(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】多相短絡検知回路、スイッチ機構の異常検知機構、スイッチ機構の異常検知方法、スイッチ機構、およびスイッチ機構具備装置
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01H9/54 C
(21)【出願番号】P 2021106137
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】中野 真哉
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-11722(JP,A)
【文献】特開平8-301103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0030505(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0056636(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三個以上のスイッチが並んでなるスイッチ機構を有する装置において該スイッチ機構の各スイッチ間における短絡の有無を検知するための多相短絡検知回路であって、
特定の一個のスイッチを中心に三個のスイッチが並んでなる基礎スイッチ集合に接続された基本論理回路すなわちゲートにより構成されるゲート構造を備え、
該ゲート構造は、該基礎スイッチ集合の中央にある中央スイッチ以外の二個のスイッチである側部スイッチが接続されるORゲートと、および該中央スイッチならびに該ORゲートが接続されるEX-NORゲートとからなり、
該EX-NORゲートの出力を検知出力として多相短絡の有無が検知されることを特徴とする、多相短絡検知回路。
【請求項2】
かかる構成により、前記中央スイッチをON、二個の側部スイッチをOFFに設定した場合に前記検知出力が「0」であれば多相短絡無し、「1」であれば多相短絡有りの検知結果が出力されることを特徴とする、請求項1に記載の多相短絡検知回路。
【請求項3】
前記各スイッチとの間にバッファゲートが備えられていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
【請求項4】
前記ゲート構造が二単位以上設けられており、前記中央スイッチが一個置きとなる、すなわち隣接するゲート構造同士で一個の側部スイッチを共有する形となることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
【請求項5】
前記三個以上のスイッチは、その両端に位置するスイッチ同士は多相短絡し得ないよう配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の多相短絡検知回路。
【請求項6】
前記三個以上のスイッチは、その両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の多相短絡検知回路。
【請求項7】
前記ゲート構造の他に追加して設けられる追加EX-NORゲートを備えていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
【請求項8】
かかる構成により、前記追加EX-NORゲートに接続される一方のスイッチをON、他方のスイッチをOFFに設定した場合に前記検知出力が「0」であれば多相短絡無し、「1」であれば多相短絡有りの検知結果が出力されることを特徴とする、請求項7に記載の多相短絡検知回路。
【請求項9】
下記(ア)、(イ)のいずれかの場合には前記追加EX-NORゲートが設けられることを特徴とする、請求項7、8のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
(ア) スイッチ総個数が三以上の奇数であり、かつ両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されている場合。
(イ) スイッチ総個数が四以上の偶数の場合。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかに記載の多相短絡検知回路と、および各スイッチにおける断線または単相短絡の有無を検知する断線等検知回路とからなることを特徴とする、スイッチ機構の異常検知機構。
【請求項11】
前記断線等検知回路では、各スイッチのON/OFF状態が出力されることを特徴とする、請求項10に記載のスイッチ機構の異常検知機構。
【請求項12】
かかる構成により、全スイッチをOFFに設定した場合に前記出力としてONを出力したスイッチでは単相短絡の有ることが検知され、全スイッチをONとした場合に前記出力としてOFFを出力したスイッチでは断線の有ることが検知されることを特徴とする、請求項11に記載のスイッチ機構の異常検知機構。
【請求項13】
前記多相短絡検知回路および前記断線等検知回路による各検知出力はCPUに入力されるよう形成されていることを特徴とする、請求項10、11、12のいずれかに記載のスイッチ機構の異常検知機構。
【請求項14】
請求項10、11、12、13のいずれかに記載のスイッチ機構の異常検知機構を用いてなされるスイッチ機構の異常検知方法であって、前記断線等検知回路による下記(I)の過程、ついで前記多相短絡検知回路による下記(II)の過程が行われることを特徴とする、スイッチ機構の異常検知方法。
(I) 各スイッチにおける断線または単相短絡の有無を検知する過程。
(II) 前記基礎スイッチ集合の中央スイッチをON、二個の側部スイッチをOFFとして、接続されるゲート構造による検知作用がなされる過程である基礎検知過程が、設けられている該ゲート構造ごとになされ、また、前記追加EX-NORゲートが設けられている構成の場合には、該追加EX-NORゲートによる検知作用がなされる過程が付加される。
【請求項15】
前記(I)、(II)各過程におけるスイッチの設定と検知による出力信号とが比較され、相違する場合に異常と判断されることを特徴とする、請求項14に記載のスイッチ機構の異常検知方法。
【請求項16】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかに記載の多相短絡検知回路、または請求項10、11、12、13のいずれかに記載のスイッチ機構の異常検知機構を備えていることを特徴とする、スイッチ機構。
【請求項17】
請求項16に記載のスイッチ機構を備えていることを特徴とする、スイッチ機構具備装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多相短絡検知回路、スイッチ機構の異常検知機構、スイッチ機構の異常検知方法、スイッチ機構、およびスイッチ機構具備装置に係り、特に、スイッチを備えた装置における断線や短絡等の異常発生を検知するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ON/OFFスイッチやロータリスイッチなどのスイッチ機構を備える装置は広範な産業分野において存在する。たとえば、シーケンサ、コントローラ、サーボドライバといった産業用制御装置全般、家電製品全般、さらには車載用・航空機用制御装置全般などである。スイッチ機構については従来、特許出願等も多数なされている。
【0003】
たとえば後掲特許文献1には、負荷の短絡時に半導体スイッチが保護される交流用スイッチ装置として、スイッチ回路・過電流検出回路・駆動許否回路からなる構成において、スイッチ回路が整流用ダイオードとトランジスタとからなり、過電流検出回路はトランジスタの両端の電位差を検出してトランジスタがONのときに両端に電位差が検出されたら過電流検出信号を出力し、駆動許否回路はこの過電流検出信号を保持して過電流検出信号が発生した場合には以後のトランジスタへの駆動信号を遮断する、という構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-228868号公報「負荷短絡時の素子保護機能を備えた交流スイッチ装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチ機構を有する装置においては、スイッチ機構に断線や単相短絡、多相短絡といった異常が発生した場合、それを検知する機構がないと、設定されたスイッチの状態とそれを認識する側が把握する状態とが異なってしまうという不都合が生じる。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、 スイッチ機構を備えた装置においてスイッチ機構に断線や短絡等の異常が発生した際に、かかる異常を確実かつ効率的に検知でき、それによって誤認を防止することのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、 検知機構を論理回路で構築することとし、その際に検査点数を抑える構成とすることによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 三個以上のスイッチが並んでなるスイッチ機構を有する装置において該スイッチ機構の各スイッチ間における短絡の有無を検知するための多相短絡検知回路であって、特定の一個のスイッチを中心に三個のスイッチが並んでなる基礎スイッチ集合に接続された基本論理回路すなわちゲートにより構成されるゲート構造を備え、該ゲート構造は、該基礎スイッチ集合の中央にある中央スイッチ以外の二個のスイッチである側部スイッチが接続されるORゲートと、および該中央スイッチならびに該ORゲートが接続されるEX-NORゲートとからなり、該EX-NORゲートの出力を検知出力として多相短絡の有無が検知されることを特徴とする、多相短絡検知回路。
〔2〕 かかる構成により、前記中央スイッチをON、二個の側部スイッチをOFFに設定した場合に前記検知出力が「0」であれば多相短絡無し、「1」であれば多相短絡有りの検知結果が出力されることを特徴とする、〔1〕に記載の多相短絡検知回路。
〔3〕 前記各スイッチとの間にバッファゲートが備えられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
〔4〕 前記ゲート構造が二単位以上設けられており、前記中央スイッチが一個置きとなる、すなわち隣接するゲート構造同士で一個の側部スイッチを共有する形となることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
【0009】
〔5〕 前記三個以上のスイッチは、その両端に位置するスイッチ同士は多相短絡し得ないよう配置されていることを特徴とする、〔4〕に記載の多相短絡検知回路。
〔6〕 前記三個以上のスイッチは、その両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されていることを特徴とする、〔4〕に記載の多相短絡検知回路。
〔7〕 前記ゲート構造の他に追加して設けられる追加EX-NORゲートを備えていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
〔8〕 かかる構成により、前記追加EX-NORゲートに接続される一方のスイッチをON、他方のスイッチをOFFに設定した場合に前記検知出力が「0」であれば多相短絡無し、「1」であれば多相短絡有りの検知結果が出力されることを特徴とする、〔7〕に記載の多相短絡検知回路。
〔9〕 下記(ア)、(イ)のいずれかの場合には前記追加EX-NORゲートが設けられることを特徴とする、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の多相短絡検知回路。
(ア) スイッチ総個数が三以上の奇数であり、かつ両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されている場合。
(イ) スイッチ総個数が四以上の偶数の場合。
【0010】
〔10〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の多相短絡検知回路と、および各スイッチにおける断線または単相短絡の有無を検知する断線等検知回路とからなることを特徴とする、スイッチ機構の異常検知機構。
〔11〕 前記断線等検知回路では、各スイッチのON/OFF状態が出力されることを特徴とする、〔10〕に記載のスイッチ機構の異常検知機構。
〔12〕 かかる構成により、全スイッチをOFFに設定した場合に前記出力としてONを出力したスイッチでは単相短絡の有ることが検知され、全スイッチをONとした場合に前記出力としてOFFを出力したスイッチでは断線の有ることが検知されることを特徴とする、〔11〕に記載のスイッチ機構の異常検知機構。
〔13〕 前記多相短絡検知回路および前記断線等検知回路による各検知出力はCPUに入力されるよう形成されていることを特徴とする、〔10〕、〔11〕、〔12〕のいずれかに記載のスイッチ機構の異常検知機構。
【0011】
〔14〕 〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕のいずれかに記載のスイッチ機構の異常検知機構を用いてなされるスイッチ機構の異常検知方法であって、前記断線等検知回路による下記(I)の過程、ついで前記多相短絡検知回路による下記(II)の過程が行われることを特徴とする、スイッチ機構の異常検知方法。
(I) 各スイッチにおける断線または単相短絡の有無を検知する過程。
(II) 前記基礎スイッチ集合の中央スイッチをON、二個の側部スイッチをOFFとして、接続されるゲート構造による検知作用がなされる過程である基礎検知過程が、設けられている該ゲート構造ごとになされ、また、前記追加EX-NORゲートが設けられている構成の場合には、該追加EX-NORゲートによる検知作用がなされる過程が付加される。
〔15〕 前記(I)、(II)各過程におけるスイッチの設定と検知による出力信号とが比較され、相違する場合に異常と判断されることを特徴とする、〔14〕に記載のスイッチ機構の異常検知方法。
〔16〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の多相短絡検知回路、または〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕のいずれかに記載のスイッチ機構の異常検知機構を備えていることを特徴とする、スイッチ機構。
〔17〕 〔16〕に記載のスイッチ機構を備えていることを特徴とする、スイッチ機構具備装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多相短絡検知回路、スイッチ機構の異常検知機構、スイッチ機構の異常検知方法、スイッチ機構、およびスイッチ機構具備装置は上述のように構成されるため、これらによれば、スイッチ機構を備えた装置においてスイッチ機構に断線や単相短絡、多相短絡といった異常が発生した際に、かかる異常を確実かつ効率的に検知でき、それによって誤認を防止することができる。なお本発明によれば、異常の有無だけではなくスイッチ機構の異常箇所を特定することもできる。また、本発明の多相短絡検知回路、スイッチ機構の異常検知機構等は、論理回路を用いて容易に構成できる。
【0013】
また本発明によれば、スイッチ機構の異常検知のための検査点数を抑制することができる。たとえば、検査を要するスイッチ点数がX点であって、端子を一つずつ確認する場合には、(X+1)点の検査点数が必要であるが、本発明の多相短絡検知回路、スイッチ機構の異常検知機構等によれば、Xが4以上の偶数の場合には(X/2+2)点、またXが5以上の奇数の場合には(X/2+3)点に検査点数を抑えることができる。したがって、スイッチ機構におけるスイッチ点数が多いほど、本発明を用いる効果は大きい。
【0014】
本発明は、ON/OFFスイッチ、あるいはロータリスイッチを備えた全ての装置に具備可能である。たとえば、シーケンサ、コントローラ、サーボドライバなどの産業用制御装置全般、家電製品全般、そして車載用・航空機用制御装置全般において、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図p1】本発明が検知対象とする異常のパターンを示す図である。
【
図1】本発明多相短絡検知回路の基本構成として、スイッチ点数5点の例を示す回路図である。
【
図1-2】
図1の回路図に説明の表示を付加した回路図である。
【
図2】
図1-2に示す本発明多相短絡検知回路における作用を示す説明図である(回路図)。
【
図2-2】
図1-2に示す本発明多相短絡検知回路における作用を示す説明図である(判定結果)。
【
図3】追加EX-NORゲートを備えない本発明多相短絡検知回路の構成を示す回路図である。
【
図4】本発明多相短絡検知回路の基本構成として、スイッチ点数4点の例を示す回路図である。
【
図5】本発明のスイッチ機構の異常検知機構の基本構成として、スイッチ点数5点の例を示す回路図である。
【
図6】本発明のスイッチ機構の異常検知機構を構成する断線等検知回路の作用を示す説明図である。
【
図7】スイッチ点数5点の本発明スイッチ機構の異常検知機構の作用を示す説明図である。スイッチ2のみをONにした場合の作用を示す。
【
図8】スイッチ点数5点の本発明スイッチ機構の異常検知機構の作用を示す説明図である。スイッチ4のみをONにした場合の作用を示す。
【
図9】スイッチ点数5点の本発明スイッチ機構の異常検知機構の作用を示す説明図である。スイッチ5のみをONにした場合の作用を示す。
【
図10】本発明スイッチ機構の異常検知方法の基本構成を示すフロー図である。
【
図10-2】本発明のスイッチ機構の異常検知方法の構成例を示すフロー図である。
【
図11】従来のスイッチ機構の異常検知方式を示す説明図である。
【
図12】本発明のスイッチ機構の異常検知機構の利点を
図11の従来技術と比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図p1は、本発明が検知対象とする異常のパターンを示す図である。図示するようにスイッチ機構における異常は、断線(図中I.)、単相短絡(図中II.)、および多相短絡(図中III.)に大別される。このうち前二者は、一つのスイッチにおける異常であり、多相短絡は複数のスイッチ間における短絡異常である。本発明はこれら3パターンの異常を検知対象とするが、その基礎である多相短絡検知回路についてまず説明する。
【0017】
図1は、本発明多相短絡検知回路の基本構成として、スイッチ点数5点の例を示す回路図である。また、
図1-2は、
図1の回路図に説明の表示を付加した回路図である。これらに図示するように本多相短絡検知回路10は、三個以上のスイッチSW1、SW2、SW3、・・・が並んでなるスイッチ機構SSを有する装置において、スイッチ機構SSの各スイッチSW1、SW2、・・・間における短絡すなわち多相短絡の有無を検知するための回路であり、特定の一個のスイッチScを中心に三個のスイッチが並んでなる基礎スイッチ集合SGに接続された基本論理回路すなわちゲートにより構成されるゲート構造5を備え、ゲート構造5は、基礎スイッチ集合SGの中央にある中央スイッチSc以外の二個のスイッチである側部スイッチSa、Sbが接続されるORゲート2と、および中央スイッチScならびにORゲート2とが接続されるEX-NORゲート3とからなり、該EX-NORゲート3の出力を検知出力として多相短絡の有無が検知されることを、主たる構成とする。
【0018】
なお、図示するのは、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、計5点のスイッチを有するスイッチ機構SSの例であり、ロータリスイッチなどSW5とSW1との間で多相短絡が発生し得る構成のスイッチ機構である。本例の多相短絡検知回路10は、SW1-SW2-SW3間における多相短絡検知用のゲート構造5と、SW3-SW4-SW5間における多相短絡検知用のゲート構造、計二単位のゲート構造5、5を備えている構成である。スイッチ機構SSを構成するスイッチの数が本例に限定されるものではない。また、SW5-SW1間における多相短絡検知用として、後述する追加EX-NORゲート6をも備えているが、これについては後述する。
【0019】
図2、
図2-2は、
図1-2に示す本発明多相短絡検知回路における作用を示す説明図であり、前者は回路図、後者は判定結果を示す説明図である。これらに示すように本多相短絡検知回路10では、基礎スイッチ集合SGの中央スイッチScをON、二個の側部スイッチSa、SbをOFFに設定し、その検知出力によって多相短絡の有無を判定することができる。すなわち、側部スイッチSa(SW1)-側部スイッチSb(SW3)間に多相短絡が無い場合、つまり正常である場合には、短絡も無く両スイッチSa(SW1)、Sb(SW3)の設定はともにOFFであるので、ORゲート2の出力は「0」となる。そうすると、ORゲート2の出力「0」、およびONに設定されている中央スイッチSc(SW2)の出力「1」が入力されるEX-NORゲート3の出力は、各入力が「0」、「1」となり相異なるために、「0」となる。すなわち、多相短絡無しである検知出力「0」が出力される。
【0020】
一方、同じく基礎スイッチ集合SGの中央スイッチScがONに、二個の側部スイッチSa、SbがOFFに設定されていて、側部スイッチSa(SW1)-中央スイッチSc(SW2)間に多相短絡異常が発生している場合、側部スイッチSb(SW3)~中央スイッチSc(SW2)間に多相短絡異常が発生している場合、または側部スイッチSa(SW1)~側部スイッチSb(SW3)間に多相短絡異常が発生している場合には、ORゲート2の出力は「1」となる。そうすると、ORゲート2の出力「1」、およびONに設定されている中央スイッチSc(SW2)の出力「1」が入力されるEX-NORゲート3の出力は、両入力が「1」で同じとなるために、「1」となる。すなわち、多相短絡有りである検知出力「1」が出力される。
【0021】
つまり、側部スイッチSa(SW1)-中央スイッチSc(SW2)間に多相短絡異常が発生している場合には、設定が「ON」である中央スイッチSc(SW2)との短絡によって、側部スイッチSa(SW1)は設定が「OFF」であるにも関わらず実際には「ON」となる。また、側部スイッチSb(SW3)~中央スイッチSc(SW2)間に多相短絡異常が発生している場合にも、設定が「ON」である中央スイッチSc(SW2)との短絡によって、側部スイッチSb(SW3)は設定が「OFF」であるにも関わらず実際には「ON」となる。また、側部スイッチSa(SW1)~側部スイッチSb(SW3)間に多相短絡異常が発生している場合にも、設定が「ON」である中央スイッチSc(SW2)との短絡によって、側部スイッチSa(SW1)、Sb(SW3)は設定が「OFF」であるにも関わらず実際には「ON」となる。
【0022】
これらいずれの場合にも、側部スイッチSa(SW1)、Sb(SW3)の設定がともにOFFであっても、ORゲート2の出力は「1」となる。よって、ORゲート2の出力「1」、およびONに設定されている中央スイッチSc(SW2)の出力「1」が入力されるEX-NORゲート3の出力は、両入力が「1」で同じとなるために、多相短絡有りである検知出力「1」が出力される。このように、本多相短絡検知回路10によれば、スイッチSW1-SW2間、SW2-SW3間、SW1~SW3間のいずれかのパターンで多相短絡が発生している場合には、上記ゲート構造5の作用によって多相短絡が発生していることが検知出力として得られる。
【0023】
図1-2等に示すように本発明多相短絡検知回路10と各スイッチSW1、SW2、・・・との間には、バッファゲートBg、Bg、・・・が備えるものとすることができる。バッファゲートBgにより論理値の電圧が一旦補正され、配線による信号電圧の減少等の誤入力を防ぐことができ、異常検知の精度を高めることができる。
【0024】
図1-2の例に示すように本発明多相短絡検知回路10は、ゲート構造5が二単位以上設けられていて、前記中央スイッチScが一個置きとなる、すなわち隣接するゲート構造5、5同士で一個の側部スイッチSbを共有する形となる構成をとることができる。本発明は、スイッチ点数が多いほど利用価値が高いが、
図1-2に示す5点のスイッチによるスイッチ機構SSのように、ゲート構造5が連続的に設けられることによって、多数のスイッチ点数に対応した回路構成とすることができる。
【0025】
なお、本発明多相短絡検知回路は、両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得ないよう配置されているスイッチ機構、両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されているスイッチ機構、いわゆるロータリスイッチ、いずれのパターンのスイッチ機構にも適用可能である。以降の説明では、前者のタイプのスイッチ機構をオープン型、後者をクローズ型と言うことがある。
【0026】
図1-2のスイッチ点数5のスイッチ機構用の多相短絡検知回路において示したように、本発明多相短絡検知回路10は、一または複数のゲート構造5の他に、追加して設けられる追加EX-NORゲート6が備えられている構成とすることができる。
図1-2の多相短絡検知回路10では、スイッチSW5、SW1の各出力が入力されて多相短絡検知に供される追加EX-NORゲート6が設けられている。なお、追加EX-NORゲート6への入力は、本図に示す例のように2つのスイッチから直接なされる構成の他に、別のゲートからの入力が含まれる構成の場合もある(後出
図4参照)。
【0027】
かかる構成により、追加EX-NORゲート6に接続される一方のスイッチをON、他方のスイッチをOFFに設定した場合に検知出力が「0」であれば多相短絡無し、「1」であれば多相短絡有りの検知結果出力を得ることができる。図では、スイッチSW5、SW1のいずれかをON、他方のスイッチをOFFに設定した場合に検知出力が「0」であれば多相短絡無しだが、これらの間に多相短絡が発生していると、同出力が追加EX-NORゲート6に入力されるため、「1」多相短絡有りの検知結果出力がなされる。
【0028】
図3は、追加EX-NORゲートを備えない本発明多相短絡検知回路の構成を示す回路図であり、スイッチ点数は5点である。本例のような追加EX-NORゲートを備えない多相短絡検知回路310は、スイッチ総個数が三以上の奇数であり、かつ両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されている、ロータリスイッチのようなクローズ型の場合に構成される。一方、オープン型の場合には常に、追加EX-NORゲートを備えた構成が採られる。
【0029】
図4は、本発明多相短絡検知回路の基本構成として、スイッチ点数4点の例を示す回路図である。図示する多相短絡検知回路410のように、スイッチ総個数が四以上の偶数の場合には、多相短絡検知回路には常に追加EX-NORゲート46が設けられる構成が採られる。
【0030】
以上をまとめると、本発明多相短絡検知回路に追加EX-NORゲートが設けられる構成を採るのは、下記(ア)または(イ)の場合である。
(ア) スイッチ総個数が三以上の奇数であり、かつ両端に位置するスイッチ同士が多相短絡し得るよう配置されている場合。
(イ) スイッチ総個数が四以上の偶数の場合。
【0031】
図5は、本発明のスイッチ機構の異常検知機構の基本構成として、スイッチ点数5点の例を示す回路図である。図示するように本スイッチ機構の異常検知機構30は、以上説明したいずれかの構成の多相短絡検知回路10と、各スイッチSW1、SW2、・・・それぞれにおける断線または単相短絡の有無を検知する断線等検知回路20とから構成される。すなわち本スイッチ機構の異常検知機構30は、図p1に示した断線・単相短絡の有無を断線等検知回路20によって検知するとともに、多相短絡の有無を多相短絡検知回路10によって検知する、総合的な検知機構である。
【0032】
図6は、
図5に示した本発明のスイッチ機構の異常検知機構を構成する断線等検知回路の作用を示す説明図である。
図5に示すように断線等検知回路20では、各スイッチSW1、SW2、・・・の実際のON/OFF状態が、IN1、IN2、・・・として出力される。そして、設定されたON/OFFと実際の出力IN1、IN2、・・との比較によって、各スイッチSW1、SW2、・・・における断線、または単相短絡の発生の有無が判定される。
【0033】
すなわち、スイッチ機構SSにおける入力信号として全スイッチSW1、SW2、・・・をONと設定した場合に、実際の出力がOFFであるスイッチでは、断線の有ることが検知される。また、スイッチ機構SSにおける入力信号として全スイッチSW1、SW2、・・・をOFFに設定した場合に、実際の出力がONであるスイッチでは、単相短絡の有ることが検知される。たとえば、IN1とIN2に断線異常が確認されると、スイッチSW1、SW2が断線しており、またIN3とIN5に短絡異常が確認されると、スイッチSW3、SW5が単相短絡していることがわかる。IN1、IN2、・・・の中で異常検知を出力した信号により、故障(断線、単相短絡)しているスイッチを特定することができる。
【0034】
図7、8、9は、スイッチ点数5点の本発明スイッチ機構の異常検知機構の作用例を示す説明図である。順に、スイッチ2のみをONにした場合の作用(
図7)、スイッチ4のみをONにした場合の作用(
図8)、スイッチ5のみをONにした場合の作用(
図9)を示す。図中、「IN1」、「IN2}、・・・は断線等検知回路20によるスイッチSW1、SW2、・・・の出力であり、「0」はOFF、「1」はONを示す。また「Check1」は多相短絡検知回路10による多相短絡の有無を示し、「0」は正常、「1」は異常である。
【0035】
かかる構成により本異常検知機構30では、多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号によって、多相短絡の有無(正常/異常)を判定でき、さらに断線等検知回路20の出力結果すなわちIN信号を監視することによって、多相短絡の発生したスイッチを特定することができる。
【0036】
図7は、スイッチSW1~SW3の異常有無検知を担当するゲート構造5による異常有無検知例であり、中央スイッチScであるスイッチSW2のみをONとし、他のスイッチSW1、SW3はOFFとして異常有無検知を行った例である。図示するように、断線等検知回路20の出力結果すなわちIN信号が、スイッチSW1、SW2、SW3についてそれぞれ「0」、「1」、「0」であって、かつ多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号(Check1)が「0」である場合は、正常、すなわち多相短絡無し、と判定される。
【0037】
一方、中央スイッチScであるところのスイッチSW2のみならず、側部スイッチSa等であるところのスイッチSW1、SW3の少なくとも一方が、設定がOFFであるにも関わらずIN信号「1」が出力され、かつ多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号(Check1)が「1」である場合、異常、すなわち多相短絡有り、と判定される。そして、IN1、IN2、IN3として示されるIN信号の出力パターンによって、多相短絡しているスイッチがSW2-SW3、SW1-SW2、SW1~SW3のいずれであるかが判定される。
【0038】
図8は、スイッチSW3~SW5の異常有無検知を担当するゲート構造5による異常有無検知例であり、中央スイッチScであるスイッチSW4のみをONとし、他のスイッチSW3、SW5はOFFとして異常有無検知を行った例である。図示するように、断線等検知回路20の出力結果すなわちIN信号が、スイッチSW3、SW4、SW5についてそれぞれ「0」、「1」、「0」であって、かつ多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号(Check2)が「0」である場合は、正常、すなわち多相短絡無し、と判定される。
【0039】
一方、中央スイッチScであるところのスイッチSW4のみならず、側部スイッチSa等であるところのスイッチSW3、SW5の少なくとも一方が、設定がOFFであるにも関わらずIN信号「1」が出力され、かつ多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号(Check2)が「1」である場合、異常、すなわち多相短絡有り、と判定される。そして、IN3、IN4、IN5として示されるIN信号の出力パターンによって、多相短絡しているスイッチがSW3-SW4、SW4-SW5、SW3~SW5のいずれであるかが判定される。
【0040】
図9は、スイッチSW5、SW1の異常有無検知を担当する追加EX-NORゲート6による異常有無検知例であり、スイッチSW5をONとし、スイッチSW1はOFFとして異常有無検知を行った例である。図示するように、断線等検知回路20の出力結果すなわちIN信号が、スイッチSW1、SW5についてそれぞれ「0」、「1」であって、かつ多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号(Check3)が「0」である場合は、正常、すなわち多相短絡無し、と判定される。
【0041】
一方、スイッチSW5のみならず、スイッチSW1も、設定がOFFであるにも関わらずIN信号「1」が出力され、かつ多相短絡検知回路10の出力結果すなわちCheck信号(Check3)が「1」である場合、異常、すなわち多相短絡有り、と判定される。そしてこの場合は、多相短絡しているスイッチがSW1-SW5であることが判定される。
【0042】
以上、スイッチ点数5点である機構を例として、本発明スイッチ機構の異常検知機構30の作用を説明したが、スイッチ点数4などの偶数点数のスイッチ機構も含め、その他のパターンのスイッチ機構に対応する異常検知機構であっても、同様の作用が得られ、多相短絡の有無およびその所在についての検知結果出力を得ることができる。
【0043】
なお、本発明スイッチ機構の異常検知機構30は、多相短絡検知回路10および断線等検知回路10による各検知出力、つまりDheck1、Check2、・・・等のCheck信号、およびIN1、1N2、・・・等のIN信号は、電子計算機を構成するCPU等、CPUに入力されるよう形成されているものとすることができる。それにより、多相短絡検知回路10および断線等検知回路10による各検知出力の処理を、統合的かつ効率的に行うことができる。
【0044】
図10は、本発明スイッチ機構の異常検知方法の基本構成を示すフロー図である。図示するように、
図5の例示をもって説明した以上いずれかの構成のスイッチ機構の異常検知機構30を用いてなされるスイッチ機構の異常検知方法であって、断線等検知回路20による下記(I)の過程、ついで多相短絡検知回路10による下記(II)の過程が行われる、スイッチ機構の異常検知方法もまた、本発明の範囲内である。
(I) 断線等検知過程P120
各スイッチSW1、SW2、・・・における断線や単相短絡の有無を検知する過程。
(II) 多相短絡検知過程P200
基礎スイッチ集合SGの中央スイッチScをON、二個の側部スイッチSa、SbをOFFとして、接続されるゲート構造5による検知作用がなされる過程である基礎検知過程P250が、設けられているゲート構造5ごとになされる過程。また、追加EX-NORゲート6が設けられている構成の場合には、追加EX-NORゲート6による追加検知過程P260が付加される。
【0045】
かかる構成により本スイッチ機構の異常検知方法では、上記(I)、(II)の各過程P120、P200におけるスイッチの設定と検知による出力信号とが比較され、相違する場合に異常との判断がなされる。すなわち、まず断線等検知過程P120では、前出
図6に示した方法により、ON/OFFが設定された各スイッチSW1、SW2、・・・における出力信号が設定と比較されて、断線や単相短絡の有無が、検知される。
【0046】
ついで、多相短絡検知過程P200では、前出
図7~9に示した方法により、ON/OFFが設定された各スイッチSW1、SW2、・・・における出力信号が設定と比較されて、多相短絡の有無および、多相短絡が有る場合におけるその所在が判断される。すなわち、基礎検知過程P250により、基礎スイッチ集合SGの中央スイッチScをON、二個の側部スイッチSa、SbをOFFとされた設定が、その多相短絡有無検知を担うゲート構造5による出力信号と比較されて、多相短絡の有無が検知される。さらに、多相短絡有りの場合は、先に実施される断線等検知過程P120の検知出力結果が参照されて、多相短絡の所在が検知される。
【0047】
基礎検知過程P250は、設けられているゲート構造5ごとになされ、それぞれが担う基礎スイッチ集合SGにおける多相短絡の有無等が判断される。つまり、基礎検知過程P250は、設けられているゲート構造5の単位数n(nは自然数)分、実行される。また、追加EX-NORゲート6が設けられている構成の場合には、追加検知過程P260において、対象となる2つの入力における設定が、追加EX-NORゲート6による出力信号と比較されて、多相短絡の有無が検知される。
【0048】
図10-2は、本発明のスイッチ機構の異常検知方法の構成例を示すフロー図である。本フローは、
図5に例示したスイッチ機構の異常検知機構30による異常検知方法を示している。図示するように本フローは、前半の断線等検知段階(図では「断線、単相短絡検知」)と、後半の多相短絡検知段階に大別され、入力信号(ON/OFFの設定)状態と出力信号(IN1~INX、Check1等)状態が比較されて、正常/異常の判断がなされる。
【0049】
まず、断線等検知段階では、全てのスイッチがOFFに設定された状態で検知過程が実施され、ここで検知された出力信号IN1~INXのいずれか一つでも「1」すなわちONが検知されると、スイッチ機構全体としての異常の判断となる。ここで検知された異常のパターンは、単相短絡である。なお、いずれのスイッチにおける単相短絡異常であるかは、出力信号IN1等の状態を監視することで確認できる。
【0050】
出力信号IN1~INXの全てが入力信号と同じく「0」すなわちOFFの場合には、次に、全てのスイッチがONに設定された状態での検知過程が実施される。ここで検知された出力信号IN1~INXのいずれか一つでも「0」すなわちOFFが検知されると、スイッチ機構全体としての異常の判断となる。ここで検知された異常のパターンは、断線である。なお、いずれのスイッチにおける断線異常であるかは、出力信号IN1等の状態を監視することで確認できる。
【0051】
出力信号IN1~INXの全てが入力信号と同じく「0」すなわちOFFの場合には、後半の多相短絡検知段階へと進む。まず、最初のゲート構造による基礎スイッチ集合における多相短絡の有無を確認するための設定がなされるが、この手順はフロー図では「SW 2n番 ON」として示される。そして検知過程が実施され、出力信号Check1として異常を示す「1」が出力されると、スイッチ機構全体としての異常の判断となる。ここで検知された異常のパターンは、多相短絡である。なお、いずれのスイッチ間における多相短絡異常であるかは、出力信号IN1等の状態を監視することで確認できる。
【0052】
この、各ゲート構造により所定の基礎スイッチ集合における多相短絡の有無を確認するための設定、および検知過程の実施は、設けられているゲート構造の単位数分、繰り返される。図では、異常判断がなされなかった場合にかかる繰り返しがなされる構成を示すが、異常判断/正常判断に関わらず、全てのゲート構造分について検知過程を行う構成としてもよい。
【0053】
全てのゲート構造に係る検知過程が正常であった場合(図示する例)、あるいは全てのゲート構造に係る検知過程を終了した後、追加EX-NORゲートが設けられている場合には、図では「SW X番 ON」で示す、そのための設定がなされる。上述のゲート構造におけるのと同様、その後の検知過程により異常の信号が出力された場合は、スイッチ機構全体としての異常の判断となる。ここで検知された異常のパターンは多相短絡である。正常の出力信号が出力された場合は、スイッチ機構全体としての正常が判断される。
【0054】
本発明が従来技術に対して提供する寄与について説明する。
図11は、従来のスイッチ機構の異常検知方式を示す説明図である。また、
図12は、本発明のスイッチ機構の異常検知機構の利点を
図11の従来技術と比較して示す説明図である。
図11に示すように、論理回路(ゲート)を用いずにスイッチ機構の異常検知を行おうとすると、異常の有無等の判定処理、およびそれに基づく故障診断は、ソフトウェアを用いて行わなくてはならない。各スイッチの出力信号IN1、IN2、・・・の状態を確認し、異常なパターンの有無をチェックし、故障の有無を判断することは、ソフトウェア設計における負担を増大させてしまう。
【0055】
一方、
図12に示す論理回路を用いた本発明の方式によれば、多相短絡検知回路のCheck信号によって故障有無が容易に判断でき、さらに断線等検知回路のIN信号によって故障箇所が容易にわかるため、ソフトウェアは故障有無の判断をする必要がなく、各信号の監視のみを行えばよい。すなわち、論理回路を用いた異常検知機構とすることによって、ソフトウェアによる判定処理も故障診断も不要となり、ソフトウェア設計上の負担が小さい。
【0056】
以上説明したいずれかの構成の本発明多相短絡検知回路、またはいずれかの構成の本発明スイッチ機構の異常検知機構を備えているスイッチ機構や、かかるスイッチ機構を備えているスイッチ機構具備装置も、本発明の範囲内である。スイッチ機構具備装置としては、たとえばシーケンサ、コントローラ、サーボドライバといった産業用制御装置、家電製品、さらには車載用・航空機用制御装置が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の多相短絡検知回路、スイッチ機構の異常検知機構、スイッチ機構の異常検知方法、スイッチ機構、およびスイッチ機構具備装置によれば、スイッチ機構を備えた装置においてスイッチ機構に短絡等の異常が発生した際、これを確実かつ効率的に検知し、異常箇所を特定できる。しかも、異常検知のための検査点数を抑制できる。したがって、産業用・車載用・航空機用の各制御装置や家電製品を初めとして、広く電気・電子分野において産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0058】
2、32、42…ORゲート
3、33、43…EX-NORゲート
5、35、45…ゲート構造
6、46…追加EX-NORゲート
10、310、410…多相短絡検知回路
20…断線等検知回路
30…スイッチ機構の異常検知機構
Bg…バッファゲート
P120…断線等検知過程
P200…多相短絡検知過程
P250…基礎検知過程
P260…追加検知過程
Sa、Sb…側部スイッチ
Sc…中央スイッチ
SG…基礎スイッチ集合
SS…スイッチ機構