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特許7561338車載用非常電源装置および車載用非常電源装置を搭載した車両
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  • 特許-車載用非常電源装置および車載用非常電源装置を搭載した車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車載用非常電源装置および車載用非常電源装置を搭載した車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240927BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240927BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60R16/02 645A
H02J7/00 S
H02J7/00 302B
H02J7/00 302C
H02J7/34 G
H02J9/06 110
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021011636
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115152
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】影山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】西中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】畑田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井手 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】鳥島 健太
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155277(JP,A)
【文献】特開2017-034939(JP,A)
【文献】特開2006-020450(JP,A)
【文献】特開2013-132129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用バッテリーに接続される入力端と、
車両推進駆動用バッテリーと車両駆動負荷とを接続する電力供給路に流れる駆動電流に対応する電流検出信号を受信する検出信号受信部と、
緊急信号を受信可能な緊急信号受信部と、
遮断完了信号を発信可能な信号発信部と、
蓄電素子と、
前記蓄電素子に蓄えられた電力を放電させることが可能な放電回路と、
前記検出信号受信部からの前記電流検出信号の受信と、前記放電回路に対する動作の制御と、前記緊急信号受信部からの前記緊急信号の検知と、前記信号発信部から前記遮断完了信号を発信させることが可能な、制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記緊急信号を受信したときから所定時間後の前記駆動電流が閾値よりも小さい場合に、前記遮断完了信号を発信させ、
前記所定時間は、前記電力供給路に設けられた遮断部が遮断を完了するまでの遮断完了時間よりも長い値である、
車載用非常電源装置。
【請求項2】
前記緊急信号は、前記車載用非常電源装置が搭載された車両における異常が生じたことに対応して前記車両から発信され、
前記遮断完了信号は、前記車両推進駆動用バッテリーと前記車両駆動負荷との遮断が正常に実施されたことに対応して車両に発信される、
請求項1に記載の車載用非常電源装置。
【請求項3】
車体と、
車両用バッテリーと、
車両負荷と、
車両推進駆動用バッテリーと、
車両駆動負荷と、
車体の異常を検知可能で、異常検知時に緊急信号を発信する車体制御部と、
前記車両推進駆動用バッテリーから前記車両駆動負荷への経路に設けられた電流検出部と、
前記車両用バッテリーに接続される入力端と、前記車両負荷に接続される出力端と、前記電流検出部から発生られる電流検出信号を受信する検出信号受信部と、前記緊急信号を受信可能な緊急信号受信部と、遮断完了信号を発信可能な信号発信部と、蓄電素子と、前記蓄電素子に蓄えられた電力を放電させることが可能な放電回路と、前記検出信号受信部からの前記電流検出信号の受信と、前記放電回路に対する動作の制御と、前記緊急信号受信部からの前記緊急信号の検知と、前記信号発信部から前記遮断完了信号を発信させることが可能な、制御部と、を有する車載用非常電源装置と、
を備え、
前記制御部は、前記緊急信号を受信したときから所定時間後の前記電流検出信号に対応する駆動電流が閾値よりも小さい場合に、前記遮断完了信号を発信させ、
前記所定時間は、前記車両推進駆動用バッテリーから前記車両駆動負荷への経路に設けられた遮断部が遮断を完了するまでの遮断完了時間よりも長い値である、
車両。
【請求項4】
車体と、
車両用バッテリーと、
車両負荷と、
車両推進駆動用バッテリーと、
車両駆動負荷と、
前記車両推進駆動用バッテリーから前記車両駆動負荷への経路に設けられた遮断部と、
前記遮断部に直列に接続されて、異常電流検出時に前記遮断部を遮断させるための遮断信号を発信する電流検出部と、
前記車両用バッテリーに接続される入力端と、前記車両負荷に接続される出力端と、前記電流検出部から発生られる電流検出信号を受信する検出信号受信部と、前記遮断信号を受信可能な緊急信号受信部と、遮断完了信号を発信可能な信号発信部と、蓄電素子と、前記蓄電素子に蓄えられた電力を放電させることが可能な放電回路と、前記検出信号受信部からの前記電流検出信号の受信と、前記放電回路に対する動作の制御と、前記緊急信号受信部からの前記遮断信号の検知と、前記信号発信部から前記遮断完了信号を発信させることが可能な、制御部と、を有する車載用非常電源装置と、
を備え、
前記制御部は、前記遮断信号を受信したときから所定時間後の前記電流検出信号に対応する駆動電流が閾値よりも小さい場合に、前記遮断完了信号を発信させ、
前記所定時間は、前記遮断部が遮断を完了するまでの遮断完了時間よりも長い値である、
車両。
【請求項5】
車両用バッテリーに接続される入力端と、
車両推進駆動用バッテリーと車両駆動負荷とを接続する電力供給路に流れる駆動電流に対応する電流検出信号を受信する検出信号受信部と、
緊急信号を受信可能な緊急信号受信部と、
遮断未完全信号を発信可能な信号発信部と、
蓄電素子と、
前記蓄電素子に蓄えられた電力を放電させることが可能な放電回路と、
前記検出信号受信部からの前記電流検出信号の受信と、前記放電回路に対する動作の制御と、前記緊急信号受信部からの前記緊急信号の検知と、前記信号発信部から前記遮断未完全信号を発信させることが可能な、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記緊急信号を受信したときから所定時間後の前記駆動電流が閾値以上である場合に、前記遮断未完全信号を発信させ、
前記所定時間は、前記電力供給路に設けられた遮断部が遮断を完了するまでの遮断完了時間よりも長い値である、
車載用非常電源装置。
【請求項6】
前記緊急信号は、前記車載用非常電源装置が搭載された車両における異常が生じたことに対応して車両から発信され、
前記遮断未完全信号は、前記車両推進駆動用バッテリーと前記車両駆動負荷との遮断が正常に実施されていないことに対応して車両に発信される、
請求項に記載の車載用非常電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種車両に使用される車載用非常電源装置および車載用非常電源装置を搭載した車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の車両用電源装置について説明する。従来の車両用電源装置は、車両に不測の事態が生じた際には、車両推進駆動用バッテリーから車両駆動負荷への電力供給を強制的に遮断する機能を有していた。ここで、電力供給を強制的に遮断する手段としては、一般的には溶断によって導通を遮断するヒューズや、継電器(リレー)などが適用されていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-25912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用電源装置では、車両用電源装置がヒューズや、継電器(リレー)に対して強制的な電力供給の遮断についての動作を実行した場合であっても、車両に不測の事態が生じたことに伴って車両用電源装置が損傷した場合などにおいては上記の強制的な電力供給の遮断が完遂されているのか否かが判断できないことがあった。このため、車両の外部から救助等を実施する作業者が、車両の特に車両推進駆動用バッテリーが安全な状態に確保できているか否かを判断できないという課題を有するものであった。
【0006】
そこで本発明は、電力供給の遮断状態を容易に判別可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、車両用バッテリーに接続される入力端と、車両推進駆動用バッテリーと車両駆動負荷とを接続する電力供給路に流れる駆動電流に対応する電流検出信号を受信する検出信号受信部と、緊急信号を受信可能な緊急信号受信部と、遮断完了信号を発信可能な信号発信部と、蓄電素子と、前記蓄電素子に蓄えられた電力を放電させることが可能な放電回路と、前記検出信号受信部からの前記電流検出信号の受信と、前記放電回路に対する動作の制御と、前記緊急信号受信部からの前記緊急信号の検知と、前記信号発信部から前記遮断完了信号を発信させることが可能な、制御部と、を備え、前記制御部は、前記緊急信号を受信したときの前記駆動電流が閾値よりも小さい場合に、前記遮断完了信号を発信させる、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両が安全な状態であるか否かを容易に判断が可能となり、車両の外部からの救助等は車両の状態を正しく認識したうえでの対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態における車載用非常電源装置の構成を示す第1回路ブロック図
図2】本発明の実施の形態における車載用非常電源装置の構成を示す第2回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態における車載用非常電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。車載用非常電源装置1は、入力端2と出力端3と検出信号受信部4と緊急信号受信部5と信号発信部6と蓄電素子7と放電回路8と制御部9とを含む。
【0012】
入力端2は車両用バッテリー10に接続されている。出力端3は車両負荷11に接続されている。検出信号受信部4は、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とを接続する電力供給路14に流れる駆動電流I1に対応する電流検出信号S1を受信する。緊急信号受信部5は緊急信号S2を受信することが可能である。信号発信部6は遮断完了信号S3を発信することが可能である。蓄電素子7は放電回路8に接続されている。放電回路8は蓄電素子7に蓄えられていた電力を放電させることが可能である。
【0013】
制御部9は、検出信号受信部4に入力される電流検出信号S1を受信する。また制御部9は放電回路8に対する動作の制御を実行することが可能である。さらに制御部9は緊急信号受信部5に入力される緊急信号S2を受信し検知することが可能である。またさらに制御部9は信号発信部6から遮断完了信号S3を発信させることが可能である。
【0014】
制御部9は、緊急信号受信部5を通じて緊急信号S2を受信したときに、検出信号受信部4を通じて検出された電流検出信号S1に相当する駆動電流I1が駆動電流閾値Ithよりも小さい値であると判定すると、信号発信部6から遮断完了信号S3を発信させる。
【0015】
以上の構成および動作により、車載用非常電源装置1は、車両15が事故などの不測の事態に遭遇したときに車両15から発信される緊急信号S2を検知したときに、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とを接続する電力供給路14が遮断された状態であるか否かを判定することが可能であり、信号発信部6から遮断完了信号S3を発信させることができる。これにより、遮断完了信号S3に基づいて車両15が安全な状態であるか否かを容易に判断が可能となり、車両15の外部からの救助等は車両の状態を正しく認識したうえでの対応が可能となる。
【0016】
以下で、車載用非常電源装置1の詳細について図2の本発明の実施の形態における車載用非常電源装置の構成を示す第2回路ブロック図を用いて説明する。車載用非常電源装置1は車両15の車体16に配置されている。車体16には車載用非常電源装置1と車両用バッテリー10と車両負荷11と車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とが搭載されている。
【0017】
車両用バッテリー10は補機バッテリーに相当する蓄電池であり、正常な状態のときには直流の12Vや24Vなどの電圧を出力することが可能である。車両負荷11は車両用バッテリー10によって駆動される負荷であり、一般的な電装品であるカーナビゲーションシステム(図示せず)や照明装置等(図示せず)ドアロックやドアロック開錠のためのモータ(図示せず)が相当する。また、車体16に設けられて車両15全体の制御を実行する車体制御部17が動作するための電力は車両用バッテリー10によって供給されていてもよい。車載用非常電源装置1は特に車両用バッテリー10が失陥状態となったときに、車両15や搭乗者の安全を確保するために動作する車両負荷11へ電力を供給することができる。
【0018】
車両推進駆動用バッテリー12は、電気車両やハイブリッド車両の車両駆動負荷13へ電力を供給するための蓄電池であり、正常な状態のときには直流の500Vなどの電圧を出力することが可能である。車両駆動負荷13は、直流電力を交流電力に変換するインバータ装置(図示せず)や車両推進用モータ(図示せず)に相当する。
【0019】
車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とを接続する電力供給路14には電流検出部18が設けられている。電流検出部18にはホール素子が用いられたうえで、ホール素子が電力供給路14に流れる駆動電流I1の値に応じた電圧を電流検出信号S1として発信するとよい。あるいは、電流検出部18にはシャント抵抗が用いられたうえで、シャント抵抗の両端の電位差に基づいた電圧が電力供給路14に流れる駆動電流I1の値に応じた電流検出信号S1として発信するとよい。
【0020】
また、電流検出部18は遮断部19に対して遮断信号S0を発信してもよい。またあるいは、電流検出部18に設けられた電流検出制御回路18Aは遮断部19に対して遮断信号S0を発信してもよい。ここで、遮断信号S0は電流検出制御回路18Aが遮断部19に電力供給路14を遮断させるための信号である。電流検出部18と遮断部19とは電力供給路14で直列に接続されていて、電流検出部18は電流検出制御回路18Aで異常電流を検出したときに電力供給路14を遮断させるための遮断信号S0を発信するとよい。ここで、電流検出部18に流れる電流値に対応した信号である電流検出信号S1と、遮断信号S0とは異なる信号である。またあるいは、車体制御部17が車両15における異常に基づいて、遮断部19へ電力供給路14を遮断させるための遮断信号S0を発信してもよい。遮断部19は、継電器(リレー)や、火工スイッチなどが適用されてよい。
【0021】
車載用非常電源装置1は、車両用バッテリー10から供給された電力を蓄電素子7に蓄え、非常時に車両負荷11へ電力を供給することが可能となっている。通常は、車両用バッテリー10から車両負荷11への電力供給は通常供給路20によって実施される。車載用非常電源装置1から車両負荷11への電力供給は、何等かの不測の事態が発生したことで車両用バッテリー10の破損や通常供給路20の破損などが生じた際に、実施される。いいかえると、車両用バッテリー10や通常供給路20が正常な場合には、蓄電素子7は車両用バッテリー10の電力を用いて蓄電状態とされることが可能となっている。蓄電素子7に対する充電は、車両用バッテリー10から直接に実施されても、あるいは、放電回路8が充電機能を有した充放電回路として動作することによって、車両用バッテリー10の電力をDCDC変換して放電回路8が蓄電素子7を充電してもよい。
【0022】
車載用非常電源装置1の制御部9は検出信号受信部4に接続されていて、車両15が起動しているときには、制御部9は常時において電流検出部18から発信される電流検出信号S1を受信し、電力供給路14に流れる駆動電流I1を検知している。
【0023】
ここで、車両15が衝突事故などや異常な状況に遭遇したことを検知したときや、車両15で大きな電力が漏電状態となるおそれがある状態や漏電状態が検出されたときに車両15から発信される緊急信号S2を制御部9が緊急信号受信部5を通じて受信したときに、制御部9は電流検出信号S1に対応する駆動電流I1と駆動電流閾値Ithとの比較を実行する。制御部9の動作としては、まず制御部9は電流検出信号S1の電圧値から駆動電流I1の値を得る。そして駆動電流I1と駆動電流閾値Ithとの比較を行う。そして、駆動電流I1が駆動電流閾値Ithよりも小さい値であると制御部9が判定すると、制御部9は信号発信部6から遮断完了信号S3を発信させる。ここで駆動電流閾値Ithは救助作業者に危険を及ぼさない水準の低い電流値とすればよい。これはいいかえると、制御部9から遮断完了信号S3が発信されるのは、電流検出部18には異常電流が流れていない状態であり、遮断部19での遮断が適切に実行されている状態に相当する。
【0024】
ここで先に述べた緊急信号S2は、車両15が衝突事故などや異常な状況に遭遇したときなどに車体制御部17から発信されるとよい。あるいは緊急信号S2は、電流検出制御回路18Aが異常電流を検出したときに遮断部19へ電力供給路14を遮断させるために発する遮断信号S0が適用されてもよい。またあるいは、緊急信号S2は電流検出制御回路18Aが発信した遮断信号S0を車体制御部17が受信したことに対応して、車体制御部17が緊急信号S2を制御部9へ発信してもよい。
【0025】
したがって、車体制御部17や電流検出制御回路18Aから指示によって駆動電流I1が遮断されていることを、遮断信号S0や緊急信号S2とは異なる信号である電流検出信号S1によって制御部9は確認する。そして制御部9は遮断完了信号S3を発信して状態認識部21へ発信して状態認識部21を動作させるとよい。
【0026】
状態認識部21は車両15に設けられて車両15の外部からの救助者から目視可能な表示灯やディスプレイであってよい。またあるいは、状態認識部21は車両15の外部に設けられて、遮断完了信号S3を電波信号として受信する救助者が有する端末装置であってよい。
【0027】
これにより車載用非常電源装置1は、車両15が事故などの不測の事態に遭遇したときに車両15から発信される緊急信号S2を検知したときに、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とを接続する電力供給路14が遮断された状態であるか否かを判定することが可能であり、信号発信部6から遮断完了信号S3を発信させることができる。
【0028】
いいかえると、緊急信号S2は、車両15における異常が生じたことに対応して車両15から制御部9へ発信される。そして、遮断完了信号S3は、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13との遮断が正常に実施されたことに対応して制御部9から車両15に発信される。この結果、救助者などが遮断完了信号S3に基づいて車両15が安全な状態であるか否かを容易に判断が可能となり、車両15の外部からの救助等は車両の状態を正しく認識したうえでの対応が可能となる。
【0029】
また、車載用非常電源装置1では蓄電素子7が有する電力によって信号受信や送信および制御部9や放電回路8の動作が可能であるので、車両15の事故などに伴って車両用バッテリー10が失陥状態となっても車載用非常電源装置1は動作を継続することができる。また、上記の信号受信や送信に加え、先に述べたように、車載用非常電源装置1は車両用バッテリー10が失陥状態となった場合や非常時には車両15や搭乗者の安全を確保するために動作する車両負荷11へ電力を供給することができる。ここで、蓄電素子7には短時間で多くの電力の供給が可能な電気二重層コンデンサやリチウムイオンキャパシタが用いられるとよい。
【0030】
先に述べた制御部9の動作順序としては、先ず、車両15が衝突事故などや異常な状況に遭遇したときに発信される緊急信号S2を制御部9が緊急信号受信部5を通じて受信したときに、制御部9は電流検出信号S1に対応する駆動電流I1と駆動電流閾値Ithとの比較を実行する。次に、駆動電流I1が駆動電流閾値Ithよりも小さい値であると制御部9が判定すると、制御部9は信号発信部6から遮断完了信号S3を発信させていた。ここで上記の判定に関する動作をより正確に実施するために、制御部9が緊急信号S2を受信した後、所定時間を経た時点で、制御部9が電流検出信号S1に対応する駆動電流I1を検出し、駆動電流I1と駆動電流閾値Ithとの比較を実行するとよい。
【0031】
ここで所定時間は、遮断信号S0や緊急信号S2が遮断部19に発せられてから、遮断部19が正常に動作した場合に遮断部19が遮断を完了するまでの遮断完了時間よりも長い値とするとよい。これにより、車載用非常電源装置1は、車両15が事故などの不測の事態に遭遇したときに車両15から発信される緊急信号S2を検知し、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とを接続する電力供給路14が遮断されているはずの時点で遮断状態であるか否かを判定することが可能であり、信号発信部6から信頼度の高い遮断完了信号S3を発信させることができる。
【0032】
以上では、車載用非常電源装置1は、車両15が事故などの不測の事態に遭遇したときに、車両推進駆動用バッテリー12からの電流が遮断されていた場合に遮断完了信号S3を発信する形態について説明した。この一方で、車載用非常電源装置1は、車両15が事故などの不測の事態に遭遇したときに、車両推進駆動用バッテリー12からの電流が遮断されていない場合に遮断未完全信号S4を発信する形態であってもよい。
【0033】
この場合の動作は以下のとおりである。車両15が衝突事故などや異常な状況に遭遇したときに発信される緊急信号S2を制御部9が緊急信号受信部5を通じて受信したときに、制御部9は電流検出信号S1に対応する駆動電流I1と駆動電流閾値Ithとの比較を実行する。制御部9の動作としては、まず制御部9は電流検出信号S1の電圧値から駆動電流I1の値を得る。そして駆動電流I1と駆動電流閾値Ithとの比較を行う。そして、駆動電流I1が駆動電流閾値Ith以上の値であると制御部9が判定すると、制御部9は信号発信部6から遮断未完全信号S4を発信させる。ここで駆動電流閾値Ithは救助作業者に危険を及ぼす可能性がある電流値とすればよい。これはいいかえると、制御部9から遮断未完全信号S4が発信されるのは、電流検出部18には異常電流が流れている状態であり、遮断部19での遮断が適切に実行されていない状態に相当する。
【0034】
いいかえると、緊急信号S2は、車両15における異常が生じたことに対応して車両15から制御部9へ発信される。そして、遮断未完全信号S4は、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13との遮断が正常に実施されていないことに対応して制御部9から車両15に発信される。これにより車載用非常電源装置1は、車両15が事故などの不測の事態に遭遇したときに車両15から発信される緊急信号S2を検知したときに、車両推進駆動用バッテリー12と車両駆動負荷13とを接続する電力供給路14が遮断された状態であるか否かを判定することが可能であり、信号発信部6から遮断未完全信号S4を発信させることができる。この結果、救助者などが遮断未完全信号S4に基づいて車両15が安全な状態であるか否かを容易に判断が可能となり、車両15の外部からの救助等は車両の状態を正しく認識したうえでの対応が可能となる。
【0035】
以上で説明した実施の形態では、遮断信号S0、電流検出信号S1、緊急信号S2、遮断完了信号S3、遮断未完全信号S4は、アナログ信号や符号化された信号の何れであってもよい。また、これらについては送信、受信として説明しているが、出力や入力といいかえても構わない。
【0036】
また、検出信号受信部4、緊急信号受信部5、信号発信部6は、車載用非常電源装置1に設けられた個別の要素として説明しているが、検出信号受信部4、緊急信号受信部5、信号発信部6は制御部9に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の車載用非常電源装置および車載用非常電源装置を搭載した車両は、車両が安全な状態であるか否かを容易に判断することが可能となる効果を有し、各種車両において有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 車載用非常電源装置
2 入力端
3 出力端
4 検出信号受信部
5 緊急信号受信部
6 信号発信部
7 蓄電素子
8 放電回路
9 制御部
10 車両用バッテリー
11 車両負荷
12 車両推進駆動用バッテリー
13 車両駆動負荷
14 電力供給路
15 車両
16 車体
17 車体制御部
18 電流検出部
18A 電流検出制御回路
19 遮断部
20 通常供給路
21 状態認識部
図1
図2