(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヒータプレートアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20240927BHJP
F16L 59/06 20060101ALI20240927BHJP
F16L 59/08 20060101ALI20240927BHJP
H05B 3/30 20060101ALI20240927BHJP
A47J 37/06 20060101ALN20240927BHJP
H05B 3/68 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H05B3/20 310
F16L59/06
F16L59/08
H05B3/30
A47J37/06 306
H05B3/68
(21)【出願番号】P 2024540801
(86)(22)【出願日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2024014009
【審査請求日】2024-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514325642
【氏名又は名称】株式会社abien
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 遼
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3233768(JP,U)
【文献】特開2020-150991(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110623554(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0079468(KR,A)
【文献】特公昭49-7467(JP,B1)
【文献】特開2004-159880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0132895(US,A1)
【文献】米国特許第4237368(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
F16L 59/06
F16L 59/08
H05B 3/30
A47J 37/06
H05B 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が接触するプレートと、通電により発熱するフィルムヒータとが一体に構成されたヒータプレートアセンブリであって、
熱伝導性金属で形成され、被加熱物が接触する加熱面(21)、及び、前記加熱面の裏の面である組付面(24)を有するプレート(20)と、
前記プレートの前記組付面側に配置されているフィルムヒータ(33)と、
前記フィルムヒータを挟んで設けられ、前記フィルムヒータの両面を絶縁する2枚の絶縁シート(32、34)と、
前記フィルムヒータへの電源が接続される電源接続部(40)と、
熱伝導性金属で形成され、前記フィルムヒータに対し前記プレートとは反対側において前記フィルムヒータを覆い、前記フィルムヒータ側の面である保持面(51)と前記プレートの前記組付面との間に前記絶縁シートを介して前記フィルムヒータを保持し、前記保持面とは反対側の面である輻射面(53)から熱を輻射するヒータホルダ(50)と、
金属で形成され、前記ヒータホルダに対し前記プレートとは反対側において前記ヒータホルダを覆い、前記ヒータホルダの前記輻射面に対向する反射面(65)を有し、前記反射面と前記ヒータホルダの前記輻射面との間に空気室(66)を形成するプレートカバー(60)と、
を備えるヒータプレートアセンブリ。
【請求項2】
前記プレートの板厚は前記ヒータホルダの板厚よりも厚い請求項1に記載のヒータプレートアセンブリ。
【請求項3】
前記ヒータホルダは、前記フィルムヒータ及び前記絶縁シートの外周よりも外側に位置するホルダ鍔部(52)を有し、前記ホルダ鍔部は前記プレートの前記組付面に溶接されている請求項1または2に記載のヒータプレートアセンブリ。
【請求項4】
前記プレートカバーは、前記ヒータホルダの外周よりも外側に位置するカバー鍔部(62)を有し、前記カバー鍔部は、前記プレートの前記組付面において、前記ホルダ鍔部が溶接された内枠領域(25)の外側に位置する外枠領域(26)に溶接されている請求項3に記載のヒータプレートアセンブリ。
【請求項5】
前記電源接続部は、絶縁性材料で形成され、前記ヒータホルダのホルダ挿通穴(54)及び前記プレートカバーのカバー挿通穴(64)に挿通される筐体筒部(41)を有し、
前記筐体筒部の外周壁(43)に沿って、前記ホルダ挿通穴及び前記カバー挿通穴との隙間からの水の浸入を防止する防水リング(70)が設けられている請求項1または2に記載のヒータプレートアセンブリ。
【請求項6】
前記プレートカバーは、前記空気室の内圧が上昇したとき開弁し、内圧を外部に逃がす逆止弁(68)が設けられている請求項1または2に記載のヒータプレートアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータプレートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理用ホットプレート等として使用されるヒータプレートアセンブリが知られている。例えば特許文献1、2に開示された調理用ホットプレートは、表面プレートを上面に備えた調理プレート本体を備える。調理プレート本体は、表面プレートの下面側に通電により発熱するフィルムヒータと、フィルムヒータの下面側に配置された裏面プレートとを備える。裏面プレートは、フィルムヒータからの輻射熱を反射する。
【0003】
両面に絶縁シートが配置されたフィルムヒータは、厚さ調整用の押さえプレートと共に表面プレートと裏面プレートとの間に挟持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3232687号公報
【文献】実用新案登録第3233768号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1、2の調理用ホットプレートは、シーズヒータで広い空間を加熱する方式のホットプレートに比べ、フィルムヒータと表面プレートとの空間がないため、広い空間を温めることによる熱損失を低減できる。また、表面プレートの裏に広く均一に発熱するため、表面プレートの加熱面の温度ばらつきが抑えられる。
【0006】
しかし特許文献1、2の従来技術では、フィルムヒータを保持している裏面プレートが直接外部に露出しているため、裏面プレートから外部に熱が流出する。したがって、フィルムヒータの発熱により表面プレートを加熱する熱効率の向上に改善の余地がある。
【0007】
本開示の目的は、熱効率を向上させるヒータプレートアセンブリを提供することにある。
【0008】
本開示によるヒータプレートアセンブリは、被加熱物が接触するプレートと、通電により発熱するフィルムヒータとが一体に構成されている。このヒータプレートアセンブリは、プレートと、フィルムヒータと、2枚の絶縁シートと、電源接続部と、ヒータホルダと、プレートカバーと、を備える。
【0009】
プレートは、熱伝導性金属で形成され、被加熱物が接触する加熱面、及び、加熱面の裏の面である組付面を有する。なお、本開示のプレートは、特許文献1、2の「表面プレート」に相当する。
【0010】
フィルムヒータは、プレートの組付面側に配置されている。2枚の絶縁シートは、フィルムヒータを挟んで設けられ、フィルムヒータの両面を絶縁する。電源接続部は、フィルムヒータへの電源が接続される。
【0011】
ヒータホルダは、熱伝導性金属で形成され、フィルムヒータに対しプレートとは反対側においてフィルムヒータを覆う。ヒータホルダは、フィルムヒータ側の面である保持面とプレートの組付面との間に絶縁シートを介してフィルムヒータを保持し、保持面とは反対側の面である輻射面から熱を輻射する。
【0012】
プレートカバーは、金属で形成され、ヒータホルダに対しプレートとは反対側においてヒータホルダを覆う。プレートカバーは、ヒータホルダの輻射面に対向する反射面を有し、反射面とヒータホルダの輻射面との間に空気室を形成する。
【0013】
本開示のヒータプレートアセンブリでは、特許文献1、2の「裏面プレート」に対し、ヒータホルダ及びプレートカバーの二重構造により間に空気室を形成する。ヒータホルダの輻射面が直接外部に露出しておらず、空気室の内部の空気層が断熱層として機能する。また、プレートカバーの反射面が輻射熱を反射するため、プレート側に熱量を効率的に移動させることができる。したがって、フィルムヒータの発熱によりプレートを加熱する熱効率が向上する。
【0014】
好ましくは、プレートの板厚はヒータホルダの板厚よりも厚い。これにより、フィルムヒータで発生した熱量は、熱容量が相対的に大きいプレートにより多く伝わるため、プレートを加熱する熱効率がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、一実施形態のヒータプレートアセンブリが用いられる加熱調理器の図であり、
【
図2】
図2は、一実施形態のヒータプレートアセンブリの平面図であり、
【
図3】
図3は、一実施形態のヒータプレートアセンブリの底面図であり、
【
図4】
図4は、一実施形態のヒータプレートアセンブリを底面側から視た斜視図であり、
【
図5】
図5は、一実施形態のヒータプレートアセンブリの正面図であり、
【
図6】
図6は、一実施形態のヒータプレートアセンブリの模式分解図であり、
【
図7】
図7は、一実施形態のヒータプレートアセンブリの模式断面図であり、
【
図9】
図9は、比較例のヒータプレートアセンブリの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(一実施形態)
一実施形態によるヒータプレートアセンブリを図面に基づき説明する。ヒータプレートアセンブリは、プレートに接触した被加熱物に伝熱する加熱器において、プレートと、通電により発熱するフィルムヒータとが一体に構成されている。例えば本実施形態のヒータプレートアセンブリは、被加熱物である食品を加熱調理する加熱調理器に用いられる。
【0017】
図1に加熱調理器90の一例を示す。この加熱調理器90は、ボトムケース92に支持されたベース91とカバー93との間に食パン等の被加熱物を挟んで、上下両面から加熱するものである。カバー93はヒンジ部98を支点として回転し、ベース91に対して開閉可能である。ベース91の上面、及び、カバー93の下面にヒータプレートアセンブリ100が取り付けられている。
【0018】
加熱調理器90に取り付けられた状態では、ヒータプレートアセンブリ100の構成要素のうちプレート20の加熱面21が外部に露出しており、それ以外の要素はプレート20の奥に隠れている。この例では、ベース91側のヒータプレートアセンブリ100は、そのまま持ち上げて取り外し可能である。カバー93側のヒータプレートアセンブリ100は、プレート爪28の係合を解除して取り外し可能である。使用者は、ヒータプレートアセンブリ100を取り外して水洗いすることができる。
【0019】
図2~
図8を参照し、一実施形態のヒータプレートアセンブリ100の構成について説明する。
図2~
図5に外観図を示す。
図2及び
図3は、それぞれ
図4のII方向、III方向矢視図に相当し、
図5は
図3のV方向矢視図に相当する。
図6に模式分解図を示す。
図7に、中心軸Oに対して片側の模式断面図を示し、
図8に
図7のVIII部拡大図を示す。模式分解図及び模式断面図では、特に厚さの薄い部品について厚さ寸法を誇張して図示する。
【0020】
まず
図2~
図5を参照し、外観構造を説明する。本実施形態のヒータプレートアセンブリ100は、加熱調理器90の前後方向に対応する長辺、及び、加熱調理器90の左右方向に対応する短辺を有する略長方形の板状を呈する。一方の面にはプレート20の加熱面21が現れており、他方の面にはプレートカバー60のカバー裏面61が現れている。
【0021】
プレート20の外周には加熱面21を囲んで立ち上がるプレート鍔部22が形成されている。プレート20の各短辺にはプレート爪28が設けられている。プレートカバー60は、プレート20との接合面から数mm程度の高さを有している。この高さによって、後述する内部の空気室66(
図7参照)が確保される。カバー裏面61には、円形及び円弧状の補強リブ63が形成されている。また、プレートカバー60の一角に、空気室66の内圧を逃がす逆止弁68が設けられている。
【0022】
プレートカバー60のカバー挿通穴64の内側には、フィルムヒータ33(
図6、
図7参照)への電源が接続される電源接続部40が設けられている。電源接続部40の筐体筒部41は、樹脂等の絶縁性材料で形成されている。本実施形態の電源接続部40は、プレートカバー60の中央部に円筒形状の筐体筒部41を有し、電源供給用及び温度検出用の複数の端子45が設けられている。
【0023】
次に
図6~
図8を参照し、ヒータプレートアセンブリ100の内部構造について説明する。ヒータプレートアセンブリ100の組付工程を想定し、カバー裏面61を上にし、加熱面21を下にした姿勢で図示する。以下の説明では、
図6~
図8の図示方向に準じて、上下を表す。
図6において下から順に、ヒータプレートアセンブリ100は、プレート20、プレート側絶縁シート32、フィルムヒータ33、ホルダ側絶縁シート34、電源接続部40、防水リング70、ヒータホルダ50及びプレートカバー60が組み付けられて構成される。先に電源接続部40及び防水リング70がヒータホルダ50に組み付けられてサブアセンブリが構成されてもよい。
【0024】
プレート20は、熱伝導性金属で形成され、被加熱物が接触する加熱面21、及び、加熱面21の裏の面である組付面24を有する。本実施形態では、プレート20の材料として、熱伝導性に加え溶接性及び軽量性の点からアルミニウムが採用されている。プレート20の組付面24側には、フィルムヒータ33及び2枚の絶縁シート32、34が重ねて配置されている。
図2、
図3に破線で示すように、フィルムヒータ33及び絶縁シート32、34の長方形状のサイズは同じである。
【0025】
フィルムヒータ33は、つづら折り型の導電経路が形成された薄膜状のヒータであり、サーキットヒータとも呼ばれる。フィルムヒータ33は、周囲の広い空間を加熱するシーズヒータに比べて熱損失が少なく、また、プレート20の加熱面21の全体を均一に加熱することができる。2枚の絶縁シート32、34は、フィルムヒータ33を挟んで設けられ、フィルムヒータ33の両面を絶縁する。
【0026】
電源接続部40は、ホルダ側絶縁シート34の上に載置され、絶縁性材料で形成された筐体筒部41を有する。筐体筒部41の外周壁43は、ヒータホルダ50のホルダ挿通穴54及びプレートカバー60のカバー挿通穴64に挿通される。ホルダ側絶縁シート34に対向する筐体筒部41の端部には、径外方向に突出するフランジ部42が設けられている。筐体筒部41の内側には、複数の端子45が立設された端子台座44が形成されている。本実施形態では、2本の電源供給用端子及び2本の温度検出用端子の4本の端子45が設けられている。
【0027】
図8に示すように、絶縁シート32、34には、電源接続部40とフィルムヒータ33とを電気的に接続させるための逃がし穴が形成されている。例えば逃がし穴の箇所では、スプリング47で付勢されたNTCサーミスタ等の温度センサ48がフィルムヒータ33の温度検出部に押し当てられる。
【0028】
次に、防水リング70の説明の前に、ヒータホルダ50及びプレートカバー60について説明する。ヒータホルダ50は、熱伝導性金属で形成され、フィルムヒータ33に対しプレート20とは反対側(図の上側)においてフィルムヒータ33を覆う。本実施形態では、ヒータホルダ50の材料として、プレート20と同様に、熱伝導性に加え溶接性及び軽量性の点からアルミニウムが採用されている。
【0029】
ヒータホルダ50のフィルムヒータ33側(図の下側)の面を保持面51といい、保持面51とは反対側(図の上側)の面を輻射面53という。ヒータホルダ50は、保持面51とプレート20の組付面24との間に絶縁シート32、34を介してフィルムヒータ33を保持する。詳しくは、フィルムヒータ33及び絶縁シート32、34には位置ずれ防止用の穴が形成されており、ヒータホルダ50の保持面51には、穴に対応する位置ずれ防止用の凸部が形成されている。
【0030】
ヒータホルダ50は、フィルムヒータ33及び絶縁シート32、34の外周よりも外側に位置するホルダ鍔部52を有する。ホルダ鍔部52は、保持面51からプレート20側に段差状に曲がるように形成されている。段差の高さは、フィルムヒータ33及び絶縁シート32、34を重ねた厚さに相当する。ホルダ鍔部52は、プレート20の組付面24において内枠領域25に溶接されている。ホルダ鍔部52がプレート20に溶接されることで、フィルムヒータ33及び絶縁シート32、34は、プレート20及びヒータホルダ50と一体に固定される。また、ヒータホルダ50の中央部には電源接続部40が挿通可能なホルダ挿通穴54が形成されている。
【0031】
電源接続部40の端子45への通電によりフィルムヒータ33が発熱すると、プレート20及びヒータホルダ50の両方に伝熱される。ここで、プレート20の板厚はヒータホルダ50の板厚よりも厚い。そのため、フィルムヒータで発生した熱量は、熱容量が相対的に大きいプレートにより多く伝わる。ヒータホルダ50に伝わった熱は、輻射面53からプレートカバー60に向けて輻射される。
【0032】
プレートカバー60は、金属で形成され、ヒータホルダ50に対しプレート20とは反対側(図の上側)においてヒータホルダ50を覆う。本実施形態では、プレートカバー60の材料として、輻射熱の反射性、溶接性及び軽量性の点からアルミニウムが採用されている。或いは、軽量性ではアルミニウムに劣るが、輻射熱の反射性の点から、特許文献1、2の従来技術で裏面プレートに用いられているSUS304が採用されてもよい。
【0033】
プレートカバー60においてヒータホルダ50の輻射面53に対向する面を反射面65といい、反射面65とは反対側(図の上側)の露出した面をカバー裏面61という。反射面65は、ヒータホルダ50の輻射面53からの輻射熱をヒータホルダ50に向けて反射し、カバー裏面61から外部への熱の流出を抑制する。プレートカバー60は、反射面65とヒータホルダ50の輻射面53との間に空気室66を形成する。空気室66の内部の空気は金属に比べて熱伝導率が小さいため、断熱層として機能する。
【0034】
ところで、空気室66の温度上昇によって内部の空気が膨張すると、内圧が上昇する。カバー裏面61に形成された補強リブ63は、カバー裏面61の変形を防止する。また、プレートカバー60の一角に、空気室66の内圧が上昇したとき開弁し、内圧を外部に逃がすベント機能を有する逆止弁68が設けられている。逆止弁68は、ゴム等の弾性材料で形成され、プレートカバー60に形成された逆止弁取付穴67に取り付けられている。
【0035】
内圧と外圧との圧力差が所定値以下のとき、逆止弁68の傘部は、弾性力によりカバー裏面61に当接している。内圧と外圧との圧力差が所定値を超えると、逆止弁取付穴67と逆止弁68との隙間を通る空気流の力により逆止弁68の傘部が押し上げられ、空気が外部に流出する。なお、後述するように空気室66に水が浸入する可能性もあり、その場合、水分が加熱されて発生した蒸気が、開弁した逆止弁68から外部に逃がされる。
【0036】
プレートカバー60は、ヒータホルダ50の外周よりも外側に位置するカバー鍔部62を有する。カバー鍔部62は、反射面65からプレート20側に段差状に曲がるように形成されている。段差の高さがほぼ空気室66の高さになる。カバー鍔部62は、プレート20の組付面24において、ホルダ鍔部52が溶接された内枠領域25の外側に位置する外枠領域26に溶接されている。また、プレートカバー60の中央部には電源接続部40が挿通可能なカバー挿通穴64が形成されている。
【0037】
防水リング70は、例えばシリコーンゴム等で形成され、筐体筒部41の外周壁43に沿って設けられている。防水リング70の下端は、筐体筒部41のフランジ部42に対向する。防水リング70は、筐体筒部41の外周壁43と、ホルダ挿通穴54及びカバー挿通穴64との隙間からの水の浸入を防止する。防水リング70の内周壁には、筐体筒部41の外周壁43との接触面圧を高める突起(図示しない)が形成されている。ヒータプレートアセンブリ100は水洗いされるため、特に電気系部品の短絡や腐食を防止する防水性能が求められる。
【0038】
防水リング70の外周壁における高さ方向の中間部には、ヒータホルダ50のホルダ挿通穴54の内周縁部55が嵌合する嵌合溝75が形成されている。嵌合溝75の底及び上下の壁が内周縁部55に三方から当接することで、電気系部品が収容されている部位への水浸入に対する高い防水性能が確保される。
【0039】
防水リング70の上端部の外周壁には、軸方向に延びるように曲げられたカバー挿通穴64の内周壁が当接する。防水リング70とカバー挿通穴64との隙間から空気室66に水が浸入しても電気系部品に直接影響しないため、ホルダ挿通穴54との隙間に比べて、高い防水性能は要求されない。ただし、空気室66に浸入した水分が加熱されて発生した蒸気により空気室66の内圧が上昇する可能性がある。そこで上述のように、プレートカバー60に逆止弁68が設けられている。
【0040】
(比較例との対比)
本実施形態と対比される比較例として、
図9に、特許文献1、2の従来技術に相当するヒータプレートアセンブリ110の模式断面図を示す。比較例のヒータプレートアセンブリ110は、表面プレート11と、裏面プレート17との間に、上絶縁シート13、フィルムヒータ14及び下絶縁シート15が重ねて保持されている。裏面プレート17は、ビス19によって表面プレート11の結合突起に締結される。表面プレート11と裏面プレート17との間の外縁、及び、ビス19の座部には防水パッキン12が設けられている。
【0041】
比較例のヒータプレートアセンブリ110では、フィルムヒータ14が発熱すると、ブロック矢印で示すように、表面プレート11及び裏面プレート17の両方に伝熱される。裏面プレート17は直接外部に露出しているため、裏面プレート17から外部に熱が流出する。したがって、フィルムヒータ14が発生した熱量全体のうち、表面プレート11の加熱に利用されない熱量の割合が比較的大きく、熱効率の向上に改善の余地がある。
【0042】
また、裏面プレート17と表面プレート11とを複数のビス19で締結するため、部品点数が多く、作業工数も増える。表面プレート11に結合突起を設けるための金属肉厚が必要となり重量が増加する。さらに、裏面プレート17と表面プレート11との間に防水パッキン12を挟んで組付ける作業のばらつきにより、防水性能が安定しにくい。
【0043】
それに対し本実施形態のヒータプレートアセンブリ100では、比較例の裏面プレート17に対し、ヒータホルダ50及びプレートカバー60の二重構造により間に空気室66を形成する。ヒータホルダ50の輻射面53が直接外部に露出しておらず、空気室66の内部の空気層が断熱層として機能する。また、プレートカバー60の反射面65が輻射熱を反射するため、プレート20側に熱量を効率的に移動させることができる。したがって、フィルムヒータ33の発熱によりプレート20を加熱する熱効率が向上する。
【0044】
また、ヒータホルダ50及びプレートカバー60は、ビス19を用いずプレート20に溶接されているため、部品点数が低減する。さらに、ビス固定用の結合突起が不要であり、プレート20及びヒータホルダ50がアルミニウムで形成されるため、軽量化できる。加えて、ヒータホルダ50及びプレートカバー60は、プレート20の組付面24において内枠領域25及び外枠領域26に溶接されるため、二重枠での封止により防水性が向上する。
【0045】
(その他の実施形態)
(a)本開示のヒータプレートアセンブリは、食品調理用の加熱調理器に限らず、工作・工芸用、医療用など、プレートに接触した被加熱物に伝熱するどのような用途の加熱器に用いられてもよい。
【0046】
(b)プレート20及びヒータホルダ50は、アルミニウム以外の熱伝導性金属で形成されてもよい。プレートカバー60は、アルミニウム又はSUS304以外に、輻射熱を反射する金属で形成されてもよい。なお、上記実施形態のように鍔部52、62をプレート20の組付面24に溶接する場合、溶接性が良いことも条件となる。ただし、ヒータホルダ50又はプレートカバー60の一方又は両方は、ビス止めなど溶接以外の方法でプレート20に接合されてもよい。その場合、ヒータホルダ50又はプレートカバー60は、溶接性の悪い金属で形成されてもよい。
【0047】
(c)上記実施形態ではプレートカバー60の中央部に円筒形状の筐体筒部41を有する電源接続部40が設けられているが、電源接続部の筐体形状や配置はこれに限らない。例えばプレートカバーの一方の縁に四角柱状の筐体を有する電源接続部が設けられてもよい。また、防水リングの形状や逆止弁の構造についても上記実施形態のものに限らず、所望の防水機能やベント機能を有する形状や構造を適宜選択可能である。
【0048】
(d)電源接続部40の複数の端子45のうち電源供給用の端子は必須であるが、温度検出用端子については、センサレス方式が採用される場合には不要となる。センサレス方式では、フィルムヒータ33の抵抗温度特性に基づき、電流値から抵抗を算出して温度が推定される。
【0049】
以上、本開示はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【0050】
本開示は、実施形態に基づき記述された。しかしながら、本開示は当該実施形態および構造に限定されるものではない。本開示は、様々な変形例および均等の範囲内の変形をも包含する。また、様々な組み合わせおよび形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせおよび形態も本開示の範疇および思想範囲に入るものである。
【要約】
被加熱物が接触するプレートと、通電により発熱するフィルムヒータとが一体に構成されたヒータプレートアセンブリであって、プレート(20)と、フィルムヒータ(33)と、2枚の絶縁シート(32、34)と、電源接続部(40)と、ヒータホルダ(50)と、プレートカバー(60)とを備える。プレートは、熱伝導性金属で形成され、被加熱物が接触する加熱面(21)、及び組付面(24)を有する。ヒータホルダは、熱伝導性金属で形成され、フィルムヒータに対しプレートとは反対側においてフィルムヒータを覆う。ヒータホルダは、保持面(51)とプレートの組付面との間に絶縁シートを介してフィルムヒータを保持し、輻射面(53)から熱を輻射する。プレートカバーは、金属で形成され、ヒータホルダに対しプレートとは反対側においてヒータホルダを覆う。プレートカバーは、反射面(65)とヒータホルダの輻射面との間に空気室(66)を形成する。