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特許7561356検知システム、センサシステム、検知方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】検知システム、センサシステム、検知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240927BHJP
   G01S 13/66 20060101ALI20240927BHJP
   G01S 13/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/66
G01S13/32
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023523373
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2022018974
(87)【国際公開番号】W WO2022249840
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021088002
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 謙一
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158862(JP,A)
【文献】特開2013-096828(JP,A)
【文献】特開2017-049082(JP,A)
【文献】特開2010-145406(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101251895(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0203374(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0391250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して送信アンテナから電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナにより前記対象物からの反射電波を受信する電波センサから受信信号を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記受信信号に基づいて、前記対象物の位置情報を含む散乱点を生成する生成部と、
前記生成部が所定時間にわたって生成した前記散乱点の集合である散乱点群を1以上のクラスタに分類する分類部と、
前記分類部が分類した前記1以上のクラスタごとに、当該クラスタに含まれる各散乱点の座標を前記各散乱点の反射電波の強度を重みとして加重平均して重心を算出する重心算出部と、
前記分類部が分類した前記1以上のクラスタのいずれかを前記対象物と関連付ける関連付け部と、
前記重心算出部が算出した前回以前の周期での前記重心を、前記散乱点として前記散乱点群に混合する混合部と、を備える、
検知システム。
【請求項2】
前記散乱点は、前記対象物と前記電波センサとの間の距離及び前記電波センサに対する前記対象物の方向の少なくとも一方に関する情報と、前記反射電波の強度に関する情報と、を含む、
請求項1に記載の検知システム。
【請求項3】
前記関連付け部は、前記前回以前の周期での前記重心が、前記分類部が分類した前記1以上のクラスタに含まれるか否かに基づいて、前記1以上のクラスタのいずれかを前記対象物と関連付ける、
請求項1又は2に記載の検知システム。
【請求項4】
前記分類部は、前記散乱点の密度に基づいて孤立点を除去するアルゴリズムを用いて、前記散乱点群を前記1以上のクラスタに分類する、
請求項1又は2に記載の検知システム。
【請求項5】
前記混合部は、前記散乱点群に混合する前記前回以前の周期での前記重心の混合量又は遅延量を調整する、
請求項1又は2に記載の検知システム。
【請求項6】
前記混合部は、前記1以上のクラスタの各々について、前記重心以外の前記散乱点が含まれていなければカウンタをインクリメントし、含まれていればカウンタをリセットし、前記カウンタが閾値に達すると、前記重心を破棄する、
請求項5に記載の検知システム。
【請求項7】
前記混合部は、前記1以上のクラスタの各々について、前記重心以外の前記散乱点が含まれていなければ前記重心の混合量を減少させ、含まれていれば前記重心の混合量を元に戻す、
請求項5に記載の検知システム。
【請求項8】
前記電波センサは、通常モードと、前記電波を特定の方向に集中して放射又は選択的に受信する特定モードとのいずれかに動作を切り替え可能であって、
前記混合部は、前記電波センサが前記特定モードで動作している場合に、前記電波センサが前記通常モードで動作している場合と比較して、前記重心の混合量を増大させる、
請求項5に記載の検知システム。
【請求項9】
前記分類部が分類した前記1以上のクラスタごとに、次回以降の周期での重心を予測する予測部を更に備え、
前記混合部は、前記予測部が予測した前記次回以降の周期での前記重心を、前記散乱点として前記散乱点群に混合する、
請求項1又は2に記載の検知システム。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の検知システムと、
前記検知システムにより制御される前記電波センサと、を備える、
センサシステム。
【請求項11】
対象物に対して送信アンテナから電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナにより前記対象物からの反射電波を受信する電波センサから受信信号を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記受信信号に基づいて、前記対象物の位置情報を含む散乱点を生成する生成ステップと、
前記生成ステップが所定時間にわたって生成した前記散乱点の集合である散乱点群を1以上のクラスタに分類する分類ステップと、
前記分類ステップが分類した前記1以上のクラスタごとに、当該クラスタに含まれる各散乱点の座標を前記各散乱点の反射電波の強度を重みとして加重平均して重心を算出する重心算出ステップと、
前記分類ステップが分類した前記1以上のクラスタのいずれかを前記対象物と関連付ける関連付けステップと、
前記重心算出ステップが算出した前回以前の周期での前記重心を、前記散乱点として前記散乱点群に混合する混合ステップと、を含む、
検知方法。
【請求項12】
1以上のプロセッサに、
請求項11に記載の検知方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波センサから出力される信号に基づいて対象物を検知する検知システム、センサシステム、検知方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、目標物体の位置を検知するドップラーレーダシステムを開示する。このドップラーレーダシステムは、送信アンテナと、複数の受信アンテナと、マイクロドップラー演算部と、第1重心算出部と、第2重心算出部と、重心決定部とを備える。マイクロドップラー演算部は、目標物体に含まれる複数の反射点の各々の位置を示す複数の測定点を算出する。第1重心算出部は、第1間隔を有する第1分割枠を用いて、測定点の第1重心を算出する。第2重心算出部は、第1間隔より狭い第2間隔を有する第2分割枠を用いて、測定点の第2重心を算出する。重心決定部は、複数の第2重心の中から、第2重心と第1重心との位置関係に基づいて、少なくとも1つの第2重心を目標物体の位置に決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-96828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、対象物の位置の検知精度を向上しやすい検知システム、センサシステム、検知方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る検知システムは、取得部と、生成部と、分類部と、重心算出部と、関連付け部と、混合部と、を備える。前記取得部は、対象物に対して送信アンテナから電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナにより前記対象物からの反射電波を受信する電波センサから受信信号を取得する。前記生成部は、前記取得部が取得した前記受信信号に基づいて、前記対象物の位置情報を含む散乱点を生成する。前記分類部は、前記生成部が所定時間にわたって生成した前記散乱点の集合である散乱点群を1以上のクラスタに分類する。前記重心算出部は、前記分類部が分類した前記1以上のクラスタごとに重心を算出する。前記関連付け部は、前記分類部が分類した前記1以上のクラスタのいずれかを前記対象物と関連付ける。前記混合部は、前記重心算出部が算出した前回以前の周期での前記重心を、前記散乱点として前記散乱点群に混合する。
【0006】
本発明の一態様に係るセンサシステムは、前記検知システムと、前記検知システムにより制御される前記電波センサと、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る検知方法は、取得ステップと、生成ステップと、分類ステップと、重心算出ステップと、関連付けステップと、混合ステップと、を含む。前記取得ステップでは、対象物に対して送信アンテナから電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナにより前記対象物からの反射電波を受信する電波センサから受信信号を取得する。前記生成ステップでは、前記取得ステップが取得した前記受信信号に基づいて、前記対象物の位置情報を含む散乱点を生成する。前記分類ステップでは、前記生成ステップが所定時間にわたって生成した前記散乱点の集合である散乱点群を1以上のクラスタに分類する。前記重心算出ステップでは、前記分類ステップが分類した前記1以上のクラスタごとに重心を算出する。前記関連付けステップでは、前記分類ステップが分類した前記1以上のクラスタのいずれかを前記対象物と関連付ける。前記混合ステップでは、前記重心算出ステップが算出した前回以前の周期での前記重心を、前記散乱点として前記散乱点群に混合する。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記検知方法を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検知システム、センサシステム、検知方法、及びプログラムは、対象物の位置の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る検知システムを含む全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態に係る電波センサによる対象物の検知の概要を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る検知システムの生成部により生成される散乱点の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る検知システムの分類部が分類対象とする散乱点群の説明図である。
図5図5は、実施の形態に係る検知システムの分類部が分類対象とする散乱点群の概要を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る検知システムの関連付け部による対象物とクラスタとの関連付けの基本例を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る検知システムの関連付け部による対象物とクラスタとの関連付けの説明図である。
図8図8は、実施の形態に係る検知システムの混合部の第1動作例の説明図である。
図9図9は、実施の形態に係る検知システムの混合部の第1動作例におけるクラスタの遷移の説明図である。
図10図10は、実施の形態に係る検知システムの混合部の第2動作例の説明図である。
図11図11は、実施の形態に係る検知システムの混合部の第3動作例の説明図である。
図12図12は、実施の形態に係る検知システムの動作例を示すフローチャートである。
図13A図13Aは、比較例の検知システムの検知結果の一例を示す図である。
図13B図13Bは、実施の形態に係る検知システムの検知結果の一例を示す図である。
図14図14は、実施の形態の変形例に係る検知システムを含む全体構成を示すブロック図である。
図15図15は、実施の形態の変形例に係る検知システムの分類部が分類対象とする散乱点群の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
まず、発明者の着眼点が、下記に説明される。
【0012】
従来、例えば住宅又はオフィス等の人の存在する空間において、プライバシーに配慮すべく、カメラを使用せずに当該空間における人の存否を検知したいというニーズがある。そして、このようなニーズを満たすために、電波センサを用いて空間における人の存否を検知することが知られている。
【0013】
電波センサは、空間における人を検知するのみならず、検知した人の生体情報(例えば、呼吸又は心拍等)を非接触で取得することが可能である。電波センサで非接触に生体情報を取得できれば、人が例えば腕時計型のウェアラブルデバイスを装着して生体情報を取得する場合と比較して、人が検知されているという意識から解放され、かつ、装着の煩わしさ又は装着していることに起因するストレスを人が感じにくくなる、という利点がある。
【0014】
ところで、1台の電波センサを用いて複数人の生体情報を同時に取得するために、例えばビームフォーミング等の信号分離技術を用いることが考えられる。このような信号分離技術を用いる場合には、生体情報の発生源、つまり各人の位置を精度良く特定することが肝要であり、特に生体情報を精度良く取得する場合であれば、各人の位置の検知が安定して行われることが肝要である。
【0015】
以上を鑑み、発明者は本発明を創作するに至った。
【0016】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0018】
(実施の形態)
[1.構成]
以下、実施の形態に係る検知システム10の構成について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態に係る検知システム10を含む全体構成を示すブロック図である。検知システム10は、電波センサ2から出力される信号(受信信号Sig1)に基づいて対象物3を検知するためのシステムである。実施の形態では、対象物3は、人である。なお、対象物3は、電波センサ2が放射する電波を反射する態様であれば、人以外の生体であってもよいし、生体でなくてもよい。
【0019】
電波センサ2は、対象物3に対して送信アンテナ211から電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナ221により対象物3からの反射電波を受信する。具体的には、電波センサ2は、例えばSIMO(single-input and multiple-output)レーダであって、送信部21と、受信部22と、1つの送信アンテナ211と、複数の受信アンテナ221と、を備えている。複数の受信アンテナ221は、アレーアンテナを構成している。なお、電波センサ2は、送信アンテナ211を複数備えるMIMO(multiple-input and multiple-output)レーダであってもよい。
【0020】
送信部21は、送信信号を生成し、生成した送信信号を送信アンテナ211に出力する。送信部21は、例えば検知システム10に制御される。送信アンテナ211は、送信部21から出力される送信信号を受けると、送信信号を電波として放射する。
【0021】
ここで、対象物3が例えば人のように電波の波長に比べて大きな凹凸を有する複雑な形状を有する場合、反射条件を満たす点(つまり、反射点)は対象物3の表面上に複数存在する。複数の受信アンテナ221の各々は、送信アンテナ211から送信された電波が対象物3の表面における複数の反射点で反射された反射電波を受信する。受信部22は、複数の受信アンテナ221でそれぞれ受信された複数の反射電波の各々に対応する受信信号Sig1を生成し、生成した受信信号Sig1を検知システム10に出力する。
【0022】
実施の形態では、電波センサ2は、通常モードと、電波を特定の方向に集中して放射又は選択的に受信する特定モードとのいずれかに動作を切り替え可能である。通常モードは、電波センサ2が検知対象とする空間の全体にわたって電波を放射することで、当該空間における1以上の対象物3の位置を検知する際に用いられる。特定モードは、通常モードで検知された特定の対象物3に対して、ビームフォーミングにより電波を集中して放射又は選択的に受信することで、特定の対象物3の生体情報(例えば、呼吸又は心拍等)を取得する際に用いられる。
【0023】
検知システム10は、例えばマイクロコンピュータ等、プロセッサ及びメモリを備えた処理回路により実現される。つまり、処理回路におけるプロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、検知システム10としての各種機能が実現される。検知システム10は、図1に示すように、取得部11と、生成部12と、分類部13と、重心算出部14と、関連付け部15と、混合部16と、を備えている。
【0024】
取得部11は、電波センサ2から受信信号Sig1を取得する。取得部11は、検知方法における取得ステップST1の実行主体である。実施の形態では、取得部11は、電波センサ2の出力端子と信号線により接続されている。そして、取得部11は、電波センサ2の出力端子から出力される受信信号Sig1を、信号線を介して定期的に取得する。
【0025】
生成部12は、取得部11が取得した受信信号Sig1に基づいて、対象物3の位置情報を含む散乱点41を生成する。生成部12は、検知方法における生成ステップST2の実行主体である。ここで、「散乱点41を生成する」とは、対象物3の表面における反射点を算出する(推定する)ことをいう。
【0026】
具体的には、生成部12は、例えば受信信号Sig1に基づいて、周波数変調連続波レーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)の技術を用いた処理を実行することにより、対象物3と電波センサ2との間の距離D1(図2参照)を算出する。また、生成部12は、例えば受信信号Sig1に基づいて、アレーアンテナ(複数の受信アンテナ221)の受信した反射電波(つまり、受信信号Sig1)を用いて到来方向を推定する処理を実行することにより、反射電波の到来角θ1(図2参照。つまり、電波センサ2に対する対象物3の方向)を算出する。さらに、生成部12は、例えば受信信号Sig1のRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を計測する、又は周波数変調連続波レーダの原理に従って、受信信号Sig1を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)したもの(距離スペクトルという)からピーク値を抽出することにより、反射電波の強度を計測する。つまり、散乱点41は、対象物3と電波センサ2との間の距離及び電波センサ2に対する対象物3の方向の少なくとも一方(実施の形態では、両方)に関する情報と、反射電波の強度に関する情報と、を含んでいる。
【0027】
以下、生成部12による散乱点41の生成の具体例について説明する。図2は、実施の形態に係る電波センサ2による対象物3の検知の概要を示す図である。図2における曲線状の破線は、電波センサ2から送信される電波を表している。図2に示す例では、電波センサ2の検知範囲には、対象物3として3人の人(第1対象物3A、第2対象物3B、及び第3対象物3C)が存在している。
【0028】
生成部12は、受信信号Sig1に基づいて上記の処理を実行することにより、各散乱点41を生成する。具体的には、生成部12は、第1対象物3Aについては、距離D1A、到来角θ1Aの第1散乱点41Aを生成する。また、生成部12は、第2対象物3Bについては、距離D1B、到来角θ1Bの第2散乱点41Bを生成する。また、生成部12は、第3対象物3Cについては、距離D1C、到来角θ1Cの第3散乱点41Cを生成する。なお、図2に示す例では、第1対象物3Aの第1散乱点41A、第2対象物3Bの第2散乱点41B、及び第3対象物3Cの第3散乱点41Cは、いずれも1点であるが、実際には多数の点が存在し得る。また、ここでは各散乱点41A~41Cの反射電波の強度については説明を省略する。
【0029】
図3は、実施の形態に係る検知システム10の生成部12により生成される散乱点41の一例を示す図である。図3に示す丸印は、生成部12で生成された散乱点41に対応しており、電波センサ2及び各対象物3を含む平面における電波センサ2を原点とした散乱点41の平面座標(xy座標)を表している。図3に示す例では、第1散乱点41Aの集合4Aの位置が、概ね第1対象物3Aの位置に対応している。また、第2散乱点41Bの集合4Bの位置が、概ね第2対象物3Bの位置に対応している。また、第3散乱点41Cの集合4Cの位置が、概ね第3対象物3Cの位置に対応している。
【0030】
分類部13は、生成部12が所定時間T1にわたって生成した散乱点41の集合である散乱点群4を1以上のクラスタ5(図5参照)に分類する。分類部13は、検知方法における分類ステップST3の実行主体である。例えば、散乱点群4が図3に示すように第1散乱点41Aの集合4A、第2散乱点41Bの集合4B、及び第3散乱点41Cの集合4Cを含んでいる場合、分類部13は、これらの集合4A~4Cをそれぞれ3つのクラスタ5に分類する。
【0031】
図4は、実施の形態に係る検知システム10の分類部13が分類対象とする散乱点群4の説明図である。図4に示す例では、「#1」~「#n(nは2以上の自然数)」、「#n+1」、及び「#n+2」は、それぞれフレーム(例えば、コンマ数秒)ごとに生成部12が生成した散乱点4の集合を表している。そして、分類部13は、所定時間T1(ここでは、nフレーム)に蓄積された散乱点4の集合を、1つの散乱点群4として、この散乱点群4に対して所定のアルゴリズムを用いてクラスタリングを実行する。
【0032】
図4に示す例では、「#1*」は、「#1」~「#n」のnフレームで蓄積された散乱点4の集合である散乱点群4を表している。また、「#2*」は、「#2」~「#n+1」のnフレームで蓄積された散乱点4の集合である散乱点群4を表している。また、「#3*」は、「#3」~「#n+2」のnフレームで蓄積された散乱点4の集合である散乱点群4を表している。分類部13は、これら「#1*」、「#2*」、及び「#3*」の各々の散乱点群4について、1以上のクラスタ5に分類する。つまり、分類部13は、周期P1(1フレーム)ごとに散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類する。
【0033】
実施の形態では、分類部13は、散乱点41の密度に基づいて孤立点を除去するアルゴリズムを用いて、散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類する。具体的には、分類部13は、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)を用いて、散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類する。
【0034】
DBSCANにおいては、任意の散乱点41がコア点であれば、当該コア点と、当該コア点から到達可能な全ての到達可能点とが1つのクラスタ5を形成する。また、DBSCANにおいては、コア点及び到達可能点のいずれにも該当しない散乱点41は、外れ値(孤立点)である。孤立点は、クラスタ5に分類されない(つまり、除去される)。ここで、「コア点」は、任意の「点p」が存在するとして、この「点p」から「距離ε」内に少なくとも「minPts個」の点がある場合における「点p」をいう。また、「到達可能点」とは、コア点から「距離ε」内に存在することでコア点から直接到達可能な点と、コア点から「距離ε」内に存在しないが、コア点から他のコア点を介して到達可能な点と、を含む。「距離ε」及び「minPts」は、いずれも適宜設定可能なパラメータである。
【0035】
図5は、実施の形態に係る検知システム10の分類部13が分類対象とする散乱点群4の概要を示す図である。図5に示す例では、破線の丸で囲まれた領域が分類部13で分類されたクラスタ5を表しており、丸印が散乱点41を表している。また、図5に示す例では、×印は、後述する重心算出部14が算出した前回以前の周期P1での重心42が、散乱点41として散乱点群4に含まれていることを表している。なお、重心42は、散乱点41として1つだけ散乱点群4に含まれていてもよいし、複数が散乱点群に含まれていてもよい。重心42が散乱点群4の複数含まれる場合、複数の重心42が1箇所に重複することになる。
【0036】
ここでいう「前回以前の周期P1」とは、分類部13が散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類した周期P1を今回の周期P1とした場合における、今回の周期P1よりも1つ以上前の周期P1のことをいう。図5に示す例では、破線の丸で囲まれた領域が今回の周期P1でのクラスタ5を表しており、丸印が今回の周期P1での散乱点41を表しており、×印が前回の周期P1での重心42を表している。
【0037】
なお、重心算出部14が未だ重心42を算出していない時点においては、当然、散乱点群4には重心42が含まれることはない。つまり、散乱点群4には、基本的に重心算出部14が重心42を算出した周期P1以降の周期P1においては、重心42が散乱点41として含まれることになる。
【0038】
重心算出部14は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5ごとに重心42を算出する。重心算出部14は、検知方法における重心算出ステップST4の実行主体である。実施の形態では、重心算出部14は、1以上のクラスタ5の各々について、クラスタ5に含まれる各散乱点41(前回の周期P1の重心42を含む)の平面座標(xy座標)と、各散乱点41の反射電波の強度とを用いて、以下の式(1)、(2)により重心42の平面座標(xy座標)を算出する。以下の式(1)は、重心42のx座標を算出するための数式であり、式(2)は、重心42のy座標を算出するための数式である。以下の式(1)、(2)のいずれにおいても、「p」は反射電波の強度を表している。
【0039】
【数1】
【0040】
【数2】
【0041】
関連付け部15は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける。関連付け部15は、検知方法における関連付けステップST5の実行主体である。関連付け部15が1以上のクラスタ5を対象物3と関連付けることにより、関連付けられたクラスタ5の位置が対象物3の位置として検知される。
【0042】
図6は、実施の形態に係る検知システム10の関連付け部15による対象物3とクラスタ5との関連付けの基本例を示す図である。図6は、電波センサ2の検知範囲に2人の人(対象物3)が存在する場合の分類部13による分類の結果を示している。なお、図6に示す例では、2人の人(対象物3)は静止状態にあり、殆ど移動していないこととする。
【0043】
図6において、「Cls(a,b)」の「a」は分類部13により任意に付与されるクラスタの番号を表しており、「b」は周期P1を表している。図6に示す例では、n-2番目の周期P1における左下のクラスタ5であるCls(1,n-2)と、n-1番目の周期P1における左下のクラスタ5であるCls(2,n-1)と、n番目の周期P1おける左下のクラスタ5であるCls(2,n)が、いずれも概ね同じ位置にある。このため、関連付け部15は、左下のクラスタ5を2人のうちの一方の1人(対象物3)と関連付ける。
【0044】
また、図6に示す例では、n-2番目の周期P1における右上のクラスタ5であるCls(2,n-2)と、n-1番目の周期P1における右上のクラスタ5であるCls(3,n-1)と、n番目の周期P1おける右上のクラスタ5であるCls(1,n)が、いずれも概ね同じ位置にある。このため、関連付け部15は、右上のクラスタ5を2人のうちの他方の1人(対象物3)と関連付ける。
【0045】
なお、図6に示す例では、n-1番目の周期P1における左上のクラスタ5であるCls(1,n-1)は、n-2番目の周期P1及びn番目の周期P1には存在していない。このため、関連付け部15は、当該クラスタ5については対象物3に関連付けない。
【0046】
実施の形態では、関連付け部15は、前回以前の周期P1での重心42が、分類部13が分類した1以上のクラスタ5に含まれるか否かに基づいて、1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける。
【0047】
図7は、実施の形態に係る検知システム10の関連付け部15による対象物3とクラスタ5との関連付けの説明図である。図7に示す各列は、周期P1において、分類部13が散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類し、重心算出部14が1以上のクラスタ5の各々について重心42を算出する流れを示している。また、図7に示す破線の楕円で囲まれた箇所は、今回の周期P1におけるクラスタ5であるCls(α、n)が、前回の周期P1におけるクラスタ5であるCls(β、n-1)の重心42であるG(β、n-1)を含むか否かを判定する処理を表している。なお、「α」、「β」は分類部13により任意に付与されるクラスタ5の番号を表しており、「n」、「n-1」は周期P1を表している。
【0048】
関連付け部15は、Cls(α、n)にG(β、n-1)が含まれている場合、今回の周期P1におけるクラスタ5であるCls(α、n)と、前回の周期P1におけるクラスタ5であるCls(β、n-1)とが同じ対象物3に由来する、と判定する。つまり、関連付け部15は、現在のクラスタ5と過去のクラスタ5とを関連付けることにより、対象物3を捕捉することが可能である。なお、関連付け部15は、Cls(α、n)にG(β、n-1)が含まれていない場合、今回の周期P1におけるクラスタ5であるCls(α、n)と、前回の周期P1におけるクラスタ5であるCls(β、n-1)とが互いに異なる対象物3に由来する、と判定する。
【0049】
混合部16は、重心算出部14が算出した前回以前の周期P1での重心42を、散乱点41として散乱点群4に混合する(含める)。混合部16は、検知方法における混合ステップST6の実行主体である。混合部16は、既に述べた図5に示すように、今回の周期P1において生成部12が生成した散乱点41の集合に、前回以前の周期P1において重心算出部14が算出した1以上の重心42を、1以上の散乱点41として混合する。
【0050】
実施の形態では、混合部16は、散乱点群4に混合する前回以前の周期P1での重心42の混合量又は遅延量を調整する。ここで、「重心42の混合量」とは、散乱点41の集合に混合する重心42の数である。つまり、混合部16は、今回の周期P1における散乱点41の集合に、1つの重心42を混合するか、又は複数の重心42を混合するかを調整する。
【0051】
また、「重心42の遅延量」とは、散乱点41の集合に混合する重心42が、どれだけ以前の周期P1の重心42であるかを示す。つまり、混合部16は、今回の周期P1における散乱点41の集合に、前回の周期P1の重心42を混合するか、又は前回よりも前の周期P1の重心42を更に混合するかを調整する。
【0052】
混合部16が散乱点群4に混合する前回以前の周期P1での重心42の混合量又は遅延量を調整することにより、現在のクラスタ5と過去のクラスタ5との関連付けを行いやすくしたり、時間経過に伴うクラスタ5の位置の変化を平滑にしたりすることが可能である。
【0053】
特に、実施の形態では、分類部13がDBSCANを用いて散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類している。このため、混合部16は、コア点が消失しないように(つまり、コア点が孤立点とならないように)散乱点群4に含める重心42の数(混合量)を調整することで、クラスタ5の消失を防ぎ、結果として対象物3を捕捉し続けることが可能になる。
【0054】
以下、混合部16の第1動作例~第3動作例を列挙する。実施の形態では、混合部16は、第1動作例及び第2動作例のいずれか一方と、第3動作例とを適用しているが、いずれか1つの動作例のみを適用してもよい。また、以下に示す混合部16の動作例は、あくまで一例であって、混合部16は他の動作例を適用してもよい。
【0055】
第1動作例では、混合部16は、1以上のクラスタ5の各々について、重心42以外の散乱点41が含まれていなければカウンタをインクリメントし、含まれていればカウンタをリセットする。そして、混合部16は、カウンタが閾値(第1閾値)Th1に達すると、重心42を破棄する(つまり、重心42を散乱点41として散乱点群4に含めない)。これにより、散乱点41が存在しないまま残留し続けているクラスタ5は、カウンタが閾値Th1に達すると、消滅することになる。
【0056】
以下、第1動作例について図8及び図9を用いて説明する。図8は、実施の形態に係る検知システム10の混合部16の第1動作例の説明図である。図9は、実施の形態に係る検知システム10の混合部16の第1動作例におけるクラスタ5の遷移の説明図である。図8における(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ図9における(a)、(b)、(c)、及び(d)に対応している。図9において、実線の丸で囲まれた領域は、クラスタ5に散乱点41及び重心42の両方が含まれていることを表しており、破線の丸で囲まれた領域は、クラスタ5に重心42が含まれているが、散乱点41が含まれていないことを表している。なお、図9では、散乱点41の図示を省略している。
【0057】
(a)の状態では、分類部13は、散乱点群4を3つのクラスタ5(第1クラスタ5A、第2クラスタ5B、及び第3クラスタ5C)に分類している。この状態では、各クラスタ5A~5Cには散乱点41が含まれている。したがって、混合部16は、いずれのクラスタ5A~5Cに対応するカウンタもインクリメントしない。
【0058】
(b)の状態では、第1クラスタ5Aには依然として散乱点41が含まれているが、第2クラスタ5B及び第3クラスタ5Cからは散乱点41が消失している。このため、混合部16は、第2クラスタ5B及び第3クラスタ5Cの各々に対応するカウンタをインクリメントする。なお、カウンタは、周期P1ごとにインクリメントされる。
【0059】
(c)の状態では、第2クラスタ5Bにおいては一時的に消失していた散乱点41が復活している一方、第3クラスタ5Cでは依然として散乱点41が消失している。このため、混合部16は、第2クラスタ5Bに対応するカウンタをリセットする一方、第3クラスタ5Cに対応するカウンタをインクリメントし続ける。
【0060】
(d)の状態では、第3クラスタ5Cに対応するカウンタが閾値(第1閾値)Th1に達している。このため、混合部16は、第3クラスタ5Cに対応する重心42を破棄する、つまり、第3クラスタ52Cに散乱点41として重心42を含めないように重心42の混合量を調整する。これにより、第3クラスタ5Cには散乱点41及び重心42が存在しないことになり、第3クラスタ5Cが消失する。
【0061】
上述のように、第1動作例では、散乱点41が存在しない、つまり対象物3が存在しないにも関わらず対応するクラスタ5が残留し続けるのを防ぐことができ、対象物3の検知精度を向上しやすくなる、という利点がある。
【0062】
第2動作例では、混合部16は、1以上のクラスタ5の各々について、重心42以外の散乱点41が含まれていなければ重心42の混合量を減少させ、含まれていれば重心42の混合量を元に戻す。これにより、散乱点41が存在しないまま残留し続けているクラスタ5は、重心42の混合量が減少することで、重心42の数がDBSCANにおける「minPts」に対応する閾値(第2閾値)Th2を下回ると、コア点の消失に伴って消滅することになる。
【0063】
以下、第2動作例について図9及び図10を用いて説明する。図10は、実施の形態に係る検知システム10の混合部16の第2動作例の説明図である。図10における(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ図9における(a)、(b)、(c)、及び(d)に対応している。
【0064】
(a)の状態では、各クラスタ5A~5Cには散乱点41が含まれている。したがって、混合部16は、いずれのクラスタ5A~5Cに対応する重心42の混合量も減少させない。
【0065】
(b)の状態では、第1クラスタ5Aには依然として散乱点41が含まれているが、第2クラスタ5B及び第3クラスタ5Cからは散乱点41が消失している。このため、混合部16は、第2クラスタ5B及び第3クラスタ5Cの各々に対応する重心42の混合量を減少させる。なお、重心42の混合量は、周期P1ごとに減少される。
【0066】
(c)の状態では、第2クラスタ5Bにおいては一時的に消失していた散乱点41が復活している一方、第3クラスタ5Cでは依然として散乱点41が消失している。このため、混合部16は、第2クラスタ5Bに対応する重心42の混合量を元に戻す一方、第3クラスタ5Cに対応する重心42の混合量を減少させ続ける。
【0067】
(d)の状態では、第3クラスタ5Cに対応する重心42の混合量が閾値(第2閾値)Th2に達している。これにより、第3クラスタ5Cからコア点が消失することになり、第3クラスタ5Cが消失する。
【0068】
上述のように、第2動作例では、散乱点41が存在しない、つまり対象物3が存在しないにも関わらず対応するクラスタ5が残留し続けるのを防ぐことができ、対象物3の検知精度を向上しやすくなる、という利点がある。
【0069】
第3動作例では、混合部16は、電波センサ2が特定モードで動作している場合に、電波センサ2が通常モードで動作している場合と比較して、重心42の混合量を増大させる。これにより、電波センサ2が特定モードで動作している場合においては、クラスタ5は、電波センサ2が通常モードで動作している場合と比較して、重心42の位置に依存しやすくなる。
【0070】
以下、第3動作例について図11を用いて説明する。図11は、実施の形態に係る検知システム10の混合部16の第3動作例の説明図である。図11において、重心42を示す×印の大小は、重心42の混合量の大小を表している。つまり、重心42を示す×印が大きければ大きい程、重心42の混合量が大きい(つまり、重心42の数が多い)ことを表している。
【0071】
第3動作例では、検知システム10は、対象物3の検知位置の変動が小さいと判定した場合に、電波センサ2の動作モードを通常モードから特定モードに切り替える。対象物3の検知位置の変動が小さい状態は、例えば人(対象物3)が就寝している場合に発生し得る。例えば、検知システム10は、対象物3に対応するクラスタ5における散乱点41の数が閾値を下回ると、電波センサ2の動作モードを通常モードから特定モードに切り替え、閾値を上回ると、電波センサ2の動作モードを特定モードから通常モードに切り替える。また、例えば、検知システム10は、反射電波の強度の安定度が閾値を上回ると、電波センサ2の動作モードを通常モードから特定モードに切り替え、閾値を下回ると、電波センサ2の動作モードを特定モードから通常モードに切り替えてもよい。
【0072】
上述のように、第3動作例では、電波センサ2が特定モードで動作している場合においては、クラスタ5に含まれる重心42の数が多くなることから、クラスタ5の位置、つまり対象物3の検知位置が変動しにくくなる。このため、ビームフォーミングにより対象物3に対して電波を集中して放射又は選択的に受信しやすくなり、対象物3の生体情報を取得しやすくなる、という利点がある。
【0073】
[2.動作]
以下、実施の形態に係る検知システム10の動作の一例について図12を用いて説明する。図12は、実施の形態に係る検知システム10の動作例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、取得部11は、電波センサ2から出力される受信信号Sig1を定期的に取得する(S1)。処理S1は、検知方法の取得ステップST1に相当する。次に、生成部12は、取得部11が取得した受信信号Sig1に基づいて、散乱点41を生成する(S2)。処理S2は、検知方法における生成ステップST2に相当する。
【0075】
次に、分類部13は、生成部12が所定時間T1(例えば、nフレーム)にわたって生成した散乱点41の集合である散乱点群4を、1以上のクラスタ5に分類する(S3)。処理S3は、検知方法における分類ステップST3に相当する。ここで、前回以前の周期P1での重心42を重心算出部42が算出している場合は、後述するように、散乱点群4には当該重心42が含まれることになる。次に、重心算出部14は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5ごとに重心42を算出する(S4)。処理S4は、検知方法における重心算出ステップST4に相当する。
【0076】
次に、関連付け部15は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける(S5)。処理S5は、検知方法における関連付けステップST5に相当する。ここでは、関連付け部15は、前回以前の周期P1での重心42を重心算出部14が算出している場合であれば、当該重心42が今回の周期P1における1以上のクラスタ5に含まれるか否かに基づいて、1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける。
【0077】
そして、混合部16は、重心算出部14が算出した前回以前の周期P1での重心42を、散乱点41として散乱点群4に混合する(S6)。処理S6は、検知方法における混合ステップST6に相当する。なお、処理S5,S6は、その順番が逆であってもよいし、並行して実行されてもよい。以下、上記の処理S1~S6を繰り返す。
【0078】
[3.利点]
上述のように、実施の形態に係る検知システム10は、重心算出部14が算出した前回以前の周期P1での重心42を含めてクラスタリングを行っている。このため、実施の形態に係る検知システム10では、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを関連付けやすくなり、対象物3を捕捉しやすくなるので、対象物3の位置の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【0079】
ここで、過去のクラスタと現在のクラスタとが同じ対象物に由来するか否かは、例えば過去のクラスタの重心と現在のクラスタの重心との間の距離、現在のクラスタと過去のクラスタの重心との間の距離、過去のクラスタと現在のクラスタの重心との間の距離、又は過去のクラスタと現在のクラスタとの類似度等に基づいて判定することが考えられる。しかしながら、これらの判定は、上記の距離又は類似度をどのように設定するかによって結果が大きく異なり得るため、関連付けとしての安定性に欠けるという問題がある。
【0080】
これに対して、実施の形態に係る検知システム10では、関連付け部15が、前回以前の周期P1での重心42が、分類部13が分類した1以上のクラスタ5に含まれるか否かに基づいて、1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付けている。このため、実施の形態に係る検知システム10では、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを更に関連付けやすくなり、対象物3を更に捕捉しやすくなる、という利点がある。
【0081】
以下、実施の形態に係る検知システム10の利点について、図13A及び図13Bを用いて説明する。図13Aは、比較例の検知システムの検知結果の一例を示す図である。図13Bは、実施の形態に係る検知システム10の検知結果の一例を示す図である。図13A及び図13Bのいずれにおいても、縦軸がクラスタ5の重心42の平面座標(ここではx座標)、横軸が時間を表している。また、図13A及び図13Bのいずれにおいても、「□」、「△」、及び「〇」はそれぞれ互いに異なる3つの対象物3を表している。なお、「×」はいずれの対象物3にも対応していない。
【0082】
比較例の検知システムは、混合部16を備えておらず、かつ、前回以前の周期P1での重心42が1以上のクラスタ5に含まれるか否かの関連付けを行っていない点で、実施の形態に係る検知システム10と相違する。図13Aに示すように、比較例の検知システムでは、「□」、「△」、及び「〇」の各々に対応する対象物3のx座標がいずれも不安定であり、対象物3を捕捉できていない。これに対して、実施の形態に係る検知システム10では、「□」、「△」、及び「〇」の各々に対応する対象物3のx座標がいずれも安定しており、対象物3を捕捉できている。
【0083】
(変形例)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。以下、実施の形態の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0084】
実施の形態において、検知システム10Aは、図14に示すように予測部17を更に備えていてもよい。図14は、実施の形態の変形例に係る検知システム10Aを含む全体構成を示すブロック図である。
【0085】
予測部17は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5ごとに、次回以降の周期P1での重心43を予測する。具体的には、予測部17は、重心算出部14が算出した今回以前の周期P1での重心42の時系列データに対して、例えばα-βフィルタ又はカルマンフィルタ等を用いることで、次回の周期P1での重心43を予測する。
【0086】
そして、検知システム10Aでは、混合部16は、図15に示すように、予測部17が予測した次回以降の周期P1での重心43を、散乱点41として散乱点群4に混合する。図15は、実施の形態の変形例に係る検知システム10Aの分類部13が分類対象とする散乱点群4の概要を示す図である。図15に示す例では、実線の×印で示される今回の周期P1での重心42に基づいて、破線の×印で示される次回の周期P1での重心43が予測され、予測された重心43が散乱点41として散乱点群4に含まれていることを表している。
【0087】
上述のように、検知システム10Aでは、予測部17により予測された次回以降の周期P2での重心43を含めて散乱点群4をクラスタリングすることで、対象物3の将来の位置を推定して検知することが可能である。このため、検知システム10Aでは、対象物3が移動している場合でも、対象物3の位置を精度良く検知しやすい、という利点がある。
【0088】
実施の形態では、電波センサ2は、通常モードと特定モードとのいずれかに動作を切り替え可能であるが、これに限られない。例えば、電波センサ2は、通常モードのみで動作するように構成されていてもよい。この場合、混合部16においては、第3動作例は適用されない。
【0089】
実施の形態では、分類部13は、クラスタリングのアルゴリズムとしてDBSCANを用いているが、これに限られない。例えば、分類部13は、クラスタリングのアルゴリズムとして、Ward法、又はk平均法(k-means clustering)等を用いてもよい。
【0090】
実施の形態では、重心算出部14は、1以上のクラスタ5の各々について、反射電波の強度を重み付け係数として用いて重心42を算出しているが、これに限られない。例えば、重心算出部14は、単に散乱点41の位置情報のみを参照して1以上のクラスタ5の各々の重心42を算出してもよい。
【0091】
また、実施の形態では、重心算出部14は、1以上のクラスタ5の各々について、前回の周期P1の重心42も散乱点41として含めて重心42を算出しているが、これに限られない。例えば、重心算出部14は、1以上のクラスタ5の各々について、前回の周期P1の重心42を散乱点41として含めずに重心42を算出してもよい。
【0092】
実施の形態では、重心算出部14は、1以上のクラスタ5ごとに重心42の平面座標(xy)座標を算出しているが、これに限られない。例えば、散乱点41が高さ方向(z方向)の情報を含む場合、重心算出部14は、1以上のクラスタ5ごとに重心42の立体座標(xyz座標)を算出してもよい。この場合、z座標を算出するには、上述の式(1)において「x」を「z」に置き換えればよい。また、重心算出部14は、重心42を示す情報として、反射電波の強度の平均値を更に算出してもよい。
【0093】
実施の形態では、検知システム10は、単一の装置によって実現されたが、複数の装置により実現されてもよい。検知システム10が複数の装置によって実現される場合、検知システム10が備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。また、例えば、上記実施の形態で検知システム10が備える構成要素は、施設又は施設から離れた遠隔地に設置されたサーバ装置に備えられてもよい。この場合、検知システム10は、例えば電波センサ2とインターネット等のネットワークを介して無線通信することにより、電波センサ2から出力される受信信号Sig1を取得すればよい。つまり、本発明は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよいし、エッジコンピューティングによって実現されてもよい。
【0094】
例えば、上記実施の形態における装置間の通信方法については特に限定されるものではない。また、装置間の通信においては、図示されない中継装置が介在してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0096】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0097】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0098】
例えば、本発明は、検知システム10等のコンピュータが実行する管理方法として実現されてもよいし、このような管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0099】
実施の形態において、検知システム10は、図1に示すように、電波センサ2と共にセンサシステム100を構成してもよい。すなわち、センサシステム100は、検知システム10と、検知システム10により制御される電波センサ2と、を備える。
【0100】
なお、センサシステム100は、実施の形態の変形例に係る検知システム10Aと、電波センサ2とで構成されていてもよい。また、センサシステム100において、検知システム10と電波センサ2とは、互いに別体であってもよいし、一体に構成されていてもよい。例えば、センサシステム100は、電波センサ2の筐体に検知システム10に相当する信号処理回路を内蔵することにより、構成されていてもよい。
【0101】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0102】
(まとめ)
以上述べたように、検知システム10は、取得部11と、生成部12と、分類部13と、重心算出部14と、関連付け部15と、混合部16と、を備える。取得部11は、対象物3に対して送信アンテナ211から電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナ221により対象物3からの反射電波を受信する電波センサ2から受信信号Sig1を取得する。生成部12は、取得部11が取得した受信信号Sig1に基づいて、対象物3の位置情報を含む散乱点41を生成する。分類部13は、生成部12が所定時間T1にわたって生成した散乱点41の集合である散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類する。重心算出部14は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5ごとに重心42を算出する。関連付け部15は、分類部13が分類した1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける。混合部16は、重心算出部14が算出した前回以前の周期P1での重心42を、散乱点41として散乱点群4に混合する。
【0103】
このような検知システム10によれば、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを関連付けやすくなり、対象物3を捕捉しやすくなるので、対象物3の位置の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【0104】
また、例えば、検知システム10では、散乱点41は、対象物3と電波センサ2との間の距離及び電波センサ2に対する対象物3の方向の少なくとも一方に関する情報と、反射電波の強度に関する情報と、を含む。
【0105】
このような検知システム10によれば、対象物3の位置の検知精度を更に向上しやすい、という利点がある。
【0106】
また、例えば、検知システム10では、関連付け部15は、前回以前の周期P1での重心42が、分類部13が分類した1以上のクラスタ5に含まれるか否かに基づいて、1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける。
【0107】
このような検知システム10によれば、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを更に関連付けやすくなり、対象物3を更に捕捉しやすくなる、という利点がある。
【0108】
また、例えば、検知システム10では、分類部13は、散乱点41の密度に基づいて孤立点を除去するアルゴリズムを用いて、散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類する。
【0109】
このような検知システム10によれば、対象物3とは関係のないノイズを除去して1以上のクラスタ5に分類しやすくなるので、対象物3の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【0110】
また、例えば、検知システム10では、混合部16は、散乱点群4に混合する前回以前の周期P1での重心42の混合量又は遅延量を調整する。
【0111】
このような検知システム10によれば、現在のクラスタ5と過去のクラスタ5との関連付けを行いやすくしたり、時間経過に伴うクラスタ5の位置の変化を平滑にしたりすることが可能になる、という利点がある。
【0112】
また、例えば、検知システム10では、混合部16は、1以上のクラスタ5の各々について、重心42以外の散乱点41が含まれていなければカウンタをインクリメントし、含まれていればカウンタをリセットし、カウンタが閾値(第1閾値)Th1に達すると、重心42を破棄する。
【0113】
このような検知システム10によれば、散乱点41が存在しない、つまり対象物3が存在しないにも関わらず対応するクラスタ5が残留し続けるのを防ぐことができ、対象物3の検知精度を向上しやすくなる、という利点がある。
【0114】
また、例えば、検知システム10では、混合部16は、1以上のクラスタ5の各々について、重心42以外の散乱点41が含まれていなければ重心42の混合量を減少させ、含まれていれば重心42の混合量を元に戻す。
【0115】
このような検知システム10によれば、散乱点41が存在しない、つまり対象物3が存在しないにも関わらず対応するクラスタ5が残留し続けるのを防ぐことができ、対象物3の検知精度を向上しやすくなる、という利点がある。
【0116】
また、例えば、検知システム10では、電波センサ2は、通常モードと、電波を特定の方向に集中して放射又は選択的に受信する特定モードとのいずれかに動作を切り替え可能である。混合部16は、電波センサ2が特定モードで動作している場合に、電波センサ2が通常モードで動作している場合と比較して、重心42の混合量を増大させる。
【0117】
このような検知システム10によれば、対象物3の検知位置が変動しにくくなることから、例えばビームフォーミングにより対象物3に対して電波を集中して放射又は選択的に受信しやすくなり、対象物3の生体情報を取得しやすくなる、という利点がある。
【0118】
また、例えば、検知システム10Aは、分類部13が分類した1以上のクラスタ5ごとに、次回以降の周期P1での重心42を予測する予測部17を更に備える。混合部16は、予測部17が予測した次回以降の周期での重心42を、散乱点41として散乱点群4に混合する。
【0119】
このような検知システム10Aによれば、対象物3が移動している場合でも、対象物3の位置を精度良く検知しやすい、という利点がある。
【0120】
また、例えば、センサシステム100は、検知システム10と、検知システム10により制御される電波センサ2と、を備える。
【0121】
このようなセンサシステム100によれば、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを関連付けやすくなり、対象物3を捕捉しやすくなるので、対象物3の位置の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【0122】
また、例えば、検知方法は、取得ステップST1と、生成ステップST2と、分類ステップST3と、重心算出ステップST4と、関連付けステップST5と、混合ステップST6と、を含む。取得ステップST1では、対象物3に対して送信アンテナ211から電波を放射し、かつ、複数の受信アンテナ221により対象物3からの反射電波を受信する電波センサ2から受信信号Sig1を取得する。生成ステップST2では、取得ステップST1が取得した受信信号Sig1に基づいて、対象物3の位置情報を含む散乱点41を生成する。分類ステップST3では、生成ステップST2が所定時間T1にわたって生成した散乱点41の集合である散乱点群4を1以上のクラスタ5に分類する。重心算出ステップST4では、分類ステップST3が分類した1以上のクラスタ5ごとに重心42を算出する。関連付けステップST5では、分類ステップST3が分類した1以上のクラスタ5のいずれかを対象物3と関連付ける。混合ステップST6では、重心算出ステップST4が算出した前回以前の周期P1での重心42を、散乱点41として散乱点群4に混合する。
【0123】
このような検知方法によれば、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを関連付けやすくなり、対象物3を捕捉しやすくなるので、対象物3の位置の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【0124】
また、例えば、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記の検知方法を実行させる。
【0125】
このようなプログラムによれば、過去のクラスタ5と現在のクラスタ5とを関連付けやすくなり、対象物3を捕捉しやすくなるので、対象物3の位置の検知精度を向上しやすい、という利点がある。
【符号の説明】
【0126】
10,10A 検知システム
11 取得部
12 生成部
13 分類部
14 重心算出部
15 関連付け部
16 混合部
17 予測部
2 電波センサ
211 送信アンテナ
221 受信アンテナ
3 対象物
100 センサシステム
4 散乱点群
41 散乱点
42,43 重心
5 クラスタ
T1 所定時間
P1 周期
Sig1 受信信号
ST1 取得ステップ
ST2 生成ステップ
ST3 分類ステップ
ST4 重心算出ステップ
ST5 関連付けステップ
ST6 混合ステップ
Th1 第1閾値(閾値)
図1
図2
図3
図4
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図9
図10
図11
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図13A
図13B
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図15