期待値が、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの楽しさの度合いを示す感情状態に基づいて更新され、
前記データベースに記憶されている前記リスク値が、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの緊張度合いを示す心理状態に基づいて更新される、
ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項4】
請求項3において、
ユーザの前記感情状態に基づいて仮の期待値を設定して、直近から所定回数分の仮の期待値に基づいて前記データベースに記憶されている前記期待値の更新が実行され、
ユーザの前記心理状態に基づいて仮のリスク値を設定して、直近から所定回数分の仮のリスク値に基づいて前記データベースに記憶されている前記リスク値の更新が実行される、
ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記期待値として、日常的に走行される日常モードでの期待値と非日常的に走行されるハッピーモードでの期待値との2種類が設定されて、ポジティブな体験の内容が同じであればハッピーモードでの期待値の方が日常モードでの期待値よりも大きくなるように設定されている、ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記リスク値として、日常的に走行される日常モードでのリスク値と非日常的に走行されるハッピーモードでのリスク値との2種類が設定されて、リスクの内容が同じであればハッピーモードでのリスク値の方が日常モードでのリスク値よりも大きくなるように設定されている、ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
車両に、ポジティブな体験をした際に車両の運転者によって操作されるいいねボタンが設けられ、
前記いいねボタンが操作されたときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶して、該記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について該いいねボタンが操作された車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加される、
ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
車両の挙動状態およびセンサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されるユーザの感情状態に基づいてポジティブな体験が生じたと判定されたときに体験フラグを発生すると共に、リスクが生じたときにリスクフラグを発生するように設定され、
前記体験フラグが発生されたときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶して、該記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について該体験フラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加され、
前記リスクフラグが発生されたときの車両の場所をリスクの分類と共に記憶して、該記憶されている場所のうち、同一分類のリスクについて該リスクフラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記リスク値が設定されるリスクのある場所として追加される、
ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法。
【請求項9】
ナビゲーション装置を備えた車両と該車両のユーザにより操作される携帯端末との少なくとも一方に対して通信可能なコンピュータからなる管理装置であって、
多数の走行経路についてそれぞれ、車両のユーザにとって好ましい体験となるポジティブな体験が期待できると共に好ましい度合いが大きいほど大きな値とされる期待値と、走行に伴うリスクの度合いが大きいほど大きな値とされたリスク値と、をデータベースとして記憶しておく機能と、
前記車両またはユーザ端末からユーザが希望する出発地点と目的地とを受信する機能と、
前記受信した前記出発地点と前記目的地に向かうための複数の走行経路のそれぞれについて、前記データベースに照合してポジティブな体験が期待できる期待値の総計を得る機能と、
前記受信した前記出発地点と前記目的地に向かうための複数の走行経路のそれぞれについて、前記データベースに照合して走行に伴うリスクの度合いを示すリスク値の総計を得る機能と、
前記期待値の総計が前記リスク値の総計よりも大きくなる範囲で、該リスク値の総計がもっとも大きくなる走行経路を前記車両または前記ユーザ端末に送信する機能と、
を備えていることを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記データベースには、走行経路が多数の区間に区分けされて、各区間について前記期待値および前記リスク値が記憶されており、
前記複数の走行経路についてそれぞれ、前記データベースに照合して、前記区間毎の前記期待値を合計することにより該期待値の総計を得るようにされ、
前記複数の走行経路についてそれぞれ、前記データベースに照合して、前記区間毎の前記リスク値を合計することにより該リスク値の総計を得るようにされている、
ことを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記データベースに記憶されている前記期待値を、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの楽しさの度合いを示す感情状態に基づいて更新する機能と、
前記データベースに記憶されている前記リスク値を、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの緊張度合いを示す心理状態に基づいて更新する機能と、
をさらに備えていることを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記期待値の更新が、ユーザの前記感情状態に基づいて仮の期待値を設定して、直近から所定回数分の仮の期待値に基づいて行われ、
前記リスク値の更新が、ユーザの前記心理状態に基づいて仮のリスク値を設定して、直近から所定回数分の仮のリスク値に基づいて行われる、
ことを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【請求項13】
請求項9ないし請求項12のいずれか1項において、
車両のユーザによっていいねボタンが操作された際に、そのときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶する機能と、
前記記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について前記いいねボタンが操作された車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加する機能と、
をさらに備えていることを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【請求項14】
請求項9ないし請求項13のいずれか1項において、
車両の挙動状態およびセンサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されるユーザの感情状態に基づいてポジティブな体験が生じたと判定されたときに発生される体験フラグを車両から受信して、該体験フラグが発生したときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶する機能と、
前記記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について前記体験フラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加する機能と、
リスクが生じたときに発生されるリスクフラグを車両から受信して、該リスクフラグが発生されたときの車両の場所をリスクの分類と共に記憶する機能と、
前記記憶されている場所のうち、同一分類のリスクについて該リスクフラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記リスク値が設定されるリスクのある場所として追加する機能と、
をさらに備えていることを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【請求項15】
請求項9ないし請求項14のいずれか1項において、
前記期待値として、日常的に走行される日常モードでの期待値と非日常的に走行されるハッピーモードでの期待値との2種類が設定されて、ポジティブな体験の内容が同じであればハッピーモードでの期待値の方が日常モードでの期待値よりも大きくなるように設定され、
前記リスク値として、日常的に走行される日常モードでのリスク値と非日常的に走行されるハッピーモードでのリスク値との2種類が設定されて、リスクの内容が同じであればハッピーモードでのリスク値の方が日常モードでのリスク値よりも大きくなるように設定され、
走行経路を複数の区間に区切って、各区間毎に日常モードであるのかハッピーモードであるのかを区別して前記期待値あるいは前記リスク値を取得する、
ことを特徴とするナビゲーションシステム用の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法およびその管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザの感情に合致させるように目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置が開示されている。具体的には、複数のユーザから収集した地点毎の感情データから生成した感情マップに基づいて、ポジティブな感情と関連する地点を多く含む一方、ネガティブな感情と関連する地点を多く含まないようにされた経路を提案するものが開示されている。
【0003】
特許文献2には、各地点の安全度と安心度を表すマップに基づいて、安全度と安心度の高い場所へ案内するナビゲーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-100936号公報
【文献】特開2020-095045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車を運転するユーザ(ドライバ)の中には、どのような道路でも問題なく自身をもって運転することができるベテランドライバ以外に、運転に不慣れあるいはあまり得意でない者が多く存在する。
【0006】
運転に不慣れあるいはあまり得意でないユーザにおいては、例えば趣味に合致することから自動車を運転して行ってみたい施設がある一方、この施設に向かう途中の道路が例えば狭小であるとか交通量が多すぎるとかのリスク要因を考慮して、上記施設へ行くことをためらうことがある。つまり、ユーザは、得られる好ましい体験(ポジティブな体験)とリスクに伴う不安とを天秤にかけて、不安が勝るときは上記施設へ行くことを断念してしまうことになる。
【0007】
リスク要因を低減するために、ある目的地へ向かう経路として、リスク要因のもっとも低い経路を提案することが考えられる。しかしながら、単にリスクを避けるような経路を走行しているだけでは、種々の道路状況に適切に対応するための運転経験をつむことができないことから、運転技量が向上せずまた運転に対する自信を高めることも難しいものとなり、結果としてドライブへ出かける機会の低減ともなる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、好ましい体験をさせつつリスクをも適切に体験させて、運転技量の向上と運転に対する自信向上に繋げることのできるようにしたナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法およびその管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
多数の走行経路についてそれぞれ、車両のユーザにとって好ましい体験となるポジティブな体験が期待できると共に好ましい度合いが大きいほど大きな値とされる期待値と、走行に伴うリスクの度合いが大きいほど大きな値とされたリスク値と、を記憶したデータベースを有し、
車両のユーザが希望する出発地点から目的地に向かうための複数の走行経路のそれぞれについて、前記データベースに照合して、前記期待値の総計と前記リスク値の総計とを得る第1ステップと、
前記期待値の総計が前記リスク値の総計よりも大きくなる範囲で、該リスク値の総計がもっとも大きくなる走行経路をユーザに提示する第2ステップと、
を備えているようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、データベースを利用して、期待値の総計がリスク値の総計よりも大きくなるように走行経路が設定されるので、ユーザに対して積極的にドライブに行きたいという意欲を持たせることができる。そして、リスク値の総計がもっとも大きくなるように設定されているので、リスクをも適切に体験させて、運転技量の向上や運転に対する自信を向上させることができる。そして、リスクを経験することにより、徐々に不安を感じなくなり(リスク値の低減)、長期的には期待値がリスク値よりも大きくなる状態へと促す上でも好ましいものとなる。
【0011】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記データベースには、走行経路が多数の区間に区分けされて、各区間について前記期待値および前記リスク値が記憶されており、
前記第1ステップでは、前記複数の走行経路についてそれぞれ、前記データベースに照合して、前記区間毎の前記期待値を合計することにより該期待値の総計を得ると共に、前記区間毎の前記リスク値を合計することにより該リスク値の総計を得る、
ようにすることができる。この場合、データベースを有効に利用して、走行経路についての期待値の総計とリスク値の総計とを容易に取得する上で好ましいものとなる。
【0012】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記データベースに記憶されている前記期待値が、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの楽しさの度合いを示す感情状態に基づいて更新され、
前記データベースに記憶されている前記リスク値が、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの緊張度合いを示す心理状態に基づいて更新される、
ようにすることができる。この場合、期待値とリスク値とをユーザに応じた適正な値にする上で好ましいものとなる。
【0013】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
ユーザの前記感情状態に基づいて仮の期待値を設定して、直近から所定回数分の仮の期待値に基づいて前記データベースに記憶されている前記期待値の更新が実行され、
ユーザの前記心理状態に基づいて仮のリスク値を設定して、直近から所定回数分の仮のリスク値に基づいて前記データベースに記憶されている前記リスク値の更新が実行される、
ようにすることができる。この場合、古い走行ログに基づく期待値やリスク値を捨てて、ユーザの心境変化や成長に伴う傾向値の変化に追従して、期待値、リスク値をユーザに現在の傾向に対応した極めて適切な値に設定する上で好ましいものとなる。
【0014】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記期待値として、日常的に走行される日常モードでの期待値と非日常的に走行されるハッピーモードでの期待値との2種類が設定されて、ポジティブな体験の内容が同じであればハッピーモードでの期待値の方が日常モードでの期待値よりも大きくなるように設定されている、ようにすることができる。この場合、期待値を、走行に慣れた場所と走行に慣れていない場所とで区別して、期待値を適切な値とする上で好ましいものとなる。
【0015】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記リスク値として、日常的に走行される日常モードでのリスク値と非日常的に走行されるハッピーモードでのリスク値との2種類が設定されて、リスクの内容が同じであればハッピーモードでのリスク値の方が日常モードでのリスク値よりも大きくなるように設定されている、ようにすることができる。この場合、リスク値を、走行に慣れた場所と走行に慣れていない場所とで区別して、リスク値を適切な値とする上で好ましいものとなる。
【0016】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
車両に、ポジティブな体験をした際に車両の運転者によって操作されるいいねボタンが設けられ、
前記いいねボタンが操作されたときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶して、該記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について該いいねボタンが操作された車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加される、
ようにすることができる。この場合、未知のポジティブな体験ができる場所を多数のユーザを利用して新たに作成する上で好ましいものとなる(集合知によるポジティブな体験ができる場所の追加)。
【0017】
本発明によるナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
車両の挙動状態およびセンサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されるユーザの感情状態に基づいてポジティブな体験が生じたと判定されたときに体験フラグを発生すると共に、リスクが生じたときにリスクフラグを発生するように設定され、
前記体験フラグが発生されたときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶して、該記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について該体験フラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加され、
前記リスクフラグが発生されたときの車両の場所をリスクの分類と共に記憶して、該記憶されている場所のうち、同一分類のリスクについて該リスクフラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記リスク値が設定されるリスクのある場所として追加される、
ようにすることができる。この場合、未知のポジティブな体験が期待できる場所、未知のリスクのある場所を、多数のユーザを利用して新たに作成する上で好ましいものとなる(集合知によるポジティブな体験ができる場所の追加、およびリスクのある場所の追加)。
【0018】
前記目的を達成するため、本発明によるナビゲーションシステムの管理装置にあっては、次のような解決手法を採択してある。すなわち、
ナビゲーション装置を備えた車両と該車両のユーザにより操作される携帯端末との少なくとも一方に対して通信可能なコンピュータからなる管理装置であって、
多数の走行経路についてそれぞれ、車両のユーザにとって好ましい体験となるポジティブな体験が期待できると共に好ましい度合いが大きいほど大きな値とされる期待値と、走行に伴うリスクの度合いが大きいほど大きな値とされたリスク値と、をデータベースとして記憶しておく機能と、
前記車両またはユーザ端末からユーザが希望する出発地点と目的地とを受信する機能と、
前記受信した前記出発地点と前記目的地に向かうための複数の走行経路のそれぞれについて、前記データベースに照合してポジティブな体験が期待できる期待値の総計を得る機能と、
前記受信した前記出発地点と前記目的地に向かうための複数の走行経路のそれぞれについて、前記データベースに照合して走行に伴うリスクの度合いを示すリスク値の総計を得る機能と、
前記期待値の総計が前記リスク値の総計よりも大きくなる範囲で、該リスク値の総計がもっとも大きくなる走行経路を前記車両または前記ユーザ端末に送信する機能と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に記載のナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法に用いることのできる管理装置が提供される。
【0019】
本発明によるナビゲーションシステム用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記データベースには、走行経路が多数の区間に区分けされて、各区間について前記期待値および前記リスク値が記憶されており、
前記複数の走行経路についてそれぞれ、前記データベースに照合して、前記区間毎の前記期待値を合計することにより該期待値の総計を得るようにされ、
前記複数の走行経路についてそれぞれ、前記データベースに照合して、前記区間毎の前記リスク値を合計することにより該リスク値の総計を得るようにされている、
ようにすることができる。この場合、請求項2に記載のナビゲーションシステムにおける走行経路の設定方法に用いることのできる管理装置が提供される。
【0020】
本発明によるナビゲーションシステム用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記データベースに記憶されている前記期待値を、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの楽しさの度合いを示す感情状態に基づいて更新する機能と、
前記データベースに記憶されている前記リスク値を、センサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されたユーザの緊張度合いを示す心理状態に基づいて更新する機能と、
をさらに備えたものとすることができる。この場合、期待値とリスク値とを現在のユーザの傾向に応じた適正な値とする上で好ましいものとなる。
【0021】
本発明によるナビゲーションシステム用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記期待値の更新が、ユーザの前記感情状態に基づいて仮の期待値を設定して、直近から所定回数分の仮の期待値に基づいて行われ、
前記リスク値の更新が、ユーザの前記心理状態に基づいて仮のリスク値を設定して、直近から所定回数分の仮のリスク値に基づいて行われる、
ようにすることができる。この場合、古い走行ログに基づく期待値やリスク値を捨てて、ユーザの心境変化や成長に伴う傾向値の変化に追従して、期待値、リスク値をユーザに現在の傾向に対応した極めて適切な値に設定する上で好ましいものとなる。
【0022】
本発明によるナビゲーションシステム用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
車両のユーザによっていいねボタンが操作された際に、そのときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶する機能と、
前記記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について前記いいねボタンが操作された車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加する機能と、
前記期待値が設定されるポジティブな体験が得られる場所として追加される、
ようにすることができる。この場合、未知のポジティブな体験が期待できる場所をユーザを利用して新たに追加することができる。
【0023】
本発明によるナビゲーションシステム用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
車両の挙動状態およびセンサにより検出されるユーザの生体データに基づいて判定されるユーザの感情状態に基づいてポジティブな体験が生じたと判定されたときに発生される体験フラグを車両から受信して、該体験フラグが発生したときの車両の場所をポジティブな体験の分類と共に記憶する機能と、
前記記憶されている場所のうち、同一分類のポジティブな体験について前記体験フラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記期待値が設定されるポジティブな体験が期待できる場所として追加する機能と、
リスクが生じたときに発生されるリスクフラグを車両から受信して、該リスクフラグが発生されたときの車両の場所をリスクの分類と共に記憶する機能と、
前記記憶されている場所のうち、同一分類のリスクについて該リスクフラグを発生した車両数が所定の条件を満足する多数とされた場所を、前記リスク値が設定されるリスクのある場所として追加する機能と、
をさらに備えているようにすることができる。この場合、未知のポジティブな体験が期待できる場所、未知のリスクのある場所を、多数のユーザを利用して新たに作成する上で好ましいものとなる。
【0024】
本発明によるナビゲーションシステム用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記期待値として、日常的に走行される日常モードでの期待値と非日常的に走行されるハッピーモードでの期待値との2種類が設定されて、ポジティブな体験の内容が同じであればハッピーモードでの期待値の方が日常モードでの期待値よりも大きくなるように設定され、
前記リスク値として、日常的に走行される日常モードでのリスク値と非日常的に走行されるハッピーモードでのリスク値との2種類が設定されて、リスクの内容が同じであればハッピーモードでのリスク値の方が日常モードでのリスク値よりも大きくなるように設定され、
走行経路を複数の区間に区切って、各区間毎に日常モードであるのかハッピーモードであるのかを区別して前記期待値あるいはリスク値を取得する、
ようにすることができる。この場合、ハッピーモードと日常モードとに応じて、期待値とリスク値とを適切に設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、好ましい体験をさせつつリスクをも適切に体験させて、運転技量の向上と運転に対する自信向上を図る上で好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の全体概要を示す図。
図2】管理装置でのデータ記憶部分と車両と携帯端末との通信関係を示す図。
図3】ルート毎の期待値の総計とリスク値の総計との例を示す図。
図4図3に示すルートBの走行経路を簡略的に示す図。
図5図4に示すルートBにおける個々のポジティブな体験毎の期待値と個々のリスク内容毎の期待値とをそれぞれ傾向値として示す図。
図6】慣れた場所と慣れていない場所とでの傾向値の差異例を示す図。
図7】車両と携帯端末と管理装置との間での情報授受を時系列的に示す図。
図8図7の続きを示す図。
図9】管理装置での主たる制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(1)全体の概要について。
【0028】
まず、図1を参照しつつ、全体システムの概要について説明する。この図1において、1はユーザ(ドライバ)の車両(自動車)、20は車両1のユーザが使用する情報処理装置としての携帯端末(スマートフォン等)である。また、30は、サーバ装置を構成する管理装置である。
【0029】
管理装置30は、各種処理を行うためのプログラムを記憶したメモリ、上記プログラムにしたがって各種処理を実行するプロセッサ、通信回路、入出力装置、表示装置等を含むコンピュータ装置によって構成されている。管理装置30は、後述するようにビッグデータを扱うことから、大容量のデータベースを保有するものとなっている(このため大容量のHDDやフラッシュメモリを有している)。
【0030】
車両1および携帯端末20は、無線通信の形態で、通信回路としてのインターネット40を介して管理装置30と通信可能とされている。また、車両1と携帯端末20とは、例えばブルートゥース(登録商標)等によって近距離無線通信が可能とされている。図1では車両1およびこれに対応した携帯端末20が1組のみ表示されているが、実際には、多数の他車両分についてその携帯端末と共にインターネット40を介して管理装置30と通信可能とされている。
【0031】
管理装置30は、道路の所定単位距離(例えば100m~200m)毎に区分けされた区間単位でもって、ポジティブな体験が期待できる区間とその期待値、およびリスクを含む区間とそのリスク値を記憶している(同じ区間でも、曜日や時間毎、さらには天候等に応じて期待値あるいはリスク値を設定するのが好ましい)。なお、1つの区間の長さ(距離)を同一とすることもできるが、例えば同じような状況が長く続く道路の場合は1区間の長さを長く設定し、道路状況の変化が大きい複雑な道路については1つの区間の長さを短く設定するのが好ましい。ある1つの走行経路は、多数の区間を連続したものとなる。
【0032】
携帯端末20から、出発地点と目的地および出発時間とが管理装置30の送信される。管理装置30は、受信した出発地点と目的地および出発時間に基づいて、複数の走行経路を設定して、各走行経路毎に、上記期待値の総計とリスク値の総計とを算出する。そして、期待値の総計がリスク値の総計よりも大きい範囲で、リスク値がもっとも大きくなる走行経路を選択して、この選択された走行経路を車両1に送信する。なお、走行経路の車両1への送信は、携帯端末20を介して行うようにしてもよい。
【0033】
走行経路の決定に際しては、ポジティブな体験ができる区間とリスクのある区間とを抽出して、抽出された区間毎の期待値あるいはリスク値を決定して、各区間毎の期待値あるいはリスク値を全ての区間について合計することにより、期待値の総計とリスク値の総計とを得ることができる。
【0034】
車両1は、管理装置30から送信された走行経路に沿って走行することにより、ポジティブな体験を十分得つつ、走行に伴うリスクも適切に体験することになる。リスクの適切な体験により、運転技量が向上されると共に運転に対する自信も向上されて、ドライブへ出かけるという意欲が向上されることになる。
【0035】
管理装置30からの走行経路に関する送信に際しては、トリップルート(走行経路)の他に、トリップルート周辺のヒートマップ(ポジティブな体験が得られる場所の分布)およびリスクマップ(リスク有りの場所の分布)を合わせて送信するのが好ましい。
【0036】
上述の複数の走行経路について、各走行経路毎の期待値の総計とリスク値の総計を示す一例が図3に示される。図3では、ルートBが、期待値の総計がリスク値の総計よりも大きい範囲で、リスク値の総計がもっとも大きくなる走行経路である。ルートBの走行経路の具体例が、ヒートマップ、リスクマップと共に図4に示される。ルートBにおいては、出発地点から、終了地点(目的地)に向けて順次、会話を楽しめる場所(ポジティブな体験が期待できる場所)、車線変更が多く行われる場所(リスクのある場所)、離合のある場所(リスクがある場所)、公園がある場所(ポジティブな体験が期待できる場所)、走りが楽しめる場所(ポジティブな体験が期待できる場所)、路面が滑りやすい場所(リスクのある場所)となっている。
【0037】
図4に示すような表示は、車両1のディスプレイに表示させることができる。この場合、同じ分類のポジティブな体験ができる区間が連続して複数存在する場合は、この複数の区間をまとめてポジティブな体験が期待できる区間としてまとめて表示することができる。同様に、同じ分類のリスクのある区間が連続して複数存在する場合は、この複数の区間をまとめてポジティブな体験が期待できる区間としてまとめて表示することができる。
【0038】
上記ポジティブな体験が期待ができる各区間毎の期待値と、上記リスクのある区間毎のリスク値の具体例が、図5に示される。各期待値を合計した総計が247であり、各リスク値を合計した総計が222となる(図3のルートB対応)。なお、図5に示す例では、目的地としての宿泊先について期待値が0になっているが、宿泊先で温泉が楽しめたり催し物が開催される等のときは、ポジティブな体験が期待できる区間(地点)とされて、所定の期待値が設定されることもある。
(2)車両側でのデータ収集と、管理装置30におけるデータ処理(記憶)について。
【0039】
図2を参照しつつ、車両側でのデータ収集と、管理装置30におけるデータ処理(特にデータベース関係)に着目して説明する。なお、図2においては、管理装置30のうちデータベースの記憶に関する部位が抽出して記載されている。
【0040】
車両1側においては、撮像手段としてのカメラS1と、各種センサS2と、入力装置S3と、表示装置S4と、を有する。カメラS1は、少なくとも、乗員の顔を撮影する車内カメラと、少なくとも車両前方を撮影する車外カメラとを含むものとされている。なお、実施形態では、車外カメラは全方位を撮影可能とされている。
【0041】
各種センサS2に含まれるセンサとしては、次のようなものとされている。まず、車両挙動の状態を取得するために、車速センサ、前後方向および左右方向の加速度センサ、ヨーレートセンサ、エンジン回転数センサ等を含んでいる。また、運転操作の状態を取得するために、アクセル開度センサ、ブレーキセンサ、舵角センサ等を含んでいる。車両の位置情報を取得するために、GPSやGNSS等の測位センサを含んでいる。さらに、乗員の感情情報取得のために、乗員の声を取得するマイク、乗員の心拍変動を計測する心拍センサ等の生体センサを含んでいる。さらに、車両物体を検出する前方レーダ、後方物体を検出する後方レーダを含んでいる。
【0042】
入力装置S3は、各種のスイッチやボタン、タッチパネル等を含む他、後述する「いいねボタン」を含んでいる。いいねボタンは、走行中に運転者により操作され易い位置(例えばステアリングハンドル)に設けられている。走行中に良い景色を見たとき等に、いいねボタンを操作することにより、そのときに車両が位置する区間が、ポジティブな体験が得られる区間の候補地とされる。この候補地とされたある同一の区間について、所定条件を満たす所定台数以上となる多数の車両がいいねボタンを操作していることが確認されると、ポジティブな体験が得られる区間として追加される。
【0043】
表示装置S4は、乗員に対して各種情報を報知するもので、実施形態ではナビゲーション装置の表示画面によって構成してある。なお、ナビゲーション装置用の表示画面とは別個の表示画面を設定することもできる。
【0044】
上記S1~S4は、制御手段としての演算装置15と接続されている。演算装着15は、次のような処理を行う。まず、ウインカ、ヘッドランプ、いいねボタン等の操作ログ、運転支援などの各種機能の動作ログを収集する。収集される運転支援などの各種機能の動作ログは、例えば、緊急ブレーキ(自動ブレーキ)の作動、死角支援モニタの作動、ABS装置の作動、電子制御4WDの作動、車線維持制御の作動等がある。
【0045】
また、演算装置15は、運転状態(運転技量)の判定結果や、算出された乗員の感情強度(楽しさの度合いや不安の度合い)を収集する。なお、上記運転状態や感情強度は、演算装置15が算出するようにすることもできる。
【0046】
さらに、演算装置15は、ユーザ認証を行う。この認証は、車内カメラや映像を用いた顔認証や、携帯端末20との接続を利用したID認証等によって行うことができる。
【0047】
さらに又、演算装置15は、ハッピーモードか否かの識別を行う。ハッピーモードは、通勤や買い物等の日常走行(日常モード)と余暇のドライブとを区別するためのもので、余暇のドライブを楽しむときにハッピーモードとされる。前述した期待値とリスク値とは、ハッピーモードの方が日常モードよりも大きな値となるように設定される。例えば、直近の所定期間(例えば6ヶ月~1年間)に所定回数(例えば10~20回)以上走行された区間は日常モードの区間とされ、それ以外の区間はハッピーモードの区間とされる。実施形態では、ユーザの要望に応じて管理装置30で設定された走行経路(トリップルート)を走行するときは、ユーザが走り慣れていないあるいは未知の道路を走行することが多いことから、ハッピーモードとされる。
【0048】
車両1に搭載された通信装置16と管理装置30の通信装置31とが通信可能とされている。演算装置15で処理された各種情報が、この通信装置16、31を介して管理装置30へ送信される。また、管理装置30からの情報が、通信装置31、16を介して車両1へ送信される。演算装置15は、カメラS1、センサS2、入力装置S3からの情報を、ユーザ毎の情報として、ユーザ毎に紐付けされた状態で管理装置30へ送信する。
【0049】
管理装置30は、データベースDB1~DB3を有する。カメラS1、センサS2、入力装置S3からの情報は、データベースDB1に格納(記憶)される。
【0050】
管理装置30は、データベースDB1の格納情報に基づいて、ドライバの感情情報と同乗者の感情情報とを、ユーザ毎に区別してデータベースDB2に記憶する。このデータベースDB2は、ユーザ毎に、ハッピーモードと日常モードとに分類分けした状態で、ユーザ毎の期待値とリスク値とを記憶している。
【0051】
管理装置30は、処理部32を有する。処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、1回の走行(トリップ)毎に、トリップルート情報を取得する。取得されたトリップルート情報は、データベースDB3に格納される。各トリップルート情報には、ルートID(識別符号)が付される。トリップルート情報としてデータベースDB3に記憶される情報は、走行経路の出発地点、終了地点、出発日時、総トリップ時間(走行時間)、目的地(終了地点とされることもある)、走行ルート(通過した多数の区間を結んだもの)とされる。
【0052】
処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、上述したトリップルートが入力される毎に、トリップIDを付与して、走行ログ情報を取得する。トリップルートが入力されていないときは、イグニッションスイッチがオンされる毎にトリップIDを付与して、走行ログ情報を取得する。取得した走行ログは、データベースDB3に格納される。取得される走行ログ情報は、車両情報としてのシリアル番号、位置情報、車両操作系の操作情報、車両挙動、フラグ情報(体験フラグとリスクフラグ)、運転支援の作動情報、運転状態の評価、イグニッションスイッチのON、OFF情報、いいねボタンの操作情報、ハッピーモードの有無とされる。
【0053】
処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、施設毎にIDを付与して、施設情報を取得する。取得された施設情報は、データベースDB3に格納される。施設情報としては、位置情報と分類(例えば、博物館、自然公園、美術館等)とされる。
【0054】
処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、各区間毎にIDを付与して、区間情報を取得する。取得された区間情報は、データベースDB3に格納される。区間情報としては、始点位置情報、終点位置情報、ポジティブな体験の内容を示す分類、発生したリスクの分類とされる。
【0055】
携帯端末20は、管理装置30の通信装置31を介して、データベースDB3にアクセス可能とされている。データベースDB3へのアクセスにより、例えば、ユーザがある走行経路を走行した後に、この走行に関する種々の情報を入手することができる。
(3)乗員の感情の判定について。
【0056】
乗員の感情の判定は、ポジティブな体験につながる楽しさ(活性度)の度合いに関する判定と、リスにつながる不安(緊張度)の度合いに関する判定とされる。楽しさの度合いは、例えば100点満点で評価されて、100点に近いほど楽しさの度合いが高いとされる。また、不安の度合いは、例えば100点満点で評価されて、100点に近いほど不安の度合いが高いとされる。
【0057】
上述した乗員の感情判定についての手法は種々提案されているが、例えば次のような手法で行うことができる。まず、乗員の音声を取得する車内マイク、運転者の心拍変動を計測する心拍計測装置、車内カメラが撮影した乗員の画像等の生体センサからの情報に基づいて、乗員の感情を判定する。実施形態では、運転者および同乗者における瞳孔径、眼球運動、頭部や肩の位置や向きを含む上半身の挙動および顔の表情、並びに心拍変動を生体データとして取得する。そして、取得された生体データに基づき、運転者および同乗者の心理状態としての緊張度を分析する。緊張度が高いほど、不安の度合いが高いとされる。
【0058】
また、公知の「MIMOSYS(登録商標)」などのアルゴリズムを用いて、運転者および同乗者の音声を分析して、運転者および同乗者の感情状態としての活性度を求める。活性度が高いほど、楽しさの度合いが高いものとされる。なお、生体データに基づく感情状態の判定は、実施形態では演算装置15で行うようにしてあるが、これに限らず、携帯端末20および/または管理装置30が感情状態の判定の一部または全部を行うようにしてもよい。
(4)運転状態の評価について。
【0059】
実施形態では、運転状態として、しなやかな運転状態であるか否かを判定するようにしてある。すなわち、しなやかな運転状態が行われる区間は、ポジティブな体験が期待できる好ましい区間であるとされる。具体的には、車両1の加速度の変化量が相対的に大きい場合(例えば発進時や停車するとき、旋回開始時や旋回終了時)においては、加速度の変化量が所定値以上でかつ躍度(加速度の微分値)が所定値未満であるときに、しなやかな運転状態であると判定する。この運転状態では、運転操作が適度な速さで行われており、乗員の体の揺れの大きさや速さが所定範囲内に収まることとなる。
【0060】
また、車両1の加速度の変化量が相対的に小さい場合(例えば、ほぼ一定加速度で加速や減速が行われている場合)においては、車両1の加速度の変化量が所定量未満かつ加速度の絶対値が所定値以上であるときに、しなやかな運転状態であると判定される。この運転状態では、運転操作が最適な操作量により一発で行われ、その操作状態が維持されることで、乗員の体が一定に維持されることとなる。なお、運転状態の判定は、実施形態では演算装置15が行うようにしてあるが、これに限らず、携帯端末20および/または管理装置30が運転状態の判定の一部または全部を行うようにしてもよい。
(5)ポジティブな体験が期待できる場所(区間)について。
【0061】
ポジティブな体験が期待できる場所(区間)として、実施形態では、良い走りができる場所と、良い景色がある場所と、会話が盛り上がりやすい場所との3種類が設定されているが、これに限るものではない。
【0062】
良い走りができる場所(区間)であるか否かの判定に使用するデータは、車両の挙動とされる。判定基準は、前述したしなやかな運転と判断された距離が所定の単位区間内で所定割合以上の場合、とされている。
【0063】
良い景色がある場所(区間)であるか否かの判定に使用するデータは、乗員の操作と乗員状態である。判定基準は、いいねボタンが操作されたとき、あるいは同乗者の感情が活性かつその同乗者の視線が車外を向いている場合とされている。
【0064】
会話が盛り上がりやすい場所(区間)であるか否かの判定に使用するデータは、乗員状態とされる。判定基準は、乗員の少なくとも1人の感情が活性かつ会話音量が所定値(例えば60dB)以上の大きい場合とされている。
【0065】
車両1側において、前述したポジティブな体験ができる状況をセンシングすると、体験フラグが立てられる。この体験フラグは、上記センシングされた区間を示す情報と、ポジティブな体験の種類を示す情報と共に、管理装置30に送信されて記憶される。管理装置30は、同じ区間を通過した本システムのサービスを受ける全車両数に対して、体験フラグを送信した車両数の割合が所定値以上のとき、当該区間をポジティブな体験が期待できる場所(区間)として設定(記憶)する。なお、上記全車両数は、所定台数(例えば20~30台)以上とされる。
【0066】
さらに、ポジティブな体験が期待できる地点(目的地や経由地となる施設で、例えば海、公園、美術館等)が設定される。すなわち、管理装置30は、ある地点を訪れたシステムのサービスを受ける所定台数以上の全車両数に対して、ハッピーモードで訪れた車両数の割合が所定値以上のときに、ポジティブな体験が期待できる地点とし設定(記憶)する。
(6)リスクのある場所(区間)について。
【0067】
リスクのある場所(区間)は、大別して、実施形態では、物理的な要因となる物理1~物理4と、社会的要因となる社会1~社会4の8種類に分類してあるが、これに限るものではない。以下、各リスク毎に説明する。
【0068】
物理1のリスクは、離合が発生する狭い道路である。判定に使うデータは、車外カメラと地図情報と車両諸元とされる。判定基準は、対面通行かつ道幅から車幅を差し引いた値が所定値以下となる狭い道路とされる。
【0069】
物理2のリスクは、滑り易い道路である。特に、地域によっては路面の組成(例えばアスファルト)が違うなど、摩擦係数の低い道路が想定される。判定に使うデータは、車外カメラと運転操作と車両挙動とされる。判定基準は、ブレーキ踏み込み量に対する減速度が通常時よりも小さいときとされる。この他、車外カメラによる路面状況を加味して判定することもできる。
【0070】
物理3のリスクは、雨天時に視界が悪化し易い道路である。例えば、水はけが悪くて、水しぶきがあがりやすい道路が想定される。判定に使うデータは、車外カメラとレーダと交通情報である。判定基準は、雨天時(ワイパ作動時とすることもできる)で、レーダで検出できた物体がカメラで検出できない場合のときとされる。
【0071】
物理4のリスクは、路端から転落のおそれがある道路である。判定に使うデータは、車外カメラである。判定基準は、路端に縁石やガードレールがなく、路端外の高さが道路面よりも低い場合のときとされる。
【0072】
社会1のリスクは、車間距離の短い車両が多い道路である。判定に使うデータは、前方レーダおよび後方レーダである。判定基準は、前方車両あるいは後方車両との車間距離が、車速に応じて決まる所定距離以下の状態が、区間内で所定割合以上続く場合である。
【0073】
社会2のリスクは、歩行者や車両の飛び出しが多い道路である。判定に使うデータは、車両挙動と、前方カメラまたは前方レーダである。判定基準は、交差点への進入速度が所定値以上の車両や歩行者を、前方カメラあるいは前方レーダで検出した場合とされる。
【0074】
社会3のリスクは、右折待ちで後方車両を待たせてしまう道路である。例えば、施設の入り口、右折信号のない交差点が想定され、後方車両を待たせることによる焦りが事故リスクとなる。判定に使うデータは、後方カメラである。判定基準は、ウインカが作動状態(より具体的には、左側通行の場合での右ウインカ作動状態となる右折待ちの状態)で、かつ後方所定距離以内に停車車両が存在する状態が所定秒数以上続く場合である。
【0075】
社会4のリスクは、急な車線変更が多い道路である。例えば、左側通行の場合において右折信号のない交差点での右折車両の回避や、左右の道路が合流した後の近距離で再び道路が左右に分かれることから、合流直後での車線変更が頻繁に行われることが想定される。判定に使うデータは、前方カメラと運転操作と車両挙動である。判定基準は、車線をまたぐ車両数に対して、ウインカ非作動またはウインカ作動から極めて短い時間内に車線をまたぐ車両数の割合が所定値以上の場合である。なお、急な車線変更を行う車両(車線変更開始から終了までの時間が所定時間以内というように極めて短い車両)を、前方カメラを用いて検出するようにしてもよい。
【0076】
車両1側において、前述したリスクのある状況をセンシングすると、リスクフラグが立てられる。このリスクフラグは、上記センシングされた区間を示す情報と、リスクの種類を示す情報と共に、管理装置30に送信されて記憶される。管理装置30は、同じ区間を通過した本システムのサービスを受ける所定台数以上の全車両数に対して、リスクフラグを送信した車両数の割合が所定値以上のとき、当該区間をリスクのある場所(区間)として設定(記憶)する。
(7)期待値とリスク値について
ポジティブな体験に関する期待値と、リスクに関するリスク値とは、ユーザ毎に設定され、このためユーザの傾向に依存する傾向値として表現することもある。
【0077】
期待値とリスク値とは、それぞれ、希望ジャンルと走行ログとから、ユーザの傾向を分析してユーザ毎に決定される。すなわち、どのようなジャンルの体験を好むのかを点数化して期待値として決定され、どのようなジャンルのリスクに対して不安を感じるのかを点数化してリスク値として決定される。期待値とリスク値とは、実施形態ではそれぞれ100点満点とされている。期待値が大きい方が、よりポジティブな体験が期待できることを意味する。また、リスク値が大きい方が、よりリスクが高いことを意味する。
【0078】
当初は、本システムのサービス利用開始時に、ポジティブな体験として希望するジャンル(例えば、海、山、都会、公園、芸術、動物等々)が、例えば携帯端末20を利用して管理装置30へ入力される。入力された希望のジャンルに「期待」の傾向値して事前に設定した期待値(例えば80点)が付与される。管理装置30から、多数のジャンルを携帯端末20に対して多数提示して、アンケート回答の形式で、好みのジャンルの選択をその期待値と共にユーザに入力させることもできる。
【0079】
リスク値についても、当初は期待値と同様に設定することができる。すなわち、リスクを感じるジャンル(例えば、急な車線変更、離合、歩行者や車両の飛び出し等々)が、例えば携帯端末20を利用して管理装置30へ入力される。入力されたリスクを感じるジャンルに「リスク」の傾向値して事前に設定したリスク値(例えば80点)が付与される。管理装置30から、多数のジャンルを携帯端末20に対して多数提示して、アンケート回答の形式で、不安に感じるジャンルの選択をそのリスク値と共にユーザに入力させることもできる。
【0080】
ユーザ毎に決定された期待値とリスク値とは、それぞれ管理装置30のデータベースDB2に記憶される。
【0081】
上記のようにして決定された期待値とリスク値とは、それぞれ初期値であり、この初期値が走行ログに基づいて適宜更新される。すなわち、走行中に体験フラグが立てられたときのユーザの感情状態(楽しさの度合いを示す活性度)を検出して、この検出された感情状態に基づいて期待値が更新(補正)される。具体的には、体験フラグが立てられたときのユーザの感情があまり楽しくない状態であると判断されたときは、期待値が小さくなる方向に更新される。逆に、体験フラグが立てられたときの感情が非常に楽しい状態であると判断されたときは、期待値が大きくなる方向に更新される。勿論、期待値の更新は、ポジティブな体験の種類毎に行われる。
【0082】
リスク値については、走行中にリスクフラグが立てられたときのユーザの心理状態(不安の度合いを示す緊張度合い)を検出して、この検出された心理状態に基づいてリスク値が更新(補正)される。具体的には、リスクフラグが立てられたときのユーザの緊張度合いが低い(不安レベルが低い)状態であると判断されたときは、リスク値が小さくなる方向に更新される。逆に、リスクフラグが立てられたときの緊張度合いが高い(不安レベルが高い)状態であると判断されたときは、リスク値が大きくなる方向に更新される。勿論、リスク値の更新は、リスクの種類毎に行われる。
【0083】
期待値およびリスク値を精度よく設定するために、次のような更新手法を採択するのが好ましい。まず、上述した走行ログに基づいて逐次取得される期待値(リスク値)を、仮の期待値(仮のリスク値)として順次記憶しておく。そして、直近の所定数分の仮の期待値(仮のリスク値)に基づいて、最終的に更新後の期待値(リスク値)として設定するのが好ましい。仮の期待値は、体験フラグが立てられたときの乗員の感情状態(活性度合い)に基づいて100点満点で決定される。また、仮のリスク値は、リスクフラグが立てられたときの乗員の心理状態(緊張度合い)に基づいて100点満点で決定される。
【0084】
所定数分の仮の期待値(仮のリスク値)に基づく更新後の期待値(リスク値)の算出は、例えば、所定数分の仮の期待値(仮のリスク値)の平均値とすることができる((移動平均値の採択)。また、所定数分の仮の期待値(仮のリスク値)のうち、新しい値ほど反映度合いが大きくなるように(古い値ほど反映度合いが小さくなるように)算出することもできる。このように、直近の複数の仮の期待値(仮のリスク値)に基づいて期待値(リスク値)の更新を行うことにより、ユーザの心境変化や成長に伴う傾向の変化に対して、極力忠実に追従した期待値(リスク値)とすることができる。
【0085】
傾向値としての期待値(リスク値)は、図6に示すように、実施形態では、走り慣れていない場所(経路)を対象としたハッピーモードと、通勤や買い物等で走り慣れている場所(経路)を対象とした日常モードの2種類が設定される。期待値(リスク値)は、ハッピーモードの方が日常モードよりも大きい値とされる。前述した期待値(リスク値)の更新は、ハッピーモードと日常モードとに分けて行うことができる。走行経路(トリップルート)が設定されていない状態での走行は、一般的に走り慣れた道を走行するときなので、楽しさも不安も感じずらいことから、結果的にハッピーモードの方が日常モードよりも期待値もリスク値も大きくなる。
【0086】
図6に、あるユーザについて、期待値とリスク値とを、ハッピーモードと日常モードに分けて設定した例が示される。傾向値のうち、ポジティブな体験に関する傾向値(期待値)については、ハッピーモードの傾向値から日常モードの傾向値を差し引いた値が大きいほど、ハッピーモードにおいてポジティブな体験をより十分に楽しめるということを意味する。また、リスクに関する傾向値(リスク値)については、ハッピーモードの傾向値から日常モードの傾向値を差し引いた値が大きいほど、ハッピーモードではより大きく不安を感じやすいということを意味する。なお、図6は、あるユーザを例にしたものであり、ユーザが相違すれば、傾向値は異なるものである。ユーザは、リスクを経験することにより、徐々に不安を感じなくなり(リスク値が低減されていく)、長期的には、期待値(の総計)がリスク値(の総計)よりも大きくなる経路が増大することになる。
【0087】
走行経路は、多数の区間を繋げることにより構成される。したがって、ハッピーモードと日常モードの使い分けを、各区間毎に行うことができる。なお、走り慣れている場所での走行距離(あるいは走行時間)が、走り慣れていない場所での走行距離(あるいは走行時間)よりも十分に短い場合は、走行経路の全体について、ハッピーモードでの期待値とリスク値とを採択することもできる。これとは逆に、走り慣れている場所での走行距離(あるいは走行時間)が、走り慣れていない場所での走行距離(あるいは走行時間)よりも十分に長い場合は、走行経路の全体について、日常モードでの期待値とリスク値とを採択することもできる。
(8)車両1と携帯端末20と管理装置30との間での情報授受について。
【0088】
図7図8は、車両1と携帯端末20と管理装置30との間で行われる情報授受を時系列的に示すものである。なお、以下の説明で、Pは車両1側での処理を示すステップ(処理部)であり、Qは携帯端末20での処理を示すステップ(処理部)であり、Rは管理装置30での処理を示すステップ(処理部)である。
【0089】
まず、図7のQ1において携帯端末20でのログインが行われる。管理装置30との間で認証が成立すると、Q2において、走行経路を提案するためのサービス画面が起動される。この後、Q3において、トリップ条件が入力される。トリップ条件としては、前述のように、出発地点と終了地点(目的地でもよい)と出発時間の他、適宜の条件、例えば寄り道したい施設、終了地点への到着希望時間等を入力することができる。
【0090】
管理装置30は、Q3での入力を受けて、R1において、トリップルート(走行経路)を決定して、データベースDB3に格納する。そして、決定されたトリップルートが、ヒートマップと共に携帯端末20へ送信される。携帯端末20は、Q4において、送信されてきたトリップルートとヒートマップを表示する。次いで、Q5において、トリップルートの確定処理が行われると、R2において、トリップルートとヒートマップとが車両1(のナビゲーション装置)へ送信される。
【0091】
車両1では、P1において、トリップルートとヒートマップとを受信する。なお、トリップルートとヒートマップは、管理装置30から、携帯端末20を介して間接的に車両1で取得させるようにしてもよい。
【0092】
P1の後、携帯端末20との間で認証が成立したことを条件として、図8に示す処理が行われる。まず、P2において、車両のイグニッションスイッチがONされると、P3において、ハッピーモードがONにされる。すなわち、設定された走行経路(トリップルート)に基づく走行時には、ハッピーモードがオンにされる。なお、手動でハッピーモードをONにするようにしてもよい。この後、P4において、トリップルートに基づいてナビゲート(経路案内)が行われる。
【0093】
P5において、ナビゲートされつつ走行している間、位置情報や車両情報等の前述した走行ログが随時取得される。取得された走行ログは、常時管理装置30へ常時送信されて、R3において、管理装置30において走行ログが蓄積される。
【0094】
P6において、トリップ終了地点でイグニッションスイッチをOFFすることにより、P7においてハッピーモードがOFFとされる。
【0095】
P7でのハッピーモードOFFの情報が、管理装置30へ送信される。これを受けて管理装置30では、R4において、各データから該当トリップに関するデータが抽出される。この後、R5において、区間毎のポジティブな体験、リスクを評価して、評価結果をデータベースDB3に記憶する。最後に、R6において、ユーザ毎の傾向値(期待値とリスク値)とを算出(更新値の算出)して、算出結果がユーザと紐付けられた状態でデータベースDB3に記憶される。
(9)フローチャートについて。
【0096】
図9は、管理装置30での制御内容のうち、走行経路の決定と、体験フラグおよびいいねボタンに対応してポジティブな体験が期待できる場所の設定と、リスクフラグに対応してリスクのある場所の設定とを行う処理内容に着目した制御例を示す。なお、以下の説明でTはステップを示す。なお、体験フラグとリスクフラグといいねボタンの各受信は、他車両からのものも含むものである。
【0097】
図9のT1において、データ入力された後、T2において、携帯端末20から走行経路の要求があるか否かが判別される。T2の判別でYESのときは、T3において、要求された内容に応じた複数の走行経路が選択される。この後、T4において、複数の走行経路毎に、期待値の総計とリスク値の総計とが算出される。T5では、期待値の総計がリスク値の総計よりも大きくて、かつリスク値がもっとも大きい1つの走行経路が決定される。T6では、T5で決定された走行経路が、携帯端末20を介してあるいは直接に車両1側へ送信される。
【0098】
前記T2の判別でNOのときは、T7において、T5で決定された走行経路にしたがって車両1が走行中であるか否かが判別される。T7の判別でYESのときは、T8において、体験フラグを受信したか否かが判別される。T8の判別でYESのときは、T9においてポジティブな体験が行われた場所がその分類(内容の区分け)と共に記憶される。
【0099】
T9の後、T10において、T9でのポジティブな体験場所とその分類と同じものが所定割合以上存在するか否かが判別される。具体的には、T10の判別においては、同一のポジティブな体験の分類について、同じ区間を通過した本システムのサービスを受ける所定台数以上の全車両数に対して、体験フラグを送信した車両数の割合が所定値以上であるか否かが判別される。T10の判別でYESのときは、T11において、ポジティブな体験場所がその分類と共に新たに設定(追加)される。
【0100】
T11の後、あるいはT10の判別でNOのときは、T12において、イグニッションスイッチがOFFされてか否かが判別される。T12の判別でNOのときはT1に戻る。T12の判別でYESのときは、T13において、期待値とリスク値との更新が行われる。
【0101】
前記T8の判別でNOのときは、T14において、いいねボタンが操作された旨の信号を受信したか否かが判別される。T14の判別でYESのときは、前述したT9以降の処理が行われる。
【0102】
上記T14の判別でNOのときは、T15において、リスクフラグを受信したか否かが判別される。このT15の判別でYESのときは、T16において、リスクの発生した場所(区間)が、リスクの分類と共に記憶される。
【0103】
T16の後、T17において、T16でのリスク発生場所とその分類とが同じものが所定割合以上存在するか否かが判別される。具体的には、T17においては、同一のリスクの分類について、同じ区間を通過した本システムのサービスを受ける所定台数以上の全車両数に対して、リスクフラグを送信した車両数の割合が所定値以上であるか否かが判別される。T17の判別でYESのときは、T18においてリスク発生場所がその分類と共に新たに設定(追加)される。
【0104】
T18の後、あるいはT17の判別でNOのときは、T12へ移行される。
【0105】
前記T7の判別でNOのとき、あるいはT15の判別でNOのときは、T1へ戻る。
【0106】
ここで、前記T10での判定条件を、同一分類のポジティブな体験について、所定期間内(例えば1~2ヶ月)に、所定台数(例えば20~30台)以上という多くの車両から体験フラグを受信したか否か(あるいは、いいねボタンが操作された車両数が上記所定台数以上であるか否か)、という条件に変更することもできる。また、前記T17での判定条件を、同一分類のリスクについて、所定期間内(例えば1~2ヶ月)に、上記所定台数以上という多くの車両からリスクフラグを受信したか否か、という条件に変更することもできる。
【0107】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。携帯端末20の機能の一部または全部を車両1側に持たせるようにしてもよい。車両1の運転者によって操作されや易い位置に「リスクボタン」を別途設けて、ある場所あるいはその付近でリスクボタンが操作されたことが所定回数以上検出されたときに、その場所をリスクのある場所として追加することもできる。リスクの分類は、例えば車両の挙動、車両の操作状況、およびカメラで取得された映像を用いて行うことができる。
【0108】
車両1側(ユーザ)に提示される走行経路が、期待値の総計がリスク値の総計よりも大きいことを前提として、リスク値の総計がもっとも大きくなる走行経路がユーザによって拒否された場合は、リスク値の総計が2番目に大きい走行経路を提示することもできる(2番目が拒否された場合は、3番目にリスク値の総計が大きい走行経路を提示する・・以下同じ)。
【0109】
走行経路を車両1側(ユーザ)に提示する場合に、ポジティブな体験ができる場所の映像を合わせて提示することもでき、この場合、ドライブにでかける意欲をより一層向上させる上で好ましいものとなる。また、走行経路を提示した際に、リスクのある場所の映像、特に、他車両においてリスクのある場所をスムーズに通過しているときの他車両の車室内から撮影した映像を提示することもでき、この場合、リスクのある場所をスムーズに通過するための運転操作をユーザに事前に学習させて、ドライブに出かける際の不安感を低下させる上で好ましいものとなる。
【0110】
走行経路を車両1側(ユーザ)に提示する場合に、走行経路周辺にあるポジティブな体験が場所の分布を示すヒートマップを合わせて提示することに代えてあるいは加えて、走行経路周辺にあるリスクのある場所の分布を示すリスクマップを合わせて提示ことができる。また、ユーザが、ヒートマップ上に示されたポジティブな体験ができる場所を通過するように希望する場合に、ユーザの希望条件(の変更)を受け入れて提示する走行経路を作成し直すこともできる。
【0111】
ユーザに提示する前に選択される複数の走行経路は、その行程全長に渡って相違するものでもよく、また一部あるいは大半が一致する経路であってもよい。管理装置30の機能は、機能名に手段の名称を付したものとして表現することができる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、ナビゲーション装置をより有効に利用する上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0113】
1:車両
15:演算装置
16:通信装置
20:携帯端末:
30:管理装置
31:通信装置
32:処理部
DB1~DB3:データベース
40:通信回線
図1
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図9