(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】上向流式横流沈殿池
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20240927BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240927BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20240927BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20240927BHJP
E03F 5/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D21/24 V
B01D21/01 A
B01D21/02 F
B01D21/02 S
B01D21/08 A
E03F5/14
(21)【出願番号】P 2019062565
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】金 公彦
【審判官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187303(JP,A)
【文献】特開2017-74539(JP,A)
【文献】実開昭54-79580(JP,U)
【文献】実開昭60-13205(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/56
B01D 21/00-21/34
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜板および/または傾斜管を設置した上向流式横流沈殿池において、傾斜板および/または傾斜管が設置された水面部に複数の溢流樋を設け、該溢流樋をラッシュ状膜体で囲繞することを特徴とする上向流式横流沈殿池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁物質を含有する原水を処理するための上向流式横流沈殿池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上向流式横流沈殿池としては、傾斜板および/または傾斜管を設置した横流沈殿池において、該傾斜板または傾斜管の上手側に、隣接するシート膜間に間隔を設けたシート膜を設置した横流沈殿池が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された上向流式横流沈殿池は、沈殿池に流入する水流を整流化して短絡流の発生を防止すると共に、汚濁物質の沈降も同時に行うことができ、さらに傾斜板あるいは傾斜管の閉塞も防止することができていた。
本発明者は、かかる横流沈殿池をさらに除濁効果を高めかつ長期間連続して運転できる上向流式横流沈殿池について種々研究を重ねた結果、本発明の上向流式横流沈殿池を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、傾斜板および/または傾斜管を設置した上向流式横流沈殿池において、傾斜板および/または傾斜管が設置された水面部に複数の溢流樋を設け、該溢流樋をラッシュ状膜体で囲繞してなる上向流式横流沈殿池である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の上向流式横流沈殿池によれば、原水の処理量を増大させることができると共に、原水中の汚濁物質の除去率を高めることができ、さらに長期間連続的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】傾斜板および/または傾斜管が設置された沈殿槽の側面図。
【
図7】ラッシュ状膜体が設置された溢流樋の側面図。
【
図8】傾斜板および/または傾斜管が設置された沈殿槽の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の上向流式横流沈殿池について説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
図1は、本発明の上向流式横流沈殿池の一態様を示す側断面を表す概略図であり、
図2はその平面図である。
【0009】
1は原水流入部、2は急速攪拌槽、3は緩速攪拌槽、4はシート膜を展張した整流沈殿槽、5は傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽、6は溢流樋、7は凝集剤供給管、8は汚濁物質を含有する原水供給管、9は連結されたシート膜、10はシート状膜、11はフロート、12は隣接するシート膜10との間の間隔、13は沈殿池の底部に沈積したスラッジ、14はスラッジ集水管、15はシート状膜10の両端を示す。
【0010】
河川等から取水した汚濁物質を含有する原水を、上向流式横流沈殿池の原水流入部1に導入し、同時に凝集剤供給管7より凝集剤溶液を導入する。この凝集剤溶液は、凝集溶液の外、凝集剤と本発明の沈殿槽のスラッジ集水管14から集水したスラッジ水で調整した溶液も使用することができる。
【0011】
原水導入部1で汚濁物質を含有する原水(以下「原水」という)と供給された凝集剤溶液とが混合され、急速攪拌槽2に導入され、ここで急速攪拌が行われ、さらに均一に混合される。急速攪拌槽2で混合された原水は、次に緩速攪拌槽3に導入され、緩速攪拌が行われ原水中の汚濁物質がフロック化される。緩速攪拌槽3で処理された原水は、次の連結されたシート膜9を水流に対して対向して複数条展張した整流沈殿槽4に導入される。
図3は連結されたシート膜9の正面図であり、
図4は該連結されたシート膜9の側面図である。この整流沈殿槽4に展張されるシート膜9は、
図3に示すようにシート膜10の上部にフロート11を設け、このフロート11を連結することによって構成することができる。この際隣結するシート膜10との間に間隔12を設けることが必要である。この間隔幅は、水流の速度にもよるが、一般的には5~10cmの間隔を設けることが好ましい。また連結されたシート膜9の前後の間隔は1.2~6mの間隔で設けることが好ましい。
【0012】
またこのシート膜10には、さらに整流効果を高めるために、整流孔を設けることもできる。そしてこの整流孔の総面積は、シート膜10の面積の6%程度が好適である。また整流孔の径は10cm程度が好適である。
さらにシート状膜10に整流効果を高める他の方法としては、
図5に示すようにシート状膜10の両端15を凹凸・非線形の波型にすることもできる。この波型の総面積はシート状膜状10の面積の6%程度が好適である。そして前記シート状膜10は、通常複数条展張することが好ましい。
【0013】
整流沈殿槽4を通過する原水はシート状膜10間の間隔12を通過することによって、またシート状膜10の整流孔(図示せず)を通過する時に整流化されると共に、フロック化された汚濁物質を沈降させる。
整流沈殿槽4を通過した原水は、次に傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽5に導入される。
【0014】
この沈殿槽5には、傾斜板および/または傾斜管の上部の水面部に溢流樋6を設け、該溢流樋6を囲繞するようにラッシュ状膜体16を設ける。
ラッシュ状膜体16としては
図6に示すように傾斜板および/または傾斜管17の上部水面部に設けられた溢流樋6を囲繞するようにラッシュ状膜体16を設ける。
ラッシュ状膜体16は例えば
図7に示すようにラッシュ状膜体16の両端にフロート18を設け溢流樋6を囲繞するように設置すればよい。
図8は
図6の平面図である。
【0015】
沈殿槽5に導入された原水は、ここで汚濁物質をフロック化させ、フロック化した汚濁物質を分離し、スラッジとして沈殿池5の底部に沈降堆積させる。
傾斜板および/または傾斜管17を通過した原水(処理水)は、さらにラッシュ状膜体16によって汚濁物質が除去され、清澄化した状態で溢流樋6から横流沈殿池外に排出される。
【0016】
ラッシュ状膜体16は結節網,無結節網,成形網等の合成または天然繊維から調製されたネット体、合成または天然繊維の細い紐状ものをリング状にして織り込んだ素材が用いられる。
【0017】
本発明の上向流式横流沈殿池と、ラッシュ状膜体16を有しない横流沈殿池を用いて原水(濁度358mg/L)の処理を行ったところ、本発明に係る上向流式横流沈殿池の溢流樋6部における濁度は0.5mg/Lであり、1ヶ月間連続運転することができた。一方ラッシュ状膜体16の設置していない上向流式横流沈殿池にあっては集水トラフ部における濁度は3であり、0.1ヶ月後には濁度が上昇し運転が不可能になったため、ろ過器の洗浄をおこなった。
【符号の説明】
【0018】
6・・・溢流樋
16・・・ラッシュ状膜体