(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ステイン付着抑制用口腔組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20240927BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240927BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20240927BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240927BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240927BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20240927BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/64
A23F3/16
A23F5/24
A23L2/00 Z
A23L2/38 C
A23L2/38 J
A61K8/65
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2017127934
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-06-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 桂子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】若林 英行
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】木村 敏康
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-148587(JP,A)
【文献】特開2006-169226(JP,A)
【文献】特開2008-081424(JP,A)
【文献】特開2015-134753(JP,A)
【文献】特開2008-182934(JP,A)
【文献】特開2012-115234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン、カゼインおよびホエイ
(但し、ラクトフェリンを除く)からなる群から選択される1種または2種以上の成分を含有する、ステイン付着抑制用飲料(但し、ラクタム化合物を含有する飲料
および牛乳を含有する飲料を除く)であって、前記コラーゲンの分子量が重量平均分子量500~6600であり、
飲料中のカゼイン含有量が0.2質量%以下であり、かつ、茶飲料またはコーヒー飲料である、飲料。
【請求項2】
ステイン付着が、煙草の吸引またはステイン付着性食品の摂取に起因する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
茶飲料が、紅茶飲料、烏龍茶飲料、緑茶飲料、穀物茶飲料およびルイボス茶飲料並びにこれらのブレンド茶飲料からなる群から選択される飲料である、請求項2に記載の飲料。
【請求項4】
コラーゲン、カゼインおよびホエイ
(但し、ラクトフェリンを除く)からなる群から選択される1種または2種以上の成分を配合することを含んでなる、ステイン付着抑制用飲料の製造方法(但し、ラクタム化合物を含有する飲料
および牛乳を含有する飲料を除く)であって、前記コラーゲンの分子量が重量平均分子量500~6600であり、
飲料中のカゼイン含有量が0.2質量%以下であり、かつ、前記飲料が茶飲料またはコーヒー飲料である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステイン付着抑制用口腔組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の着色汚れであるステインは、食品中に含まれるクルクミン、アミノカルボニル反応物等の着色物質や、煙草のタール(ヤニ)等の着色物質と、歯のエナメル質表面を覆う唾液成分ペリクルが結合して歯に付着することで生じる。
【0003】
近年の口腔審美に対する意識の高まりから、ステインは審美上の主要な課題となっている。このため、歯に付着したステインの除去を目的とした様々な手法が開発・検討されてきている。例えば、特許文献1には、ポリリン酸塩など4成分を含有するステイン除去効果の高い歯磨剤組成物が開示されている。特許文献2には、メタリン酸ナトリウムを含有するステイン除去用口腔用組成物が開示されている。このように歯に付着したステインの除去を目的とした技術は知られているが、歯へのステイン付着の抑制を目的とした口腔組成物はこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-112654号公報
【文献】特開2015-137274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、煙草の吸引や、ステイン付着性食品の摂取に起因する歯牙へのステイン付着を抑制することができる口腔組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは今般、コラーゲン、カゼインおよびホエイの各タンパク質成分が、煙草やステイン付着性食品に起因するステイン付着を効果的に抑制することを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]コラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上の成分を含有する、ステイン付着抑制用口腔組成物およびステイン付着抑制剤(以下、「本発明の口腔組成物および用剤」ということがある)。
[2]ステイン付着が、煙草の吸引またはステイン付着性食品の摂取に起因する、上記[1]に記載の組成物および用剤。
[3]飲料である、上記[1]または[2]に記載の組成物および用剤。
[4]飲料が、茶飲料またはコーヒー飲料である、上記[3]に記載の組成物および用剤。
[5]茶飲料が、紅茶飲料、烏龍茶飲料、緑茶飲料、穀物茶飲料およびルイボス茶飲料並びにこれらのブレンド茶飲料からなる群から選択される飲料である、上記[4]に記載の組成物および用剤。
[6]コラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上の成分を配合することを含んでなる、ステイン付着抑制用飲料の製造方法。
【0008】
本発明の口腔組成物および用剤は、煙草の吸引や、ステイン付着性食品の摂取の際に一緒に摂取することで、煙草や該食品に起因するステイン付着を抑制することができる。本発明の口腔組成物および用剤は、飲料の形態でも提供することができることから、煙草や該食品に起因するステイン付着を日常生活において簡易に予防できる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明の口腔組成物および用剤は、コラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上のタンパク質成分を有効成分として含有するものである。
【0010】
本発明の有効成分であるコラーゲンは、家畜(例えば、ウシ、ブタ)や、家禽(例えば、ニワトリ)のコラーゲン組織(例えば、皮)から抽出したコラーゲンであってもよいし、魚類のコラーゲン組織から抽出したコラーゲンであってもよく、特に限定されるものではない。コラーゲンは、市販品を利用することもできる。
【0011】
本発明の有効成分であるコラーゲンは、口腔組成物に溶解させて使用するため水溶性のものを使用することができる。ここで、水溶性コラーゲンとは、不溶性の天然コラーゲンが水溶性となるよう処理されたものを意味する。水溶性コラーゲンとしては、天然コラーゲンを熱変性させて得られたゼラチンや、天然コラーゲンまたはゼラチンを加水分解して得られたコラーゲンペプチドが挙げられ、これらをさらに加工した物(例えば、酵素修飾物、化学修飾物)であってもよい。
【0012】
コラーゲンの分子量は特に限定されないが、口腔組成物に溶解させて使用することを考慮すると、例えば、重量平均分子量500~300000(好ましくは1000~200000、より好ましくは3000~20000)のものを使用することができる。
【0013】
本発明においては、コラーゲンまたはゼラチンの加水分解物であるコラーゲンペプチドを有効成分として使用することができる。すなわち、本発明において「コラーゲン」はコラーゲンペプチドを含む意味で用いられる。コラーゲンペプチドは、コラーゲンまたはゼラチンを酵素や酸により加水分解して得られるペプチドであり、市販品を利用することもできる。
【0014】
コラーゲンペプチドの分子量は特に限定されないが、口腔組成物に溶解させて使用することを考慮すると、例えば、重量平均分子量500~300000(好ましくは1000~200000、より好ましくは3000~20000)のものを使用することができる。ここで、本発明におけるコラーゲンおよびコラーゲンペプチドの重量平均分子量とは、分子量測定用プルランを標準として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって求めた値をいい、例えば、写真用ゼラチン試験法(PAGI法)第10版に記載されている方法で測定することができる。
【0015】
本発明の有効成分であるカゼインは、乳に含まれるタンパク質の主成分であり、牛乳タンパク質の約80%を占めることが知られている。本発明においては、カゼインの分離物(例えば、ナチュラルチーズ)に加えて、その濃縮物、乾燥物、凍結物および加水分解物を使用することができる。カゼインタンパク質としては、α-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインが挙げられる。本発明においてカゼインは、市販品を利用することができる。
【0016】
本発明の有効成分であるホエイは、牛乳などの乳からレンネットや酸を加えて生じるカードを除去した後に得られる水溶液であり、乳清とも呼ばれる。本発明においては、ホエイの原液に加えて、その濃縮物、乾燥物(例えば、ホエイ粉)、凍結物および加水分解物を使用することができ、さらには、ホエイに含まれるホエイタンパク質を使用することもできる。ホエイタンパク質としては、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質精製物(WPI)、α-ラクトアルブミン(α-La)、β-ラクトグロブリン(β-Lg)、免疫グロブリン、ラクトフェリンが挙げられる。本発明においてホエイは、市販品を利用することができる。
【0017】
本発明の組成物および用剤は、有効成分であるコラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上の成分単独で提供することができ、あるいは、有効成分である上記成分と他の成分(例えば、食品用添加剤、製剤添加剤)とを混合して提供することもできる。本発明においては、本発明の用剤をコラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上の成分からなるものとし、本発明の組成物をコラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上の成分と他の成分とを含んでなるものとすることができる。
【0018】
本発明の口腔組成物および用剤中のコラーゲン濃度(固形分換算)は、ステイン付着抑制効果が発揮される限り特に限定されるものではないが、例えば、コラーゲン濃度の下限値は0.02質量%(好ましくは0.05質量%)とすることができ、該濃度の上限値は2.00質量%(好ましくは1.00質量%)とすることができる。本発明の口腔組成物および用剤中のコラーゲン濃度は、0.02~2.00質量%とすることができる。
【0019】
本発明の口腔組成物および用剤中のカゼイン濃度(固形分換算)は、ステイン付着抑制効果が発揮される限り特に限定されるものではないが、例えば、カゼイン濃度の下限値は0.02質量%(好ましくは0.05質量%)とすることができ、該濃度の上限値は2.00質量%(好ましくは1.00質量%)とすることができる。本発明の口腔組成物および用剤中のカゼイン濃度は、0.02~2.00質量%とすることができる。
【0020】
本発明の口腔組成物および用剤中のホエイ濃度(固形分換算)は、ステイン付着抑制効果が発揮される限り特に限定されるものではないが、例えば、ホエイ濃度の下限値は0.02質量%(好ましくは0.05質量%)とすることができ、該濃度の上限値は2.00質量%(好ましくは1.00質量%)とすることができる。本発明の口腔組成物および用剤中のホエイ濃度は、0.02~2.00質量%とすることができる。
【0021】
本発明の口腔組成物および用剤を液体、半液体、ゲル状などの形態で提供する場合には、pHを4.0~8.0の範囲に調整することができる。本発明の口腔組成物および用剤のpHは、食品のpHを調整する手法により調整してもよく、例えば、炭酸水素ナトリウムを用いて調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して測定することができる。
【0022】
本発明の口腔組成物および用剤はステインの付着抑制に用いられる。本発明において「ステイン付着」はヒトを含む哺乳動物の歯牙(特にヒトの歯)へのステイン付着を意味する。また、本発明において「ステイン付着」は、口腔を通じてなされる吸引または摂取に起因する着色現象を意味する。ステイン付着の原因としては、煙草の吸引、ステイン付着性食品の摂取が挙げられ、その原因物質としては、タール、アミノカルボニル反応物、クルクミン、アントシアニン、リコピン、カロテノイドが挙げられる。アミノカルボニル反応物を含有する食品としては、ソース、シロップが挙げられ、クルクミンを含有する食品としては、カレーが挙げられる。
【0023】
本発明において「ステイン付着抑制」とは、煙草中、あるいは、食品(例えば、ソース、カレー、果実、緑黄色野菜)中のステイン原因物質(例えば、タール、アミノカルボニル反応物、クルクミン、アントシアニン、リコピン、カロテノイド)の歯牙への付着が抑制されることをいう。
【0024】
本発明の口腔組成物および用剤は、煙草の吸引前、吸引中および/または吸引後に口腔内に適用するか、あるいは摂取することで、煙草吸引に起因するステイン付着をよりよく抑制することができ、好ましくは煙草吸引直前、煙草吸引中および/または煙草吸引直後の口腔内への適用か、あるいは摂取である。本発明の口腔組成物および用剤はまた、ステイン原因物質を含有する食品の摂取前、摂取中または摂取後に口腔内に適用するか、あるいは摂取することで、該食品の摂取に起因するステイン付着をよりよく抑制することができ、好ましくは該食品の摂取直前、摂取中および/または摂取直後の口腔内への適用か、あるいは摂取である。
【0025】
本発明において、ステイン付着は、被験組成物浸漬前の歯牙と、着色原因物質存在下での被験組成物浸漬後の歯牙の歯牙表面の色差をL*a*b*表色系(JIS Z8722:2009)で測定することにより求めることができる(後記実施例の例1(3)参照)。被験組成物浸漬前の歯牙と、着色原因物質存在下での被験組成物浸漬後の歯牙の歯牙表面の色差が、対照組成物に浸漬した場合に比べて減少した被験組成物では、該被験組成物によりステイン付着が抑制されたと判断することができる。歯牙表面の色差は、例えば分光色差計により求めることができる。測定に用いる歯牙としては、例えば、ハイドロキシアパタイトペレット(ペンタックス社製)を用いることができる。
【0026】
本発明においては、被験組成物浸漬前の歯牙と着色原因物質存在下での被験組成物浸漬後の歯牙の歯牙表面の色差Δbが、対照組成物浸漬後の歯牙の歯牙表面の色差Δbよりも小さかった場合に、ステイン付着が抑制されたと判定することができる。
【0027】
本発明の口腔組成物および用剤は、ステイン付着抑制効果が奏される限り、その形態や形状に特に制限はなく、液体、半液体、ゲル状などの形態であってもよい。本発明の口腔組成物および用剤は、例えば、飲料、ゼリーなどの食品組成物の形態で提供することができる。
【0028】
本発明の口腔組成物および用剤を飲料の形態で提供する場合には、コラーゲン等のタンパク質成分を配合可能な飲料であれば特に限定されないが、例えば、茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料が挙げられる。本発明に適用可能な茶飲料としては、例えば、発酵茶(例えば、紅茶)飲料、不発酵茶(例えば、緑茶、ルイボス茶)飲料、半発酵茶(例えば、烏龍茶)飲料、後発酵茶(例えば、プーアル茶)飲料および穀物茶(例えば、麦茶)飲料並びにこれらのブレンド茶飲料が挙げられる。
【0029】
本発明の飲料では、通常の飲料の製造に用いられている飲料用添加剤、例えば、甘味料、酸味料、香料、色素、果汁、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤)などを添加してもよい。
【0030】
本発明の飲料のpHは通常の飲料のpHを調整する手法により調整することができ、例えば、炭酸水素ナトリウムを用いて調整することができる。
【0031】
本発明の飲料は、容器詰め飲料の形態で提供することができる。容器詰め飲料の容器とは、内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられる。
【0032】
本発明の飲料の製造は、コラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上のタンパク質成分を原材料に添加する点を除いては、飲料の製造に用いられる通常の方法に従って実施することができる。例えば、本発明の飲料が茶飲料の場合には、茶抽出液を準備し、有効成分を調合することにより、ステイン付着抑制用の茶飲料を得ることができる。本発明の飲料の製造においては、通常の飲料の処方設計に用いられている飲料用添加剤を添加してもよく、これら添加剤の添加時期は特に制限されない。
【0033】
本発明の飲料の製造に当たっては、当業界に公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0034】
本発明の飲料の製造手順において、コラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択されるタンパク質成分の添加時期は特に制限されず、例えば、原材料の調合工程において添加することができる。上記タンパク質成分を添加する手順と、飲料用添加剤等の他の配合成分を添加する手順は、同時に実施しても、別々に実施してもよく、別々に実施する場合にはいずれが先であってもよい。
【0035】
本発明により提供される飲料は、抽出工程、調合工程、充填工程および殺菌工程などの工程を経て容器詰め飲料として提供することができる。例えば、調合工程で得られた飲料を常法に従って殺菌し、容器に充填することができる。殺菌は容器への充填前であっても充填後であってもよい。
【0036】
本発明の飲料の製造において殺菌処理を行う場合、食品分野で一般的に用いられている種々の殺菌方法を用いることができ、典型的には加熱殺菌法を用いることができる。使用できる殺菌方法としては、例えば、レトルト殺菌、UHT殺菌、低温殺菌、HTST殺菌などが挙げられる。これらの加熱殺菌方法は飲料の製造に通常用いられている条件で実施することができる。
【0037】
本発明の別の面によれば、コラーゲン、カゼインおよびホエイからなる群から選択される1種または2種以上のタンパク質成分を配合することを含んでなる、ステイン付着抑制用飲料の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、本発明の口腔組成物および飲料並びにそれらの製造に関する記載に従って実施することができる。
【実施例】
【0038】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
例1:タンパク質によるステイン付着抑制効果(1)
(1)煙草抽出液の調製
吸引ろ過瓶に50gのmilliQ水を入れ、ガラス管を刺したゴム栓を取り付けた。ガラス管の先端に煙草(Marlboro gold 100’s(登録商標)、フィリップモリス社製)1本を刺して点火し、直ちにポンプで吸引した。先端から5cmの長さになるまで煙草を燃やし、吸引を終了した。合計10本の煙草について同様の操作を繰り返した。吸引ろ過瓶から液体を回収し、これを煙草抽出液とした。
【0040】
(2)タンパク質溶液の調製
3種類の市販のコラーゲン(イクオスHDL-50DR(新田ゼラチン社製、重量平均分子量:5000)、スーパーコラーゲンペプチドSCP-2000(新田ゼラチン社製、重量平均分子量:1100)、水溶性コラーゲンペプチドSS(協和発酵バイオ社製、重量平均分子量:6600))と3種類の乳系タンパク質(高ホエイタンパク質WPI895(Fonterra社製)、カゼインNa(Fonterra社製)、リゾチーム(和光純薬工業社製))をそれぞれ0.2質量%の濃度(固形分換算)となるように水に溶解し各タンパク質溶液とした。各タンパク質溶液をそれぞれ缶に充填して、121℃で7分間レトルト殺菌した。殺菌後の各タンパク質溶液のpHをpHメーター(東亜ディーケーケー社製)を使用して測定した。
【0041】
(3)着色試験
上記(1)で得られた煙草抽出液と上記(2)で得られた各タンパク質溶液を1:1(質量比)で混合して、各試験溶液を調製した。対照溶液は、上記(1)で得られた煙草抽出液と水を1:1(質量比)で混合して調製した。各試験溶液によるステイン付着は、ハイドロキシアパタイトペレット(APP-100、PENTAX社、以下「HAP」という)を用いて評価した。分光色差計(SE7700、日本電色工業社製)を用いてHAPの表面を測色後、HAPを人工唾液(50mM塩化カリウム、1mM塩化カルシウム、0.1mM塩化マグネシウム、1mMリン酸2水素カリウム、1%アルブミン、pH7.0)に37℃で7時間浸漬した。浸漬後のHAPを全イオン交換水で洗浄した後、HAPを各試験溶液に37℃で24時間浸漬させた。浸漬後のHAPの表面を測色し、浸漬前後のHAP表面の色差Δbを算出した。色差Δbが対照溶液よりも低い値を示した試験溶液では、ステイン付着が抑制されたと判断した。着色試験は2回行い、色差Δbの平均値を求めた。
【0042】
HAPの測色は、JIS Z8722:2009に基づくL*a*b*表色系のL*軸(明度)、a*軸(彩度:赤・緑軸)、b*軸(彩度:黄・青軸)で、反射測定条件、測定径φ6mmで上記分光色差計を用いて測定した。浸漬前のHAPの測色値をL1、a1、b1、浸漬後のHAPの測色値をL2、a2、b2とした時、以下の式により色差Δbとして算出した。
Δb=b2-b1
【0043】
(4)結果
結果は表1に示される通りであった。
【表1】
【0044】
表1の結果より、3種類のコラーゲン(イクオスHDL-50DR、スーパーコラーゲンペプチドSCP-2000、水溶性コラーゲンペプチドSS)と2種類の乳系タンパク質(高ホエイタンパク質WPI895、カゼインNa)のそれぞれにより、煙草によるステイン付着が抑制されることが確認された。
【0045】
例2:タンパク質によるステイン付着抑制効果(2)
(1)タンパク質溶液の調製
タンパク質溶液の調製は、例1(2)に記載のリゾチームをラクトフェリン(和光純薬工業社製)に換えた以外は、例1(2)に記載の手順に従って行った。
【0046】
(2)着色試験
市販の中濃ソース(ブルドック中濃ソース、ブルドックソース社製)と上記(1)で得られた各タンパク質溶液を1:1(質量比)で混合して、各試験溶液を調製した。対照溶液は、市販の中濃ソースと水を1:1(質量比)で混合して調製した。各試験溶液による着色試験は、例1(3)に記載の手順に従って行った。
【0047】
(3)結果
結果は表2に示される通りであった。
【表2】
【0048】
表2の結果より、3種類のコラーゲン(イクオスHDL-50DR、スーパーコラーゲンペプチドSCP-2000、水溶性コラーゲンペプチドSS)と2種類の乳系タンパク質(高ホエイタンパク質WPI895、カゼインNa)のそれぞれにより、中濃ソースによるステイン付着が抑制されることが確認された。
【0049】
例3:タンパク質によるステイン付着抑制効果(3)
(1)クルクミン溶液の調製
20%クルクミン水分散液(横浜油脂工業社製)750mgを100mLにメスアップしてクルクミン溶液を調製した。
【0050】
(2)タンパク質溶液の調製
タンパク質溶液の調製は、乳系タンパク質を2種類の乳系タンパク質(高ホエイタンパク質WPI895(Fonterra社製)、ラクトフェリン(和光純薬工業社製))に換えた以外は、例1(2)に記載の手順に従って行った。
【0051】
(3)着色試験
上記(1)で得られクルクミン溶液と上記(2)で得られた各タンパク質溶液を1:1(質量比)で混合して、各試験溶液を調製した。対照溶液は、上記(1)で得られクルクミン溶液と水を1:1(質量比)で混合して調製した。各試験溶液による着色試験は、例1(3)に記載の手順に従って行った。
【0052】
(4)結果
結果は表3に示される通りであった。
【表3】
【0053】
表3の結果より、3種類のコラーゲン(イクオスHDL-50DR、スーパーコラーゲンペプチドSCP-2000、水溶性コラーゲンペプチドSS)と乳系タンパク質(高ホエイタンパク質WPI895)のそれぞれにより、クルクミンによるステイン付着が抑制されることが確認された。