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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/24 20110101AFI20240927BHJP
   A01K 79/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01M29/24
A01K79/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024135815
(22)【出願日】2024-08-15
【審査請求日】2024-08-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522467563
【氏名又は名称】一般社団法人NAGOYA
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】名古谷 聡
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010145(JP,A)
【文献】特開2019-068766(JP,A)
【文献】特許第7291364(JP,B1)
【文献】特許第7356768(JP,B1)
【文献】特許第7474453(JP,B1)
【文献】特許第5007578(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/24
A01K 79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気受容器を有する特定魚を追い返すための電子機器において、
電源並びに第1出力端子及び第2出力端子を含む出力部を有し、前記電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換して前記出力部から出力する発生器と、
その一端が前記第1出力端子に接続されており、その他端が特定魚に接触され、電気的に導体に属する接触対象に取り付けられ又は前記接触対象の近傍に配置される第1導線と、
その一端が前記第2出力端子に接続されており、その他端が前記接触対象における前記第1導線の他端から離れた部位に取り付けられ又は前記接触対象を挟んで前記第1導線の他端の反対側かつ前記接触対象の近傍に配置される第2導線と、
その一端が前記接触対象に取り付けられる可撓線と、
前記可撓線の他端が固定されている物理スイッチと、
その内部に前記発生器及び前記物理スイッチを収容している収容体と、
を備え、
前記特定魚が前記接触対象に接触して前記可撓線が定められた張力以上の張力で引っ張られ前記物理スイッチが前記電源を起動させると、前記第1導線の他端と前記第2導線の他端との間に電界が形成され、前記第1導線と前記第2導体との間に電流が流れて前記出力部から交流電圧が出力される、
電子機器。
【請求項2】
前記収容体と前記接触対象との間に配置され、前記第1導線、前記第2導線及び前記可撓線を貫通させる筒体、
を更に備える、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
その外周面に又はそれぞれの外周面に前記筒体の外周面と同じ色が付されており、かつ、前記筒体から離れて配置される、少なくとも1本以上の棒体、
を更に備える、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記筒体の外周面には、黄色、赤色及びオレンジ色のいずれか一色以上の色が付されている、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記筒体の外周面には、模様が形成されており、
前記少なくとも1本以上の棒体の外周面には、前記模様と同じ模様が形成されている、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記筒体及び前記少なくとも1本以上の棒体は、海中に設置される養殖網の外側に配置される、
請求項4又は5に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、サメが苦手なパルスを海中に発信してサメを撃退する装置(高電圧パルス方式サメ撃退機(サメショッカー))が詳細されている。
また、その特徴の欄に表記されている概念図には、(1)海に浮かぶ船舶と、(2A)船舶に設置された大型のサメショッカー本体及び(2B)サメショッカー本体に接続されて海中に垂らされている、電極が一体化されている一本のロープを備えるサメショッカーと、(3)一本のロープから半径50m~60mの範囲内へ進入できないサメとが記載されている。
非特許文献1によれば、サメショッカーを使用することで、海中作業時におけるダイバーの安全や漁業の安全操業が確保されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】宇賀神電機株式会社、製品案内、サメショッカー、高電圧パルス方式サメ撃退機、サメが苦手なパルスを発信。海洋作業の安全を確保![online]、2019年10月23日、[2024年7月25日検索]、インターネット<URL:http://www.ugajin.co.jp/products/shark-shocker/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のとおり、特許文献1のサメショッカーは、(2A)船舶に設置された大型のサメショッカー本体及び(2B)サメショッカー本体に接続されて海中に垂らされている、電極が一体化されている一本のロープを備えるサメショッカーで構成されている。
【0005】
本発明は、低コストの構成で、近づいてきた電気受容器を有する特定魚を追い払うことが可能な電子機器の提供を目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の電子機器は、
電気受容器を有する特定魚を追い返すための電子機器において、
電源並びに第1出力端子及び第2出力端子を含む出力部を有し、前記電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換して前記出力部から出力する発生器と、
その一端が前記第1出力端子に接続されており、その他端が特定魚に接触される接触対象に取り付けられ又は前記接触対象の近傍に配置される第1導線と、
その一端が前記第2出力端子に接続されており、その他端が前記接触対象における前記第1導線の他端から離れた部位に取り付けられ又は前記接触対象を挟んで前記第1導線の他端の反対側かつ前記接触対象の近傍に配置される第2導線と、
その一端が前記接触対象に取り付けられる可撓線と、
前記可撓線の他端が固定されている物理スイッチと、
その内部に前記発生器及び前記物理スイッチを収容している収容体と、
を備え、
前記特定魚が前記接触対象に接触して前記可撓線が定められた張力以上の張力で引っ張られると、前記物理スイッチが前記電源を起動させる。
【0007】
第2態様の電子機器は、
第1態様の電子機器において、
前記収容体と前記魚体との間に配置され、前記第1導線、前記第2導線及び前記可撓線を貫通させる筒体、
を更に備える。
【0008】
第3態様の電子機器は、
第2態様の電子機器において、
その外周面に又はそれぞれの外周面に前記筒体の外周面と同じ色が付されており、かつ、前記筒体から離れて配置される、少なくとも1本以上の棒体、
を更に備える。
【0009】
第4態様の電子機器は、
第3態様の電子機器において、
前記筒体の外周面には、黄色、赤色及びオレンジ色のいずれか一色以上の色が付されている。
【0010】
第5態様の電子機器は、
第4態様の電子機器において、
前記筒体の外周面には、模様が形成されており、
前記少なくとも1本以上の棒体の外周面には、前記模様と同じ模様が形成されている。
【0011】
第6態様の電子機器は、
第4態様又は第5態様の電子機器において、
前記筒体及び前記少なくとも1本以上の棒体は、海中に設置される養殖網の外側に配置される。
【発明の効果】
【0012】
第1態様及び第2態様の電子機器によれば、低コストの構成で、近づいてきた電気受容器を有する特定魚を追い払うことができる。
【0013】
第3態様及び第5態様の電子機器によれば、少なくとも1本以上の棒体を備えていない構成に比べて、過去に、可撓線の一端が固定されている接触対象に接触した特定魚を、より広範囲で追い払うことができる。
【0014】
第4態様の電子機器によれば、過去に、可撓線の一端が固定されている接触対象に接触した特定魚を追い払うことができる。
【0015】
第6態様の電子機器によれば、低コストの構成で、近づいてきた電気受容器を有する特定魚を養殖網から追い払うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】魚体に取り付けられている、本実施形態の電子機器の試作品の写真(概略図)である。
図2】本実施形態の電子機器から筒体を除いた構成要素の概略図である。
図3】本実施形態の電子機器を構成する回路基板の概略図である。
図4】本実施形態の電子機器が出力する交流電圧の波形パターンの一例である。
図5】本実施形態の電子機器の動作を説明するための図である。
図6】応用例の電子機器の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪概要≫
以下、本実施形態の電子機器10(図1図5参照)、応用例の電子機器10A(図6参照)及び複数の変形例について、これらの記載順で説明する。本明細書では、異なる実施形態等で参照する各図面において、同じような機能を有する構成要素に対して同じ符号又は同じような符号を付している点に留意されたい。
【0018】
≪本実施形態≫
まず、本実施形態について説明する。
以下、本実施形態の電子機器10について、機能及び構成並びに動作及び効果に分けて図面を参照しながら説明する。
【0019】
<本実施形態の電子機器の機能及び構成>
図1は、魚体TN(接触対象の一例)に取り付けられている、本実施形態の電子機器10の試作品の写真(概略図)である。
ここで、魚体TNとは、後述する特定魚の獲物となり得る、魚(死体も生体も含む。)、餌、疑似餌等をいう。
電子機器10は、海水中SWに入れられた状態で使用され、サメSK、エイRY等のロレンチーニ器官を有する魚類、より広義には、電気受容器を有する魚類(特定魚)を追い返すための機能を有する(図5参照)。
電子機器10は、図1に示されるように、本体100と、可撓線200と、一対の導線300と、筒体400とを備えている。
【0020】
〈本体〉
図2は、電子機器10から筒体400を除いた構成要素の概略図である。
本体100は、図1及び図2に示されるように、一例として円柱状の部材である。本体100は、ハウジング110(収容部の一例)と、フック120と、回路基板130とを有している。
【0021】
(ハウジング及びフック)
ハウジング110は、一例として、一端に開口112が形成されている樹脂製の有底筒である。ハウジング110は、図2に示されるように、その内部に、可撓線200及び一対の導線300の一部並びに回路基板130を収容している。ここで、可撓線200及び一対の導線300の残りの部分は、開口112から外部にはみ出している。そして、開口112は、シール材(図示省略)により封止されている。
フック120は、ハウジング110における開口112とは反対側の端部に固定されている。フック120は、開閉可能な開閉部122を有し、例えば、開閉部122から釣り糸FL(図5参照)を貫通させて連結される。
【0022】
(回路基板)
図3は、電子機器10を構成する回路基板130のブロック図である。
回路基板130は、プリント配線板131と、変換部132と、電源133と、制御部134と、記憶部135と、選択スイッチ136と、出力部137と、物理スイッチ138(物理スイッチの一例)とを有しており、全体で電気回路を構成している。
本実施形態では、回路基板130における物理スイッチ138以外の構成要素のことを発生器130Aという。
【0023】
プリント配線板131には、回路パターン(図示省略)が印刷されている。プリント配線板131には、変換部132、電源133、制御部134、記憶部135、選択スイッチ136、出力部137及び物理スイッチ138が実装されている。
変換部132は、電源133及び出力部137に電気的に接続されており、電源133から供給される直流電圧を交流電圧に変換する機能を有する。変換部132で変換された交流電圧は、出力部137から出力される。
電源133は、一例として、プリント配線板131に着脱可能な電池、モバイルバッテリー等である。
制御部134は、変換部132及び記憶部135に電気的に接続されており、電源133から供給される直流電圧が記憶部135に記憶されている複数の波形パターン(図4参照(図4は波形パターンの一例))のうちのいずれかの波形パターンの交流電圧に変換されるように、変換部132を制御する。
記憶部135は、前述のとおり、出力部137から出力される交流電圧として、波形の異なる複数の波形パターンを記憶している。
選択スイッチ136は、記憶部135が記憶している複数の波形パターンからいずれかの波形パターンを選択するためのスイッチである。
出力部137は、交流電圧を出力する第1出力端子137Aと、基準電圧(0V)が印加されている第2出力端子137Bとを有している。
【0024】
物理スイッチ138は、発生器40A及び一対の導線300とともに電気回路を構成して電源133を起動させる機能を有する。物理スイッチ138は、一例として、マグネットスイッチである。物理スイッチ138には、可撓線200の一方の端(他端)が固定されている(図2参照)。
【0025】
次に、記憶部135に記憶されている複数の波形パターンについて図4を参照しながら説明する。図4は、電子機器10が出力する交流電圧の波形パターンの一例である。
【0026】
波形パターンは、基準電圧(0V)が印加されている第2出力端子137Bの電圧に対して、第1出力端子137Aに印加される交流電圧の波形(出力電圧の時間変化)を示している。
波形パターンは、一例として、周期的に変化する矩形波である。
波形パターンの振幅APは、一例として、1V以上2000kV以下となるように設定されている。
波形パターンの周期Tは、一例として、0.01s以上3.0s以下に設定されている。
波形パターンは、一例として、最大出力を出力する時間T1と、基準電圧を出力する時間T2とで構成される基本波を複数回繰り返すパターンである。
【0027】
〈可撓線〉
可撓線200は、一例として絶縁性の紐である。可撓線200の一端202は、図1に示されるように、魚体TNに取り付けられる。また、その他端204は、図2に示されるように又は前述のとおり、物理スイッチ138に固定されている。
そして、可撓線200が定められた張力以上の張力で引っ張られると、物理スイッチ138が電源133を起動させるように構成されている。
【0028】
〈一対の導線〉
一対の導線300は、図1及び図2に示されるように、第1導線310と、第2導線320とで構成されている。いずれも構造的には同等の構成である。
第1導線310は、図2に示されるようにその一端が第1出力端子137Aに接続されており、図1に示されるようにその他端312(図2参照)が魚体TNに取り付けられる。
第2導線320は、図2に示されるようにその一端が第2出力端子137Bに接続されており、図1に示されるようにその他端322(図2参照)が魚体TNに取り付けられる。ここで、第2導線320の他端322は、魚体TNにおける第1導線310の他端312から離れた部位に取り付けられる(図示省略)。
【0029】
〈筒体〉
筒体400は、本体100(又はハウジング110)と魚体TNとの間に配置され、一対の導線300及び可撓線200を貫通させる、別言すると、本体100と魚体TNとの間で一対の導線300及び可撓線200を束ねる機能を有する。また、筒体400は、サメSK、エイRY等の特定魚に視認されることで、特定魚を追い返す機能を有する。後者の機能のメカニズムについては、後述する本実施形態の電子機器10の動作において説明する。
筒体400の外周面には、図1に示されるように、一例として模様が付されている。具体的には、当該外周面には、ゼブラ模様の塗装が施されている。この例のゼブラ模様は、黄色部分と黒色部分とが軸方向に沿って繰り返されている。すなわち、筒体400の外周面には、黄色が付されている。
【0030】
以上が、本実施形態の電子機器10の機能及び構成についての説明である。
【0031】
<本実施形態の電子機器の動作及び効果>
次に、本実施形態の電子機器10の動作及び効果について、図5等を参照しながら説明する。
【0032】
〈準備〉
まず、使用者(図示省略)は、電子機器10を釣り糸FL及び魚体TNに取り付ける(図1参照)。次いで、使用者は、電子機器10を海水中SWに沈める(図5参照)。
【0033】
〈サメSKの反応(1)〉
サメSKが魚体TNを発見すると、サメSKは魚体TNに近づいてくる。また、サメSKは、魚体TNの上側にある、黄色の外周面を有する筒体400を記憶すると考えられる。サメSKは視覚的に色盲であるが、黄色(、赤色及びオレンジ色)は、青い海水中SWで対比的に目立ち、サメSKでも簡単に区別でき、サメSKの獲物の多くは半透明か反射しているため、黄色はこれらに似ていてサメSKの注意を引くことによる。
サメSKは、魚体TNに接触したり、口の中に入れて吐き出したりしながら、魚体TNの周りを泳ぐことを繰り返す。最終的に、サメSKは、魚体TNを口の中に入れて飲み込もうとする。そうすると、魚体TNの移動に伴って可撓線200には張力がかかる。その結果、可撓線200には定められた張力以上の張力がかかり、物理スイッチ138は電源133を起動させる(図3参照)。
【0034】
〈回路基板130の動作〉
電源133が起動すると、電源133から変換部132に直流電圧が供給される。変換部132は、制御部134に制御されて、電源133から供給された直流電圧を記憶部135に記憶されている波形パターン(一例として図4)の交流電圧に変換する。そして、第2出力端子137Bに基準電圧を印加しつつ第1出力端子137Aに交流電圧(変動電圧)を印加する。これに伴い、第1出力端子137Aに接続されている第1導線310に交流電圧(変動電圧)、第2導線320に基準電圧が印加される。その結果、魚体TNの内部で離れて配置されている第1導線310の他端312と、第2導線320の他端322との間に電界が形成される。魚体TNは電気的に導体であることから、第1導線310と第2導体320との間には、魚体TNを介して微弱電流が流れる。
なお、サメSKが魚体TNを口の中に入れてから魚体TNに微弱電流が流れるまでの時間は、一例として1s未満である。
【0035】
〈サメSKの反応(2)〉
魚体TNに微弱電流が流れると、サメSKにも微弱電流が流れる。すなわち、サメSKが魚体TNに接触することで可撓線200に定められた張力以上の張力がかかると、サメSKは感電することになる。その結果、サメSKは魚体TNが又は黄色の外周面を有する筒体400が危険な物体であると認識する。サメSKによっては一度感電して魚体TNから離れても再度魚体TNに接触する場合もあるが、その都度感電する。そのため、サメSKは、魚体TNが又は筒体400が危険な物体であると認識して(学習して)、意図的にこれらに近づかなくなる。
【0036】
以上のとおりであるから、本実施形態の電子機器10は、低コストの構成で、近づいてきたサメSK(やエイRY)を追い払うことができる。
また、本実施形態の電子機器10によれば、過去に、魚体TNに接触したサメSK(やエイRY)を追い払うことができる。
さらに、本実施形態の電子機器10は、前述の特許文献1の場合とは異なり、サメSK(やエイRY)を追い払うために、常時電力を消費する必要がない。
【0037】
以上が、本実施形態の電子機器10の動作及び効果についての説明である。
【0038】
≪応用例の電子機器≫
次に、応用例について説明する。
図6は、応用例の電子機器10Aの動作を説明するための図である。図6は、電子機器10Aと、養殖網CNと、養殖網CNの中で養殖されている複数の養殖魚CFと、養殖網CNの外から養殖網CNの中の複数の養殖魚CFを狙う2匹のサメSKとを模式的に示している。
以下、図6を参照しながら、養殖網CNの構成について簡単に説明した後に、応用例の電子機器10Aについて、機能及び構成並びに動作及び効果に分けて説明する。応用例については前述の本実施形態の場合と異なる点のみを説明する。
【0039】
<養殖網の構成>
ここで、立方体状である養殖網CNは、一例として、その底面部分と4枚の側面部分とに金網(図示省略)が配置されている。そのため、サメSKは、底面部分及び4枚の側面部分から養殖網CNの中に侵入することは極めて困難である。これに対して、養殖網CNの上面部分は、養殖網CNが海水中SWで上下方向に移動され、紐状の網が養殖業者に簡単に開閉されるため、紐状の網(図示省略)になっている。そのため、サメSKは、養殖網CNの上面部分に比べて、上面部分から養殖網CNの中に侵入し易い。そして、サメSKは、養殖網CNが海水中SWに完全に沈んでいる場合(すなわち、図6に例示されている場合)に、上面部分の紐状の網を破って養殖網CNの中に侵入しようとする。
【0040】
<応用例の電子機器の機能及び構成>
応用例の電子機器10Aは、海水中SWに入れられた状態で使用され、サメSK、エイRY等のロレンチーニ器官を有する魚類(特定魚)を追い返すための機能を有する(図6参照)。
電子機器10Aは、本実施形態の電子機器10(図1図5等参照)と、複数の棒体500とを備えている。
【0041】
複数の棒体500の数は、図6の例では、一例として4本(棒体500A、500B、500C、500D)である。
棒体500A、500B、500C、500Dの外周面には、電子機器10の筒体400(図5参照)の外周面と同じ色(一例として黄色)が付されており、かつ、電子機器10の筒体400から離れて配置される。
また、棒体500A、500B、500C、500Dの外周面には、筒体400(図5参照)の外周面と同じ模様(一例としてゼブラ模様)が付されている。
また、棒体500A、500B、500C、500Dは、養殖網CNの外部(又は外側)に配置される。
【0042】
以上が、応用例の電子機器10Aの機能及び構成についての説明である。
【0043】
<応用例の電子機器の動作及び効果>
次に、応用例の電子機器10Aの動作及び効果について、図6を参照しながら説明する。
【0044】
まず、使用者(図示省略)は、電子機器10を釣り糸FL及び魚体TNに取り付ける(図1参照)。次いで、使用者は、海水中SWにおける、養殖網CNの上側に電子機器10を沈める(図5参照)。さらに、使用者は、棒体500A、500B、500C、500Dの上端に釣り糸FLを取り付けて、養殖網CNの上側かつ電子機器10から離れた場所に、棒体500A、500B、500C、500Dを沈める。
【0045】
その後のサメSKの反応は、本実施形態で説明したサメSKの反応(1)及びサメSKの反応(2)のとおりである。応用例の場合も、サメSKは魚体TNが又は筒体400が危険な物体であると認識して(学習して)、意図的にこれらに近づかなくなる点は前述の本実施形態の場合と同様である。ただし、応用例の場合、筒体400と同色又は同模様のサメSKは、棒体500A、500B、500C、500Dも筒体400と同様に危険な物体であると認識して、棒体500A、500B、500C、500Dにも近づかなくなる。
【0046】
以上のとおりであるから、応用例の電子機器10Aは、前述の本実施形態の場合に比べて、過去に、電子機器10に固定されている魚体TNに接触したサメSK(やエイRY)を、より広範囲で追い払うことができる。ここでいう、広範囲とは、筒体400の近傍の範囲のみならず、棒体500A、500B、500C、500Dの近傍の範囲を含む範囲を意味する。また、応用例の電子機器10Aは、低コストの構成で、近づいてきたサメSK(やエイRY)を電子機器10及び棒体500A、500B、500C、500Dの下側に配置される養殖網CNから追い払うことができる。
【0047】
以上が、応用例の電子機器10Aの動作及び効果についての説明である。
【0048】
≪複数の変形例≫
以上のとおり、本発明について本実施形態及び応用例を参照しながら説明したが、本発明の技術的範囲はこれらの形態に限定されるものではない。例えば、本発明の技術的範囲には下記の複数の変形例も含まれる。
【0049】
<変形例1>
例えば、出力部137から出力される交流電圧の一例は図4のような矩形波であると説明した。しかしながら、サイン波その他の周期波であってもよい。
【0050】
<変形例2>
例えば、出力部137から出力される交流電圧の一例は図4のような矩形波であると説明した。しかしながら、回路基板130に出力部137の出力回数をカウントするカウンター(図示省略)を設けて、カウント数(サメSKが魚体TNに接触した結果、出力部137が出力した回数)が大きくなるほど、出力する交流電圧の振幅APを大きくするようにしてもよい。
これにより、サメSKが魚体TNに接触するほど強い刺激を受けるように感電し易くなるため、サメSKを追い払い易くなる。
【0051】
<変形例3>
例えば、出力部137から出力される交流電圧の一例は図4のような矩形波であると説明した。しかしながら、回路基板130に出力部137の出力回数をカウントするカウンター(図示省略)を設けて、カウント数(サメSKが魚体TNに接触した結果、出力部137が出力した回数)が大きくなるほど、出力する交流電圧の波形を変更するようにしてもよい。
これにより、サメSKが魚体TNに接触するほどサメSKは異なる刺激を受けて感電することになるため、サメSKが感電に対して慣れ難くなる。その結果、サメSKを追い払い易くなる。
【0052】
<変形例5>
例えば、筒体400の外周面及び複数の棒体500の外周面には、互いに同じ黄色が付されていると説明した。しかしながら、黄色に換えて、赤色又はオレンジ色であってもよい。また、これらの色の2種以上の組合せが付されていてもよい。
【0053】
<変形例6>
例えば、筒体400の外周面及び複数の棒体500の外周面には、互いに同じ黄色が付されていると説明した。しかしながら、黄色に換えて、赤色又はオレンジ色であってもよい。また、これらの色の2種以上の組合せが付されていてもよい。
【0054】
<変形例7>
例えば、筒体400の外周面及び複数の棒体500の外周面には、互いに同じ黄色を含む同じゼブラ模様が付されていると説明した。しかしながら、黄色、赤色及びオレンジ色の1種又は2種以上の色が付されていれば模様はゼブラ模様でなくてもよい。例えば、水玉模様その他の模様で合ってもよい。更には、こらの外周面には模様が形成されずに、黄色、赤色及びオレンジ色のいずれか1種の単色が付されていてもよい。
【0055】
<変形例8>
例えば、棒体500の本数は、一例として4本である(図6参照)と説明した。しかしながら、棒体500の本数は、4本以外の複数本であってもよい。また、1本であってもよい。
【0056】
<変形例9>
例えば、複数の棒体500は、一例として、養殖網CNの上側に沈める(配置する)
として説明した(図6参照)。しかしながら、複数の棒体500の一部又は全部が養殖網CNの上側以外の周囲に配置されてもよい。また、例えば、養殖網CNの筐体を構成する複数の棒(隣接する面同士の境界部分)を、複数の棒体500としてもよい。
【0057】
<変形例10>
例えば、本実施形態では、第1導線310の他端312及び第2導線320の他端322は、それぞれ、魚体TNに取り付けられていると説明した(図1参照)。しかしながら、第1導線310の他端312及び第2導線320の他端322の一方又は両方は、魚体TNの近傍(一例として、魚体TNから3m以内の領域を意味する。)に配置されるようにしてもよい。
【0058】
以上が、複数の変形例についての説明である。
【符号の説明】
【0059】
10 電子機器
10A 電子機器
40A 発生器
100 本体
110 ハウジング(収容体の一例)
112 開口
120 フック
122 開閉部
130 回路基板
130A 発生器
131 プリント配線板
132 変換部
133 電源
134 制御部
135 記憶部
136 選択スイッチ
137 出力部
137A 第1出力端子
137B 第2出力端子
138 物理スイッチ
200 可撓線
202 一端
204 他端
300 一対の導線
310 第1導線
312 他端
320 第2導体
322 他端
400 筒体
500 複数の棒体
500A 棒体
500B 棒体
500C 棒体
500D 棒体
AP 振幅
CF 養殖魚
CN 養殖網
FL 釣り糸
RY エイ(特定魚の一例)
SK サメ(特定魚の一例)
T 周期
T1 時間
T2 時間
TN 魚体(接触対象の一例)

【要約】
【課題】本発明は、低コストの構成で、近づいてきたロレンチーニ器官を有する特定魚を追い払うことができる電子機器の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電子機器10は、電源133並びに第1出力端子137A及び第2出力端子137Bを含む出力部137を有し、電源133から供給される電圧を出力部137から出力する発生器130Aと、第1出力端子137A及び接触対象TNに取り付けられる第1導線310と、第2出力端子137B及び接触対象TNに取り付けられる第2導線320と、一端が接触対象TNに取り付けられる可撓線200と、可撓線200の他端が固定されている物理スイッチ138と、発生器130A及び物理スイッチ138を収容している収容体110と、を備え、特定魚SKが接触対象TNに接触して可撓線200が引っ張られると、物理スイッチ138が電源133を起動させて、特定魚SKを追い返す。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6