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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】撮像素子及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/704 20230101AFI20240927BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240927BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20240927BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20240927BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240927BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240927BHJP
   H04N 25/61 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
H04N25/704
G02B3/00 A
G02B7/34
G02B13/00
G03B13/36
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N25/61
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020070011
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2020178120
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019077356
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 康平
(72)【発明者】
【氏名】若嶋 駿一
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-154662(JP,A)
【文献】特開2018-132581(JP,A)
【文献】特開2014-086471(JP,A)
【文献】特開2012-059845(JP,A)
【文献】米国特許第04410804(US,A)
【文献】特開2001-083407(JP,A)
【文献】特開2000-156823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/70
G02B 3/00
G02B 7/34
G02B 13/00
G03B 13/36
H01L 27/146
H04N 25/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像光学系の互いに異なる瞳領域を通過した光束に基づいて、視差を有する一対の焦点検出信号を取得可能に信号を出力する焦点検出画素を含む複数の画素を有する撮像素子であって、各画素は、
少なくとも1つの光電変換部と、
前記光電変換部よりも光が入射する側に設けられたマイクロレンズ光学系と、を含み、
前記マイクロレンズ光学系の主曲面の形状が、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の第1の曲率が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から遠い第2の距離における前記マイクロレンズ光学系の第2の曲率よりも大きく、さらに、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの前記第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の前記第1の曲率が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から近い第3の距離における前記マイクロレンズ光学系の第3の曲率よりも大きいことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
結像光学系の互いに異なる瞳領域を通過した光束に基づいて、視差を有する一対の焦点検出信号を取得可能に信号を出力する焦点検出画素を含む複数の画素を有する撮像素子であって、各画素は、
少なくとも1つの光電変換部と、
前記光電変換部よりも光が入射する側に設けられたマイクロレンズ光学系と、を含み、
前記マイクロレンズ光学系の主曲面の形状が、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の第1の焦点位置が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から遠い第2の距離における前記マイクロレンズ光学系の第2の焦点位置よりも、光が入射する側にあり、さらに、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの前記第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の第1の焦点位置が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から近い第3の距離における前記マイクロレンズ光学系の第3の焦点位置よりも、光が入射する側にあることを特徴とする撮像素子。
【請求項3】
結像光学系の互いに異なる瞳領域を通過した光束に基づいて、視差を有する一対の焦点検出信号を取得可能に信号を出力する焦点検出画素を含む複数の画素を有する撮像素子であって、各画素は、
少なくとも1つの光電変換部と、
前記光電変換部よりも光が入射する側に設けられたマイクロレンズ光学系と、を含み、
前記マイクロレンズ光学系の主曲面の形状が、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の第1の曲率が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から遠い第2の距離における前記マイクロレンズ光学系の第2の曲率よりも大きく、
前記画素の画素サイズをP、前記第1の距離をr1、前記第2の距離をr2とした場合に、
r1<0.35P<r2
を満たすことを特徴とする撮像素子。
【請求項4】
前記画素の画素サイズをP、前記第2の距離をr2とした場合に、
r2≦P
を満たすことを特徴とする請求項に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記画素の画素サイズをP、前記第1の距離をr1、前記第2の距離をr2、前記第3の距離をr0とした場合に、
0≦r0<0.29P≦r1<0.41P<r2≦0.5P
を満たすことを特徴とする請求項またはに記載の撮像素子。
【請求項6】
前記マイクロレンズ光学系の光軸からの複数の距離からの光束により形成される集光スポット径は、前記マイクロレンズ光学系の複数の距離における焦点深度内にそれぞれ含まれることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記マイクロレンズ光学系が、1つのマイクロレンズを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記マイクロレンズ光学系が、1つのマイクロレンズと、1つ以上の層内レンズを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記各画素は、前記光電変換部に対して、光が入射する側と反対側に設けられた配線層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記各画素は、前記光電変換部に対して、光が入射する側に設けられた配線層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像素子と、
前記結像光学系と、
前記撮像素子から出力された信号を処理する処理手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
結像光学系を着脱可能な撮像装置であって、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号を処理する処理手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置で行われる焦点検出方法の1つに、撮像素子に形成された焦点検出画素により位相差方式の焦点検出を行う撮像面位相差方式がある。
【0003】
特許文献1には、1つの画素に対して、1つのマイクロレンズと複数の光電変換部が形成された、複数の画素から成る2次元撮像素子を用いた撮像装置が開示されている。複数の光電変換部は、1つのマイクロレンズを介して撮影レンズの射出瞳の異なる領域を透過した光を受光するように構成され、瞳分割を行っている。こういった複数の光電変換部を有する画素(焦点検出画素)から出力されたそれぞれの焦点検出信号から相関量を算出し、算出した相関量から像ずれ量を求めることで、位相差方式の焦点検出を行うことができる。また、特許文献2では、複数の光電変換部からそれぞれ出力された焦点検出信号を画素毎に加算することにより撮像信号を生成することが開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、複数の撮像画素からなる2次元撮像素子に、対の焦点検出画素が部分的に配置された撮像装置が開示されている。対の焦点検出画素は、開口部を有する遮光層により、撮影レンズの射出瞳の異なる領域を受光するように構成され、瞳分割を行っている。2次元撮像素子の大部分に配置された撮像画素で撮像信号を取得し、一部に配置された焦点検出画素の焦点検出信号から相関量を算出し、算出した相関量から像ずれ量を求めて、位相差方式の焦点検出を行うことが開示されている。
【0005】
撮像面位相差方式の焦点検出においては、撮像素子に形成された焦点検出画素によりデフォーカス方向とデフォーカス量を同時に検出することが可能であり、高速に焦点調節を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許4410804号
【文献】特開2001-083407号公報
【文献】特開2000-156823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、瞳分割性能を上げて撮像面位相差方式による焦点検出性能を良くするためのマイクロレンズの曲率と、画素間クロストークを抑制して撮像性能を良くするためのマイクロレンズの曲率は、必ずしも一致しない。
【0008】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、焦点検出性能を保持しつつ、画素間クロストークを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、結像光学系の互いに異なる瞳領域を通過した光束に基づいて、視差を有する一対の焦点検出信号を取得可能に信号を出力する焦点検出画素を含む複数の画素を有する本発明の撮像素子において、各画素は、少なくとも1つの光電変換部と、前記光電変換部よりも光が入射する側に設けられたマイクロレンズ光学系と、を含み、前記マイクロレンズ光学系の主曲面の形状が、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の第1の曲率が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から遠い第2の距離における前記マイクロレンズ光学系の第2の曲率よりも大きく、さらに、前記マイクロレンズ光学系の光軸からの前記第1の距離における前記マイクロレンズ光学系の前記第1の曲率が、前記第1の距離よりも前記マイクロレンズ光学系の光軸から近い第3の距離における前記マイクロレンズ光学系の第3の曲率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焦点検出性能を保持しつつ、画素間クロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態における画素配列の一例を示す概略図。
図3】第1の実施形態における画素の概略平面図と概略断面図。
図4】第1の実施形態における画素構造と瞳分割の概略説明図。
図5】第1の実施形態における撮像素子と瞳強度分布との対応を説明する概略図。
図6】第1の実施形態における射出瞳の瞳分割を説明する概略図。
図7】従来の画素における画素間クロストークを説明する図。
図8】第1の実施形態における画素に設けられたマイクロレンズ光学系と集光状態との対応を説明するための図。
図9】第1の実施形態における画素に設けられたマイクロレンズ光学系の主曲面と曲率半径との対応を説明するための図。
図10】第1の実施形態における画素に設けられたマイクロレンズ光学系の受光面積の割合を説明するための図。
図11】第2の実施形態における画素に設けられたマイクロレンズ光学系と集光状態との対応を説明するための図。
図12】第3の実施形態における画素に設けられたマイクロレンズ光学系と集光状態との対応を説明するための図。
図13】第4の実施形態における画素配列の一例を示す概略図。
図14】第4の実施形態における画素の概略平面図と概略断面図。
図15】第5の実施形態の画素に設けられたマイクロレンズ光学系と集光状態との対応を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1の実施形態>
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態における撮像素子を有する撮像装置であるカメラの概略構成を示したものである。図1において、第1レンズ群101は結像光学系の先端に配置され、光軸方向に進退可能に保持される。絞り兼用シャッタ(絞り)102は、その開口径を調節することで撮影時の光量調節を行うほか、静止画撮影時には露光秒時調節用シャッタとしての機能も備える。第2レンズ群103は、絞り兼用シャッタ102と一体となって光軸方向に進退し、第1レンズ群101の進退動作との連動により、変倍作用(ズーム機能)を実現することができる。
【0014】
第3レンズ群105(フォーカスレンズ)は、光軸方向の進退により焦点調節を行う。光学的ローパスフィルタ106は、撮影画像の偽色やモアレを軽減するための光学素子である。撮像素子107は2次元CMOSフォトセンサとその周辺回路からなり、結像光学系の結像面に配置される。
【0015】
ズームアクチュエータ111は、不図示のカム筒を回動することで、第1レンズ群101ないし第2レンズ群103を光軸方向に進退駆動し、変倍操作を行う。絞りシャッタアクチュエータ112は、絞り兼用シャッタ102の開口径を制御して撮影光量を調節すると共に、静止画撮影時の露光時間制御を行う。フォーカスアクチュエータ114は、第3レンズ群105を光軸方向に進退駆動して焦点調節を行う。
【0016】
撮影時の被写体照明用の電子フラッシュ115は、キセノン管を用いた閃光照明装置が好適だが、連続発光するLEDを備えた照明装置を用いても良い。AF補助光発光部116は、所定の開口パターンを有するマスクの像を、投光レンズを介して被写界に投影し、暗い被写体あるいは低コントラスト被写体に対する焦点検出能力を向上させる。
【0017】
カメラ内CPU121は、カメラ本体の種々の制御を司り、演算部、ROM、RAM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイス回路等を有する。CPU121は、ROMに記憶された所定のプログラムに基づいて、カメラが有する各種回路を駆動し、AF、撮影、画像処理と記録等の一連の動作を実行する。
【0018】
電子フラッシュ制御回路122は、撮影動作に同期して電子フラッシュ115を点灯制御する。補助光駆動回路123は、焦点検出動作に同期してAF補助光発光部116を点灯制御する。撮像素子駆動回路124は、撮像素子107の撮像動作を制御するとともに、撮像素子107から読み出した信号をA/D変換してCPU121に送信する。画像処理回路125は、撮像素子107から読み出した信号に基づいて得られる画像信号のγ変換、カラー補間、JPEG圧縮等の処理を行う。
【0019】
フォーカス駆動回路126は、焦点検出結果に基づいてフォーカスアクチュエータ114を駆動制御し、第3レンズ群105を光軸方向に進退駆動して焦点調節を行う。絞りシャッタ駆動回路128は、絞りシャッタアクチュエータ112を駆動制御して絞り兼用シャッタ102の開口を制御する。ズーム駆動回路129は、撮影者のズーム操作に応じてズームアクチュエータ111を駆動する。
【0020】
LCD等の表示器131は、カメラの撮影モードに関する情報、撮影前のプレビュー画像と撮影後の確認用画像、焦点検出時の合焦状態表示画像等を表示する。操作スイッチ群132は、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチ等で構成される。着脱可能なフラッシュメモリ133は、得られた画像を記録する。
【0021】
[撮像素子]
次に、第1の実施形態における撮像素子107の撮像画素と焦点検出画素の配列の概略を図2に示す。図2は、第1の実施形態の撮像素子107としての裏面照射型の2次元CMOSセンサー(撮像素子)の画素(撮像画素)配列を、4列×4行の範囲で、焦点検出画素配列を8列×4行の範囲で示したものである。
【0022】
画素群200は2行×2列の画素からなり、R(赤)の分光感度を有する画素200Rが左上に、G(緑)の分光感度を有する画素200Gが右上と左下に、B(青)の分光感度を有する画素200Bが右下に配置されている。さらに、各画素は2列×1行に配列された第1焦点検出画素201と第2焦点検出画素202により構成されている。
【0023】
図2に示した4列×4行の画素(8列×4行の焦点検出画素)を面上に多数配置し、撮像画像(焦点検出信号)の取得を可能としている。
【0024】
図2に示した撮像素子107の1つの画素200Gを、撮像素子107の受光面側(+z側)から見た平面図を図3の3Aに示し、3Aのa-a断面を-y側から見た断面図を図3の3Bに示す。図3に示すように、本実施形態の画素200Gでは、各画素の受光側に入射光を集光するためのマイクロレンズ305及び層内レンズ307が形成され、x方向にNH分割(2分割)、y方向にNV分割(1分割)された光電変換部301と光電変換部302が形成される。光電変換部301,302が、それぞれ、第1焦点検出画素201と第2焦点検出画素202に対応する。
【0025】
光電変換部301,302は、それぞれ、p型層とn型層から成るpn接合のフォトダイオードとして構成される。必要に応じて、p型層とn型層との間にイントリンシック層を挟んだpin構造のフォトダイオードとして構成しても良い。
【0026】
画素200Gには、マイクロレンズ305と、層内レンズ307との間に、カラーフィルタ306が設けられている。必要に応じて、画素ごと、または光電変換部ごとにカラーフィルタ306の分光透過率を変えることができる。また、カラーフィルタを省略してもよい。
【0027】
本実施形態の画素200Gでは、マイクロレンズ305、層内レンズ307、カラーフィルタ306、平坦化層、封止層、絶縁層等で構成されるマイクロレンズ光学系が、受光側に形成されている。また、本実施形態では、光電変換部301,302に対して、マイクロレンズ305及び層内レンズ307とは反対側、すなわち光の入射側とは反対側に、配線層309が形成されている。
【0028】
図3に示す画素200Gに入射した光は、マイクロレンズ305により集光され、カラーフィルタ306で分光されたのち、更に層内レンズ307により集光されて、光電変換部301,302で受光される。光電変換部301,302では、受光量に応じて電子とホールが対生成し、空乏層で分離された後、負電荷の電子はn型層(不図示)に蓄積され、一方、ホールは定電圧源(不図示)に接続されたp型層を通じて撮像素子107の外部へ排出される。光電変換部301,302のn型層(不図示)に蓄積された電子は、転送ゲートを介して、静電容量部(FD)に転送され、電圧信号に変換されて出力される。
【0029】
なお、図2に示す画素200R,200Bも、画素200Gと同様の構成を有し、画素200Gと同様にして、カラーフィルタ306により各色に分光された光に応じた電圧信号を出力する。
【0030】
このような構成を有する各画素では、光電変換部301,302からの信号を加算した信号(A+B信号)を撮像信号、個々の光電変換部301,302からそれぞれ読み出した2つの信号(A信号、B信号)を焦点検出信号対として用いる。なお、撮像信号と焦点検出信号とをそれぞれ読み出してもよいが、処理負荷を考慮して、次のようにしてもよい。即ち、撮像信号(A+B信号)と、光電変換部301,302のいずれか一方の焦点検出信号(例えばA信号)とを読み出し、差分を取ることで、視差を有するもう一方の焦点検出信号(例えばB信号)を取得する。
【0031】
そして、複数の画素から出力された複数のA信号と複数のB信号をそれぞれ集めることで、撮像面位相差検出方式によるAFに用いられる一対の像信号を得る。そして、該一対の像信号の相対位置をずらしながら重ね合わせ、各ずらし位置において、例えば、波形の差異部分の面積量(相関量)を求める相関演算を行う。この相関量がもっとも小さくなるずらし位置、即ち、最も相関が取れているずれ量である位相差(像ずれ量)を求め、さらに算出した像ずれ量から撮影光学系のデフォーカス量及びデフォーカス方向を算出する。
【0032】
なお、上述した例では、瞳領域が水平方向に2つに瞳分割されている例を示しているが、必要に応じて、垂直方向に瞳分割を行っても良い。
【0033】
また、上述した例では第1焦点検出画素と第2焦点検出画素から構成された撮像画素が複数配列されているが、本発明はこれに限られるものではない。必要に応じて、撮像画素と、第1焦点検出画素、第2焦点検出画素を個別の画素構成とし、撮像画素配列の一部に、第1焦点検出画素と第2焦点検出画素を部分的に配置する構成としても良い。
【0034】
なお、撮像素子107の構成は、上述した構成に限られるものでは無く、撮影光学系の互いに異なる瞳領域を通過した被写体光に基づいて、視差を有する焦点検出信号対を取得可能に信号を出力する焦点検出画素を含む構成であれば良い。
【0035】
[瞳分割]
続いて、図4から図6を参照して、本実施形態の撮像素子107の瞳分割機能について説明する。なお、画素200R,200G,200Bは同様の構成を有するため、以下、代表的に画素200Gを用いて説明する。
【0036】
図4は、図3の3Aに示す撮像素子107に配列された画素200Gのa-a断面を+y側から見た断面図、及び、撮像素子107の撮像面600からz軸方向(光軸の方向)に距離Zだけ離れた位置の瞳面を示している。なお、図4では、瞳面の座標軸と対応を取るために、断面図のx軸とy軸を図3に対して反転させている。撮像素子107の撮像面600は、結像光学系の結像面に配置される。
【0037】
第1焦点検出画素201に対応する第1瞳部分領域501は、重心が-x方向に偏心している光電変換部301の受光面と、上述した、マイクロレンズ305や層内レンズ307等で構成されるマイクロレンズ光学系を介して概ね共役関係になっている。このため、第1瞳部分領域501は、第1焦点検出画素201で受光可能な瞳領域を表している。第1瞳部分領域501の重心は、瞳面上で+xp側に偏心している。
【0038】
同様に、第2焦点検出画素202に対応する第2瞳部分領域502は、重心が+x方向に偏心している光電変換部302の受光面と、マイクロレンズ305や層内レンズ307等で構成されるマイクロレンズ光学系を介して概ね共役関係になっている。このため、第2瞳部分領域502は、第2焦点検出画素202で受光可能な瞳領域を表している。第2瞳部分領域502の重心は、瞳面上で-xp側に偏心している。
【0039】
また、瞳領域500は、光電変換部301,302(第1焦点検出画素201と第2焦点検出画素202)を全て合わせた際の画素200G全体で受光可能な瞳領域である。400は、絞り兼用シャッタ102の開口を表している。
【0040】
次に、図5を参照して、撮像素子107のセンサー入射瞳について説明する。本実施形態の撮像素子107では、面上の各像高座標に位置する画素毎に、マイクロレンズ305及び層内レンズ307(不図示)が、像高座標に応じて、光電変換部301,302に対して撮像素子の中心方向へ連続的にシフトされて配置されている。これにより、撮像素子107の撮像面600から距離Zだけ離れた位置の瞳面において、撮像素子107の各像高座標に配置された各画素の第1焦点検出画素201の受光領域に対応する第1瞳部分領域501が、概ね、一致するように構成されている。同様に、第2焦点検出画素202の受光領域に対応する第2瞳部分領域502が、概ね、一致するように構成されている。つまり、撮像素子107の撮像面600から距離Zだけ離れた位置の瞳面において、撮像素子107の全ての画素の第1瞳部分領域501と第2瞳部分領域502が、概ね、一致するように構成されている。以下、第1瞳部分領域501及び第2瞳部分領域502を、撮像素子107の「センサー入射瞳」と呼び、距離Zを、撮像素子107の「入射瞳距離」と呼ぶ。
【0041】
図6は、本実施形態の撮像素子107のセンサー入射瞳による結像光学系の射出瞳400の光学的な分割(瞳分割)を説明する概略図である。被写体からの光束のうち、結像光学系の射出瞳400と第1瞳部分領域501との重なり領域である第1射出瞳領域601を通過した光束は、第1焦点検出画素201(光電変換部301)で受光される。同様に、被写体からの光束のうち、結像光学系の射出瞳400と第2瞳部分領域502との重なり領域である第2射出瞳領域602を通過した光束は、第2焦点検出画素202(光電変換部302)で受光される。
【0042】
図4では、撮像素子107の入射瞳距離Zだけ離れた位置の瞳面における第1射出瞳領域601と第2射出瞳領域602を示している。つまり、結像光学系の射出瞳400が、撮像素子107のセンサー入射瞳により、第1射出瞳領域601と第2射出瞳領域602とに分割されることを示している。
【0043】
[画素間クロストーク]
画素200Gへの入射光は、マイクロレンズ光学系により、焦点位置に集光される。しかし、光の波動性による回折の影響のため、集光スポットの直径は回折限界Δより小さくすることはできず、有限の大きさとなる。光電変換部の受光面サイズは約1~2μm程度であり、これに対してマイクロレンズの集光スポットは約1μm程度である。そのため、光電変換部の受光面とマイクロレンズを介して共役の関係にある、図4の第1瞳部分領域501と第2瞳部分領域502は、回折ボケのため、明瞭に瞳分割されず、光の入射角に依存した受光率分布(瞳強度分布)となる。
【0044】
ここで図7を参照して、裏面照射型の撮像素子において発生する画素間クロストークについて説明する。図7は、従来の撮像素子の画素を示す図であり、マイクロレンズ305Bが、その光軸からの距離に依存せずに曲率が一定である。また、層内レンズは形成されない。なお、図7に示す撮像素子において、図3に示す本実施形態の画素と同様の構成には同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0045】
図7の7Aは、光軸に平行な角度で入射した光が、曲率一定の球形マイクロレンズ305Bにより集光される状態を示している。また、図7の7Bは、光軸に対して25°の角度で入射した光が、曲率一定の球形マイクロレンズ305Bにより集光される状態を示している。
【0046】
7Aにおいて、球形マイクロレンズ305Bの光軸からの第1の距離をr1p、球形マイクロレンズ305Bの光軸から第2の距離をr2pとする。第1の距離r1pは、第2の距離r2pより小さく、球形マイクロレンズ305Bの光軸に垂直な動径座標上で、第1の距離r1pが内側、第2の距離r2pが外側である。第1の距離r1pでの球形マイクロレンズ305B上の点を第1の主点h1p、焦点距離を第1の焦点距離f1p、焦点位置を第1の焦点位置z1pとする。また、第2の距離r2pでの球形マイクロレンズ305B上の点を第2の主点h2p、焦点距離を第2の焦点距離f2p、焦点位置を第2の焦点位置z2pとする。
【0047】
7Aにおいて、球形マイクロレンズ305Bは曲率一定であるため、第2の距離r2pでの第2の焦点距離f2pが、第1の距離r1pでの第1の焦点距離f1pより短い。また、第2の距離r2pでの第2の焦点位置z2pが、第1の距離r1pでの第1の焦点位置z1pよりも、相対的に受光側に位置している。
【0048】
そのため、7Bに示す様に光軸に対して25°の角度で光が入射した場合、第2の距離r2pからの光線l2pの光電変換部の受光面への入射位置p2pが、第1の距離r1pからの光線l1pの光電変換部の受光面への入射位置p1pよりも、隣接画素に近くなる。これに加えて、第2の距離r2pからの光線l2pの光電変換部の受光面への入射角度が、第1の距離r1pからの光線l1pの光電変換部の受光面への入射角度よりも、受光面に対して浅く小さい角度(受光面の垂直軸に対して大きい角度)となる。
【0049】
したがって、各画素の球形マイクロレンズ305Bは、斜入射光に対して、隣接画素へのクロストークを生じやすい形状となっており、撮像性能が低下する場合がある。そのため、従来の撮像素子では、焦点検出性能を向上するために、マイクロレンズの曲率を小さく、焦点距離を長くし、焦点検出画素の瞳強度分布の入射角変化を大きくした際に、撮像画素の画素間クロストークが生じて、撮像性能が低下する場合がある。
【0050】
上記現象を鑑みて、本実施形態では、撮像画素の画素間クロストークが抑制されるように、各画素に設けられるマイクロレンズ光学系が、以下で説明する条件となるように構成する。
【0051】
[マイクロレンズ光学系]
図8から図10を参照して、本第1の実施形態における撮像素子107の各画素に設けられたマイクロレンズ光学系について説明する。なお、本実施形態の画素のマイクロレンズ光学系は、上述した様に、マイクロレンズ305、平坦化層、カラーフィルタ306、層内レンズ307、封止層、絶縁層等で構成されている。また、図8に示す画素構造は、図3に示す画素構造に対応している。
【0052】
図8の8Aから8Cは、本実施形態の画素に、光軸に平行な角度で入射した光が、光電変換部301,302の受光側に設けられたマイクロレンズ光学系により集光される状態を示している。また、図8の8Dから8Fは、本実施形態の画素に、光軸に対して25°の角度で入射した光が、光電変換部301,302の受光側に設けられたマイクロレンズ光学系により集光される状態を示している。
【0053】
図8の8A及び8Dにおいて、太線で示す曲線Hは、本実施形態の画素に設けられたマイクロレンズ光学系の主曲面H(の断面)を示しており、マイクロレンズ光学系は、主曲面Hの形状をした単一マイクロレンズと、光学的に略等価の関係にある。したがって、本実施形態の画素は、光電変換部301,302の受光側に、主曲面Hの形状をした単一マイクロレンズが設けられた画素構造と、概ね、光学構造的に等価である。
【0054】
8Aにおいて、マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離をr1、マイクロレンズ光学系の光軸から第2の距離をr2とする。第1の距離r1は、第2の距離r2より小さく、マイクロレンズ光学系の光軸に垂直な動径座標上で、第1の距離r1が内側、第2の距離r2が外側である。第1の距離r1でのマイクロレンズ光学系の主曲面H上の点を第1の主点h1、焦点距離を第1の焦点距離f1、焦点位置を第1の焦点位置z1とする。また、第2の距離r2でのマイクロレンズ光学系の主曲面上の点を第2の主点h2、焦点距離を第2の焦点距離f2、焦点位置を第2の焦点位置z2とする。
【0055】
図9は、図8の8A及び8Dの本実施形態の画素に設けられたマイクロレンズ光学系の主曲面H(の断面)に接する円を示している。第1の距離r1での主曲面Hに接する円の半径を第1の曲率半径a1とし、第2の距離r2での主曲面Hに接する円の半径を第2の曲率半径a2とする。本実施形態では、第1の距離r1での主曲面の第1の曲率半径a1が、第2の距離r2での主曲面の第2の曲率半径a2より小さく構成する。
【0056】
曲率半径の逆数が曲率であることから、本実施形態では、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の曲率(1/a1)が、第2の距離r2におけるマイクロレンズ光学系の第2の曲率(1/a2)より大きいように構成する。
【0057】
また、8Aに示す様に、マイクロレンズ光学系が上記条件で構成されているため、第2の距離r2での第2の焦点位置z2が、第1の距離r1での第1の焦点位置z1よりも、相対的に光電変換部301,302側に位置するように構成される。
【0058】
8Bは、8Aのマイクロレンズ光学系が設けられた本実施形態の画素に、光軸に平行な角度で円偏光の平面波(波長λ=540nm)が入射した場合の画素内部での光強度分布の例を示している。また、8Cは、受光面での集光スポットの例を示している。
【0059】
8Eは、8Dのマイクロレンズ光学系が設けられた本実施形態の画素に、光軸に対して25°の角度で円偏光の平面波(波長λ=540nm)が入射した場合の画素内部での光強度分布の例を示している。また、8Fは、受光面での集光スポットの例を示している。
【0060】
このように、8Dで、光軸に対して25°の角度で光が入射した場合、第1の距離r1からの光線l1は、光電変換部の受光面への入射位置p1が、相対的に、第2の距離r2からの光線l2の入射位置p2に対して、画素の内側から離れる。しかしながら、光線l1の光電変換部の受光面への入射角度が深い角度であるため、隣接画素へのクロストークが抑制される。同時に、第2の距離r2からの光線l2は、光電変換部の受光面への入射角度が、相対的に、第1の距離r1からの光線l1の入射角度に対して、浅い角度になる。しかしながら、光線l2の入射位置p2が、光線l1の入射位置p1より、隣接画素から離れて画素の内側に留まるため、隣接画素へのクロストークが抑制される。
【0061】
このように、本実施形態の撮像素子の画素は、光電変換部に対して受光側に設けられたマイクロレンズ光学系を有し、マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離r1と、第1の距離r1より長い第2の距離r2において、次の2つの関係を有する。
【0062】
まず、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の曲率が、第2の距離r2におけるマイクロレンズ光学系の第2の曲率より大きい。また、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z1が、第2の距離r2におけるマイクロレンズ光学系の第2の焦点位置z2よりも、受光側に位置する。
【0063】
なお、光電変換部301,302は、屈折率が大きいシリコンSiなどで形成され、光電変換部301,302の上部層は、屈折率が小さい酸化シリコンSiOxなどで形成される。そのため、屈折率が大きい光電変換部301,302に入射する前に、屈折率が小さい光電変換部301,302の上部層で、隣接画素間方向への広がりを抑えることで、隣接画素へのクロストークを効果的に抑制することができる。
【0064】
図10は、本実施形態の画素に設けられたマイクロレンズ光学系の受光面積の割合を示す図である。
【0065】
隣接画素へのクロストークをより効果的に抑制するには、第1の距離r1からの光線l1の光強度と、第2の距離r2からの光線l2の光強度が、概ね等しいことが望ましい。画素サイズPに内接する半径0.5Pの円の面積を2等分する半径Rcは、Rc=0.5P/√2≒0.35Pである。したがって、画素の画素サイズPに対して、第1の距離r1は、半径Rcの内側の領域(0<r1<0.35P)にあり、第2の距離r2は、半径Rcの外側の領域(0.35P<r2<0.71P)にあることが望ましい。また、マイクロレンズ光学系の4隅の対角コーナー近傍は、隣接画素へのクロストークを抑制するために、遮光層により遮光される場合がある。そのため、画素サイズPに対して、第2の距離r2が、0.35P<r2≦0.5Pの領域にあることが望ましい。
【0066】
また、マイクロレンズ光学系の光軸近傍は、頂点(極値)形状のため、製造プロセス等により、頂点が平坦化して曲率が変化したり、頂点位置がばらついたりすることがある。この影響を抑制するため、第1の距離r1が、光軸から半径0.5Rcの円の領域(半径Rcの円の面積の1/4の領域)を除いた0.5Rc=0.175P<r1<0.35Pの領域にあることが望ましい。さらに、マイクロレンズ光学系の画素周辺近傍は、隣接画素のマイクロレンズ光学系と接するため、製造プロセス等により、曲率が制約を受ける場合がある。この影響を抑制するため、第2の距離r2が、0.35P<r2≦0.5Pの領域から、半径0.47Pから半径0.5Pのリング領域(半径Rcの円の面積の1/4の領域)を除いた0.35P<r2<0.47Pの領域にあることが望ましい。
【0067】
また、図8の8Aに示す様に、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の主点h1と第1の焦点位置z1を結ぶ線分h1z1と光軸とが成す角をφ1とし、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の見込み角を2φ1とする。また、第1の焦点位置z1での屈折率をnとする。また、光軸に沿った座標をzとする。座標zは、第1の焦点位置z1を原点(z=0)として、マイクロレンズ側を正符号、光電変換部側を負符号とする。
【0068】
第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の開口数NA1を、以下の式(1)で定義する。
NA1=n・sinφ1 …(1)
また、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の絞り値F1を、以下の式(2)で定義する。
1=1/(2n・sinφ1) …(2)
【0069】
第1の距離r1への入射光は、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系により、第1の焦点位置z1に集光される。しかし、光の波動性により、第1の集光スポットの直径は第1の回折限界Δ1より小さくすることはできない。第1の集光スポットの強度分布をエアリーパターン(Airy pattern)で近似すると、回折限界Δ1は、入射光の波長をλ(可視光域の波長λ=380nm~780nm)として、概ね、以下の式(3)で求まる
Δ1=1.22λ/n・sinφ1=2.44λF1 …(3)
第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点深度±zD1は、回折限界Δ1を許容錯乱円として、以下の式(4)で求まる。
±zD1=±nF1Δ1 …(4)
なお、第1の焦点深度の範囲は、z軸方向(光軸方向)の座標zに対して、z-zD1<z<z+zD1として表すことができる。
【0070】
第1の集光スポットの強度分布がガウス分布に近いとすると、第1の集光スポットの直径w1は、座標zの関数として、概ね、以下の式(5)の関係が成り立つ。
1(z)=Δ1√{1+(z/zR12} …(5)
ここで、zR1は、第1の距離r1における第1のレイリー長であり、係数αR=0.61π≒1.92として、zR1=αRD1で定義される。第1のレイリー長の範囲z-zR1<z<z+zR1では、第1の集光スポットの直径w1は、第1の回折限界Δ1以上、第1の回折限界Δ1の√2倍以下(Δ1≦w1≦√2Δ1≒1.4Δ1)である。
【0071】
また、第2の距離r2におけるマイクロレンズ光学系の第2のレイリー長zR2、及び、第2のレイリー長の範囲z-zR2<z<z+zR2も同様である。
【0072】
本実施形態では、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z1は、光電変換部301,302の受光面から前ピン側に構成される。本実施形態では、さらに、第1の距離r1におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z1と光電変換部301,302の受光面までの距離が、第1のレイリー長zR1≒1.92zD1以下となる範囲で、光電変換部301,302の受光面から前ピン側に構成される。これにより、第1の距離r1からの光束により形成される集光スポットの光電変換部301,302の受光面での第1の集光スポット直径w1を、第1の回折限界Δ1の1.4倍以下(w1≦1.4Δ1)に抑制することができる。
【0073】
本実施形態では、光電変換部301,302の受光面が、第1の焦点位置z1から第1のレイリー長の範囲にあり、第2の焦点位置z2から第2のレイリー長の範囲にあるようにマイクロレンズ光学系の主曲面を構成することで、クロストークをより効率的に抑制することができる。
【0074】
上記の通り本第1の実施形態によれば、隣接画素へのクロストークを効果的に抑制することができ、これにより、撮像面位相差方式による焦点検出性能と撮像性能を両立させることが可能となる。
【0075】
また、斜入射光による隣接画素へのクロストークは、光電変換部に対して受光側に配線層がある表面照射型の撮像素子より、光電変換部に対して受光側と反対側に配線層がある裏面照射型の撮像素子で生じやすい。そのため、本実施形態によれば、裏面照射型の撮像素子で、隣接画素へのクロストークをより効果的に抑制することができる。
【0076】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、画素に設けられるマイクロレンズ光学系が、1つのマイクロレンズと1つの層内レンズから構成される場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、図8に示すものとは、異なる個数の層内レンズから構成されたマイクロレンズ光学系を用いても良い。
【0077】
図11の11Aから11Fは、本発明の画素に設けられたマイクロレンズ光学系が、1つのマイクロレンズ305と、2つの層内レンズ307,308とを含んで構成されている。上記以外は、上述した第1の実施形態と同様であり、当該構成を有するマイクロレンズ光学系の主曲面Hは、主曲面Hの形状をした単一マイクロレンズと、光学的に略等価の関係を有する。
【0078】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
なお、第2の実施形態では、画素に設けられるマイクロレンズ光学系が、1つのマイクロレンズと2つの層内レンズを含む例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、マイクロレンズ光学系を、1つのマイクロレンズで構成しても良いし、1つのマイクロレンズと3つ以上の層内レンズを含んで構成しても良い。
【0080】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、裏面照射型の撮像素子で構成される場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、表面照射型の撮像素子であっても良い。
【0081】
図12の12A及び12Bでは、表面照射型の撮像素子の画素に、図8に示す主曲面Hを有するマイクロレンズ光学系が構成されている。光電変換部301,302に対して、受光側に、配線層310が設けられている。上記以外は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0082】
したがって、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、撮像素子107の各画素がx方向に2分割、y方向に1分割(つまり、分割されていない)場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、図2に示すものとは分割数や分割方法が異なる画素から構成された撮像素子107を用いても良い。
【0084】
図13は、本実施形態で用いられる撮像素子107の撮像画素と焦点検出画素の配列の概略を示す図である。図13は、2次元CMOSセンサー(撮像素子)の画素(撮像画素)配列を4列×4行の範囲で、焦点検出画素配列を8列×8行の範囲で示したものである。
【0085】
本実施形態において、図13に示した画素群700は2行×2列の画素からなり、R(赤)の分光感度を有する画素700Rが左上に、G(緑)の分光感度を有する画素700Gが右上と左下に、B(青)の分光感度を有する画素700Bが右下に配置されている。さらに、各画素は2列×2行に配列された第1焦点検出画素701から第4焦点検出画素704により構成されている。
【0086】
図13に示した4列×4行の画素(8列×8行の焦点検出画素)を面上に多数配置し、撮像画像(焦点検出信号)の取得を可能としている。
【0087】
図13に示した撮像素子107の1つの画素700Gを、撮像素子107の受光面側(+z側)から見た平面図を図14の14Aに示し、14Aのa-a断面を-y側から見た断面図を14Bに示す。図14に示すように、本実施形態の画素700Gでは、各画素の受光側に入射光を集光するためのマイクロレンズ305及び層内レンズ307が形成され、x方向にNH分割(2分割)、y方向にNV分割(2分割)された第1光電変換部801から第4光電変換部804が形成される。第1光電変換部801から第4光電変換部804が、それぞれ、第1焦点検出画素701から第4焦点検出画素704に対応する。
【0088】
このような構成では、第1焦点検出画素701と第3焦点検出画素703、第2焦点検出画素702と第4焦点検出画素704の信号をそれぞれ画素内で加算して読み出すことで、図2の第1焦点検出画素201及び第2焦点検出画素202と同様の信号を得ることができる。また、第1焦点検出画素701と第2焦点検出画素702、第3焦点検出画素703と第4焦点検出画素704の受光信号をそれぞれ画素内で加算して読み出すことで、垂直方向に分割した焦点検出信号を得ることができる。なお、画像信号として用いる際には、第1~第4焦点検出画素701~704の信号を加算すれば良い。なお、第1~第4焦点検出画素701~704の一部の信号と、第1~第4焦点検出画素701~704を加算した信号を読み出し、差分することで、一対の焦点検出信号と画像信号を得るようにしても良い。上記以外は、上述した実施形態と同様である。
【0089】
以上の構成により、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。上述した第1~4の実施形態では、図8に示すマイクロレンズ光学系の主曲面Hの形状を有する構成例を用いて説明した。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、第1の実施形態とは異なるマイクロレンズ光学系の主曲面形状を有していても良い。第5の実施形態では、画素間クロストークを抑制すると同時に、位相差焦点検出信号を確保するため、画素内の光電変換部301と光電変換部302間の画素内クロストークを一定量、好適に生じさせる場合の構成例について説明する。
【0091】
図15の15Aから15Fは、本発明の画素に設けられたマイクロレンズ光学系が、第1の実施形態とは異なる形状の1つのマイクロレンズ1505と、1つの層内レンズ1507とから構成されている。なお、図15に示す撮像素子において、図3に示す画素と同様の構成には同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0092】
図15の15Aから15Cは、本実施形態の画素に、光軸に平行な角度で入射した光が、光電変換部301,302の受光側に設けられたマイクロレンズ光学系により集光される状態を示している。また、図15の15Dから15Fは、本実施形態の画素に、光軸に対して25°の角度で入射した光が、光電変換部301,302の受光側に設けられたマイクロレンズ光学系により集光される状態を示している。
【0093】
なお、本実施形態におけるマイクロレンズ光学系は、マイクロレンズ1505、平坦化層、カラーフィルタ、層内レンズ1507、封止層、絶縁層等で構成されている。
【0094】
図15の15A及び15Dにおいて、太線で示す曲線H’は、本実施形態の画素に設けられたマイクロレンズ光学系の主曲面H’(の断面)を示しており、マイクロレンズ光学系は、主曲面H’の形状をした単一マイクロレンズと、光学的に略等価の関係にある。したがって、本実施形態の画素は、光電変換部301,302の受光側に、主曲面H’の形状をした単一マイクロレンズが設けられた画素構造と、概ね、光学構造的に等価である。
【0095】
15Aにおいて、マイクロレンズ光学系の光軸から第0の距離をr50、マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離をr51、マイクロレンズ光学系の光軸から第2の距離をr52とする。第0の距離r50から第2の距離r52は、マイクロレンズ光学系の光軸に垂直な動径座標上で、第0の距離r50<第1の距離r51<第2の距離r52の大小関係にあり、第0の距離r50が中央寄り、第1の距離r51が中間、第2の距離r52が周辺である。
【0096】
第0の距離r50でのマイクロレンズ光学系の主曲面H’上の点を第0の主点h50、焦点距離を第0の焦点距離f50、焦点位置を第0の焦点位置z50とする。また、第1の距離r51でのマイクロレンズ光学系の主曲面上の点を第1の主点h51、焦点距離を第1の焦点距離f51、焦点位置を第1の焦点位置z51とする。さらに、第2の距離r52でのマイクロレンズ光学系の主曲面上の点を第2の主点h52、焦点距離を第2の焦点距離f52、焦点位置を第2の焦点位置z52とする。
【0097】
本実施形態では、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の曲率を、第2の距離r52におけるマイクロレンズ光学系の第2の曲率より大きく構成する。
【0098】
15Aに示す様に、マイクロレンズ光学系が上記条件で構成されているため、第2の距離r52での第2の焦点位置z52が、第1の距離r51での第1の焦点位置z51よりも、相対的に光電変換部301,302側に位置するように構成される。
【0099】
15Bは、15Aのマイクロレンズ光学系が設けられた本実施形態の画素に、光軸に平行な角度で円偏光の平面波(波長λ=540nm)が入射した場合の画素内部での光強度分布の例を示している。また、15Cは、受光面での集光スポットの例を示している。
【0100】
上記構成において、15Dに示す様に、光軸に対して25°の角度で光が入射した場合、第1の距離r51からの光線l51は、光電変換部の受光面への入射位置p51が、相対的に、第2の距離r52からの光線l52の入射位置p52に対して、画素の内側から離れる。しかしながら、光線l51の光電変換部の受光面への入射角度が深い角度であるため、隣接画素へのクロストークが抑制される。同時に、第2の距離r52からの光線l52は、光電変換部の受光面への入射角度が、相対的に、第1の距離r51からの光線l51の入射角度に対して、浅い角度になる。しかしながら、光線l52の入射位置p52が、光線l51の入射位置p51より、隣接画素から離れて画素の内側に留まるため、隣接画素へのクロストークが抑制される。
【0101】
画素サイズPに内接する半径0.5Pの円の面積を3等分する第1の半径Rc1=0.5P/√3≒0.29P、第2の半径Rc2=0.5P/√3×√2≒0.41Pとする。隣接画素へのクロストークをより効果的に抑制するために、第0の距離r50からの光強度と、第1の距離r51からの光強度と、第2の距離r52からの光強度が、概ね、等しいことが望ましい。したがって、本実施形態では、第0の距離r50は、半径Rc1の内側の領域(0<第0の距離r50<0.29P)にあり、第1の距離r51は、半径Rc1から半径Rc2の領域(0.29P<第1の距離r51<0.41P)にあり、第2の距離r52は、半径Rc2の外側の領域(0.41P<第2の距離r52<0.71P)にあるように構成される。また、マイクロレンズ光学系の4隅の対角コーナー近傍は、隣接画素へのクロストークを抑制するために、遮光層により遮光される場合がある。そのため、画素サイズPに対して、第2の距離r52が、0.41P<第2の距離r52≦0.5Pの領域にあることが望ましい。また、マイクロレンズ光学系の光軸近傍は、頂点(極値)形状のため、製造プロセス等により、頂点が平坦化して曲率が変化したり、頂点位置がばらついたりすることがある。この影響を抑制するため、第0の距離r50が、光軸から半径0.5Rc1の円の領域(半径Rc1の円の面積の1/4の領域)を除いた0.5Rc1=0.145P<第0の距離r50<0.29Pの領域にあることが望ましい。さらに、マイクロレンズ光学系の画素周辺近傍は、隣接画素のマイクロレンズ光学系と接するため、製造プロセス等により、曲率が制約を受ける場合がある。この影響を抑制するため、第2の距離r52が、0.41P<第2の距離r52≦0.5Pの領域から、半径0.48Pから半径0.5Pのリング領域(半径Rc1の円の面積の1/4の領域)を除いた0.41P<第2の距離r52<0.48Pの領域にあることが望ましい。
【0102】
なお、光電変換部301,302は、屈折率が大きいシリコンSiなどで形成され、光電変換部301,302の上部層は、屈折率が小さい酸化シリコンSiOxなどで形成される。そのため、屈折率が大きい光電変換部301,302に入射する前に、屈折率が小さい光電変換部301,302の上部層で、隣接画素間方向への広がりを抑えることで、隣接画素へのクロストークを効果的に抑制することができる。
【0103】
このように、第5の実施形態の撮像素子の画素は、光電変換部に対して受光側に設けられたマイクロレンズ光学系を有し、マイクロレンズ光学系の光軸からの第1の距離r51と、第1の距離より長い第2の距離r52において、次の2つの関係を有する。
【0104】
まず、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の曲率が、第2の距離r52におけるマイクロレンズ光学系の第2の曲率より大きい。また、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z51が、第2の距離r52におけるマイクロレンズ光学系の第2の焦点位置z52より、受光側に位置する。
【0105】
さらに、本実施形態では、上述した画素間クロストークを抑制する構成に加えて、画素内の光電変換部301と光電変換部302間の画素内クロストークを一定量、好適に生じさせ、位相差焦点検出信号を確保するため、以下の条件を満たすように構成される。
【0106】
15Aに示す様に、本実施形態では、第0の距離r50におけるマイクロレンズ光学系の第0の曲率を、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の曲率より小さく構成する。
【0107】
また、15Aに示す様に、本実施形態では、第0の距離r50におけるマイクロレンズ光学系の第0の焦点距離f50を、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点距離f51より長く構成する。
【0108】
さらに、15Aに示す様に、本実施形態では、第0の距離r50におけるマイクロレンズ光学系の第0の焦点位置z50を、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z51よりも、相対的に光電変換部301,302側に位置するように構成する。また、光電変換部301,302の受光面から第1の焦点位置z51までの距離が、光電変換部301,302の受光面から第0の焦点位置z50までの距離、及び、光電変換部301,302の受光面から第2の焦点位置z52までの距離よりも長くなるように構成する。
【0109】
また、15Aに示す様に、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の主点h51と第1の焦点位置z51を結ぶ線分h51z51と光軸とが成す角をφ1とし、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の見込み角を2φ1とする。また、第1の焦点位置z51での屈折率をnとする。また、光軸に沿った座標をzとする。座標zは、第1の焦点位置z51を原点(z=0)として、マイクロレンズ側を正符号、光電変換部側を負符号とする。
【0110】
第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の開口数NA1を、以下の式(1)で定義する。
NA1=n・sinφ1 …(1)
また、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の絞り値F1を、以下の式(2)で定義する。
1=1/(2n・sinφ1) …(2)
【0111】
第1の距離r51への入射光は、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系により、第1の焦点位置z51に集光される。しかし、光の波動性により、第1の集光スポットの直径は第1の回折限界Δ1より小さくすることはできない。第1の集光スポットの強度分布をエアリーパターン(Airy pattern)で近似すると、回折限界Δ1は、入射光の波長をλ(可視光域の波長λ=380nm~780nm)として、概ね、以下の式(3)で求まる。
Δ1=1.22λ/n・sinφ1=2.44λF1 …(3)
第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点深度±zD1は、回折限界Δ1を許容錯乱円として、以下の式(4)で求まる。
±zD1=±nF1Δ1 …(4)
なお、第1の焦点深度の範囲は、z軸方向(光軸方向)の座標zに対して、z-zD1<z<z+zD1として表すことができる。
【0112】
第1の集光スポットの強度分布がガウス分布に近いとすると、第1の集光スポットの直径w1は、座標zの関数として、概ね、以下の式(5)の関係が成り立つ。
1(z)=Δ1√{1+(z/zR12} …(5)
ここで、zR1は、第1の距離r51における第1のレイリー長であり、係数αR=0.61π≒1.92として、zR1=αRD1で定義される。第1のレイリー長の範囲z-zR1<z<z+zR1では、第1の集光スポットの直径w1は、第1の回折限界Δ1以上、第1の回折限界Δ1の√2倍以下(Δ1≦w1≦√2Δ1≒1.4Δ1)である。
【0113】
また、第2の距離r52におけるマイクロレンズ光学系の第2のレイリー長zR2、及び、第2のレイリー長の範囲z-zR2<z<z+zR2も同様である。
さらに、第0の距離r50におけるマイクロレンズ光学系の第0のレイリー長zR0、及び、第0のレイリー長の範囲z-zR0<z<z+zR0も同様である。
【0114】
本実施形態では、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z51は、光電変換部301,302の受光面から前ピン側に構成される。本実施形態では、さらに、第1の距離r51におけるマイクロレンズ光学系の第1の焦点位置z51と光電変換部301,302の受光面までの距離が、第1のレイリー長zR1≒1.92zD1以下となる範囲で、光電変換部301,302の受光面から前ピン側に構成される。これにより、第1の距離r51からの光束により形成される集光スポットの光電変換部301,302の受光面での第1の集光スポット直径w1を、第1の回折限界Δ1の1.4倍以下(w1≦1.4Δ1)に抑制することができる。
【0115】
本実施形態では、光電変換部301,302の受光面が、第1の焦点位置z51から第1のレイリー長の範囲にあり、第2の焦点位置z52から第2のレイリー長の範囲にあるようにマイクロレンズ光学系の主曲面を構成することで、クロストークをより効率的に抑制することができる。さらに、光電変換部301,302の受光面が、第0の焦点位置z50から第0のレイリー長の範囲にあるようにマイクロレンズ光学系の主曲面を構成することで、クロストークをより効率的に抑制することができる。
【0116】
上記構成により、15Dに示す様に、光軸に対して25°の角度で光が入射した場合、第1の距離r51からの光束は、光電変換部の受光面において、第1の回折限界Δ1から1.4Δ1程度に入射位置p51から入射位置p51’まで拡がる。これに対して、第0の距離r50からの光束が集光して入射する第0の入射位置p50と、第2の距離r52からの光束の拡がりである第2の入射位置p52から第2の入射位置p52’は、いずれも、第1の距離r51からの光束の拡がりである入射位置p51から入射位置p51’の略範囲内に含まれる。したがって、マイクロレンズ光学系に入射する全光束から形成される集光スポットの光電変換部301,302の受光面での集光スポット直径を、第1の回折限界Δ1の1.4倍以下(w1≦1.4Δ1)に抑制することができ、瞳分離性能を良好に保つことができる。
【0117】
また、上記構成により、第1の距離r51からの光束の一部が、光電変換部の受光面において、画素中心方向に、入射位置p51’まで拡がるため、画素内の光電変換部301と光電変換部302間の画素内クロストークが一定量生じる。第1の焦点位置z51の光電変換部301,302の受光面からの前ピン量を調整することで、画素内クロストーク量を、好適に調整することが可能である。したがって、本実施形態では、画素間クロストークを抑制すると同時に、瞳分離性能を良好に保持して、画素内の光電変換部301と光電変換部302間の画素内クロストークを一定量、好適に生じさせることができる。そのため、結像光学系の条件によって、光電変換部301と光電変換部302のどちらか一方に受光量が偏った場合でも、位相差焦点検出信号として必要最低限の受光量を確保することができる。
【0118】
15Eは、15Dのマイクロレンズ光学系が設けられた本実施形態の画素に、光軸に対して25°の角度で円偏光の平面波(波長λ=540nm)が入射した場合の画素内部での光強度分布の例を示している。また、15Fは、受光面での集光スポットの例を示している。
【0119】
上記の通り本第5の実施形態によれば、隣接画素へのクロストークを効果的に抑制することができると共に、位相差焦点検出信号として必要最低限の受光量を確保することができる。これにより、撮像面位相差方式による焦点検出性能と撮像性能を両立させることが可能となる。
【0120】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
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