(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】薬剤包装装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
(21)【出願番号】P 2023115795
(22)【出願日】2023-07-14
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆行
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/213319(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B41J 5/30
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シートを送る送り機構と、前記長尺シートをシールして、薬剤が内部に収容される包装袋を形成するシール装置と、識別子付与手段と、を備え、
前記長尺シートは、前記包装袋の内面を構成する第一面を備え、
前記識別子付与手段は、前記長尺シートの前記第一面にインクを付して、包装される薬剤に関して識別するための識別子を形成する
薬剤包装装置。
【請求項2】
前記識別子付与手段は、前記包装袋の幅方向における一端部寄りの位置に前記識別子が位置するように、前記長尺シートに前記識別子を形成する
請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項3】
前記シール装置は、前記長尺シートをヒートシールするように構成され、
前記長尺シートは、前記シール装置によってヒートシールされるシール領域を備え、
前記識別子付与手段は、前記シール領域の前記第一面に前記識別子を形成する
請求項1又は2に記載の薬剤包装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を包装袋に包装する薬剤包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記薬剤包装装置として、特許文献1に記載のような薬剤分包機が知られている。薬剤分包機は、錠剤を包装する包装袋を構成する分包帯の送り経路に臨ませて配置された線引装置を備える。線引装置は、インクの色が異なる複数の着色用筆記具を保持できる筆記具保持機構を有し、送られる分包帯に、複数の着色用筆記具のうち、選択された1つの着色用筆記具の筆先部を当接させることができるように構成されている。
【0003】
上記薬剤分包機によれば、筆記具保持機構がインクの色が異なる複数の着色用筆記具を保持でき、送られる分包帯に選択された1つの着色用筆記具の筆先部を当接させるので、色分けして分包帯に線引きをすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の薬剤分包機では、包装帯のうち、包装袋の外面を構成する部分に識別子として着色用筆記具のインクが付されるので、例えば、包装袋が他の包装袋に接触した場合に、インクが他の包装袋に写るおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、包装袋に付されたインクが他の包装袋に写ることを抑制できる薬剤包装装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤包装装置は、長尺シートを送る送り機構と、前記長尺シートをシールして、薬剤が内部に収容される包装袋を形成するシール装置と、識別子付与手段と、を備え、前記長尺シートは、前記包装袋の内面を構成する第一面を備え、前記識別子付与手段は、前記長尺シートの前記第一面にインクを付して、包装される薬剤に関して識別するための識別子を形成するように構成される。
【0008】
上記構成の薬剤包装装置によれば、包装袋の内面となる第一面にインクが付されるので、包装袋のうちインクが付された部分が他の包装袋に接触することを抑制できる。よって、包装袋に付されたインクが他の包装袋に写ることを抑制できる。
【0009】
本発明の薬剤包装装置において、前記識別子付与手段は、前記包装袋の幅方向における一端部寄りの位置に前記識別子が位置するように、前記長尺シートに前記識別子を形成するように構成することもできる。
【0010】
上記構成の薬剤包装装置によれば、包装袋の幅方向における一端部寄りの位置に識別子が形成されるので、例えば、包装袋を斜め方向から見た場合に、識別子が幅方向の中央に形成される場合に比べて識別子を認識しやすい。
【0011】
本発明の薬剤包装装置において、前記シール装置は、前記長尺シートをヒートシールするように構成され、前記長尺シートは、前記シール装置によってヒートシールされるシール領域を備え、前記識別子付与手段は、前記シール領域の前記第一面に前記識別子を形成するように構成することもできる。
【0012】
上記構成の薬剤包装装置によれば、インクを付された部分がヒートシールされるので、インクが他の部分に付着することを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の薬剤包装装置は、包装袋に付されたインクが他の包装袋に写ることを抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる薬剤包装装置を備える薬剤分包機の概要を示す図である。
【
図2】同薬剤包装装置の印刷装置による長尺シートへの印刷を示す図である。
【
図3】同薬剤包装装置の識別子付与手段による長尺シートへの識別子の付与を示す図である。
【
図4】同薬剤包装装置により形成された包装袋を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる薬剤包装装置3を備える薬剤分包機1について
図1乃至
図4を参照して説明する。説明の便宜のため、上下方向は
図1に記載の方向を基準に説明する。以下説明における薬剤分包機1の構成は、あくまでも例示であって、説明した形態に限定されず、種々の構成を採用できる。
【0016】
図1に示すように、薬剤分包機1は、薬剤を供給する薬剤供給装置2と、薬剤供給装置2が供給した薬剤を一服用分ごとに包装する薬剤包装装置3と、薬剤供給装置2および薬剤包装装置3を制御する制御部と、を備える。本実施形態で、薬剤供給装置2は薬剤包装装置3の上方に配置されており、薬剤供給装置2が供給した薬剤が重力により落下して薬剤包装装置3に供給されるように構成されている。また、薬剤分包機1は、外部(例えば、調剤システムのコンピュータ)から入力される、薬剤の処方に関する処方データに基づいて薬剤を分包する。
【0017】
薬剤供給装置2は、処方データに対応した薬剤を供給する装置である。具体的に、薬剤供給装置2は、薬剤が収容される収容体(図示しない)を複数備え、収容体ごとに異なる種類の薬剤が収容されている。本実施形態の薬剤供給装置2は、処方データが入力されると、処方データに対応した薬剤を収容体から払い出し、払い出した薬剤を薬剤包装装置3に落下させるように構成されている。また、薬剤供給装置2は、作業者(例えば薬剤師)により、例えば収容体に収容されていない種類の薬剤が投入される投入領域を有し、投入領域に投入された薬剤を一包分ごとに払い出すことができるように構成されている。本実施形態の薬剤供給装置2は、薬剤として錠剤を供給するように構成されているが、これに限定されず、錠剤及び散剤を供給する構成や、散剤のみを供給する構成とすることもできる。
【0018】
薬剤包装装置3は、包装袋7(
図4参照)を形成するとともに、薬剤供給装置2から供給された薬剤を包装袋7に収容する装置である。本実施形態の薬剤包装装置3は、2枚の長尺シート4を重ねて包装袋7を形成するように構成されている。具体的に、薬剤包装装置3は、長尺シート4を送る送り機構31と、ホッパ32と、シール装置33と、を備える。また、薬剤包装装置3は、印刷装置5と、識別子付与手段6と、を備える。
【0019】
長尺シート4は、幅方向寸法が略一定で、長さ方向に延びる長尺で一枚物のシート体である。長尺シート4は、第一面4aと、第一面4aとは反対側の面である第二面4bと、を備える。また、長尺シート4は、熱溶着性があり、少なくとも、ヒートシールされた部分が透明又は半透明となるシートであり、具体的には、グラシン紙やセロファンに、ポリエチレンをラミネートしたものであり、全体が透明又は半透明のシートである。
【0020】
このような長尺シート4は、芯体に長尺シート4を巻回した巻回体45として構成されており、芯体周りでの巻回体45の回動に伴って、巻回体45の最外周に位置する長尺シート4を引き出すことができるように構成されている。また、本実施形態で、長尺シート4は、シール装置33を挟んだ一方側と他方側にそれぞれ配置されている。以下説明において、一方側(図示右側)に配置された長尺シート4を第一の長尺シート41として、他方側(図示左側)に配置された長尺シート4を第二の長尺シート42として説明する。
【0021】
第一面4aは、包装袋7の内面となる面であり、収容される薬剤が接触する面である。また、第一面4aは、識別子付与手段6のインクを付すことができるように構成された面である。本実施形態で第一面4aには、ポリエチレンがラミネートされている。
【0022】
第二面4bは、包装袋7の外面となる面である。また、第二面4bは、印刷装置5で印刷可能に構成されている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、長尺シート4は、長さ方向における所定長さ分で一包分(1つの包装袋7を構成する部分)となる。一包分の領域には、薬剤が収容される収容領域Bと、ヒートシールされるシール領域Aと、が形成されている。本実施形態では、一包分の領域の長さ方向の両端部及び幅方向の両端部がシール領域Aであり、シール領域Aに囲まれた領域が収容領域Bである。なお、
図2は、第一の長尺シート41を下側から見た状態を示し、
図3は、第二の長尺シート42を上側から見た状態を示す。そのため、
図2の紙面上側及び
図3の紙面下側は、薬剤包装装置3の手前側(
図1の紙面を貫通する方向における手前側)に対応し、
図2の紙面下側及び
図3の紙面上側は、薬剤包装装置3の奥側(
図1の紙面を貫通する方向における奥側)に対応する。
【0024】
図1に示すように、送り機構31は、シート供給部31aと、シート送り部31bと、を備える。シート供給部31aは、長尺シート4を供給する。シート供給部31aは、巻回体45が装着される装着部311と、巻回体45から引き出された長尺シート4をガイドする複数のローラ312と、を備える。シート送り部31bは、シート供給部31aから供給される長尺シート4を送る。シート送り部31bは、シール装置33よりも下流側(本実施形態ではシール装置33の下側)に配置されている。
【0025】
本実施形態で、シート供給部31aは一対設けられており、具体的には、第一の長尺シート41を供給する第一シート供給部31Aと、第二の長尺シート42を供給する第二シート供給部31Bと、を備える。第一シート供給部31Aは、シール装置33に対して一方側(図示右側)に配置されており、第二シート供給部31Bは、シール装置33に対して他方側(図示左側)に配置されている。
【0026】
巻回体45から引き出された長尺シート4は、途中、水平方向に送られ、その後、シール装置33の上まで到達すると、シール装置33に向けて下方に送られる。長尺シート4は、水平方向に送られる間は、第一面4aが上側に、第二面4bが下側に位置する。また、送り方向が水平方向から下方に変わってからは、第一の長尺シート41の第一面4aと第二の長尺シート42の第一面4aとが対向する状態となる。
【0027】
図1に示すように、印刷装置5は、第一の長尺シート41の搬送経路の途中に配置されている。即ち、印刷装置5は、第一の長尺シート41の送り方向で、シール装置33よりも上流側に配置されている。また、印刷装置5は、第一の長尺シート41の搬送経路のうち、第一の長尺シート41が水平方向に送られる部分に配置されている。
【0028】
印刷装置5は、第一の長尺シート41の第二面4bに印刷をする。印刷装置5は、第二面4bにインクを付して、第二面4bに印刷をすることができるように構成されている。本実施形態の印刷装置5は、インクリボンに塗布されている熱溶性のインクをサーマルヘッドの熱により溶かして第二面4b転写することで印刷を行う、いわゆるサーマルプリンタ(溶融型熱転写プリンタ)である。印刷装置5は、熱溶性のインクで印刷をするので、第二面4bに付着したインクは、すぐに冷えて再固化する。よって、第二面4bに付されたインクが他の部分に転写しづらくなる。印刷装置5は、第一の長尺シート41が止まっているとき(シート送り部31bによって送られていないとき)に印刷を行ってもよく、あるいは、第一の長尺シート41がシート送り部31bによって下流側に送られているときに印刷を行ってもよい。なお、印刷装置5は、第二面4bに対してインクを非接触で付することができるように構成することもできる。具体的に印刷装置5は、インクを飛ばして第一の長尺シート41に付着させることで印刷ができるように構成された、いわゆるインクジェットプリンタとして構成することもできる。このような構成であっても、第一の長尺シート41に付着するインクの量が少ないので、インクはすぐに乾燥する。よって、第二面4bに付されたインクが他の部分に転写することを抑制できる。
【0029】
図2に示すように、印刷装置5は、処方情報に基づいて、収容された薬剤を識別するための文字情報5aを印刷する。具体的に、印刷装置5は、収容される薬剤を示す情報(例えば薬剤名)と、収容される薬剤の服用時期と、収容される薬剤の服用者(例えば氏名)と、を印刷する。また、印刷装置5は、収容領域B(ヒートシールされない領域)に印刷を行う。さらに、本実施形態の印刷装置5は、一包分(1つの包装袋7の収容領域B)ごとに印刷する。
【0030】
図1に示すように、識別子付与手段6は、第二の長尺シート42の搬送経路の途中に配置されている。即ち、識別子付与手段6は、第二の長尺シート42の送り方向で、シール装置33よりも上流側に配置されている。また、識別子付与手段6は、第二の長尺シート42の搬送経路のうち、第二の長尺シート42が水平方向に送られる部分に配置されている。
【0031】
識別子付与手段6は、第二の長尺シート42の第一面4aに識別子6aを付与する。識別子付与手段6は、第一面4aにインクを付して、第一面4aに識別子6aを付与することができるように構成されている。本実施形態の識別子付与手段6は、第一面4aに対して接触してインクを付与することができるように構成されている。
【0032】
具体的に識別子付与手段6は、ペン部を備える。ペン部は、接した長尺シート4にインクを付着させることができるペン先を有する。ペン先は、接した対象物(例えば第二の長尺シート42)に対してインクを転写可能なように構成されている。本実施形態のペン部は、マーカーペンなどの筆記具と同様の構成であるが、例えば、インクを転写可能なローラとして構成することもできる。
【0033】
識別子付与手段6は、複数のペン部を保持可能に構成されている。また、識別子付与手段6は、保持する複数のペン部のうち、一又は複数のペン部のペン先を第一面4aに当接されるように構成されている。本実施形態の識別子付与手段6は、第一面4aの上方(第二の長尺シート42における第一面4a側)に配置されており、ペン部のペン先が第一面4aに当接する状態と第一面4aから離れた状態とを切り替え可能である。
【0034】
本実施形態の識別子付与手段6は、インクの色が異なる複数のペン部を保持する。識別子付与手段6は、複数のペン部のペン先を、選択的に第一面4aに当接することができるように構成されている。また、識別子付与手段6は、処方情報に基づいて、収容された薬剤を識別するための識別子6aを付与する。識別子付与手段6は、識別子6aとしての線を付与するように構成されており、具体的には、色や線種(直線や破線等)の異なる線を識別子6aとして付与する。本実施形態の識別子付与手段6は、処方情報に基づいて、収容される薬剤の服用時期や、収容される薬剤の服用者に対応した色の線を識別子6aとして付与する。また、識別子付与手段6は、第二の長尺シート42がシート送り部31bによって下流側に送られる際に第一面4aに当接することで、第二の長尺シート42に対して送り方向に相対移動して、第一面4aに識別子6aとしての線を形成する。即ち、識別子6aとしての線は、送り方向に延びる線(直線)である。ここで、識別子6aを形成するインクは、他の部分に転写されなくなる程度に乾くまでにしばらく時間を要し、具体的には、識別子6aが形成されてから、該識別子6aが形成された部分がシール装置33を通過するまでの時間よりも長い時間を要する。
【0035】
図3に示すように、識別子付与手段6は、第一面4aの幅方向で、中央よりも一端部寄りの位置に識別子6aを形成する。本実施形態の識別子付与手段6は、シール領域Aに識別子6aを付与し、具体的には、収容領域Bよりも幅方向で外側の部分に、第二の長尺シート42の長さ方向に延びる識別子6aとしての線を形成する。本実施形態で識別子付与手段6は、識別子6aとして、第二の長尺シート42の長さ方向で収容領域Bよりも一方側から他方側まで延びる線を付与する。また、識別子付与手段6は、一包分(1つの包装袋7のシール領域A)ごとに識別子6aを付与するように構成されており、識別子6aとしての線を、長さ方向で一包分となる範囲の両端よりも内側に位置するように形成する。
【0036】
図1に示すように、印刷装置5は、第一の長尺シート41の送り方向でシール装置33よりも上流側に配置され、識別子付与手段6は、第二の長尺シート42の送り方向でシール装置33よりも上流側に配置されるので、印刷装置5及び識別子付与手段6が、第一の長尺シート41及び第二の長尺シート42のいずれか一方の送り方向に並んで配置される場合に比べて、印刷装置5及び識別子付与手段6が互いに干渉することを抑制でき、印刷装置5及び識別子付与手段6の配置が容易である。第一の長尺シート41の送り方向における印刷装置5とシール装置33の距離は、第二の長尺シート42の送り方向における識別子付与手段6とシール装置33の距離と略同じであり、本実施形態では、シール装置33を基準に対称の配置である。また、印刷装置5及び識別子付与手段6は、それぞれ第一の長尺シート41及び第二の長尺シート42の送り方向に移動可能である。本実施形態で、印刷装置5と識別子付与手段6は、第一の長尺シート41及び第二の長尺シート42の送り方向において、それぞれのシール装置33までの距離が略同じになるように移動する。具体的には、制御部の制御によって、印刷装置5と識別子付与手段6が同じ距離だけ移動するように構成されている。
【0037】
ホッパ32は、薬剤供給装置2から供給された薬剤を受けて下方に排出するように構成されている。
【0038】
シール装置33は、2枚の長尺シート4の第一面4a同士を重ねてヒートシールすることで包装袋7を形成するように構成されている。シール装置33は、ホッパ32の下方に配置されている。
【0039】
以上のような構成の薬剤分包機1による薬剤の分包について説明する。
【0040】
まず、薬剤分包機1には、外部から処方データが入力される。処方データには、包装すべき薬剤の種類と数、包数、服用時期に関する情報や、服用者に関する情報などが含まれる。
【0041】
制御部は、一包分の薬剤の量などに基づいて、長さ方向における包装袋7の長さを決定する。このとき、制御部は、長さ方向における包装袋7の長さに応じて、印刷装置5を第一の長尺シート41の送り方向に移動させるとともに、識別子付与手段6を第二の長尺シート42の送り方向に移動させるよう制御する。そのため、包装袋7の長さが変わったとしても、包装袋7に対する印刷及び識別子6aの位置を合わせることができる。また、制御部は、第一の長尺シート41の送り方向における印刷装置5とシール装置33の距離と、第二の長尺シート42の送り方向における識別子付与手段6とシール装置33の距離とが略等しくなるように、印刷装置5及び識別子付与手段6を移動させるよう制御する。
【0042】
ここで、包装開始時点において印刷装置5及び識別子付与手段6とシール装置33の間に位置する長尺シート4は、印刷や識別子6aの形成ができないことが理由で薬剤を収容しない空包となる。本実施形態では、第一の長尺シート41の搬送経路の途中に印刷装置5が配置され、第二の長尺シート42の搬送経路の途中に識別子付与手段6が配置されるので、印刷装置5及び識別子付与手段6を第一の長尺シート41又は第二の長尺シート42の搬送経路の途中に両方配置する場合に比べて、印刷装置5の印刷位置及び識別子付与手段6の識別子6aを付与する位置とシール装置33との距離を短くできる分、無駄な空包を削減することができる。よって、包装袋7に対する印刷及び識別子6aの付与を効率よく行うことができる。
【0043】
次に、制御部は、送り機構31を動作させて、長尺シート4を送る。具体的に、制御部は、シート送り部31bを駆動させて、第一の長尺シート41及び第二の長尺シート42を一包分だけ長さ方向に送る。シート送り部31bは、長尺シート4を一包分だけ送ると、動作を停止する。さらに制御部は、シール装置33を動作させて、長尺シート4をヒートシールして包装袋7を形成する。
【0044】
制御部は、シート送り部31bにより長尺シート4を送る際に、印刷装置5を制御して、第一の長尺シート41の第二面4bに、収容する薬剤に関する文字情報5aを印刷させる。具体的には、印刷装置5を動作させてインクリボンから第二面4bにインクを転写する。
【0045】
また、制御部は、シート送り部31bにより長尺シート4を送る際に、識別子付与手段6を制御して、第二の長尺シート42の第一面4aに、収容する薬剤に関して識別するための識別子6aを付与する。具体的には、長尺シート4が送られる際に、ペン部のペン先を第二の長尺シート42の第一面4aに当接させる。本実施形態では、ペン先が第一面4aに当接した状態で、第二の長尺シート42が送られることで、第二の長尺シート42に識別子6aとしての線が形成される。
【0046】
以上の工程を繰り返して、全包分の印刷及び識別子6aの付与がなされる。
【0047】
また、送り機構31による送り動作により、印刷装置5に印刷された領域及び識別子6aが付与された領域がシール装置33まで到達すると、薬剤供給装置2から供給された、処方データに対応した薬剤が、ホッパ32から、長尺シート4に投入される。処方データに対応した薬剤は、第一の長尺シート41と第二の長尺シート42との間に投入される。第一の長尺シート41と第二の長尺シート42の第一面4a同士が重ね合わせられて、シールされることで、薬剤を収容した包装袋7が形成される。ここで、印刷装置5からシール装置33までの距離と識別子付与手段6からシール装置33までの距離が略等しいので、同じタイミングで文字情報5aを印刷した部分と識別子6aを付与した部分をシールして包装袋7を形成できる。その後、上記工程を繰り返して、全包分のシール及び薬剤の投入がなされる。
【0048】
図4に示すように、包装袋7には、シール領域Aの内面に識別子6aが付されるとともに、収容領域Bの外面に文字情報5aが印刷された状態となっている。よって、文字情報5aと識別子6aの両方を確認することができる。
【0049】
ここで、識別子6aを形成するインクが包装袋7の内面に付されているので、乾いていないインクが他の包装袋7に接したり、薬剤包装装置3の一部に接したりして、他の包装袋7にインクが写ることを抑制できる。特に、本実施形態のように、服用時期などで色分けした識別子6aを形成する場合には、他の包装袋7にインクが写ることで、使用者や服用者が薬剤を誤って認識してしまう恐れがあるため、インク移りの抑制は有利である。
【0050】
また、識別子6aはシール領域Aに付与されているので、シール装置33は、識別子6aが付与された部分をヒートシールすることになる。しかしながら、識別子6aは、第一面4a(包装袋7の内面)に形成されているので、シール装置33が識別子6aを形成するインクに直接接触しない。よって、インクがシール装置33に付着することを抑制しつつも、シール領域Aに識別子6aを形成できる。しかも、包装袋7の内面のうちシール領域Aに識別子6aが付与されているので、インクが薬剤に付着することを抑制できる。なお、インクがシール装置33に付着すると、シール不良の原因や、シール装置33を介して他の包装袋7にインクが写る原因となる。
【0051】
さらに、識別子6aは、包装袋7の幅方向の一方に寄った位置に形成されているので、例えば、薬剤師や患者などが包装袋7を斜め方向から見た場合に識別子6aを認識しやすい。したがって複数の包装袋7が重なっていても、その状態のまま、あるいは、包装袋7を互いに少しずらすだけで、識別子6aを認識することができる。なお、識別子6aを包装袋7の幅方向の端縁に形成することもできる。このような構成であれば、より識別子6aを認識しやすくなる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0053】
例えば、薬剤包装装置3が薬剤分包機1の一部として構成される場合について説明したが、このような構成に限らず、薬剤包装装置3のみで構成されていてもよい。このような構成の場合には、外部の装置や作業者が薬剤を薬剤包装装置3に投入する構成とすることができる。
【0054】
また、薬剤包装装置3は、印刷装置5と識別子付与手段6を両方備える場合について説明したが、このような構成に限らず、識別子付与手段6のみを備える構成とすることもできる。
【0055】
さらに、薬剤包装装置3は、2枚の長尺シート4をシールして包装袋7を形成する場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、1枚の長尺シート4を、幅方向の中途部分で折り返した半折シートとし、半折シートを三方シールして包装袋7を構成することもできる。このような構成を採用する場合であっても、シール前であれば、第一面4aに識別子6aを形成することができる。また、シールされる領域に識別子6aを形成することで、インクが他の包装袋7に写ることを抑制できる。
【0056】
また、識別子付与手段6は、識別子6aとして長さ方向に沿う線を形成する場合について説明したが、このような構成に限らず、種々の態様の識別子6aを形成する構成とすることができる。例えば、識別子付与手段6をスタンプとして構成し、識別子6aとしての図形を形成することもできる。また、識別子6aを線として構成する場合であっても、例えば、幅方向に延びるように構成したり、長さ方向に対して斜めに延びるように構成したりすることもできる、つまり、識別子6aは、処方データに基づいて分けられた複数のグループのうち、その包装袋7に収容された薬剤がどのグループに属するかを示す情報である。
【0057】
さらに、識別子付与手段6は、一包分ごとに識別子6aとしての線を引く場合について説明したが、このような構成に限らず、複数包にまたがるように線を引くよう構成することもできる。このような構成の場合には、同じグループに属する包装袋7(例えば服用時期が同じ薬剤を収容する包装袋7)を識別しやすい。
【0058】
また、識別子付与手段6は第一面4aにインクを付し、印刷装置5は第二面4bに印刷をする場合について説明したが、このような構成に限らず、識別子付与手段6及び印刷装置5が第一面4aに識別子6aの形成と印刷をするように構成することもできる。印刷装置5が第一面4aに印刷した場合には、印刷装置5が第一面4aに付着させたインクが他の包装袋7に転写されることを抑制できる。例えば、印刷装置5が、食紅のような、人体に害のないインク(食用のインク)で第一面4aに印刷するように構成することができる。
【0059】
さらに、印刷装置5が第二面4bに印刷し、識別子付与手段6が第一面4aに識別子6aを形成する場合において、印刷装置5及び識別子付与手段6がいずれも第一の長尺シート41にインクを付す構成とすることもできる。
【0060】
また、印刷装置5及び識別子付与手段6は、処方データに基づいて印刷又は識別子6aの形成をする場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、印刷内容や、形成すべき識別子6aについて作業者が指示をし、該指示に基づいて印刷又は識別子6aの形成をする構成とすることもできる。
【0061】
さらに、長尺シート4のうち印刷がされる領域に、印刷内容を見えやすくするための下塗り(例えば、白色の着色)がされる構成とすることもできる。下塗りは、例えば、長尺シート4の長さ方向に沿う帯状に形成することができる。このような構成を採用する場合、長尺シート4を透明又は半透明とするとともに、識別子6aを、幅方向で下塗りが形成されていない部分に形成することで、包装袋7の表側及び裏側の両方から識別子6aを認識しやすくなる。
【0062】
また、長尺シート4を半透明に構成する場合において、例えば、長尺シート4の第一面4aをマット加工したものとすることもできる。このような構成の場合、シールにより、シール領域Aが透明となり、透明となった部分に識別子6aが形成されることで、識別子6aの視認性がよくなる。
【符号の説明】
【0063】
1…薬剤分包機、2…薬剤供給装置、3…薬剤包装装置、31…送り機構、31a…シート供給部、31b…シート送り部、31A…第一シート供給部、31B…第二シート供給部、311…装着部、312…ローラ、32…ホッパ、33…シール装置、4…長尺シート、4a…第一面、4b…第二面、41…第一の長尺シート、42…第二の長尺シート、45…巻回体、5…印刷装置、5a…文字情報、6…識別子付与手段、6a…識別子、7…包装袋、A…シール領域、B…収容領域
【要約】
【課題】包装袋に付されたインクが他の包装袋に写ることを抑制できる薬剤包装装置を提供する。
【解決手段】薬剤包装装置3は、長尺シート4を送る送り機構31と、長尺シートをシールして、薬剤が内部に収容される包装袋を形成するシール装置33と、識別子付与手段6と、を備え、長尺シートは、包装袋の内面を構成する第一面4aを備え、識別子付与手段は、長尺シートの第一面にインクを付して、包装される薬剤に関して識別するための識別子を形成するように構成されている。
【選択図】
図1