(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】収納容器及び収納容器群
(51)【国際特許分類】
B65D 1/26 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65D1/26 120
(21)【出願番号】P 2019176671
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【氏名又は名称】野口 晴加
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】荒内 隆志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅也
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-093296(JP,A)
【文献】特開2007-015160(JP,A)
【文献】特開2008-265809(JP,A)
【文献】特開2017-178400(JP,A)
【文献】特開2004-182326(JP,A)
【文献】特開2012-116540(JP,A)
【文献】米国特許第05002833(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群から取り出された収納容器であって、当該収納容器が、紙材料から構成される基材層と、前記基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層
(前記PBT樹脂層に離型剤が配合されているものを除く。)から構成され、
前記基材層の坪量は、20g/m
2~100g/m
2であり、
前記PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、
前記PBT樹脂層の結晶化度が9.0%以上であ
る収納容器。
【請求項2】
シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群から取り出された収納容器であって、当該収納容器が、紙材料から構成される基材層と、前記基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、
前記基材層の坪量は、20g/m
2~100g/m
2であり、
前記PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、
前記PBT樹脂層の結晶化度が11.7%~20.2%であ
り、
前記基材層の坪量の前記PBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8である収納容器。
【請求項3】
シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群から取り出された収納容器であって、当該収納容器が、紙材料から構成される基材層と、前記基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、周方向にわたり襞が形成される周壁部を有するものであり、
前記基材層の坪量は、20g/m
2~100g/m
2であり、
前記PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、
前記PBT樹脂層の結晶化度が
11.7%~20.2%であ
り、
前記基材層の坪量の前記PBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8である収納容器。
【請求項4】
前記PBT樹脂層の結晶化度は、11.5%以上である、請求項
1記載の収納容器。
【請求項5】
前記基材層の坪量の前記PBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、0.67~20である、請求項
1記載の収納容器。
【請求項6】
シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群であって、当該収納容器群を構成する各々の収納容器が紙材料から構成される基材層と、前記基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層
(前記PBT樹脂層に離型剤が配合されているものを除く。)から構成され、
前記基材層の坪量は、20g/m
2~100g/m
2であり、
前記PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、
前記PBT樹脂層の結晶化度が9.0%以上であ
る収納容器群。
【請求項7】
シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群であって、当該収納容器群を構成する各々の収納容器が紙材料から構成される基材層と、前記基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、
前記基材層の坪量は、20g/m
2~100g/m
2であり、
前記PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、
前記PBT樹脂層の結晶化度が11.7%~20.2%であ
り、
前記基材層の坪量の前記PBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8である収納容器群。
【請求項8】
シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群であって、当該収納容器群を構成する各々の収納容器が紙材料から構成される基材層と、前記基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、周方向にわたり襞が形成される周壁部を有するものであり、
前記基材層の坪量は、20g/m
2~100g/m
2であり、
前記PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、
前記PBT樹脂層の結晶化度が
11.7%~20.2%であ
り、
前記基材層の坪量の前記PBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8である収納容器群。
【請求項9】
前記PBT樹脂層の結晶化度は、11.5%以上である、請求項
6記載の収納容器群。
【請求項10】
積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生する部分ブロッキングが発生していない請求項9記載の収納容器群。
【請求項11】
前記基材層の坪量の前記PBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、0.67~20である、請求項
6記載の収納容器群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納容器及び複数の収納容器を積層してなる収納容器群に関し、特に、シート状部材からなる収納容器及び複数の収納容器を積層してなる収納容器群に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙にPBT樹脂フィルムを積層したシート状部材からなり、底部と周壁部とを有し上面が開口する容器は、例えば食品の収納用として広く使用されている。このような収納容器には、上部が開口し、底部と、底部の周縁から立ち上がり、襞状に形成された周壁部とを備えるものがあり、例えば、おかず等の食品を弁当箱において小分にして収納する等の用途で使用される。
【0003】
又、製造効率向上のため、例えば、特許文献1のように、複数のシート状の被成形体を重ねた状態で熱プレス成形することによって複数の収納容器を一体的に形成する技術が知られている。このような一体的な形成技術により製造された複数の収納容器(収納容器群)は、プラスチック成型容器に格納されて、市場に供給される。
【0004】
そして、使用時には使用者がプラスチック成型容器に格納された収納容器群から必要数を取り出し使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5は、従来の収納容器群のブロッキングについて示した模式図である。同図を参照して、しかしながら、従来、収納容器群の形成時に、隣り合う上下の収納容器同士が引っ付く現象(以下「ブロッキング」)が発生することが知られていた。同図に示すように、第1の収納容器111と、これに隣接する第2の収納容器112との間に、ブロッキング発生部150が生じ、第1の収納容器111と、第2の収納容器112とが引っ付くことがあった。又、このブロッキングが発生すると、使用者が収納容器を円滑に取り出せなかったり、取り出し時に、上下のいずれか一方の収納容器の一部が剥離し、他方の収納容器に残存してしまったりしていた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ブロッキングが抑制された収納容器及び収納容器群を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者の鋭意研究により、ブロッキングの発生が、PBT樹脂の結晶化度と相関があることが見出された。
【0009】
そこで、上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群から取り出された収納容器であって、当該収納容器が紙材料から構成される基材層と、基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層(PBT樹脂層に離型剤が配合されているものを除く。)から構成され、基材層の坪量は、20g/m2~100g/m2であり、PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、PBT樹脂層の結晶化度が9.0%以上であるものである。
【0010】
このように構成すると、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができる。
請求項2記載の発明は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群から取り出された収納容器であって、当該収納容器が、紙材料から構成される基材層と、基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、基材層の坪量は、20g/m2~100g/m2であり、PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、PBT樹脂層の結晶化度が11.7%~20.2%であり、基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8であるものである。
このように構成すると、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができ、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができる。
請求項3記載の発明は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群から取り出された収納容器であって、当該収納容器が、紙材料から構成される基材層と、基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、周方向にわたり襞が形成される周壁部を有するものであり、基材層の坪量は、20g/m2~100g/m2であり、PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、PBT樹脂層の結晶化度が11.7%~20.2%であり、基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8であるものである。
このように構成すると、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、PBT樹脂層の結晶化度は、11.5%以上であるものである。
【0012】
このように構成すると、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m2÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、0.67~20であるものである。
【0014】
このように構成すると、基材層の坪量とPBT樹脂層の厚みとが適正な範囲になる。
【0015】
請求項6記載の発明は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群であって、当該収納容器群を構成する各々の収納容器が紙材料から構成される基材層と、基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層(PBT樹脂層に離型剤が配合されているものを除く。)から構成され、基材層の坪量は、20g/m2~100g/m2であり、PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、PBT樹脂層の結晶化度が9.0%以上であるものである。
【0016】
このように構成すると、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができる。
請求項7記載の発明は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群であって、当該収納容器群を構成する各々の収納容器が紙材料から構成される基材層と、基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、基材層の坪量は、20g/m2~100g/m2であり、PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、PBT樹脂層の結晶化度が11.7%~20.2%であり、基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8であるものである。
このように構成すると、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができ、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができる。
請求項8記載の発明は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる収納容器群であって、当該収納容器群を構成する各々の収納容器が紙材料から構成される基材層と、基材層の少なくとも一方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層から構成され、周方向にわたり襞が形成される周壁部を有するものであり、基材層の坪量は、20g/m2~100g/m2であり、PBT樹脂層の厚みは、5μm~30μmであり、PBT樹脂層の結晶化度が11.7%~20.2%であり、基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m
2
÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、1~8であるものである。
このように構成すると、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができる。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、PBT樹脂層の結晶化度は、11.5%以上であるものである。
【0018】
このように構成すると、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができる。
【0019】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の構成において、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生する部分ブロッキングが発生していないものである。
【0020】
このように構成すると、使用時に収納容器を取り出しやすくなる。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m2÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、0.67~20であるものである。
【0022】
このように構成すると、基材層の坪量とPBT樹脂層の厚みとが適正な範囲になる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができるので、使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
請求項2記載の発明は、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができるので、使用時に取り出しやすく使いやすいものとなるとの効果に加えて、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができるので、より使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
請求項3記載の発明は、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができるので、使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができるので、より使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、基材層の坪量とPBT樹脂層の厚みとが適正な範囲になるので、製造及び使用上、より好ましいものが得られる。
【0026】
請求項6記載の発明は、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができるので、使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
請求項7記載の発明は、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができるので、使用時に取り出しやすく使いやすいものとなるとの効果に加えて、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができるので、更に使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
請求項8記載の発明は、積層された収納容器の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができるので、使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、更に、積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生することも防ぐことができるので、更に使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の効果に加えて、使用時に収納容器を取り出しやすくなるので、更に使用時に取り出しやすく使いやすいものとなる。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、基材層の坪量とPBT樹脂層の厚みとが適正な範囲になるので、製造及び使用上、より好ましいものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】この発明の第1の実施の形態の収納容器群を示す部分端面図である。
【
図2】
図1に示す収納容器群に含まれる1つの収納容器を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は、当該(b)におけるP部分の断面図を示している。
【
図3】収納容器群を作製する成形装置の一例を示す模式図である。
【
図4】ブロッキングの度合いについて説明する模式図である。
【
図5】従来の収納容器群のブロッキングについて示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1はこの発明の第1の実施の形態の収納容器群を示す部分端面図であり、
図2は、
図1に示す収納容器群に含まれる1つの収納容器を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は、当該(b)におけるP部分の断面図を示している。
【0032】
これらの図を参照して、収納容器群10は、上方が開口した収納容器11が複数個、上方に積層されて構成される。
【0033】
収納容器11は、平面視において円形状に形成される底部12と、この底部12の周縁から起立し、周方向にわたり襞が形成される周壁部13とを有する。収納容器11は、紙材料から構成される基材層15と、基材層15の上方に積層されるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂層16とから構成される。
【0034】
基材層15の坪量は、20g/m2~100g/m2であるが、より好ましくは、20g/m2~80g/m2である。
【0035】
PBT樹脂層16の厚みは、5μm~30μmであるが、より好ましくは、10μm~25μm、さらに好ましくは10μm~20μmである。
【0036】
ここで、基材層15の坪量(g/m2)のPBT樹脂層16の厚み(μm)に対する比(基材層の坪量g/m2÷PBT樹脂層の厚みμm)の値は、0.67~20であるが、より好ましくは、1~8である。このように構成すると、基材層の坪量とPBT樹脂層の厚みとが適正な範囲になるので、製造及び使用上、より好ましいものが得られる。
【0037】
上述の収納容器群10は、シート状部材を複数枚重ねた状態で熱プレス成形することによって得られる。熱プレス成形の方法について例示的に説明すると以下の通りである。
【0038】
図3は、収納容器群を作製する成形装置の一例を示す模式図である。
【0039】
同図を参照して、収納容器群を作製するプレス成形装置20は、雄型21と、雄型21に対応する雌型23と、雌型23の下流側に接続される筒部25とを備える。又、同図には特に図示していないが、雄型21を雌型23に対し接近・離隔させるための移動手段、雌型23及び筒部25のそれぞれを加熱するためヒータ、このヒータの動作を制御するための制御手段等を備える。
【0040】
このようなプレス成形装置20を用いて、収納容器は以下のような工程で作製される。始めに、ヒータで、雌型23及び筒部25を適温に加熱した状態とする。次に、雄型21と雌型23との間に複数のシート状部材としてのブランク積層体を配置し、続いて移動手段により雄型21を雌型23に接近する方向へ移動させ、雄型21と雌型23との間にブランク積層体を挟んだ状態とする。引き続き、雄型21と雌型23との間にブランク積層体を挟んだ状態で、雄型21に備えられる押圧部22を下方に移動させ、ブランク積層体を筒部25の方へ押圧する。これにより、ブランク積層体が、全体的に、底部及び周壁部が形成されてなる中間成形体40が得られ、この中間成形体40が筒部25内に進行する。
【0041】
引き続き、雄型21を雌型23から離隔させ、一つ目の中間成形体を筒部25内に保持した状態で、雄型21と雌型23との間に次のブランク積層体を配置した後、前述の工程を再度実行して、一つ目の中間成形体に積み重なるように次の中間成形体を形成する。
【0042】
以上の工程を何度か反復することにより、一つ前の中間成形体がその次の中間成形体に押圧されて筒部内を移動することになり、最終的には、筒部25の排出口から順に中間成形体が排出される。筒部25を移動する過程で、中間成形体は加温されることで形状が安定する。このようにして収納容器群10が得られ、収納容器群10から個々の収納容器11を取り出すことができる。
【0043】
本発明において、収納容器を構成するPBT樹脂層の結晶化度が9.0%以上であるため、積層された収納容器11の間において周方向の全周にわたりブロッキングが発生する事象を防ぐことができる。これにより、収納容器11の使用時に収納容器群10から個々の収納容器11を取り出しやすく使いやすいものとなる。又、PBT樹脂層の結晶化度は、11.5%以上であることがより好ましい。積層された収納容器の間において周方向の1/4未満の範囲にわたりブロッキングが発生する部分ブロッキングが略発生しなくなる。尚、PBT樹脂層の結晶化度は、広角X線回折測定装置を用いて透過法により相対結晶化度を算出することにより求めることができる。
【0044】
更に言えば、上述の収納容器では、基材層の坪量が、20g/m2~100g/m2に設定されている点で、紙材料としては比較的薄いものを採用しているといえる。従って、剛性が比較的弱いので、成形時あるいは形状保持のための筒部での加温時に上下の収納容器同士が変形して接触しやすくブロッキングが生じやすくなるといえる。一方、高い剛性を得るために基材層の坪量を大きくすれば、収納容器それぞれの変形は抑えられるため、ブロッキングは生じにくくなるかもしれないが、ブランクを複数枚重ねた状態でプレス成形することが困難となる。
【0045】
従って、上述の収納容器によれば、剛性が比較的弱くブロッキングが生じやすい状況において、結晶化度をはじめとする各種設定により、ブロッキングを効率よく抑制することができるといえる。
【0046】
尚、
図1では、収納容器群の積層数が特定のものであったが、積層数に特に制限はない。又、上記の実施の形態では、収納容器は、平面視において特定の形状に形成されていたが、これに限られない。収納容器は、他にも平面視において、楕円形上、角丸四角形やその他の多角形形状に形成されていてもよい。更に言えば、収納容器の周壁部には襞が形成されていなくてもよいし、周方向の一部(例えば多角形形状の角部)に襞が形成されるものであってもよい。
【0047】
更に、上記の実施の形態では、特定構造の成形装置による熱プレス成形方法について説明したが、これに限られない。収納容器群を作製するものであれば、熱プレス成形の方法に特に制限はなく、例えば、従来公知の装置及び方法を用いてプレス成形することにより、収納容器群を製造することができる。
【0048】
更に、上記の実施の形態では、基材層は、紙材料からなることを説明したが、他にも印刷インキやワックスコートが施されていてもかまわない。すなわち、収納容器群を成形するために用いられるシート部材は、PBT樹脂層と、印刷インキ層と、紙シート層と、ワックスコート層とが順に積層されてなる構成であってもよい。又、基材層とPBT樹脂層との間にアンカーコート層が介されていてもよく、基材層を構成する紙材料にコロナ処理が施されていてもよい。
【0049】
更に、基材層の一方だけでなく他方にPBT樹脂層が積層されてもかまわない。
【0050】
更に、上記の実施の形態では特に説明しなかったが、基材層を構成する紙材料としては、所望の用途に応じて、純白ロール紙、クラフト紙、パーチメント紙、アイボリー紙、マニラ紙、カード紙、カップ紙等を用いることができる。
【0051】
更に、上記の実施の形態では特に説明しなかったが、基材層(紙材料)へのPBT樹脂の積層方法は特に限定されず、押出ラミネーション、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション等が例示できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明について具体的に説明する。尚、本発明の実施の形態は実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例の作製)
実施例に係る収納容器群を以下のように作製した。
【0054】
シート体から切り出したブランクを12枚積層したものを1単位のブランク積層体とし、上記実施の形態で説明した成形装置にセットし、以下の条件で成形を行った。
【0055】
成形速度: 3秒/ショット(※1)
筒部における中間成形体の保持量:6個
成形温度:170度(※2)
(※1)ショットとは、1単位のブランク積層体から1単位の中間積層体を形成することを指す。
【0056】
尚、収納容器群を構成する各々の収納容器の構成はそれぞれ以下のとおりであり、PBT樹脂層は収納容器の内方側(収納面側)に形成されるようにし、PBT樹脂層の結晶化度は以下の範囲で9種類であった。
【0057】
基材層の坪量 :35g/m2
PBT樹脂層の厚み:15μm
基材層の坪量のPBT樹脂層の厚みに対する比(基材層の坪量g/m2÷PBT樹脂層の厚みμm):35g/m2÷15μm=2.33
結晶化度:2.3%~20.2%
(※2)雌型及び筒部の設定温度のことを指す。
【0058】
(ブロッキングの度合い、発生数の試験)
上記実施例の作製で説明したとおりの収納容器群を準備し、筒部の排出口から排出される収納容器群のブランク積層体のうち、筒部に接する最外1枚について収納容器を構成するPBT樹脂層の結晶化度毎に以下の通り評価した。
【0059】
図4はブロッキングの度合いについて説明する模式図である。
【0060】
まず(a)を参照して、積層された収納容器の一つと、その直上に積層された収納容器との間で、周壁部の全周にわたってブロッキングが発生していないもの(ブロッキング無し)、次に(b)を参照して、周壁部の周方向の1/4未満の範囲でブロッキング発生部50が確認されたもの(1/4未満ブロッキング)、最後に(c)を参照して、周壁部の周方向の1/4以上の範囲(全周含む)でブロッキング発生部50が確認されたもの(広域ブロッキング)をそれぞれ計数した。
【0061】
1単位のブランク積層体から得られる1単位の収納容器群には合計12個の収納容器が含まれるが、1単位の収納容器群のうち筒部に接する最外1枚を抜き取ってブロッキングの評価を行い、同様にして収納容器群10単位分の評価を行った。すなわち、1単位の収納容器群に含まれる合計12個の収納容器のうち筒部に接する最外1枚を、収納容器群10単位分収集し、この合計10個の収納容器について評価を行った。
【0062】
ただし、単に収納容器の間でブランク端面部分において紙繊維が絡みついて起こる引っ付き現象はブロッキングとしては計数していない。
【0063】
(試験結果)
以下の表1は、9種類の結晶化度毎の収納容器と、それに対応する試験結果を示すものである。
【0064】
【表1】
表1を参照して、比較例1及び比較例2では、広域ブロッキングが確認された。実施例1及び実施例2では、1/4未満ブロッキングが発生したものの件数的にはわずかであり、又、広域ブロッキングは発生しなかった。
【0065】
従って、本実施例では、結晶化度9.6%以上で、ブロッキング抑制についての有効性が確認できた。少なくとも結晶化度10.0%以上あれば十分なブロッキング抑制効果が得られると考えられる。
【0066】
又、実施例3~実施例7では、広域ブロッキングだけでなく、1/4未満ブロッキングも発生しなかった。従って、本実施例では、結晶化度11.7%以上で、基本的には、ブロッキングは発生しなくなるものと考えられる。好ましくは結晶化度12.0%以上あればこのような更なるブロッキング抑制効果が得られると考えられる。
【符号の説明】
【0067】
10 … 収納容器群
11 … 収納容器
12 … 底部
13 … 周壁部
15 … 基材層
16 … PBT樹脂層
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。