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特許7561422蛍光発生核酸分子、及び標的RNAの蛍光標識方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】蛍光発生核酸分子、及び標的RNAの蛍光標識方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20240927BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240927BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240927BHJP
   C12Q 1/6825 20180101ALI20240927BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240927BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6825 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6897 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020559225
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047228
(87)【国際公開番号】W WO2020116446
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2018226743
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康志
(72)【発明者】
【氏名】有吉 哲郎
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】中村 浩
【審判官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】Chemistry and Biology,2015年,Vol.22,No.5,pp.649-660(suppl.info.pp.1-29)
【文献】Scientific Reports,2015年,Vol.5,Article No.17295,pp.1-9(Suppl.info.pp.1-18)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2008年,Vol.18,pp.4562-4565
【文献】Molecular Biology of the Cell,2017年,Vol.28,No.26,p.3727(Abstruat No.P2731)
【文献】ACS chemical biology,2016年,Vol.11,No.9,pp.2398-2406(suppor.info.1-4)
【文献】Journal of the American Chemical Society,2014年,Vol.136,No.46,pp.16299-16308
【文献】Journal of Pharmacological Sciences,2017年,Vol.133,No.3,supplement,p.S261(3-P-103)
【文献】日本分子生物学会年会プログラム・要旨集,2016年,Vol.39th,1AS7-4
【文献】Molecular Biology of the Cell,2018年,Vol.29,No.26,p.3063(Abstract No.M50)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12Q1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の蛍光分子結合領域がリンカー配列を介して連結されている塩基配列を含み、
前記蛍光分子結合領域は、足場配列中に1以上の蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されており、
前記リンカー配列の長さが20塩基以上100塩基以下であり、かつ前記リンカー配列が、特定の立体構造を形成しておらず、
前記リンカー配列が、配列番号18~20及び29~37のいずれかで表される塩基配列からなることを特徴とする、蛍光発生核酸分子。
【請求項2】
前記リンカー配列の長さが80塩基以下である、請求項1に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項3】
前記リンカー配列は、前記蛍光分子結合領域における前記蛍光分子結合アプタマー配列の立体構造形成を阻害しない、請求項1又は2に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項4】
前記蛍光分子結合領域は、前記足場配列中に2以上の前記蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項5】
前記蛍光分子結合領域が、2以上のループ構造を含有するステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子のうちの少なくとも2の前記ループ構造が、前記蛍光分子結合アプタマー配列に置換されている構造からなる、請求項4に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項6】
前記蛍光分子結合アプタマー配列が、G-quadruplex構造で挟まれているステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子の塩基配列を含有しており、
前記ステム・ループ構造が、4~6塩基のステム構造と4塩基のループ構造からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項7】
前記蛍光分子結合アプタマー配列が、Broccoli、Broccoli3、又はdBroccoliである、請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項8】
前記蛍光分子結合領域が、配列番号16又は17で表される塩基配列からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項9】
前記リンカー配列が、配列番号18~20のいずれかで表される塩基配列からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項10】
前記蛍光分子結合アプタマー配列を4以上含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項11】
前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子が、DFHBIファミリーの蛍光分子である、請求項1~10のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子。
【請求項12】
標的RNAを蛍光標識する方法であって、
標的RNAに、請求項1~11のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子を直接又は間接的に連結させた後、前記蛍光発生核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子と接触させる、標的RNAの蛍光標識方法。
【請求項13】
前記標的RNAが、標的遺伝子の転写産物であり、
前記標的遺伝子の3’非翻訳領域に、前記蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列を組み込んだ細胞の細胞内に、前記蛍光発生核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子を導入し、前記標的遺伝子の転写産物と前記蛍光分子とを結合させる、請求項12に記載の標的RNAの蛍光標識方法。
【請求項14】
標的RNAを蛍光標識する方法であって、
標的RNAを含有する試料に、前記標的RNAの一部分とハイブリダイズするプローブを請求項1~11のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子に直接又は間接的に連結させた核酸分子と、前記核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子とを混合する、標的RNAの蛍光標識方法。
【請求項15】
外来遺伝子の発現を制御するプロモーターと、
前記プロモーターの下流にあり、前記外来遺伝子のコーディング領域を挿入するための制限酵素部位と、
前記制限酵素部位の下流に3’非翻訳領域と、を有しており、
前記3’非翻訳領域が、請求項1~11のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列を含む、ベクター。
【請求項16】
請求項11に記載の蛍光発生核酸分子に、DFHBIファミリーの蛍光分子を結合させた後、前記DFHBIファミリーの蛍光分子の励起光を一定時間連続照射し、照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値から照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を差し引いた輝度値を、前記蛍光発生核酸分子と結合している前記DFHBIファミリーの蛍光分子から発される蛍光シグナルとして検出する、蛍光発生核酸分子と結合している蛍光分子から発される蛍光シグナルの検出方法。
【請求項17】
前記DFHBIファミリーの蛍光分子と結合した前記蛍光発生核酸分子に、前記励起光を、一定時間連続照射した後に一定時間照射を中断する照射サイクルで、複数回繰り返し照射し、
前記照射サイクルごとに、連続照射時の照射開始時点の蛍光シグナルと照射終了時点の蛍光シグナルを検出し、
全照射サイクルで検出された連続照射時の照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値を平均化し、
全照射サイクルで検出された連続照射時の照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を平均化し、
平均化された照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値から、平均化された照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を差し引いたものを、前記蛍光発生核酸分子と結合した前記DFHBIファミリーの蛍光分子の蛍光シグナルとして検出する、請求項16に記載の蛍光発生核酸分子と結合している蛍光分子から発される蛍光シグナルの検出方法。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の蛍光発生核酸分子と、前記蛍光発生核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列と結合する蛍光分子との結合を阻害する物質をスクリーニングする方法であって、
前記蛍光発生核酸分子と前記蛍光分子とが存在している反応系に、阻害物質の候補物質を共存させて、前記蛍光分子が発する蛍光シグナルを測定し、得られた輝度値が、前記候補物質非存在下において前記蛍光発生核酸分子と結合した前記蛍光分子が発する蛍光シグナルの輝度値よりも小さい場合に、前記候補物質を、前記阻害物質として選抜する、スクリーニング方法。
【請求項19】
前記蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合アプタマー配列が、G-quadruplex構造で挟まれているステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子の塩基配列であり、
前記蛍光分子がDFHBIファミリーの蛍光分子であり、
前記阻害物質が、G-quadruplex構造をほどき戻す活性を有している、請求項18に記載のスクリーニング方法。
【請求項20】
前記蛍光発生核酸分子と前記候補タンパク質を共発現させた細胞に、前記蛍光分子を導入して蛍光シグナルを測定し、得られた輝度値が、前記蛍光発生核酸分子のみを発現させた細胞に前記蛍光分子を導入して得られた蛍光シグナルよりも小さい場合に、前記候補タンパク質を、G-quadruplex構造をほどき戻す活性を有する物質として選抜する、請求項19に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAを蛍光標識するための蛍光発生核酸分子、及び当該蛍光発生核酸分子を用いて標的RNAを蛍光標識する方法に関する。
本願は、2018年12月3日に、日本に出願された特願2018-226743号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現がmRNAレベルでどのように制御されるかをよりよく理解するために、生細胞のmRNAの時空間動態を視覚化する方法の確立が強く求められている。生細胞内のmRNAの可視化に一般的に用いられている方法は、標的のmRNAを、MS2又はPP713等のRNAステム・ループのタグを付加して、蛍光分子と融合したタンパク質をリクルートする方法である。当該技術は、細胞質内におけるmRNAの動きを追跡したり(例えば、非特許文献1参照。)、核内で新生されたmRNAを可視化するために(例えば、非特許文献2参照。)、適用されている。しかし、タグを付加したmRNAについて、細胞内のmRNA分布のダイナミクスを可視化したり、発現レベルを測定する際に、しばしば、未結合の蛍光タンパク質の高いバックグラウンドが、結果の解釈を難しくする。
【0003】
生細胞内のmRNAを視覚化する方法として、特定の標的分子に塩基配列依存的に結合するRNAアプタマーを用いる方法が候補として挙げられている。ある種のRNAアプタマーは、蛍光性の低分子化合物と結合することによってその蛍光を増強することができる(例えば、非特許文献3及び4参照。)。このようなRNAアプタマーは、蛍光発生RNA(fluorogenic RNA)ともいわれている。蛍光発生RNAとしては、例えば、GFP(Green fluorescent protein)の蛍光団の類似体であるDFHBI(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン)ファミリーの低分子の蛍光分子と結合するSpinachやBroccoli、及びこれらの誘導体がある(例えば、非特許文献5、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9,664,676号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Wu et al., Science 2016, vol.352, p.1430-1435.
【文献】Tyagi, Nature Methods, 2009, vol.6, p.331-338.
【文献】Paige et al., Science, 2011, vol.333, p.642-646.
【文献】Filonov et al., Journal of the American Chemical Society, 2014, vol.136, p.16299-16308.
【文献】Filonov et al., Current Protocols in Chemical Biology, 2017, vol.8(1), p.1-28.
【文献】Ketterer et al., Nucleic Acids Research, 2015, vol.43, p.9564-9572.
【文献】Autour et al., Nucleic Acids Research, 2016, vol.44, p.2491-2500.
【文献】Zou et al., Journal of Molecular Evolution, 2015, vol.81, p.172-178.
【文献】Ageely et al., ACS Chemical Biology, 2016, vol.11, p.2398-2406.
【文献】Filonov et al., Chemistry & Biology, 2015, vol.22, p.649-660.
【文献】Filonov et al., Nature Biotechnology, 2011, vol.29, p.757-761.
【文献】Takai, et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2015, vol.112, p.4352-4356.
【文献】Zuker, Nucleic Acids Research, 2003, Vol. 31, No. 13, p.3406-3415.
【文献】Terai et al., Cell structure and Function, 2019, Vol. 44, p.153-169.
【文献】Algar et al., Nature Methods, 2019, Vol. 16, p. 815-829.
【文献】Jepsen et al., NATURE COMMUNICATIONS, 2018, Vol. 9, Article number 18.
【文献】Han et al., Journal of the American Chemical Society, 2013, Vol. 135, p.19033-19038.
【文献】Trachman et al., Trends inPharmacologicalSciences, 2017, vol. 38(10), p.928-939.
【文献】Guo and Bartel, Science, vol. 353(6306), p.1382.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
理論的には、標的mRNAに蛍光発生RNAのタグを付加することによって、生細胞内の標的mRNAを可視化し、定量することができる。しかしながら、既存の蛍光発生RNAはいずれも、蛍光強度が小さく、細胞内のmRNA動態を視覚化することに成功していない。
【0007】
本発明は、細胞内、特に哺乳類の生細胞内でmRNAの可視化が可能な蛍光発生RNA、及びこれを利用する標的RNAの蛍光標識方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究した結果、足場RNAに埋め込んだ状態の蛍光発生RNAを、リンカー配列を介してタンデムに複数連結した核酸分子とすることにより、蛍光分子と結合した場合に発生する蛍光の強度を顕著に増強できること、当該核酸分子で標的RNAを標識することにより、生細胞内の標的RNAを可視化することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明に係る蛍光発生核酸分子、標的RNAの蛍光標識方法、ベクター、リンカー配列の設計方法、蛍光シグナルの検出方法、及びスクリーニング方法は、下記[1]~[23]である。
[1] 2以上の蛍光分子結合領域がリンカー配列を介して連結されている塩基配列を含み、
前記蛍光分子結合領域は、足場配列中に1以上の蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されており、
前記リンカー配列の長さが20塩基以上100塩基以下であり、かつ前記リンカー配列が、特定の立体構造を形成していないことを特徴とする、蛍光発生核酸分子。
[2] 前記リンカー配列の長さが80塩基以下である、前記[1]の蛍光発生核酸分子。
[3] 前記リンカー配列は、前記蛍光分子結合領域における前記蛍光分子結合アプタマー配列の立体構造形成を阻害しない、前記[1]又は[2]の蛍光発生核酸分子。
[4] 前記蛍光分子結合領域は、前記足場配列中に2以上の前記蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されている、前記[3]の蛍光発生核酸分子。
[5] 前記蛍光分子結合領域が、2以上のループ構造を含有するステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子のうちの少なくとも2の前記ループ構造が、前記蛍光分子結合アプタマー配列に置換されている構造からなる、前記[4]の蛍光発生核酸分子。
[6] 前記蛍光分子結合アプタマー配列が、G-quadruplex構造で挟まれているステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子の塩基配列を含有しており、
前記ステム・ループ構造が、4~6塩基のステム構造と4塩基のループ構造からなる、前記[1]~[5]のいずれかの蛍光発生核酸分子。
[7] 前記蛍光分子結合アプタマー配列が、Broccoli、Broccoli3、又はdBroccoliである、前記[1]~[5]のいずれかの蛍光発生核酸分子。
[8] 前記蛍光分子結合領域が、配列番号16又は17で表される塩基配列からなる、前記[1]~[5]のいずれかの蛍光発生核酸分子。
[9] 前記リンカー配列が、配列番号18~20のいずれかで表される塩基配列からなる、前記[1]~[8]のいずれかの蛍光発生核酸分子。
[10] 前記蛍光分子結合アプタマー配列を4以上含有する、前記[1]~[9]のいずれかの蛍光発生核酸分子。
[11] 前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子が、DFHBIファミリーの蛍光分子である、前記[1]~[10]のいずれかの蛍光発生核酸分子。
[12] 標的RNAを蛍光標識する方法であって、
標的RNAに、前記[1]~[11]のいずれかの蛍光発生核酸分子を直接又は間接的に連結させた後、前記蛍光発生核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子と接触させる、標的RNAの蛍光標識方法。
[13] 前記標的RNAが、標的遺伝子の転写産物であり、
前記標的遺伝子の3’非翻訳領域に、前記蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列を組み込んだ細胞の細胞内に、前記蛍光発生核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子を導入し、前記標的遺伝子の転写産物と前記蛍光分子とを結合させる、前記[12]の標的RNAの蛍光標識方法。
[14] 標的RNAを蛍光標識する方法であって、
標的RNAを含有する試料に、前記標的RNAの一部分とハイブリダイズするプローブを前記[1]~[11]のいずれかの蛍光発生核酸分子に直接又は間接的に連結させた核酸分子と、前記核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子とを混合する、標的RNAの蛍光標識方法。
[15] 外来遺伝子の発現を制御するプロモーターと、
前記プロモーターの下流にあり、前記外来遺伝子のコーディング領域を挿入するための制限酵素部位と、
前記制限酵素部位の下流に3’非翻訳領域と、を有しており、
前記3’非翻訳領域が、前記[1]~[11]のいずれかの蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列を含む、ベクター。
[16] 足場配列中に1以上の蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されている蛍光分子結合領域が2以上、リンカー配列を介して連結されている塩基配列を含む蛍光発生核酸分子における前記リンカー配列を設計する方法であって、
1の前記蛍光分子結合領域の上流及び下流に候補リンカー配列を連結したRNA配列を評価用RNA配列とし、
前記評価用RNA配列中の前記蛍光分子結合領域の立体構造の予測結果が、前記蛍光分子結合領域のみからなるRNA配列の立体構造の予測結果と同一であり、かつ、前記候補リンカー配列部分が立体構造をとらないと予測されるように、前記リンカー配列を設計する、リンカー配列の設計方法。
[17] 前記候補リンカー配列が、制限酵素部位にランダムなRNA配列が付加された配列である、前記[16]のリンカー配列の設計方法。
[18] 前記候補リンカー配列の長さが、20塩基以上80塩基以下である、前記[16]又は[17]のリンカー配列の設計方法。
[19] 前記[11]の蛍光発生核酸分子に、DFHBIファミリーの蛍光分子を結合させた後、前記DFHBIファミリーの蛍光分子の励起光を一定時間連続照射し、照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値から照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を差し引いた輝度値を、前記蛍光発生核酸分子と結合している前記DFHBIファミリーの蛍光分子から発される蛍光シグナルとして検出する、蛍光発生核酸分子と結合している蛍光分子から発される蛍光シグナルの検出方法。
[20] 前記DFHBIファミリーの蛍光分子と結合した前記蛍光発生核酸分子に、前記励起光を、一定時間連続照射した後に一定時間照射を中断する照射サイクルで、複数回繰り返し照射し、
前記照射サイクルごとに、連続照射時の照射開始時点の蛍光シグナルと照射終了時点の蛍光シグナルを検出し、
全照射サイクルで検出された連続照射時の照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値を平均化し、
全照射サイクルで検出された連続照射時の照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を平均化し、
平均化された照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値から、平均化された照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を差し引いたものを、前記蛍光発生核酸分子と結合した前記DFHBIファミリーの蛍光分子の蛍光シグナルとして検出する、前記[19]の蛍光発生核酸分子と結合している蛍光分子から発される蛍光シグナルの検出方法。
[21] 前記[1]~[11]のいずれかの蛍光発生核酸分子と、前記蛍光発生核酸分子中の前記蛍光分子結合アプタマー配列と結合する蛍光分子との結合を阻害する物質をスクリーニングする方法であって、
前記蛍光発生核酸分子と前記蛍光分子とが存在している反応系に、阻害物質の候補物質を共存させて、前記蛍光分子が発する蛍光シグナルを測定し、得られた輝度値が、前記候補物質非存在下において前記蛍光発生核酸分子と結合した前記蛍光分子が発する蛍光シグナルの輝度値よりも小さい場合に、前記候補物質を、前記阻害物質として選抜する、スクリーニング方法。
[22] 前記蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合アプタマー配列が、G-quadruplex構造で挟まれているステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子の塩基配列であり、
前記蛍光分子がDFHBIファミリーの蛍光分子であり、
前記阻害物質が、G-quadruplex構造をほどき戻す活性を有している、前記[21]のスクリーニング方法。
[23] 前記蛍光発生核酸分子と前記候補タンパク質を共発現させた細胞に、前記蛍光分子を導入して蛍光シグナルを測定し、得られた輝度値が、前記蛍光発生核酸分子のみを発現させた細胞に前記蛍光分子を導入して得られた蛍光シグナルよりも小さい場合に、前記候補タンパク質を、G-quadruplex構造をほどき戻す活性を有する物質として選抜する、前記[22]のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蛍光発生核酸分子は、足場配列中に1以上の蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されている蛍光分子結合領域をタンデムに連結しており、連結する蛍光分子結合領域の数依存的に、対となる蛍光分子と結合した際に発生する蛍光の強度を強くすることができる。このため、本発明に係る蛍光発生核酸分子のうち、充分な数の蛍光分子結合領域を連結させた蛍光発生核酸分子は、生細胞中のmRNAの可視化ツールとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】DFHBIファミリーの蛍光分子と対になる蛍光分子結合アプタマー配列の模式図である。
図2】実施例1において、候補RNA(RNA#1~#17)を発現させた細胞の、DFHBI-1T蛍光強度をNLS-iRFP蛍光強度で除して得た正規化蛍光強度を、さらにRNA#1(Spinach)を発現させた細胞の平均正規化蛍光強度で除して得られた相対蛍光強度を示した図である。
図3】実施例1において、候補RNA(RNA#14、#18、#19)を発現させた細胞の、DFHBI-1T蛍光強度をNLS-iRFP蛍光強度で除して得た正規化蛍光強度を、さらにRNA#1(Spinach)を発現させた細胞の平均正規化蛍光強度で除して得られた相対蛍光強度を示した図である。
図4】実施例2において、Dox処理後における、Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光の定量結果と、Romanescoが付加されたNLS-iRFPのmRNAの発現量の定量結果と、を示した図である。
図5】実施例2において、ActD処理後における、Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光の定量結果と、Romanescoが付加されたNLS-iRFPのmRNAの発現量の定量結果と、を示した図である。
図6】実施例2において、mRNAコピー数とRomanescoシグナルとの間の直線性の単一細胞分析の結果を示した図である。
図7】実施例2において、各細胞の落射蛍光顕微鏡法により得られた蛍光シグナルと、時間ゲートFLIMにより得られた蛍光シグナルの結果を示した図である。
図8】実施例3において、Dox及びDFHBI-1T存在下で培養したRomanesco発現細胞の発光状態の蛍光画像(A)、及び発光状態の蛍光画像から非発光状態の蛍光画像を差し引いたDFHBI-1T蛍光画像(B)である。
図9】実施例4において、候補タンパク質A~Cをそれぞれ過剰発現させたRomanesco発現細胞の緑色蛍光強度の測定結果を示した図である。
図10A】実施例5において、CD83標識細胞のCD83遺伝子ローカスの模式図を図10Aに示す。
図10B】実施例5において、CD83の表面抗原で刺激したCD83標識細胞の経時的に取得された蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明及び本願明細書において、「蛍光分子結合アプタマー」とは、特定の蛍光分子と結合することにより当該蛍光分子から発生する蛍光が顕著に強化されるRNAアプタマーを意味する。「蛍光分子結合アプタマー配列」とは、当該RNAアプタマーの塩基配列を意味する。また、「蛍光分子結合アプタマー配列と対となる蛍光分子」とは、当該RNAアプタマーと結合することにより、発生する蛍光が顕著に強化される蛍光分子を意味する。
【0013】
<蛍光発生核酸分子>
本発明に係る蛍光発生核酸分子は、足場配列中に1以上の蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されている蛍光分子結合領域が、2以上タンデムに連結されている。本発明において、蛍光分子結合領域当たりに含まれる蛍光分子結合アプタマー配列の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。本発明に係る蛍光発生核酸分子は、少なくとも2個の蛍光分子結合領域を有しており、1分子当たりに結合する対となる蛍光分子が多い。このため、本発明に係る蛍光発生核酸分子は、1分子当たり1つの蛍光分子結合領域のみを備える蛍光発生核酸分子に比べて、蛍光分子の存在下で発される蛍光の強度が高い。
【0014】
本発明に係る蛍光発生核酸分子が含有する蛍光分子結合領域は、2以上であれば特に限定されるものではない。1分子当たりに含有される蛍光分子結合領域の数が多くなるほど、1分子当たりに存在する蛍光分子結合アプタマー配列が多くなるため、当該核酸分子に結合する対となる蛍光分子も多くなる。つまり、連結する蛍光分子結合領域の数依存的に、対となる蛍光分子と結合した際に発生する蛍光の強度を強くなる。本発明に係る蛍光発生核酸分子を、生細胞内のRNA等の分子の標識に使用する場合には、蛍光発生核酸分子1分子当たりに含有される蛍光分子結合アプタマー配列の数が4以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上となるように、適切な数の蛍光分子結合領域をリンカー配列でタンデムに連結させる。本発明に係る蛍光発生核酸分子が含有する蛍光分子結合領域の数の上限値は特に限定されるものではないが、生細胞内での安定性等を考慮し、蛍光発生核酸分子当たりが含有する蛍光分子結合領域の数は、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましい。例えば、蛍光分子結合アプタマー配列当たり2個の蛍光分子結合アプタマー配列を含有する蛍光分子結合領域を6個、リンカー配列を介してタンデムに連結させた蛍光発生核酸分子は、対となる蛍光分子と結合した際に十分な強度の蛍光を発生させるため、生細胞内の分子、特にmRNA等のRNAの蛍光標識に好適である。
【0015】
本発明に係る蛍光発生核酸分子が有する蛍光分子結合アプタマー配列は、特に限定されるものではなく、使用する蛍光分子の種類に応じて適宜選択することができる。本発明に係る蛍光発生核酸分子が含有する蛍光分子結合アプタマー配列としては、DFHBIファミリーの低分子の蛍光分子と対になる蛍光分子結合アプタマー配列であることが好ましい。「DFHBIファミリーの蛍光分子」(以下、「DFHBIファミリー分子」ということがある)としては、DFHBIに加えて、DFHBI-1T((Z)-4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-2-メチル-1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-イミダゾール-5(4H)-オン)、DFHO(4-(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデン)-1-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒドオキシム)等が挙げられる。
【0016】
「DFHBIファミリー分子と対になる蛍光分子結合アプタマー配列」(以下、「DFHBI結合アプタマー配列」ということがある)としては、例えば、コンセンサス配列として、4~6塩基のステム構造と4塩基のループ構造からなるステム・ループ構造がG-quadruplex構造で挟まれている構造の塩基配列を有するものが挙げられる。当該コンセンサス配列のうち、G-quadruplex構造部分及び末端ステムの塩基配列は特に限定されるものではない。例えば、ステム・ループ構造の5’端側及び3’端側を、図1に示す塩基配列とすることができる(ステム・ループ構造の5’端側:配列番号1(5’-GrWGArVGGrHCGGGUCC-3’)、ステム・ループ構造の:配列番号2(5’-GUrYGAGUAGAGUGUGrRGCUC-3’))。図1中、「rW」はA(アデニン)又はU(ウラシル)を示し、「rV」はA、C(シトシン)又はG(グアニン)を示し、「rH」はA、U又はCを示し、「rY」はU又はCを示し、「rR」はA又はGを示す。
【0017】
前記コンセンサス配列中のステム・ループ構造部分の塩基配列は特に限定されるものではなく、例えば、5塩基のステム構造からなるものとして配列番号3~5のいずれかで表される塩基配列が挙げられ、6塩基のステム構造からなるものとして配列番号6又は7で表される塩基配列が挙げられる。本発明に係る蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合アプタマー配列としては、ステム・ループ構造部分の塩基配列が配列番号3又は6で表される塩基配列であることが好ましい。
【0018】
【表1】
【0019】
前記コンセンサス配列を有する蛍光分子結合アプタマー配列としては、具体的には、Spinach(Baby Spinach)(配列番号8、非特許文献3)、Optimized Spinach(配列番号9、非特許文献6)、iSpinach(配列番号10、非特許文献7)、ZT-324(配列番号11、非特許文献8)、Broccoli(配列番号12、非特許文献4)、Broccoli3(配列番号13、非特許文献9)、dBroccoli(配列番号14、非特許文献4)等が挙げられる。各配列の模式図を図1に示す。
【0020】
本発明において蛍光分子結合領域は、足場配列中に1以上の蛍光分子結合アプタマー配列が挿入されている1本鎖核酸構造からなる。当該足場配列としては、蛍光分子結合アプタマー配列が挿入された場合に当該配列からなる1本鎖RNAの蛍光発生機能を損なわず、足場(scaffolding)として機能し得る1本鎖RNAの塩基配列であれば、特に限定されるものではない。当該足場配列としては、例えば、ステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子の塩基配列であってもよい。当該足場配列としては、例えば、各種生物に由来するtRNA、Three-way junction motif、又はこれらの改変体等が挙げられる。なかでも、Phi29ウイルス由来のThree-way junction motifの改変体であるF30スカフォールド(F30 scaffold)配列(配列番号15、非特許文献10)が好ましい。F30スカフォールド配列からなるRNAは、細胞ヌクレアーゼによって認識されないため、F30スカフォールド配列のループ構造部分に蛍光分子結合アプタマー配列を挿入した蛍光分子結合領域を含む蛍光発生核酸分子は、細胞内における安定性が非常に高く、優れている。
【0021】
ステム・ループ構造を形成する足場配列への蛍光分子結合アプタマー配列の挿入は、例えば、当該ステム・ループ構造のうちのループ構造部分を蛍光分子結合アプタマー配列に置換することによって行うことができる。蛍光分子結合領域当たり2以上の蛍光分子結合アプタマー配列を含む場合、当該蛍光分子結合領域は、例えば、2以上のループ構造を含有するステム・ループ構造を形成する1本鎖核酸分子のうちの少なくとも2の当該ループ構造が、蛍光分子結合アプタマー配列に置換されている構造からなる。
【0022】
本発明に係る蛍光発生核酸分子が有する蛍光分子結合領域としては、F30スカフォールド配列中のループ構造のうちの1箇所又は2箇所に、DFHBI結合アプタマー配列を挿入したものが好ましく、F30スカフォールド配列中のループ構造のうちの1箇所又は2箇所に、図1に示すコンセンサス配列を備える蛍光分子結合アプタマー配列を挿入したものがより好ましい。なかでも、生細胞内のRNAに対する検出感度がより優れていることから、F30スカフォールド配列中のループ構造のうちの1箇所又は2箇所に、Baby Spinach、Optimized Spinach、iSpinach、ZT-324、Broccoli、Broccoli3、又はdBroccoliの塩基配列を挿入したものが好ましく、F30スカフォールド配列中のループ構造のうちの1箇所にBroccoli3の塩基配列を挿入したもの(配列番号16)又はF30スカフォールド配列中のループ構造のうちの2箇所にBroccoli3の塩基配列を挿入したもの(配列番号17)がより好ましく、F30スカフォールド配列中の2箇所のループ構造にBroccoli3の塩基配列を挿入したものが特に好ましい。表中、挿入されたBroccoli3の塩基配列には下線を付す。なお、「F30スカフォード配列に1個の蛍光分子結合アプタマー配列を挿入した蛍光分子結合アプタマー配列」は、配列番号16の下線部部分を蛍光分子結合アプタマー配列に置換することにより作製できる。「F30スカフォード配列に2個の蛍光分子結合アプタマー配列を挿入した蛍光分子結合アプタマー配列」は、配列番号17の下線部部分を蛍光分子結合アプタマー配列に置換することにより作製できる。
【0023】
【表2】
【0024】
本発明に係る蛍光発生核酸分子は、2以上の蛍光分子結合領域がリンカー配列を介して連結されている塩基配列を含む。リンカー配列としては、蛍光発生核酸分子に含まれている蛍光分子結合アプタマー配列の蛍光発生機能を損なわないものであれば特に限定されるものではない。例えば、蛍光発生核酸分子の構築や標的RNAへの標識等の便のため、制限酵素配列等の機能性配列を含んでいてもよい。当該リンカー配列は、例えば、RNA立体構造予測ソフトウェアを利用して、蛍光分子結合領域における蛍光分子結合アプタマー配列の立体構造形成を阻害しないように設計することができる。RNA立体構造予測ソフトウェアとしては、例えば、「mFold」(非特許文献13)などの自由エネルギーが最小となる立体構造を予測するソフトウェアが挙げられる。
【0025】
同種の蛍光分子同士の間でもFRET(Forster Resonance Energy Transfer)が生じる現象をhomo FRETという。homo FRETが生じた蛍光分子では、輝度が低下したり、蛍光を発する時間が短くなる(非特許文献14、15)。また、homo FRETの効率は、蛍光分子同士の距離や位置関係に影響を受ける(非特許文献16)。FRETによる蛍光発光効率の低下を避けるため、本発明に係る蛍光発生核酸分子におけるリンカー配列としては、当該リンカー配列で連結されている蛍光分子結合領域中の蛍光分子結合アプタマー配列に結合する蛍光分子同士がFRETを生じないように設計されたものであることが好ましい。例えば、リンカー配列は、20塩基長以上であって、特定の立体構造を取りにくい塩基配列からなるものが好ましい。リンカー配列の長さを好ましくは20塩基以上、より好ましくは22塩基以上、さらに好ましくは24塩基以上とすることにより、蛍光発生核酸分子中の複数の蛍光分子結合アプタマー配列に結合する蛍光分子同士の距離を、FRETが生じ難いほど離すことができる。また、リンカー配列は、特定の立体構造をとらない、フレキシブルなものが好ましい。リンカー配列がフレキシブルであれば、蛍光発生核酸分子中の複数の蛍光分子結合アプタマー配列に結合する蛍光分子同士が、FRETを起こすことができる位置関係で固定されず、FRETが生じ難いためである。また、近接蛍光分子間の相互作用による蛍光の消光現象を引き起こす機構は、homoFRET以外にもあるが、これらの機構も、フレキシブルなリンカー配列によって阻害されることが期待される。
【0026】
また、リンカー配列の長さが長すぎると、蛍光発生核酸分子中の複数の蛍光分子結合アプタマー配列に結合する蛍光分子同士が、蛍光発生核酸分子自体の長さが長くなりすぎる。このため、リンカー配列の長さは、100塩基以下が好ましく、90塩基以下がより好ましく、80塩基以下がさらに好ましい。
【0027】
20塩基長以上であって、特定の立体構造を取りにくい塩基配列からなるリンカー配列としては、1個の蛍光分子結合領域の上流(5’末端側)及び下流(3’末端側)にリンカー配列を連結したRNA配列を評価用RNA配列として、当該評価用RNA配列中の前記蛍光分子結合領域の立体構造の予測結果が、前記蛍光分子結合領域のみからなるRNA配列の立体構造の予測結果と同一であり、かつ、前記リンカー配列部分が立体構造をとらないと予測されるように、前記リンカー配列を設計することが好ましい。より詳細には、例えば、以下の方法で設計することができる。まず、候補リンカー配列として、20塩基長以上、好ましくは20~80塩基長のランダムなRNA配列を設計する。次いで、設計された候補リンカー配列を、1個の蛍光分子結合領域の上流及び下流に連結したRNA配列を評価用RNA配列として設計し、当該評価用RNA配列の立体構造を予測する。1本鎖RNAの立体構造予測は、「mFold」のような、自由エネルギーが最小となる立体構造を予測するためのRNA立体構造予測ソフトウェアを利用して行うことができる。評価用RNA配列の立体構造予測により、蛍光分子結合領域の立体構造の予測結果が、蛍光分子結合領域のみからなるRNA配列の立体構造の予測結果と同一であり、かつ、当該候補リンカー配列部分が立体構造をとらないと予測された場合に、当該候補リンカー配列を、本発明に係る蛍光発生核酸分子におけるリンカー配列として好ましいと評価する。評価用RNA配列の立体構造予測により、蛍光分子結合領域の立体構造の予測結果が蛍光分子結合領域のみからなるRNA配列の立体構造の予測結果と異なるリンカー配列や、当該候補リンカー配列部分が立体構造を取ると予測されるリンカー配列よりも、蛍光分子結合領域の立体構造の予測結果が蛍光分子結合領域のみからなるRNA配列の立体構造の予測結果と同一であり、かつ、当該候補リンカー配列部分が立体構造をとらないと予測されるリンカー配列のほうが、FRETによる蛍光輝度の低下等が生じ難い。本発明に係る蛍光発生核酸分子におけるリンカー配列として好ましいと評価された候補リンカー配列が複数得られた場合には、評価用RNA配列の自由エネルギーがより小さいものを、本発明に係る蛍光発生核酸分子におけるリンカー配列としてより好ましいと評価することができる。評価用RNA配列中の蛍光分子結合領域の立体構造の予測結果が、当該蛍光分子結合領域のみからなるRNA配列の立体構造の予測結果と同一であり、かつ、候補リンカー配列部分が立体構造をとらないと予測される候補リンカー配列を、リンカー配列として、蛍光発生核酸分子を設計することが好ましい。
【0028】
候補リンカー配列は、例えば、AUGCの4種のRNAを用いて、RANDBETWEEN関数等のランダムな文字列を作成する際に用いられる一般的な方法で設計することができる。また、蛍光発生核酸分子の合成の便のため、ランダムな塩基配列に、制限酵素部位などの機能配列を組み込んだものを候補リンカー配列とすることもできる。
【0029】
本発明に係る蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合領域が、F30スカフォールド配列中のループ構造のうちの1箇所又は2箇所に、Baby Spinach、Optimized Spinach、iSpinach、ZT-324、Broccoli、Broccoli3、又はdBroccoliの塩基配列を挿入したものである場合には、当該蛍光分子結合領域同士を連結するリンカー配列としては、25~75塩基長の塩基配列が好ましく、30~70塩基長の塩基配列がより好ましく、30~70塩基長の中央付近に制限酵素認識配列を含むランダム配列がよりさらに好ましい。中でも、蛍光分子結合領域がF30スカフォールド配列中のループ構造のうちの1箇所又は2箇所にBroccoli3の塩基配列を挿入したものである場合には、当該蛍光分子結合領域同士を連結するリンカー配列としては、配列番号18、29~31(いずれも30塩基長)、配列番号19、32~34(いずれも44塩基長)、又は配列番号20、35~37(いずれも66塩基長)で表される塩基配列が好ましく、配列番号18(30塩基長)、配列番号19(44塩基長)、又は配列番号20(66塩基長)で表される塩基配列がより好ましく、配列番号16で表される塩基配列が特に好ましい。
【0030】
【表3】
【0031】
本発明に係る蛍光発生核酸分子は、1本鎖構造のRNA分子である。本発明に係る蛍光発生核酸分子を構成するRNAは、分子を構成する全てのRNAが天然型ヌクレオチドであってもよく、分子を構成する一部又は全部が天然型ヌクレオチドと同様にヌクレオチド鎖や塩基対を形成することが可能な核酸類似物質であってもよい。核酸類似物質としては、例えば、Bridged nucleic acid(BNA)や、天然型ヌクレオチドの4’位酸素原子が硫黄原子に置換されているヌクレオチド、天然型リボヌクレオチドの2’位水酸基がメトキシ基に置換されているヌクレオチドやHexitol Nucleic Acid(HNA)、ペプチド核酸(PNA)等が挙げられる。また、本発明に係る蛍光発生核酸分子を構成するRNAのうちの一部がDNAであってもよい。
【0032】
本発明に係る蛍光発生核酸分子は、蛍光分子結合領域同士がリンカー配列で連結された領域以外にも、当該領域の蛍光発生機能を損なわない限り、その他の領域を有していてもよい。当該その他の領域としては、例えば、対となる蛍光分子以外の物質と相互作用する領域等が挙げられる。また、本発明に係る蛍光発生核酸分子は、対となる蛍光分子による蛍光標識される物質と直接又は適切なリンカーを介して連結させてもよい。
【0033】
本発明に係る蛍光発生核酸分子は、対となる蛍光分子と結合することで、強い蛍光を発生させる。このため、本発明に係る蛍光発生核酸分子は、生体分子をはじめとする様々な物質の蛍光標識に利用することができる。具体的には、蛍光標識する目的の分子(標的分子)に、本発明に係る蛍光発生核酸分子を直接又は間接的に結合させた後、対となる蛍光分子と結合させる。
【0034】
<標的RNAの蛍光標識方法>
本発明に係る蛍光発生核酸分子を、標的RNA(蛍光標識する目的のRNA)に直接又は間接的に結合させることにより、当該標的RNAを蛍光標識することができる。具体的には、標的RNAに、本発明に係る蛍光発生核酸分子を直接又は間接的に連結させた後、当該蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子と接触させる。当該蛍光標識方法は、細胞内のRNAを標的RNAとしてもよく、細胞外のRNAを標的RNAとしてもよい。
【0035】
標的遺伝子の転写産物を標的RNAとする場合には、標的遺伝子の転写産物に本発明に係る蛍光発生核酸分子を結合させることが好ましい。例えば、標的遺伝子の3’非翻訳領域に本発明に係る蛍光発生核酸分子を組み込む。これにより、標的遺伝子は、その3’末端側に本発明に係る蛍光発生核酸分子が付加された状態で転写されるため、得られた転写産物は、対となる蛍光分子によって蛍光標識することができる。具体的には、標的遺伝子の3’非翻訳領域に本発明に係る蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列を組み込んだ細胞の細胞内に、当該蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合アプタマー配列が結合する蛍光分子を導入して、標的遺伝子の転写産物と当該蛍光分子とを結合させる。標的遺伝子の3’非翻訳領域に本発明に係る蛍光発生核酸分子を直接組み込むことにより、細胞内における遺伝子発現において、転写開始から翻訳、その後の分解までの間、標的遺伝子のmRNAを蛍光により可視化し、リアルタイムに検出し、細胞内の標的遺伝子の発現量を定量化することもできる。特に、本発明に係る蛍光発生核酸分子は蛍光発生能が高く、強い蛍光シグナルを発生させられるため、顕微鏡画像解析により、蛍光発生核酸分子で標識したmRNAの細胞内における局在をリアルタイムに解析することも可能である。
【0036】
標的遺伝子が内在性の遺伝子の場合、染色体中の標的遺伝子領域のうちの3’非翻訳領域に、本発明に係る蛍光発生核酸分子をコードするDNA断片を挿入する。このDNA断片の挿入は、ゲノム編集法等の当該技術分野で公知の各種の遺伝子改変技術を用いて常法により行うことができる。
【0037】
外来遺伝子を細胞へ導入して発現させる場合、一般的には、外来遺伝子を発現させるための発現カセットが組み込まれたベクターを細胞内へ導入する。発現カセットとは、外来遺伝子が発現するために必要なDNA断片であり、少なくとも、当該遺伝子のコーディング領域と、当該遺伝子の発現を制御するプロモーターとを含み、さらに、5’非翻訳領域と3’非翻訳領域とターミネーターとを含むことが好ましい。
【0038】
標的遺伝子が外来遺伝子の場合、標的遺伝子の発現カセット中の3’非翻訳領域に、予め、本発明に係る蛍光発生核酸分子をコードするDNA断片を挿入しておく。3’非翻訳領域に本発明に係る蛍光発生核酸分子を挿入した発現カセットを細胞に導入することにより、標的遺伝子は、3’末端側に本発明に係る蛍光発生核酸分子が付加された状態で転写される。標的遺伝子の発現カセットは、細胞の核外に導入されてもよく、核内の染色体中に組み込まれてもよい。標的遺伝子の発現カセットは、当該技術分野で公知の発現カセットに、標的遺伝子のコーディング領域を組み込むことによって作製できる。標的遺伝子の発現カセットの細胞への導入は、リポフェクション法やエレクトロポレーション法、相同組換え法等の当該技術分野で公知の各種の遺伝子組換え技術を用いて常法により行うことができる。
【0039】
また、一般的に、外来遺伝子の発現カセットが組み込まれたベクターは、外来遺伝子のコーディング領域に代えて制限酵素部位を含むクローニングベクターから作製される。具体的には、当該クローニングベクターは、外来遺伝子の発現を制御するプロモーターと、当該プロモーターの下流にあり、外来遺伝子のコーディング領域を挿入するための制限酵素部位と、当該制限酵素部位の下流に3’非翻訳領域とを有する。当該クローニングベクター中の制限酵素部位に、外来遺伝子のコーディング領域からなるDNA断片を組み込むことにより、外来遺伝子の発現用ベクターが得られる。
【0040】
当該クローニングベクターの3’非翻訳領域に、予め、本発明に係る蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列が組み込まれたベクターは、蛍光発生核酸分子が3’末端側に付加された転写産物を得るために有用である。当該ベクターの制限酵素部位に、標的遺伝子のコーディング領域のDNA断片を組み込むことにより、標的遺伝子が、3’末端側に本発明に係る蛍光発生核酸分子が付加された状態で転写される細胞を得るための標的遺伝子発現用ベクターが作製できる。当該ベクターは、例えば、標的遺伝子のコーディング領域のDNA断片を挿入して標的遺伝子発現用ベクターを作製するために用いられる市販の発現ベクターの3’非翻訳領域に、本発明に係る蛍光発生核酸分子をコードする塩基配列を組み込むことにより作製できる。
【0041】
標的RNAの蛍光標識は、末端に標的RNAの一部分とハイブリダイズするプローブを直接又は間接的に連結させた蛍光発生核酸分子を用いることによっても行うことができる。当該プローブの設計、合成、蛍光発生核酸分子の末端との結合は、常法により行うことができる。標的RNAを含有する試料に、このプローブを連結した蛍光発生核酸分子と、当該蛍光発生核酸分子中の蛍光分子結合アプタマー配列と対になる蛍光分子とを混合する。これにより、標的RNAは当該蛍光分子によって標識される。
【0042】
Baby Spinach等のDFHBIファミリー分子は、光依存的に構造が変化する。構造変化後の蛍光分子は、DFHBI結合アプタマー配列からなる1本鎖RNAとは結合しない。このため、DFHBIファミリー分子が、DFHBI結合アプタマー配列を含む蛍光発生核酸分子と結合した複合体に光を照射すると、最初は蛍光を発するが、DFHBIファミリー分子は、構造変化によってDFHBI結合アプタマー配列から外れてしまい、蛍光を発しなくなるが、光照射を中断すると、再び構造が変化し、DFHBIファミリー分子と蛍光発生核酸分子とが再結合し、蛍光が復活する(非特許文献17)。この光依存的な構造変化を利用して、DFHBIファミリー分子と結合する蛍光発生核酸分子から検出される蛍光シグナルのS/N比(信号対雑音比)を向上させることができる。
【0043】
具体的には、DFHBIファミリー分子が、対となる蛍光発生核酸分子と結合していて蛍光を発する状態(発光状態)で取得した蛍光シグナルの輝度値(強度値)から、DFHBIファミリー分子が蛍光発生核酸分子から外れて蛍光を発しない状態(非発光状態)で取得した蛍光シグナルの輝度値を差し引いたものを、対となる蛍光発生核酸分子と結合しているDFHBIファミリー分子から発される蛍光シグナルとして検出する。DFHBIファミリー分子が非発光状態で取得した蛍光シグナルには、背景蛍光や自家蛍光などのDFHBIファミリー分子以外から発されるシグナル(ノイズ)が表れている。そこで、発光状態における輝度値から非発光状態における輝度値を差し引くことにより、DFHBIファミリー分子が発する蛍光シグナルのS/N比が高くなる。
【0044】
発光状態の蛍光シグナルと非発光状態の蛍光シグナルは、例えば、対となる蛍光発生核酸分子と結合しているDFHBIファミリー分子に、当該蛍光分子の励起光(当該蛍光分子を励起して蛍光を発生させることが可能な波長の光)を、発光状態から非発光状態にする構造変化を引き起こすために十分な時間以上、連続して照射することで取得できる。励起光の連続照射の照射開始時点の蛍光シグナルが発光状態の蛍光シグナルに相当し、照射終了時点の蛍光シグナルが非発光状態の蛍光シグナルに相当する。励起光の連続照射時間は、DFHBIファミリー分子の種類ごとに適宜設定することができ、例えば、10~30ミリ秒間とすることができる。すなわち、DFHBI結合アプタマー配列を含む蛍光発生核酸分子に、DFHBIファミリー分子を結合させた後、当該DFHBIファミリー分子の励起光を一定時間連続照射し、照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値から照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を差し引いた輝度値を、当該蛍光発生核酸分子と結合しているDFHBIファミリー分子から発される蛍光シグナルとして検出する。
【0045】
光照射を中断すると、再びDFHBIファミリー分子の構造が変化し、DFHBIファミリー分子と蛍光発生核酸分子中のDFHBI結合アプタマー配列とが再結合し、蛍光が復活する。そこで、例えば、充分な時間励起光を照射して発光状態の蛍光シグナルと非発光状態の蛍光シグナルを取得した後、光照射を一定期間中断することにより、再びDFHBIファミリー分子の構造が変化し、DFHBIファミリー分子と蛍光発生核酸分子中のDFHBI結合アプタマー配列とが再結合する。励起光の照射中断時間は、DFHBIファミリー分子の種類ごとに適宜設定することができ、例えば、5~20秒間とすることができる。
【0046】
遮光して励起光の照射を中断した後、DFHBIファミリー分子と蛍光発生核酸分子中のDFHBI結合アプタマー配列とを再結合させた状態で励起光を再度照射することにより、同じサンプルについて、再度発光状態の蛍光シグナルと非発光状態の蛍光シグナルを取得できる。励起光の連続照射とその後の非照射時間を繰り返すことにより、同じサンプルの発光状態の蛍光シグナルと非発光状態の蛍光シグナルを複数回取得することができ、それぞれの蛍光シグナルを平均化することによって、DFHBIファミリー分子が発する蛍光シグナルの検出精度をより向上させることができる。
【0047】
具体的には、DFHBIファミリーの蛍光分子と結合した対となる蛍光発生核酸分子に、前記励起光を、一定時間連続照射した後に一定時間照射を中断する照射サイクルで、複数回繰り返し照射する。照射サイクルごとに、連続照射時の照射開始時点の蛍光シグナルと照射終了時点の蛍光シグナルを検出する。全照射サイクルで検出された連続照射時の照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値を平均化することで、照射開始時点の蛍光シグナル、すなわち発光状態の蛍光シグナルの検出精度を向上させることができる。同様に、全照射サイクルで検出された連続照射時の照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を平均化することで、照射終了時点の蛍光シグナル、すなわち非発光状態の蛍光シグナルの検出精度を向上させることができる。平均化された照射開始時点の蛍光シグナルの輝度値から、平均化された照射終了時点の蛍光シグナルの輝度値を差し引いたものを、蛍光発生核酸分子と結合したDFHBIファミリー分子の蛍光シグナルとして検出する。
【0048】
<蛍光分子と対となる蛍光発生核酸分子との結合を阻害する物質のスクリーニング方法>
蛍光分子と対となる蛍光発生核酸分子とが結合することにより発生する蛍光シグナルを指標として、両者の結合を阻害する阻害物質をスクリーニングすることができる。蛍光分子と対となる蛍光発生核酸分子とが存在している反応系に、阻害物質の候補物質を共存させて、蛍光分子が発する蛍光シグナルを測定し、当該候補物質の非存在下で蛍光発生核酸分子と結合した蛍光分子が発する蛍光シグナルと比較する。候補物質共存下の蛍光分子が発する蛍光シグナルの輝度値が、当該候補物質の非存在下における蛍光シグナルの輝度値よりも小さい場合に、当該候補物質は、蛍光分子と対となる蛍光発生核酸分子との結合を阻害する阻害物質として選抜する。
【0049】
例えば、候補物質がタンパク質の場合、1本鎖RNAである蛍光発生核酸分子を発現する細胞に、候補物質をコードする遺伝子を導入して発現させる。候補物質遺伝子を発現させた細胞と発現させていない細胞に、蛍光分子を取り込ませ、蛍光シグナルを検出する。候補物質遺伝子を発現させた細胞の蛍光シグナルが、候補物質遺伝子を発現させていない細胞の蛍光シグナルよりも小さい場合に、当該候補物質は、蛍光分子と対となる蛍光発生核酸分子との結合を阻害する阻害物質として選抜される。各細胞の蛍光シグナルは、細胞に励起光を照射して取得した蛍光画像から求めることができる。
【0050】
例えば、DFHBI結合アプタマー配列は、G-quadruplex構造で挟まれているステム・ループ構造を形成し、このG-quadruplex構造によってDFHBIファミリー分子が挟まれることで蛍光を発する(非特許文献18)。このG-quadruplex構造をほどき戻す(unfold)と、DFHBIファミリー分子と結合できなくなり、蛍光が消失する。真核細胞には、G-quadruplex構造をほどき戻す酵素(G4 resolvase)が存在していると考えられているが、まだ同定されていない(非特許文献19)。
【0051】
そこで、DFHBI結合アプタマー配列を含む蛍光発生核酸分子を発現する遺伝子組換え細胞に、さらに、G4 resolvaseの候補タンパク質をコードする遺伝子を導入して発現させる。DFHBI結合アプタマー配列を含む蛍光発生核酸分子と候補タンパク質遺伝子を共発現させた細胞にDFHBIファミリー分子を導入して蛍光シグナルを測定し、得られた輝度値が、DFHBI結合アプタマー配列を含む蛍光発生核酸分子のみを発現させた細胞にDFHBIファミリー分子を導入して得られた蛍光シグナルよりも小さい場合に、当該候補タンパク質がG4 resolvase活性を有する物質として選抜する。DFHBIファミリー分子とDFHBI結合アプタマー配列を含む蛍光発生核酸分子は、G4 resolvaseの遺伝子網羅的同定に応用可能である。
【実施例
【0052】
次に、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0053】
<プラスミド>
以降の実験で用いたプラスミドは、次の通りにして作製した。
【0054】
pEGFP-N1(Clontech社製)のNheI/NotI部位に、3×NLS(LVPKKKRKVVPKKKRKVVPKKKRKVFEGPDPPV:配列番号21)及びiRFP713(以下、「iRFP」と略称す。松田道幸氏から親切にも贈られた。非特許文献11)のコーディング配列を融合してサブクローニングし、pNLS-iRFPを得た。DFHBIファミリー分子の対となる蛍光発生RNAの候補(候補RNA)をスクリーニングするために、F30-2×dBroccoliはpAV5S-F30-2×dBroccoli(#66845、Addgene社製)からPCR増幅して得た。その他のRNAは、合成オリゴヌクレオチド断片から構築した。In-Fusion(Clontech社製)を用いて、これらのオリゴヌクレオチド断片をpNLS-iRFPのNotI部位にサブクローニングした。In-Fusionのためのプライマーは、NotI部位の3'側のみが回収されるように設計した。単一断片をNotI部位に繰り返し挿入することにより、RNA断片のタンデムリピートを構築した。スクリーニング後、最も高い蛍光発生効果が観察された候補RNA「Romanesco」(RNA#14)は、PCR増幅して、pBluescript II SK(+)(Stratagene社製)のマルチクローニングサイトにサブクローニングした。
【0055】
ドキシサイクリン(DOX)誘導性Romanesco発現については、pAdenoX-Tet3G(Clontech社製)由来のTRE3Gプロモーター、NLS-iRFPコーディング配列、及びRomanesco配列を融合し、Tol2認識配列、cHS4インシュレーター、及びピューロマイシン耐性遺伝子発現カセットを含むpT2-MCS-PGK-Puroベクター(非特許文献12)にサブクローニングし、pT2-TRE3G-NLS-iRFP-Romanescoを得た。
【0056】
<細胞培養とトランスフェクション>
以降の実験において、特に記載のない限り、細胞培養及びトランスフェクションは、以下の通りに行った。
【0057】
HEK293T、MCF-7、及びU2OS細胞を、10%FBS、1mM ピルビン酸ナトリウム、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM(和光純薬社製)中、37℃、5%CO2下で培養した。細胞へのトランスフェクションは、トランスフェクション試薬(製品名:「X-tremeGEN HP DNA」、Roche社製)を用いて製造者の指示に従って行った。顕微鏡分析のために、画像化前に、Matrigel(BD bioscience社製)でコーティングしたガラス底ディッシュ(MatTek社製)に細胞を再播種した。
【0058】
[参考例1]
F30-2×dBroccoli(F30スカフォールド配列中のループ構造のうちの2箇所にdBroccoliの塩基配列を挿入したもの。配列番号22)は、Broccoli変異体の中で最も蛍光強度が強いと言われている。そこで、まず、このF30-2×dBroccoliがヒト細胞内のRNAポリメラーゼII(Pol II)依存性mRNAを可視化することができるかどうかを調べるために、RNAポリメラーゼII依存性のCMVプロモーターの下流で、DFHBI-1Tの存在下で緑色蛍光を発するF30-2×dBroccoliをNLS-iRFP(核局在性の赤外蛍光タンパク質iRFP)と共にHEK293T細胞に発現させた。具体的には、NLS-iRFPを発現させるpNLS-iRFPの3’非翻訳領域にF30-2×dBroccoliを組み込んだプラスミドベクター(pNLS-iRFP-#0)を、HEK293T細胞にトランスフェクションし、さらに、培養培地にDFHBI-1Tを添加して培養した。
【0059】
この結果、pNLS-iRFP-#0を導入したNLS-iRFP陽性細胞は、ほとんど検出可能な緑色蛍光を示さなかった。つまり、既存の蛍光分子結合アプタマーでは、ヒト細胞内のmRNAを可視化できなかった。
【0060】
次いで、pNLS-iRFPの3’非翻訳領域にF30-2×dBroccoliをタンデムに直接連結した配列を組み込んだプラスミドベクターをHEK293T細胞にトランスフェクションし、同様にDFHBI-1Tを添加して培養した。この結果、F30-2×dBroccoliのリピート数が多くなるにつれて、有意な緑色蛍光が観察される細胞が増える傾向が観察された。この結果から、蛍光分子結合アプタマーを最適化することにより、細胞内のRNAを可視化するのに十分なほどDFHBIファミリー分子の蛍光強度を改善できることが示唆された。
【0061】
[実施例1]
DFHBIファミリー分子の対となる蛍光発生RNA、すなわち、DFHBIファミリー分子と結合することによって発生する蛍光強度を改善できる蛍光発生RNAをスクリーニングした。
【0062】
図1に示すように、SpinachやBroccoli等の公知の蛍光分子結合アプタマーは、いずれも配列が類似しており、末端ステム(図中、「Terminal stem」)、G-quadruplex、ステム・ループ、コネクターからなる。これらのセグメントは、Spinachの結晶構造及び他の蛍光分子結合アプタマーとの塩基配列アラインメントによって決定される。
【0063】
末端ステムでは、Spinach変異体に含まれている、二本鎖-四重鎖移行領域のA:Gプリン-プリンミスマッチ及びC-Gワトソン-クリック塩基対が、細胞環境におけるアプタマーの明るさに強く影響することが示唆されている(非特許文献9)。そこで、GAGAC-GGCUCを末端ステム配列に使用することにした。
G-quadruplexに焦点を当てると、SpinachとdBroccoliが、G-quadruplexの後半の3番目のポジションにおけるUの特徴的な1塩基置換Cを含むことを除いて、それらの配列にはほとんど変化が見出されなかった。そこで我々は、G-quadruplexには、BroccoliとdBroccoliに由来する配列(GGUCGGGUCC-GUCGAGUAGAGUGUG)又はBroccoli3に由来する配列(GGUCGGGUCC-GUUGAGUAGAGUGUG)を採用した。
【0064】
ステム・ループでは、シンプルに、BroccoliにはBroccoli由来のステム・ループを使用し、Broccoli3のG-quadruplexには、dBroccoli GのquadruplexとBroccoli3のステム・ループを使用した。さらに、Broccoli3のG-quadruplexと6bp(塩基対長)ステムと4nt(塩基長)ループを含むiSpinachステム・ループのキメラも使用した。
【0065】
F30スカフォールドは、哺乳動物細胞におけるDFHBIファミリーに対する蛍光分子結合アプタマーの蛍光発生能を増強することが報告されている(非特許文献10)。そこで、比較のために、F30スカフォールド配列を有する候補RNAと有さない候補RNAを構築した。
【0066】
F30-2×dBroccoliをタンデムに連結させることによって発生する蛍光強度を改善できたことから(参考例1)、蛍光発生RNAは、足場配列(F30スカフォールド配列)の中に組み込まれている蛍光分子結合アプタマー配列を、リンカー配列を介してタンデムに連結させるように構築し、足場配列に組み込まれた蛍光分子結合アプタマー配列のタンデムリピート数を改変することにより、蛍光発生RNAの最適化を試みた。タンデムリピートの数は、蛍光発生RNAを可能な限り小さくし、組換え事象を回避するために、6以下に設定した。なお、後記で設計して合成した、6回反復を含む「Romanesco」(RNA#14)は、細菌細胞と哺乳動物細胞の両方で研究中に組換えを起こさなかった(データは示さず)。
【0067】
足場配列に組み込まれた蛍光分子結合アプタマー配列同士の間に、30、44、又は66塩基長のリンカー配列を挿入した。リンカー配列は、F30スカフォールド及び蛍光分子結合アプタマーの二次構造を妨害しないように、RNA立体構造予測ソフトウェア「mFold」を使用することによって最適化した。
【0068】
リンカー配列は、具体的には下記の通りにして設計した。まず、制限酵素部位に対応する6塩基を除く領域の配列をAUGCの4種のRNAからなるランダム配列とした候補リンカー配列を設計した。AUGCの4種のRNAからなるランダム配列は、表計算ソフトウェア「Microsoft Excel」のRANDBETWEEN関数を用いて設計した。
【0069】
次いで、設計された各候補リンカー配列について、F30-2×dBroccoli配列の上流と下流に候補リンカー配列を連結した評価用RNA配列(候補リンカー配列-F30-2×dBroccoli配列-候補リンカー配列)を設計し、その立体構造を予測した。立体構造の予測は、RNA立体構造予測ソフトウェア「mFold」にアクセスし([on line]http://unafold.rna.albany.edu/?q=mfold/RNA-Folding-Form)、得られた評価用RNA配列を入力し、「Enter the maximum distance between paired bases if you wish」を150に設定し、他のパラメータは初期値のままで、「Fold RNA」をクリックして実行した。なお、「Enter the maximum distance between paired bases if you wish」を150に設定するのは、リンカー配列間でのbase pairingを防止するためである。
【0070】
「mFold」により予測された立体構造について、候補リンカー配列によってF30-2×dBroccoli配列の立体構造が阻害されていないか、及び当該候補リンカー配列がフレキシブルな領域であるか、を確認する。具体的には、F30-2×dBroccoli配列部分の立体構造が、F30-2×dBroccoli配列のみから予測される立体構造と同一であるか否かを確認する。両者の立体構造が異なっている場合には、当該候補リンカー配列によってF30-2×dBroccoli配列の立体構造が阻害されると予測される。また、候補リンカー配列部分が特定の立体構造が予測されない場合、当該候補リンカー配列はフレキシブルな領域である予測される。
【0071】
候補リンカー配列のうち、評価用RNA配列の「mFold」により予測された立体構造が、F30-2×dBroccoli配列部分の立体構造が、F30-2×dBroccoli配列のみから予測される立体構造と同一であり、かつ候補リンカー配列部分が特定の立体構造が予測されないものを、リンカー配列として選抜した。最終的に、リンカー配列として、表3に記載のものを選抜した。それぞれの塩基長のうち、自由エネルギー(ΔG)が最小であった配列番号18、19、及び20のリンカー配列を用いて、以降の候補RNAを合成した。なお、例えば、表4に記載のものは、候補リンカー配列部分が立体構造をとると予測されたり、F30-2×dBroccoli配列部分の立体構造がリンカー配列部分に影響を受けて変化すると予測されたため、リンカー配列としては、表3に記載のもののほうが好ましいと評価した。
【0072】
【表4】
【0073】
まず、17の候補RNA(RNA#1~17)を設計した。RNA#1は、Broccoli(配列番号12)のみからなるRNAである。RNA#2は、F30スカフォード配列に2個のBroccoliを挿入した蛍光分子結合アプタマー配列1個からなるRNAである。RNA#3~RNA#5は、それぞれ、F30スカフォード配列に2個のBroccoliを挿入した蛍光分子結合アプタマー配列が2、4、又は6個、44塩基長のリンカー配列(配列番号19)で連結されたRNAである。RNA#6は、BroccoliのみからなるRNA(配列番号12)が12個、リンカー配列を介さずに直接タンデムに連結されたRNAである。RNA#7~RNA#9は、それぞれ、F30スカフォード配列に2個のdBroccoli(配列番号14)を挿入した蛍光分子結合アプタマー配列が2、4、又は6個、44塩基長のリンカー配列(配列番号19)で連結されたRNAである。RNA#10は、Broccoli3(配列番号13)のみからなるRNAである。RNA#11は、F30スカフォード配列に2個のBroccoli3を挿入した蛍光分子結合アプタマー配列1個からなるRNAである。RNA#12~RNA#14は、それぞれ、F30スカフォード配列に2個のBroccoli3を挿入した蛍光分子結合アプタマー配列が2、4、又は6個、44塩基長のリンカー配列(配列番号19)で連結されたRNAである。RNA#15は、RNA#14中のBroccoli3のステム・ループ領域を、配列番号6で表される塩基配列に置換したRNAである。RNA#16は、Broccoli3のみからなるRNA(配列番号13)が12個、リンカー配列を介さずに直接タンデムに連結されたRNAである。RNA#17は、RNA#16中のBroccoli3のステム・ループ領域を、配列番号6で表される塩基配列に置換されたRNAである。
【0074】
設計された17の候補RNA(RNA#1~17)を、pNLS-iRFP-#0と同様にして、pNLS-iRFPの3’非翻訳領域に組み込み、pNLS-iRFP-#1~17を作製した。作製されたプラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトして発現させ、その蛍光発生性能を、従来のレーザー走査共焦点顕微鏡を用いてDFHBI-1Tの存在下でNLS-iRFP陽性細胞の緑色蛍光強度を測定することによって評価した。
【0075】
具体的には、参考例1と同様にして作製されたプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を、ガラス底ディッシュ上に播き、培養した。トランスフェクションから24時間後の細胞を、油浸対物レンズ(製品名:「Plan Fluor 40×/1.30(Nikon社製)を備えた共焦点顕微鏡(製品名:「A1R」、Nikon社製)を用いて撮像した。細胞に対して、488nmレーザービーム(Melles Griot、0.5μW)及び640nmレーザービーム(Coherent、3μW)を使用し、候補蛍光発生RNA及びNLS-iRFPをそれぞれ励起した。共焦点顕微鏡の走査は、2倍の倍率で可能な最高速度で双方向であり、ピンホールは100μmに閉じられた。各視野について、1μmだけ分離された7枚の画像のスタックを、Z断面として取得した。イメージングの間、DFHBI-1T(Tocris社製)を最終濃度20μMになるようにL-15培地(Thermo Fisher Scientific社製)に添加した。実験は室温で行った。
【0076】
取得した画像を、画像解析ソフトウェア(製品名:「Fiji」、NIH製)を用いて分析した。 画像は、最初に32ビットの浮動小数点画像に変換した。各視野について、488nmレーザー及び640nmレーザーによって誘発された細胞蛍光強度を、以下のように計算した。最初に、全てのzセクションについて、488nmチャネル及び640nmチャネルの平均投影を得た。次に、主にNLS-iRFPシグナルからなる640nmチャネルの平均イメージを、Otsu法を用いた自動閾値処理によって2値画像に変換し、Fijiソフトウェアで実施された機能(「Fill Holes」、「Watershed」及び「Analyze Particles」)を適用して、核関心領域(regions of interest:ROI)を得た。細胞ROIは、核ROIを10ピクセル(1ピクセル=311nm)だけ拡大することによって定義した。最後に、核ROIの平均値を測定して、640nmチャネルの蛍光強度を得、細胞ROIの平均値を測定して488nmチャネルの蛍光強度を得た。隣接するトランスフェクトされていない細胞の蛍光強度も各チャネルについて測定し、それらの平均値をバックグラウンドとして差し引いた。以上の処理の結果、細胞毎に、候補RNAによってDFHBI-1Tから発生した蛍光の強度とNLS-iRFPの蛍光強度の値が得られた。なお、以降において、「蛍光発生RNAによってDFHBIファミリーの蛍光分子から発生した蛍光」を「蛍光発生RNAの蛍光」ということがある。
【0077】
図2は、候補RNA(RNA#1~17)をそれぞれ発現させた細胞の、候補RNAの蛍光強度をNLS-iRFP蛍光強度で除して得た正規化蛍光強度を、さらにRNA#1(Spinach)を発現させた細胞の平均正規化蛍光強度で除して得られた相対蛍光強度を示した図である。候補RNAを発現させた細胞のDFHBI-1T蛍光の検出限界は、候補RNAを発現していない細胞の蛍光強度の平均±3SDを計算することによって決定した。ただし、NLS-iRFPを発現する細胞に対してのみ行った。図中、エラーバーはs.e.m.を表す。RNA#1~17を発現させた細胞のn数は、それぞれ、55、310、255、217、360、316、299、212、271、282、216、401、343、229、217、150、及び244であった。
【0078】
図2に示すように、リンカー配列を介して蛍光分子結合アプタマー配列をタンデム連結した候補RNA(RNA#2~9,11~17)のいずれも、蛍光分子結合アプタマー配列が1つしかない従来の蛍光分子結合アプタマー(RNA#1及び#10)よりも高い蛍光発生性能を示した。
【0079】
RNA#1~#5を発現させた細胞の結果、RNA#7~#9を発現させた細胞の結果、及びRNA#10~#14を発現させた細胞の結果が示すように、タンデム連結された蛍光分子結合アプタマー配列の数が増えると、対となる蛍光分子から発生する蛍光がより明るい蛍光が得られた。また、蛍光分子結合アプタマー配列がBroccoli3の候補RNAは、蛍光分子結合アプタマー配列がBroccoli又はdBroccoliである候補RNAよりも、蛍光発生効果に優れていた。また、RNA#5~#6を発現させた細胞の結果、及びRNA#14と#16を発現させた細胞の結果が示すように、足場配列は、より高い蛍光発生性能のために不可欠である。また、RNA#14と#15を発現させた細胞の結果を比較すると、蛍光分子結合アプタマー配列中のステム・ループ構造を、5bpのステム構造から6bpのステム構造に変換すると、蛍光発生性能は著しく低下した。RNA#14を発現させた細胞が、その他の候補RNAを発現させた細胞の中で最も明るい蛍光を示し、RNA#1を発現させた細胞の300倍以上の明るさであった。
【0080】
RNA#14について、蛍光発生性能に対するリンカー配列の長さの影響を調べるために、RNA#14中の44塩基長のリンカー配列(配列番号19)を30塩基長のリンカー配列(配列番号18)としたRNA#18、RNA#14中の44塩基長のリンカー配列(配列番号19)を66塩基長のリンカー配列(配列番号20)としたRNA#19を設計し、同様にして蛍光発生性能を調べた。結果を図3に示す。図中、エラーバーはs.e.m.を表す(それぞれ、n=94、68、又は57)。Kruskal-Wallis試験(p<0.001)を行った後、続いてSteel-Dwass試験を行った(**:p<0.01、n.s.:p>0.05)。この結果、RNA#18とRNA#19のいずれも、RNA#14と同様に、従来のRNA#1よりも高い蛍光発生性能を示した。これら3つの候補RNAの中では、RNA#14が最も蛍光発生性能が良好であった。
【0081】
生きた哺乳動物細胞のmRNAの可視化を可能にしたRNA#14を、「Romanesco」と名付け、以降の実験に用いた。
【0082】
[実施例2]
実施例1において作製されたRomanescoが、生細胞内のmRNAの定量的測定が可能であることを確認した。
DFHBIファミリー分子は、Romanescoをはじめとする対となる蛍光分子結合アプタマーと結合して初めて十分な蛍光強度を発生する。このため、細胞のDFHBIファミリーに由来する蛍光の全強度は、Romanescoを含むmRNAの発現量を直接反映する。つまり、標的遺伝子のmRNAをRomanescoで修飾することにより、DFHBIファミリーの蛍光強度に基づいて、当該標的遺伝子の発現量を定量的に評価することができる。
【0083】
Romanescoで修飾した標的遺伝子のmRNAを、ドキシサイクリン(DOX)誘導性プロモーターの制御下で発現させ、DFHBIファミリーの存在下で当該細胞のRomanescoの蛍光シグナルの変化を、当該標的遺伝子のmRNA合成と共にモニタリングした。
【0084】
<mRNA合成及び分解のダイナミクスの画像化>
レポーター細胞として、HEK293T細胞に、pT2-TRE3G-NLS-iRFP-Romanescoをトランスフェクトした、NLS-iRFP及びRomanescoを発現するレポーター遺伝子を有する細胞を用いた。
【0085】
転写活性化中のRomanescoの経時的イメージングのために、DOX誘導性プロモーターの制御下でレポーター細胞を、4mMのL-グルタミン、10% FBS、1mM ピルビン酸ナトリウム、1% ペニシリン/ストレプトマイシン、及び20μM DFHBI-1Tを含有するD-MEM(フェノールレッドなし、和光純薬社製)中で培養した。細胞の画像は、共焦点顕微鏡A1Rで、油浸対物レンズPlan Fluor 40×/1.30を使用して、37℃、5%CO下で撮像した。終濃度1μg/mLのDOX(Clontech社製)を培地に添加して転写を誘導し、488nmレーザービーム(0.5μW)及び640nmレーザービーム(3μW)を用いて、Romanesco及びNLS-iRFPをそれぞれ励起した。走査は、2倍の倍率で可能な最高速度で双方向に行い、ピンホールは100μmに閉じた。各視野について、1μm間隔の13枚の画像のスタックを、z断面として10分間間隔で8時間かけて取得した。
【0086】
転写不活性化中のRomanescoの経時的イメージングのために、レポーター細胞を、1μg/mL DOXの存在下で12時間インキュベートし、前記と同様にしてイメージングに供した後、終濃度5μg/mL ActDを加えて転写を阻害した。
【0087】
取得した画像を処理し、実施例1と同様にして、各細胞の蛍光強度を測定した。得られたRomanesco及びNLS-iRFPの蛍光強度を、DOX添加後8時間での平均蛍光強度が1であり、ActD添加後0時間での平均蛍光強度が1になるように正規化した。
【0088】
<RT-qPCRによるRomanesco標識mRNA発現レベルの決定>
転写活性化中のレポーター細胞におけるRomanesco標識mRNA合成のダイナミクスを分析するために、DOX誘導性レポーター遺伝子を安定に発現するHEK293T細胞を24ウェルプレート上に播種し、終濃度1μg/mL DOXで処理し、DOX添加から0、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、及び8時間後の細胞を各ウェルから回収した。転写不活性化中のmRNA分解ダイナミクスを分析するために、DOX誘導性レポーター遺伝子を安定に発現するHEK293細胞を24ウェルプレートに播種し、終濃度1μg/mL DOXで12時間処理し、次いで終濃度5μg/mL ActDで処理し、ActD添加の0、1、2、3、4、5、及び6時間後の細胞を各ウェルから回収した。
【0089】
次いで、細胞を溶解し、FastGene RNAプレミアムキット(Nippon Genetics社製)を用いてRNAを精製した。得られたRNAを逆転写し、One Step SYBR PrimeScript PLUS RT-PCRキット(TaKaRa社製)を用いて、CFX96システム(Bio-Rad社製)を用いたリアルタイムPCRによって定量した。逆転写及びPCR反応は、以下の条件で実施した:42℃で5分間、95℃で10秒間、続いて95℃で10秒間及び60℃で30秒間を50サイクル。
【0090】
アンプリコンの特異性は、製造者のプロトコールに従って解離曲線分析を行うことによって調べた。レポーターmRNAの発現レベルを分析するために、NLS-iRFPのコーディング配列を増幅するPCRプライマーセット(フォワードプライマー:5’-CCAATCCACATTCCAGGAGCTATC-3’(配列番号23)、リバースプライマー:5’-CTTTCGCATTGTGAAGCCGAC-3’(配列番号24))を使用した。Romanescoは、Romanesco配列内に複数のリピートがあるためである。また、DOX処理したサンプルについては、PGK1遺伝子をインターナルコントロールとして選択した。PGK1の発現レベルはDOX処理によって影響を受けないためであり、また、PGK1増幅のためのプライマーセット(フォワードプライマー:5’-TGGACGTTAAAGGGAAGCGGG-3’(配列番号25)、リバースプライマー:5’-GGCTCATAAGGACTACCGACTTGGC-3’(配列番号26))の増幅効率が、NLS-iRFPのためのプライマーセットの増幅効率に匹敵したためである(データは図示せず。)。一方で、ActDで処理したサンプルでは、18SリボソームRNAをインターナルコントロールとして選択した。18SリボソームRNAの発現レベルがActD処理によって影響を受けないためであり、また、18SリボソームRNA増幅のためのプライマーセット(フォワードプライマー:5’-CGGCTACCACATCCAAGGAAG-3’(配列番号27)、リバースプライマー:5’-TTTTTCGTCACTACCTCCCCG-3’(配列番号28))の増幅効率が、NLS-iRFPのためのプライマーセットの増幅効率に匹敵したためである(データは図示せず)。
【0091】
実験は、3回の生物学的反復で行い、各生物学的反復について、RT-qPCR分析は、各プライマーセットについて3回実施した。ΔΔCq法を用いて、レポーターmRNAの相対発現レベルを決定した。得られた値は、DOX添加から8時間後の平均発現量がDOX処理サンプルで1となり、ActD添加後0時間での平均発現量がActD処理サンプルで1となるように、さらに正規化した。
【0092】
図4に、Dox処理後における、Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光(それぞれ、緑色及びマゼンタ系)の定量結果と、RT-qPCRによって測定された、Romanescoが付加されたNLS-iRFPのmRNAの発現量(黒色点)の定量結果を示す。Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光の定量は、n=66細胞の結果である。RT-qPCRについては、3回の生物学的反復で行った。図中、ドット領域及び斜線領域は平均±s.e.mを表す。Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光ダイナミクスと、mRNA発現量のダイナミクスとを比較したところ、Romanesco蛍光シグナルは、Romanescoの蛍光ダイナミクスは、mRNA合成のダイナミクスに忠実に従っており、DOX添加直後に急速に増加していた。これに対して、NLS-iRFPの蛍光シグナルは遅れていた。
【0093】
図5に、ActD処理後における、Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光の定量結果と、RT-qPCRによって測定されたRomanescoが付加されたNLS-iRFPのmRNAの発現量(黒色点)の定量結果を示す。図中、ドット領域及び斜線領域は平均±s.e.mを表す。Romanesco及びNLS-iRFPの蛍光の定量は、n=67細胞の結果である。RT-qPCRについては、3回の生物学的反復で行った。転写がActD処理によって不活性化された場合、NLS-iRFP蛍光シグナルは持続したが、Romanesco蛍光シグナルは、mRNA分解ダイナミクスを反映して急激に減少した。これらの結果は、Romanescoの蛍光をモニタリングすることで、生細胞内のmRNA合成及び分解の定量的測定が可能であることが明らかとなった。
【0094】
<mRNAコピー数とRomanescoシグナルとの間の直線性の単一細胞分析>
Romanescoシグナルが、各単一細胞のmRNAのコピー数を直線的に反映するかどうかをさらに調べた。具体的には、Romanescoを発現する細胞を、最初にRomanescoシグナルを決定するために従来のエピ蛍光顕微鏡法により画像化し、次いで、単一細胞RT-qPCR実験に供して、各単一細胞について発現されたmRNA分子のコピー数を分析した。結果を図6に示す。図中、破線は、検出限界に対応するバックグラウンドシグナルの平均±3SDを表す(n=63細胞)。実線は、対数変換されたデータに対する線形回帰を表す。この結果、10~3×10分子(R=0.87)の範囲で、mRNAコピー数とRomanescoシグナルとの間に高い線形相関が確認された。
【0095】
<時間依存型FLIM>
前記単一細胞分析はまた、5.4×10未満のRomanesco分子を有する細胞は、従来の顕微鏡によって視覚化することができないことを明らかにした。そこで、時間依存型FLIMがRomanesco発現をより敏感に視覚化できるかどうかを見るために、低コピー数のRomanescoを有する細胞を、蛍光シグナルを比較するために従来の落射蛍光顕微鏡法及び時間ゲートFLIMの両方で観察した。
【0096】
各細胞の落射蛍光顕微鏡法により得られた蛍光シグナルと、時間ゲートFLIMにより得られた蛍光シグナルの結果を図7に示す。各蛍光シグナルは、各顕微鏡(破線)の検出限界に対応する蛍光強度が1になるように、値を正規化した。図7に示すように、従来の顕微鏡法で検出限界以下の蛍光を示した細胞の大部分は、時間依存型FLIMにおいて有意な蛍光を示した(17細胞中、13細胞)。すなわち、時間依存型FLIMは、検出感度を大幅に向上させ、内因性遺伝子のmRNAレベルに近い1.4×10分子を発現する細胞は首尾よく視覚化された。これらの結果から、Romanescoが、広範囲の発現レベルにおいて特定のmRNAの細胞内含有量を定量的に求めることができ、転写活性のダイナミクスの解析に使用できることが明らかである。
【0097】
[実施例3]
実施例2において作製された、HEK293細胞にpT2-TRE3G-NLS-iRFP-RomanescoをトランスフェクトしたRomanesco発現細胞を、Dox及びDFHBI-1T存在下で培養し、当該細胞の発する蛍光シグナルを落射蛍光顕微鏡法により測定した。
【0098】
まず、当該Romanesco発現細胞を、4mMのL-グルタミン、10% FBS、1mM ピルビン酸ナトリウム、1% ペニシリン/ストレプトマイシン、及び20μM DFHBI-1Tを含有するD-MEM(フェノールレッドなし、和光純薬社製)中で培養した。終濃度1μg/mLのDOX(Clontech社製)を培地に添加して転写を誘導し、488nmレーザービーム(0.5μW)を間欠的に照射してRomanescoを励起し、落射型の共焦点蛍光顕微鏡A1Rで、Romanesco発現細胞の蛍光画像を取得した。細胞へのレーザービーム照射は、20ミリ秒間の露光の後8秒間遮光するサイクルを8回繰り返すプログラムで行った。1視野当たり、20ミリ秒間の露光中、10ミリ秒間ごとに1枚の蛍光画像を連続して撮像した。
【0099】
各サイクルにおいて、最初の10ミリ秒間で撮像されたDFHBI-1Tが発光状態(on state)にある蛍光画像、その後の10ミリ秒間で撮像されたDFHBI-1Tが非発光状態(off state)にある蛍光画像とした。一視野当たり得られた8枚の発光状態の蛍光画像を平均化したものを当該視野の発光状態の蛍光画像とした。同様に、一視野当たり得られた8枚の非発光状態の蛍光画像を平均化したものを当該視野の非発光状態の蛍光画像とした。各視野について、発光状態の蛍光画像の各画素の輝度値から、非発光状態の蛍光画像中の対応する画素の輝度値を差し引いた蛍光画像を、当該視野のDFHBI-1T蛍光画像とした。
【0100】
発光状態の蛍光画像を図8(A)に、DFHBI-1T蛍光画像を図8(B)に、それぞれ示す。図8(B)では、図8(A)中のRomanesco非発現細胞に由来する背景蛍光(矢印)や、Romanesco発現細胞における自家蛍光(矢頭)が消失しており、S/N比の高いイメージングが実現された。
【0101】
[実施例4]
実施例2において作製された、HEK293細胞にpT2-TRE3G-NLS-iRFP-RomanescoをトランスフェクトしたRomanesco発現細胞を用いて、G4 resolvaseの活性を有するタンパク質のスクリーニングを行った。G4 resolvaseの候補タンパク質として、3種のタンパク質(A、B、C)を用いた。
【0102】
具体的には、Romanesco発現細胞に、候補タンパク質遺伝子の発現用プラスミドをトランスフェクトして発現させ、DFHBI-1Tの存在下で、当該候補タンパク質を発現させたNLS-iRFP陽性細胞の緑色蛍光強度を測定した。プラスミドのトランスフェクト、各細胞の緑色蛍光強度の測定は、実施例1と同様にして行った。対照として、候補タンパク質を過剰発現していないRomanesco発現細胞についても同様にしてNLS-iRFP陽性細胞の緑色蛍光強度を測定した。
【0103】
各NLS-iRFP陽性細胞の緑色蛍光強度の測定結果を図9に示す。図中、「A」、「B」、及び「C」は、それぞれ、Aタンパク質、Bタンパク質、及びCタンパク質を発現させたNLS-iRFP陽性細胞の蛍光強度(A.U.)の測定結果を示す。Aタンパク質とCタンパク質を過剰発現させた細胞では、対照の細胞よりも蛍光強度が小さく、これらのタンパク質は、G4 resolvase活性を有するタンパク質であると選抜された。
【0104】
一方で、Bタンパク質を過剰発現させた細胞では、対照の細胞よりも蛍光強度が大きく、当該タンパク質は、G4Romanescoの輝度を向上させる活性、すなわち、G-quadruplex構造の形成を促す活性を持つタンパク質として同定された。
【0105】
なお、G-quadruplex構造を取ることができるRNAを溶解させた溶液の円偏光二色性を計測することによって、G-quadruplex構造の形成の程度を測定することができる。Aタンパク質とCタンパク質は、G-quadruplex構造を取ることができるRNAをin vitro transcriptionにて合成した反応溶液に添加した場合に、円偏光二色性が変化し、G-quadruplex構造がほどかれることが報告されている、すなわち、少なくともin vitroではG4 resolvase活性を有することが報告されているタンパク質である。細胞を用いた本発明におけるスクリーニング方法によって、Aタンパク質とCタンパク質が、細胞内でもG4 resolvase活性を有することが確認された。
【0106】
[実施例5]
実施例1で作製したRomanescoを用いて、標的遺伝子の転写産物の発現動態を調べた。
【0107】
具体的には、まず、DT40細胞のCD83遺伝子の3’UTRにRomanescoがノックインされたCD83標識細胞を作製した。当該CD83標識細胞のCD83遺伝子ローカスの模式図を図10Aに示す。
【0108】
CD83標識細胞を培養するDFHBI-1T含有培地に、CD83の表面抗原を添加して刺激することによって、CD83の発現を誘導し、その転写産物の発現動態をDFHBI-1Tの蛍光強度変化として観察した。各細胞の蛍光強度は、実施例2と同様に落射蛍光顕微鏡法により測定した。CD83の表面抗原刺激前(添加0分目)と、刺激から1分ごとに360分間、各細胞の蛍光画像を取得した。ある細胞について取得された37枚の蛍光画像を図10Bに示す。図中、上段(図中、「Raw」)が一細胞の蛍光シグナルを経時的に検出した結果であり、下段(図中、「Masked」)は、細胞領域を囲うROIを設定し、ROI内の蛍光強度を平均化した結果を示す。標的遺伝子をRomanescoで標識することにより、一細胞レベルで標的遺伝子の転写動態を連続的に観測できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
【配列表】
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