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  • 特許-自己干渉キャンセル回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自己干渉キャンセル回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 5/02 20060101AFI20240927BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20240927BHJP
   H04B 1/26 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H04L5/02
H04B1/10 L
H04B1/26 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020167139
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059407
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-028562(JP,A)
【文献】特開平07-074684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0043685(US,A1)
【文献】特開2002-271241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 5/02
H04B 1/10-1/14
H04B 1/26-1/28
H04B 15/00-15/06
H04B 7/14-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波を受信する受信アンテナと、上記受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信側周波数変換手段とを有する受信回路と、
中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換する送信側周波数変換手段と、上記送信側周波数変換手段により帯域変換された搬送波を送信する送信アンテナとを有する送信回路と、
上記各帯域変換において混合させる基準信号を上記受信側周波数変換手段及び上記送信側周波数変換手段に供給する局部発振手段と、
上記送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、上記受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路とを備え、
上記局部発振手段は、上記受信信号に含まれる自己干渉の位相に応じた上記基準信号を生成し、これを上記受信側周波数変換手段に供給し、
上記中間周波数処理回路は、上記局部発振手段により抽出された自己干渉の振幅に応じた参照信号を生成し、この参照信号を上記受信信号と重畳させること
を特徴とする自己干渉キャンセル回路。
【請求項2】
搬送波を受信する受信アンテナと、上記受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信側周波数変換手段とを有する受信回路と、
中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換する送信側周波数変換手段と、上記送信側周波数変換手段により帯域変換された搬送波を送信する送信アンテナとを有する送信回路と、
上記各帯域変換において混合させる基準信号を上記受信側周波数変換手段及び上記送信側周波数変換手段に供給する局部発振手段と、
上記送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、上記受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路と
上記送信信号又は、上記受信信号の帯域幅を取得する帯域幅取得手段とを備え、
上記帯域幅取得手段により検出された帯域幅に基づいて、
上記中間周波数処理回路により、上記受信信号から自己干渉を抽出し、抽出した自己干渉と同振幅で逆位相となる参照信号を生成し、この参照信号を上記受信信号と重畳させることで、自己干渉をキャンセルする処理を施すか、
上記局部発振手段により、上記受信信号から自己干渉を抽出し、抽出した自己干渉の位相に応じた上記基準信号を生成し、これを上記受信側周波数変換手段に供給し、上記中間周波数処理回路は、上記局部発振手段により抽出された自己干渉の振幅に応じた参照信号を生成し、この参照信号を上記受信信号と重畳させる処理を施すか、
を決定すること
を特徴とする自己干渉キャンセル回路。
【請求項3】
搬送波を受信する受信アンテナと、上記受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信側周波数変換手段とを有する受信回路と、
中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換する送信側周波数変換手段と、上記送信側周波数変換手段により帯域変換された搬送波を送信する送信アンテナとを有する送信回路と、
上記各帯域変換において混合させる基準信号を上記受信側周波数変換手段及び上記送信側周波数変換手段に供給する局部発振手段と、
上記送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、上記受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路と
搬送波を送受信する1以上の外部端末の位置に関する参照用位置情報、上記搬送波の通信帯域に関する参照用通信帯域の何れか1以上に対する、上記自己干渉キャンセルの処理動作の関係を記憶する記憶手段と、
新たに通信を行う場合に、搬送波を送受信する1以上の外部端末の位置に関する位置情報、搬送波の通信帯域に関する通信帯域の何れか1以上を取得する情報取得手段とを備え、
上記記憶手段に記憶されている関係を参照し、上記自己干渉キャンセルの処理動作を選定すること
を特徴とする自己干渉キャンセル回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる帯域内全二重無線通信において、送信アンテナから受信アンテナに入ってきた信号について自己干渉キャンセルを行う上で好適な自己干渉キャンセル回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における6GHz帯域以下の周波数帯域では、携帯電話回線の増大に伴い、平均スループットが年間約1.5倍に急増しており、周波数の逼迫問題が常態化している。また、第5世代移動通信システム(5G)の導入に伴い、高SHF(Super High Frequency)帯域等の活用も開始されるが、必ずしも多くのチャネル数を確保できるとは限らず、周波数の逼迫問題は解消できないものと考えられている。
【0003】
このため、5Gの次の世代の通信規格(Beyond 5G)においては、このような携帯電話回線の増大に起因するモバイルトラフィックの更なる急増に対応する必要がある。特に近年において、このような周波数有効利用効率の向上を目標とした様々な技術が開発されてきた。例えば、送信機と受信機の双方で複数のアンテナを使い、空間を利用した多重化を図るMIMO(multiple-input and multiple-output)技術や、複数端末における基地局への送信信号の受信電力差に着目したNOMA(Non-orthogonal Multiple Access)技術も提案されている。
【0004】
しかしながら、これらのMIMO技術やNOMA技術は、既に応用段階にあり、実用環境における周波数利用効率の向上は概ね限界に近づいている。更なる周波数利用効率の改善を図るためには、これらの技術とは異なる新たな通信技術、通信方式の高度化を実現し、これを実社会への活用を進めていく必要がある。
【0005】
このような周波数の利用効率を飛躍的に増大させることができる技術として、帯域内全二重無線通信技術がある。この帯域内全二重無線通信技術は、複信技術の更なる高度化を図るために、同一の周波数、同一の時間スロットを利用し、送信と受信を同時に行う複信方式であり、理想的には周波数利用効率を2倍にすることができるものである。
【0006】
ところで、この帯域内全二重無線通信技術は、無線信号の送信と受信を同時で、しかも同一周波数で実施するため、自機により発信した送信信号が、受信回路に回りこむ、いわゆる自己干渉による通信品質の劣化が生じる。このため、帯域内全二重無線通信技術を実装する無線通信システムにおいては、この自己干渉を十分にキャンセルするための自己干渉キャンセル技術の実装が不可欠となる。
【0007】
一般的に自己干渉キャンセルは、図4に示すように、アンテナアイソレーションと、高周波アナログキャンセラ、ベースバンドデジタルキャンセラのそれぞれを対象とし、周波数に応じて最適な設計開発が行われて実現される。アンテナアイソレーション9は、送信アンテナ71と受信アンテナ72の離間距離や配置により、数十dBのアイソレーションを稼ぐことは比較的容易である。またベースバンドデジタルキャンセラ73は、デジタル領域での干渉キャンセラであり、システムによる依存性はあるものの、周波数の依存性は無く、また入力信号のレベルも前段のアナログ回路によりある程度の範囲に収束されるため、異なる周波数のシステムに対しても同一の干渉キャンセラを適用することができる。
【0008】
高周波アナログキャンセラ74は、送信回路75と受信回路76の間にフィードバック回路を実装し、自身の送信信号を参照信号として、アンテナ71から回り込む自己干渉信号に対して同振幅・逆位相となるような最適なゲイン(信号レベル)と遅延の補正を行い、参照信号と自己干渉信号とを混合することで、自己干渉信号をキャンセルするものである。
【0009】
ところで、このような高周波アナログ回路における自己干渉キャンセラは、対象となる周波数帯域に特化した設計とする必要があり、様々な周波数、システムに適用する柔軟な設計が困難であった。例えば非特許文献1に開示されている自己干渉キャンセル回路では、アンテナアイソレーション9と、高周波アナログキャンセラ74、ベースバンドデジタルキャンセラ73の合算で110dBの自己干渉キャンセル性能を備えている。しかしながら、高周波アナログキャンセラ74は、市販のノイズキャンセラICを活用した設計となっており、周波数帯域は、WLANシステムの2.4GHz帯に特化したものである。またノイズキャンセラICに幾つかの制約条件もある。具体的には、参照信号と自己干渉信号の入力レベルが-45dBmに制限されており、30dBm以上の送信出力を必要とするセルラシステムの基地局には適用が難しいという問題点があった。また、ノイズキャンセラICの周波数特性も広帯域に対応しておらず、周波数によって外部素子の一つであるインダクタのインダクタンスを厳密に調整する必要があり、固定の周波数に特化した設計が必要になり、設計上制約がかかるという問題点があった。
【0010】
また非特許文献2においては、アンテナアイソレーションの代替としてサーキュレータを用いて、一つのアンテナでアンテナ部分のアイソレーションを稼ぐ技術が提案されている。高周波アナログ回路の自己干渉キャンセラは、非特許文献1の開示技術をより高度化した設計で、ノイズキャンセラICではなく、独自に開発した振幅、遅延の補償回路を実装している。
【0011】
しかしながら、この非特許文献2の開示技術は、非特許文献1の開示技術と同様に、周波数帯域が2.4GHzに特化しており、周波数の拡張性に関しては特段言及はない。また最大送信電力20dBm程度の信号を扱うWLANシステムを想定した回路構成であり、アンプのひずみが顕在化する高出力信号への耐性も未知であるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】J.Choi,et al.,”Achieving single channel,full duplex wireless communication,” MobiCom,2010
【文献】D.Bharadia,and S.Katti,”Full Duplex Radio,” 11th USENIX.2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、様々な周波数に拡張することができ、アンプの歪み等の影響を取り除くことができ、簡単に遅延補償が実現でき、自己干渉キャンセル回路の規模の低減を図ることで、高効率な帯域内全二重無線通信を実現することが可能な自己干渉キャンセル回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信回路と、中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換して、これを搬送波として送信する送信回路と、送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路とを備えた自己干渉キャンセル回路を発明した。
【0015】
第1発明に係る自己干渉キャンセル回路は、搬送波を受信する受信アンテナと、上記受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信側周波数変換手段とを有する受信回路と、中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換する送信側周波数変換手段と、上記送信側周波数変換手段により帯域変換された搬送波を送信する送信アンテナとを有する送信回路と、上記各帯域変換において混合させる基準信号を上記受信側周波数変換手段及び上記送信側周波数変換手段に供給する局部発振手段と、上記送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、上記受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路とを備え、上記局部発振手段は、上記受信信号に含まれる自己干渉の位相に応じた上記基準信号を生成し、これを上記受信側周波数変換手段に供給し、上記中間周波数処理回路は、上記局部発振手段により抽出された自己干渉の振幅に応じた参照信号を生成し、この参照信号を上記受信信号と重畳させることを特徴とする。
【0016】
第2発明に係る自己干渉キャンセル回路は、搬送波を受信する受信アンテナと、上記受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信側周波数変換手段とを有する受信回路と、中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換する送信側周波数変換手段と、上記送信側周波数変換手段により帯域変換された搬送波を送信する送信アンテナとを有する送信回路と、上記各帯域変換において混合させる基準信号を上記受信側周波数変換手段及び上記送信側周波数変換手段に供給する局部発振手段と、上記送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、上記受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路と、上記送信信号又は、上記受信信号の帯域幅を取得する帯域幅取得手段とを備え、上記帯域幅取得手段により検出された帯域幅に基づいて、上記中間周波数処理回路により、上記受信信号から自己干渉を抽出し、抽出した自己干渉と同振幅で逆位相となる参照信号を生成し、この参照信号を上記受信信号と重畳させることで、自己干渉をキャンセルする処理を施すか、上記局部発振手段により、上記受信信号から自己干渉を抽出し、抽出した自己干渉の位相に応じた上記基準信号を生成し、これを上記受信側周波数変換手段に供給し、上記中間周波数処理回路は、上記局部発振手段により抽出された自己干渉の振幅に応じた参照信号を生成し、この参照信号を上記受信信号と重畳させる処理を施すか、を決定することを特徴とする。
【0017】
第3発明に係る自己干渉キャンセル回路は、搬送波を受信する受信アンテナと、上記受信アンテナにより受信された搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成する受信側周波数変換手段とを有する受信回路と、中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換する送信側周波数変換手段と、上記送信側周波数変換手段により帯域変換された搬送波を送信する送信アンテナとを有する送信回路と、上記各帯域変換において混合させる基準信号を上記受信側周波数変換手段及び上記送信側周波数変換手段に供給する局部発振手段と、上記送信回路に供給した中間周波数帯域からなる送信信号に基づいて、上記受信回路から供給される中間周波数帯域からなる受信信号について自己干渉をキャンセルする処理を施す中間周波数処理回路と、搬送波を送受信する1以上の外部端末の位置に関する参照用位置情報、上記搬送波の通信帯域に関する参照用通信帯域の何れか1以上に対する、上記自己干渉キャンセルの処理動作の関係を記憶する記憶手段と、新たに通信を行う場合に、搬送波を送受信する1以上の外部端末の位置に関する位置情報、搬送波の通信帯域に関する通信帯域の何れか1以上を取得する情報取得手段とを備え、上記記憶手段に記憶されている関係を参照し、上記自己干渉キャンセルの処理動作を選定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述した構成からなる本発明によれば、中間周波数帯域において自己干渉キャンセル回路を実装しているため、ミキサにより対象の無線周波数に周波数変換でき、複数のRF回路(受信回路、送信回路)を切り替えながら利用する構成が容易に実現できる。中間周波数帯域の回路は受信側、送信側において共通であるため、それぞれのRF回路に帯域内全二重無線通信を実現する上で必要な特別な設計が不要となる。更に狭帯域信号を扱うLTE-M(Long Term Evolution for machine-type-communication)等のIoT系システムに対しては、自己干渉キャンセル回路規模の低減も図ることができ、効率よく帯域内全二重無線通信を適用することが可能となる。
また、本発明によれば、アンプの歪み等の影響を取り除くことができ、簡単に遅延補償が実現でき、自己干渉キャンセル回路の規模の低減を図ることで、高効率な帯域内全二重無線通信を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した自己干渉キャンセル回路が適用される無線通信システムの全体概略図である。
図2】自己干渉キャンセル回路のブロック構成を示している。
図3】機械学習モデルを利用した自己干渉キャンセルの選定モデルについて説明するための図である。
図4】一般的な自己干渉キャンセル方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した自己干渉キャンセル回路について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0024】
図1は、本発明を適用した自己干渉キャンセル回路10が適用される無線通信システム1の全体概略図である。無線通信システム1は、基地局2と、複数のユーザ端末3とを備えており、自己干渉キャンセル回路10は、基地局2に実装される。無線通信システム1は、同一の周波数、同一の時間スロットを利用し、送信と受信を同時に行う複信方式である帯域内全二重無線通信方式を採用する場合を例に取り説明をするが、これに限定されるものではなく、一般的な全二重無線通信方式や半二重無線通信方式を採用するものであってもよい。
【0025】
基地局2は、ユーザ端末3との間において無線アクセスポイントとしての役割を果たし、インターネット等を始めとした公衆通信網との間においてインタフェースとしての役割を果たすものである。即ち、基地局2は、これを介してユーザ端末3がインターネット等を始めとした公衆通信網との間でデータの送受信を行うことを可能とするための中継手段を担うものである。基地局2は、このユーザ端末3との無線通信を、上述した帯域内全二重無線通信方式に基づいて行う。この帯域内全二重無線通信を以下において詳述する自己干渉キャンセル回路10を通じて行う。
【0026】
ユーザ端末3は、例えばノート型のパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等の無線通信可能な端末装置で構成されている。このようなユーザ端末3は、基地局2との間で、パケットデータを無線周波数からなる搬送波とし、無線通信により送受信する。
【0027】
図2は、自己干渉キャンセル回路10のブロック構成を示している。自己干渉キャンセル回路10は、大きく分類して、受信回路5と、送信回路6と、受信回路5及び送信回路6に接続された中間周波数回路7及び局部発信回路8とを備えている。この自己干渉キャンセル回路10は、いわゆるスーパーヘテロダイン方式の回路構成を適用しており、受信回路5では、ユーザ端末3から受信した搬送波の無線周波数を中間周波数帯域に帯域変換することにより受信信号を生成し、これを中間周波数回路7へ出力する。また、送信回路6は、中間周波数回路7から出力された中間周波数帯域からなる送信信号を無線周波数に帯域変換し、これを搬送波にしてユーザ端末3へ送信する。局部発信回路8は、各帯域変換において混合させる基準信号を受信回路5、送信回路6にそれぞれ供給する。以下、これらの各構成について詳述する。
【0028】
受信回路5は、受信アンテナ11と、受信アンテナ11に接続された増幅器12と、増幅器12に接続された受信帯域フィルタ13と、受信帯域フィルタ13に接続された減衰器14と、減衰器14に接続されたミキサ15と、ミキサ15に接続されたフィルタ16と、フィルタ16に接続された高利得増幅器18と、高利得増幅器18に接続された減衰器19とを備え、減衰器19は、中間周波数回路7に接続されている。
【0029】
送信回路6は、中間周波数回路7に接続された減衰器21と、減衰器21に接続されたミキサ22と、ミキサ22に接続されたバンドパスフィルタ23と、バンドパスフィルタ23に接続されたバッファ増幅器24と、バッファ増幅器24に接続された可変減衰回路25と、可変減衰回路25に接続されたドライバ増幅器26と、ドライバ増幅器26に接続されたパワーアンプ28と、パワーアンプ28に接続されたアイソレータ29と、アイソレータ29に接続された送信アンテナ30とを備えている。
【0030】
中間周波数回路7は、減衰器19に接続されたカプラー30と、減衰器21に接続されている分配器31と、分配器31に接続された増幅器32と、増幅器32に接続された遅延回路33と、遅延回路33に接続された可変減衰回路34とを備え、可変減衰回路34は上述したカプラー30に接続される。
【0031】
局部発振回路8は、参照用時計41と、この参照用時計41に接続された電圧制御発振器42、43とを備え、電圧制御発振器42は、受信回路5におけるミキサ15に、また電圧制御発振器43は、送信回路6におけるミキサ22にそれぞれ接続される。
【0032】
受信アンテナ11は、ユーザ端末3から送信されてきた、より高周波な無線周波数からなる搬送波を受信するためのアンテナである。この受信アンテナ11により受信する搬送波の成分は、送信アンテナ30から送信された搬送波が回り込んで受信した、いわゆる自己干渉となりえる成分も含まれる。受信アンテナ11は、このような自己干渉成分を含む搬送波の無線信号を電気信号に変換し、これを増幅器12へと出力する。
【0033】
増幅器12は、この送信アンテナから供給された搬送波を増幅し、これを受信帯域フィルタ13へ出力する。
【0034】
受信帯域フィルタ13は、この増幅器12からの搬送波の帯域を所定範囲に制限した上で、これを減衰器14に出力する。
【0035】
減衰器14は、受信帯域フィルタ13から入力された搬送波につき、信号を減衰させる処理を施した上で、これをミキサ15へ出力する。
【0036】
ミキサ15は、局部発振回路8から出力される基準信号と搬送波を混合し、中間周波数に変換した受信信号を生成する。ミキサ15は、この中間周波数の成分に変換した受信信号を、フィルタ16へ出力する。
【0037】
フィルタ16は、ミキサ15から入力された受信信号から特定の周波数成分を取り出すと共にそれ以外の周波数成分に関しては帯域制限をかける。帯域制限は、受信帯域フィルタ13において行っているが、これは高周波な無線周波数帯域において行うものであることから、改めてこの中間周波数帯域において帯域制限をかけることで、余分な周波数成分をカットする。フィルタ16は、帯域制限をかけた受信信号を高利得増幅器18へと出力する。
【0038】
高利得増幅器18は、フィルタ16から入力される受信信号について、より高利得な増幅を行う回路である。高利得増幅器18は、増幅した受信信号を減衰器19へと出力する。
【0039】
減衰器19は、高利得増幅器18から入力された受信信号を減衰させる処理を施した上で、これを中間周波数回路7におけるカプラー30へ出力する。
【0040】
カプラー30は、受信回路5における減衰器19から受信信号が入力される。カプラー30には、更に可変減衰回路34から参照信号が入力される。カプラー30は、受信信号と参照信号とを混合する処理を行う。これにより受信信号に含まれる自己干渉信号がこれと同振幅で逆位相となるような最適なゲインと遅延補正がなされた参照信号と重畳することにより、自己干渉信号そのものをキャンセルすることができる。カプラー30は、この自己干渉信号がキャンセルされた受信信号を基地局2内部へ送信することで、これに含まれる様々な情報を利用する。
【0041】
分配器31は、基地局2の内部から送信信号が送られてくる。この送信信号は、中間周波数帯域で構成されており、ユーザ端末3に対して送信したい情報が含まれている。分配器31は、この中間周波数からなる送信信号を分配し、一部を送信回路6における減衰器21へ出力し、一部を増幅器32へと出力する。
【0042】
増幅器32は、分配器31から入力される中間周波数帯域の送信信号を増幅した上で、これを遅延回路33へ出力する。
【0043】
遅延回路33は、増幅器32から入力されてくる送信信号に対して遅延補正を施し、これを可変減衰回路34へ出力する。可変減衰回路34は、遅延回路33から入力される送信信号に対して適正な出力レベルになるように減衰量が調整される。
【0044】
この増幅器32、遅延回路33、可変減衰回路34において送信信号についてゲインと遅延補正がなされることにより、参照信号を得ることができる。受信信号に含まれる自己干渉信号は、この送信信号が回り込んだものであるから、この送信信号から、自己干渉信号と同振幅で逆位相となるような参照信号を作り出すことができる。そして、この参照信号をカプラー30において受信信号と重畳させることで、自己干渉信号をキャンセルすることが可能となる。本発明においては、このような自己干渉信号をキャンセルする上で必要な参照信号を、増幅器32、遅延回路33、可変減衰回路34において中間周波数帯域の下で生成し、これをカプラー30へ供給する。
【0045】
減衰器21は、中間周波数回路7から入力される送信信号を減衰させる処理を施した上で、これをミキサ22へと出力する。
【0046】
ミキサ22は、局部発振回路8から出力される基準信号と中間周波数からなる送信信号を混合し、高周波な無線周波数に変換した搬送波の信号を生成する。ミキサ22は、この無線周波数の成分に変換した搬送波を、バンドパスフィルタ23へ出力する。
【0047】
バンドパスフィルタ23は、ミキサ22から出力された搬送波について所定の帯域のみを通過し、それ以外の帯域を制限するフィルタリング処理を施し、これをバッファ増幅器24へ出力する。
【0048】
バッファ増幅器24は、バンドパスフィルタ23から出力された搬送波を増幅し、これを可変減衰回路25へ出力する。
【0049】
可変減衰回路25は、バッファ増幅器24から入力された搬送波について適正な出力レベルになるように減衰量を調整し、これをドライバ増幅器26へ出力する。
【0050】
ドライバ増幅器26は、搬送波を所望の電圧レベルまで増幅させて、これをパワーアンプ28へ出力する。
【0051】
パワーアンプ28は、ドライバ増幅器26から供給される搬送波について電力増幅をし、これをアイソレータ29へと出力する。
【0052】
アイソレータ29は、必要に応じて搬送波を作り出して送信アンテナ30へと導く回路を絶縁するためのデバイスである。パワーアンプ28からの搬送波は、アイソレータ29を通過した場合には、送信アンテナ30へと出力される。
【0053】
参照用時計41は、実際に基準信号を生成する上で参照するための時計である。電圧制御発振器42は、ミキサ15へ供給する基準信号を発振する上で、参照用時計41からの時間情報を参照する。同様に電圧制御発振器43は、ミキサ22へ供給する基準信号を発振する上で、参照用時計41からの時間情報を参照する。
【0054】
次に、自己干渉キャンセル回路10の動作について説明をする。
【0055】
自己干渉キャンセル回路10では、送信と受信を同時に行う複信方式である帯域内全二重無線通信方式の下、先ず中間周波数帯域の送信信号を作り出す。送信信号は、基地局2の内部において生成され、分配器31において分配される。分配された送信信号の一部は、増幅器32へ供給され、他の一部は、減衰器21へ供給される。
【0056】
減衰器21に供給された送信信号は、減衰処理が施された上でミキサ22に出力される。ミキサ22に出力された送信信号は、局部発振回路8から供給される基準信号と混合されて、中間周波数から高周波な無線周波数に変換した搬送波の信号となる。搬送波の信号は、バンドパスフィルタ23において帯域制限され、バッファ増幅器24において増幅され、可変減衰回路25において減衰処理が施される。更にこの搬送波は、ドライバ増幅器26において増幅され、パワーアンプ28において増幅され、アイソレータ29を介して送信アンテナ30へと送られる。送信アンテナ30は、この搬送波を発信し、無線周波数帯域における無線信号としてユーザ端末3へと搬送される。
【0057】
この送信アンテナ30から発信された搬送波の一部が仮に受信アンテナ11に回り込み、自己干渉信号として、ユーザ端末3から送られてくる搬送波に重畳された状態で受信アンテナ11により受信される場合がある。かかる場合には、受信アンテナ11により受信された、自己干渉信号に含まれる搬送波は、増幅器12において増幅され、受信帯域フィルタ13において帯域制限がなされ、減衰器14において減衰処理が施される。さらにこの受信した自己干渉信号を含む搬送波は、ミキサ15において局部発振回路8から供給される基準信号と混合されて、高周波な無線周波数から中間周波数に変換した受信信号となる。
【0058】
この受信信号は、フィルタ16において中間周波数帯域における帯域制限が施され、高利得増幅器18において増幅され、更に減衰器19において減衰処理が施される。そして、この減衰処理が施された受信信号は、中間周波数回路7におけるカプラー30へ送られる。
【0059】
このカプラー30に送られた受信信号は、中間周波数帯域に変換されながらも、まだ自己干渉信号が含まれた状態となっている。カプラー30では、この受信信号に含まれている自己干渉信号をキャンセルする処理を行う。具体的には、この自己干渉信号が含まれている受信信号に、可変減衰回路34から入力された参照信号を混合する。
【0060】
この参照信号は、上述した分配器31において分配された送信信号に基づいて生成される。分配器31において分配された送信信号の一部は、増幅器32において増幅され遅延回路33へ出力される。この遅延回路33へ出力された送信信号は遅延補正が施さら、可変減衰回路34において適正な出力レベルになるように減衰量が調整されることで、ちょうど自己干渉信号がこれと同振幅で逆位相となるような最適なゲインと遅延補正がなされる。自己干渉信号は、送信信号が回り込んだものであることから、自己干渉信号は、そもそも送信信号の振幅と位相に応じたものとなっている。このため、送信信号に基づいてどう振幅で逆位相となるような参照信号を生成し、これを自己干渉信号と重ね合わせることにより、当該自己干渉信号をキャンセルすることができる。
【0061】
特にこの参照信号を自己干渉信号と重ね合わせることによる、自己干渉キャンセルを中間周波数帯域において行うことにより以下の優れた効果がある。
【0062】
中間周波数帯域において自己干渉キャンセル回路を実装しているため、ミキサ22により対象の無線周波数に周波数変換でき、複数のRF回路(受信回路5、送信回路6)を切り替えながら利用する構成が容易に実現できる。中間周波数帯域の回路は受信側、送信側において共通であるため、それぞれのRF回路に帯域内全二重無線通信を実現する上で必要な特別な設計が不要となる。更に狭帯域信号を扱うLTE-M(Long Term Evolution for machine-type-communication)等のIoT系システムに対しては、自己干渉キャンセル回路規模の低減も図ることができ、効率よく帯域内全二重無線通信を適用することが可能となる。
【0063】
なお、増幅器32、遅延回路33、可変減衰回路34において参照信号を生成する際には、受信信号から自己干渉を抽出し、抽出した自己干渉と同振幅で逆位相となるような参照信号を生成するようにしてもよい。自己干渉を抽出するユニットは、受信回路5或いは中間周波数回路7において設けられていてもよい。受信信号から自己干渉を抽出する方法は、周知のいかなる方法を利用してもよい。また受信信号から自己干渉を都度得ることは必須ではなく、実際の通信開始前において、外部からの受信信号を受信していない状態の下で、自機により送信信号を発信し、受信回路5に回り込んできた信号を自己干渉と仮定し、これについて事前に振幅と位相を検出するようにしてもよい。
【0064】
振幅については、図示しないパワーディテクタを介して振幅を測定するようにしてもよい。位相については、中間周波数回路30において送信信号に基づいて位相を仮設定した上で、これと自己干渉を重畳させる。その結果、自己干渉がどの程度キャンセルされたかをユーザ側、又はシステム側において目視で確認するようにしてもよいし、プログラム上でその自己干渉の減少度合を自動検出するようにしてもよい。
【0065】
その上で、中間周波数回路30は、改めて送信信号に基づいて位相を再設定し、前回と比較した自己干渉の減少度合を同様に検出する。その結果、自己干渉が前回よりも更に減っている場合には、その再設定の過程で位相を大きくしているのであれば更に大きくし、また再設定の過程で位相を小さくしているのであればさらに小さくさせる等の処理を行う。また、自己干渉が前回よりも逆に増えている場合には、その再設定の過程で位相を大きくしているのであれば逆に小さくし、また再設定の過程で位相を小さくしているのであれば、逆に大きくさせる等の処理を行う。
【0066】
このようにして、検出した自己干渉に応じた参照信号を、全て中間周波数回路30における増幅器32、遅延回路33、可変減衰回路34側において行うようにしてもよいが、これに限定されるものでは無い。例えば局部発信回路8において、受信信号から自己干渉を抽出し、抽出した自己干渉の位相に応じた上記基準信号を生成するようにしてもよい。局部発信回路8側において、上述と同様に受信信号から自己干渉を抽出する機能を実装しておく。そして、自己干渉と同様の位相となるように局部発信回路8において基準信号を生成し、ミキサ15において、搬送波と混合させて中間周波数に変換した受信信号を生成するようにしてもよい。この基準信号との混合を通じて、既に位相に関しては自己干渉と整合するように調整がなされているため、中間周波数回路30における増幅器32、遅延回路33、可変減衰回路34においては、参照信号の振幅のみを上述と同様に調整することで、自己干渉と合わせる動作のみを行えばよい。
【0067】
このように、自己干渉キャンセルの処理動作は、参照信号の振幅と位相の調整を全て中間周波数回路30側で行う方法と、基準信号において位相を調整し、参照信号の振幅の調整のみを中間周波数回路30側で行う方法に分類することができる。
【0068】
自己干渉キャンセルの処理動作について何れの分類に基づいて行うようにしてもよい。このとき、送信信号又は受信信号の帯域幅を検出し、検出した帯域幅に基づいて、参照信号の振幅と位相の調整を全て中間周波数回路30側で行う方法と、基準信号において位相を調整し、参照信号の振幅の調整のみを中間周波数回路30側で行う方法の何れかを選択するようにしてもよい。
【0069】
送信信号又は受信信号の帯域幅は、既知であればそれを利用するようにしてもよいし、既知でない場合には、帯域幅について図示しないスペクトルセンサ等を介して検出するようにしてもよい。
【0070】
また本発明は、自己干渉キャンセルの処理動作を選択する上で、図3に示すような機械学習を利用した選定モデルを利用するようにしてもよい。
【0071】
この選定モデルでは、入力が参照用位置情報、参照用通信帯域情報の何れか1種以上で構成されている。出力は、自己干渉キャンセルの処理動作である。
【0072】
参照用位置情報とは、ユーザ端末3の位置情報である。この位置情報は、個々のユーザ端末3のGPS座標位置であってもよいし、複数のユーザ端末3間の相対的な位置関係であってもよい。また参照用通信帯域情報は、上述した通信帯域の帯域幅や、実際の帯域そのものであってもよい。
【0073】
自己干渉キャンセルの処理動作とは、例えば図3中のAが送信信号又は受信信号の帯域幅を検出し、検出した帯域幅に基づいて、参照信号の振幅と位相の調整を全て中間周波数回路30側で行う方法であり、図3中のBが、基準信号において位相を調整し、参照信号の振幅の調整のみを中間周波数回路30側で行う方法とされていてもよい。つまり、出力解として、このAとBの何れかを選択するものであってもよいが、これに限定されるものではなく、具体的な参照信号の振幅や位相そのものが出力解とされていてもよいし、基準信号の位相そのものが出力解とされていてもよい。
【0074】
このような入力と出力のデータセットを教師データとして用い、学習させることで、図3に示すようなニューラルネットワークからなる選定モデルを事前に構築しておく。そして、実際に本発明を実施する過程において、位置情報、通信帯域情報を取得する。ここでいう位置情報とは、これから自己干渉キャンセルを試みる無線通信下におけるユーザ端末3の位置情報であり、その詳細は上述した参照用位置情報と同様である。
【0075】
また、通信帯域情報とは、これから自己干渉キャンセルを試みる無線通信下におけるユーザ端末3の位置情報であり、その詳細は上述した参照用位置情報と同様である。
【0076】
このような新たな入力を受け付けた場合、上述した選定モデルに入力することにより、出力解としての自己干渉キャンセルの処理動作が得られる。つまり過去の学習データに基づいた最適な自己干渉キャンセルの処理動作が出力されることになる。これにより、この出力された自己干渉キャンセルの処理動作を実行することが可能となる。
【0077】
ちなみに、上述した例では、入力を位置情報、通信帯域情報の双方とする場合を例に説明をしたが、これに限定されるものでは無く、入力を位置情報又は通信帯域情報の何れかであってもよく、かかる場合には、その入力する情報に応じた参照用情報(参照用位置情報、参照用通信帯域情報の何れか)と、自己干渉キャンセルの処理動作とのデータセットを蓄積することで選定モデルが構築されるものであってもよい。
【0078】
本発明は、上述した選定モデルの利用は必須ではなく、参照用位置情報、参照用通信帯域情報の1種以上に対する自己干渉キャンセルの処理動作の関係が予め規定されたテンプレートに代替してもよい。このテンプレートは、参照用位置情報、参照用通信帯域情報の1種以上に対する自己干渉キャンセルの処理動作の関係が1対1で記述されており、これを予め形成しておき、図示しないメモリ等の記憶手段に記憶させておく。そして、実際に本発明を実施する過程において、位置情報、通信帯域情報を取得する。このような新たな入力を受け付けた場合、上述したテンプレートに当て嵌めることにより、出力解としての自己干渉キャンセルの処理動作が得られる。つまり過去の学習データに基づいた最適な自己干渉キャンセルの処理動作が出力されることになる。
【符号の説明】
【0079】
1 無線通信システム
2 基地局
3 ユーザ端末
5 受信回路
6 送信回路
7 中間周波数回路
8 局部発振回路
9 アンテナアイソレーション
10 自己干渉キャンセル回路
11 受信アンテナ
12 増幅器
13 受信帯域フィルタ
14 減衰器
15 ミキサ
16 フィルタ
18 高利得増幅器
19 減衰器
21 減衰器
22 ミキサ
23 バンドパスフィルタ
24 バッファ増幅器
25 可変減衰回路
26 ドライバ増幅器
28 パワーアンプ
29 アイソレータ
30 カプラー
30 送信アンテナ
31 分配器
32 増幅器
33 遅延回路
34 可変減衰回路
41 参照用時計
42 電圧制御発振器
43 電圧制御発振器
71 アンテナ
71 送信アンテナ
72 受信アンテナ
73 ベースバンドデジタルキャンセラ
74 高周波アナログキャンセラ
75 送信回路
76 受信回路
図1
図2
図3
図4