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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ホルン補助具
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/00 20200101AFI20240927BHJP
   G10D 7/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G10D9/00 140
G10D7/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020130916
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027114
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】599082229
【氏名又は名称】株式会社ドルチェ楽器
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】安川 透
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-79054(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179796(JP,U)
【文献】特開2016-51124(JP,A)
【文献】登録実用新案第3070720(JP,U)
【文献】特開2022-13581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/10,9/00
G10G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルンに取り付けられるホルン補助具であって、
前記ホルンの朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、
前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、
前記フィルタ部材に、奏者の腕を挿通させる孔が設けられており、
奏者の腕の動きに追従して前記孔の位置が変動するように、前記フィルタ部材が変形可能であることを特徴とするホルン補助具。
【請求項2】
前記フィルタ部材が円錐形を呈することが可能であり、当該円錐の頂点又は頂点付近に前記孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホルン補助具。
【請求項3】
前記孔は伸縮可能であり、前記孔の直径を拡げて奏者の腕を挿通させることが可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のホルン補助具。
【請求項4】
前記フィルタ部材を、前記朝顔部に取り付ける取付部材を有し、
前記取付部材は、紐状の部材であり、
前記フィルタ部材の周囲の縁部分には、前記取付部材を周方向に貫通させて装着する取付部材装着部が設けられており、
前記取付部材と取付部材装着部は相対移動可能であり、前記取付部材の両端が、前記取付部材装着部から露出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のホルン補助具。
【請求項5】
ホルンに取り付けられるホルン補助具であって、
前記ホルンの朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、
前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、
前記フィルタ部材に、奏者の腕を挿通させることが可能な孔が設けられており、
前記フィルタ部材の平面に展開したときの面積が、前記朝顔部の開口の面積よりも大きいことを特徴とするホルン補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルンの朝顔部(ベル)に取り付けられるホルン補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホルンでは、マウスピース(歌口)に奏者の唇の振動が伝達され、ホルン特有の音色の音が発せられる。また、マウスピースから呼気が吹き込まれると、当該呼気は、朝顔部側(ベル側)へ移動する。このようなホルンが、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3070720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホルンでは、マウスピースから吹き込まれた奏者の呼気が、朝顔部から排出され、その際、呼気に含まれる奏者の唾液の飛沫も、同時に朝顔部から飛散することがある。すなわち、奏者の唾液が周囲に飛散するため、不衛生であった。
【0005】
昨今は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡がり、ソーシャル・ディスタンス(social distance)の確保の徹底や、マスク着用等の対策が必要になっている。このような時勢においては、仮に奏者が新型コロナウイルスのキャリアであった場合に、ホルンの演奏時に、奏者の唾液にコロナウイルスが混じって周囲に飛散することが懸念される。
【0006】
そこで本発明は、奏者の呼気に含まれる唾液の飛散を抑制することができるホルン補助具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第一の様相は、ホルンに取り付けられるホルン補助具であって、前記ホルンの朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、前記フィルタ部材に、奏者の腕を挿通させる孔が設けられており、奏者の腕の動きに追従して前記孔の位置が変動するように、前記フィルタ部材が変形可能であることを特徴とするホルン補助具である。
【0008】
本様相のホルン補助具は、ホルンの朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有する。すなわち、朝顔部の内外がフィルタ部材で隔離される。その結果、朝顔部から排出された奏者の呼気は、フィルタ部材に達する。
フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であるので、奏者の呼気は、フィルタ部材を通過するが、呼気に含まれた唾液の飛沫の大半は、フィルタ部材で捕獲される。よって、ホルンは、フィルタ部材が取り付けられていない状態と変わらない音を発することができると共に、奏者の呼気に含まれた唾液の飛沫の朝顔部からの飛散が、フィルタ部材で抑制される。
そのため、奏者の周囲の人に、奏者の呼気に含まれる唾液の飛沫が届く懸念が減少し、衛生的である。
また、朝顔部の開口に配されたフィルタ部材には、奏者の腕を挿通させることが可能な孔が設けられているので、フィルタ部材の孔を介して、奏者の手を、朝顔部の円錐状に狭まった奥側の管路に接近させることができる。
そして、奏者の腕の動きに追従して孔の位置が変動するように、フィルタ部材が変形可能であるので、奏者はホルンの朝顔部の開口からマウスピース側の管路に手を接近させ、手の位置及び/又は手の形状を変化させ、フィルタ部材が存在しない状態と同様にホルンを演奏することができる。
すなわち、奏者がフィルタ部材の孔に挿入した手を、例えば前後に動かしても、フィルタ部材は変形して手の動きに追従することができる。そのため、フィルタ部材には負荷が掛かりにくく、フィルタ部材は破損しにくい。換言すると、フィルタ部材が、弛んで変形するように構成されていると、フィルタ部材自身に負荷が掛からず好ましい。
【0009】
前記フィルタ部材が円錐形を呈することが可能であり、当該円錐の頂点又は頂点付近に前記孔が設けられているのが好ましい。
【0010】
この構成によると、フィルタ部材が円錐形を呈することが可能であり、円錐の頂点又は頂点付近に孔が設けられているので、円錐形のフィルタ部材が変形することにより、フィルタ部材に負荷を掛けることなく、挿入した奏者の手を移動させることができる。すなわち、奏者は、朝顔部内で奏者の手の位置や姿勢(向き)を変更し易く、朝顔部の円錐状に狭まった奥側の管路に手を接近又は離間させて演奏し易い。
【0011】
前記孔は伸縮可能であり、前記孔の直径を拡げて奏者の腕を挿通させることが可能であるのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、孔の直径は伸縮可能であり、前記孔の直径を拡げて奏者の腕を挿通させることが可能であるので、奏者の腕(手)と、フィルタ部材の孔の縁の間に隙間が生じない。そのため、奏者の唾液の飛沫の外部への飛散を良好に抑制することができる。
【0013】
前記フィルタ部材を、前記朝顔部に取り付ける取付部材を有し、前記取付部材は、紐状の部材であり、前記フィルタ部材の周囲の縁部分には、前記取付部材を周方向に貫通させて装着する取付部材装着部が設けられており、前記取付部材と取付部材装着部は相対移動可能であり、前記取付部材の両端が、前記取付部材装着部から露出しているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、取付部材は、紐状の部材であり、フィルタ部材の周囲の縁部分には、取付部材を周方向に貫通させて装着する取付部材装着部が設けられており、取付部材と取付部材装着部は相対移動可能であり、取付部材の両端が、取付部材装着部から露出しているので、紐状の取付部材の両端を引っ張ると、取付部材装着部が引き絞られ、取付部材装着部が縮径する。
よって、朝顔部の開口の裏側に取付部材装着部を配した状態で、取付部材装着部を引き絞ると、フィルタ部材が朝顔部の開口に配された状態で、ホルン補助具がホルンに容易に取り付けられる。
また、紐状の取付部材を結ぶことにより、ホルン補助具をホルンに容易に固定することができる。
さらに、紐状の取付部材の結び目を解き、取付部材装着部を拡径することにより、ホルンからホルン補助具を容易に取り外すことができる。
【0015】
本発明の第二の様相は、ホルンの演奏時に、奏者の呼気に含まれた唾液が、当該ホルンの朝顔部から外部に飛散することを抑制するためのホルン補助具であって、前記ホルンの朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、前記フィルタ部材の平面に展開したときの面積が、前記朝顔部の開口の面積よりも大きく、前記フィルタ部材に、奏者の腕を挿通させることが可能な孔が設けられていることを特徴とするホルン補助具である。
【0016】
本様相のホルン補助具は、ホルンの朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有する。すなわち、朝顔部の内外がフィルタ部材で隔離される。その結果、朝顔部から排出された奏者の呼気は、フィルタ部材に達する。
フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であるので、奏者の呼気は、フィルタ部材を通過するが、呼気に含まれた唾液の飛沫の大半は、フィルタ部材で捕捉される。よって、ホルンは、フィルタ部材が取り付けられていない状態と変わらない音を発することができると共に、奏者の呼気に含まれた唾液の飛沫の朝顔部からの飛散が、フィルタ部材で抑制される。
そのため、奏者の周囲の人に、奏者の呼気に含まれる唾液の飛沫が届く懸念が減少し、衛生的である。
また、朝顔部の開口に配されたフィルタ部材には、奏者の腕を挿通させることが可能な孔が設けられているので、フィルタ部材の孔を介して、奏者の手を、朝顔部の円錐状に狭まった奥側の管路に接近させることができる。すなわち、ホルンの朝顔部にホルン補助具を装着した状態で、奏者はホルンの朝顔部の開口からマウスピース側の管路に手を接近させ、手の位置及び/又は手の形状を変化させ、フィルタ部材が存在しない状態と同様にホルンを演奏することができる。
さらに、朝顔部の開口に配されたフィルタ部材の平面に展開したときの面積が、朝顔部の開口の面積よりも大きく、フィルタ部材に、奏者の腕を挿通させることが可能な孔が設けられているので、奏者がフィルタ部材の孔に挿入した手を動かしても、フィルタ部材は変形して手の動きに追従することができる。そのため、フィルタ部材には負荷が掛かりにくく、フィルタ部材は破損しにくい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のホルン補助具によると、ホルンが奏でる音に変化を及ぼすことなく、奏者の呼気に含まれる唾液の飛散が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るホルン補助具の斜視図であり、ホルン補助具をホルンに取り付けた際の形態を、ホルンの描写を省略して示しており、(a)は、ホルン補助具を最も拡げた状態を示しており、(b)は、開口遮蔽部に設けた出入口部が、中心から偏った位置にある状態を示しており、(c)は、開口遮蔽部に設けた出入口部が、(b)とは異なる偏った位置にある状態を示している。
図2】(a)は、図1のホルン補助具を分解すると共に、各部材を平面に展開した状態を示す展開図であり、(b)は、(a)の展開した各部材を組み立てた状態を示す斜視図であり、(c)は、(b)とは異なる角度位置から視た各部材の斜視図である。
図3】(a)は、ホルン補助具をホルンに取り付ける直前の状態を示す斜視図であり、(b)は、ホルン補助具をホルンに取り付けた状態を示す斜視図である。
図4】(a)は、ホルンに取り付けたホルン補助具の開口遮蔽部の出入口部に、奏者が腕を挿入し、奏者が朝顔部の内部に手を配置している状態を示す部分斜視図であり、(b)は、(a)の状態で奏者が腕の位置を変えた状態を示す部分斜視図である。
図5図1とは別の実施形態に係るホルン補助具を示しており、(a)は、展開したホルン補助具とホルンの斜視図であり、(b)は、組み立てた状態のホルン補助具の斜視図であり、(c)は、ホルン補助具をホルンの朝顔部に取り付けた状態を、(b)とは異なる角度位置から視た斜視図である。
図6】(a)は、図1図5とは別の実施形態に係るホルン補助具が、ホルンの朝顔部に装着されている状態を示す部分断面図であり、(b)は、(a)において、奏者の手を動かし、ホルン補助具が変形した状態を示す部分断面図であり、(c)は、(a)のホルン補助具の正面図である。
図7】弱音器が取り付けられたホルンに、ホルン補助具が装着されている状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1(a)に示す本実施形態に係るホルン補助具1は、図3(a)に示すホルン20の朝顔部21(ベル)に取り付けて使用される。ホルン20は、朝顔部21と、ホルン奏者が呼気を注入するマウスピース22(歌口)を有する。朝顔部21には開口21bが設けられている。朝顔部21は、マウスピース22側に近づくほど直径が小さくなる略円錐形状を呈する部位である。すなわち、朝顔部21は、マウスピース22に近づくほど縮径する曲面21aを有する。曲面21aは、管路23を介してマウスピース22と連通している。マウスピース22からホルン20に注入された呼気は、管路23を介して朝顔部21側へ移動する。
【0020】
ホルン補助具1は、フィルタ部材2と取付部材3を有する。
フィルタ部材2は、通気性を有すると共に、飛散する液状物のしぶき(霧状の液体)の通過を抑制又は低減することができる素材(例えば、ガーゼや不織布等)で構成されている。
【0021】
フィルタ部材2は、図2(a)に示すように、開口遮蔽部10と係合部11を有する。
開口遮蔽部10は、展開すると扇形を呈しており、扇の中心部分(要部分)は円弧状に切り欠かれて内周側円弧部8が形成されている。すなわち、開口遮蔽部10は、内周側円弧部8、外周側円弧部9、半径部7a、7bを有する。また、開口遮蔽部10を展開した平面状態の面積は、ホルン20の開口21bの開口面積(開口縁の最大の面積)よりも、例えば、1.5倍~5倍程度大きい。特に、開口遮蔽部10を展開した平面状態の面積は、ホルン20の開口21bの開口面積よりも、例えば2倍~3倍大きいのが好ましい。
【0022】
半径部7a、7bの近傍には、それぞれ接合部10a、10bが設けられている。すなわち、接合部10a、10bは、半径部7a、7bを構成する直線状の縁の近傍に構成された領域部分であり、それぞれ幅(周方向長さ)L1、L2を有する。幅L1、L2は、同じ長さである。これら接合部10a、10b同士を重ねて縫製や接着等の固定手段で固定すると、開口遮蔽部10は、図2(b)に示すような載頭円錐形の外形を呈する。すなわち、開口遮蔽部10は、外形が載頭円錐形で、内部が空洞の筒である。
【0023】
図2(b)に示すように、開口遮蔽部10の円錐の頂点(頂点付近)には、出入口部6(最小径の孔)が形成されている。すなわち、内周側円弧部8が、環状に取り巻いて出入口部6を構成している。出入口部6は、図4(a)に示すように、奏者の手A(腕)を挿通可能な程度の大きさを有する孔である。
【0024】
出入口部6(孔)には、環状のゴム等の伸縮可能な部材を設けてもよい。具体的には、出入口部6に奏者が手A(腕)を挿通させる際に、出入口部6を若干拡径し、手A(腕)が挿通された際に、出入口部6が奏者の手A(腕)の周囲に密着するのが好ましい。このように構成すると、奏者の手A(腕)と出入口部6の間に隙間が生じず、唾液の噴霧が外部に漏洩しにくくなる。
【0025】
また、外周側円弧部9が環状に取り巻いて、固定側開口5(最大径の開口)を構成している。固定側開口5の円周は、図3(a)に示す朝顔部21の開口21b(最大径の部位)の円周と略一致している。
【0026】
図2(a)に示すように、フィルタ部材2の係合部11は、展開すると、半径方向の長さが短い円弧形状を呈している。係合部11は、接合部15と取付部16を有する。接合部15は、係合部11の外周側に形成された部位である。接合部15の円弧長さは、開口遮蔽部10の外周側円弧部9の長さLと同じである。また、接合部15は、開口遮蔽部10の外周側円弧部9と縫製又は接着等の固定手段によって結合される部位である。
【0027】
取付部16は、係合部11の内周側に形成された部位である。取付部16を構成する係合部11の内周側の縁部分には、取付部材装着部12が設けられている。取付部材装着部12は、取付部16に沿ってのびる筒状の部位であり、両端に出入口12a、12bが設けられている。取付部材装着部12内には、紐状の取付部材3を挿通させて取り付けることができる。
【0028】
取付部材3は、細長い紐状の部材である。取付部材3の長さは、フィルタ部材2の取付部材装着部12の長さよりも長い。すなわち、取付部材3は、取付部材装着部12を貫通して配置することができ、図1(a)に示すように、取付部材3の両端が取付部材装着部12(出入口12a、12b)から露出する。取付部材3と取付部材装着部12は、相対移動が可能である。そして、取付部材3の途中の部位は、筒状の空間を構成する取付部材装着部12によって連続的に覆われている。そのため、取付部材3は取付部材装着部12に強固に接続されている。
【0029】
係合部11の半径部11a、11bには、着脱が可能な接合手段(釦、面ファスナー等)が取り付けられている。すなわち、係合部11の半径部11a、11bは、開口遮蔽部10の半径部7a、7bの接合部10a、10bのように縫製又は接着するのではなく、着脱が可能に構成されている。
【0030】
開口遮蔽部10と係合部11を一体化すると、ホルン補助具1は、図1(a)に示すような外形を呈する。実際には、ホルン補助具1は、不織布やガーゼ等の柔らかい素材で構成されているため、ホルン20に取り付けられていなければ、図1(a)に示すような形態を維持することはできないが、説明の都合上、図1(a)に示すように描写した。
【0031】
次に、ホルン補助具1をホルン20(図3(a))に取り付ける手順について説明する。
【0032】
ホルン補助具1をホルン20の朝顔部21に取り付ける際には、フィルタ部材2の係合部11の半径部11a、11bの間隔を拡げ、係合部11を朝顔部21に被せる。すなわち、取付部16の開口径を拡げ、係合部11を朝顔部21の曲面21aに係合させる。半径部11a、11bは、着脱が可能であり、互いに接合していない状態で、両者の間隔を拡げる(開く)ことができる。
【0033】
このとき、開口遮蔽部10が朝顔部21の開口21bを遮蔽する。また、開口遮蔽部10の外周部分である固定側開口5(外周側円弧部9)は、朝顔部21の開口21bの縁に配置される。そして、開口遮蔽部10と係合部11は、朝顔部21の開口21bを境界として屈曲している。
【0034】
ホルン補助具1が朝顔部21に装着されると、係合部11の半径部11a、11bを図1(a)に示すように固定し、さらに、図3(b)に示すように、取付部材3の両端を結ぶ。これにより、ホルン補助具1は、ホルン20に取り付けられる。ホルン補助具1は、開口遮蔽部10及び係合部11が、開口21bで最大径を呈すると共に、それぞれ逆方向に縮径する円錐形状を呈することにより、ホルン20の朝顔部21に固定されている。
【0035】
すなわち、ホルン補助具1は、開口遮蔽部10と係合部11が接合された部位が最も大きく、この部位が、ちょうど朝顔部21の開口21bの外径と略一致している。そのため、ホルン補助具1は、ホルン20(朝顔部21)に対して、前後に移動する余地がなく、ホルン20の朝顔部21に対して、全周囲に渡って良好に取り付けられる。
【0036】
取付部材3は、環状形状のゴムのような伸縮自在な素材で構成してもよい。この場合には、図2(c)に示すように、係合部11を環状構造とし、取付部16に取付部材3を配置した状態で、当該取付部材装着部12に環状の取付部材3を装着しながら取付部材装着部12を形成してもよい。これにより、環状の取付部材3を取付部材装着部12に配置することができる。また、取付部材3は、ワンターン形状(例えばアルファベットのC形状)の金属製のバネで構成することもできる。このように、取付部材3を伸縮自在な素材や金属製のバネで構成すると、ホルン補助具1をホルン20の朝顔部21にワンタッチで取り付けることができる。
【0037】
図3(a)、図3(b)に示すように、ホルン20の朝顔部21の開口21bは、ホルン補助具1の通気性を有するフィルタ部材2(開口遮蔽部10)によって遮蔽されている。そのため、奏者がホルン20を演奏すると、演奏音が朝顔部21(開口21b)側からフィルタ部材2(開口遮蔽部10)を通過して外部に出る。
【0038】
また、マウスピース22からホルン20内に侵入した奏者の呼気が、当該呼気に含まれた霧状の唾液と共に管路23を通過して朝顔部21側に移動するが、呼気のみがフィルタ部材2を通過し、霧状の唾液の大半は、フィルタ部材2に付着して捕獲され、朝顔部21の外側へ移動することはできない。そのため、演奏時に、ホルン20の朝顔部21から、奏者の唾液が飛散することが抑制される。
【0039】
ところでホルン20は、図4(a)、図4(b)に示すように、奏者が、朝顔部21に手A(腕)を配置して演奏する。その際、本実施形態のホルン補助具1を装着したホルン20では、奏者は、自身の手Aを開口遮蔽部10(フィルタ部材2)の出入口部6から朝顔部21内に挿入し、手Aを管路23の手前に配することができる。このとき、手A(腕)に出入口部6(孔)が軽く固定される。
【0040】
そして、開口遮蔽部10(フィルタ部材2)は、奏者の手A(腕)の動きに追従して出入口部6(孔)の位置を変化させることができる。例えば、奏者の手A(腕)が前後方向(開口21bの中心線が延びる方向)に移動すると、開口遮蔽部10の出入口部6も前後方向に移動する。そのため、奏者は、ホルン20を支障なく演奏することができると共に、ホルン20から発散される唾液の噴霧の外部への漏洩が、良好に低減される。
【0041】
図4(a)、図4(b)に示すように、奏者は、手Aの位置を変更することにより、ホルン20の音色や音程を調整する。本実施形態に係るホルン補助具1では、円錐形の開口遮蔽部10の円錐の頂点(頂点付近)に出入口部6が設けられている。そのため、円錐を変形させて、図1(b)、図4(a)に示すように、開口遮蔽部10に弛み18aを形成して出入口部6を左方に移動させたり、図1(c)、図4(b)に示すように、開口遮蔽部10に弛み18bを形成して出入口部6を右方に移動させることができる。
【0042】
よって、奏者は、自身の手A(腕)を、外部からフィルタ部材2(開口遮蔽部10)の出入口部6を介して朝顔部21(開口21b)に進入させ、ホルン20を良好に演奏することができる。出入口部6は、開口遮蔽部10に形成された孔であるが、演奏時には、奏者の手A(腕)が挿通されて塞がれているため、奏者の呼気に含まれた噴霧状の唾液が、出入口部6から外部に飛散することはない。
【0043】
以上説明したホルン補助具1は、開口遮蔽部10が、載頭円錐形状を呈しており、開口遮蔽部10は変形が可能である。すなわち、開口遮蔽部10は、変形して弛むことができ、出入口部6に挿入された奏者の手A(腕)を動かしても、開口遮蔽部10には無理な力が作用せず、開口遮蔽部10は、奏者の手A(腕)の動きに追従して変形し、出入口部6の位置を容易に変更することができる。
【0044】
次に、図5を参照しながら、別の実施形態に係るホルン補助具25について説明する。
【0045】
ホルン補助具25は、フィルタ部材26と取付部材27を有する。
図5(a)に示すように、フィルタ部材26は、円の一部が切り欠かれ、直線状の半径部17a、17bを有する扇形状を呈する部材である。また、フィルタ部材26の中心には、半径部17a、17bと連続する中心切欠部26aが設けられている。中心切欠部26aは、円弧状の切欠きである。
【0046】
フィルタ部材26の外周縁には、取付部材装着部28が設けられている。取付部材装着部28は、フィルタ部材26の外周縁に沿って筒状空間を構成する部位である。取付部材装着部28には、紐状の取付部材27が取り付けられている。取付部材27は、取付部材装着部28よりも長い。そのため、取付部材27の両端を、取付部材装着部28の両側の開口から露出させることができる。
【0047】
さらに、フィルタ部材26には、二点鎖線で示す折返し部29が設けられている。折返し部29は、円弧状である。折返し部29の直径は、ホルン20の朝顔部21の開口21bの最大直径と同じである。
【0048】
また、展開した状態のフィルタ部材26における、折返し部29よりも内側の領域(開口遮蔽部19)の面積は、ホルン20の開口21bの開口面積よりも、例えば1.5倍~5倍程度大きい。特に、開口遮蔽部19の面積は、ホルン20の開口21bの開口面積よりも、2倍~3倍大きいのが好ましい。
【0049】
このような構成を有するホルン補助具25は、半径部17a、17bが合致する、又は若干重なった状態で縫製または接着等の固定手段によって固定され、図5(b)に示す円錐状の形態を呈する。中心切欠部26aは、奏者の手A(腕)を挿通させる出入口部30を構成する。半径部17a、17bは、中心切欠部26aから折返し部29までの範囲(開口遮蔽部19の範囲)を固定(縫製、接着等)するのが好ましい。すなわち、半径部17a、17bにおける、折返し部29から外周側の部位は、固定しない方がよい。
【0050】
半径部17a、17bにおける、折返し部29から外周側の領域が固定されていなければ、半径部17a、17bにおけるこの領域範囲が互いに自由に相対移動することができるため、取付部材27を引き絞り易い。
【0051】
そして、図5(c)に示すように、折返し部29を朝顔部21の開口21bの縁に合致させて折り返し、曲面21a上で取付部材27を引き絞って固く結ぶ。すなわち、取付部材装着部28からの取付部材27の露出長さを長くした状態で取付部材27を固く結ぶ。これにより、ホルン補助具25は、朝顔部21に取り付けられる。図5(b)に示すように、フィルタ部材26における折返し部29よりも先端側(出入口部30側)の領域部分が、開口遮蔽部19を構成している。
【0052】
次に、図6(a)~図6(c)を参照しながら、さらに別の実施形態に係るホルン補助具31について説明する。
図6(a)に示すように、ホルン補助具31は、図1のホルン補助具1と同様に、フィルタ部材32と取付部材38を有する。フィルタ部材32は、開口遮蔽部35と係合部36を有する。係合部36の構造は、ホルン補助具1の係合部11と同様であり、重複する説明は省略する。
【0053】
開口遮蔽部35は、不織布やガーゼ等の、通気性を有すると共に噴霧状の液体の通過を抑制又は低減させる素材で形成されている。開口遮蔽部35は、円錐状又は円筒状であって、蛇腹構造を呈しており、中心部分に出入口部37(図6(c))が設けられている。出入口部37は、奏者の手A(図4(a))をちょうど挿通させることができる程度の大きさの孔(開口)である。
【0054】
開口遮蔽部35は、蛇腹構造を呈していて伸縮することができると共に、図6(b)に示すように、伸縮方向と交差する方向にも変位可能である。すなわち、開口遮蔽部35は、出入口部37に挿通した奏者の手Aの動きに追従して、振れ回ることができる。図6(b)では、開口遮蔽部35は、右側が下がるように傾斜している。
【0055】
図6(b)に示すように、奏者の手Aの動きに追従するように、蛇腹の形状が変化し、出入口部37の位置を変更することができる。
【0056】
以上の各実施形態では、開口遮蔽部10、19、35が、円錐形状を呈する場合について説明した。ホルン20の朝顔部21の開口21bを遮蔽するフィルタ部材は、円錐形状以外に、例えば、虫取り網のような有底(奏者の手Aを挿通させる孔は設ける)の円筒形状を呈するものであってもよい。
【0057】
すなわち、開口遮蔽部10、19、35(フィルタ部材2、26、32)を平面に展開した場合に、当該開口遮蔽部10、19、35の面積が、開口21bを正面視した面積よりも広い面積であればよい。開口遮蔽部10、19、35の平面に展開したときの面積は、開口21bを正面視した面積の1.5倍~5倍であるのが好ましい。特に、開口遮蔽部10、19、35の平面に展開したときの面積は、開口21bを正面視した面積の2倍~3倍であるのがさらに好ましい。
【0058】
開口遮蔽部10、19、35における平面に展開したときの面積が、朝顔部21の開口21bの正面視した面積よりも大きければ、大きい分だけ出入口部6、30、37の位置の変動可能な領域が拡がる。すなわち、奏者がホルン補助具1、25、31の制約を受けることなく、手Aを移動させて演奏し易くなる。換言すると、手Aの可動範囲が拡がり、自由度が増す。
【0059】
また、大き過ぎると、フィルタ部材2、26、32が却って嵩張ってしまい、出入口部6、30、37に手Aを挿通させにくく、また、出入口部6、30、37に挿通した手Aを、直に朝顔部21内に配置しにくくなる。そのため、開口遮蔽部10、19、35の平面に展開したときの面積は、朝顔部21の開口21bを正面視した面積の1.5倍~5倍であるのが好ましい。
【0060】
ホルン20は、ホルン補助具1、25、31を取り付けた状態であっても、弱音器40(ミュート)を装着することができる。図7は、ホルン補助具31を取り付けた状態のホルン20に、弱音器40が装着されている状態を示している。図7に示す例では、弱音器40の全体が、朝顔部21の内部に収容されている。
【0061】
弱音器40は、このような大きさのものに限定されず、朝顔部21から一部が突出する大きさのものであっても差し支えがない。すなわち、弱音器40の一部が朝顔部21から突出していても、この突出した部位は、ホルン補助具31の内側に配される。図7に示す例では、弱音器40の一部が朝顔部21から突出した場合、突出した部位は蛇腹状の開口遮蔽部35の内側に配される。
【0062】
換言すると、朝顔部21から突出する大きさの弱音器40が取り付けられたホルン20に対して、ホルン補助具31を何ら支障なく取り付けることができる。または、ホルン補助具31が先にホルン20に取り付けられていても、ホルン補助具31の出入口部37から弱音器40を挿入し、朝顔部21に装着することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1、25、31 ホルン補助具
2、26、32 フィルタ部材
3、27、38 取付部材
6、30、37 出入口部(孔)
10、19、35 開口遮蔽部(フィルタ部材における朝顔部の開口を遮蔽する部位)
12、28 取付部材装着部
20 ホルン
21 朝顔部
A ホルン奏者の手(腕)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7