(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】接合ツール、接合装置、及び、接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20240927BHJP
H01L 21/607 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240927BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B23K20/10
H01L21/607 C
H01L21/60 311T
H05K3/32 C
(21)【出願番号】P 2021040661
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】常政 慧
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-161345(JP,A)
【文献】特開2005-347505(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10151992(DE,A1)
【文献】特開2007-129123(JP,A)
【文献】特開2020-035859(JP,A)
【文献】特開平09-177600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
H01L 21/607
H01L 21/60
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物と接合対象物とを接合するための接合ツールであって、
ホーンと、
前記ホーンの一端側に設けられ、前記ホーンに超音波振動を付与する超音波振動子と、
前記ホーンの前記一端側と、前記一端側とは反対側の他端側との間に設けられ、前記接合対象物を保持するノズル部と、
前記ノズル部を加熱するヒータ部と、
前記ノズル部と前記超音波振動子との間に設けられ、流体が流通される冷却部と、を備え、
前記冷却部は、
前記冷却部の端面に設けられ、前記流体を導入するための第1導入口及び第2導入口と、
第1スリット溝、及び、前記第2導入口に対して前記第1スリット溝より遠い位置に設けられる第2スリット溝を含む、長尺なスリット溝が前記ホーンの短手方向に複数並んで配置されたスリット溝列と、
前記第1導入口から延びて形成され、前記スリット溝列が有する複数の前記スリット溝のそれぞれに連通する第1スリット溝連通部と、
前記第2導入口から延びて形成され、前記スリット溝列が有する前記第1スリット溝を含む1以上の前記スリット溝のそれぞれと連通し、かつ、前記第2スリット溝とは連通しない第2スリット溝連通部と、を有する、
接合ツール。
【請求項2】
前記第1スリット溝連通部及び前記第2スリット溝連通部は、複数の前記スリット溝の溝深さ方向に並んで設けられる、
請求項1に記載の接合ツール。
【請求項3】
前記第1スリット溝連通部及び前記第2スリット溝連通部は、前記ホーンの長手方向に並んで設けられる、
請求項1に記載の接合ツール。
【請求項4】
複数の前記スリット溝のそれぞれは、前記ホーンの前記一端側と前記ホーンの前記反対側とに長尺な開口を有し、
前記第1スリット溝連通部及び前記第2スリット溝連通部は、複数の前記スリット溝の前記開口の長手方向の中央より前記超音波振動子に近い位置に設けられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合ツール。
【請求項5】
前記第2スリット溝は、複数の前記スリット溝のうち前記第2導入口から最も遠い位置に設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の接合ツール。
【請求項6】
前記第1導入口及び前記第2導入口は、前記冷却部における同一の端面に設けられる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の接合ツール。
【請求項7】
前記第1スリット溝連通部及び前記第2スリット溝連通部は、前記開口の短手方向において前記冷却部を貫通していない、
請求項4に記載の接合ツール。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の接合ツールと、
保持部と、
前記接合ツールを昇降させることで、前記保持部に保持された前記被接合物と、前記接合ツールに保持された前記接合対象物とを前記接合ツールに接合させる昇降機構と、を備える、
接合装置。
【請求項9】
請求項8に記載の接合装置を用いて、前記接合対象物に超音波振動を付与し、且つ、前記第1スリット溝連通部及び前記第2スリット溝連通部のそれぞれに前記流体が流通された状態で前記接合対象物を加熱しながら、前記被接合物に前記接合対象物を超音波接合することで接合体を製造する、
接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被接合物と接合対象物とを接合するための接合ツール、当該接合ツールを備える接合装置、及び、当該接合装置を用いた接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波振動等を用いて基板等の被接合物に電子部品等の接合対象物を接合する接合装置は、接合対象物を被接合物に接合するためのボンディングツール(接合ツール)を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているボンディングツールは、超音波振動子と、当該超音波振動子からの超音波振動を伝達するホーンと、当該ホーンに設けられ、電子部品を保持する接合作用部(ノズル部)と、当該接合作用部を加熱するヒータと、を備える。
【0004】
これによれば、ボンディングツールによって電子部品を加熱しながら基板等に超音波接合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波振動子は、熱による影響を受けて劣化しやすい。そのため、特許文献1に開示されているボンディングツールが備えるホーンには、ヒータから超音波振動子への熱による影響を抑制するために、冷却部が設けられている。当該冷却部には、空気等の流体が流通するスリット形状の通気孔が複数設けられている。全ての通気孔は、縦穴を介して通気孔に空気を流通するための通気口と連通する構成になっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているボンディングツールでは、所望の冷却性能を得られないことがある。そのため、冷却性能のさらなる向上が望まれることがある。
【0008】
そこで、本開示は、冷却性能が向上した接合ツール、接合装置、及び、接合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る接合ツールは、被接合物と接合対象物とを接合するための接合ツールであって、ホーンと、前記ホーンの一端側に設けられ、前記ホーンに超音波振動を付与する超音波振動子と、前記ホーンの前記一端側と、前記一端側とは反対側の他端側との間に設けられ、前記接合対象物を保持するノズル部と、前記ノズル部を加熱するヒータ部と、前記ノズル部と前記超音波振動子との間に設けられ、流体が流通される冷却部と、を備え、前記冷却部は、前記冷却部の端面に設けられ、前記流体を導入するための第1導入口及び第2導入口と、第1スリット溝、及び、前記第2導入口に対して前記第1スリット溝より遠い位置に設けられる第2スリット溝を含む、長尺なスリット溝が前記ホーンの短手方向に複数並んで配置されたスリット溝列と、前記第1導入口から延びて形成され、前記スリット溝列が有する複数の前記スリット溝のそれぞれに連通する第1スリット溝連通部と、前記第2導入口から延びて形成され、前記スリット溝列が有する前記第1スリット溝を含む1以上の前記スリット溝のそれぞれと連通し、かつ、前記第2スリット溝とは連通しない第2スリット溝連通部と、を有する。
【0010】
また、本開示の一態様に係る接合装置は、上記の接合ツールと、保持部と、前記接合ツールを昇降させることで、前記保持部に保持された前記被接合物と、前記接合ツールに保持された前記接合対象物とを前記接合ツールに接合させる昇降機構と、を備える。
【0011】
また、本開示の一態様に係る接合体の製造方法は、上記の接合装置を用いて、前記接合対象物に超音波振動を付与し、且つ、前記第1スリット溝連通部及び前記第2スリット溝連通部のそれぞれに前記流体が流通された状態で前記接合対象物を加熱しながら、前記被接合物に前記接合対象物を超音波接合することで接合体を製造する。
【0012】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、冷却性能が向上した接合ツール等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る接合装置を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る接合ツールを示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線における、実施の形態に係る接合ツールの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線における、実施の形態に係る冷却部の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のIII-III線における、実施の形態に係る接合ツールの他の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2のIV-IV線における、実施の形態に係る接合ツールのさらに他の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、各接合ツールにおける表面温度の解析結果を示す図である。
【
図8】
図8は、比較モデルの接合ツールにおける各スリット溝の温度の解析結果を示す図である。
【
図9】
図9は、第1モデルの接合ツールにおける各スリット溝の温度の解析結果を示す図である。
【
図10】
図10は、第2モデルの接合ツールにおける各スリット溝の温度の解析結果を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る接合装置による接合体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態等の説明に先立ち、本開示に至った経緯について説明する。
【0016】
上記の「発明が解決しようとする課題」で説明したように、特許文献1に開示されているボンディングツール(接合ツール)では、所望の冷却性能が得られない場合がある。例えば、通気口近傍の通気孔よりも通気口から離れた位置に設けられた通気孔に多くの流体が流通し、各通気孔に均等に流体が分配されないので、通気口から離れた通気孔では所望の冷却性能が得られない場合がある。
【0017】
また、近年、大型の電子部品等を基板等に接合するためにボンディングツールを用いることが検討されている。そこで、大型の電子部品等に対応したボンディングツールの開発が行われているが、従来と同じ接合エネルギーでは接合力不足となることが懸念されている。従って、実装時の加熱温度の上限の引上げが必要となるが、超音波振動子の耐熱温度が制約条件となり、今まで以上の冷却性能をもたせないと加熱温度の上限の引上げを実現できない課題がある。
【0018】
特許文献1のボンディングツールのように、通気口から離れた通気孔において所望の冷却性能が得られない場合、大型の電子部品等に対応したボンディングツールの実現が困難である。そのため、大型の電子部品等に対応したボンディングツールを実現する観点からも、冷却性能が向上したボンディングツールの実現が望まれている。
【0019】
そこで、本願発明者は、冷却性能を向上することが可能な接合ツール等について鋭意検討を行い、以下に示す接合ツール等を創案した。
【0020】
以下では、本開示の実施の形態に係る接合装置等について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ及びステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0021】
また、各図は、模式図であり、縮尺、寸法等必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0022】
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸、及び、Z軸は、三次元直交座標系の三軸を表している。X軸及びY軸は、互いに直交し、且つ、いずれもZ軸に直交する軸である。また、以下の実施の形態では、Z軸プラス方向を上方とし、Z軸マイナス方向を下方として記載する場合がある。
【0023】
また、本明細書において、同じなどの要素間の関係性を示す用語、および、長尺形状、矩形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0024】
(実施の形態)
[1.接合装置の構成]
まず、本実施の形態に係る接合装置の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態に係る接合装置200を示す概略側面図である。
【0025】
接合装置200は、ディスプレイパネル等を生産するための部品実装システムであり、接合対象物310に超音波振動を付与し、且つ、接合対象物310を加熱しながら、被接合物320に接合対象物310を接合することで接合体300を製造する装置である。具体的には、接合装置200は、超音波振動する接合ツール100を備え、接合ツール100が有するノズル部130を超音波振動子120によって超音波振動させながら、ノズル部130が保持している接合対象物310を被接合物320の被接合面321(具体的には、上面)に実装することで接合体300を製造する。
【0026】
接合対象物310としては、例えば、TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuits)等のフレキシブル基板が例示される。
【0027】
被接合物320としては、例えば、ディスプレイパネル等の基板が例示される。
【0028】
接合体300としては、例えば、電子部品が実装されたディスプレイパネルが例示される。
【0029】
なお、接合対象物310、被接合物320、及び、接合体300は、上記の例に限定されない。
【0030】
接合装置200は、昇降機構10と、昇降部材20と、保持部30と、位置決めテーブル40と、真空吸引源50と、吸引管路51と、振動子駆動部60と、流体供給源70と、コンピュータ80と、接合ツール100と、を備える。接合ツール100は、ホーン110と、超音波振動子120と、ノズル部130と、ヒータ部140と、を備える。ホーン110は、冷却部150を備える。
【0031】
昇降機構10は、接合ツール100を昇降させる装置である。具体的には、昇降機構10は、上下方向(本実施の形態では、Z軸方向)に可動な装置であり、下方に接合ツール100が取り付けられた昇降部材20が接続されており、昇降部材20を上下に移動させることで、接合ツール100を上下させる。昇降機構10は、接合ツール100を昇降させることで、保持部30に保持された被接合物320と、接合ツール100に保持された接合対象物310とを接合ツール100に接合させる。昇降機構10は、例えば、シリンダである。
【0032】
昇降部材20は、昇降機構10及び接合ツール100と接続された接続部材である。昇降部材20は、例えば、下方に延びた4つの延出部21を有し、4つの延出部21で接合ツール100と接続されている。
【0033】
保持部30は、被接合物320が載置される台である。保持部30は、例えば、図示しない真空吸引するための吸引口を有し、当該吸引口を介して被接合物320を真空吸引することで保持する。
【0034】
位置決めテーブル40は、保持部30が載置される台である。位置決めテーブル40は、移動可能に構成されており、移動することで上面に位置する保持部30を移動させる。位置決めテーブル40は、例えば、多段型の移動テーブルであり、保持部30に保持させた被接合物320を水平面内(本実施の形態では、XY平面内)及び上下方向に移動させる。位置決めテーブル40の上方には、位置決めテーブル40に固定された保持部30、接合ツール100、接合ツール100と接続された昇降部材20、及び、昇降部材20が接続された昇降機構10がこの順で位置する。
【0035】
真空吸引源50は、空気を真空吸引する装置である。真空吸引源50には、吸引管路51が接続されている。
【0036】
吸引管路51は、真空吸引源50とノズル部130とを接続する管である。吸引管路51は、例えば、ホーン110の内部を経由してノズル部130と接続されている。真空吸引源50は、吸引管路51内の空気を真空吸引することで、ノズル部130に接合対象物310を真空吸着させる。
【0037】
振動子駆動部60は、超音波振動子120を振動させるための電源部である。例えば、振動子駆動部60は、超音波振動子120と電気的に接続された電源回路であり、図示しない外部電源等からの電力を変換して超音波振動子120に供給することで超音波振動子120を振動させる。
【0038】
流体供給源70は、ホーン110が備える冷却部150に冷却するための流体を供給する装置である。流体は、冷却部150を冷却することができればよく、液体、気体等、特に限定されない。本実施の形態では、流体は、空気(より具体的には、圧縮空気)であり、流体供給源70は、空気を冷却部150に供給するためのガス供給源である。冷却部150には、流体供給源70からの流体が流通される。
【0039】
流体供給源70は、例えば、後述する第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180(例えば、
図4を参照)のそれぞれに同一の流体を供給する。例えば、流体供給源70は、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに圧縮空気を供給する。また、流体供給源70は、例えば、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに同一の流量の流体を供給してもよいし、互いに異なる流量の流体を供給してもよい。
【0040】
コンピュータ80は、接合装置200の動作を制御するための制御装置(コンピュータ)である。コンピュータ80は、昇降機構10、位置決めテーブル40、真空吸引源50、振動子駆動部60、流体供給源70、及び、接合ツール100と、無線通信可能に、又は、制御線等により有線通信可能に接続されており、各装置を制御する。コンピュータ80は、各装置と通信するための通信インターフェース、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、信号の送受信をするための入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサ等で実現される。
【0041】
コンピュータ80は、接合対象物310を被接合物320の被接合面321に接合する場合、保持部30に被接合物320を保持させ、位置決めテーブル40を制御することで接合対象物310を保持したノズル部130の下方に被接合面321を位置させる。被接合面321のうち接合対象物310が接合される箇所には、予め半田が塗布されている。
【0042】
コンピュータ80は、位置決めテーブル40を制御することで接合対象物310の下方に被接合面321を位置させた後に、昇降機構10を制御することで昇降部材20(つまり、接合ツール100)を下降させ、接合対象物310を被接合面321に押し付ける。
【0043】
また、コンピュータ80は、振動子駆動部60、流体供給源70、及び、ヒータ部140を制御することで、ヒータ部140によってノズル部130を加熱しつつ、且つ、流体供給源70からの圧縮空気によって冷却部150を冷却させて超音波振動子120にヒータ部140からの熱が伝わらないようにしながら、超音波振動子120を作動させてホーン110に超音波振動子120からの超音波振動を付与する。これにより、ノズル部130は、加熱された状態で、接合対象物310を吸着したままホーン110の長手方向に振動する。したがって、接合対象物310には、ノズル部130から熱が伝えられた状態で、被接合面321への押付け力と超音波振動とが同時に作用する。そのため、接合対象物310は、半田によって被接合面321に効率よく接合される。
【0044】
[2.接合ツールの構成]
続いて、接合ツール100の構成について、
図2~
図6を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係る接合ツール100は、冷却部150に形成された複数のスリット溝160に流体を導入するためのスリット溝連通部の数及び長さ又は形状に特徴を有する。
【0045】
図2は、本実施の形態に係る接合ツール100を示す概略斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線における、本実施の形態に係る接合ツール100の一例を示す断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線における、本実施の形態に係る冷却部150の一例を示す断面図である。なお、
図2は、接合ツール100が昇降部材20に取り付けられている状態を示している。また、
図3~
図6は、接合ツール100の断面を示しており、昇降部材20等の図示を省略している。
【0046】
接合ツール100は、被接合物320と接合対象物310とを接合するための接合ツールである。具体的には、接合ツールは、被接合物320に接合対象物310を超音波接合するための接合ツールである。接合ツール100は、ホーン110と、超音波振動子120と、ノズル部130と、ヒータ部140と、冷却部150とを備える。
【0047】
ホーン110は、超音波振動子120で発生された超音波振動をノズル部130に伝達するための超音波ホーンである。ホーン110は、長尺形状(言い換えると、棒状)である。本実施の形態では、ホーン110は、X軸方向に延在している。
【0048】
ホーン110は、例えば、金属等の弾性を有する材料から構成されている。ホーン110は、昇降部材20に連結されており、水平方向に延びた姿勢が維持されている。
【0049】
ホーン110の長手方向(本実施の形態では、X軸方向)の中間部には、ホーン110の両側面から側方に張り出した4つの連結部113が設けられている。4つの連結部113のそれぞれには、上下方向に貫通したボルト孔が設けられている。当該ボルト孔には、下方から連結ボルト(不図示)が挿入される。当該連結ボルトは、昇降部材20の延出部21の下面に開口した螺子穴に螺入される。これにより、ホーン110は、昇降部材20に取り付けられている。
【0050】
ホーン110の両端部は、それぞれ自由端である。超音波振動子120は、ホーン110の2つの自由端のうちの一端側(本実施の形態では、X軸プラス方向側に位置する端部側)に取り付けられており、ヒータ部140は、超音波振動子120とは反対側の他端側(本実施の形態では、X軸マイナス方向側に位置する端部側)に取り付けられている。言い換えると、一端側は、ホーン110の長手方向における超音波振動子120が配置される側であり、他端側は、ホーン110の長手方向におけるヒータ部140が配置される側である。ノズル部130は、ホーン110の一端側と、一端側とは反対側の他端側との間に設けられる。例えば、ノズル部130は、ホーン110の長手方向における中央部に配置されている。ノズル部130と超音波振動子120との間に位置するホーン110の一部には、冷却部150が設けられている。
【0051】
冷却部150は、ホーン110に設けられ、ヒータ部140からの熱が超音波振動子120に伝達することを抑制するための冷却機構である。冷却部150は、複数のスリット溝160を有する。
【0052】
スリット溝160には、流体供給源70からの圧縮空気等の流体が供給される。これにより、冷却部150は、スリット溝160に流体が流入されることで冷却される。スリット溝160は、ヒータ部140からの熱が超音波振動子120に伝達することを抑制するための冷却溝である。
【0053】
複数のスリット溝160は、ホーン110の冷却部150に形成された長尺なスリット形状の溝である。複数のスリット溝160のそれぞれは、いずれもY軸方向に冷却部150を貫通する貫通孔である。複数のスリット溝160のそれぞれは、複数のスリット溝160のそれぞれの溝深さ方向(本実施の形態では、Y軸方向)に冷却部150を貫通している。
【0054】
複数のスリット溝160は、ホーン110の短手方向(本実施の形態では、Z軸方向)に複数並んで設けられたスリット溝列である。複数のスリット溝160は、開口161の短手方向(本実施の形態では、Z軸方向)に並んで設けられるとも言える。例えば、本実施の形態では、複数のスリット溝160は、ホーン110の長手方向と直交する方向(本実施の形態では、Z軸方向)に並んで配置されている。
【0055】
複数のスリット溝160のそれぞれは、長尺な開口161を有するスリット形状の溝である。複数のスリット溝160のそれぞれは、ホーン110の一端側とホーン110の反対側とに長尺な開口161を有するとも言える。本実施の形態では、開口161は、いずれもホーン110の長手方向(X軸方向)に長尺な矩形状である。つまり、本実施の形態では、開口161の短手方向は、いずれもZ軸方向である。開口161の短手方向(スリット幅方向とも記載する)は、昇降機構10の動作(昇降)方向(Z軸方向)に平行な方向である。また、本実施の形態では、スリット幅方向は、ノズル部130とホーン110との並び方向(Z軸方向)に平行な方向でもある。
【0056】
複数のスリット溝160は、第1スリット溝162、及び、第2導入口181に対して第1スリット溝162より遠い位置に設けられる第2スリット溝163を含む。本実施の形態では、第1スリット溝162は、Z軸プラス側から2つめのスリット溝160であるがこれに限定されず、第2導入口181から最も遠い位置に設けられているスリット溝160以外のスリット溝160であればよい。また、本実施の形態では、第2スリット溝163は、複数のスリット溝160のうち第2導入口181から最も遠い位置に設けられているがこれに限定されない。なお、本実施の形態では、5つのスリット溝160が形成されている例について図示しているが、スリット溝160の数は2以上であれば特に限定されない。
【0057】
また、
図3及び
図4に示すように、ホーン110(より具体的には、冷却部150)は、第1スリット溝連通部170、第1導入口171、第2スリット溝連通部180及び第2導入口181を有する。
【0058】
第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、流体供給源70からの流体を冷却部150に流通させるために冷却部150内に設けられる孔である。第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、複数のスリット溝160の溝深さ方向(本実施の形態では、Y軸方向)に並んで設けられる。第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、例えば、複数のスリット溝160の溝深さ方向に一直線上に設けられる。
【0059】
第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、例えば、Z軸方向に沿って直線状に設けられる。第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、Z軸方向に沿った直線状の形状を有するとも言える。第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、例えば、互いに平行に設けられる。また、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、開口161の短手方向においてホーン110(より具体的には、冷却部150)を貫通していない。
【0060】
第1スリット溝連通部170は、第1導入口171と、第1スリット溝162及び第2スリット溝163を含む複数のスリット溝160のそれぞれとを連通する孔である。第1スリット溝連通部170は、開口161の短手方向(Z軸方向)に延在している。第1スリット溝連通部170は、第1導入口171から延びて形成され、複数のスリット溝160のそれぞれに連通する。
【0061】
また、第1スリット溝連通部170は、複数のスリット溝160のうち第1導入口171から最も離れたスリット溝160(本実施の形態では、最もZ軸マイナス方向側に位置する第2スリット溝163)まで到達している。また、第1スリット溝連通部170は、例えば、大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)が一定な孔である。第1スリット溝連通部170の断面視形状は、例えば、矩形状である。内径は、例えば、
図4におけるY軸方向の長さである。
【0062】
このような第1スリット溝連通部170は、複数のスリット溝160のそれぞれに流体供給源70からの流体を供給可能である。
【0063】
第1導入口171は、第1スリット溝連通部170を介して複数のスリット溝160のそれぞれと連通し、複数のスリット溝160のそれぞれに流体供給源70から供給された流体を導入するための開口である。第1導入口171は、冷却部150における開口161の短手方向の端面151(本実施の形態では、Z軸マイナス方向側の端面151)に設けられている。第1導入口171は、例えば、開口161よりも開口が大きい。
【0064】
第2スリット溝連通部180は、第2導入口181と、第1スリット溝162及び第2スリット溝163のうち第1スリット溝162を含む1以上のスリット溝160のそれぞれとを連通する孔である。第2スリット溝連通部180は、開口161の短手方向に延在している。第2スリット溝連通部180は、例えば、第2導入口181から延びて形成され、複数のスリット溝160が有する第1スリット溝162を含む1以上のスリット溝160のそれぞれを連通し、かつ、第2スリット溝163とは連通していない。第2スリット溝連通部180は、複数のスリット溝160のうち第2導入口181から最も離れたスリット溝160(本実施の形態では、最もZ軸マイナス方向側に位置する第2スリット溝163)まで到達していないとも言える。
【0065】
第2スリット溝連通部180は、Z軸方向の長さ(孔の深さ)が第1スリット溝連通部170より短いとも言える。第2スリット溝連通部180が連通するスリット溝160の数は、第1スリット溝連通部170が連通するスリット溝160の数より少ない。
【0066】
また、第2スリット溝連通部180は、例えば、大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)がZ軸方向に沿って一定な孔である。第2スリット溝連通部180の断面視形状は、例えば、矩形状である。
【0067】
このような第2スリット溝連通部180は、複数のスリット溝160のうち、第2導入口181と第1スリット溝162との間に設けられるスリット溝160(本実施の形態では、第1スリット溝162を含む、Z軸プラス側の2つのスリット溝160)のそれぞれに流体供給源70からの流体を供給可能である。言い換えると、第2スリット溝連通部180は、第2スリット溝163には流体供給源70からの流体を供給不可能である。第2スリット溝連通部180は、第1スリット溝162より第2スリット溝163側のスリット溝160(本実施の形態では、第2スリット溝163を含む、Z軸マイナス側の3つのスリット溝160)には流体供給源70からの流体を供給不可能である。
【0068】
第2導入口181は、第2スリット溝連通部180を介して複数のスリット溝160のうち第2導入口181から第1スリット溝162までのそれぞれと連通し、当該それぞれに流体供給源70から供給された流体を導入するための開口である。第2導入口181は、冷却部150における開口161の短手方向の端面151(本実施の形態では、Z軸マイナス方向側の端面151)に設けられている。第2導入口181は、例えば、開口161よりも開口が大きい。第2導入口181は、例えば、第1導入口171と大きさが同じであるが、互いに異なっていてもよい。第2導入口181は、第2スリット溝連通部180を介して複数のスリット溝160のうち第2導入口181から第1スリット溝162までのそれぞれと連通している。
【0069】
図3に示すように、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、例えば、複数のスリット溝160の開口161の長手方向の中央より超音波振動子120に近い位置に配置される。第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、例えば、当該中央と超音波振動子120との間であって、超音波振動子120に近い位置に配置されてもよい。また、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、例えば、ホーン110の内部では互いに連通していない。また、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、複数のスリット溝160の溝深さ方向に並んで設けられる。また、例えば、第1導入口171及び第2導入口181は、複数のスリット溝160の溝深さ方向に並んで設けられる。
【0070】
図4に示すように、ホーン110の端面(具体的には、冷却部150の端面151)には、流体供給源70からの流体を導入するための第1導入口171及び第2導入口181が設けられている。本実施の形態では、第1導入口171及び第2導入口181は、冷却部150における同一の端面151に設けられるがこれに限定されない。
【0071】
また、超音波振動子120が配置される凹部112のX軸マイナス方向側の端部は、例えば、複数のスリット溝160の少なくとも1つと連通していてもよい。超音波振動子120のX軸マイナス方向側の端部は、例えば、スリット溝160を形成するための一部として構成されてもよい。なお、凹部112は、複数のスリット溝160のそれぞれと連通しないように設けられてもよい。
【0072】
超音波振動子120は、ホーン110の長手方向におけるホーン110の一端側に設けられ、ホーン110に振動を付与する超音波振動子である。超音波振動子120は、振動子駆動部60からの電力の供給を受けて作動し、ホーン110に超音波振動を付与する。
【0073】
超音波振動子120から超音波振動が与えられたホーン110は、長手方向に振動(縦振動)し、ホーン110に定在波が生じさせる。
【0074】
ホーン110の両端部は、それぞれ自由端であるので、それぞれホーン110に生じた定在波の腹となる。ホーン110は、超音波振動子120から付与された超音波振動の振動数に応じて、2つの腹(つまり、2つの自由端)の間に定在波の節を1つ有する基本振動、又は、当該2つの腹の間に複数(例えば、2つ)の節を有する倍振動の振動モードを生じる。例えば、超音波振動子120からホーン110に付与される超音波振動によって、ホーン110に基本振動の振動モードの定在波が生じる。
【0075】
なお、実際の設計過程では、任意の共振周波数(超音波振動子120が発振する振動数)、ホーン110の材料の特性(ヤング率、密度等)及び形状等から、所望の振動をホーン110に生じさせるためのホーン110のサイズ(長さ)が決定される。本実施の形態では、ホーン110は、棒状(より具体的には、略直方体)である。
【0076】
冷却部150のサイズは、ホーン110のサイズ、任意の共振周波数、冷却部150の形状等から、超音波振動子120の耐温度を満足する冷却性能を確保できるサイズが決定される。
【0077】
超音波振動子120は、冷却部150に設けられた凹部112に嵌合されて配置されている。
【0078】
ノズル部130は、ホーン110の一端側と、当該一端側とは反対側の他端側の間に設けられ接合対象物310を保持するノズルである。具体的には、ノズル部130は、接合対象物310を吸着し、被接合物320に接合する。また、本実施の形態では、ノズル部130は、ホーン110の長手方向の中央部であり、且つ、ホーン110の下側で、ホーン110に取り付けられている。
【0079】
ノズル部130は、真空吸引源50と吸引管路51を介して接続されている。これにより、真空吸引源50が作動されることで、ノズル部130は、接合対象物310を真空吸着する。
【0080】
なお、本実施の形態では、ノズル部130の形状は、平面視で格子状の吸引口が形成された平板状であるが、特に限定されない。
【0081】
ヒータ部140は、ノズル部130を加熱するためのヒータである。本実施の形態では、ヒータ部140は、ホーン110の端部(上記した他端側)に配置されており、ホーン110を介してノズル部130を加熱する。
【0082】
なお、冷却部150に設けられるスリット溝連通部の並び方向は、スリット溝160の溝深さ方向に限定されない。冷却部150の他の一例について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、
図3は、
図2のIII-III線における、本実施の形態に係る接合ツール100の他の一例を示す断面図である。
【0083】
図5に示すように、接合ツール100のホーン110(より具体的には、冷却部150)は、第1スリット溝連通部170a、第1導入口171a、第2スリット溝連通部180a、第2導入口181a、第3スリット溝連通部190及び第3導入口191を有する。
【0084】
第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190は、例えば、ホーン110の長手方向(本実施の形態では、X軸方向)に並んで設けられる。また、例えば、第1導入口171a、第2導入口181a及び第3導入口191は、ホーン110の長手方向に並んで設けられる。なお、ホーン110の長手方向に並んで設けられるスリット溝連通部の数は3つに限定されず、2つ以上であればよい。
【0085】
第1スリット溝連通部170a、第1導入口171a、第2スリット溝連通部180a及び第2導入口181aのそれぞれは、
図4に示す第1スリット溝連通部170、第1導入口171、第2スリット溝連通部180及び第2導入口181のそれぞれと設けられる位置以外は同様の構成であり、説明を省略する。
【0086】
第3スリット溝連通部190は、第3導入口191と、第1スリット溝162、第2スリット溝163及び第3スリット溝164のうち第1スリット溝162及び第3スリット溝164を含む2以上のスリット溝160のそれぞれとを連通する孔である。第3スリット溝連通部190は、開口161の短手方向に延在している。第3スリット溝連通部190は、第3導入口191から延びて形成され、複数のスリット溝160が有する第1スリット溝162及び第3スリット溝164を含む2以上のスリット溝160のそれぞれを連通し、かつ、第2スリット溝163とは連通していない。
【0087】
また、第3スリット溝連通部190は、複数のスリット溝160のうち第3導入口191から最も離れたスリット溝160(本実施の形態では、最もZ軸マイナス方向側に位置する第2スリット溝163)まで到達していない。第3スリット溝連通部190は、Z軸方向の長さが、第1スリット溝連通部170aより短く、かつ、第2スリット溝連通部180aより長い。また、第3スリット溝連通部190は、例えば、大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)がZ軸方向に沿って一定な孔である。第3スリット溝連通部190の断面視形状は、例えば、矩形状である。
【0088】
このような第3スリット溝連通部190は、複数のスリット溝160のうち、第3導入口191と第3スリット溝164との間に設けられるスリット溝160(本実施の形態では、第1スリット溝162及び第3スリット溝164を含む、Z軸プラス側の3つのスリット溝160)のそれぞれに流体供給源70からの流体を供給可能である。言い換えると、第3スリット溝連通部190は、第2スリット溝163には流体供給源70からの流体を供給不可能である。第3スリット溝連通部190は、第3スリット溝164より第2スリット溝163側のスリット溝160(本実施の形態では、第2スリット溝163を含む、Z軸マイナス側の2つのスリット溝160)には流体供給源70からの流体を供給不可能である。
【0089】
なお、第3スリット溝164は、Z軸方向において、第1スリット溝162及び第2スリット溝163の間に設けられるスリット溝である。本実施の形態では、第3スリット溝164は、Z軸プラス側から3つめのスリット溝であるがこれに限定されず、第2導入口181から最も遠い位置に設けられているスリット溝と第1スリット溝162との間に設けられるスリット溝であればよい。なお、
図5の例では、5つのスリット溝160が設けられている例について図示しているが、スリット溝160の数は3以上であれば特に限定されない。
【0090】
第3導入口191は、第3スリット溝連通部190を介して複数のスリット溝160のうち第3導入口191から第3スリット溝164までの2以上のスリット溝160のそれぞれと連通し、当該それぞれに流体供給源70から供給された流体を導入するための開口である。第3導入口191は、冷却部150における開口161の短手方向の端面151(本実施の形態では、Z軸マイナス方向側の端面151)に設けられている。第3導入口191は、例えば、開口161よりも開口が大きい。第3導入口191は、例えば、第1導入口171及び第2導入口181と大きさが同じであるが、互いに異なっていてもよい。第3導入口191は、第3スリット溝連通部190を介して複数のスリット溝160のうち第3導入口191から第3スリット溝164までのスリット溝160のそれぞれと連通している。
【0091】
第1導入口171a、第2導入口181a及び第3導入口191のそれぞれは、例えば、冷却部150における同一の端面151に設けられるがこれに限定されない。
【0092】
第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190は、例えば、超音波振動子120側からこの順に設けられる。第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190のうち、Z軸方向の長さが最も長い第1スリット溝連通部170aが、超音波振動子120に最も近い位置に設けられる。また、第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190のうち、Z軸方向の長さが最も短い第2スリット溝連通部180aが、ヒータ部140に最も近い位置に設けられる。
【0093】
第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190は、例えば、等間隔に配置されるが、これに限定されない。また、第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190は、例えば、ホーン110の長手方向に一直線状に設けられるが、例えば、ジグザグ状に設けられてもよい。なお、冷却部150が有するスリット溝連通部の配置はこれに限定されない。例えば、第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190のうち、Z軸方向の長さが最も短い第2スリット溝連通部180aが、超音波振動子120に最も近い位置に設けられてもよい。
【0094】
なお、冷却部150に設けられるスリット溝連通部の数及び形状は、これに限定されない。冷却部150のさらに他の一例について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、
図3は、
図2のIV-IV線における、実施の形態に係る接合ツール100のさらに他の一例を示す断面図である。
【0095】
図6に示すように、接合ツール100のホーン110(より具体的には、冷却部150)は、第1スリット溝連通部170b及び第1導入口171bを有する。つまり、冷却部150は、1つのスリット溝連通部を有する。
【0096】
第1スリット溝連通部170bは、第1導入口171bと、第1スリット溝162及び第2スリット溝163を含む複数のスリット溝160のそれぞれとを連通する孔である。第1スリット溝連通部170bは、開口161の短手方向(Z軸方向)に延在している。第1スリット溝連通部170bは、第1導入口171bから延びて形成され、複数のスリット溝160のそれぞれに連通する。また、第1スリット溝連通部170bは、複数のスリット溝160のうち第1導入口171bから最も離れたスリット溝160(本実施の形態では、最もZ軸マイナス方向側に位置する第2スリット溝163)まで到達している。
【0097】
第1スリット溝連通部170bは、例えば、大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)がZ軸方向に沿って一定ではない孔である。第1スリット溝連通部170bは、例えば、第2スリット溝163における大きさ(例えば、内径)が、第1導入口171bに対して第2スリット溝163より近い位置に設けられる第1スリット溝162における大きさ(例えば、内径)より小さい。
【0098】
第1スリット溝連通部170bは、例えば、第1導入口171bから遠ざかる(第1導入口171bからZ軸マイナス方向に進む)につれて大きさが段階的に小さくなるように設けられてもよい。例えば、第1スリット溝連通部170bは、Z軸方向に隣り合うスリット溝160の間において、大きさが小さくなるような段差部172を有する。段差部172は、例えば、周上(例えば、円周上)に設けられる。段差部172は、第1スリット溝連通部170bにおいて、第1内径を有する部分と、当該第1の内径より小さい第2の内径を有する部分とを接続する接続部であるとも言える。
【0099】
段差部172は、例えば、第1導入口171bから第2スリット溝163に向けて流れる流体の一部をスリット溝160に流す、例えば、Z軸マイナス方向に流れる流体の一部を当該Z軸マイナス方向と直交する方向に流す機能を有する。段差部172は、例えば、Z軸方向に隣り合うスリット溝160の間のそれぞれに設けられる。第1スリット溝連通部170bの断面視形状は、例えば、階段状である。
【0100】
このような第1スリット溝連通部170bは、複数のスリット溝160のそれぞれに流体供給源70からの流体を供給可能である。第1スリット溝連通部170bは、大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)がZ軸方向に沿って一定である場合に比べて、各スリット溝160により均等に流体を流すことができる。
【0101】
なお、第1スリット溝連通部170bは、例えば、第1導入口171bから遠ざかる(第1導入口171bからZ軸マイナス方向に進む)につれて大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)が小さくなるように設けられてもよい。第1スリット溝連通部170bは、例えば、第1導入口171bから遠ざかるにつれ漸次縮径するように設けられてもよい。第1スリット溝連通部170bの断面視形状は、例えば、テーパ状であってもよい。
【0102】
第1導入口171bは、第1スリット溝連通部170bを介して複数のスリット溝160のそれぞれと連通し、複数のスリット溝160のそれぞれに流体供給源70から供給された流体を導入するための開口である。第1導入口171bは、冷却部150における開口161の短手方向の端面151(本実施の形態では、Z軸マイナス方向側の端面151)に設けられている。第1導入口171bは、例えば、開口161よりも開口が大きい。第1導入口171bの大きさは、例えば、第1スリット溝連通部170bにおける大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)が最大となる大きさと同じであってもよい。
【0103】
なお、第1スリット溝連通部170bは、1つであることに限定されず、複数設けられてもよい。第1スリット溝連通部170bが複数設けられる場合、第1スリット溝連通部170bのZ軸方向の長さは、互いに異なっていてもよいし、互いに同じであってもよい。複数の第1スリット溝連通部170bの少なくとも1つは、第1導入口171bから最も離れたスリット溝160(本実施の形態では、最もZ軸マイナス方向側に位置する第2スリット溝163)まで到達していればよい。
【0104】
[3.冷却性能]
続いて、上記のように構成された冷却部150を備える接合ツール100における冷却性能について、
図7~
図10を参照しながら説明する。
図7は、各接合ツール100における表面温度の解析結果(シミュレーション結果)を示す図である。冷却部150に設けられるスリット溝160は、5つである(
図2等を参照)とする。
【0105】
比較モデルは、5つのスリット溝160のそれぞれに連通するスリット溝連通部であって、大きさ(XY平面上の大きさであり、例えば内径)が一定であるスリット溝連通部を1つ有する構成の冷却部を示すモデルである。第1モデルは、
図4に示す第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180を有する構成の冷却部150を示すモデルである。第2モデルは、
図5に示す第1スリット溝連通部170a、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190を有する構成の冷却部150を示すモデルである。第3モデルは、
図6に示す第1スリット溝連通部170bを有する構成の冷却部150を示すモデルである。比較モデルと第3モデルとは、スリット溝連通部の位置及び数が同じであり、スリット溝連通部の形状(例えば、断面形状)が異なる。
【0106】
また、
図2に示すように、A点は、ホーン110のX軸プラス側の端面の表面上(具体的には、冷却部150のX軸プラス側の端面の表面上であり、超音波振動子120が取り付けられる面上)の点であり、B点は、ノズル部130のZ軸マイナス側の表面上の点であり、C点は、ホーン110のX軸マイナス側の端面の表面上の点である。A点の温度が下がるほど冷却性能が高いことを意味する。
【0107】
また、出口流速平均は、流体供給源70から冷却部150に流体を供給したときの、5つのスリット溝160の開口161それぞれから排出される流体の流速の平均値を示す。出口流速平均が高いことは、複数のスリット溝160のそれぞれに、より均等に流体が供給されていることを示す。
【0108】
図7に示すように、比較モデルに対して、第1モデル、第2モデル及び第3モデルともA点における温度が低下しており、冷却性能が向上していることがわかる。また、B点及びC点の温度は、各モデルともほぼ同じ温度である。つまり、第1モデル、第2モデル及び第3モデルは、ノズル部130の表面の温度を低下させることなく、A点の温度を低下させることができている。
【0109】
出口流速平均は、比較モデルに対して、第1モデル、第2モデル及び第3モデルとも速い。特に、第1モデル及び第2モデルは、比較モデルに対して流速が速い。第1モデル、第2モデル及び第3モデルは、比較モデルに比べて各スリット溝に流体が均等に分配されるようになった結果、A点の温度が比較モデルより低下しているものと考えられる。また、第3モデルは、各スリット溝160の出口流速の差が縮小(つまり、出口流速の平均化)することにより、出口流速平均の上昇は小さいものの、A点の温度が低下しているものと考えられる。
【0110】
続いて、比較モデル、第1モデル及び第2モデルにおける各スリット溝160の温度の解析結果(シミュレーション結果)について、
図8~
図10を参照しながら説明する。
図8は、比較モデルの接合ツールにおける各スリット溝の温度の解析結果を示す図である。
【0111】
スリット位置は、流体の導入口から最も近いスリット溝160を1段目とし、当該導入口から最も遠いスリット溝160を5段目として記載している。また、MAX.温度は、平面視におけるスリット溝160の領域内の最大温度を示し、AVG.温度は、平面視におけるスリット溝160の領域内の平均温度を示す。
【0112】
図8に示すように、比較モデルでは、1段目から5段目に向かうにつれ、スリット溝160における温度が低下している。5段目のスリット溝160、つまり導入口から最も遠いスリット溝160の温度は低下しているが、1段目のスリット溝160、つまり導入口から最も近いスリット溝160の温度は5段目に比べて低下していない。言い換えると、比較モデルでは、導入口から最も遠いスリット溝160における冷却性能が高く、導入口から最も近いスリット溝160における冷却性能が低い。例えば、5段目のスリット溝160と、1段目のスリット溝160との温度差は、およそ4度もある。
【0113】
これは、導入口から導入された流体が導入口から遠い位置に設けられるスリット溝160に主に流通されるためである。言い換えると、比較モデルでは、導入口から導入された流体が導入口から近い位置に設けられるスリット溝160には流通されにくい。
【0114】
このように、比較モデルでは、流体供給源70からの流体が各スリット溝160に均等に分配されないことにより、十分な冷却性能が得られないことがある。
【0115】
図9は、第1モデルの接合ツール100における各スリット溝160の温度の解析結果(シミュレーション結果)を示す図である。
【0116】
図9に示すように、第1モデルでは、比較モデルに比べて各スリット溝160の温度が全体的に低くなっている。これは、2つのスリット溝連通部を設けたことにより流体の流速が上がったためであると考えられる。また、第2スリット溝連通部180は、比較モデルでは十分な冷却性能が得られにくい1段目及び2段目のスリット溝160に主に流体を流通させることができるので、1段目及び2段目のスリット溝160の温度を効果的に下げることができる。第1モデルでは、例えば、5段目のスリット溝160と、1段目のスリット溝160との温度差は、およそ2度しかない。
【0117】
このように、第1モデルでは、第2スリット溝連通部180が設けられることで、流体供給源70からの流体が各スリット溝160に均等に分配されるようになり、比較モデルに比べて冷却性能が向上する。
【0118】
図10は、第2モデルの接合ツール100における各スリット溝160の温度の解析結果(シミュレーション結果)を示す図である。
【0119】
図10に示すように、第2モデルでは、第1モデルに比べて各スリット溝160の温度が全体的にさらに低くなっている。これは、3つのスリット溝連通部を設けたことにより流体の流速がさらに上がったためであると考えられる。また、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190は、比較モデルでは十分な冷却性能が得られにくい1段目~3段目のスリット溝160に主に流体を流通させることができるので、1段目~3段目のスリット溝160の温度を効果的に下げることができる。第2モデルでは、例えば、5段目のスリット溝160と、1段目のスリット溝160との温度差は、1度未満と極めて小さい。
【0120】
このように、第2モデルでは、第2スリット溝連通部180a及び第3スリット溝連通部190が設けられることで、流体供給源70からの流体が各スリット溝160にさらに均等に分配されるようになり、比較モデルに比べてさらに冷却性能が向上する。これにより、超音波振動子120が熱により劣化することを抑制することができる。また、ヒータ部140の温度を上昇させることも可能となる。例えば、冷却部150の温度が超音波振動子120の耐熱温度となるまで、ヒータ部140の温度を上昇させることが可能となる。これにより、例えば、大型の電子部品等を基板等に接合するときに接合エネルギーが不足し、接合力不足となることを抑制することができる。つまり、大型の電子部品等に対応した接合ツール100を実現することができる。
【0121】
[4.接合体の製造方法]
続いて、接合装置200を用いた接合体300の製造方法について説明する。
【0122】
図11は、本実施の形態に係る接合装置200による接合体300の製造方法を示すフローチャートである。
図11では、
図3及び
図4に示す第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180を有する接合装置200における製造方法を示すが、
図5及び
図6に示すスリット溝連通部を有する接合装置200における製造方法も同様である。
【0123】
図11に示すように、まず、保持部30で被接合物320を保持する(ステップS101)。例えば、保持部30は、図示しない搬送アーム等によって保持部30に載置された被接合物320を真空吸着することで保持する。
【0124】
次に、ノズル部130で接合対象物310を保持する(ステップS102)。昇降機構10は、例えば、XY平面を移動可能なステージ等に固定されている。コンピュータ80は、当該ステージ、昇降機構10、及び、真空吸引源50を制御することで、ノズル部130に接合対象物310を真空吸着させる。
【0125】
次に、超音波振動子120で接合対象物310に超音波振動を付与し、且つ、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに流体が供給された状態で接合対象物を加熱する(ステップS103)。より具体的には、超音波振動子120を用いてホーン110をホーン110の長手方向に超音波振動させることで、ホーン110に接続されたノズル部130に保持された接合対象物310をホーン110の長手方向に超音波振動させる。
【0126】
また、ステップS103において、ヒータ部140でノズル部130を加熱する。より具体的には、ヒータ部140によってホーン110及びノズル部130を介してノズル部130に保持された接合対象物310を加熱する。このとき、コンピュータ80の制御により、流体供給源70から第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに流体が供給される。
【0127】
コンピュータ80は、例えば、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに同じ期間、流体供給源70からの流体を供給する。例えば、第1導入口171を介した第1スリット溝連通部170への流体の供給の開始、及び、第2導入口181を介した第2スリット溝連通部180への流体の供給の開始は、同じタイミングで行われてもよい。また、例えば、第1導入口171を介した第1スリット溝連通部170への流体の供給の停止、及び、第2導入口181を介した第2スリット溝連通部180への流体の供給の停止は、同じタイミングで行われてもよい。
【0128】
次に、被接合物320に接合対象物310を超音波接合することで接合体300を製造する(ステップS104)。より具体的には、接合対象物310を被接合面321に押し付けた状態で接合対象物310をホーン110の長手方向に超音波振動させる。これにより、接合対象物310には被接合面321への押し付け力と超音波振動とが同時に作用し、接合対象物310は、被接合面321に接合される。
【0129】
なお、ステップS104においても、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに流体が供給されている。
【0130】
以上説明したように、接合装置200は、接合対象物310に超音波振動を付与し、且つ、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに流体が供給された状態で接合対象物310を加熱しながら、被接合物320に接合対象物310を超音波接合することで接合体300を製造する。
【0131】
[5.効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る接合ツール100は、被接合物320と接合対象物310とを接合するための接合ツール100である。接合ツール100は、ホーン110と、ホーン110の一端側(例えば、X軸プラス側)に設けられ、ホーン110に超音波振動を付与する超音波振動子120と、ホーン110の一端側と、一端側とは反対側の他端側(例えば、X軸マイナス側)との間に設けられ、接合対象物310を保持するノズル部130と、ノズル部130を加熱するヒータ部140と、ノズル部130と超音波振動子120との間に設けられ、流体が流通される冷却部150とを備える。そして、冷却部150は、冷却部150の端面151に設けられ、流体を導入するための第1導入口171及び第2導入口181と、第1スリット溝162、及び、第2導入口181に対して第1スリット溝162より遠い位置に設けられる第2スリット溝163を含む、長尺なスリット溝160がホーン110の短手方向(例えば、Z軸方向)に複数並んで配置されたスリット溝列と、第1導入口171から延びて形成され、スリット溝列が有する複数のスリット溝160のそれぞれに連通する第1スリット溝連通部170と、第2導入口181から延びて形成され、スリット溝列が有する第1スリット溝162を含む1以上のスリット溝160のそれぞれと連通し、かつ、第2スリット溝163とは連通しない第2スリット溝連通部180とを有する。
【0132】
これにより、第1スリット溝連通部170のみであれば流体が供給されにくい第1スリット溝162を含む1以上のスリット溝160に、第2スリット溝連通部180を介して流体を供給することができる。つまり、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180により、1つのスリット溝連通部により流体を供給する場合に比べて、複数のスリット溝160のそれぞれに流体を均等に分配することができる。よって、本実施の形態によれば、冷却性能が向上した接合ツール100を実現することができる。
【0133】
また、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、複数のスリット溝160の溝深さ方向(例えば、Y軸方向)に並んで設けられてもよい。
【0134】
これにより、複数のスリット溝160の溝深さ方向における一端から他端にわたって流体を供給しやすくなる。スリット溝160の溝深さ方向は、平面視において、ヒータ部140から超音波振動子120に向かう熱の伝達方向と交差する。よって、ヒータ部140から超音波振動子120に熱が伝達されることを効果的に抑制することができる。
【0135】
また、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、ホーン110の長手方向(例えば、X軸方向)に並んで設けられてもよい。
【0136】
これにより、寸法に余裕があるホーン110の長手方向にスリット溝連通部を設けることができるので、スリット溝連通部の設置位置の自由度が増す。また、スリット溝連通部の数を容易に増やすことができる。
【0137】
また、複数のスリット溝160のそれぞれは、ホーン110の一端側とホーン110の反対側とに長尺な開口161を有する。そして、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、複数のスリット溝160の開口161の長手方向(例えば、X軸方向)の中央より超音波振動子120に近い位置に設けられる。
【0138】
これにより、耐熱温度に制約がある超音波振動子120に近い領域を冷却することができるので、ヒータ部140からの熱が超音波振動子120に伝達されることを効果的に抑制することができる。
【0139】
また、第2スリット溝163は、複数のスリット溝160のうち第2導入口181から最も遠い位置に設けられている。
【0140】
これにより、第2スリット溝連通部180が第2導入口181から最も遠い位置に配置されている第2スリット溝163に流体を供給する場合よりも、複数のスリット溝160の全体に流体を行き渡らせやすくすることができる。なお、第1スリット溝連通部170を2つ設けることによる、流体の分配の均等化への効果は少ない。第1スリット溝連通部170を2つ設ける構成は、本実施の形態には含まれない。
【0141】
また、第1導入口171及び第2導入口181は、冷却部150における同一の端面151に設けられる。
【0142】
これにより、第1導入口171及び第2導入口181が冷却部150の互いに異なる端面に設けられている場合よりも簡易な構成で複数のスリット溝160の全体に流体を行き渡らせやすくすることができる。
【0143】
また、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180は、開口161の短手方向(例えば、Z軸方向)において冷却部150を貫通していない。
【0144】
これにより、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180が冷却部150を貫通している場合よりも複数のスリット溝160の全体に流体を行き渡らせやすくすることができる。
【0145】
また、以上説明したように、本実施の形態に係る接合装置200は、体上記の接合ツール100と、保持部30と、接合ツール100を昇降させることで、保持部30に保持された被接合物320と、接合ツール100に保持された接合対象物310とを接合ツール100に接合させる昇降機構10とを備える。
【0146】
これにより、接合装置200は、ホーン110の超音波振動子120が熱により劣化することをより抑制することができる。
【0147】
また、以上説明したように、接合体300の製造方法は、上記の接合装置200を用いて、接合対象物310に超音波振動を付与し、且つ、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180のそれぞれに流体が供給された状態で接合対象物310を加熱しながら、被接合物320に接合対象物310を超音波接合することで接合体300を製造する。
【0148】
これにより、超音波振動子120の熱による劣化をより抑制し、且つ、被接合物320に接合対象物310を超音波接合できる。
【0149】
(その他の実施の形態)
以上、本実施の形態に係る接合装置等について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0150】
例えば、上記実施の形態における第1導入口及び第2導入口は、冷却部における互いに異なる端面に設けられていてもよい。
【0151】
また、上記実施の形態では、第1スリット溝連通部及び第2スリット溝連通部のそれぞれに対して導入口が設けられる例について説明したが、これに限定されない。例えば、冷却部には、第1スリット溝連通部及び第2スリット溝連通部に対して1つの導入口が設けられ、さらに当該導入口と第1スリット溝連通部及び第2スリット溝連通部とを連通する分岐部(分岐経路)が設けられてもよい。
【0152】
また、上記実施の形態では、
図4に示すように、複数のスリット溝連通部(例えば、第1スリット溝連通部170及び第2スリット溝連通部180)が複数のスリット溝の溝深さ方向(Y軸方向)に一直線上に設けられる例について説明したが、これに限定されない。複数のスリット溝連通部は、複数のスリット溝の溝深さ方向に沿って設けられていればよく、例えば、ジグザグ状に設けられてもよい。また、複数のスリット溝の溝深さ方向に3つ以上のスリット溝連通部が設けられてもよい。3つ以上のスリット溝連通部は、少なくとも第1スリット溝連通部及び第2スリット溝連通部を含み、3つ以上のスリット溝連通部のそれぞれは断面視において互いにZ軸方向の長さが異なっていてもよいし、少なくとも2つのスリット溝連通部のZ軸方向の長さが同じであってもよい。
【0153】
また、上記実施の形態では、開口の短手方向は、Z軸方向だったが、これに限定されない。例えば、開口の短手方向は、Y軸方向でもよい。この場合、スリット溝は、ホーンのZ軸方向の端部に形成された開口を有し、溝深さ方向がZ軸方向でもよい。
【0154】
また、例えば、上記実施の形態では、複数のスリット溝それぞれの形状は、XY平面内において長方形であるが、これに限定されない。例えば、複数のスリット溝それぞれの形状は、XY平面内において、正方形、平行四辺形、台形等の四角形、又は、扇状等、任意の形状でもよい。
【0155】
また、上記実施の形態では、複数のスリット溝のそれぞれは、Z軸方向においてスリット幅が一定であるが、これに限定されない。例えば、複数のスリット溝のうち少なくとも1つのスリット溝は、Z軸方向において他のスリット溝とスリット幅が異なっていてもよい。また、例えば、開口の形状は、長方形に限定されず、平行四辺形、台形等の四角形、又は、扇状等、任意の形状でもよい。
【0156】
また、上記実施の形態では、複数のスリット溝のそれぞれは、開口から溝深さ方向に開口と同じ形状となるように形成されているが、例えば、テーパ状等、それぞれ開口から溝深さ方向に開口と異なる形状となるように形成されていてもよい。
【0157】
また、例えば、上記実施の形態では、コンピュータの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、或いは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサ等のプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0158】
また、コンピュータの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0159】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等が含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0160】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示に係る接合ツールは、ディスプレイパネルを生産する部品実装装置等が有する、基板に部品を超音波接合する接合装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0162】
10 昇降機構
20 昇降部材
21 延出部
30 保持部
40 テーブル
50 真空吸引源
51 吸引管路
60 振動子駆動部
70 流体供給源
80 コンピュータ
100 接合ツール
110 ホーン
112 凹部
113 連結部
120 超音波振動子
130 ノズル部
140 ヒータ部
150 冷却部
151 端面
160 スリット溝
161 開口
162 第1スリット溝
163 第2スリット溝
164 第3スリット溝
170、170a、170b 第1スリット溝連通部
171、171a、171b 第1導入口
172 段差部
180、180a 第2スリット溝連通部
181、181a 第2導入口
190 第3スリット溝連通部
191 第3導入口
200 接合装置
300 接合体
310 接合対象物
320 被接合物
321 被接合面