(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】断熱体
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20240927BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240927BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240927BHJP
B01D 53/28 20060101ALI20240927BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16L59/02
B01J20/34 H
B01D53/26 210
B01D53/28
B01J20/26 D
(21)【出願番号】P 2020185507
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】流郷 謙一
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】中西 和樹
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107226(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050084(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/232087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
B01J 20/34
B01D 53/26
B01D 53/28
B01J 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱体であって、
吸着水分を脱着することによって再生する高分子収着剤と、断熱材料とを含有
し、
前記高分子収着剤と、前記断熱材料とのうち少なくともいずれか一方は粒状であり、
前記断熱材料は、撥水性を有するエアロゲルである、
断熱体。
【請求項2】
前記高分子収着剤と、前記断熱材料と
の両方が、粒状であ
り、混合されている、請求項1に記載の断熱体。
【請求項3】
前記高分子収着剤は、前記吸着水分を脱着する再生温度が40℃以上100℃以下である、請求項1または請求項2に記載の断熱体。
【請求項4】
前記高分子収着剤は、ポリアクリル酸塩架橋体を含有する、請求項3に記載の断熱体。
【請求項5】
前記断熱体に対する前記高分子収着剤の体積比は1%未満である、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の断熱体。
【請求項6】
前記エアロゲルは、ポリメチルシルセスキオキサンを含有する、請求項
1から請求項5までのいずれか一項に記載の断熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の外周に断熱体を配置する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断熱の対象物と、断熱体との間に結露によって水滴が滞留すると、例えば、腐食などによって対象物を劣化させることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の第1の形態によれば、断熱体が提供される。この断熱体は、吸着水分を脱着することによって再生する高分子収着剤と、断熱材料とを含有し、前記高分子収着剤と、前記断熱材料とのうち少なくともいずれか一方は粒状であり、前記断熱材料は、撥水性を有するエアロゲルである。また、本開示は以下の形態を含む。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、断熱体が提供される。この断熱体は、吸着水分を脱着することによって再生する高分子収着剤と、断熱材料とを含有する。この形態の断熱体によれば、断熱性能を備えつつ、断熱の対象物と、断熱体との間の液水を繰り返し吸着することによって、断熱の対象物と、断熱体との間に水滴が滞留することを低減または防止し、対象物の劣化を防止することができる。
(2)上記形態の断熱体において、前記高分子収着剤と、前記断熱材料とのうち少なくともいずれか一方は粒状であってよい。この形態の断熱体によれば、断熱体の充填率を向上し、断熱性能の向上、ならびに結露を抑制することができ、対象物の劣化をより確実に防止することができる。
(3)上記形態の断熱体において、前記高分子収着剤は、前記吸着水分を脱着する再生温度が40℃以上100℃以下であってよい。この形態の断熱体によれば、温度変化が100℃以下の対象物の断熱に好適な断熱体を得ることができる。
(4)上記形態の断熱体において、前記高分子収着剤は、ポリアクリル酸塩架橋体を含有してよい。この形態の断熱体によれば、既知の材料を用いて、温度変化が100℃以下の対象物の断熱に好適な断熱体を得ることができる。
(5)上記形態の断熱体において、前記断熱体に対する前記高分子収着剤の体積比は1%未満であってよい。この形態の断熱体によれば、断熱性能を充分に備えつつ、対象物の劣化を低減または防止することができる断熱体を得ることができる。
(6)上記形態の断熱体において、前記断熱材料は、撥水性を有するエアロゲルであってよい。この形態の断熱体によれば、液水を高分子収着材に円滑に導くことができ、断熱体の吸湿性能を向上することができる。
(7)上記形態の断熱体において、前記エアロゲルは、ポリメチルシルセスキオキサンを含有してよい。この形態の断熱体によれば、超臨界乾燥により生成されるシリカエアロゲルなどと比較して生産性を向上することができる。
本開示は、断熱体以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、断熱材、断熱層、断熱体を有する流通管、断熱体の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】高分子収着剤の20℃における等温吸着特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態の断熱体50の構成を示す説明図である。
図1には、断熱体50を装着した流通管40の横断面が示されている。
図1に示すように、本実施形態の断熱体50は、流通管40の外周を覆うように設けられている。断熱体50の外周には、保護層60が設けられている。
【0009】
流通管40は、その内部に流路30を備えている。流通管40は、円筒形状であり、鋳鉄やステンレス鋼などの金属などによって形成されている。流通管40は、工業用途として用いられ、エンジンやボイラなどの熱源を有する図示しない装置に接続されている。流路30には、装置の稼働時に発生した廃熱によって昇温された流体が流通する。流体としては、例えば、エンジンやボイラからの排気ガスや、クーラントなどの冷媒が含まれる。本実施形態において、流通管40は、装置の稼働時には70℃まで上昇し、装置の停止時には35℃まで低下する。
【0010】
保護層60は、例えば、アルミシートである。保護層60は、断熱体50を覆うように配置されている。保護層60は、流通管40との間に、断熱体50を充填するための空間を規定している。また、保護層60は、断熱体50が外気に曝されることを防止し、外部から断熱体50への液水の侵入を防止している。保護層60は、補強のために、ガラスクロスなどを含有してもよい。保護層60は、アルミシートのほか、鋳鉄やステンレス鋼などの金属や合成樹脂などによって形成されてよい。形状を充分に維持できる程度に断熱体50を成形でき、保護層60を備えることなく流通管40の外周に配置できる場合などには、保護層60は省略されてよい。保護層60は、断熱体50が吸湿した水分を放出するために、外部と断熱体50とを連通する貫通孔が設けられていてもよい。
【0011】
断熱体50は、流通管40の外表面から外側への熱移動を低減または防止する。断熱体50は、流通管40の径方向外側、すなわち流通管40の外周を周方向に取り巻くように配置されている。本実施形態において、断熱体50は、粒状の断熱材料と、粒状の高分子収着剤とを後述する体積比にて混ぜ合わせることによって得られた混合物を、流通管40と保護層60との間の空間に充填することによって形成される。断熱体50において、断熱材料と高分子収着材との充填率は80%である。高分子収着材および断熱材料の粒子径は、数十μmから数mm程度である。断熱体50は、断熱材料および高分子収着剤のほか、さらに、例えば、樹脂やガラスなどの高分子材料を含んでよい。断熱体50は、不織布や織布などの繊維に断熱材料および高分子収着剤を含有することによって形成されてよく、断熱材料および高分子収着剤を含有した高分子材料を成形することによって形成されてもよい。この形態の断熱体50によれば、断熱材料および高分子収着剤を含有しつつ、容易に成形することができる。
【0012】
断熱材料は、例えば、撥水性を有するエアロゲルである。本実施形態において、断熱材料には、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)を含有する、いわゆる有機-無機ハイブリッドエアロゲルとも呼ばれるエアロゲルが用いられている。ポリメチルシルセスキオキサン(化学式:CH3SiO1.5)とは、有機ケイ素アルコキシドのひとつであるメチルトリメトキシシラン(化学式:CH3Si(OCH3)3)が三次元網目状に架橋した重合体であり、シリコン樹脂の真球状微粒子である。ポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルは、ゾル-ゲル法などの液相法による湿潤ゲル形成によって作製され、本実施形態では、さらに粒状に加工されている。ポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルは、熱伝導率が15mW・m-1・K-1程度であり、一般的な断熱材の熱伝導率(20~40mW・m-1・K-1)よりも低い熱伝導率を備えている。また、ポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルは、メチル基がシリコンに直接的に結合している。そのため、シリコン樹脂やポリジメチルシロキサン(PDMS)などと同程度の低い表面エネルギを有し、水接触角が150℃程度を示す高い疎水性を有している。断熱材料の形態は、粒状には限定されず、粉体やブロック状、平板状などの種々の形態であってもよい。
【0013】
高分子収着剤は、収着現象(Sorption)により断熱体50の除湿を行う。高分子収着材は、デシカント材とも呼ばれる。収着現象とは、親水性高分子鎖へ水分子が結合するとともに、その架橋点を支点として高分子架橋体が膨潤変形しながら水分子をトラップする現象を意味する。高分子収着材は、さらに、その温度が上昇すると、高分子架橋体が収縮し、高分子架橋体に収着した水分子が高分子架橋体の収縮にともない脱着されることによって再生する。高分子収着剤が再生するために必要な温度を、以下、「再生温度」とも呼ぶ。本実施形態において、高分子収着剤には、ポリアクリル酸塩架橋体(NaPAA)からなる吸水性高分子が含有されている。高分子収着剤は、基材に含浸させることで製造でき、本実施形態では、さらに粒状に加工されている。高分子収着剤の形態は、粒状には限定されず、粉体やブロック状、平板状であってもよく、繊維に高分子収着剤を担持させた繊維状や、基材に高分子収着剤を担持させたハニカム状などの種々の形態であってよい。
【0014】
図2および
図3を用いて、本実施形態の断熱体50が備える高分子収着剤の物性について説明する。本実施形態において、高分子収着剤は、常温では収着現象により吸湿し、40℃以上100℃以下では再生により放湿する。
図2は、高分子収着剤の20℃における等温吸着特性を示すグラフである。縦軸は、平衡吸湿率を示し、横軸は相対湿度を示している。平衡吸湿率は、静的条件における関係湿度での吸水量を重量%で示したものである。
図2には、さらに、比較例としてのシリカゲルA型と、シリカゲルB型の等温吸着特性が示されている。高分子収着剤に含有されるポリアクリル酸塩架橋体は、分子間架橋と側鎖にカルボン酸基を有している。カルボン酸基は、親水性基であり、水蒸気を結合することによって、架橋点を支点として高分子架橋体が膨潤し、収着現象が発生する。その結果、
図2に示すように、高分子収着剤は、低湿度から高湿度までの範囲において、シリカゲルA型、シリカゲルB型よりも高い吸湿性能を有する。
【0015】
図3は、高分子収着剤の再生温度の範囲を示すグラフである。
図3には、さらに、比較例としてのシリカゲル、活性炭、ならびにゼオライトの再生温度の範囲が示されている。
図3に示すように、本実施形態において、高分子収着剤は、吸着した水蒸気を40℃以上100℃以下の再生温度で脱着する。高分子収着剤は、ゼオライト、活性炭、ならびにシリカゲルと比較して、再生温度が低く、低温で再生することができる。
【0016】
断熱体50における高分子収着材の含有率について説明する。断熱体50に対する高分子収着剤の含有率は、高分子収着材の吸湿性能、断熱の対象物の耐水性能や耐腐食性能、断熱の対象物において変化し得る温度範囲、断熱体50の空隙率などを考慮し、断熱体50に求められる断熱性能および吸湿性能に基づいて設定されることができる。例えば、含有される高分子収着材の吸湿性能が高いほど、高分子収着材の含有率を低くすることができ、断熱材料の含有率を高くして断熱体50の断熱性能を高くすることができる。断熱の対象物の耐水性能や耐腐食性能が低い場合や、断熱体50の空隙率や断熱体50と断熱の対象物との間の空隙率が高い場合などには、結露の発生や液水の滞留を回避する観点から高分子収着材の含有率は高いほど好ましい。
【0017】
本実施形態において、高分子収着材の吸湿性能は、流通管40の下限温度である35℃では45.3%RHであり、流通管40の上限温度である70℃では完全に乾燥した状態、すなわち0%RHを示す。なお、高分子収着材のその他の温度での吸湿率は、40℃では、34.5%RH、45℃では、26.6%RH、50℃では、20.6%RHである。本実施形態では、高分子収着剤の含有率は、断熱の対象物としての流通管40に対して、充分な除湿性能を備えつつ、断熱性能を高くする観点から、断熱体50に対する体積比1%未満で設定することができる。より具体的には、高分子収着材は、断熱体50に対する体積比0.05%で設定されている。
【0018】
本実施形態の断熱体50における高分子収着材の体積比の設定方法について説明する。大気中の飽和水蒸気量(g/cm3)の理論値は、70℃で197g/cm3であり、35℃で39.6g/cm3である。したがって、流通管40が有する70℃から35℃までの温度範囲において発生する放湿量の最大値は、197g/cm3から39.6g/cm3を減算した157.4g/cm3である。本実施形態において、断熱体50における断熱材料と高分子収着材との充填率は80%、すなわち空隙率は20%であるので、高分子収着材が吸湿すべき水蒸気の最大量は、157.4g/cm3に20%を乗じた31.5g/cm3となる。高分子収着材の吸湿性能は、35℃では45.3%RHであるので、70℃から35℃への温度降下により断熱体50の空隙中に発生する液水を吸湿するために必要な高分子収着材の最大量は、31.5g/cm3から45.3%RHを除算した69.5g/m3となる。ここで、本実施形態における高分子収着材の密度は、1130kg/m3である。したがって、70℃から35℃への温度降下により発生する水蒸気を吸湿するために必要な高分子収着材の最大量は、体積に換算すると、6.15e-5cm3である。すなわち、1m3の断熱体50あたりに必要な高分子収着材は、6.15e-5cm3である。したがって、断熱体50は、断熱体50に対する高分子収着剤の体積比が0.00615%以上となるように高分子収着剤を含有することにより、70℃から35℃への温度降下により発生し得る水蒸気をすべて吸湿することができる。ただし、断熱体50の吸湿性能をより高くするため、高分子収着材が断熱体50の空隙中の水蒸気に接触する確率を高めるために、高分子収着材は、理論値よりも多く含有されてもよい。例えば、高分子収着材の含有率は、例えば、断熱体50の空隙率が100%であると仮定した場合の断熱体50に対する高分子収着剤の体積比(本実施形態において、0.03075%)や、99℃から0℃への温度降下により発生する水蒸気(例えば、564g/m3)を吸湿するために必要な高分子収着材の最大量を用いて算出される体積比を用いることができる。また、高分子収着剤の体積比は、1%未満には限定されず、10%未満であってもよく、断熱材料や高分子収着材の種類、断熱体50に求められる断熱性能および吸湿性能などを考慮して、10%~80%などの任意の体積比で設定されてもよい。
【0019】
以上、説明したように、本実施形態の断熱体50によれば、吸着水分を脱着することによって再生する高分子収着剤と、断熱材料とを含有している。断熱体50は、結露が発生し得る低温の状態では、高分子収着材の収着現象によって流通管40と断熱体50との間の水分を吸着することができる。したがって、流通管40の外周や断熱体50に水滴が滞留することを低減または防止することができ、流通管40の劣化を低減または防止することができる。また、流通管40の外周に液水が存在することにより断熱性能が低下することを低減又は防止することができる。高分子収着材は、流通管40の温度上昇により再生する。そのため、流通管40が高温の状態では、高分子収着材を再生させることができる。したがって、断熱材料による断熱性能を備えつつ、流通管40外部の液水を繰り返し吸着できる断熱体50を得ることができる。また、再生時の放湿による気化熱を利用して断熱体50を冷却することができ、断熱体50の断熱性能を向上することができる。
【0020】
本実施形態の断熱体50によれば、高分子収着剤と、断熱材料とが粒状の混合物で形成されている。したがって、断熱体50の充填率を向上することができ、断熱性能の向上、ならびに結露による液水の発生量を抑制することができ、流通管40の劣化をより確実に防止することができる。断熱体50の形状を容易に変更することができるので、断熱体50の配置の自由度を向上させることができる。
【0021】
本実施形態の断熱体50によれば、高分子収着剤は、吸着水分を脱着する再生温度が40℃以上100℃以下である。シリカゲルやゼオライトなどの他の吸湿材よりも低い温度で高分子収着材を再生することができる。したがって、温度変化が100℃以下の対象物を断熱するのに好適な断熱体50を得ることができる。
【0022】
本実施形態の断熱体50によれば、高分子収着剤は、ポリアクリル酸塩架橋体を含有している。既知の材料を用いて、低温再生の高分子収着材を備える断熱体50を得ることができる。
【0023】
本実施形態の断熱体50によれば、断熱層に対する高分子収着剤の体積比は1%未満である。断熱材料に対して低い体積比にすることにより、断熱性能を充分に備えつつ、流通管40の劣化を低減または防止することができる断熱体50を得ることができる。
【0024】
本実施形態の断熱体50によれば、断熱材料は、撥水性を有するエアロゲルが用いられる。エアロゲルを用いることにより、簡易な方法により高い断熱性能を得ることができる。断熱材料が撥水性を有することにより、液水を高分子収着材に円滑に導くことができ、断熱体50の吸湿性能を向上することができる。
【0025】
本実施形態の断熱体50によれば、エアロゲルは、ポリメチルシルセスキオキサンを含有している。したがって、一般的な断熱材の熱伝導率(20~40mW・m-1・K-1)よりも低い熱伝導率の断熱体50を得ることができる。超臨界乾燥を用いるシリカエアロゲルなどと比較して生産性を向上することができる。
【0026】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態では、断熱材料がポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルである例を示した。これに対して、断熱材料は、ポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルにさらにセルロースナノファイバ(CNF)を含有したポリメチルシルセスキオキサン-セルロースナノファイバ(PMSQ-CNF)複合エアロゲルであっても良い。この形態の断熱体50によれば、一般的な断熱材よりも低い熱伝導率(15mW・m-1・K-1)を有しつつ、一軸圧縮に対して可逆的弾性変形や曲げ柔軟性を有する断熱体50を得ることができる。
【0027】
(B2)上記実施形態では、断熱体50が断熱の対象物としての流通管40の外周に装着される例を示した。これに対して、断熱体50は、流通管40に限らず、例えば、ストーブ、冷蔵庫、冷凍庫、ならびに湯沸かし器等の器具、高温となり得る金属製機器などの他の熱源に装着されて用いられてよい。また、断熱体50は、工業用途のほか、例えば、住宅や建造物などにおけるガラスや壁面などの建材に備えられる建築用途として用いられてもよい。また、断熱体50は、対象物の外部に限らず、例えば、流通管40の内周など、対象物の内部に配置されてもよい。
【0028】
(B3)上記実施形態では、断熱材料がエアロゲルである例を示したが、断熱材料は、例えば、セラミックファイバー、セルロースファイバー、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、発泡スチロール、グラスウールなどのエアロゲル以外の断熱材を用いてもよい。この場合において、断熱体50としては、例えば、断熱材料としての繊維状のグラスウールに高分子収着剤を含有させた、いわゆるブランケットタイプとしてよい。
【0029】
(B4)上記実施形態では、断熱材料がポリメチルシルセスキオキサンエアロゲルである例を示した。これに対して、エアロゲルとして、例えば、シリカエアロゲルやカーボンエアロゲルやアルミナエアロゲルなどの無機エアロゲルが用いられてもよく、ガラスや合成樹脂、またはこれらの複合材からなる繊維構造物を基材として形成される他のエアロゲルが用いられてもよい。上記各実施形態の断熱材料は、炭素繊維や合成樹脂によって形成された繊維にシリカエアロゲルを担持させて生成した断熱シートを、流通管40の形状に対応する円筒形状に成形することで作製される。断熱材料は、円筒状に形成されたガラスファイバーなどの樹脂シートや不織布シートにエアロゲルを含浸させることで作製されてよい。
【0030】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
30…流路、40…流通管、50…断熱体、60…保護層