(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】室内熱交換器及び空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0067 20190101AFI20240927BHJP
F24F 1/0325 20190101ALI20240927BHJP
F24F 1/18 20110101ALI20240927BHJP
【FI】
F24F1/0067
F24F1/0325
F24F1/18
(21)【出願番号】P 2018111832
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥志
(72)【発明者】
【氏名】北山 智歩
(72)【発明者】
【氏名】織谷 好男
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】間中 耕治
【審判官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281693(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103437(WO,A1)
【文献】特開2003-302183(JP,A)
【文献】特開2017-187243(JP,A)
【文献】特開2018-59704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0067
F24F 1/0325
F24F 1/18
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器(51)と室外熱交換器(11)とを備える空気調和装置(1)であって、
前記室内熱交換器は、前記空気調和装置の室内機(3)に用いられ、
前記室内熱交換器は、
冷媒を通過させる流路(55c)を内部に有する複数の室内扁平管(55)と、
第1方向に延びている室内連通部(64)を有し、前記第1方向に並んだ複数の前記室内扁平管に接合された室内フィン(60)と、
を有し、
前記室内扁平管は、前記第1方向を向いている扁平面(55a,55b)を有し、
前記室内連通部は、前記室内扁平管に対して、前記室内熱交換器を通過する気体の流れ方向の下流側にあり、
前記室外熱交換器は、
冷媒を通過させる流路(90c)を内部に有する複数の室外扁平管(90)と、
第3方向に並んだ複数の前記室外扁平管に接合された室外フィン(91)と、
を有し、
前記室内扁平管の断面視における短手方向の寸法をHTとし、
前記室内扁平管の断面視における長手方向の寸法をWTとし、
前記室外扁平管の断面視における短手方向の寸法をHToとし、
前記室外扁平管の断面視における長手方向の寸法をWToとした場合に、
0.15≦HT/WT≦0.3、及び、HT/WT≧HTo/WToの関係を満たし、
前記室内扁平管の断面視における長手方向は、前記室内熱交換器を通過する気体の流れ方向であり、
前記室外扁平管の断面視における長手方向は、前記室外熱交換器を通過する気体の流れ方向であ
り、
前記室内熱交換器は、前記第1方向に並んだ複数の前記室内扁平管からなる列を有し、
前記室外熱交換器は、前記第3方向に並んだ複数の前記室外扁平管からなる列を有し、
前記室内熱交換器の前記列の数は、前記室外熱交換器の前記列の数以上である、
空気調和装置。
【請求項2】
複数の前記室内扁平管は、前記室内扁平管の長手方向及び前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置される、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
WT≦12mmの関係をさらに満たす、
請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
WT≦10mmの関係をさらに満たす、
請求項3に記載の空気調和装置。
【請求項5】
WT≧3mmの関係をさらに満たす、
請求項3又は4に記載の空気調和装置。
【請求項6】
0.2≦HT/WT≦0.3の関係をさらに満たす、
請求項1から5のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項7】
WT≦WToの関係をさらに満たす、
請求項1から6のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項8】
前記室外フィンは、前記第3方向に延びている室外連通部(97a)を有し、
前記室外熱交換器において、前記室外連通部は、前記室外扁平管に対して、前記室外熱交換器を通過する気体の流れ方向の上流側にある、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
室内熱交換器及び空気調和装置
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置の室外機に用いられる室外熱交換器として、特許文献1(特開2016-041986号)に記載されているように、複数の扁平管が接合された伝熱フィンを備える熱交換器が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような、複数の扁平管が接合された伝熱フィンを備える熱交換器を、空気調和装置の室内機に用いる場合、冷媒の蒸発器として機能させる際に生じる結露水が室内に飛散することが問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る室内熱交換器は、空気調和装置の室内機に用いられる室内熱交換器である。室内熱交換器は、複数の扁平管と、複数の伝熱フィンとを備える。扁平管は、冷媒を通過させる流路を内部に有する。伝熱フィンは、第1方向に延びている連通部を有する。伝熱フィンは、第1方向に並んだ複数の扁平管に接合されている。複数の扁平管は、扁平管の長手方向及び第1方向と交差する第2方向に並んで配置されている。扁平管は、WT≦12mmの関係を満たす。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0005】
この室内熱交換器では、扁平管の表面に滞留しようとする水を排出しやすくして、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0006】
第2観点に係る室内熱交換器は、空気調和装置の室内機に用いられる室内熱交換器である。室内熱交換器は、複数の扁平管と、複数の伝熱フィンとを備える。扁平管は、冷媒を通過させる流路を内部に有する。伝熱フィンは、第1方向に延びている連通部を有する。伝熱フィンは、第1方向に並んだ複数の扁平管に接合されている。扁平管は、HT/WT≧0.15の関係を満たす。HTは、扁平管の断面視における短手方向の寸法である。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0007】
この室内熱交換器では、扁平管の表面に滞留しようとする水を排出しやすくして、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0008】
第3観点に係る室内熱交換器は、第2観点に係る室内熱交換器であって、扁平管は、WT≦12mmの関係をさらに満たす。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0009】
この室内熱交換器では、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散をより抑制させやすい。
【0010】
第4観点に係る室内熱交換器は、第1観点又は第3観点に係る室内熱交換器であって、扁平管は、WT≦10mmの関係をさらに満たす。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0011】
この室内熱交換器では、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散をより抑制させやすい。
【0012】
第5観点に係る室内熱交換器は、第1観点、第3観点及び第4観点のいずれかに係る室内熱交換器であって、扁平管は、WT≧3mmの関係をさらに満たす。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0013】
この室内熱交換器では、伝熱性能を確保しつつ、結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0014】
第6観点に係る室内熱交換器は、第2観点から第5観点のいずれかに係る室内熱交換器であって、扁平管は、HT/WT≧0.2の関係をさらに満たす。HTは、扁平管の断面視における短手方向の寸法である。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0015】
この室内熱交換器では、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散をより抑制させやすい。
【0016】
第7観点に係る室内熱交換器は、第2観点から第6観点のいずれかに係る室内熱交換器であって、扁平管は、HT/WT≦0.3の関係をさらに満たす。HTは、扁平管の断面視における短手方向の寸法である。WTは、扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0017】
この室内熱交換器では、伝熱性能を確保しつつ、結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0018】
第8観点に係る空気調和装置は、第1観点から第7観点のいずれかに係る室内熱交換器を備える。
【0019】
この空気調和装置では、室内熱交換器が冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させやすい。
【0020】
第9観点に係る空気調和装置は、第8観点に係る空気調和装置であって、室外熱交換器をさらに備える。室外熱交換器は、複数の扁平管と、伝熱フィンとを有する。扁平管は、冷媒を通過させる流路を内部に有する。伝熱フィンは、第3方向に並んだ複数の扁平管に接合されている。
【0021】
この空気調和装置では、室外熱交換器が冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させやすい。
【0022】
第10観点に係る空気調和装置は、第9観点に係る空気調和装置であって、HT/WT≧HTo/WToの関係を満たす。HTは、室内熱交換器の扁平管の断面視における短手方向の寸法である。WTは、室内熱交換器の扁平管の断面視における長手方向の寸法である。HToは、室外熱交換器の扁平管の断面視における短手方向の寸法である。WToは、室外熱交換器の扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0023】
この空気調和装置では、室外熱交換器の伝熱フィンの着霜耐力を確保しつつ、室内熱交換器が冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0024】
第11観点に係る空気調和装置は、第9観点又は第10観点に係る空気調和装置であって、WT≦WToの関係を満たす。WTは、室内熱交換器の扁平管の断面視における長手方向の寸法である。WToは、室外熱交換器の扁平管の断面視における長手方向の寸法である。
【0025】
この空気調和装置では、室外熱交換器の伝熱フィンの着霜耐力を確保しつつ、室内熱交換器が冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0026】
第12観点に係る空気調和装置は、第9観点から第11観点のいずれかに係る空気調和装置であって、室内熱交換器の列の数は、室外熱交換器の列の数以上である。室内熱交換器は、第1方向に並んだ複数の扁平管からなる列を有する。室外熱交換器は、第3方向に並んだ複数の扁平管からなる列を有する。
【0027】
この空気調和装置では、室外熱交換器の伝熱フィンの着霜耐力を確保しつつ、室内熱交換器が冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0028】
第13観点に係る空気調和装置は、第9観点から第12観点のいずれかに係る空気調和装置であって、室外熱交換器の伝熱フィンは、第3方向に延びている連通部を有する。室内熱交換器において、連通部は、扁平管に対して、室内熱交換器を通過する気体の流れ方向の下流側にある。室外熱交換器において、連通部は、扁平管に対して、室外熱交換器を通過する気体の流れ方向の上流側にある。
【0029】
この空気調和装置では、室内熱交換器の扁平管で生じた結露水を、室内熱交換器を通過する気体の流れ方向の下流側に位置している連通部に伝わせながら導くことで、結露水の飛散を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図5】室外フィンと室外扁平管との位置関係を示す説明図である。
【
図8】室内ユニットの
図7のA-A断面における側面視概略構成図である。
【
図10】室内熱交換器の部分拡大概略外観斜視図である。
【
図11】室内フィンと室内扁平管との位置関係を示す説明図である。
【
図12】室内フィンと室内扁平管との接合状態を示す説明図である。
【
図13】WTの値を変化させたデータの具体例である。
【
図14】HT/WTの値を変化させたデータの具体例である。
【
図15】変形例Aに係る室内フィンと室内扁平管との位置関係を示す説明図である。
【
図16】変形例Aに係る室内フィンが有する導水リブの断面図であって、
図15のB-B断面の内の風下側近傍部分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(1)空気調和装置の概略構成
図1は、空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房及び暖房を行うことが可能な装置である。
【0032】
空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット3と、液冷媒連絡管4と、ガス冷媒連絡管5とを有している。液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5は、室外ユニット2と室内ユニット3とを接続する冷媒経路である。空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路6は、室外ユニット2と室内ユニット3とが、液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を介して接続されることによって構成されている。液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5は、空気調和装置1を建物等の所定の場所に設置する際に、現地で施工される冷媒管である。冷媒回路6には、作動冷媒としてR32が充填されている。しかし、冷媒回路6に充填される冷媒は、R32に限定されない。例えば、冷媒回路6に充填される冷媒として、R452B、R410A、R454B、HFO系混合冷媒(例えば、HFO-1123とR32との混合冷媒)、CO2、CF3I(単体もしくはその混合冷媒)が用いられてもよい。
【0033】
(2)室外ユニット
(2-1)室外ユニットの概略構成
図2は、室外ユニット2の概略外観斜視図である。
図3は、室外ユニット2の平面視概略構成図である。室外ユニット2は、冷媒回路6の一部を構成し、室外に設置されている。室外とは、建物の屋上、及び、建物の壁面近傍等である。室外ユニット2は、主として、アキュムレータ7と、圧縮機8と、四路切換弁10と、室外熱交換器11と、室外膨張弁12と、液側閉鎖弁13と、ガス側閉鎖弁14と、室外ファン15と、ケーシング40とを有している。
【0034】
アキュムレータ7は、圧縮機8にガス冷媒を供給するための容器である。アキュムレータ7は、圧縮機8の吸入側に設けられている。
【0035】
圧縮機8は、低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮し、高圧のガス冷媒を吐出する。
【0036】
室外熱交換器11は、冷房運転時には圧縮機8から吐出された冷媒の放熱器として機能する。室外熱交換器11は、暖房運転時には室内熱交換器51から送られてくる冷媒の蒸発器として機能する。室外熱交換器11の液側には、室外膨張弁12が接続されている。室外熱交換器11のガス側には、四路切換弁10が接続されている。
【0037】
室外膨張弁12は、冷媒回路6の膨張機構として機能する電動膨張弁である。室外膨張弁12は、冷房運転時には室外熱交換器11において放熱された冷媒を室内熱交換器51に送る前に減圧する。室外膨張弁12は、暖房運転時には室内熱交換器51において放熱された冷媒を室外熱交換器11に送る前に減圧する。
【0038】
室外ユニット2の液側閉鎖弁13には、液冷媒連絡管4の一端が接続されている。室外ユニット2のガス側閉鎖弁14には、ガス冷媒連絡管5の一端が接続されている。また、室外ユニット2の機器及び弁の間は、冷媒管16~22によって接続されている。
【0039】
四路切換弁10は、冷房運転の接続状態と、暖房運転の接続状態とを切り換えるための弁である。冷房運転の接続状態では、圧縮機8の吐出側が室外熱交換器11側に接続されると共に、圧縮機8の吸入側がガス側閉鎖弁14側に接続される。暖房運転の接続状態では、圧縮機8の吐出側がガス側閉鎖弁14側に接続されると共に、圧縮機8の吸入側が室外熱交換器11側に接続される。冷房運転の接続状態は、
図1において、四路切換弁10の実線で表されている。暖房運転の接続状態は、
図1において、四路切換弁10の破線で表されている。
【0040】
室外ファン15は、室外ユニット2の内部に配置される。室外ファン15は、室外空気を吸入して、室外熱交換器11に室外空気を供給した後に、室外ユニット2外に室外空気を排出する空気流れを形成する。この空気流れは、
図3において矢印で示されている。室外ファン15によって供給される室外空気は、室外熱交換器11を通過する冷媒との熱交換における冷却源又は加熱源として用いられる。
【0041】
ケーシング40は、
図2及び
図3に示されるように、主として、底フレーム40aと、天板40bと、左前板40cと、右前板40dと、右側板40eとを有している。底フレーム40aは、ケーシング40の底面部分を構成する横長の略長方形状の板状部材である。底フレーム40aは、その下面に固定された固定脚41によって設置面に設置されている。天板40bは、ケーシング40の天面部分を構成する横長の略長方形状の板状部材である。左前板40cは、主として、ケーシング40の左正面部分及び左側面部分を構成する板状部材である。左前板40cには、吹出口が上下に2つ並んで形成されている。これらの吹出口は、室外ファン15によって背面側及び左側面側からケーシング40内に取り込まれた室外空気を、前面側に吹き出すための開口である。各吹出口には、ファングリル42が設けられている。なお、吹出口は、天板40bに形成され、ケーシング40内に取り込まれた室外空気を上方に吹き出すための開口であってもよい。右前板40dは、主として、ケーシング40の右正面部分及び右側面の前部を構成する板状部材である。右側板40eは、主として、ケーシング40の右背面部分及び右側面の後部を構成する板状部材である。
【0042】
ケーシング40内には、仕切板43が設けられている。仕切板43は、ケーシング40の内部空間を、室外ファン15等が配置される送風機室と、圧縮機8等が配置される機械室とに仕切る。
【0043】
(2-2)室外熱交換器の概略構造
図4は、室外熱交換器11の概略外観斜視図である。室外熱交換器11は、主として、ガス側分流器23と、液側分流器24と、複数の流入側折返し部材25と、複数の反流入側折返し部材26と、複数の室外扁平管90と、複数の室外フィン91とを有している。室外熱交換器11を構成するこれらの部品は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており、互いにロウ付け等によって接合されている。
【0044】
複数の室外扁平管90は、上下方向(鉛直方向)に並んで配置されている。
【0045】
複数の室外フィン91は、室外扁平管90が延びている方向に沿って並んで配置されている。室外フィン91の板厚方向は、室外フィン91が並んでいる方向と同じである。
【0046】
ガス側分流器23は、複数の室外扁平管90の内の上方に配置されている複数の室外扁平管90に接続され、かつ、冷媒管19に接続されている。室外熱交換器11が冷媒の放熱器として機能する場合、冷媒管19から室外熱交換器11に流入した冷媒は、ガス側分流器23で複数の高さ位置に分流して、ガス側分流器23に接続されている複数の室外扁平管90に送られる。
【0047】
液側分流器24は、複数の室外扁平管90の内の下方に配置されている複数の室外扁平管90に接続され、かつ、冷媒管20に接続されている。室外熱交換器11が冷媒の放熱器として機能する場合、液側分流器24に接続されている複数の室外扁平管90のそれぞれを流れてきた冷媒は、液側分流器24で合流し、冷媒管20を介して室外熱交換器11の外部に流出する。
【0048】
複数の流入側折返し部材25は、ガス側分流器23と液側分流器24との間に配置されている。流入側折返し部材25は、互いに異なる高さ位置に設けられた室外扁平管90の端部同士を接続する管である。
【0049】
複数の反流入側折返し部材26は、室外熱交換器11の端部であって、ガス側分流器23と液側分流器24と複数の流入側折返し部材25とが設けられている側とは反対側の端部に設けられている。反流入側折返し部材26は、互いに異なる高さ位置に設けられた室外扁平管90の端部同士を接続する管である。
【0050】
室外熱交換器11では、複数の流入側折返し部材25及び複数の反流入側折返し部材26を設けることによって、室外熱交換器11の両端部で冷媒を折り返しながら冷媒を流すことが可能となっている。
【0051】
(2-3)室外扁平管
図5は、室外熱交換器11の断面図であって、室外フィン91と室外扁平管90との位置関係を示す図である。
図5は、室外扁平管90内部の流路90cが延びている方向に対して垂直に室外扁平管90を切断した状態で、当該流路90cが延びている方向に沿って見た断面図である。
【0052】
室外扁平管90は、上側扁平面90aと、下側扁平面90bと、複数の流路90cとを有している。上側扁平面90aは、室外扁平管90の表面であって、鉛直方向上方を向いている上面である。下側扁平面90bは、室外扁平管90の表面であって、鉛直方向下方を向いている下面である。流路90cは、冷媒が流れる空間である。複数の流路90cは、室外空気流れ方向に並んで設けられている。室外空気流れ方向とは、室外熱交換器11を通過する室外空気が流れる方向である。室外空気流れ方向は、室外扁平管90の断面視における長手方向であり、
図5において矢印で示されている方向である。以下、室外熱交換器11に関する説明において、「風上側」は室外空気流れ方向の上流側を意味し、「風下側」は室外空気流れ方向の下流側を意味する。
【0053】
複数の室外扁平管90の断面寸法は、全て同じである。断面寸法とは、具体的には、室外扁平管90の幅WTo、及び、室外扁平管90の高さHToである。室外扁平管90の幅WToは、室外扁平管90の断面視における長手方向(複数の流路90cが並んでいる方向)の寸法である。室外扁平管90の高さHToは、室外扁平管90の断面視における短手方向(上下方向)の寸法である。室外扁平管90の高さHToは、室外扁平管90の上側扁平面90aと下側扁平面90bとの間の距離に相当する。また、複数の室外扁平管90は、上下方向において所定の段ピッチDPoで配置されている。段ピッチDPoとは、上下方向において隣り合う2つの室外扁平管90の上側扁平面90aの間の距離に相当する。
【0054】
図5に示されるように、室外扁平管90の風下側端部は、室外フィン91の風下側端部よりも、さらに風下側に位置している。これにより、室外熱交換器11の製造時又は運搬時における室外フィン91の風下側端部の損傷及び破損が抑制される。
【0055】
(2-4)室外フィン
室外フィン91は、室外空気流れ方向及び上下方向に広がる板状部材である。室外フィン91は、その板厚方向に沿って所定の間隔で複数配置されている。各室外フィン91には、複数の室外扁平管90が固定されている。室外フィン91の平坦部分における板厚方向の寸法は、例えば、0.05mm以上かつ0.15mm以下である。
【0056】
室外フィン91は、主として、複数の差し込み部92と、室外連通部97aと、複数の風下部97bと、ワッフル部93と、風上側フィンタブ94aと、風下側フィンタブ94bと、室外スリット95と、風上側リブ96aと、風下側リブ96bとを有している。
【0057】
差し込み部92は、室外フィン91の風下側の縁部から、室外フィン91の風上側の縁部の近傍まで、室外空気流れ方向(水平方向)に沿って切り込まれるようにして形成されている部分である。複数の差し込み部92は、上下方向に並ぶように設けられている。差し込み部92は、バーリング等によって形成されるフィンカラーを構成している。差し込み部92の形状は、室外扁平管90の断面の外形にほぼ一致している。差し込み部92には、室外扁平管90が挿入された状態でロウ付け固定されている。
【0058】
室外連通部97aは、室外フィン91の一部であって、室外扁平管90の風上側の端部よりもさらに風上側において、上下方向に連続して延びている部分である。室外フィン91の着霜耐力を確保する観点から、室外扁平管90の風上端の端部から、室外連通部97aの風上端の端部までの室外空気流れ方向の距離は、4mm以上であることが好ましい。
【0059】
風下部97bは、上下方向において隣り合う2つの差し込み部92に挟まれている部分である。各室外フィン91では、複数の風下部97bが、互いに異なる高さ位置において、室外連通部97aの風下側の端部からさらに風下側に向かって伸びている。
【0060】
ワッフル部93は、室外フィン91の室外空気流れ方向の中央近傍に形成されている。ワッフル部93は、隆起部分と非隆起部分とから構成されている。隆起部分は、室外フィン91の板厚方向に隆起した部分である。非隆起部分は、室外フィン91の板厚方向に隆起していない平坦な部分である。
【0061】
風上側フィンタブ94a及び風下側フィンタブ94bは、板厚方向に隣り合う室外フィン91同士の間隔を規制するために、それぞれ、室外フィン91の風上側の端部近傍と風下側の端部近傍とに設けられている。
【0062】
室外スリット95は、室外フィン91における伝熱性能を向上させるために、室外フィン91の平坦部分から板厚方向に切り起こされた部分である。室外スリット95は、ワッフル部93の風下側に形成されている。室外スリット95は、その長手方向が上下方向に沿うように形成されている。室外スリット95は、室外空気流れ方向に複数並ぶように形成されている。複数の室外スリット95は、全て同じ側に切り起こされている。室外スリット95は、風上側及び風下側のそれぞれにおいて開口を形成する。
【0063】
風上側リブ96aは、風上側フィンタブ94aの上方及び下方に設けられている。風上側リブ96aは、上下方向に隣り合う室外扁平管90同士の間において、室外空気流れ方向に沿って延びるように設けられている。風下側リブ96bは、風上側リブ96aの風下側端部からさらに風下側に延びるように設けられている。
【0064】
(3)室内ユニット
(3-1)室内ユニットの概略構成
図6は、室内ユニット3の外観斜視図である。
図7は、室内ユニット3の天板を取り除いた状態を示す概略平面図である。
図8は、
図7のA-Aで示される切断面における室内ユニット3の概略側面断面図である。
【0065】
室内ユニット3は、空気調和装置1の空調対象空間である部屋の天井Uの開口に埋め込まれて設置されるタイプの室内機である。室内ユニット3は、冷媒回路6の一部を構成している。室内ユニット3は、主として、室内熱交換器51と、室内ファン52と、ケーシング30と、フラップ39と、ベルマウス33と、ドレンパン32とを有している。
【0066】
室内熱交換器51は、冷房運転時には室内熱交換器51から送られてくる冷媒の蒸発器として機能する。室内熱交換器51は、暖房運転時には圧縮機8から吐出された冷媒の放熱器として機能する。室内熱交換器51の液側には、液冷媒連絡管4の室内側端部が接続されている。室内熱交換器51のガス側には、ガス冷媒連絡管5の室内側端部が接続されている。
【0067】
室内ファン52は、室内ユニット3のケーシング本体31の内部に配置された遠心送風機である。室内ファン52は、化粧パネル35の吸込口36を介して室内空気をケーシング30内に吸入し、室内熱交換器51を通過させた後、化粧パネル35の吹出口37を介して室内空気をケーシング30外へ吹き出す空気流れを形成する。この空気流れは、
図8において矢印で示されている。室内ファン52によって供給される室内空気は、室内熱交換器51を通過する冷媒と熱交換することにより温度が調節される。
【0068】
ケーシング30は、主として、ケーシング本体31と、化粧パネル35とを有している。
【0069】
ケーシング本体31は、空調対象空間である部屋の天井Uに形成された開口に挿入されるようにして設置されている。ケーシング本体31は、その平面視において長辺と短辺とが交互に接続された略八角形状を有している箱状の部材である。ケーシング本体31は、天板及び天板の周縁部から下方に延びる複数の側板を有している。ケーシング本体31の下面は、開口している。
【0070】
化粧パネル35は、天井Uに形成された開口に嵌め込まれるようにして設置されている。化粧パネル35は、その平面視においてケーシング本体31の天板及び側板よりも外側に広がっている。化粧パネル35は、ケーシング本体31の下方に取り付けられる。化粧パネル35は、内枠35aと外枠35bとを有している。内枠35aの内側には、下方に開口した略四角形状の吸込口36が形成されている。吸込口36の上方には、吸込口36から吸入された空気中の塵埃を除去するためのフィルタ34が設けられている。外枠35bの内側、かつ、内枠35aの外側には、下方又は斜め下方に開口した吹出口37及び角部吹出口38が形成されている。吹出口37は、化粧パネル35の平面視における略四角形状の各辺に対応する位置に配置されている、第1吹出口37a、第2吹出口37b、第3吹出口37c及び第4吹出口37dから構成されている。角部吹出口38は、化粧パネル35の平面視における略四角形状の各角に対応する位置に配置されている、第1角部吹出口38a、第2角部吹出口38b、第3角部吹出口38c及び第4角部吹出口38dから構成されている。
【0071】
フラップ39は、吹出口37を通過する空気流れの方向を変更するための部材である。フラップ39は、第1吹出口37aに配置される第1フラップ39aと、第2吹出口37bに配置される第2フラップ39bと、第3吹出口37cに配置される第3フラップ39cと、第4吹出口37dに配置される第4フラップ39dとから構成されている。各フラップ39は、ケーシング30の所定の位置において回動可能に軸支されている。
【0072】
ドレンパン32は、室内熱交換器51の下側に配置されている。ドレンパン32は、室内熱交換器51において空気中の水分が凝縮して生じるドレン水を受けとる。ドレンパン32は、ケーシング本体31の下部に装着されている。ドレンパン32には、平面視における中央部に、室内熱交換器51の内側において上下方向に伸びた円筒形状の空間が形成されている。この円筒形状の空間の内側下方には、ベルマウス33が配置されている。ベルマウス33は、吸込口36から吸入される空気を室内ファン52に案内する。
【0073】
また、ドレンパン32には、複数の吹出流路47a~47d、及び、複数の角部吹出流路48a~48cが形成されている。吹出流路47a~47d及び角部吹出流路48a~48cは、室内熱交換器51の外側において上下方向に伸びている。吹出流路47a~47dは、第1吹出流路47aと、第2吹出流路47bと、第3吹出流路47cと、第4吹出流路47dとから構成されている。第1吹出流路47aは、その下端において第1吹出口37aと連通している。第2吹出流路47bは、その下端において第2吹出口37bと連通している。第3吹出流路47cは、その下端において第3吹出口37cと連通している。第4吹出流路47dは、その下端において第4吹出口37dと連通している。角部吹出流路48a~48cは、第1角部吹出流路48aと、第2角部吹出流路48bと、第3角部吹出流路48cとから構成されている。第1角部吹出流路48aは、その下端において第1角部吹出口38aと連通している。第2角部吹出流路48bは、その下端において第2角部吹出口38bと連通している。第3角部吹出流路48cは、その下端において第3角部吹出口38cと連通している。
【0074】
(3-2)室内熱交換器の概略構造
図9は、室内熱交換器51の概略外観斜視図である。
図10は、室内熱交換器51の複数の室内フィン60の風上側の部分拡大外観斜視図である。
【0075】
室内熱交換器51は、室内ファン52と同一の高さ位置において、室内ファン52の周囲を囲むように曲げられた状態で、ケーシング本体31の内部に配置されている。室内熱交換器51は、主として、液側ヘッダ81と、ガス側ヘッダ71と、折返しヘッダ59と、複数の室内扁平管55と、複数の室内フィン60とを有している。室内熱交換器51を構成するこれらの部品は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており、互いにロウ付け等によって接合されている。
【0076】
室内熱交換器51は、室内空気流れ方向の上流側を構成する風上熱交換部70と、室内空気流れ方向の下流側を構成する風下熱交換部80とを有している。室内空気流れ方向とは、室内熱交換器51を通過する室内空気が流れる方向である。室内空気流れ方向は、室内扁平管55の長手方向、及び、上下方向と交差している方向である。風上熱交換部70は、室内熱交換器51の平面視における内側部分である。風下熱交換部80は、室内熱交換器51の平面視における外側部分である。以下、室内熱交換器51に関する説明において、「風上側」は室内空気流れ方向の上流側を意味し、「風下側」は室内空気流れ方向の下流側を意味する。
【0077】
液側ヘッダ81は、風下熱交換部80の平面視における一端を構成している。液側ヘッダ81は、上下方向に延びた円筒形状の部材である。液側ヘッダ81には、液冷媒連絡管4の室内側の端部が接続されている。液側ヘッダ81には、風下熱交換部80を構成している複数の室内扁平管55が接続されている。
【0078】
ガス側ヘッダ71は、風上熱交換部70の平面視における一端を構成している。ガス側ヘッダ71は、上下方向に延びた円筒形状の部材である。ガス側ヘッダ71には、ガス冷媒連絡管5の室内側の端部が接続されている。ガス側ヘッダ71には、風上熱交換部70を構成している複数の室内扁平管55が接続されている。
【0079】
折返しヘッダ59は、室内熱交換器51の端部であって、平面視において液側ヘッダ81及びガス側ヘッダ71の反対側の端部を構成している。折返しヘッダ59は、内部において、上下方向に並んだ複数の折返し空間を有している。折返し空間は、同一の高さ位置に設けられた、風上熱交換部70の室内扁平管55と、風下熱交換部80の室内扁平管55とを接続している。これにより、折返しヘッダ59は、互いに異なる高さ位置に設けられた、風上熱交換部70の室内扁平管55、及び、風下熱交換部80の室内扁平管55を流れてきた冷媒同士が混ざり合うことを抑制する。また、折返しヘッダ59は、各高さ位置の室内扁平管55を流れた冷媒を、同一の高さ位置の風上側もしくは風下側の室内扁平管55に折り返して送ることを可能にする。室内熱交換器51が冷媒の放熱器として機能する場合、折返しヘッダ59は、冷媒を風上側に折り返す。室内熱交換器51が冷媒の蒸発器として機能する場合、折返しヘッダ59は、冷媒を風下側に折り返す。
【0080】
複数の室内扁平管55は、室内熱交換器51の風上熱交換部70において、上下方向に並んで配置された室内扁平管55と、室内熱交換器51の風下熱交換部80において、上下方向に並んで配置された室内扁平管55とを含んでいる。風上熱交換部70を構成する複数の室内扁平管55は、それぞれ、一端がガス側ヘッダ71に接続されており、他端が折返しヘッダ59の風上側部分に接続されている。風下熱交換部80を構成する複数の室内扁平管55は、それぞれ、一端が液側ヘッダ81に接続されており、他端が折返しヘッダ59の風下側部分に接続されている。
【0081】
複数の室内フィン60は、室内熱交換器51の風上熱交換部70を構成している室内扁平管55に固定された室内フィン60と、室内熱交換器51の風下熱交換部80を構成している室内扁平管55に固定された室内フィン60とを含んでいる。室内フィン60は、室内扁平管55の長手方向に沿って、室内フィン60の板厚方向に並べられている。
【0082】
(3-3)室内扁平管
図11は、室内熱交換器51の断面図であって、室内フィン60と室内扁平管55との位置関係を示す図である。
図11は、室内扁平管55内部の流路55cが延びている方向に対して垂直に室内扁平管55を切断した状態で、当該流路55cが延びている方向に沿って見た断面図である。
【0083】
室内扁平管55は、上側扁平面55aと、下側扁平面55bと、複数の流路55cとを有している。上側扁平面55aは、室内扁平管55の表面であって、鉛直方向上方を向いている上面である。下側扁平面55bは、室内扁平管55の表面であって、鉛直方向下方を向いている下面である。流路55cは、冷媒が流れる空間である。複数の流路55cは、室内空気流れ方向に並んで設けられている。室内空気流れ方向は、室内扁平管55の断面視における長手方向であり、
図11において矢印で示されている方向である。
【0084】
風上熱交換部70を構成している室内扁平管55と、風下熱交換部80を構成している室内扁平管55とは、室内空気流れ方向に沿って視た場合に、各高さ位置において互いに重なるように配置されている。
【0085】
また、室内熱交換器51では、
図11に示されるように、複数の室内扁平管55の風上側端部と、室内フィン60の風上側端部とは、室内空気流れ方向において概ね同じ位置に設けられている。
【0086】
風上熱交換部70及び風下熱交換部80の両方において、複数の室内扁平管55の断面寸法は、全て同じである。断面寸法とは、具体的には、室内扁平管55の幅WT、及び、室内扁平管55の高さHTである。室内扁平管55の幅WTは、室内扁平管55の断面視における長手方向(複数の流路55cが並んでいる方向)の寸法である。室内扁平管55の高さHTは、室内扁平管55の断面視における短手方向(上下方向)の寸法である。室内扁平管55の高さHTは、室内扁平管55の上側扁平面55aと下側扁平面55bとの間の距離に相当する。また、複数の室内扁平管55は、上下方向において所定の段ピッチDPで配置されている。段ピッチDPとは、上下方向において隣り合う2つの室内扁平管55の上側扁平面55aの間の距離に相当する。
【0087】
室内扁平管55の幅WTは、12mm以下である。室内扁平管55の幅WTは、10mm以下であることが好ましい。特に、室内扁平管55の幅WTは、3mm以上かつ12mm以下であることが好ましく、3mm以上かつ10mm以下であることがより好ましい。
【0088】
また、室内扁平管55は、HT/WT≧0.15の関係を満たしていることが好ましい。室内扁平管55は、HT/WT≧0.2の関係をさらに満たしていることが好ましい。特に、室内扁平管55は、0.15≦HT/WT≦0.3の関係を満たしていることが好ましく、0.2≦HT/WT≦0.3の関係を満たしていることがより好ましい。
【0089】
また、室内扁平管55のHT/WTの値は、室外扁平管90のHTo/WToの値よりも大きいことが好ましい。
【0090】
また、室内扁平管55の幅WTは、室外扁平管90の幅WToよりも小さいことが好ましい。
【0091】
また、室内扁平管55の高さHTは、1.2mm以上かつ2.5mm以下であることが好ましい。
【0092】
また、室内熱交換器51の段ピッチDPは、8.0mm以上かつ15.0mm以下であることが好ましい。
【0093】
また、室内熱交換器51の複数の室内フィン60の板厚方向におけるピッチは、室外熱交換器11の複数の室外フィン91の板厚方向におけるピッチよりも小さいことが好ましい。板厚方向におけるピッチとは、板厚方向において隣り合う室内フィン60の同じ側の面同士の間隔、又は、板厚方向において隣り合う室外フィン91の同じ側の面同士の間隔である。
【0094】
また、室内熱交換器51は、4.0≦DP/HT≦10.0の関係を満たしていることが好ましい。室内熱交換器51は、4.6≦DP/HT≦8.0の関係をさらに満たしていることが好ましい。
【0095】
また、室内熱交換器51のDP/HTの値は、室外熱交換器11のDPo/HToの値よりも小さいことが好ましい。
【0096】
(3-4)室内フィン
室内フィン60は、室内空気流れ方向及び上下方向に広がる板状部材である。室内フィン60は、その板厚方向に沿って所定の間隔で複数配置されている。各室内フィン60には、複数の室内扁平管55が固定されている。風上熱交換部70を構成している室内フィン60と、風下熱交換部80を構成している室内フィン60とは、室内空気流れ方向に沿って視た場合に、概ね互いに重なるように配置されている。風上熱交換部70を構成している室内フィン60の風下側の端部と、風下熱交換部80を構成している室内フィン60の風上側の端部とは、少なくとも一部分において互いに接触している。
【0097】
風上熱交換部70及び風下熱交換部80の両方において、室内フィン60は、主として、主面61と、複数のフィンカラー部65aと、室内連通部64と、複数の風上部65と、メインスリット62と、連通位置スリット63とを有している。室内フィン60の主面61における板厚方向の寸法は、例えば、0.05mm以上かつ0.15mm以下である。複数の室内フィン60の板厚方向におけるピッチ(互いに隣り合う室内フィン60の同じ側の面同士の間隔)は、1.0mm以上かつ1.6mm以下であることが好ましい。
【0098】
主面61は、室内フィン60の表面であって、フィンカラー部65a、メインスリット62及び連通位置スリット63が設けられていない平坦部分に相当する。
【0099】
フィンカラー部65aは、室内フィン60の風上側の縁部から、室内フィン60の風下側の縁部の近傍まで、室内空気流れ方向(水平方向)に沿って延びるように形成されている。複数のフィンカラー部65aは、上下方向に並ぶように設けられている。フィンカラー部65aは、バーリング等によって形成されている。フィンカラー部65aの輪郭形状は、室内扁平管55の断面の外形にほぼ一致している。フィンカラー部65aには、室内扁平管55が挿入された状態でロウ付け固定されている。
【0100】
図12は、室内フィン60と室内扁平管55との接合状態を示す断面図である。
図12は、室内扁平管55の流路55c内を冷媒が通過する方向、及び、鉛直方向を含む面で室内熱交換器51を切断した断面図である。
図12に示されるように、フィンカラー部65aは、主面61に対して、主面61の板厚方向においてメインスリット62の切り起こし側とは反対側に立ち上げられて構成されている。フィンカラー部65aの主面61側の反対側には、当該フィンカラー部65aに固定されている室内扁平管55の上側扁平面55a(又は下側扁平面55b)から遠ざかる方向に延びるように曲げられた位置決め部65xが設けられている。位置決め部65xは、隣り合う室内フィン60の主面61に面接触することで、複数の室内フィン60の板厚方向におけるピッチを規定している。
【0101】
また、
図12に示されるように、フィンカラー部65aは、室内扁平管55の上側扁平面55a(又は下側扁平面55b)との間にロウ材58が介在した状態で、ロウ付けにより室内扁平管55に接合されている。
図12に示されるように、室内扁平管55の下側扁平面55b側において、主面61に対するフィンカラー部65aの立ち上げが始まっている箇所と、メインスリット62の切り起こしが始まっている箇所との間の距離DSは、1mm以下であることが好ましい。室内扁平管55の下側扁平面55bにおける結露水は、メインスリット62の切り起こしが始まっている箇所を介して下方に導かれて排水される。そのため、当該距離DSを1mm以下の短い距離とすることで、室内扁平管55の下側扁平面55bにおいて結露水が保持されることが抑制される。
【0102】
室内連通部64は、室内フィン60の一部であって、室内扁平管55の風下側の端部よりもさらに風下側において、上下方向に連続して延びている部分である。WLを室内空気流れ方向における室内連通部64の長さとし、WFを室内空気流れ方向における室内フィン60の長さとした場合、室内フィン60は、0.2≦WL/WF≦0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0103】
風上部65は、上下方向において隣り合う2つのフィンカラー部65aに挟まれている部分である。各室内フィン60では、複数の風上部65が、互いに異なる高さ位置において、室内連通部64の風上側の端部からさらに風上側に向かって伸びている。風上部65の上下方向の寸法は、DP-HTで表される。
【0104】
メインスリット62は、室内フィン60の伝熱性能を向上させるために、平坦な主面61から板厚方向に切り起こされて構成された部分である。メインスリット62は、各風上部65に形成されている。メインスリット62は、室内空気流れ方向に沿って複数並ぶように形成されている。
【0105】
連通位置スリット63は、室内フィン60の伝熱性能を向上させるために、平坦な主面61から板厚方向に切り起こされて構成された部分である。連通位置スリット63は、室内連通部64において、複数の高さ位置に形成されている。連通位置スリット63は、各高さ位置に設けられたメインスリット62の風下側に、それぞれ対応するように設けられている。連通位置スリット63は、その長手方向が上下方向に沿うように形成されている。連通位置スリット63の上端は、対応するメインスリット62の上端よりもさらに上方に位置する。連通位置スリット63の下端は、対応するメインスリット62の下端よりもさらに下方に位置する。
【0106】
メインスリット62及び連通位置スリット63は、平坦な主面61から板厚方向の同じ側に切り起こされることで、風上側及び風下側のそれぞれにおいて開口を形成する。
【0107】
(4)空気調和装置の動作
空気調和装置1は、冷房運転及び暖房運転を行う。冷房運転では、圧縮機8、室外熱交換器11、室外膨張弁12及び室内熱交換器51の順に冷媒が流れる。暖房運転では、圧縮機8、室内熱交換器51、室外膨張弁12及び室外熱交換器11の順に冷媒が流れる。
【0108】
(4-1)冷房運転
冷房運転時では、室外熱交換器11が冷媒の放熱器として機能し、室内熱交換器51が冷媒の蒸発器として機能する。冷房運転時には、
図1の実線で示されるように四路切換弁10の接続状態が切り換えられる。冷媒回路6において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、室外ユニット2の圧縮機8に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機8から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁10を通って、室外熱交換器11に送られる。高圧のガス冷媒は、室外熱交換器11において、室外ファン15によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。高圧の液冷媒は、室外膨張弁12を通過する際に、冷凍サイクルにおける低圧になるまで減圧され、低圧の気液二相状態の冷媒となる。低圧の気液二相状態の冷媒は、液側閉鎖弁13及び液冷媒連絡管4を通って、室内ユニット3に送られる。
【0109】
室内ユニット3に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器51において、室内ファン52によって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内熱交換器51を通過する空気が冷却されて、室内の冷房が行われる。この際に、室内熱交換器51を通過する空気に含まれる水分が凝縮して、室内熱交換器51の表面に結露水が生じる。室内熱交換器51において蒸発した低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管5を通って、室外ユニット2に送られる。
【0110】
室外ユニット2に送られた低圧のガス冷媒は、ガス側閉鎖弁14、四路切換弁10及びアキュムレータ7を通って、圧縮機8に再び吸入される。
【0111】
(4-2)暖房運転
暖房運転時では、室外熱交換器11が冷媒の蒸発器として機能し、室内熱交換器51が冷媒の放熱器として機能する。暖房運転時には、
図1の破線で示されるように四路切換弁10の接続状態が切り換えられる。冷媒回路6において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、室外ユニット2の圧縮機8に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機8から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁10、ガス側閉鎖弁14及びガス冷媒連絡管5を通って、室内ユニット3に送られる。
【0112】
室内ユニット3に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器51において、室内ファン52によって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。これにより、室内熱交換器51を通過する空気が加熱されて、室内の暖房が行われる。室内熱交換器51で放熱した高圧の液冷媒は、液冷媒連絡管4を通って、室外ユニット2に送られる。
【0113】
室外ユニット2に送られた高圧の液冷媒は、液側閉鎖弁13を通り、室外膨張弁12において冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器11において、室外ファン15によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。低圧のガス冷媒は、四路切換弁10及びアキュムレータ7を通って、圧縮機8に再び吸入される。
【0114】
(5)特徴
(5-1)
一般的に、室内熱交換器における室内フィンの熱伝達率は、室内扁平管の幅を大きくするほど高くすることができる。しかし、室内扁平管の幅を大きくすると、室内扁平管の表面(上面及び下面)に滞留しようとする結露水が排出されにくくなる。その結果、室内熱交換器の結露水の排出性が低下して、結露水が室内に飛散しやすくなる。特に、高温かつ高湿度の室内では結露水が生じやすいので、室内機の風速を高くすると結露水がより室内に飛散しやすくなる。
【0115】
本実施形態の室内熱交換器51及びこれを備える空気調和装置1では、室内熱交換器51を構成する室内扁平管55の幅WTは、12mm以下である。このように、室内扁平管55の幅WTに上限を設けることで、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水を速やかに排出することができるので、結露水の排出性の低下が抑制される。また、室内扁平管55の幅WTが10mm以下となるように室内熱交換器51を構成した場合、結露水の排出性の低下がより効果的に抑制される。このように室内扁平管55の幅WTの上限を設定することが結露水の排出性低下の抑制のために良好であることは、WTの値を変化させた解析データにより明らかとなった。
図13は、WTの値を変化させたデータの具体例である。
図13において、横軸は、室内扁平管55の幅WTを表し、縦軸は、排水時間を表す。ここで、排水時間とは、室内熱交換器51を埋没させた水槽から室内熱交換器51を引き上げた時点から、室内熱交換器51の排水が完了して室内熱交換器51の重量が一定になった時点までの時間である。排水時間が短いほど、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水の排出性が優れている。なお、
図13において、室内扁平管55の高さHTは2mmであり、段ピッチDPは10mmであり、室内空気流れ方向における室内連通部64の長さWLは3mmである。
図13に示されるように、WTを12mm以下に設定することで、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水が速やかに排出される。特に、WTを10mm以下に設定することで、結露水がより速やかに排出される。
【0116】
従って、室内熱交換器51は、室内扁平管55の幅WTに上限を設けることで、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水を排出しやすくし、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制する。また、室内扁平管55の幅WTに上限を設けることで、室内フィン60の寸法を小さくして、室内ユニット3のコンパクト化を達成することができる。
【0117】
なお、室内扁平管55の幅WTが小さすぎると、室内フィン60の室内連通部64の室内空気流れ方向の寸法が大きくなる。その結果、室内フィン60の領域の内、室内扁平管55から離れた領域に熱が伝導しにくくなり、室内フィン60の伝熱性能が低下するおそれがある。そのため、室内フィン60の伝熱性能を確保する観点からは、室内扁平管55の幅WTに下限を設けることが好ましく、具体的には、室内扁平管55の幅WTを3mm以上とすることが好ましい。これにより、室内フィン60の伝熱性能を確保しつつ、結露水の排出性の低下を抑制することが可能となる。
【0118】
(5-2)
一般的に、室内熱交換器における室内フィンの熱伝達率は、室内扁平管の高さと幅との比が小さいほど、室内扁平管の幅が大きくなる傾向があるので、上記の理由により結露水が室内に飛散しやすくなる。
【0119】
本実施形態の室内熱交換器51及びこれを備える空気調和装置1では、HTを室内扁平管55の高さとし、WTを室内扁平管55の幅とした場合に、室内熱交換器51を構成する室内扁平管55は、HT/WT≧0.15の関係を満していることが好ましい。このように、室内扁平管55のHT/WTに下限を設けることで、実質的に、室内扁平管55の幅WTに上限を設けることができる。その結果、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水の排出性の低下が抑制される。また、室内扁平管55がHT/WT≧0.20を満たすように室内熱交換器51を構成した場合、結露水の排出性の低下がより効果的に抑制される。このように室内扁平管55のHT/WTの下限を設定することが結露水の排出性低下の抑制のために良好であることは、HT/WTの値を変化させた解析データにより明らかとなった。
図14は、HT/WTの値を変化させたデータの具体例である。
図14において、横軸は、室内扁平管55の高さHTと室内扁平管55の幅WTとの比HT/WTを表し、縦軸は、排水時間を表す。
図14に示される排水時間は、
図13に示される排水時間と同じである。なお、
図14において、段ピッチDPは10mmであり、室内空気流れ方向における室内連通部64の長さWLは3mmである。
図14に示されるように、HT/WTを0.15以上に設定することで、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水が速やかに排出される。特に、HT/WTを0.20以上に設定することで、結露水がより速やかに排出される。
【0120】
従って、室内熱交換器51は、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水を排出しやすくして、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制する。
【0121】
なお、室内フィン60の伝熱性能を確保する観点からは、室内扁平管55の幅WTは、所定の値以上であることが好ましい。そのため、HT/WT≧0.15の関係、又は、HT/WT≧0.20の関係に加えて、室内扁平管55がHT/WT≦0.3の関係をさらに満たすように、室内熱交換器51が構成されていることが好ましい。これにより、実質的に、室内扁平管55の幅WTに下限を設けることができるので、上記の理由により室内フィン60の伝熱性能を十分に確保することができる。
【0122】
(5-3)
本実施形態の室内熱交換器51を備える空気調和装置1では、室内扁平管55の幅WTは、室外扁平管90の幅WToよりも小さいことが好ましい。室外熱交換器11では、室外フィン91の着霜耐力を確保する観点から、室外フィン91の室外空気流れ方向の寸法は大きいほど好ましい。室外フィン91の室外空気流れ方向の寸法が大きくなるほど、室外扁平管90の幅WToも大きくなる傾向がある。そのため、室内扁平管55の幅WTを、室外扁平管90の幅WToよりも小さくすることで、実質的に、室内扁平管55の幅WTに上限を設けることができる。これにより、室外フィン91の着霜耐力を確保しつつ、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水の排出性の低下を抑制することが可能となる。
【0123】
(5-4)
本実施形態の室内熱交換器51を備える空気調和装置1は、HTを室内扁平管55の高さとし、WTを室内扁平管55の幅とし、HToを室外扁平管90の高さとし、WToを室外扁平管90の幅とした場合に、HT/WT≧HTo/WToの関係を満たすことが好ましい。室外熱交換器11では、室外フィン91の着霜耐力を確保する観点から、室外フィン91の室外空気流れ方向の寸法は大きいほど好ましい。室外フィン91の室外空気流れ方向の寸法が大きくなるほど、室外扁平管90の幅WToも大きくなる傾向がある。そのため、室内扁平管55のHT/WTの値を、室外扁平管90のHTo/WToの値よりも大きくすることで、実質的に、室内扁平管55の幅WTに上限を設けることができる。これにより、室外フィン91の着霜耐力を確保しつつ、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水の排出性の低下を抑制することが可能となる。
【0124】
(5-5)
本実施形態の室内熱交換器51は、風上熱交換部70及び風下熱交換部80を有している。すなわち、室内熱交換器51は、室内空気流れ方向において、室内扁平管55が2列に配置された構造を有している。室内扁平管55の列とは、上下方向に並んで配置された複数の室内扁平管55の集まりである。すなわち、室内熱交換器51は、風上熱交換部70を構成する複数の室内扁平管55の列と、風下熱交換部80を構成する複数の室内扁平管55の列とからなる、2列の室内扁平管55を有している。
【0125】
室内熱交換器51は、2列の室内扁平管55を有しているため、室内熱交換器51で生じる結露水の内、風上熱交換部70で生じた結露水は、風上熱交換部70と風下熱交換部80との間の部分、又は、風下熱交換部80において下方に排水される。このように、室内扁平管55の列が1つのみの場合よりも、室内扁平管55の列が複数ある場合の方が、結露水の排水経路をより多く確保することができる。そのため、室内熱交換器51は、室内扁平管55の列を複数有することで、結露水の排水性を向上させることが可能となる。
【0126】
また、風下熱交換部80には、風上熱交換部70を通過する際に風上熱交換部70において結露水を生じさせることで乾き度が増した空気が供給されるため、風下熱交換部80で生じる結露水が少なく抑えられる。その結果、風下熱交換部80の風下側端部からの結露水の飛散が抑制される。そのため、室内熱交換器51は、室内扁平管55の列を複数有することで、結露水の飛散を抑制することが可能となる。
【0127】
一方、本実施形態の室内熱交換器51を備える空気調和装置1では、室外熱交換器11は、室外扁平管90を1列のみ有している。すなわち、空気調和装置1では、室内扁平管55の列の数は、室外扁平管90の列の数より多い。このように、室内扁平管55の列の数を、室外扁平管90の列の数以上に設定することで、室内扁平管55の列の下限を設定することができる。その結果、例えば、室内扁平管55の列が複数ある場合に、結露水の排水経路をより多く確保することができるので、結露水の排水性を向上させることが可能となる。従って、室内熱交換器51では、室内扁平管55の列を、室外扁平管90の列の数以上にすることで、結露水の排水性を向上させることが可能となる。
【0128】
(5-6)
本実施形態の室内熱交換器51では、室内フィン60は、室内扁平管55の風下側に室内連通部64を有している。このため、室内扁平管55で生じた結露水は、室内扁平管55の風下側に位置している室内連通部64を伝いながら下方に排出されやすい。そのため、室内扁平管55の風下側に室内連通部64を設けることで、室内フィン60の風下側の端部からの結露水の飛散が抑制される。
【0129】
一方、本実施形態の室内熱交換器51を備える空気調和装置1では、室外熱交換器11の室外フィン91は、室外扁平管90の風上側に室外連通部97aを有している。暖房運転時では、室外熱交換器11を通過する空気に含まれる水分が凝縮して排出される。しかし、一般的に、暖房運転時に室外熱交換器11から排出される水の量は、冷房運転時に室内熱交換器51から排出される結露水の量よりも少ない。そのため、室外熱交換器11では、室内熱交換器51と比較して、結露水の飛散が問題となりにくい。さらに、室外フィン91の着霜耐力を確保する観点から、室外連通部97aは、室外扁平管90の風下側よりも風上側に設けられていることが好ましい。そのため、室外扁平管90の風上側に室外連通部97aを設けることで、室外フィン91の着霜耐力を確保することができる。
【0130】
(5-7)
本実施形態の室内熱交換器51を備える空気調和装置1では、室内熱交換器51の複数の室内フィン60の板厚方向におけるピッチは、室外熱交換器11の複数の室外フィン91の板厚方向におけるピッチよりも小さいことが好ましい。この場合、例えば、室内フィン60のピッチは1.0mm~1.8mmに設定され、室外フィン91のピッチは1.2mm~2.0mmに設定される。室内フィン60をコンパクトにして、スリット(メインスリット62及び連通位置スリット63)の伝熱を促進することで、室内フィン60の伝熱性能を向上させるためには、室内フィン60の幅を室外フィン91の幅より小さくすることに加えて、室内フィン60のピッチを室外フィン91のピッチより小さくする必要がある。
【0131】
(5-8)
一般的に、室内熱交換器における室内フィンの熱伝達率は、室内扁平管の間隔が小さいほど高くなる。しかし、室内扁平管の間隔を小さくすると、室内扁平管の間を通過する空気の流速が増大して、結露水が飛散しやすくなる。また、室内扁平管の高さを大きくすると、同様に、室内扁平管の間を通過する空気の流速が増大して、結露水が飛散しやすくなる。一方、室内扁平管の間隔を広くすると、室内フィンの熱伝達率が低下するので、室内熱交換器における冷媒の蒸発温度を下げざるを得ず、結露水が生じやすい環境になってしまう。
【0132】
本実施形態の室内熱交換器51及びこれを備えた空気調和装置1では、室内熱交換器51は、HTを室内扁平管55の高さとし、DPを複数の室内扁平管55の高さ方向のピッチとした場合に、4.0≦DP/HT≦10.0の関係を満たすことが好ましい。このように、室内熱交換器51のDP/HTの値を当該数値範囲とすることが結露水の抑制のために良好であることは、DP及びHTの各値を変化させた解析データにより明らかとなった。
【0133】
室内熱交換器51のDP/HTの値を4.0以上とすることにより、室内フィン60を横切る空気の流速が大きくなりすぎることが抑制される。その結果、室内ファン52の風量を大きくしても、室内フィン60からの結露水の飛散が抑制される。
【0134】
また、室内熱交換器51のDP/HTの値を10.0以下とすることにより、室内フィン60の領域の内、室内扁平管55から離れた領域を狭くして、室内フィン60の熱伝達率を向上させることができる。これにより、所定の冷房能力を確保するために室内熱交換器51の冷媒の蒸発温度を低下させる必要性が低下するので、結露水が生じにくくなる。そのため、室内ファン52の風量を大きくしても、室内フィン60からの結露水の飛散が抑制される。
【0135】
なお、室内熱交換器51は、4.6≦DP/HT≦8.0の関係をさらに満たすことが好ましい。この場合、結露水の飛散を抑制する効果をより向上させることが可能になる。
【0136】
(5-9)
一般的に、空気調和装置の室外ユニットに用いられる室外熱交換器では、冷媒の蒸発器として機能させる際の室外フィンでの着霜により通風抵抗が増大しがちになることから、室外扁平管のピッチを広くとることが求められる。しかし、室内熱交換器において、室内扁平管のピッチが広い構造を採用すると、室内扁平管のピッチが広いために室内フィンの熱伝達率が低下し、室内熱交換器における冷媒の蒸発温度を下げざるを得ず、結露水が生じやすくなってしまう。
【0137】
本実施形態の室内熱交換器51及びこれを備えた空気調和装置1は、HTを室内扁平管55の高さとし、DPを複数の室内扁平管55の高さ方向のピッチとし、HToを室外扁平管90の高さとし、DPoを複数の室外扁平管90の高さ方向のピッチとした場合に、室内熱交換器51のDP/HTの値が、室外熱交換器11のDPo/HToの値よりも小さい関係を満たすことが好ましい。
【0138】
これにより、結露水の飛散が問題となりにくい室外熱交換器11においては、蒸発器として用いられる場合の着霜を抑制しつつ、結露水の飛散が問題となりやすい室内熱交換器51においては、室内フィン60の熱伝達率を向上させて結露水を生じにくくさせ、結露水の飛散を抑制させることが可能になる。
【0139】
(5-10)
本実施形態の室内熱交換器51では、WFを室内空気流れ方向における室内フィン60の長さとし、WLを室内空気流れ方向における室内連通部64の長さとした場合に、室内フィン60は、0.2≦WL/WF≦0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0140】
室内フィン60のWL/WFの値を0.2以上とすることで、室内連通部64の室内空気流れ方向の幅を十分に確保して、室内熱交換器51で生じた結露水を、室内連通部64を介して排出させやすくすることが可能になる。また、室内フィン60のWL/WFの値を0.5以下とすることで、室内フィン60の領域の内、室内扁平管55から離れて伝熱性能の向上に寄与しにくい領域の面積を抑えて、室内フィン60の伝熱性能を維持しつつ室内フィン60の材料費を抑制することが可能になる。
【0141】
また、室内連通部64を室内扁平管55の風下側に位置させつつ、室内フィン60のWL/WFの値を0.2以上とすることで、室内扁平管55で生じた結露水の排水性を高めることが可能になる。
【0142】
(5-11)
本実施形態の室内熱交換器51では、室内フィン60は、室内空気流れ方向に開口が生じるように切り起こされたメインスリット62及び連通位置スリット63を有している。このため、室内熱交換器51に供給される空気を、室内フィン60に十分に接触させることができるので、空気熱源を十分に利用することが可能となる。
【0143】
なお、メインスリット62及び連通位置スリット63の上端は、それらの上方に位置する室内扁平管55の下端近傍に位置している。そのため、当該室内扁平管55において生じた結露水が、メインスリット62及び連通位置スリット63に捕らえられやすいので、結露水が排出されやすい。特に、
図12に示される距離DSが1mm以下に設計されることにより、室内扁平管55の下側扁平面55b側における結露水の滞留がより効果的に抑制されるので、結露水の排水性が向上する。
【0144】
(6)変形例
(6-1)変形例A
上記実施形態では、室内フィン60の風下側(室内空気流れ方向の下流側)の端部は、平坦な形状である。しかし、室内フィン60の風下側端部の形状は、平坦な形状に限られない。例えば、以下に述べるように、室内フィン60は、風下側端部に沿うように延びた導水リブ99を有してもよい。
【0145】
図15は、室内フィン60aと室内扁平管55との位置関係を示す説明図である。
図16は、室内フィン60aが有する導水リブ99の断面図であって、
図15のB-B断面の内の風下側近傍部分の説明図である。
【0146】
本変形例に係る室内熱交換器51は、上記実施形態と同様に、風上熱交換部70と風下熱交換部80とを有している。風上熱交換部70及び風下熱交換部80のそれぞれの室内フィン60aは、導水リブ99を有している。導水リブ99は、室内フィン60aの風下側に設けられた室内連通部64の風下側端部に沿うように、上下方向に延びている。導水リブ99は、
図16に示されるように、周囲の主面61に対して、室内フィン60aの板厚方向に向かって凹むように構成されている。導水リブ99は、室内フィン60aの板厚以上に凹んで構成されていることが好ましい。
【0147】
このように、室内フィン60aに導水リブ99を設けることで、室内熱交換器51において生じた結露水は導水リブ99に捕らえられるので、導水リブ99を伝って下方に結露水が導かれやすくなる。このため、室内フィン60aの風下側端部に結露水が到達することが抑制され、結露水の飛散が効果的に抑制される。
【0148】
導水リブ99は、室内連通部64の室内空気流れ方向の幅の半分よりも風下側に設けられていることが好ましい。導水リブ99は、室内連通部64の室内空気流れ方向の幅の内、風下側端部から20%以内の位置に設けられていることがより好ましい。
【0149】
なお、導水リブ99を有する室内フィン60aにおいて、室内連通部64の室内空気流れ方向における幅WLと、室内フィン60の室内空気流れ方向における幅WFとは、0.2≦WL/WFの関係を満たしていることが好ましい。
【0150】
(6-2)変形例B
上記実施形態では、室内熱交換器51は、風上熱交換部70と風下熱交換部80とを有しており、室内空気流れ方向において室内扁平管55が2列に並んで設けられている。しかし、室内熱交換器51が備える室内扁平管55は、2列に限られるものではなく、3列以上であってもよい。室内扁平管55の列の数を増やすことで、結露水の排水経路をより多く確保することができるので、室内熱交換器51の風下側端部からの結露水の飛散をより効果的に抑制することが可能となる。
【0151】
(6-3)変形例C
上記実施形態では、室内熱交換器51において、風上熱交換部70に属する複数の室内扁平管55と、風下熱交換部80に属する複数の室内扁平管55とは、室内空気流れ方向に沿って視た場合において、概ね互いに重なるように配置されている。
【0152】
しかし、室内熱交換器51の室内扁平管55の配置は、これに限られるものではない。例えば、風上熱交換部70に属する複数の室内扁平管55と、風下熱交換部80に属する複数の室内扁平管55とは、室内空気流れ方向に沿って視た場合において、互いに重ならないように配置されていてもよい。これにより、風上側に位置する室内扁平管55にも風下側に位置する室内扁平管55にも、室内空気の流れを十分に当てることが可能になるので、室内熱交換器51の伝熱性能が向上する。
【0153】
(6-4)変形例D
上記実施形態では、室内熱交換器51の室内フィン60は、メインスリット62及び連通位置スリット63を有している。メインスリット62及び連通位置スリット63は、室内フィン60の主面61に対して板厚方向の一方側にスリット全体が位置するように切り起こされて構成されている。
【0154】
しかし、室内フィン60に形成されるメインスリット62及び連通位置スリット63の切り起こし方は、これに限られない。例えば、メインスリット62及び連通位置スリット63の代わりに、例えば、ルーバーと称される構造が採用されてもよい。ルーバーとは、切り起こされて構成されるスリットの一種である。例えば、ルーバーの風上側端部は、室内フィン60の主面61の板厚方向の一方の側に位置し、ルーバーの風下側端部は、室内フィン60の主面61の板厚方向の他方の側に位置している。
【0155】
(6-5)変形例E
上記実施形態では、室内熱交換器51は、2列の室内扁平管55を有している。しかし、室内熱交換器51として、2列の室内扁平管55を有している室内熱交換器51の他に、1列のみの室内扁平管55を有している室内熱交換器51が用いられてもよい。この場合、室内熱交換器51は、室内扁平管55の幅WTが12mm以下でなくても、室内扁平管55が、HT/WT≧0.15の関係を満たしていればよい。また、室内扁平管55は、HT/WT≧0.2の関係をさらに満たしていることが好ましい。特に、室内扁平管55は、0.15≦HT/WT≦0.3の関係を満たしていることが好ましく、0.2≦HT/WT≦0.3の関係を満たしていることがより好ましい。
【0156】
本変形例においても、実施形態と同様に、室内熱交換器51は、室内扁平管55の表面に滞留しようとする結露水を排出しやすくして、冷媒の蒸発器として用いられた場合に生じる結露水の飛散を抑制する。
【0157】
また、本変形例では、室内扁平管55の幅WTは、12mm以下であることが好ましい。この場合、室内扁平管55の幅WTは、10mm以下であることがより好ましい。特に、室内扁平管55の幅WTは、3mm以上かつ12mm以下であることが好ましく、3mm以上かつ10mm以下であることがより好ましい。
【0158】
また、室内扁平管55のHT/WTの値は、室外扁平管90のHTo/WToの値よりも大きいことが好ましい。
【0159】
また、室内扁平管55の幅WTは、室外扁平管90の幅WToよりも小さいことが好ましい。
【0160】
また、室内扁平管55の高さHTは、1.2mm以上かつ2.5mm以下であることが好ましい。
【0161】
また、室内熱交換器51の段ピッチDPは、8.0mm以上かつ15.0mm以下であることが好ましい。
【0162】
また、室内熱交換器51の複数の室内フィン60の板厚方向におけるピッチは、室外熱交換器11の複数の室外フィン91の板厚方向におけるピッチよりも小さいことが好ましい。
【0163】
また、室内熱交換器51は、4.0≦DP/HT≦10.0の関係を満たしていることが好ましい。室内熱交換器51は、4.6≦DP/HT≦8.0の関係をさらに満たしていることが好ましい。
【0164】
また、室内熱交換器51のDP/HTの値は、室外熱交換器11のDPo/HToの値よりも小さいことが好ましい。
【0165】
また、WLを室内空気流れ方向における室内連通部64の長さとし、WFを室内空気流れ方向における室内フィン60の長さとした場合、室内フィン60は、0.2≦WL/WF≦0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0166】
(7)むすび
以上、本開示の実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0167】
1 空気調和装置
2 室外ユニット(室外機)
3 室内ユニット(室内機)
11 室外熱交換器
51 室内熱交換器
55 室内扁平管(扁平管)
55c 流路
60 室内フィン(伝熱フィン)
62 メインスリット(切り起こし部)
63 連通位置スリット(切り起こし部)
64 室内連通部(連通部)
65 風上部(上下に並んだ扁平管同士の間に位置する各部分)
90 室外扁平管(扁平管)
90c 流路
91 室外フィン(伝熱フィン)
97a 連通部
97b 風下部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0168】