(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】抗体において自己抗原に対する反応性を低減する方法、および低減された自己抗原に対する反応性を有する抗体
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20240927BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240927BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240927BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C07K16/10
A61P31/16
A61K39/395 S
C12N5/10
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019221173
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】福山 英啓
(72)【発明者】
【氏名】岡村 千絵子
(72)【発明者】
【氏名】畑 ひかる
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第15/025825(WO,A1)
【文献】The Journal of Immunology,2011年,187(7),3785-3797, suppl.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/08
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体から、当該特定の抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有し、かつ、低減された非特異的な結合反応性を有するモノクローナル抗体を得る方法であって、
前記特定の抗原に結合すると共
に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞であって、前記特定の抗原に結合すると共
に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によってIgh遺伝子座が置き換えられた前記細胞を非ヒト哺乳動物に移植して生着させ、前記非ヒト哺乳動物に生着した前記細胞において軽鎖の遺伝子再構成を引き起こすことと、但し、前記細胞は、造血幹細胞、リンパ系幹細胞、プロB細胞、および大型プレB細胞から選択される細胞または多能性細胞であり、
前記非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を調製することと、
前記軽鎖の遺伝子再構成を引き起こした抗体産生細胞であって、前記特定の抗原に対する結合親和性を有し、かつ、低減された非特異的な結合反応性を有するモノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞を選択することと、
当該抗体産生細胞が産生する抗体の重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3とを有する抗体を発現する組換え抗体産生細胞株を得ることと、
前記組換え抗体産生細胞株からモノクローナル抗体を得ることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記特定の抗原が、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのステム領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体が自己抗原反応性の抗体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体がC179抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非ヒト哺乳動物が、H3株のヘマグルチニンまたはH3株のヘッドレスヘマグルチニンで免疫された前記非ヒト哺乳動物である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)のいずれかに結合する抗体であって
、
C179抗体と比較して、自己抗原に対する反応性を低下させており、かつ
(1)配列番号140に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号141に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号142に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号143に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号144に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号145に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを有する抗体;
もしくは
(2)配列番号138に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号139に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する抗
体
またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
請求項6に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体において自己抗原に対する反応性を低減する方法、および低減された自己抗原に対する反応性を有する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルス感染は、深刻な健康と社会経済的結果をもたらす季節性の疾患であり、さらにH5N1やH7N9などの新興ウイルスによる致命的な大流行のリスクがある。伝播中にインフルエンザウイルスゲノムが遺伝的に改変されると、抗原に変化が起こり、これにより季節性ワクチンの有効性が繰り返し妨げられてきた。1993年、インフルエンザ免疫マウス1から最初の広範囲中和モノクローナル抗体(bnAb)C179が単離され、現在までのところ、ヒトでもいくつかの他のbnAbが発見された2。驚くべきことに、ヒトとマウスの両bnAbの構造研究は、それらbnAbの大部分がヘマグルチニンのステム領域3、4、5、6においてHA1とHA2の両方のドメインからなる共通の構造エピトープを認識することを明らかにした。C179はHA1ドメインとHA2ドメインを架橋し、HA1ドメインの融合ペプチドが宿主細胞膜に向かって反転するのを防ぎ、宿主-ウイルス融合を可能にする1。これらのbnAbが発見されたことにより、普遍的なインフルエンザワクチンの開発が現実的に可能になった。
【0003】
一方、ヒトステム特異的「交差反応性」抗体は比較的よく見られるものであるが7、ステム特異的「広範囲中和」抗体は稀である3,8。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Okuno, Y., Isegawa, Y., Sasao, F. & Ueda, S., Journal of virology 67, 2552-2558 (1993).
【文献】Corti, D. & Lanzavecchia, A., Annual review of immunology 31, 705-742 (2013).
【文献】Corti, D. et al., Journal of Clinical Investigation 120, 1663-1673 (2010).
【文献】Dreyfus, C. et al., Science 337, 1343-1348 (2012).
【文献】Sui, J. et al., Nature Structural & Molecular Biology 16, 265-273 (2009).
【文献】Throsby, M. et al., Plos One 3 (2008).
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体(特に特定の抗原が、外来の侵入者の抗原であり、非特異的な結合が、自己抗原に対するものである抗体)について、非特異的な結合反応性(例えば、自己抗原に対する反応性)を低減する方法を見出した。本発明は、抗体において自己抗原に対する反応性を低減する方法、および低減された自己抗原に対する反応性を有する抗体を提供する。
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体から、当該特定の抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有し、かつ、低減された非特異的な結合反応性を有するモノクローナル抗体を得る方法であって、
前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞であって、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によってIgh遺伝子座が置き換えられた前記細胞を非ヒト哺乳動物に移植して生着させ、軽鎖の遺伝子再構成を引き起こすことと、
前記非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を調製することと、
前記特定の抗原に対する結合親和性を有する抗体を産生する抗体産生細胞を選択することと、
当該抗体産生細胞が産生する抗体の重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3とを有する抗体を発現する組換え抗体産生細胞株を得ることと、
前記組換え抗体産生細胞株からモノクローナル抗体を得ることと
を含む、方法。
[1A]特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体から、当該特定の抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有し、かつ、低減された非特異的な結合反応性を有するモノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞を得る方法であって、
前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞であって、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によってIgh遺伝子座が置き換えられた前記細胞を非ヒト哺乳動物に移植して生着させ、軽鎖の遺伝子再構成を引き起こすことと、
前記非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を調製することと、
前記特定の抗原に対する結合親和性を有する抗体を産生する抗体産生細胞を選択することと、
当該抗体産生細胞が産生する抗体の重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3とを有する抗体を発現する組換え抗体産生細胞株を得ることと
を含む、方法。
[1B]モノクローナル抗体を得る方法であって、
組換え抗体産生細胞株から産生されるモノクローナル抗体を回収することを含み、
当該組換え抗体産生細胞株は、
非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞であって、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によってIgh遺伝子座が置き換えられた前記細胞を非ヒト哺乳動物に移植して生着させ、軽鎖の遺伝子再構成を引き起こすことと、
前記非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を調製することと、
前記特定の抗原に対する結合親和性を有する抗体を産生する抗体産生細胞を選択することと、
当該抗体産生細胞が産生する抗体の重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3とを有する抗体を発現する組換え抗体産生細胞株を得ること
を含む方法によって得られた株である、
方法。
[2]前記特定の抗原が、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのステム領域である、上記[1]、[1A]、および[1B]のいずれかに記載の方法。
[3]前記特定の抗原に結合するモノクローナル抗体が自己抗原反応性の抗体である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記特定の抗原に結合するモノクローナル抗体がC179抗体である、上記[3]に記載の方法。
[5]前記非ヒト哺乳動物が、H3株のヘマグルチニンまたはH3株のヘッドレスヘマグルチニンで免疫された前記非ヒト哺乳動物である、上記[2]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)のいずれかに結合する抗体であって、
(1)配列番号140に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号141に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号142に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号143に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号144に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号145に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを有する抗体;
(2)配列番号138に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号139に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する抗体;および
(3)上記(2)に記載の抗体と当該HAとの結合に関して競合する抗体、
またはその抗原結合フラグメント。
[7]上記[6]に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】C179BCR発現B細胞およびそのHAタンパク質への結合。(A)C179 BCRマウスの脾臓中の総リンパ球、B細胞、T細胞の数。(B)インフルエンザH2N2ウイルスの安定な三量体HAタンパク質の生産。組換えHAタンパク質の概略図;SDS-PAGEによるタンパク質発現;三量体HAタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー分析。(C)HAタンパク質に対する抗体の親和性(Kd(M)で示す)。フローサイトメトリー解析(D)代表図と各種BCRマウス系統由来のB細胞へのHAタンパク質結合の要約データ(E)。NSP2およびNSP29は、Narita(H1 California Pdm様)株特異的モノクローナル抗体である。Hy10は抗HEL BCRマウスである。エラーバーはn=3~8の動物のデータのSEMを示す。全データを6つの独立した実験からプールする。統計解析には独立2群両側student検定を用いた。N.T.:試験せず。
【
図2】C179、C179生殖系列、NSP2 B細胞の単一細胞Igレパートリー分析。Igh、Igκ、Igh-Igκのペアの導入遺伝子の使用頻度を円グラフに示す。解析した配列の数は円グラフの中心に示した。黒色および薄いグレーは、それぞれ導入遺伝子および非導入遺伝子アリル(対立遺伝子)を示す。Igκの濃いグレーはIGKV12-46*01アリルを示し、これはC179およびC179生殖系列B細胞に頻繁に用いられる。2つの独立した実験の1つが示されている。他の実験のデータを
図11に示す。
【
図3】C179Rag1欠損およびRag1の十分なB細胞の単一細胞Igレパートリー分析。円グラフはIgh、Igκ、Igh-Igκのペアの導入遺伝子の使用頻度を示す。解析した配列の数は円グラフの中心に示した。黒色および薄いグレーは、それぞれ導入遺伝子および非導入遺伝子アリルを示す。Igκの濃いグレーは、IGKV12-46*01アリルを示す。ホモC179ノックインアリルを持つマウス由来のB細胞をこの実験に用いた。2つの独立した実験の1つが示されている。他の実験のデータを
図12に示す。
【
図4】末梢血B細胞の頻度とCD21の発現。異なるRag-1遺伝子型の6~10週齢のC179BCRマウス(A)またはC179生殖系列BCRマウス(B)の末梢血におけるB細胞(CD3‐B220+)の頻度を示した。細胞表面のCD21発現は、代表的なデータ(左)としてヒストグラム、要約データとして幾何平均蛍光強度(gMFI)を有する棒グラフ(右)で示されている。平均値とSEMをそれぞ棒とエラーバーで示す。各ドットは個々のマウスのデータを示す。一方向ANOVAを実施した。p値はTukeyの多重比較検定の結果による。
【
図5】免れた中和抗体のレパートリー。(A)PR8およびH2 HAの両方に結合するナイーブ成熟B細胞(IgM+IgD+B220+)を単一細胞ソーティングし、それらのIg遺伝子の配列を決定した。IGKV12-46*01の使用割合は円グラフに示す。この円グラフに用いた2つの独立した実験を
図13に示す。解析した配列の数は円グラフの中心に示した。黒色および濃いグレーは、それぞれ元の導入遺伝子およびIGKV12-46*01アリルを示す。Igκにおける薄いグレーは他のアリルを示す。IGKV12-46*01(濃いグレー)は、C179 IGKV12-98*01導入遺伝子(黒色)と82.4%のヌクレオチド同一性を示す。組換え抗体は、B11と命名されたPR8+H2+B細胞クローンの一つから作製した。各種HAタンパク質に対するB11抗体の親和性を(B)に示す。PR8およびH2ウイルスに対する中和活性を(C)に示す。
【
図6】自己抗原タンパク質アレイ分析。一連の抗体、C179、C179生殖系列、B11、NSP2、NSP29、およびM2139をアレイ分析に供した。各自己抗原のNFIの標準偏差指数(SDI)を計算した。(A)SDI値がヒートマップで表される。(B)SDI>1.2の抗体ごとに陽性となる自己抗原の数。(C)SDI>1.8の各自己抗原に対する全抗体の総NFI値の割合で示した上位の自己抗原の一覧。3未満の各自己抗原に対するすべてのSNR値は、非特異的結合と考えられる。
【
図7】BCRマウス系統のスキーム図。(a)重鎖遺伝子座に関する遺伝子断片がノックインされ、軽鎖遺伝子座に関する遺伝子断片がランダムに挿入された。(b)重鎖遺伝子断片に関するGateway-based標的ベクターが示されている。クローニング後に、652bpの上流と363bpの下流の領域を含むVDJ断片がpENTRベクターに挿入された。FRT部位の近傍にNeoおよびジフテリアトキシン(DTA)遺伝子を含むIghノックインGateway発現ベクターがpDEST
TMVHを用いたLR反応により生み出され、次の工程に用いられた。(c)C179ハイブリドーマ由来の6849bpのゲノムDNA断片がpGEMバックボーンのIgκベクターにクローニングされた。C179の図はプロトタイプとして示されている。同じ一般的手法が他のBCRマウス系統に用いられた。
【
図8】C179とC179生殖系列のアミノ酸配列の比較。C179とC179生殖系列の重鎖可変領域(
図8a)および軽鎖可変領域(
図8b)のアミノ酸配列のアラインメント。インフルエンザウイルスのHAタンパク質と相互作用する重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を丸印で示した
12。Xは、置換を伴うアミノ酸の位置を示す。四角は、CDRを示す。
【
図9】単一B細胞のソーティング戦略。BCRマウス系統由来の脾細胞をRBCで溶解し、後述する抗体で染色した。7AAD-Dump-B220+IgD+IgM+の単一細胞がソートされた。用いられたDump染色抗体は、CD5、CD11b、CD11c、CD42、CD138、Thy1.2、TER119、F4/80、Gr-1であった。
【
図10】C179、C179生殖系列およびB11の軽鎖配列の比較。(a)B11の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、その生殖系列の対応物とのアラインメント。(b)C179、C179生殖系列、およびB11の軽鎖可変領域のアミノ酸配列のアラインメント。インフルエンザウイルスのHAタンパク質と相互作用する重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を丸印で示した
12。Xは、置換を伴うアミノ酸の位置を示す。四角は、CDRを示す。(b)において、HA2ドメインと相互作用するC179のCDR1におけるT31W32がB11においてはS31N32で置き換えられている。
【
図11】C179、C179生殖系列およびNSP2 B細胞の単一細胞Igレパートリー解析。
図2におけるのと同様の実験の結果が示されている。
図2においても示されたように、NSP2 B細胞は、元々のペアであった重鎖と軽鎖の遺伝子を発現している。しかし、C179とC179生殖系列のB細胞は、元々のペアであった重鎖と軽鎖の遺伝子を発現しない。Igh、Igκ、およびIgh-Igκにおける導入遺伝子の使用頻度は、円グラフで示されている。分析された配列の数が円グラフの中心に示されている。黒と薄いグレーはそれぞれ、導入遺伝子アリルおよび非導入遺伝にアリルを示す。
【
図12】C179Rag1欠損B細胞の単一細胞Igレパートリー解析。
図3においても示されたように、Rag1が十分なC179 B細胞とは異なり、Rag1欠損C179 B細胞は、元々のペアであった重鎖と軽鎖の遺伝子を発現する。Igh、Igκ、およびIgh-Igκにおける導入遺伝子の使用頻度は、円グラフで示されている。分析された配列の数が円グラフの中心に示されている。黒と薄いグレーはそれぞれ、導入遺伝子アリルおよび非導入遺伝にアリルを示す。Igκにおける濃いグレーは、IGKV12-46*01アリルを示す。ホモのC179ノックインアリルを有するマウス由来のB細胞が本実験では用いられた。
【
図13】PR8+H2+のナイーブB細胞におけるIGKV12-46の使用。2回の独立した実験の結果が示されている。Igh、Igκ、およびIgh-Igκにおける導入遺伝子の使用頻度は、円グラフで示されている。元々のペアであった重鎖と軽鎖の遺伝子が黒で示されており、IGKV12-46遺伝子が濃いグレーで示されており、その他が薄いグレーで示されている。分析された配列の数が円グラフの中心に示されている。
【発明の詳細な説明】
【0008】
本明細書では、「非ヒト哺乳動物」とは、ヒト以外の哺乳動物を意味し、霊長類、および非霊長類の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ)の動物を含む。
【0009】
本明細書では、「抗体」とは、免疫グロブリンを意味し、一対のジスルフィド結合で安定化された2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)が会合した構造をとるタンパク質をいう。重鎖は、重鎖可変領域VH、重鎖定常領域CH1、CH2、CH3、及びCH1とCH2の間に位置するヒンジ領域からなり、軽鎖は、軽鎖可変領域VLと軽鎖定常領域CLとからなる。この中で、VHとVLからなる可変領域断片(Fv)が、抗原結合に直接関与し、抗体に多様性を与える領域である。また、VL、CL、VH、CH1からなる抗原結合領域をFab領域と呼び、ヒンジ領域、CH2、CH3からなる領域をFc領域と呼ぶ。
可変領域のうち、直接抗原と接触する領域は特に変化が大きく、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。CDR以外の比較的変異の少ない部分をフレームワーク(FR)と呼ぶ。軽鎖と重鎖の可変領域には、それぞれ3つのCDRが存在し、それぞれN末端側から順に、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3と呼ばれる。抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3は、例えば、Kabatの番号付けシステム(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD)に基づいて決定され得る。
抗体は、非ヒト哺乳動物の抗体、ヒト化抗体、およびヒトキメラ抗体を含む。
【0010】
本明細書では、「ヒト化抗体」とは、非ヒト由来の抗体に特徴的なアミノ酸配列で、ヒト抗体の対応する位置(具体的には6つのCDR)を置換した抗体を意味し、例えば、マウス又はラットを免疫して作製した抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を有し、重鎖及び軽鎖のそれぞれ4つのフレームワーク領域(FR)を含むその他のすべての領域がヒト抗体に由来するものが挙げられる。かかる抗体は、CDR移植抗体と呼ばれる場合もある。
本明細書では、「ヒトキメラ抗体」は、非ヒト由来の抗体において、非ヒト由来の抗体の定常領域がヒトの抗体の定常領域に置換されている抗体である。ヒトキメラ抗体では、ADCC活性を高める観点では、例えば、定常領域に用いるヒトの抗体のサブタイプはIgG1とすることができる。
【0011】
本明細書では、「抗原結合フラグメント」とは、抗体のフラグメントであって、抗原への結合性を維持したフラグメントをいう。具体的には、VL、VH、CL及びCH1領域からなるFab;2つのFabがヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されているF(ab’)2;VL及びVHからなるFv;VL及びVHを人工のポリペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体であるscFvのほか、diabody型、scDb型、tandem scFv型、ロイシンジッパー型などの二重特異性抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書では、抗体は、抗原結合フラグメントであり得る。
【0012】
本明細書では、「抗原への結合性を損なわずに」とは、抗原への結合親和性が少なくとも部分的に維持されていること、または抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有することを意味する。
【0013】
本明細書では、「特定抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有する」とは、特定抗原への結合親和性を少なくとも部分的に又は完全に有することを意味する。「特定抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有する」は、抗体が複数の抗原に親和性を有する場合には、すべての抗原への結合親和性が少なくとも部分的に維持されていること、または抗原の幾つかへの結合親和性を有することを意味する。本明細書では、「特定抗原」は、外来の侵入者の抗原であり得る。外来の侵入者としては、感染性の病原体(例えば、ウイルス、細菌、微生物、寄生生物等)が挙げられる。
【0014】
本明細書では、「非特異的な結合反応性」とは、抗体が目的の抗原以外の生体内の分子と反応する性質(非特異的に反応する性質)をいう。目的の抗原は、1つまたは複数である。
【0015】
本明細書では、「非特異的な結合反応性を低減する」は、抗体が反応する目的の抗原(複数の抗原であり得る)以外の分子の数を低減すること、および/または、抗体が反応する目的の抗原(複数の抗原であり得る)以外の分子の少なくとも一部への結合親和性を低下させることを意味する。本明細書では、「非特異的な結合反応性を低減する」は、目的の抗原以外に対する非特異的な反応性を低減させることにより、目的とする抗原(特定の抗原(複数の抗原であり得る))に対する特異性を向上させることであり得る。非特異的な結合反応性は、特に、抗体が、特定の抗原に加えて、生体内の他の抗原(例えば、自己抗原)にも反応性を有することを意味し得る。この場合、「非特異的な結合反応性を低減する」は、抗体が反応する生体内の他の抗原(例えば、自己抗原)の数を低減させること、および/または、抗体が反応する生体内の他の抗原(例えば、自己抗原)の少なくとも一部への結合親和性を低下させることを意味し得る。
【0016】
本明細書では、「自己抗原」とは、哺乳動物自身の体内に存在する抗原を意味する。体内に存在する抗原としては、例えば、核抗原、細胞質抗原、膜抗原、DNAおよびRNAが上げられる。
【0017】
本明細書では、「B細胞」とは、抗体産生を担う免疫細胞である。B細胞は、造血幹細胞からプロB細胞、大型プレB細胞、および小型プレB細胞を経て、骨髄から脾臓に移動し、成熟B細胞になる。プロB細胞においては、重鎖(H鎖)の遺伝子再編成が起きる。完成したH鎖を含むpre-BCRを形成して、大型プレB細胞となる。その後、軽鎖(L鎖)の遺伝子再編成が引き起こされ、小型プレB細胞へ分化する。完成した重鎖と軽鎖はIgMとして細胞膜上に提示される。このB細胞は、骨髄から抹消へ移動して、脾臓、リンパ節において成熟する。B細胞は、形質細胞に最終分化して抗体を産生する。
【0018】
本明細書では、「ハイブリドーマ」とは、脾臓、リンパ節細胞とミエローマ細胞を公知の方法により融合させて得られるクローン化された細胞株を意味する。ハイブリドーマは、モノクローナル抗体を産生することができる。
【0019】
本明細書では、「モノクローナル抗体」とは、クローン化された単一の抗体産生細胞から得られる抗体を意味する。本明細書では、「抗体産生細胞」とは、抗体を産生する細胞であり、1種類の抗体を産生する。クローン化された抗体産生細胞は、単一の抗体(モノクローナル抗体)を産生しうる。抗体産生細胞としては、特に限定されないが例えば、ハイブリドーマや抗体遺伝子を発現可能に有するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などが挙げられる。
【0020】
本発明によれば、特定の抗原に結合すると共に非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体から、当該特定の抗原への結合親和性を少なくとも部分的に有し、かつ、低減された非特異的な結合反応性を有するモノクローナル抗体を得る方法が提供される。
本発明は、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞であって、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によってIgh遺伝子座が置き換えられた細胞を非ヒト哺乳動物に移植して生着させ、移植した細胞中で軽鎖の遺伝子再構成を引き起こすことを含む方法である。本発明の方法は、移植した細胞中で軽鎖の遺伝子再構成を引き起こすことにより、例えば、生体内の分子に対して反応性を有する抗体を産生する細胞はその発生段階において除去されるのに対して、生体内の分子に対して反応性を有しないか、低い反応性を有する抗体を産生する細胞は生き残り、結果として、生体内の分子の分子に対して低い反応性を有する抗体を産生する細胞が得られることとなる。
【0021】
ここで、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞とは、細胞の軽鎖遺伝子は少なくとも一対立遺伝子は破壊または置換されておらず、機能的であるが、追加的に前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を有する細胞を意味する。また、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によってIgh遺伝子座が置き換えられた細胞とは、抗体重鎖をコードする遺伝子座(Igh遺伝子座)が、前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子によって置き換えられた細胞であり、元来のIgh遺伝子座の代わりに前記非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子を有する細胞を意味する。前記細胞は、生後の非ヒト哺乳動物に移植される場合には、造血幹細胞から大型プレB細胞までの分化系列のいずれかの細胞であり得、例えば、造血幹細胞、リンパ系幹細胞、プロB細胞、および大型プレB細胞から選択される細胞であり得る。これらの細胞は、大型プレB細胞から小型プレB細胞に分化する過程において軽鎖の遺伝子再構成が行われ、抗原特異性が部分的に修正されるためである。当業者であれば、造血幹細胞移植などの血液細胞の移植に関する公知の方法に従って、細胞を非ヒト哺乳動物に移植し、生着させることができる。前記細胞は、非ヒト哺乳動物の胚(例えば、胚盤胞、桑実胚等)に移植される場合には、多能性細胞(例えば、ES細胞およびiPS細胞などの多能性幹細胞)であり得る。
【0022】
また、本発明において、細胞を移植される非ヒト哺乳動物は、造血幹細胞から大型プレB細胞までの分化系列のいずれかの細胞が移植される場合には、免疫不全の非ヒト哺乳動物(例えば、T細胞を欠損した動物(例えば、ヌードマウス)、T細胞およびB細胞の2系統を欠失した動物(例えば、SCIDマウス)、補体活性が減衰され、マクロファージが機能不全である動物(例えば、NODマウス)、NK細胞の欠損および樹状細胞の機能不全を有する動物(例えば、IL-2rγノックアウト動物(例えば、IL-2rγノックアウトマウス))であり得る。免疫不全の非ヒト哺乳動物には、造血幹細胞などの幹細胞や免疫性棒が生着させることができる。本発明において、細胞を移植される非ヒト哺乳動物は、Rag sufficientであり、すなわち、機能的なRag1およびRag2をコードする遺伝子のいずれかまたは両方を有する。
【0023】
本発明において、軽鎖の遺伝子再構成は、大型プレB細胞から小型プレB細胞に分化する過程においてなされる。従って、大型プレB細胞またはそれ以前の発生段階のB細胞系列の細胞を免疫不全の非ヒト哺乳動物に移植することによって、生着した細胞において、軽鎖の遺伝子再構成が引き起こされる。移植は、非ヒト哺乳動物の骨髄に対してなされ得る。B細胞系列の細胞とは、造血幹細胞から大型プレB細胞までの分化系列のいずれかの細胞であり得、例えば、造血幹細胞、リンパ系幹細胞、プロB細胞、および大型プレB細胞から選択される細胞であり得る。上述のように免疫不全の非ヒト哺乳動物の胚に多能性細胞を移植することによっても、造血系を当該多能性細胞によって再構築することができることが知られており、この方法によっても、多能性細胞を生着させ、然るべき発生段階において軽鎖の遺伝子再構成が引き起こされる。
【0024】
非ヒト哺乳動物からハイブリドーマを調製することは、当業者に周知の方法によって達成され得る。具体的には、当業者であれば、周知の方法により、非ヒト哺乳動物の脾細胞およびリンパ節から得られた細胞を得て、脾細胞または、リンパ節から得られた細胞とミエローマとを細胞融合させることによって、ハイブリドーマを得ることができる。ハイブリドーマは、限外希釈によりクローン化することができる。バイブリドーマは、ハイブリドーマの培養に適した条件下で培養される。ハイブリドーマの培養に適した条件は当業者に周知である。
【0025】
特定の抗原に対する結合親和性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することは、当業者に周知の方法によって達成され得る。具体的には、当該特定の抗原をプレートに固相化し、当該抗原に対する抗体の結合を検出することによって、当該抗原に対する結合親和性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。特定の抗原が複数である場合には、残りの抗原に対しても結合親和性を有するか否かを試験することができる。
【0026】
ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3とを有する抗体を発現する組換え抗体産生細胞株を得ることは、特定の抗原に対する結合親和性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生するmRNAから当業者に周知の方法でcDNAを合成し、当該cDNAの配列を決定することによりなされ得る。抗体をコードする遺伝子の配列から抗体のアミノ酸配列を推定することができ、抗体のアミノ酸配列から、例えば、Kabatの番号付けシステム(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD)に基づいて重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3を決定することができる。
【0027】
非ヒト哺乳動物から抗原に特異的に結合する単一B細胞をその結合特性に基づいて選別し(例えば、前記抗原に結合する抗体を産生するナイーブ成熟B細胞を単一細胞ソーティングすることによって選別し)、得られた単一B細胞の抗体から抗体の重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列を取得し、当該重鎖CDR1~3と軽鎖CDR1~3とを有する抗体を発現する組換え抗体産生細胞株を得ることは、当業者に周知の方法によって達成され得る。具体的には、当業者であれば、周知の方法により、非ヒト哺乳動物のリンパ球を得て、B細胞を一細胞ずつ単離し、mRNAから当業者に周知の方法でcDNAを合成し、当該cDNAの配列を決定することによりなされ得る。抗体をコードする遺伝子の配列から抗体のアミノ酸配列を推定することができ、抗体のアミノ酸配列から、例えば、Kabatの番号付けシステム(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD)に基づいて重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3を決定することができる。
【0028】
得られた抗体の重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3を有する抗体は、得られた抗体と同様の結合特性を有し得る。得られた抗体が、非ヒト哺乳動物抗体である場合には、重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3を用いてヒト化抗体を作製することができる。得られた抗体が、非ヒト哺乳動物抗体である場合には、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を用いてヒトキメラ抗体を作製することができる。抗体産生細胞に、上記抗体をコードする遺伝子を発現可能に導入して、抗体を産生する組換え抗体産生細胞を作製することができる。抗体産生細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)がよく用いられている。その他、抗体産生細胞としては、例えば、Sp2/0およびNS0細胞などのマウス骨髄腫細胞を用いることもできる。また、Fc領域を持たない低分子抗体は、大腸菌を抗体産生細胞として用いることができる。また、場合によっては、得られたハイブリドーマがそのまま抗体産生細胞として用いられることがある。抗体は、抗体産生細胞の培養上清中に分泌される。分泌された抗体は、例えば、プロテインAをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーで精製することができる。精製された抗体は、さらなるクロマトグラフィーによってさらに精製されてもよく、抗体医薬品の原薬を調製し得る。このようにして、本発明では、単離されたモノクローナル抗体または精製されたモノクローナル抗体が得られる。本発明によれば、単離されたモノクローナル抗体を含む、医薬組成物が提供され得る。医薬組成物は、医薬上許容可能な賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0029】
前記特定の抗原は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)であり得る。前記特定の抗原は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのステム領域であり得る。またある態様では、前記特定の抗原は、インフルエンザウイルスのHA分子のステム領域のHis38, Lys40, Ile42, Thr291, Leu292, Pro293, Thr318(HA1)とVal18,Asp19, Gly20, Trp21, Lys38, Thr41, Gln42, Phe45, Val52,および Ile56(HA2)であり得る。
【0030】
C179抗体は、インフルエンザA型(H2N2)のA/Okuda/57株で免疫したマウスの脾臓細胞とマウスミエローマP3U1とのハイブリドーマ(大阪府立公衆衛生研究所の奥野良信氏らにより樹立された)に由来するモノクローナル抗体である。C179抗体は、HA分子のステム領域のTGLRN(HA1の318~322)とGITNKVNSVIEK(HA2の47~58)であり、ウイルス間で高度に保存された領域である。C179抗体を産生するハイブリドーマは、FERM BP-4517により寄託されており、C179抗体は、Takara Bioなどから市販されている。
【0031】
本発明により得られる抗体は、C179抗体とは異なるアミノ酸配列を有し、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのステム領域において、C179抗体と重なるエピトープに結合する抗体であり得る。本発明により得られる抗体はまた、C179抗体とは異なるアミノ酸配列を有し、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのステム領域への結合に関して、C179抗体と競合する抗体であり得る。本発明により得られる抗体はまた、C179抗体とは異なるアミノ酸配列を有し、インフルエンザウイルスのHA分子のステム領域のHis38, Thr318(HA1)とVal18,Asp19, Gly20, Trp21, Lys38, Thr41, Gln42,および Phe45(HA2)に結合する抗体であり得る。
【0032】
本発明では、非特異的な結合反応性を示すモノクローナル抗体は、自己抗原反応性の抗体であり得る。C179抗体は、自己抗原反応性である。従って、本発明の方法は、非特異的な結合反応性を示す抗体は、C179抗体であり得る。
【0033】
本発明の方法では、前記非ヒト哺乳動物が、H3株のヘマグルチニンまたはH3株のヘッドレスヘマグルチニンで免疫された前記非ヒト哺乳動物であり得る。これにより、インフルエンザウイルスのH3株に対して親和性を有する抗体をより効果的に得られ得る。
【0034】
本発明の別の側面では、インフルエンザウイルスのHAのいずれかに結合する抗体であって、
(1)配列番号140に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号141に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号142に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号143に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号144に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号145に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを有する抗体;
(2)配列番号138に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号139に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有する抗体;および
(3)上記(2)に記載の抗体と当該HA(抗体が結合するHA、例えば、HA1、HA2、および/またはHA3)との結合に関して競合する抗体
が提供される。本発明の抗体は、インフルエンザウイルスのHAのステム領域に結合し得る。本発明の抗体は、インフルエンザウイルスのHAのステム領域のHis38, Thr318(HA1)とVal18,Asp19, Gly20, Trp21, Lys38, Thr41, Gln42,および Phe45(HA2)に結合する抗体であり得る。
【0035】
本発明によれば、前記インフルエンザウイルスのHAに結合する抗体を含む医薬組成物が提供され得る。医薬組成物は、医薬上許容可能な賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0036】
医薬上許容可能な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。当業者であれば、適宜医薬組成物を調製することができる。
【0037】
本発明の医薬組成物は、様々な形態、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤などとすることができる。好ましい態様は、注射剤であり、非経口(例えば、静脈内、経皮、腹腔内、筋内)で投与することが好ましい。
【実施例】
【0038】
[材料と方法]
(1)マウス
C179、C179生殖系列、NSP2およびNSP29 BCRマウス系統を以下のように作成した。前に記載したVH186.2-DFL16.1-JH2配列を含むターゲティングベクター
44に基づき、attRに隣接するGateway
TMccdBカセットを挿入し、Ighノックインゲートウェイ デシグネーション ベクター(pDEST
TMVH)を確立した。次いで、ハイブリドーマ細胞株C179、NSP2、およびNSP29からの再編成した重鎖遺伝子を含む約1.5kbp長のIghゲノムDNA断片を、pENTR、pCR(商標)8/GW/TOPO(商標)ベクター(ThermoFisher Scientific)にクローン化した。配列決定検証およびLR組換え反応の後、Ighノックインゲートウェイ発現ベクターをC57BL/6 J/N F1 ES細胞にトランスフェクトした。ジェネティシン選択後、標的ESクローンを選択し、PCRにより検証した。軽鎖をつくるにはトランスジェニックマウス系統を用い、高橋博士からの贈答物であるκ軽鎖トランスジーンpGEM-バックボーンベクターを用いた。本ベクターは、Vκリーダー配列の5’上流5kbp、リーダー-Vκ-Jκゲノム配列及び3’Eκを含む3’下流フランキング配列からなる約20kbp長のゲノムDNA断片を含有した。ハイブリドーマ細胞株、C179,NSP2,NSP29から5’上流及びリーダー-Vκ-Jκゲノム配列の5kbpのゲノムDNA断片をクローニングし、それらをベクター中の対応する配列と置換するために使用した。C179生殖系列BCRマウス系統をさらに作製するために、pENTR C179またはpGEM-C179κ軽鎖トランスジーンベクターのC179DNA配列を部位特異的突然変異誘発(Strategene)により生殖細胞系列配列に変換した。この構築物とその戦略は
図7に示してあり、Hy10 BCRマウス株はDr. J.G Cyster
13により提供された。Rag1 KO(B6.129S7-Rag1
tm1Mom/J STOCK#002216)マウスをJAX Laboratoryから購入した。C57BL/6JJclマウスは日本クレア(株)から購入した。すべての動物実験は、理化学研究所IMSの動物実験計画書によって行われた。
【0039】
(2)細胞
Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞を、加湿5%CO2インキュベーター中で37℃で10%ウシ胎児血清を含むイーグル最小必須培地中に維持した。発現293細胞を、加湿5%CO2インキュベーター中で37℃でExpi293発現培地(Invitrogen)中に維持した。
【0040】
(3)ウイルス
H1N1(A/Puerto Rico/8/1934、PR8と命名)とH2N2(A/Okuda/1957)を用い、MDCK細胞内でウイルスを増殖させた。
【0041】
(4)微量中和法
以前に記載された迅速焦点減少中和試験45を改変した。簡単に述べると、感染前日に2×104細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種し、D-MEMで洗浄し、100TCID50/ウェルのウイルスで1時間感染させた。ウイルス感染培地の除去後、細胞を洗浄し、0.5%トラガカントガム(Wako)および1μg/mL L-(トシルアミド-2-フェニル)エチルクロロメチルケトン処理トリプシンを含有するD-MEMで覆った。PR8については20~24時間、H2N2については40~45時間後、細胞を固定し、ELISAに供する。細胞を0.3% Tween-20 PBS洗浄バッファーで洗浄し、洗浄バッファーを含む5% Blocking One(Nacalai tesque, Inc.)中の抗NP抗体(C43、Dr. Y. Okunoからの贈答物)で染色した。抗体溶液を除去し、洗浄した後、細胞をHRP結合ウサギ抗マウスIgG2a抗体(Betyl Laboratories)と共にインキュベートし、洗浄し、TMB比色アッセイを行った。すべての洗浄工程は、405TS洗浄機(BioTek)を用いて実施した。
【0042】
(5)フローサイトメトリー
脾細胞または末梢リンパ球の赤血球溶解単一細胞懸濁液を、マウスBD Fc BlockTM抗CD16/CD32(BDからの2.4G2)で染色し、その後、以下のような種々の抗体で染色した:B220(BioLegendからのクローンRA3-6B2、FITC、PE-Cy7、APC/Fire、Bv510)、Thy1.2(BDからのクローン36H12、PE)、CD3e(クローン145-2C11、BioLegendからのFITC)、IgMb(BioLegendからのクローンAF6-78、PE)、IgM(AlexaからのクローンII/41、FITCおよびPE-C7クローン)、BDからのBR11BDクローン(クローン、BTC11DおよびB187からのBTC11BR、BTC11BR、BTC117、BTCクローン、B6およびBPE。死細胞は7‐アミノアクチノマイシンD(7‐AAD)で染色し、除外した。染色された細胞は、FACSCantoTMII(BDバイオサイエンス)を用いて分析するか、FACSAriaTMシリーズによって分類した(BDバイオサイエンス)。データはFlowJoTMソフトウェア(FlowJo, LLC)を用いて分析した。
【0043】
(6)単一B細胞Igレパートリーの配列決定と分析
単一細胞を、4μL/ウェルの溶解バッファー(2U/μL RNASin、0.5x PBS、10mM DTT)および1μLの12μM 3’_SMART_dTに滴下した。細胞溶解物を72℃で3分間インキュベートし、次いで氷上に2分間置いた。第1ストランドcDNA合成のために、細胞溶解物に5μLのRT混合液(2xFirst-Strand Buffer、5mM DTT、2mM dNTP Mix、2.5μM SMART 5’RACE オリゴヌクレオチド、10U RNasin、100U SMARTScribeTM逆転写酵素)を加え、42℃で90分、70℃で10分インキュベートし、その後、4℃で保持した。SMART 1stプライマーセットによるcDNA増幅では、25μLの第1増幅混合物(1×Kapa HiFi hotstarter Ready-mix、1×UPM、300nM Outer primer、2μLの第1ストランドcDNA、6.25μLのヌクレアーゼフリーH2O)を調製し、95℃で3分間インキュベートし、その後、98℃で20秒間、60℃で15秒間、および72℃で15秒間の35サイクルに供し、その後、72℃で1分間インキュベートしてから冷却した。Ig特異的2ndプライマーセットによるcDNA増幅のために、20μLの第2増幅混合物(1xKOD FX neoバッファー、400μM dNTP、500nM 5’マトリックスプライマーミックス、500nM 3’マトリックスプライマーミックス、2μLの第1cDNA増幅産物、0.5U KOD FX neo ポリメラーゼ)を調製し、94℃で2分間インキュベートし、その後、98℃で10秒間、60℃で30秒間、および68℃で45秒間の40サイクルに供し、冷却した。最後に、増幅による更なるプレートインデックス化のために、2nd cDNA増幅産物の3μLを使用した。20μLのプレートインデックス増幅混合物(1xKOD FX neo緩衝液、400μM dNTP、それぞれ500nMのP5_i5_Read1_M13F又はP7_i7_Read2_M13F、又はP5_i5_Read1_M13R、2μLの第2cDNA増幅産物、0.5U KOD FX neo ポリメラーゼ)を調製し、94℃で2分間インキュベートし、その後、98℃で10秒間、60℃で30秒間、および68℃で45秒間の25サイクルに供し、冷却した。すべてのプライマーを表3に示す。MiSeq Reagent Kit v2(Illumina)を用いて、ペアエンド(Read1:400nt、Read2:100nt)を用いて配列決定を行った。各ウェルのDNA配列をウェルインデックスおよびプレートインデックスによりソートした。5’-400ntおよび3’-400ntのIg配列をRead1から得た。リードに対してQ20を用いたトリミングとそれに続くクラスタリングを実施した。以下の4つの条件を満たすリードのみが、結果として生じるIg配列として用いられる。(1)長さ260nt以上のリード、(2)全リードの上限5%の割合でクラスター化された累積リード、(3)20塩基またはそれ以上の5’および3’ リードオーバーラッピング長、(4)重鎖の総長460±50bp、または軽鎖の総長390±40bp。得られた配列データはすべて、アノテーション46のためにIMGT/High V-QUEST(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/vquest)にかけた。配列アノテーション、Igデータベースの構築、およびIgレパートリーの可視化を、インハウスBONSCIソフトウェアを用いて実施した。
【0044】
(7)プラスミド
PR8(MA-Venus-PR8ウイルス47、Dr. Kawaokaから提供)およびH2N2(A/Okuda/1957、Dr. Okunoから提供)のHAエクトドメインおよび完全長NA cDNAを、感染細胞から抽出した全RNAを用いてRTPCRにより増幅した。H1株A/California/7/2009(X179A)、H3株A/Texas/50/2012(X-223)およびH5株A/Egypt/N03072/2010)のヒトコドンを最適化し合成した(GENEWIZ)。可溶性三量体HAプローブを作製するために、発現構築物は、元のN末端シグナルペプチド、次いでHAエクトドメイン、T4フィブリチンフォールドオン三量体化ドメイン、ビオチン化可能なAviTag、およびヘキサヒスチジンタグを含んでいた。また、HA1におけるシアル酸結合を失わせるY98F突然変異、および、HA1およびHA2において新規のジスルフィド結合を取り込んで三量体安定性を高めるためにT30CおよびQ47C突然変異それぞれをすべてのHA構築物に導入した。全てのHA遺伝子をpcDNA3.4(Thermo Fisher Scientific)にクローン化し、NA遺伝子をpEF-BOS48にクローン化した。ミニHA(PDB ID 5CJQ)は、N末端のmu-ホスファターゼシグナルペプチドおよびC末端のヘキサヒスチジンタグに隣接している。ミニHAを合成し、pcDNA3.4(GENEWIZ)にクローニングした。C179生殖抗体については、鋳型としてC179生殖BCRマウス系統に対するIghターゲティングまたはIgkトランスジェニックベクターを用いてPCR増幅したフラグメントを、mu-ホスファターゼシグナルペプチド、マウスIgG2a定常領域、ビオチン化可能なAviTagおよびヘキサヒスチジンタグを含むpcDNA3.4-mIgG2aベクターにクローン化した。B11抗体について、C179HL(雌、8週齢)由来のRBC溶解脾細胞を、マウスBD Fc BlockTM抗CD16/CD32、続いて抗B220-APC/Fire、IgM-PE-cy7、IgD-AlexaFlour(商標)647、PE-Dumpmix(CD5、CD11b、CD11c、CD43、Thy1.2、TER119、F4/80、Gr-1)、HAプローブ(H1PR8)-His)、HAプローブ(H2)-Bio、抗His-AlexaFlour(商標)488、ストレプトアビジン-BV421(商標)で染色した。死細胞は7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)により除外した。次いで、ソートされたダンプ-B220+IgM+IgD+PR8+H2+単一B細胞を溶解した。cDNAを合成し、単一B細胞Igレパートリー配列決定および分析で記載されたように一度増幅した。重鎖および軽鎖のクローニングについては、50μLの第2の増幅混合物(1×KOD-plus-Neo緩衝液、200μM dNTP、2mM MgSO4、300nM FWDクローニングプライマー、300nM REVクローニングプライマー、0.5μLの第1cDNA増幅産物、1U KOD-plusポリメラーゼ)を調製し、94℃で2分間、94℃で15秒間および74℃で15秒間の5サイクル、94℃で15秒間およびで15秒間の5サイクル、94℃で15秒間および70℃で15秒間の5サイクル、次いで、94℃で15秒間および68℃で15秒間の30サイクルでインキュベートし、68℃で7分間インキュベートして冷却した。PCR断片をpcDNA3.4-mIgG2aまたはpcDNA3.4-κ(pcDNA3.4-mIgG2aのマウスIgkバージョン)ベクターにクローン化した。
【0045】
(8)タンパク質の発現と精製
ExpifectamineTM293トランスフェクションキット(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造者の使用説明書に従い、25.7μgのHA、1.3μgのNA、および3μgのBirAを発現するプラスミドの混合物を、Expi293TM細胞にトランスフェクトし、37℃の加湿された8%CO2インキュベーター中で、インビボBirAビオチン化のためにD-ビオチンを最終濃度100M添加したExpi293発現培地(Invitrogen)で培養した。ミニHA産生については、30μgミニHA発現プラスミドをトランスフェクトし、D-ビオチンを含まない培地で培養した。トランスフェクション後3日後の培養上清を回収し、0.45μmのフィルター(EMD Millipore)で濾過した。すべてのタンパク質をTalon金属親和性樹脂(Clontech)で精製し、パイロジェンフリーのPBSで透析した。オリゴマーの状態および純度は、Superdex 200 10/300GLカラム(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、25℃で測定した。
【0046】
(9)抗体産生
C179、NSP2およびNSP29抗体はハイブリドーマ細胞から作製した(Dr. Y. OkunoおよびDr. Y. Takahashiから授与)。ハイブリドーマ細胞を中空繊維細胞システム(FiberCell Systems)に播種し、培養上清を回収した。プロテインGセファロース(GE Healthcare)を用いてモノクローナル抗体を精製した。タンパク質ぼ発現と精製のセクションで説明したように、Expi293TM細胞において組換えC179生殖抗体およびB11 IgG2a抗体を作製した。組換えモノクローナルIgG2a抗体を、Talon金属親和性樹脂(Clontech)を用いて培養上清から精製した。発現ベクタープラスミドはIg重鎖を含み、次いでC末端ビオチン化可能なAviTagおよびヘキサヒスチジンタグを含んでいた。
【0047】
(10)表面プラスモン共鳴
BIAcore 3000マシン(GE Healthcare)を用いて25℃で動態解析を行った。C179、C179生殖、NSP2、M2139および/またはB11抗体を、供給者の使用説明書に従ってアミンカップリングキットによりCM5センサーチップ(GE Healthcare)上に固相化した。HAプローブを5つの異なる濃度で系列希釈し、HBS‐EP緩衝液(10mM Hepes、pH7.4、150mM NaCl、3.4mM EDTA、および0.005%界面活性剤P20)中で、流速30μL/分で3分間、解離時間7分間で注入した。チップは、C179、C179生殖、NSP2およびM2139に対しては10mMグリシン(pH2.5)、またはB11に対しては4M MgCl2中で再生させた。M2139 mAbを、バックグラウンド結合の差し引くための参照として使用した。結合動態は、1:1のLangmuir結合モデルに基づいてソフトウェアBIAevaluationバージョン3.0を用いて計算した。
【0048】
(11)自己抗原マイクロアレイを用いた自己抗体プロファイリング
テキサス大学サウスウェスタン医療センター(https://microarray.swmed.edu/products/category/protein-array/)が開発した自己抗原マイクロアレイプラットフォームを用いて、124自己抗原のパネルに対する自己抗体再活性体を測定した。簡単に言うと、自己抗体プロファイリングのために、モノクローナルmAbをPBST(PBS中0.1% Tween 20)緩衝液中で1μg/mLに希釈した。124の自己抗原と4つの対照タンパク質を備えた自己抗原アレイを、Nitrocellurosellフィルムスライド(Grace Bio-Labs)上に複製して印刷した。希釈したmAb試料を自己抗原アレイと共にインキュベートし、Cy3結合抗マウスIgG(1:2000、Jackson ImmunoResearch Laboratories)およびCy5結合抗マウスIgM(1:2000、Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて、532nmおよび635nmのレーザー波長を有するGenepix 4200Aスキャナー(Molecular Device)を用いて自己抗体を検出した。得られた画像はGenepix Pro 7.0ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて解析した。各スポットの信号強度の中央値を算出し、スポット周辺の局所バックグラウンドを差し引いて、複製した2つのスポットから得られたデータを平均した。各抗原のバックグラウンドを差し引いたシグナル強度を、内部対照としてアレイ上にスポットしたマウスIgGおよびIgM(またはIgAおよびIgE)の平均強度に対して正規化した。最後に、各抗原に対する正味蛍光強度(NFI)を、陰性対照として各実験に含めたPBS対照を差し引くことにより計算した。シグナル対ノイズ比(SNR)を、バックグラウンドノイズを超える真の信号の定量的な大きさとして用いた。3以上のSNR値はバックグラウンドよりも有意に高く、真のシグナルであると考えられた。
【0049】
(12)統計
GraphPad Prismソフトウェアを用いた統計解析には、両側スチューデントt検定と一方向ANOVAを用いた。
【0050】
結果
[1]C179 B細胞は低頻度でHAと結合する
発明者らは、重鎖遺伝子座およびC179κ軽鎖導入遺伝子にC179ノックインVDJを保有するステム特異的中和抗体C179 BCRマウス株を作製した(
図7)。脾臓内の総細胞、B細胞、T細胞の数は野生型とC179BCRマウスで同等であり(
図1A)、B細胞の発生に大きな欠陥がないことを示している。
【0051】
次に、C179 B細胞が様々なインフルエンザ株由来のHAタンパク質に結合できるかどうかを調べた。ここに示した報告書(
図1B)で述べた以下のような改変によって、一連の三量体化組換えHAタンパク質が作製された。(1)二つの個々の単量体HAタンパク質が互いに会合して三量体型を安定化させる残基において置換によって2つのシステインを組み込んだ
9;(2)バクテリオファージT4からのfoldonフラグメントがHAタンパク質のC末端に結合して三量体化を促進した
10;(3)HAタンパク質上の受容体結合部位(RBS)とB細胞表面のシアル酸の非特異的結合を最小限にするために、H3、HAの98アミノ酸残基に相当する位置のアミノ酸において全てのHAプローブにYからFへの置換を導入した
11。これらの組換えHAタンパク質のオリゴマー化状態をサイズ排除クロマトグラフィーで解析し、C179と他の抗体との結合親和性を表面プラズモン共鳴で測定した(
図1BとC)。C179は以前の研究
12で報告されたのと同様の親和性でグループ1のHAタンパク質に対する広い反応性を示した。また、2つの他の抗HA抗体、NSP2およびNSP29、ならびに生殖細胞系、C179抗体の非変異型も試験した(表1および
図8)。NSP2とNSP29はともにHA Calに特異的に結合する(Kd:それぞれ1.29×10
-13Mと1.77×10
-13M;
図1C)。注目すべきことに、NSP2はHAヘッド領域に結合し、その抗体がヘマグルチニン阻害活性を有するという事実によって裏付けられている(表2)。組換えC179生殖系列抗体は、試験したいずれのHAタンパク質にも結合活性を示さなかった。
【0052】
【0053】
【表2】
このアッセイでは、4つの異なるインフルエンザウイルス株(A/Narita/1/09(H1N1)、A/Puerto Rico/8/1934(H1N1)、A/Vietnam/1194/2004-NIBRG-14(H5N1)
#、およびA/X-31(H3N2)が用いられた。NSP2は、Narita株に対してのみ活性を示した。
# A/Vietnam/1194/2004(H5N1)ウイルス由来の遺伝子改変株。
【0054】
次に、C179 B細胞が細胞表面BCRによって同じ一連のHAタンパク質と結合できるかどうかを調べた。対照として、C179BCRマウス系統に加えて、一連の他のBCRマウス系統、C179生殖系列、NSP2およびNSP29を作製し、よく記載されたBCRマウス系統Hy10(抗HEL BCR)
13も使用した。予想通り、C179 B細胞はH1N1 PR8、H2N2、H5N1、H1N1 Cal、およびmini HA由来のHAに結合し、NSP2およびNSP29B細胞はH1N1 Cal HAのみに結合した(
図1DおよびE)。しかし、インビトロでのH2 HAのC179抗体への結合は、HEL-Hy10抗体結合の親和性(Kd:10
-10M)
13と同様のサブナノモルレベルであるにもかかわらず、HA結合C179 B細胞の頻度は極めて低く0.68~1.57%の範囲であった。対照的に、NSP2、NSP29、およびHy10 B細胞は、それぞれ57.42%、48.76%、および93.37%の頻度でH1N1 Cal HAタンパク質およびHEL抗原と結合した(
図1D、E)。
【0055】
[2]C179 B細胞は代わりの軽鎖遺伝子を発現する
次に、予想外に低い頻度のHA結合を考え、C179 B細胞が実際にC179のIg導入遺伝子を発現しているかどうかを試験した。ナイーブC179 B細胞におけるBCR重鎖および軽鎖導入遺伝子の発現を、単一細胞Igレパートリー解析により検討した(
図9)。C179 B細胞のうち、元々のペアである導入遺伝子IGHV7-3およびIGKV12-98を発現したものはほとんどなく、NSP2のB細胞は元々のペアである導入遺伝子IVGHV2-9-1およびIGKV14-111を発現したものが多いことを見出した(表1;
図2)。C179生殖系列B細胞はいずれも、元々のκ軽鎖導入遺伝子を発現しなかった。注目すべきことに、C179 B細胞はIGKV12-46遺伝子セグメントを発現する傾向があった。これらの結果は、軽鎖受容体エディティングがC179およびC179生殖系列BCRマウス系統において起こり得ることを示唆する。
【0056】
[3]C179 B細胞における軽鎖レセプター編集
この限定的な導入遺伝子発現が軽鎖受容体編集
14、
15、
16、
17、
18、
19によるものかどうかを検証するために、C179マウス系統にRag1欠損を導入した。Rag1 VDJリコンビナーゼも受容体の編集に不可欠な役割を果たしている。ホモのC179Ighを有するB細胞は、Rag1が十分なバックグラウンドにおいては元のIGKV12-98遺伝子セグメントを発現することはまれであるが、Rag1が欠損したバックグラウンドでは、解析したすべてのB細胞が元々のペアである導入遺伝子を発現した(
図3)。このため、軽鎖受容体の編集が元のC179軽鎖遺伝子の発現を制限し、C179 Igを有するHA結合B細胞の頻度を劇的に減少させたと考えられる。
【0057】
次に、Rag1の枯渇によって生じたC179 Igを有するB細胞がインビボで生存できるかどうかを検討した。Rag1欠損C179 BCRマウスおよびRag1欠損C179生殖系列BCRマウスの両方において、末梢B細胞集団が有意に減少した(
図4A、4B)。さらに、Rag1欠損C179 BCRマウスから得た血流循環のB細胞はCD21のダウンレギュレーションを示し、アネルギー表現型を示した。これらの結果は、C179 Igを有するB細胞が欠失するか、またはアネルギーの状態に陥る運命にあることを示す。
【0058】
[4]寛容圧から逃れるC179 B細胞は異なる軽鎖を使い、広範な中和活性を維持する
Rag1に十分なバックグラウンドにおいてはC179 B細胞は元々の重鎖および軽鎖遺伝子のペアを発現していないが、C179のB細胞の一部は広範囲のHAタンパク質と結合できることに気づいた(
図1)。これを分子レベルで理解するために、H1N1 PR8およびH2N2 HAタンパク質の両方に結合するC179 B細胞の集団を収集し、単一細胞Igレパートリー分析を実施した。驚くべきことに、配列決定された190のレパートリーのうち159のレパートリーが、最初のIGKV12-98(11.1%)の代わりにIGKV12-46(83.3%、
図5A)を使用していた。IGKV12-46レパートリーの中で、元々のC179重鎖と関連する135のクローンおよびこれらのC179重鎖結合クローンの105は同一であった。これらのクローン由来のIGKV12-46のアミノ酸配列は生殖細胞系列であった(
図10)。B11と命名されたこのユニークなクローンから組換え抗体を作製し、広範囲のHAタンパク質との交差反応性を検証した(
図5B、
図1C)。B11は4/5のグループ1のHAとH3 HAに結合し、一方、C179はグループ1のHAのみに結合した。さらに、軽鎖を編集しても、H1N1 PR8およびH2N2に対する中和活性は維持された(
図5C)。これらの結果は、C179軽鎖を置換することにより、B細胞レパートリーがそのbnAbの特徴を維持している末梢で出現し得ることを示す。
【0059】
[5]C179とその祖先であるC179の生殖系列は自己反応性である
C179とC179の生殖系列レパートリーの出現は非常に限られていたため、これらの抗体が自己抗原を認識するかどうかを疑った。自己抗原マイクロアレイ
20を用いて各種抗体の自己反応性を検討した。アレイには、それぞれ核抗原、細胞質抗原、膜抗原、DNAおよびRNA、細菌およびウイルス抗原、LPSおよびEBNA1を含む123の自己抗原のパネルが含まれる。6種類の抗体を検査した。C179、C179生殖系列、B11、NSP2および29(陰性対照)、ならびにM2139(マウス関節炎モデルに使用される抗II型コラーゲン抗体
21、陽性対照)。
図6に示すように、M2139はコラーゲンII(Col II)に特異的に結合する(
図6AとC)。インビボで許容される陰性対照としてのNSP2およびNSP29とは対照的に、C179およびさらに顕著なC179生殖系列は複数の自己抗原に結合する(
図6Aおよび6B)。驚くべきことに、逃れたB11抗体は自己抗原のパネルに結合しなかった(
図6AとB)。C179の生殖系列抗体結合自己抗原は、補体関連因子、Jo-1、Ku、La/SSBを含んでいた(
図6C)。C179およびC179の生殖細胞系抗体は他反応性および自己反応性であると結論する。
【0060】
[6]考察
HA-ステム領域を標的とするBnAbは集中的に研究され、その知見は普遍的なワクチン開発のための貴重な洞察を提供してきた。発明者らは、古典的なマウスC179 bnAbを用いて、BCRマウス系統を作製し、C179抗体レパートリーがインビボで発達し、維持されるかどうかを理解した。発明者らの研究は、C179およびその祖先C179生殖系列レパートリーは多重反応性および自己反応性であり、インビボでのそれらの出現は耐性機構によって制限されることを明らかにした。C179の生殖系列抗体はより顕著な多得反応性/自己反応性と末梢B細胞の欠失を有しているので、C179のレパートリーは自己抗原を認識することから発生の当初から排除されるように思われる。今日まで、いくつかのヒトC179様ステム指向性bnAbが単離され2、C179、FI6、CR9114、CR6261などのいくつかのbnAbsのAg-Ab複合体構造が解明された22。これらの抗体は全て、HA1のThr318およびHis38、HA2のVal18、Asp19、Gly20、Trp21、Lys38、Thr41、Gln42、Phe45から構成される疎水性グルーブの共通構造エピトープに結合する。他のグループによる最近の研究も、この疎水性グルーブが共通の構造エピトープであるという概念を支持している23。それでは、重要な疑問は、これらのヒトbnAbsは自己反応性だろうか、ということである。Bajicらは、生化学アッセイを用いて、多重反応性および自己反応性について6種類のbnAbを検討した:MDI8852、FY1(MDI8852の祖先レパートリー)、FI6、CR9114、CR6261、および41-5E424。MDI8852を除き、全てが多重反応性および自己反応性であることが判明した。これらのbnAbsの個体発生のさらなるインビボの検証が必要である。これらのbnAbsは通常インビボでの寛容機構により発生においてブロックされると仮定すると、非自己反応性bnAbsはマウスとヒトに存在するかどうかという疑問が生じる。
発明者らは、H2とPR8の両方に結合する逃避B細胞クローンであるB11を分離した。驚くべきことに、H2+PR8+B細胞クローンの大部分は、単一クローンに由来する同一クローンであった。このクローンは、C179重鎖と通常使用される別の軽鎖IGKV124625から構成され、広範な中和活性を有するが、多重反応性または自己反応性は有さない。この軽鎖エディターIGKV12-46は、H3のようなインフルエンザグループ2を含むB11抗体の反応性の幅を決定し、C179自己反応性を非自己反応性に変換する。本実施例の結果はBCRマウス系統を用いてbnAbがインビボで産生されるかどうかを問う最初のインフルエンザウイルス研究報告であるが、HIVの場合、多くのbnAbが単離され、4つのbnAb BCRマウス系統がすでに作成されている:2F5、4E10、gl3BNC60、およびb1226、27、28、29、30、31。(gl3BN60のレパートリーは、予測によって元の3BN60 bnAbから先祖の生殖細胞系クローンに変換された。)2F5および4E10 bnAbsはgp41の膜近位外部領域(membrane-proximal external region;MPER)に結合し、b12および3BNC60はgp120のCD4結合部位に結合する。b12を除き、他の3系統のBCRマウスは中枢性寛容によりB細胞の欠失とアネルギーを示した。アネルギー性の2F5および4E10 B細胞は元の導入遺伝子を使用していたが、gl3BNC60 B細胞は内因性軽鎖を使用していた。これらの結果は、HIV bnAbもまた、複数の寛容機構によって制限され、従って、インビボで誘導し、維持することが困難であることが示された。しかし、b12 B細胞が出現し、広範な中和活性を示した。我々の報告と併せて、インビボにおける非自己反応性HIVおよびインフルエンザbnAbの存在は、インフルエンザHAステム領域を標的とする普遍的ワクチンの設計の実現可能性を強く支持する。
【0061】
このような普遍的インフルエンザワクチンはどのように設計できるか?HIVに対する普遍的なワクチン開発が進んでいる。いわゆる抗体系列ベースのワクチンデザインと呼ばれる逐次免疫プロトコルが開発中である32。この戦略の背後にあるアイデアは、次の2つの観察から導かれる:(1)HIV bnAbレパートリーは高度に変異しており、これはおそらくHIV抗原への連続的な暴露と胚中心への繰り返しのB細胞の侵入によるものと思われること、および(2)bnAb抗体レパートリーの生殖系列変換は、抗原的にドリフトされたウイルスに対する親和性の喪失をもたらすこと。系列ベースのワクチンでは、生殖系列Ab感受性からbnAb感受性へのHIV抗原の段階的に一連の改変の後、この一連の抗原で順次免疫する。このアイデアは、抗体応答は元のウイルス抗原に対する応答からドリフト抗原に対する応答へと徐々に変化するという考え方である。現在実施されているヒト臨床試験は、このアプローチの妥当性を我々に通知するであろう。
【0062】
インフルエンザbnAbレパートリーはHIVのように高度に変異していないため33,34,35,36、普遍的なインフルエンザワクチンの開発は、このような複雑なワクチン改変戦略を必要としない可能性がある。興味深いことに、McGuireらは、多量体化HIV Env免疫原が、野生型マウス由来のナイーブB細胞ならびにbnAb BCRマウス系統由来のB細胞を活性化できることを報告した37。これらの観察に基づいて、効果的な抗原を設計できれば、1回のワクチン接種によってbnAbを誘導することが可能であるはずである。Wilsonらは、ヘッドレスHAを作製し、マトリックス-MTM 38と呼ばれる新たに開発されたアジュバントの存在下でステム領域を標的とするbnAbsの誘導に成功した。このアジュバントは、樹木Quillaja Saponaria Molinaに由来するサポニンからなる免疫刺激複合体(ISCOM)技術に基づいている39,40。同時に、Yassineらは、モノホスホリルリピッドA-合成トレハロースジコリノミコレートアジュバント[Sigma Adjuvant Systems(SAS)]の存在下でウイルス様粒子(VLP)中の多量体ヘッドレスHAは、種々のインフルエンザ株に対する交差反応性Abを誘発し得ることを報告したが、これらの抗体は直接的なウイルス中和活性を有していなかった41。両群とも、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介したウイルス感染からの防御を示した。HAのステム領域のみで免疫すると、HA頭部の正常な免疫優位を回避することにより、この領域のエピトープ応答を歪めることができる42。しかしながら、bnAbsが標的とする特異的領域は、前述の疎水性グルーブの共通の構造エピトープのように狭い領域である。この領域の最小で安定な抗原エピトープを設計するのは難しいが、疎水性グルーブ領域からなる最小エピトープを設計するのが理想的であろう。また、いくつかのアジュバントは、耐性を破壊することによりbnAbを誘導するのを助けるかもしれない43。全体として、抗原のデザインに加えて、抗原の多量体化およびアジュバントの選択はbnAbsの誘導の鍵となる可能性がある。
【0063】
【0064】
配列表:
配列番号133:C179クローンの重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号134:C179クローンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号135:C179生殖系列の重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号136:C179生殖系列の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号137:12-46生殖系列の軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号138:B11クローンの重鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号139:B11クローンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列
配列番号140:B11クローンの重鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号141:B11クローンの重鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号142:B11クローンの重鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号143:B11クローンの軽鎖CDR1のアミノ酸配列
配列番号144:B11クローンの軽鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号145:B11クローンの軽鎖CDR3のアミノ酸配列
【0065】
【配列表】