(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】地盤改良機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240927BHJP
E02F 5/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02F5/08 Z
(21)【出願番号】P 2023124129
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519335440
【氏名又は名称】株式会社サン・エンジニア
(73)【特許権者】
【識別番号】514142968
【氏名又は名称】株式会社サンワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋
(72)【発明者】
【氏名】角田 和明
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞
(72)【発明者】
【氏名】仲山 要
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-316155(JP,A)
【文献】特開2003-041571(JP,A)
【文献】特開2015-178763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02F 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動スプロケット及び従動スプロケットと、これらのスプロケット間に掛架される無端チェーンを備え、無端チェーンの外周面上に所定の間隔で羽根体を固着したチェーン型攪拌翼を左右に配置し、上部に配置する油圧モーターの動力を回転用チェーンをチェーン型攪拌翼に伝達し、これら外側に配置する前記左右のチェーン型攪拌翼の間に円板型攪拌翼を設けてこれを中心に配置し、
前記円板型攪拌翼の上半分をカバー内に収め、改良材を送る注入管の端部を前記円板型攪拌翼もしくはチェーン型攪拌翼の上方に臨ませ、前記チェーン型攪拌翼の回転軌跡の下端位置と円板型攪拌翼の回転軌跡の下端位置とはほぼ横並びになるものであり、チェーン型攪拌翼と円板型攪拌翼との隙間はなるべく小さくなるように設定したことを特徴とした地盤改良機。
【請求項2】
円板型攪拌翼の回転支軸はチェーン型攪拌翼の回転支軸と共通である請求項1記載の地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表面において、軟弱地盤の浅層から中層部分までを固化処理する中層混合処理機である地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の改良工法は、改良深さにより浅層地盤改良工法と深層地盤改良工法に大別されるが、前者の浅層地盤改良工法の1つとして化学的改良工法(表層固化工法)が知られている。
【0003】
この工法は表層地盤を掘削しながら地盤中にセメントや石灰等の固化材を添加し、撹拌混合することにより地盤を化学的に固化する工法であり、使用する地盤改良機M’としては、
図9に示すような建設機械Xの作業装置のアームXbの先端に支持体101に回転する撹拌体104を回転自在に取り付けたものが知られている。
【0004】
かかる地盤改良機M’を使用しての施工は、自走式車輌XのブームXbの先端から前記地盤改良機M’を垂下させ、前記撹拌体104を回転させつつ前記ブームを下降させてこの地盤撹拌装置M’を地盤に挿入し、改良材を注入しつつ前記ブームXbを車両側に引き寄せることにより、地盤と改良材とを混合撹拌して地盤の所定領域の改良を行なう。
【0005】
また、下記特許文献には左右の撹拌体間に未改良区域が生じるのを防止するために支持体に対して撹拌体を角度を持って取り付けたものが開示されている。
【文献】特開平10-227028号公報公報
【0006】
前記特許文献1の掘削撹拌装置1は
図10、
図11に示すように支持部材2と、この支持部材2に回転自在に支持された一対の掘削撹拌軸3、3を備えている。
【0007】
掘削撹拌軸3、3は180度の角度間隔を置いて配置され、支持部材2の上部にはパイプ等からなる接続部材4が固定され、この接続部材4の上端には建設機械の作業装置のアームに取付けるための取付プレート5、5が設けられている。
【0008】
掘削撹拌軸3、3は、その軸線C1、C1が掘削面Sに対して角度θをなすように支持部材2に取付けられ、この角度θは90度に満たない鋭角である。
【0009】
支持部材2はその中心線C0が鉛直方向を向くように建設機械に取付けられ、したがって、この場合掘削撹拌軸3、3は支持部材2の中心線C0に対しても0度よりも大きく90度よりも小さい角度となっている。
【0010】
掘削撹拌軸3、3の軸線C1、C1は支持部材2の下端2a側に傾斜している。これにより、掘削撹拌軸3、3に取付けられる複数の翼6のうち、支持部材2側の翼6を支持部材2の下方まで延伸させることが可能となる。
【0011】
支持部材2は全体として略テーパ状に形成された中空のケーシングからなっている。この支持部材2の内部には駆動ベベルギヤ7と、これに噛み合う従動ベベルギヤ8、8とが収容されている。駆動ベベルギヤ7は接続管4内を延びる駆動軸9に取付けられている。
【0012】
掘削撹拌軸3、3は軸本体3aと、その外周に嵌合固定された中空ロータ11とからなり、翼6は中空ロータ11に取付けられている。軸本体3aは支持ケーシング2に軸受10を介して支持され、この軸本体3aに従動ベベルギヤ8が取付けられている。
【0013】
中空ロータ11を設け、その開放端部11aが軸受10を覆うようにすることにより、軸受10に阻害されることなく翼6を簡単に支持ケーシング2の下方まで延伸させることができる。
【0014】
駆動軸9は接続管4の上部に設置された駆動モーター32に連結され(
図1参照)、この駆動モーター32の駆動により駆動軸9、ベベルギヤ7、8が回転し、掘削撹拌軸3、3が回転する。
【0015】
特許文献1によれば、掘削撹拌動作の際、掘削撹拌軸3、3に取付けた翼6は支持部材3の下方まで延びているので、掘削撹拌時に非掘削部が生じることをなくし、また押し込み抵抗を低減して効率良く施工できる。なお、ベベルギヤ7、8の代わりにモーターを設置する例もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記ロータリー式施工法においては、改良対象土が主にヘドロ等の超軟弱粘性土であり、改良対象地盤のせん断強さが20~30kN/m2程度以下の地盤であり、また、攪拌翼の回転トルクも小さく、改良対象深度が大きくなって貫入抵抗が増大すると貫入能力や混合攪拌能力が著しく落ちるという問題があった。
【0017】
そこで、更に改良可能深度が大きく対象地盤のせん断強さがある程度大きくても、貫入力・混合攪拌能力が保てる浅層から中層両域の地盤改良工法の開発が望まれていた。
【0018】
前記特許文献1の掘削撹拌装置は攪拌羽根を斜めにして軸間を狭くしているが、側面部が圧入抵抗になり攪拌範囲も斜め分となり少ない量の攪拌となってしまう。
【0019】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、押し進める抵抗もなく攪拌することができ、しかも“だま”にならずに効率良く攪拌することができる地盤改良機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するため本発明は、駆動スプロケット及び従動スプロケットと、これらのスプロケット間に掛架される無端チェーンを備え、無端チェーンの外周面上に所定の間隔で羽根体を固着したチェーン型攪拌翼を左右に配置し、上部に配置する油圧モーターの動力を回転用チェーンをチェーン型攪拌翼に伝達し、これら外側に配置する前記左右のチェーン型攪拌翼の間に円板型攪拌翼を設けてこれを中心に配置し、前記円板型攪拌翼の上半分をカバー内に収め、改良材を送る注入管の端部を前記円板型攪拌翼もしくはチェーン型攪拌翼の上方に臨ませ、前記チェーン型攪拌翼の回転軌跡の下端位置と円板型攪拌翼の回転軌跡の下端位置とはほぼ横並びになるものであり、チェーン型攪拌翼と円板型攪拌翼との隙間はなるべく小さくなるように設定したことを特徴とした地盤改良機。駆動スプロケット及び従動スプロケットと、これらのスプロケット間に掛架される無端チェーンを備え、無端チェーンの外周面上に所定の間隔で羽根体を固着したチェーン型攪拌翼を左右に配置し、上部に配置する油圧モーターの動力を回転用チェーンをチェーン型攪拌翼に伝達し、これら外側に配置する前記左右のチェーン型攪拌翼の間に円板型攪拌翼を設けてこれを中心に配置し、改良材を送る注入管の端部を前記円板型攪拌翼もしくはチェーン型攪拌翼の上方に臨ませ、前記チェーン型攪拌翼の回転軌跡の下端位置と円板型攪拌翼の回転軌跡の下端位置とはほぼ横並びになるものであり、チェーン型攪拌翼と円板型攪拌翼との隙間はなるべく小さくなるように設定したこと、および、円板型攪拌翼の回転支軸はチェーン型攪拌翼の回転支軸と共通であることを要旨とするものである。
【0021】
請求項1記載の本発明によれば、外側に配置する左右のチェーン型攪拌翼の間に円板型攪拌翼と、中心に配置する円板型攪拌翼を回転させて地盤改良を行なうので、左右及び中心の攪拌翼構成となっており、押し進める抵抗もなく攪拌できる。
【0022】
さらに左右の攪拌は2個のスプロケットでチェーン型攪拌翼を廻し、中心はチェーン型攪拌翼の間の1個の円板型攪拌翼を廻して攪拌するので、各々の動き速さも違うので、土等は激しく移動し“だま”にならずに攪拌できる。
【0023】
請求項2記載の本発明によれば、円板型攪拌翼の回転駆動軸はチェーン型攪拌翼の回転駆動軸と共通としたので、一つの油圧モーターで双方を駆動することができ、装置をコンパクトに設定できる。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように本発明の地盤改良機は、押し進める抵抗もなく攪拌することができ、しかも“だま”にならずに効率良く攪拌することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の本発明の地盤改良機の1実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明の本発明の地盤改良機の1実施形態を示す側面図である。
【
図3】本発明の本発明の地盤改良機の駆動機構の説明図である。
【
図4】本発明の本発明の地盤改良機のチェーン型攪拌翼と円板型攪拌翼の側面図である。
【
図5】本発明の本発明の地盤改良機の1実施形態を示す要部の側面図である。
【
図6】本発明の本発明の地盤改良機の1実施形態を示す要部の縦断正面面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の地盤改良機の1実施形態を示す正面図、
図2は同上側面図で、本発明の地盤改良機12も前記
図9で説明したように建設機械の作業装置のアームの先端に取り付けて使用するもので、図中13はショベルのアーム部にセットするための取付フランジである。
【0027】
該取付フランジ13を上端に有する支持体としての箱型フレーム14の上部に油圧モーター15を配置し、箱型フレーム14の下部にチェーン型攪拌翼16,16を左右に配置し、油圧モーター15の動力を回転用チェーン17を介してチェーン型攪拌翼16,16に伝達するようにした。
【0028】
チェーン型攪拌翼16,16は、駆動スプロケット18及び従動スプロケット19と、これらのスプロケット18,19間に掛架される無端チェーン20等を備え、無端チェーン20の外周面上に所定の間隔で羽根体21を固着した。
【0029】
従動スプロケット19に対して駆動スプロケット18は上方に位置し、駆動スプロケット18の回転支軸22の中央に設ける回転スプロケット23と前記油圧モーター15に設ける回転スプロケット24とに前記回転用チェーン17を巻回する。この回転用チェーン17は箱型フレーム14の内部を通す。
【0030】
従動スプロケット19の回転支軸22の中央に
図8に示すような櫂状の羽根25aを放射状に120°間隔で突出した円板型攪拌翼25を設ける。
【0031】
前記のように円板型攪拌翼25の回転支軸はチェーン型攪拌翼16,16の回転支軸22と共通であり、これら外側に配置する左右のチェーン型攪拌翼16,16の間に円板型攪拌翼25を設けてこれを中心に配置するものである。
【0032】
図6中26はベアリング軸受であり、従動スプロケット19の回転支軸22を支えるベアリング軸受26から上方にカバー27を立ち上げ、このカバー27内に円板型攪拌翼25の上半分を収める。
【0033】
また、チェーン型攪拌翼16,16の回転軌跡の下端位置と円板型攪拌翼25の回転軌跡の下端位置とはほぼ横並びになるものであり、チェーン型攪拌翼16,16と円板型攪拌翼25との隙間αはなるべく小さくなるように設定した。なお、この隙間αは円板型攪拌翼25の羽根25aの幅を変えると寸法が変わる。
【0034】
改良材送る注入管28を箱型フレーム14に沿わせて取付け、その端部28aを前記円板型攪拌翼25もしくはチェーン型攪拌翼16,16の上方に臨ませた。
【0035】
次に使用法について説明すると、油圧モーター15が駆動して回転用チェーン17を介して駆動スプロケット18が回転すると、無端チェーン20は、駆動スプロケット18と従動スプロケット19の間を周回してチェーン型攪拌翼16,16が駆動される。
【0036】
また、同時に円板型攪拌翼25も駆動され、羽根25aが回転する。
【0037】
建設機械の作業装置のアームを下げることで箱型フレーム14が所定の掘進速度で地中を降下し、かつ、無端チェーン20が所定の回転速度で周回している状態において、無端チェーン20の外周面上に所定の間隔で固着されている羽根体21は、無端チェーン20の下端を通過する際に地盤を新たに掘削し、かつ、無端チェーン20と共に周回する過程で、掘削された土壌と、注入管28の端部26aから下方に吐出されるセメントミルク等の固化材とを撹拌混合して、改良土にする。
【0038】
円板型攪拌翼25も回転によりチェーン型攪拌翼16,16の間で、地盤を掘削し、土砂の攪拌混合を行う。
【0039】
このように外側に配置する左右のチェーン型攪拌翼16,16とその間ある円板型攪拌翼を回転させて地盤改良を行なうので、左右及び中心の攪拌翼構成となっており、押し進める抵抗もなく攪拌できる。
【0040】
さらに左右のチェーン型攪拌翼16,16での攪拌は2個のスプロケットでチェーンを廻し、その間では1個の円板型攪拌翼25を廻して攪拌するので、これら左右のチェーン型攪拌翼16,16と円板型攪拌翼25は各々の動き速さも違うので、土等は激しく移動し、その結果“だま”にならずに攪拌できる。
【符号の説明】
【0041】
1…掘削撹拌装置 2…支持部材
2a…下端 3…掘削撹拌軸
3a…軸本体 4…接続部材
5…取付プレート 6…翼
7…駆動ベベルギヤ 8…従動ベベルギヤ
9…駆動軸 10…軸受
11…中空ロータ 11a…開放端部
12…地盤改良機 13…取付フランジ
14…箱型フレーム 15…油圧モーター
16…チェーン型攪拌翼 17…回転用チェーン
18…駆動スプロケット 19…従動スプロケット
20…無端チェーン 21…羽根体
22…回転支軸 23…回転スプロケット
24…回転スプロケット 25…円板型攪拌翼
25a…羽根 26…ベアリング軸受
27…カバー 28…注入管
28a…端部 32…駆動モーター
101…支持体 1
04…撹拌体
M’…地盤改良機 X…建設機械
Xb…アーム
【要約】
【課題】押し進める抵抗もなく攪拌することができ、しかも“だま”にならずに効率良く攪拌することができる地盤改良機を提供する。
【解決手段】上部に配置する油圧モーター15の動力を回転用チェーンを介して伝達するチェーン型攪拌翼16,16を左右に配置し、これら外側に配置する左右のチェーン型攪拌翼16,16の間に円板型攪拌翼25を設けてこれを中心に配置し、改良材を送る注入管28の端部28aを前記円板型攪拌翼25もしくはチェーン型攪拌翼16,16の上方に臨ませた。
【選択図】
図1