(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】補強ボード及び補強ボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20240927BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240927BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240927BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B62D25/06 D
B32B3/30
B32B5/18
B32B15/08 M
B32B27/06
(21)【出願番号】P 2019188291
(22)【出願日】2019-10-14
【審査請求日】2022-06-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】植村 浩行
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】草野 顕子
【審判官】横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-139418(JP,U)
【文献】特開2018-184125(JP,A)
【文献】特開2012-168415(JP,A)
【文献】特開昭63-272515(JP,A)
【文献】特開2015-71266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルの下面に貼り合わされ、連続気泡構造の発泡樹脂層を含む積層構造をなした補強ボードであって、
前記ルーフパネルと前記補強ボードの間に隙間を形成する上側凹部が上面に形成され、
前記発泡樹脂層に下側から通気性を有する第1の金属層が積層されている補強ボード。
【請求項2】
前記第1の金属層は、金属溶射層
又は金属蒸着層である、請求項1に記載の補強ボード。
【請求項3】
前記第1の金属層と前記発泡樹脂層との間に、通気性を有する第1の面材が配置されている、請求項1又は2に記載の補強ボード。
【請求項4】
前記発泡樹脂層に上側から積層された第2の金属層を有する、請求項1から3のうち何れか1の請求項に記載の補強ボード。
【請求項5】
前記発泡樹脂層の上面に凹部が設けられた、請求項
1から4のうち何れか1の請求項に記載の補強ボード。
【請求項6】
前記補強ボードの上面のうち前記上側凹部以外の部分からなり、前記ルーフパネルに密着する上側密着部を有し、
前記上側密着部の表面において前記第2の金属層が設けられる割合よりも、前記上側凹部の内面において前記第2の金属層が設けられる割合の方が、大きくなっている、請求項
4に記載の補強ボード。
【請求項7】
前記第2の金属層は、前記上側凹部の内面にのみ設けられている、請求項4
又は6に記載の補強ボード。
【請求項8】
前記第2の金属層は、金属溶射層
又は金属蒸着層である、請求項4
,6および7のうち何れか1の請求項に記載の補強ボード。
【請求項9】
前記第2の金属層と前記発泡樹脂層との間に、通気性を有する第2の面材が配置されている、請求項4
,6,7および8のうち何れか1の請求項に記載の補強ボード。
【請求項10】
前記補強ボードの上面のうち前記上側凹部以外の部分からなり、前記ルーフパネルに密着する上側密着部を有し、
前記上側密着部が、平面視格子状をなしている、請求項1から9のうち何れか1の請求項に記載の補強ボード。
【請求項11】
請求項1から10のうち何れか1の請求項に記載の補強ボードの製造方法であって、
前記発泡樹脂層を含むボード材の上面を3次元形状に成形してから、前記ボード材に金属を溶射又は蒸着して通気性を有する前記金属層を形成する、補強ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のルーフパネルの下面に貼り合わされる補強ボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ルーフパネルを補強する補強ボードとして、発泡樹脂層を有し、ルーフパネルに上面全体が貼り合わされるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-179343号公報(段落[0021]、
図3,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の補強ボードに対し、断熱性能の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、車両のルーフパネルの下面に貼り合わされ、連続気泡構造の発泡樹脂層を含む積層構造をなした補強ボードであって、前記ルーフパネルと前記補強ボードの間に隙間を形成する上側凹部が上面に形成され、前記発泡樹脂層に下側から通気性を有する第1の金属層が積層されている補強ボードである。
【0006】
発明の第2態様は、前記第1の金属層は、金属溶射層である、第1態様に記載の補強ボードである。
【0007】
発明の第3態様は、前記第1の金属層と前記発泡樹脂層との間に、通気性を有する第1の面材が配置されている、第1態様又は第2態様に記載の補強ボードである。
【0008】
発明の第4態様は、前記発泡樹脂層に上側から積層された第2の金属層を有する、第1態様から第3態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0009】
発明の第5態様は、前記第2の金属層は、前記ルーフパネルからの輻射熱を反射する熱反射層となっている、第4態様に記載の補強ボードである。
【0010】
発明の第6態様は、前記補強ボードの上面のうち前記上側凹部以外の部分からなり、前記ルーフパネルに密着する上側密着部を有し、前記上側密着部の表面において前記第2の金属層が設けられる割合よりも、前記上側凹部の内面において前記第2の金属層が設けられる割合の方が、大きくなっている、第4態様又は第5態様に記載の補強ボードである。
【0011】
発明の第7態様は、前記第2の金属層は、前記上側凹部の内面にのみ設けられている、第4態様から第6態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0012】
発明の第8態様は、前記第2の金属層は、金属溶射層である、第4態様から第7態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0013】
発明の第9態様は、前記第2の金属層と前記発泡樹脂層との間に、通気性を有する第2の面材が配置されている、第4態様から第8態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0014】
発明の第10態様は、前記発泡樹脂層に上側から積層された非通気層を有し、前記非通気層は、非通気性の前記第2の金属層を含むか、又は、前記第2の金属層が非通気性のベース層に金属溶射もしくは金属蒸着により積層された構造を含む、第4態様から第7態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0015】
発明の第11態様は、前記上側凹部の深さは、2mm以上になっている、第1態様から第10態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0016】
発明の第12態様は、前記補強ボードの下面は、突部及び凹部が設けられていない略フラット形状になっている、第1態様から第11態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0017】
発明の第13態様は、前記補強ボードの上面のうち前記上側凹部以外の部分からなり、前記ルーフパネルに密着する上側密着部を有し、前記上側密着部が、平面視格子状をなしている、第1態様から第12態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードである。
【0018】
発明の第14態様は、第1態様から第13態様のうち何れか1の態様に記載の補強ボードの製造方法であって、前記発泡樹脂層を含むボード材の上面を3次元形状に成形してから、前記ボード材に金属を溶射して通気性を有する前記金属層を形成する、補強ボードの製造方法である。
【0019】
発明の第15態様は、第10態様に記載の補強ボードの製造方法であって、プレスにより前記補強ボードを成形する1対の分割金型のうち前記補強ボードの上面を成形する一方の前記分割金型に、前記補強ボードのうち前記ルーフパネルと密着する上側密着部を奥面で成形する成形凹部を設けておき、前記第2の金属層としての非通気性の金属箔からなるか、又は、非通気性のベース層に前記第2の金属層としての金属溶射層もしくは金属蒸着層が積層されてなる膜体に、前記膜体の開裂の起点となる開裂起点部を形成しておき、前記プレスにあたって、前記発泡樹脂層を含むボード材に前記膜体を重ねたものを、前記1対の分割金型の間に配置する際に、前記ボード材よりも前記膜体を前記一方の分割金型側に配置し、前記成形凹部と前記開裂起点部とを重ねる、補強ボードの製造方法である。
【0020】
発明の第16態様は、第3態様又は第9態様に記載の補強ボードの製造方法であって、前記金属層を、前記面材に金属を溶射することで形成し、前記発泡樹脂層に前記面材及び前記金属層を重ねたものを、1対の分割金型でプレスして前記補強ボードを成形する、補強ボードの製造方法である。
【0021】
発明の第17態様は、第9態様を引用する第16態様に記載の補強ボードの製造方法であって、前記1対の分割金型のうち、前記補強ボードの上面を成形する一方の前記分割金型に、前記補強ボードの前記上側凹部を成形する成形突部を設けておき、前記第2の金属層を形成するにあたり、前記第2の面材の上面のうち前記プレスにおいて前記一方の分割金型の前記成形突部と対向する部分にのみ前記金属を溶射する、補強ボードの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
発明の第1態様の補強ボードでは、上側凹部により、ルーフパネルと補強ボードの間に隙間が形成されるので、断熱性能を向上させることが可能なると共に、ルーフパネルからの輻射熱に対する遮熱性能を発揮させることも可能となる。また、第1の金属層が設けられることで、さらに断熱性能を向上させることが可能となる。しかも、第1の金属層が通気性を有するので、車室側で発生した音が第1の金属層を透過可能となり、連続気泡構造の発泡樹脂層の内部にまで到達可能となるため、発泡樹脂層の吸音性能を発揮させることが可能となる。
【0023】
発明の第2態様、第8態様では、金属層が、金属溶射層のため、通気性を維持した金属層を容易に形成可能となる。
【0024】
発明の第3態様、第9態様では、発泡樹脂層と金属層の間に、通気性を有する面材を備えることで、吸音性能を更に向上させることが可能となると共に、補強ボードの剛性を向上させることが可能となる。また、面材を有することで、例えば補強ボードをプレス成形により製造する場合に、積層に用いる接着用のバインダが染み出して成形金型へ付着することを防止可能となる。
【0025】
発明の第4態様では、発泡樹脂層の上下に金属層が配置されるので、補強ボードの断熱性能をさらに向上させることが可能となる。
【0026】
発明の第5態様では、発泡樹脂層に上側から積層された第2の金属層により、車両のルーフパネルからの輻射熱を反射することが可能となり、遮熱性能を向上させることが可能となる。
【0027】
発明の第6態様では、上側密着部の表面において第2の金属層が設けられる割合よりも、上側凹部の内面において第2の金属層が設けられる割合が大きくなっている。即ち、ルーフパネルと接触する上側密着部では、ルーフパネルと接触しない上側凹部よりも第2の金属層の配置されている割合が小さくなっている。従って、ルーフパネルからの熱が、第2の金属層を通して補強ボード(特に補強ボードの上面側)に伝わることを抑制可能となる。これにより、補強ボードの断熱性能をより向上させることができる。第2の金属層は、上側凹部の内面にのみ設けられていることが好ましい(発明の第7態様)。上側凹部の深さは、2mm以上であることが好ましい(発明の第11態様)。
【0028】
発明の第10態様では、非通気層が設けられることで、さらに断熱性能を向上させることが可能となる。また、非通気層を有することで、例えば補強ボードをプレス成形により製造する場合に、接着用のバインダが染み出して成形金型へ付着することを防止可能となる。なお、非通気層は、非通気性の第2の金属層を含んでいてもよいし、第2の金属層が非通気性のベース層に金属溶射又は金属蒸着により積層された構造を含んでいてもよい。
【0029】
補強ボードの下面は、突部又は凹部が設けられた形状となっていてもよいし、突部及び凹部が設けられていない略フラット形状となっていてもよい(発明の第12態様)。後者のように、補強ボードの下面が、凹部が設けられていない略フラット形状となっているので、補強ボードの下面に凹部が設けられる場合に比べて、発泡樹脂層の厚肉部分の範囲を増やすことができ、発泡樹脂層による吸音性能を向上させることが可能となる。
【0030】
発明の第13態様では、上面密着部を平面視格子状とすることで、補強ボードの剛性を向上させることが可能となり、このような上側密着部をルーフパネルに接着させることで、ルーフパネルへの補強性能の向上が図られる。
【0031】
発明の第14態様では、発泡樹脂層を含むボード材の上面を3次元形状に成形してから、ボード材に金属を溶射して金属層を形成する。このように金属溶射により金属層を形成することで、金属層に通気性を持たせることが容易となる。また、ボード材の上面を3次元形状に成形してから金属層を形成するので、金属層を補強ボードの所望の箇所に形成することが容易となる。例えば、第2の金属層であれば、補強ボードの上面の上側凹部の内面にのみ、第2の金属層を形成することができる。
【0032】
発明の第15態様では、非通気性の金属箔からなるか、又は、非通気性のベース層に金属を溶射もしくは蒸着してなる膜体を、発泡樹脂層を有するボード材に重ね、それらを1対の分割金型でプレスすることで、補強ボードを成形する。ここで、膜体とボード材を1対の分割金型の間に配置する際に、膜体の開裂起点部を、一方の分割金型において補強ボードの上側密着部を奥面で成形する成形凹部に重ね合わせる。このような配置でプレスを行うことで、開裂起点部を起点として膜体を開裂させ、その裂け目から発泡樹脂層を成形凹部内で補強ボードの上面側に出して(相対的に突出させて)、上側密着部を形成することが可能となる。これにより、補強ボードの上面において、上側密着部の上面(頂面部)よりも上側凹部内に、第2の金属層を形成し易くすることが可能となる。
【0033】
発明の第16態様では、金属層を面材に金属溶射で積層し、その面材と発泡樹脂層とを重ねたものを、1対の分割金型でプレスして補強ボードを成形する。この製造方法では、面材を設けることで、例えば接着用のバインダを用いる場合でも、バインダが染み出て分割金型に付着することを抑制可能となる。
【0034】
発明の第17態様によれば、第2の金属層を、補強ボードの上側凹部の内面のみに形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】(A)本開示の一実施形態に係る補強ボードが取り付けられた車両の斜視図、(B)車両の天井部の断面図
【
図4】上型と下型の間にセットされる積層体の断面図
【
図6】(A)金型から取り外された積層体の断面図、(B)金属溶射により第1と第2の金属層が形成された補強ボードの断面図
【
図9】他の実施形態に係る補強ボードの一部破断斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1(A)に示されるように、本実施形態の補強ボード10は、車両90のルーフパネル91に取り付けられる。具体的には、
図1(B)に示されるように、補強ボード10は、ルーフパネル91と内装用の成形天井92との間に配置され、ルーフパネル91の下面91M(車内側を向く面)に接着材93(
図2参照)を介して貼り合わされる。なお、ルーフパネル91は、中央部が車両90の外側(上側)へ膨出するように湾曲し、ルーフパネル91の下面91Mは、湾曲凹面となっている。そして、補強ボード10は、ルーフパネル91の下面91Mに沿う形状になっている。
【0037】
図2に示されるように、補強ボード10は、積層構造をなしている。具体的には、補強ボード10は、連続気泡構造を有する発泡樹脂層21と、発泡樹脂層21の表裏(上下)の両面に貼り合わされた1対の補強層22,22と、1対の補強層22,22にそれぞれ外側から積層された1対の面材25,25と、を有している。各補強層22は、例えば、非金属の繊維シートで構成される。面材25は、例えば、通気性を有する非金属の不織布シートで構成される。また、各補強層22は、例えば、バインダにより発泡樹脂層21及び各面材25に貼り合わされる。なお、例えば、発泡樹脂層21と補強層22とを接着するバインダと、各補強層22と各面材25とを接着するバインダとは、同じものであってもよく、このバインダは、補強層22に染み込んでいてもよい。また、バインダは、発泡樹脂層21に染み込んでいてもよい。本実施形態では、1対の面材25,25のうち下側の面材25が、特許請求の範囲に記載の「第1の面材」に相当し、上側の面材25が、特許請求の範囲に記載の「第2の面材」に相当する。
【0038】
本実施形態の補強ボード10には、下側(車室側)の面材25に下側から積層された下側金属層23と、上側(ルーフパネル91側)の面材25に上側から積層された上側金属層24と、が設けられている。本実施形態では、例えば、下側金属層23と上側金属層24とは、各面材25に直接、金属溶射が行われることで形成された金属溶射層となっている。本実施形態では、下側金属層23、上側金属層24が、それぞれ特許請求の範囲に記載の「第1の金属層」、「第2の金属層」に相当する。
【0039】
下側金属層23は、本実施形態では、補強ボード10の最下層を構成しているが、下側金属層23の下側に、更に1又は複数の層(例えば、樹脂層や繊維層等)が積層されていてもよい。
【0040】
上側金属層24は、ルーフパネル91からの輻射熱(具体的には、赤外線等の電磁波)を反射する熱反射層となっている。本実施形態では、上側金属層24は、補強ボード10の最上層を構成しているが、例えば、上側金属層24の上側に、透明な層等が積層されていてもよい。この構成によっても、上記透明な層を透過したルーフパネル91からの熱を、上側金属層24で反射させることが可能となる。
【0041】
図2及び
図3に示されるように、補強ボード10の上面には、上側凹部32が形成されている。本実施形態では、上側凹部32は、複数設けられていて、上側凹部32の底面は、略フラットになっている。また、補強ボード10の上面のうちそれら複数の上側凹部32以外の部分、言い換えれば、上側凹部32の底面に対して上側に突出する上側突部30の突出先端面である頂面部30Mは、ルーフパネル91と密着する。そして、頂面部30Mがルーフパネル91に接着されることで、ルーフパネル91に補強ボード10が貼り合わされ、このとき、上側凹部32によってルーフパネル91と補強ボード10との間に、隙間Sが形成される。なお、本実施形態では、頂面部30Mが、特許請求の範囲に記載の「上側密着部」に相当する。
【0042】
本実施形態では、頂面部30Mは、その全体がルーフパネル91の下面91Mに対応した形状となっていて、頂面部30Mの全体がルーフパネル91の下面91Mに上記接着材93を介して隙間無く密着するように接着される(
図2参照)。即ち、本実施形態では、頂面部30Mの全体に接着材93が積層される。また、本実施形態では、補強ボード10の下面は、突部及び凹部が設けられていない略フラット形状となっている。即ち、本実施形態の補強ボード10は、板状のボード本体部11の上に、頂面部30Mを上端面に有する上側突部30が設けられた形状となっている。
【0043】
本実施形態では、
図3に示されるように、頂面部30M(上側突部30)は、平面視格子状をなしている。具体的には、本実施形態では、上側突部30は、車両90の前後方向と車幅方向にそれぞれ延びるように配置される略平行な複数の土手状の突条31が交差した形状となっている。上側突部30が格子状をなしていることにより、互いに交差する突条31の各延在方向において補強ボード10の剛性を向上させることが可能となる。また、このような頂面部30Mをルーフパネル91と接着させることで、ルーフパネル91への補強性能の向上が図られる。
【0044】
本実施形態では、後述のように、発泡樹脂層21が厚み方向に上側から圧縮されることで、複数の上側凹部32が賦形される。これにより、発泡樹脂層21のうち上側凹部32と厚み方向で重ならない部分が、相対的に肉厚となり、上面に上述の頂面部30Mを形成する。発泡樹脂層21のうち頂面部30Mと厚み方向で重なる部分は、上側凹部32と重なる部分に比べて、見掛け密度が低くなっていて、例えばほとんど圧縮されていない。
【0045】
上側凹部32の深さ(即ち、上側突部30の突出量)は、2mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、7mm以上であることが更に好ましい。上側突部30を2mm以上とすることで、例えば、車両が振動した場合でも、補強ボード10とルーフパネル91の間に隙間を確保し易くなり、ルーフパネル91から補強ボード10への接触による伝熱が抑制できる。なお、ボード本体部11の厚み(補強ボード10の下面と上側凹部32の底面との距離)は、3~20mmが好ましい。ここで、本実施形態の例では、上側凹部32の深さ(上側突部30の突出量)は、2mm以上であり、接着材93の厚みに比べ、十分大きい寸法となっている。なお、一般的な接着材93の厚みは、0.5mm以下であり、この程度の隙間では、ルーフパネル91と補強ボード10との距離が近くなるため、補強ボード10に遮熱性能を付与するための隙間としては不十分となる。これに対し、本実施形態の補強ボード10では、上側凹部32の深さが2mm以上となっているので、補強ボード10の遮熱性能を十分に発揮させることが可能となる。
【0046】
本実施形態では、頂面部30Mの表面において上側金属層24が設けられる割合よりも、上側凹部32の内面において上側金属層24が設けられる割合の方が、大きくなっている。具体的には、本実施形態では、
図2及び
図3に示されるように、上側金属層24が、上側凹部32内にのみ設けられていて、頂面部30M上には設けられていない。上側金属層24は、上側凹部32の底面(本実施形態では、底面全体)に配置され、ルーフパネル91と密着せずに、ルーフパネル91との間に隙間Sを隔てて配置される。そして、本実施形態では、上側突部30は、発泡樹脂層21とその上側の補強層22及び面材25のうち、上側金属層24よりも上側に突出した部分により構成されている。上側突部30では、上側の面材25が補強ボード10の上面に露出し、ルーフパネル91と接着材93を介して貼り合わされる(即ち、頂面部30Mを構成する)。なお、上側金属層24は、上側凹部32の底面の一部にのみ設けられていてもよいが、上側凹部32の底面全体に設けられていることが好ましい。また、上側凹部32の側面(上側突部30の側面)に設けられていてもよい。
【0047】
各金属層23,24は、扁平につぶれた金属粒子が堆積することで形成される。そして、これら金属粒子同士の間の隙間は、各金属層23,24の厚み方向の全体に亘って繋がり、空気が通過する通気路を形成している。なお、各金属層23,24と発泡樹脂層21の間の部分(即ち、補強層22及び面材25とバインダで構成される部分)も、通気性を有していてもよい。この場合、発泡樹脂層21も通気性を有するので、補強ボード10全体が通気性を有する。なお、補強ボード10の積層構造において、非通気性層を設けてもよい。
【0048】
なお、補強ボード10の発泡樹脂層21、各補強層22、下側金属層23、上側金属層24、面材25の詳細については、以下のようになっている。
【0049】
発泡樹脂層21は、ポリウレタンフォームや、ポリエチレン系樹脂等のオレフィン系樹脂フォーム等で構成することができ、ポリウレタンフォームであることが好ましい。ポリウレタンフォームとしては、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム等が使用でき、軽量で剛性の高い半硬質ポリウレタンフォームが好ましい。また、発泡樹脂層21は、独立気泡構造であってもよいが、賦形容易性や吸音性の観点から、連続気泡構造であることが好ましい。
【0050】
補強層22は、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、天然繊維(例えば、セルロースナノファイバー)、ザイロン(登録商標)等のシートで構成することができる。また、補強層22を構成する繊維は、織物、編み物、不織布等の形態であってもよい。この中でも、ガラス繊維シートが、補強ボード10の補強性能や制振性能の観点から好ましく、ガラスマット(特にチョップストランドマット)がより好ましい。補強層22の目付量は、成形性(特に上側凹部32の成形性)と、軽量化の観点から、400g/m2以下が好ましい。また、補強層22の目付量は、補強性能の観点から、60g/m2以上が好ましい。
【0051】
下側金属層23は、通気性を有していればよく、例えばベース層(面材25等)に金属溶射又は金属蒸着により積層された金属溶射層又は金属蒸着層であってもよいし、通気性を有する金属箔(例えば多数の貫通孔が形成された金属箔)や金属メッシュで構成されていてもよい。上記金属箔としては、アルミニウム箔や銅箔等が挙げられる。下側金属層23の目付量は、面材25に対して、均一の目付量としてもよいし、部分的に目付量を変更してもよい。これらの構成であっても、補強ボード10の成形時に、面材25がバリア層となり、接着用のバインダが金型(後述する下型52)に付着することを防止することができる。また、下側金属層23が通気性を有することで、補強ボード10(発泡樹脂層21)内へ音が進入可能となり、補強ボード10が吸音性能を発揮することができる。
【0052】
上側金属層24は、非通気性であっても、通気性を有していても、何れであってもよい。上側金属層24が非通気性である場合、上側金属層24としては、例えば非通気性の金属箔等の非通気性シートからなるもの等が挙げられる。このような金属箔としては、アルミニウム箔や銅箔等が挙げられ、その厚みは、断熱性能や遮音性能、成形性等の観点から、10μm以上であることが好ましく、軽量化の観点から、200μm以下であることが好ましい。また、上側金属層24が通気性を有する場合、上側金属層24としては、金属溶射層や金属蒸着層、通気性を有する金属箔、金属メッシュ等が挙げられる。上側金属層24が通気性を有する場合には、ルーフパネル91側からの音を吸音することが可能となる。金属溶射層や金属蒸着層は、ベース層(例えば面材25等)に金属を溶射又は蒸着することで形成することができる。ベース層としては、例えば、通気性を有する不織布からなるものや、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂の非通気性シートからなるもの等が挙げられる。この非通気性シートの厚みとしては、断熱性能や遮音性能、成形性等の観点から、10μm以上が好ましく、軽量化の観点から、200μm以下が好ましい。上述の通気性を有する金属箔としては、非通気性の金属箔の材料として例示したものと同様の材料のものを用いることができる。なお、ここで、補強ボード10には、発泡樹脂層21に上側から積層された非通気層として、非通気性の上側金属層24を含むか、又は、非通気性の上記ベース層に金属溶射もしくは金属蒸着により上側金属層24が積層された構造を含む非通気層が設けられていてもよい。このような非通気層が設けられることで、補強ボード10の断熱性能や遮音性能をより高めることができる。また、このような非通気層を有することで、例えば補強ボード10をプレス成形により製造する場合に、接着用のバインダが染み出して成形金型(後述の上型51)へ付着することを防止可能となる。なお、上側金属層24の目付量は、面材25に対して、均一の目付量としてもよく、部分的に目付量を変更してもよい。
【0053】
各金属層23,24を金属溶射又は金属蒸着で形成する場合、各金属層23,24を構成する金属としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、銅等が挙げられ、これらの金属を単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい(例えば、これらの中の金属の合金を用いてもよい)。各金属層23,24の目付量は、断熱性能と遮熱性能の観点から、50g/m2以上が好ましい。また、各金属層23,24の目付量は、軽量化の観点から、300g/m2以下が好ましい。なお、金属溶射としては、燃焼ガスを熱源とするフレーム式溶射、電気を熱源とするアーク式溶射、高速フレーム式溶射、プラズマ溶射、RFプラズマ溶射、爆発溶射、線爆溶射等を用いることができる。これらの中でも、アーク溶射は、各金属層23,24の形成速度が速い点と、各金属層23,24の目付量を精度高く制御できる点で、好ましい。下側金属層23、上側金属層24は、発泡樹脂層21と補強層22と面材25とを例えば1対の分割金型でプレス成形により積層した後に、面材25に外側から金属溶射することで形成してもよいし、面材25に金属溶射により下側金属層23、上側金属層24を積層してから、発泡樹脂層21、補強層22、面材25を例えば1対の分割金型でプレス成形により積層してもよい。
【0054】
面材25は、発泡樹脂層21に対して下側金属層23側に配置される場合、通気性を有するもの(例えば不織布等の通気性シート)が挙げられ、成形性やバインダのバリア性(染み出し防止性)の観点から、その目付量は、70g/m2以上が好ましく、軽量化の観点から、300g/m2以下が好ましい。面材25は、上側金属層24側に配置される場合、通気性シートであっても、非通気性シートであっても何れであってもよい。上側の面材25は、通気性シートである場合、上述した下側の面材25と同様の構成とすることができる。上側の面材25が非通気性シートである場合、上側の面材25としては、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂の非通気性シートからなるもの等が挙げられる。
【0055】
補強ボード10は、例えば、以下のようにして製造される。補強ボード10を製造するには、まず、複数のシートを用意する。具体的には、本実施形態では、半硬質ポリウレタンフォームからなり発泡樹脂層21を構成する連続気泡構造の発泡シート21Sと、補強層22を構成するガラス繊維シートである繊維シート22Sと、不織布からなる面材25と、を用意する。発泡シート21S及び繊維シート22Sには、熱硬化性樹脂のバインダを塗布して染み込ませておく。なお、発泡シート21Sとしては、見掛け密度が10~80kg/m3のものが好ましく、厚みが5~30mmのものが好ましい。
【0056】
図4には、補強ボード10を成形する1対の分割金型が示されている。一方の分割金型である上型51の成形面51Mには、格子状の成形凹部51Uが形成されている。成形凹部51Uの奥面は、補強ボード10の頂面部30Mを成形する。詳細には、成形凹部51Uの奥面は、ルーフパネル91の下面91Mに対応した形状(下面91Mと密着する形状)となっている。また、上型51の成形面51Mのうち、成形凹部51Uの奥面から相対的に下側に突出する部分により、補強ボード10の上側凹部32を成形する成形突部51Tが構成されている。本実施形態では、1対の分割金型のうち他方の分割金型である下型52の成形面52Mは、突部及び凹部が設けられていない略フラット形状となっている。なお、本実施形態では、上型51と下型52の成形面51M,52Mは、全体的には、ルーフパネル91の下面91Mに沿った形状となっている。
【0057】
そして、発泡シート21Sの表裏(上下)の両面にそれぞれ繊維シート22Sを重ねると共に各繊維シート22Sに外側からそれぞれ面材25を重ねてなるボード状の積層体20S(特許請求の範囲に記載の「ボード材」に相当する。)を、上型51と下型52で挟んで、プレスする。これにより、
図5に示されるように、バインダによって接着された発泡樹脂層21と各補強層22と各面材25が形成されると共に、成形突部51Tと成形凹部51Uの奥面とにより、積層体20Sにそれぞれ上側凹部32と頂面部30Mとが成形される(即ち、積層体20Sの上面が3次元形状に成形される)。その後、積層体20Sが上型51と下型52の間から外される(
図6(A)参照)。
【0058】
次に、積層体20Sの両面の面材25に、それぞれ外側から金属が溶射され、共に通気性を有する下側金属層23と上側金属層24が形成される(
図6(B)参照)。具体的には、下側金属層23は、下側の面材25の全面に亘って金属が溶射されることで形成され、上側金属層24は、上側凹部32の内面にのみ(
図6(B)の例では、上側凹部32の底面全体にのみ)金属が溶射されることで形成される。これは、例えば、頂面部30Mを覆うマスクを用いることで行うことができる。以上により、
図2に示される補強ボード10が完成する。なお、補強ボード10のうち上側金属層24が形成される側の面が、ルーフパネル91に貼り合わされる。
【0059】
本実施形態の補強ボード10では、以下の効果を奏することができる。本実施形態の補強ボード10では、上側凹部32により、ルーフパネル91と補強ボード10の間に十分な隙間Sが形成されるので、断熱性能を向上させることが可能なると共に、ルーフパネル91からの輻射熱に対する遮熱性能を発揮させることも可能となる。また、下側金属層23が設けられることで、さらに断熱性能を向上させることが可能となる。しかも、上側金属層24が設けられることで、発泡樹脂層21の上下に金属層が配置されるので、補強ボード10の断熱性能をさらに向上させることが可能となる。
【0060】
本実施形態では、発泡樹脂層21の上側に積層された上側金属層24により、車両90のルーフパネル91からの輻射熱を反射することが可能となり、遮熱性能を向上させることが可能となる。また、本実施形態では、頂面部30Mの表面において上側金属層24が設けられる割合よりも、上側凹部32の内面において上側金属層24が設けられる割合が大きくなっている。即ち、ルーフパネル91と接触する頂面部30Mでは、ルーフパネル91と接触しない上側凹部32よりも上側金属層24の配置されている割合が小さくなっている。従って、ルーフパネル91の熱が、上側金属層24を通じて補強ボード10自体に伝熱することを和らげることが可能となる。これにより、補強ボード10自体が暖められて熱を蓄積することが防止され、補強ボード10の断熱性能をより向上させることができる。また、上側金属層24は、上側凹部32の内面にのみ設けられていることが好ましい。この構成では、補強ボード10のうちルーフパネルと接触する部分(頂面部30M)に、上側金属層24が設けられないので、ルーフパネル91の熱が、面材25よりも熱伝導率の大きい上側金属層24を通じて補強ボード10自体に伝熱することを防止可能となる。これにより、補強ボード10自体が暖められて熱を蓄積することが防止され、補強ボード10の断熱性能をより向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、下側金属層23が通気性を有するので、車室側で発生した音が下側金属層23で反射されることなく、下側金属層23を透過することが可能となり、連続気泡構造の発泡樹脂層21の内部まで到達可能となるため、発泡樹脂層21で吸音することが可能となる。さらに、上側金属層24も通気性を有する構成とすれば、ルーフパネル91側から発生した音が、上側金属層24で反射することなく、上側金属層24を透過することが可能となり、発泡樹脂層21で吸音することも可能となる。また、金属層23,24を、金属溶射層で構成することで、通気性を維持した金属層を容易に形成可能となる。
【0062】
本実施形態では、発泡樹脂層21と金属層23,24の間に、通気性を有する面材25を備えることで、吸音性能を更に向上させることが可能となると共に、補強ボード10の剛性を向上させることが可能となる。また、面材25を有することで、例えば補強ボード10をプレス成形により製造する場合に、積層に用いる接着用のバインダが染み出して分割金型(上型51、下型52)へ付着することを防止可能となる。また、面材25を繊維で構成することで、各面材25の表面に微細な凹凸が設けられる。これにより、各面材25に金属を溶射して各金属層23,24を形成する場合に、溶射される金属粒子間に隙間を形成し易くなり、各金属層23,24に通気性を持たせ易くすることができる。
【0063】
また、補強ボード10の下面が、凹部が設けられていない略フラット形状となっているので、補強ボード10の下面に凹部が設けられる場合に比べて、発泡樹脂層21の厚肉部分の範囲を増やすことができ、発泡樹脂層21による吸音性能を向上させることが可能となる。また、頂面部30Mを平面視格子状とすることで、補強ボード10の剛性を向上させることが可能となり、このような頂面部30Mをルーフパネル91に接着させることで、ルーフパネル91への補強性能の向上が図られる。
【0064】
本実施形態の補強ボード10の製造方法では、発泡樹脂層21を含む積層体20Sを3次元形状に成形した後に、その積層体20Sに金属を溶射して各金属層23,24を形成する。このように、積層体20Sの上面を3次元形状に成形してから金属層23,24を形成するので、金属層23,24を補強ボード10の所望の箇所に形成することが容易となる。例えば、上側金属層24であれば、補強ボード10の上面の上側凹部32の内面にのみ、上側金属層24を形成することが容易となる。
【0065】
[確認実験]
以下、確認実験によって補強ボードの断熱効果を確認した。評価を行った実験例の詳細については、
図7及び以下の通りである。
【0066】
1.補強ボードの構成
<実験例1>
実験例1の試験サンプルとして、上記実施形態の補強ボード10と同様の積層構造を有し(
図2参照)、ルーフパネル91としての鉄板91T(
図8参照)との間に上側凹部32により7mmの隙間を形成する補強ボード10を用いた。即ち、上側凹部32の深さ(頂面部30Mの上面と上側凹部32の底面との距離)が7mmである。実験例1の補強ボード10のサイズは、縦200mm×横300mmである。補強ボード10の厚み(厚肉部分の厚み。補強ボード10の下面と頂面部30Mとの距離)は、16mmである。補強ボード10の薄肉部分の厚み(ボード本体部11の厚み。補強ボード10の下面と上側凹部32の底面との距離)は、9mmである。また、上側突部30は、平面視格子状となっていて、互いに略平行となって隣接する突条31の中央部同士の間隔が100mmであり、突条31の幅(突条31の上端面の幅)が30mmである。なお、上側金属層24は、上側凹部32の底面のみに(詳細には、底面全体に)設けられている。
【0067】
発泡樹脂層21は、厚み約17mmの連続気泡構造の半硬質ポリウレタンフォーム(見掛け密度:22kg/m3)で構成されている(なお、この厚みは、上述の上型51と下型52によるプレス成形前の厚みである。以下の実験例においても同様である。)。また、各補強層22は、目付量150g/m2のガラスマットで構成され、下側金属層23と上側金属層24は、総目付量205g/m2の亜鉛とアルミの混合金属溶射層(アルミの目付量56g/m2、亜鉛の目付量149g/m2)で構成され、各面材25は、100g/m2の不織布で構成される。なお、上記混合金属溶射層は、アルミと亜鉛のワイヤーを用いて両ワイヤー間にアークを発生させるアーク溶射により形成される。
【0068】
<実験例2>
実験例2では、下側金属層23と上側金属層24のうち、下側金属層23のみが設けられている。その他の構成は、実験例1と同じである。
【0069】
<実験例3>
実験例3では、下側金属層23と上側金属層24のうち、上側金属層24のみが設けられている。その他の構成は、実験例1と同じである。
【0070】
<実験例4>
実験例4は、上記実施形態の補強ボード10と同様の積層構造を有するが、上側凹部32が設けられていない点が、実験例1と異なる。実験例4の補強ボードの厚み(ボード本体部11の厚み)は、9mmである。なお、発泡樹脂層21は、厚み約10mmの連続気泡構造の半硬質ポリウレタンフォームで構成されている。各補強層22、各金属層23,24、各面材25については、実験例1と同様である。本実験例の補強ボードは、ルーフパネル91としての鉄板91Tに全面的に貼り合わされる。
【0071】
<実験例5>
実験例5では、下側金属層23と上側金属層24のうち、上側金属層24のみを備えている。その他の構成は、実験例4と同じである。
【0072】
<実験例6>
実験例6では、下側金属層23と上側金属層24を両方とも備えていない(従来品の構成となっている)。その他の構成は、実験例4と同様である。
【0073】
<実験例7>
実験例7では、補強ボード10と、ルーフパネル91としての鉄板91T(
図8参照)との間の隙間を(即ち、上側凹部32の深さを)5mmとし、補強ボード10のうち最も厚肉になった部分の厚みを14mm、ボード本体部11の厚みを9mmとしている。なお、発泡樹脂層21は、厚み約15mmの連続気泡構造の半硬質ポリウレタンフォームで構成されている。その他の構成は、実験例1と同じである。
【0074】
<実験例8>
実験例8では、補強ボード10と、ルーフパネル91としての鉄板91T(
図8参照)との間の隙間を(即ち、上側凹部32の深さを)2mmとし、補強ボード10のうち最も厚肉になった部分の厚みを11mm、ボード本体部11の厚みを9mmとしている。なお、発泡樹脂層21は、厚み約12mmの連続気泡構造の半硬質ポリウレタンフォームで構成されている。その他の構成は、実験例1と同じである。
【0075】
2.評価方法
<断熱性能>
図8に示されるように、断熱性能の試験は、温度23℃、湿度50%の雰囲気下に設置した立方体状の試験ボックス60に、赤外線照射装置62で赤外線を照射することにより行った。試験ボックス60は、中空の断熱部材からなり、上面のみが開口61によって開放されている。そして、開口61を、鉄板91T(厚み0.6mm)で外側から(上方から)閉塞した。鉄板91Tの下面には、開口61に嵌合するサイズ(実験例1参照)の補強ボードの試験サンプル10Aを貼り合わせておき、試験サンプル10Aを、開口61内に配置した。また、開口61は、試験ボックス60の内側から(下方から)成形天井92(厚み5mm)にて閉塞されている。成形天井92は、試験サンプル10Aと間隔をあけて配置される。なお、成形天井92は、例えば、試験ボックス60の上面壁を脱着可能としておき、試験ボックス60の上面壁を外して上面壁に下側から取り付ければよい。試験ボックス60の一辺は約500mmである。
【0076】
そして、赤外線照射装置62により、鉄板91Tに試験ボックス60の外側から(上方から)赤外線を照射した。赤外線の強度は、鉄板91Tの上面のうち、補強ボードの試験サンプル10Aの中心と厚み方向で重なる位置Aの温度(鉄板温度)が、100±0.5℃の範囲内になるように設定した。そして、試験ボックス60内で、位置Aから真下に90mm(成形天井92の下面から真下に50mm)となる位置Bの温度(天井下温度)を測定し、鉄板温度から天井下温度を引いた差を、補強ボードの試験サンプル10Aの断熱効果として評価した。また、従来品の実験例6の天井下温度に対する、実験例1~5,7,8の天井下温度の低下温度(差)を、従来品に対する断熱効果として評価した。
【0077】
3.評価結果
図7に示されるように、鉄板91Tとの間に隙間を設けた実験例1~3,7~8の補強ボードでは、従来品の実験例6の補強ボードよりも、断熱効果が発揮されていることが確認された。特に、下側金属層23と上側金属層24を両方備えた実験例1では、鉄板温度に対する天井下温度の低下温度が、45.5℃、従来品の実験例6に対する低下温度が2.1℃となり、優れた断熱性能が発揮された。また、下側金属層23と上側金属層24のうち一方の金属溶射層のみを備えた実験例2,3の中では、下側金属層23が設けられた実験例2の方が、断熱性能がずっと良好であった。また、実験例1に対して、隙間を5mmに変更した実験例7は、実験例1の断熱性能にはやや劣るものの優れた断熱性能が発揮された。同様に、隙間を2mmに変更した実験例8においても、断熱性能が発揮された。実験例1,7~8より、隙間を5mm以上とすることで、優れた断熱性能が発揮されることが分かる。
【0078】
鉄板91Tに全面的に接着して鉄板91Tとの間に隙間を設けなかった実験例4,5は、それぞれ同じ積層構造を有する実験例1,3に比べて、断熱性能が低くなった。これは、上側金属層24が鉄板91Tと密着することで、鉄板91Tからの熱が伝熱し易くなるためと考えられる。なお、金属溶射層として上側金属層24のみを備える実験例5は、従来品よりも断熱性が悪くなっている。このことから、鉄板91Tと上側金属層24とが直接接すると、鉄板91Tの熱が熱伝導率の高い上側金属層24を介して補強ボードに伝わり、補強ボード自体が暖められ、断熱性能が悪くなったと考えられる。このため、頂面部30Mには、上側金属層24が配置されないことが好ましい。
【0079】
以上のように、鉄板91Tとの間に隙間をあけて配置され、金属溶射層として少なくとも下側金属層23を備えた実験例1,2,7,8の補強ボードでは、断熱性能が優れている。特に、鉄板91Tとの間の隙間を5mm以上とした実験例1,2,7の補強ボードでは、断熱性能が非常に優れていることが確認できた。
【0080】
なお、実験例1,2,7,8が「実施例」に相当し、実験例3~6が「比較例」に相当する。
【0081】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、上側金属層24の形成は、積層体20Sの上面が上側凹部32が設けられる3次元形状に成形された後に行われたが、上側金属層24が、積層体20S(発泡樹脂層21、補強層22等)と一緒に成形されてもよい。この場合、例えば、金属層を含む膜体を、積層体20Sに重ね、それらを上型51と下型52でプレス成形することで、該膜体と積層体20Sが積層一体化された補強ボード10が形成されてもよい。上記膜体は、例えば、上側金属層24としての非通気性の金属箔からなるか、又は、非通気性のベース層に上側金属層24としての金属溶射層もしくは金属蒸着層が積層されてなる。ここで、膜体には、膜体が開裂するための開裂起点部(例えば、スリット等)を、上型51の成形凹部51Uと重なる形状に予め形成しておき、膜体と積層体20Sを上型51と下型52の間に配置する際に、開裂起点部を、上型51の成形凹部51Uに重ね合わせる。このような配置でプレス成形を行うことで、開裂起点部を起点として膜体を開裂させ、その裂け目から発泡樹脂層21を(詳細には、上側の補強層22及び面材25も)成形凹部51U内で上側に出して(相対的に突出させて)、上側突部30(頂面部30M)を形成することが可能となる。これにより、補強ボードの上面において、頂面部30Mに比べて上側凹部32内に、上側金属層24を形成し易くすることが可能となり、上側金属層24を上側凹部32内にのみ選択的に形成することも可能となる。このように、上側金属層24を頂面部30Mよりも上側凹部32の内面に形成し易くすることで補強ボード10の断熱性能をより向上させることが可能となる。なお、膜体に開裂起点部を設けず、補強ボード10の全面に亘って上側金属層24を形成してもよい。また、上側金属層24の面材25への目付量は、面材25に対して均一の目付量としてもよいし、部分的に目付量を変更してもよい。特に、膜体のうち上側凹部32内に配置される部分のプレス成形前の目付量を増やしておけば、発泡樹脂層21等と一緒に膜体を賦形後、上側金属層24の厚みを均一にすることが可能となる。なお、上側金属層24は、通気性を有する通気性シート(例えば、金属メッシュ等)で構成されていてもよい。また、下側金属層23を、発泡シート21に下側から重ねた面材25の例えば下面に金属溶射等で積層してから、積層体20Sをプレス成形して、補強ボード10を形成してもよい。
【0082】
(2)積層体20Sのプレス成形前に、上側金属層24を形成する場合、上側金属層24は、プレス成形前の積層体20Sの(面材25の)少なくとも一部に積層されていればよい。この場合、例えば、上側の面材25の上面のうち上型51の成形突部51Tと対向する部分にのみ、例えば金属溶射層又は金属箔からなる上側金属層24を積層しておいてもよい。これにより、プレス成形後に、補強ボード10の上側凹部32の内面にのみ上側金属層24を配置することが可能となる。この場合、上側金属層24を通気性を有する通気性シートで構成し、面材25を不織布等の通気性を有するもので構成してもよい。また、プレス成形前に金属溶射で上側金属層24を形成してもよく、この場合、積層体20S(面材25)の上面のうち上側凹部32に相当する部分(上型51の成形突部51Tと対向する部分)の金属溶射の目付量を他の部分よりも多くしておけば、補強ボード10が成形された後、上側金属層24の厚みを均一にすることが可能となる。なお、金属溶射によれば、目付量の調整を容易にすることができる。
【0083】
(3)上記実施形態において、複数の上側突部30を設ける場合、上側突部30が、突条となっていてもよいし、円柱状又は角柱状であってもよいし、上側にすぼまる円錐台形状又は角錐台形状であってもよい。上側突部30が突条をなす場合、例えば、複数の土手状の突条(上側突部30V)が、車両90の前後方向又は車幅方向に延びて、互いに平行に並べられていてもよい(
図9参照)。
【0084】
(4)上記実施形態では、上側金属層24が、頂面部30Mを除いた部分に設けられていたが、頂面部30M全体にも設けられていてもよいし(
図10参照)、一部にのみ設けられていてもよい。また、上側金属層24は、上側凹部32の底面のみに設けられていてもよいし(
図2参照)、上側凹部32の底面と側面の両方に設けられていてもよい(
図11参照)。また、補強ボード10には、上側金属層24が設けられていなくてもよい。
【0085】
(5)上記実施形態において、1対の補強層22,22のうち少なくとも一方の補強層22が設けられていなくてもよい。この場合、下側金属層23と上側金属層24の少なくとも一方が発泡樹脂層21に直に積層されてもよい。また、繊維からなる補強層22の代わりに、例えば、樹脂からなる層が設けられていてもよい。
【0086】
(6)上記実施形態において、補強ボード10の下面に、突部又は凹部が設けられていてもよい。この場合、例えば、補強ボード10の下面において頂面部30Mと厚み方向で重なる部分に、凹部が設けられていてもよい。この構成では、発泡樹脂層21が上側に隆起することで、それら上側突部30と上記凹部とが形成されてもよく、この場合、発泡樹脂層21の厚み(目付量)が、全面に亘って略均一となっていてもよい。なお、本実施形態の補強ボード10を製造するには、下型52の成形面52Mに、補強ボード10の上記凹部を成形する対向突部を、上型51の成形凹部51Uと対向するように設ければよい。この場合、プレス成形の際に、この対向突部により発泡シート21Sを下側から成形凹部51U内に押し上げることができるので、上側金属層24を構成し開裂起点部を有する上述の膜体を、開裂起点部で開裂させ易くすることが可能となる。
【0087】
(7)上記実施形態では、接着材93が頂面部30M上にのみ配置されたが、補強ボード10の上面全体に配置されてもよい(即ち、接着材93が頂面部30Mと上側凹部32の全体を覆ってもよい)。補強ボード10の上面全体に接着材93が存在することで、補強ボード10にルーフパネル91の熱が伝わり難くなり、補強ボード10の断熱性能が更に向上する。また、補強ボード10の上面全体に接着材93が配置されることで、補強ボード10の剛性が向上する。なお、接着材93は透明な層であってもよい。これにより、上側金属層24でルーフパネル91からの熱を反射することが可能となる。
【0088】
(8)下側金属層23が、下側の面材25と発泡樹脂層21との間に配置されていてもよいし、上側金属層24が、上側の面材25と発泡樹脂層21との間に配置されていてもよい。この場合、例えば、上型51と下型52によるプレス成形の前に、各面材25に金属溶射することで金属層23,24を形成しておけばよい。そして、各面材25を、金属層23,24が発泡樹脂層21側になるように発泡樹脂層21に重ねてプレス成形を行えばよい。
【0089】
(9)上記実施形態では、頂面部30M(上側突部30)が、平面視格子状であったが、平面視ハニカム状であってもよい。この場合でも、頂面部30Mが平面視格子状の場合と同様に、車両90の前後方向と車幅方向における補強ボード10の剛性を向上させることが可能となる。
【0090】
(10)上記実施形態では、補強ボード10が、積層体20Sを加熱プレスすることで成形されたが、積層体20Sをコールドプレスすることで成形されてもよい。この場合、バインダとしてホットメルト等の接着材を用いればよい。
【0091】
(11)上記実施形態では、上側突部30の上端面(即ち、頂面部30M)の全体が、ルーフパネル91と密着したが、頂面部30Mが、ルーフパネル91に部分的に密着してもよい。
【0092】
(12)上記実施形態の補強ボード10では、発泡樹脂層21の上側と下側の両方に面材25が設けられていたが、発泡樹脂層21の上側と下側の面材25のうち少なくとも一方の面材25が設けられていなくてもよい。この場合、金属層23,24のうち少なくとも一方の金属層は、補強層22に直に積層される。
【符号の説明】
【0093】
10 補強ボード
21 発泡樹脂層
23 下側金属層
24 上側金属層
30M 頂面部
32 上側凹部
90 車両
91 ルーフパネル
S 隙間