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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】曲げ加工システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B21D5/02 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089699
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183349
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 典久
(72)【発明者】
【氏名】西畠 裕人
(72)【発明者】
【氏名】高津 聡志
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126758(JP,A)
【文献】特開2002-013913(JP,A)
【文献】特開2016-135512(JP,A)
【文献】特開2009-117315(JP,A)
【文献】特開2006-107921(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107617836(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110930799(CN,A)
【文献】特開2013-101793(JP,A)
【文献】特開平10-106309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工システムであって、
プレスブレーキとその前方に配置された所定のセット領域との間に設けられ、前記所定のセット領域にセットされたパレット上のワークを保持するロボットハンドを有し、ワークの曲げ加工を補助する曲げロボットと、
前記所定のセット領域の上方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に設けられ、前記パレット上のワークを斜め上方向から撮像する撮像ユニットと、
前記所定のセット領域の左方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に立設され、前記撮像ユニットの撮像範囲に向かって照明光を照射する第1照明ユニットと、
前記所定のセット領域の右方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に立設され、前記撮像ユニットの撮像範囲に向かって照明光を照射する第2照明ユニットと、を備えており、
前記第1照明ユニットと前記第2照明ユニットとの間に出入通路が形成され、
前記第1照明ユニットは、その右端側が左端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置され、かつ、前記第2照明ユニットは、その左端側が右端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置され、
前記曲げ加工システムの大部分の周囲には、曲げ加工の安全性を確保するための安全柵が設けられている、曲げ加工システム。
【請求項2】
前記第1照明ユニットは、照明光を右斜め下方向に照射する複数の第1照明を有し、前記複数の第1照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、各第1照明の照射方向が調整可能に構成され、
前記第2照明ユニットは、照明光を左斜め下方向に照射する複数の第2照明を有し、前記複数の第2照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、各第2照明の照射方向が調整可能に構成されている、請求項1に記載の曲げ加工システム。
【請求項3】
前記第1照明ユニットは、前記所定のセット領域の左方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に立設された第1支持フレームと、前記第1支持フレームに鉛直な軸心周りに回動可能に設けられた複数の第1ブラケットとを有し、各第1照明が各第1ブラケットに水平な軸心周りに回動可能に設けられ、
前記第2照明ユニットは、前記所定のセット領域の右方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に立設された第2支持フレームと、前記第2支持フレームに鉛直な軸心周りに回動可能に設けられた複数の第2ブラケットとを有し、各第2照明が各第2ブラケットに水平な軸心周りに回動可能に設けられている、請求項2に記載の曲げ加工システム。
【請求項4】
前記第1照明ユニットの近傍に設けられ、前記第1照明ユニットを保護する第1ガードと、
前記第2照明ユニットの近傍に設けられ、前記第2照明ユニットを保護する第2ガードと、を備えている、請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載の曲げ加工システム。
【請求項5】
請求項2に記載の曲げ加工システムを使用するための方法であって、
前記パレットの全領域を調整シートによって覆った状態で、各第1照明に取付けた調整治具のレーザポインタからの可視光が、前記調整シートにおける各第1照明の照射範囲に対応する箇所に照射されるように、各第1照明の照射方向を調整する共に、各第2照明に取付けた前記調整治具の前記レーザポインタからの可視光が、前記調整シートにおける各第2照明の照射範囲に対応する箇所に照射されるように、各第2照明の照射方向を調整する、曲げ加工システムの使用方法。
【請求項6】
請求項2に記載の曲げ加工システムを使用するための方法であって、
前記撮像ユニットが前記パレット上のワークを斜め上方向から撮像する際に、前記複数の第1照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、前記第1照明ユニットの照明動作を実行すると共に、前記複数の第2照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、前記第2照明ユニットの照明動作を実行する、曲げ加工システムの使用方法。
【請求項7】
前記第1照明ユニットの照明動作と前記第2照明ユニットの照明動作の実行タイミングをずらす、請求項に記載の曲げ加工システムの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークに対して曲げ加工を自動的に行う曲げ加工システム及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、板金加工の分野においては、曲げ加工システムが普及しており、曲げ加工システムの構成等について簡単に説明すると、次の通りである(特許文献1参照)。
【0003】
曲げ加工システムは、ワークに対して曲げ加工を行うプレスブレーキを備えている。プレスブレーキとその前方に配置された所定のセット領域との間には、ワークの曲げ加工を補助する曲げロボットが設けられている。曲げロボットは、所定のセット領域にセットされたパレット上のワークを保持するロボットハンドを有している。また、所定のセット領域の上方には、パレット上のワークを鉛直上方向から撮像する撮像ユニットとしてのカメラが設けられている。所定のセット領域の左側近傍には、カメラの撮像範囲に向かって照明光を照射する第1照明ユニットが設けられている。所定のセット領域の右側近傍には、カメラの撮像範囲に向かって照明光を照射する第2照明ユニットが設けられている。
【0004】
曲げ加工システムは、プレスブレーキを制御するNC装置と、曲げロボットを制御するロボット制御装置と、カメラからの撮像画像に対して画像処理を行う画像処理装置とを備えている。画像処理装置は、カメラからの撮像画像に基づいて、パレット上のワークの位置を検出する。ロボット制御装置は、検出されたワークの位置に基づいて、ロボットハンドがワークの所定の部位を保持するように曲げロボットを制御する。従って、ワークをパレット上の所定の箇所に正確に載置しなくても、曲げロボットを適切に動作させて、曲げ加工の加工精度を十分に確保することができる。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術として、特許文献1の他に、特許文献2から特許文献4に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-120388号公報
【文献】特開1017-124469号公報
【文献】特開2015-13303号公報
【文献】特開2019-14027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カメラが所定のセット領域の上方に位置しており、所定のセット領域から十分に離隔していない。2つの照明ユニットが所定のセット領域の近傍に位置しており、所定のセット領域から十分に離隔していない。その結果、曲げロボットの一部及びロボットハンドに保持されたワークがカメラ等に干渉しないようにするため、曲げロボットの動作範囲が制限され、ワークに対して曲げ加工を行うことができないケースが多く発生する。つまり、曲げ加工の加工精度を十分に確保しつつ、曲げ加工システムの加工の自由度を高めることが困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、ワークの曲げ加工の加工精度を十分に確保しつつ、曲げ加工の自由度を高めることができる、曲げ加工システム及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る曲げ加工システムは、プレスブレーキとその前方に配置された所定のセット領域との間に設けられ、前記所定のセット領域にセットされたパレット上のワークを保持するロボットハンドを有し、ワークの曲げ加工を補助する曲げロボットと、前記所定のセット領域の上方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に設けられ、前記パレット上のワークを斜め上方向から撮像する撮像ユニットと、を備えている。上記曲げ加工システムは、前記所定のセット領域の左方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に立設され、前記撮像ユニットの撮像範囲に向かって照明光を照射する第1照明ユニットと、前記所定のセット領域の右方で、かつ、前記所定のセット領域を挟んで前記曲げロボットとは反対側に立設され、前記撮像ユニットの撮像範囲に向かって照明光を照射する第2照明ユニットと、を備えている。
【0010】
前記第1照明ユニットと前記第2照明ユニットとの間に出入通路が形成されている。前記第1照明ユニットは、その右端側が左端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置され、かつ、前記第2照明ユニットは、その左端側が右端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置されている。前記曲げ加工システムの大部分の周囲には、曲げ加工の安全性を確保するための安全柵が設けられている。
【0011】
記第1照明ユニットは、照明光を右斜め下方向に照射する複数の第1照明を有し、前記複数の第1照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、各第1照明の照射方向が調整可能に構成されてもよい。また。前記第2照明ユニットは、照明光を左斜め下方向に照射する複数の第2照明を有し、前記複数の第2照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、各第2照明の照射方向が調整可能に構成されてもよい(上記第1発明がこれらの構成を備える場合を実施態様と呼ぶこととする。)
【0012】
記第1照明ユニットは、前記所定のセット領域の左前方に立設された第1支持フレームと、前記第1支持フレームに鉛直な軸心周りに回動可能に設けられた複数の第1ブラケットとを有してもよい。この場合に、各第1照明が各第1ブラケットに水平な軸心周りに回動可能に設けられる。前記第2照明ユニットは、前記所定のセット領域の右前方に立設された第2支持フレームと、前記第2支持フレームに鉛直な軸心周りに回動可能に設けられた複数の第2ブラケットとを有してもよい。この場合に、各第2照明が各第2ブラケットに水平な軸心周りに回動可能に設けられる。
【0013】
げ加工システムは、前記第1照明ユニットの近傍に設けられ、前記第1照明ユニットを保護する第1ガードと、前記第2照明ユニットの近傍に設けられ、前記第2照明ユニットを保護する第2ガードと、を備えてもよい。
【0014】
上記曲げ加工システムの構成によると、前述のように、前記撮像ユニットが前記所定のセット領域の前上方に位置しているため、前記撮像ユニットを前記所定のセット領域から十分に離隔させることができる。前記第1照明ユニットが前記所定のセット領域の左前方に位置しかつ前記第2照明ユニットが前記所定のセット領域の右前方に位置しているため、前記第1照明ユニット及び前記第2照明ユニットを前記所定のセット領域から十分に離隔させることができる。そのため、前記曲げロボットの一部又は前記ロボットハンドに保持されたワークが前記撮像ユニット、前記第1照明ユニット、又は前記第2照明ユニットに干渉することがなく、前記撮像ユニット等によって前記曲げロボットの動作範囲が制限されない。
【0015】
2発明に係る曲げ加工システムの使用方法は、上述した実施態様に係る曲げ加工システムを使用するための方法である。そして、前記パレット上の全領域を調整シートによって覆った状態で、各第1照明に取付けた調整治具のレーザポインタからの可視光が、前記調整シート上における各第1照明の照射範囲に対応する箇所に照射されるように、各第1照明の照射方向を調整する。また、各第2照明に取付けた前記調整治具の前記レーザポインタからの可視光が、前記調整シート上における各第2照明の照射範囲に対応する箇所に照射されるように、各第2照明の照射方向を調整する。
【0016】
3発明に係る曲げ加工システムの使用方法は、上述した実施態様に係る曲げ加工システムを使用するための方法である。そして、前記撮像ユニットが前記パレット上のワークを斜め上方向から撮像する際に、前記複数の第1照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、前記第1照明ユニットの照明動作を実行する。また、前記複数の第2照明からの照明光が前記パレット上の全域に照射されるように、前記第2照明ユニットの照明動作を実行する。前記第1照明ユニットの照明動作と前記第2照明ユニットの照明動作の実行タイミングをずらしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、曲げ加工の加工精度を十分に確保しつつ、曲げ加工システムの曲げ加工の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1、実施形態に係る曲げ加工システムの斜視図である。
図2図2、実施形態に係る曲げ加工システムの平面図である。
図3図3、実施形態に係る曲げ加工システムの正面図である。
図4図4は、所定のセット領域に設けられた複数の台座を示す斜視図である。
図5図5(a)は、第1照射スタンドを照射側の反対側(裏側)から見た図である。図5(b)は、図5(a)を右から見た図である。
図6図6は、図5(a)におけるVI部の拡大図である。
図7図7(a)は、ブラケット付きの照明(第1照明又は第2照明)を照射側(表側)から見た図である。図7(b)は、ブラケット付きの照明を照射側の反対側から見た図である。
図8図8(a)は、ブラケット付きの照明の斜視図である。図8(b)は、ブラケット付きの照明の斜視図であり、ブラケット付きの照明に調整治具を取付けた様子を示している。
図9図9は、各第1照明の照射範囲を説明する図である。
図10図10(a)は、図10(b)を左から見た図である。図10(b)は、第2照射スタンドを照射側の反対側から見た図である。
図11図11は、図10(b)におけるXI部の拡大図である。
図12図12は、各第2照明の照射範囲を説明する図である。
図13図13は、調整シートにおける各第1照明の照射範囲に対応する箇所を説明する図である。
図14図14は、調整シートにおける各第2照明の照射範囲に対応する箇所を説明する図である。
図15図15は、参考例に係る曲げ加工システムの斜視図である。
図16図16は、参考例に係る曲げ加工システムの平面図である。
図17図17は、参考例に係る曲げ加工システムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図1から図14を参照して説明する。
【0020】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「立設される」とは、立てた状態で設けられることである。「左右方向」とは、水平方向の1つであり、プレスブレーキの幅方向に平行な方向と同義である。「前後方向」とは、左右方向に直交する水平方向のことであり、プレスブレーキの奥行方向に平行な方向と同義である。「保持」とは、吸着及び把持を含む意である。図面中、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0021】
(実施形態)
図1から図3に示すように、実施形態に係る曲げ加工システム10は、板状のワーク(板金)Wに対して曲げ加工を自動的に行う加工システムである。曲げ加工システム10は、パンチ金型(図示省略)とダイ金型(図示省略)との協働によりワークWに対して曲げ加工を行うプレスブレーキ12を備えている。
【0022】
プレスブレーキ12の前方には、パレット14をセットするための所定のセット領域SAが形成されており、パレット14は、ワークWを支持する。換言すれば、プレスブレーキ12の前方には、曲げ加工システム10にパレット14を介してワークWを搬入するための搬入領域SAが形成されている。パレット14は、フォークリフタ(図示省略)又はハンドリフタ(図示省略)によって所定のセット領域(搬入領域)SAにセットされる。なお、所定のセット領域(搬入領域)の右側には、曲げ加工システム10から曲げ製品を製品パレット(図示省略)を介して搬出するための搬出領域TAが形成されている。
【0023】
図1及び図4に示すように、所定のセット領域SAの床面には、パレット14を支持する複数の台座16が低頭ボルト18及びアンカー(図示省略)を介して設けられている。各台座16と床面との間には、各台座16の高さ位置を調整するための半割状の複数のシム(図示省略)が介在されている。従って、各台座16の高さ位置を調整することにより、所定のセット領域SAにセットされたパレット14の上面の平坦度を十分に確保することができる。
【0024】
図1から図3に示すように、プレスブレーキ12と所定のセット領域SAとの間には、左右方向に延びたガイドフレーム20が設けられている。ガイドフレーム20には、ワークWの曲げ加工を補助する曲げロボット22が左右方向へ移動可能に設けられている。換言すれば、プレスブレーキ12と所定のセット領域SAとの間には、曲げロボット22がガイドフレーム20を介して左右方向へ移動可能に設けられている。曲げロボット22は、例えば、特許文献2に示す公知の構成からなり、多関節のロボットアーム24を有している。曲げロボット22は、ロボットアーム24の先端部に着脱可能に設けられたロボットハンド26を有しており、ロボットハンド26は、所定のセット領域SAにセットされたパレット14上のワークWを吸着する。なお、ロボットハンド26は、特許文献3及び特許文献4に示すように、ワークWの端部を把持するグリッパ(図示省略)を有してもよい。
【0025】
所定のセット領域SAの左前方の床面には、L字状の支柱28が立設されており、支柱28は、鉛直部(垂直部)28aと、鉛直部28aの上部に設けられた水平部28bとを有している。支柱28の水平部28bの先端部には、所定のセット領域SAにセットされたパレット14上のワークWを斜め上方向から撮像する撮像ユニットとしての単眼式のカメラ30が設けられている。換言すれば、所定のセット領域SAの前上方には、カメラ30が支柱28を介して設けられている。カメラ30は、撮像素子としてCCD(Charge Coupled Device )又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)を有している。なお、単眼式のカメラ30に代えて、ステレオカメラ(図示省略)を用いてもよい。
【0026】
図1から図3に示すように、所定のセット領域SAの左前方には、カメラ30の撮像範囲に向かって照明光を照射する第1照明ユニットとしての第1照明スタンド32が立設されている。第1照明スタンド32は、その右端側が左端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置されている。そして、第1照明スタンド32の各構成部材の具体的な内容は、次の通りである。
【0027】
図1図3図5、及び図6に示すように、所定のセット領域SAの左前方には、第1支持フレーム34が立設されており、第1支持フレーム34は、水平方向に延びた複数(本実施形態においては3本)の第1ビーム部材36を有している。各第1ビーム部材36には、逆U字形状の第1ブラケット38が取付ボルト40を介して設けられており、第1ブラケット38は、鉛直な軸心である取付ボルト40の軸心周り回動可能である。
【0028】
各第1ブラケット38には、照明光を右斜め下方向に照射する第1照明42が取付ボルト44を介して設けられている。換言すれば、第1照明スタンド32は、複数(本実施形態においては13個)の第1照明42を有している。複数の第1照明42からの照明光は、所定のセット領域SAにセットされたパレット14上のワークWの右側及び後側のエッジ部(輪郭部)に影を付けて、それらのエッジ部を明確化する。
【0029】
図6から図9に示すように、各第1照明42は、水平な軸心である取付ボルト44の軸心周りに回動可能である。各第1照明42は、第1ブラケット38と一体的に取付ボルト40の軸心周り回動可能である。各第1ブラケット38の各側面には、円弧状のスリット38sが形成されている。各第1照明42の各側面には、可動子としての可動ボルト46が設けられており、各可動ボルト46は、各第1ブラケット38のスリット38sに案内された状態で移動する。また、各第1照明42は、各第1ブラケット38に設けられかつ表側(照射側)を開放した矩形箱状の照明本体48と、照明本体48の表側に設けられたアクリルパネル50と、照明本体48内に設けられた複数のLED(発光ダイオード)52を有している。
【0030】
各第1照明42は、前述のように、直交する2つの軸心(水平な軸心及び鉛直な軸心)周りに回動可能に構成されている。即ち、複数の第1照明42からの照明光がパレット14上の全域に照射されるように、各第1照明42の照射方向が調整可能に構成されている(図9参照)。図9中において、各第1照明42には、識別するための下付数字を付している。各第1照明42の照射範囲Cには、識別するための下付数字を付している。また、各第1照明42の照射方向の調整を行う際には、調整治具54が用いられる。調整治具54は、各照明本体48の適宜位置に磁着可能な治具本体56と、治具本体56に設けられかつ可視光を照射するレーザポインタ58とを有している。
【0031】
図1から図3に示すように、所定のセット領域SAの右前方には、カメラ30の撮像範囲に向かって照明光を照射する第2照明ユニットとしての第2照明スタンド60が立設されている。第2照明スタンド60は、その左端側が右端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置されている。第2照明スタンド60は、第1照明スタンド32に左右方向に離隔しており、第1照明スタンド32と第2照明スタンド60との間には、パレット14を所定のセット領域SAに対して出し入れするための出入通路EGが形成されている。そして、第2照明スタンド60の各構成部材の具体的な内容は、次の通りである。
【0032】
図1図3図10、及び図11に示すように、所定のセット領域SAの右前方には、第2支持フレーム62が立設されており、第2支持フレーム62は、水平方向に延びた複数(本実施形態においては3本)の第2ビーム部材64を有している。各第2ビーム部材64には、逆U字形状の第2ブラケット66が取付ボルト68を介して設けられており、第2ブラケット66は、鉛直な軸心である取付ボルト68の軸心周り回動可能である。
【0033】
各第2ブラケット66には、照明光を左斜め下方向に照射する第2照明70が取付ボルト72を介して設けられている。換言すれば、第2照明スタンド60は、複数(本実施形態においては13個)の第2照明70を有している。複数の第2照明70は、所定のセット領域SAにセットされたパレット14上のワークWの左側及び後側のエッジ部(輪郭部)に影を付けて、それらのエッジ部を明確化する。
【0034】
図7図8図10から図12に示すように、各第2照明70は、水平な軸心である取付ボルト72の軸心周りに回動可能である。各第2照明70は、第2ブラケット66と一体的に取付ボルト68の軸心周り回動可能である。各第2ブラケット66の各側面には、円弧状のスリット66sが形成されている。各第2照明70の各側面には、可動子としての可動ボルト74が設けられており、各可動ボルト74は、各第2ブラケット66のスリット66sに案内された状態で移動する。また、各第2照明70は、各第2ブラケット66に設けられかつ表側(照射側)を開放した矩形箱状の照明本体76と、照明本体76の表側に設けられたアクリルパネル78と、照明本体76内に設けられた複数のLED(発光ダイオード)80とを有している。
【0035】
各第2照明70は、前述のように、直交する2つの軸心周りに回動可能に構成されている。即ち、所定のセット領域SAにセットされたパレット14上の全域に複数の第2照明70からの照明光が照射されるように、各第2照明70の照射方向が調整可能に構成されている(図12参照)。図12中において、各第2照明70には、識別するための下付数字を付している。各第2照明70の照射範囲Cには、識別するための下付数字を付している。また、各第2照明70の照射方向を調整する際には、前述のように、調整治具54が用いられる。調整治具54の治具本体56は、各照明本体76の適宜位置に磁着可能である。
【0036】
図1から図3に示すように、第1照明スタンド32の右側近傍には、第1照明スタンド32を保護する第1ガード82が設けられている。第1ガード82は、第1照明スタンド32に沿うように配置されている。第2照明スタンド60の左側近傍には、第2照明スタンド60を保護する第2ガード84が設けられている。第2ガード84は、第2照明スタンド60に沿うように配置されている。また、曲げ加工システム10の大部分の周囲には、曲げ加工の安全性を確保するための安全柵86が設けられている。安全柵86は、フォークリフタ又はハンドリフタを通過させるための複数の扉(図示省略)を有している。
【0037】
図示は省略するが、曲げ加工システム10は、プレスブレーキ12を制御するNC装置(主制御装置)と、曲げロボット22を制御するロボット制御装置とを備えている。曲げ加工システム10は、第1照明スタンド32及び第2照明スタンド60を制御する照明制御装置と、カメラ30の撮像画像に対して画像処理を行う画像処理装置とを備えている。照明制御装置は、複数の第1照明42からの照明光の照射動作と、複数の第2照明70からの照明光の照射動作を分けて実行する。画像処理装置は、鉛直方向に対するカメラ30の撮像方向の傾きに起因する、カメラ30の撮像画像の歪みを補正する。画像処理装置は、カメラ30の補正済みの撮像画像に基づいて、パレット14上のワークWの位置を検出する。ロボット制御装置は、検出されたワークWの位置に基づいて、ロボットハンド26がワークWの所定の部位を保持するように曲げロボット22を制御する。従って、ワークWをパレット14上の所定の箇所に正確に載置しなくても、曲げロボット22を適切に動作させて、曲げ加工の加工精度を十分に確保することができる。
【0038】
続いて、実施形態に係る曲げ加工システムの使用方法について説明する。
【0039】
図9及び図13に示すように、パレット14の全領域を白色の調整シートFSによって覆った状態で、各第1照明42に取付けた調整治具54のレーザポインタ58(図8(b)参照)からの可視光が、調整シートFSにおける各第1照明42の照射範囲Cに対応する箇所Pに照射されるように、各第1照明42の照射方向を調整する。これにより、第1照明スタンド32の照明光の調整を行うことができる。図13中において、各第1照明42には、識別するための下付数字を付している。各第1照明42の照射範囲Cに対応する箇所Pには、識別するための下付数字を付している。
【0040】
また、図12及び図14に示すように、パレット14上の全領域を調整シートFSによって覆った状態で、各第2照明70に取付けた調整治具54のレーザポインタ58(図8(b)参照)からの可視光が、調整シートFS上における各第2照明70の照射範囲Cに対応する箇所Pに照射されるように、各第2照明70の照射方向を調整する。これにより、第2照明スタンド60の照明光の調整を行うことができる。図14中において、各第2照明70には、識別するための下付数字を付している。各第2照明70の照射範囲Cに対応する箇所Pには、識別するための下付数字を付している。
【0041】
図1から図3に示すように、カメラ30がパレット14上のワークWを斜め上方向から撮像する際に、複数の第1照明42からの照明光がパレット14上の全域に照射されるように、第1照明スタンド32の照明動作を実行する。すると、パレット14上のワークWの右側及び後側のエッジ部に影を付けて、それらのエッジ部を明確化することができる。複数の第1照明42が照明光を右斜め下方向に照射するため、パレット14上のワークWの左側及び前側のエッジ部の端面はカメラ30にて認識でき、それらのエッジ部に影を付ける必要はない。また、複数の第2照明70からの照明光がパレット14上の全域に照射されるように、第2照明スタンド60の照明動作を実行する。すると、パレット14上のワークWの左側及び後側のエッジ部に影を付けて、それらのエッジ部を明確化することができる。複数の第2照明70が照明光を左斜め下方向に照射するため、パレット14上のワークWの右側及び前側のエッジ部の端面はカメラ30にて認識でき、それらのエッジ部に影を付ける必要はない。第1照明スタンド32の照明動作と第2照明スタンド60の照明動作の実行タイミングをずらしている。パレット14上のワークWの右側、左側、及び後側のエッジ部を明確化することで、画像処理装置はパターンマッチングによってワークWの位置を検出し易くなる。
【0042】
続いて、上記実施形態の作用効果について説明する。
【0043】
前述のように、カメラ30が所定のセット領域SAの前上方に位置しているため、カメラ30を所定のセット領域SAから十分に離隔させることができる。第1照明スタンド32が所定のセット領域SAの左前方に位置しかつ第2照明スタンド60が所定のセット領域SAの右前方に位置しているため、第1照明スタンド32及び第2照明スタンド60を所定のセット領域SAから十分に離隔させることができる。そのため、曲げロボット22の一部又はロボットハンド26に吸着されたワークWがカメラ30、第1照明スタンド32、及び第2照明スタンド60に干渉することがなく、カメラ30等によって曲げロボット22の動作範囲が制限されない。従って、上記実施形態によれば、曲げ加工の加工精度を十分に確保しつつ、曲げ加工システム10の曲げ加工の自由度を高めることができる。
【0044】
前述のように、第1照明スタンド32は、その右端側が左端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置されている。第2照明スタンド60は、その左端側が右端側よりも前方に位置するように左右方向に対して傾斜して配置されている。第1照明スタンド32と第2照明スタンド60との間に出入通路EGが形成されている。そのため、所定のセット領域SAに対するパレット14の出し入れを可能にしつつ、所定のセット領域SAの周辺において作業者動線を十分に確保することができる。従って、上記実施形態によれば、曲げ加工システム10の作業性及び操作性を高めることができる。
【0045】
前述のように、第1照明スタンド32の右側近傍に第1ガード82が設けられ、第2照明スタンド60の左側近傍に第2ガード84が設けられている。そのため、上記実施形態によれば、フォークリフタ又はハンドリフタとの接触による第1照明スタンド32又は第2照明スタンド60の損傷を十分に防止することができる。
【0046】
参考例
次に、図15から図17を参照して参考例に係る曲げ加工システム88は、上記実施形態に曲げ加工システム10(図1参照)と同様に、ワークWに対して曲げ加工を自動的に行う加工システムである。曲げ加工システム88は、一部を除き、曲げ加工システム10と同様の構成を有しており、曲げ加工システム88の構成のうち、曲げ加工システム10と異なる構成等について説明する。なお、曲げ加工システム88の複数の構成部材のうち、曲げ加工システム10の構成部材と対応するものについては、図面中に同一符号を付している。
【0047】
所定のセット領域SAの左前方には、カメラ30の撮像範囲に向かって照明光を照射する第1照明スタンド32が立設されている。第1照明スタンド32は、左右方向に沿って平行に配置されている。所定のセット領域SAの右前方には、カメラ30の撮像範囲に向かって照明光を照射する第2照明スタンド60が立設されている。第2照明スタンド60は、左右方向に沿って平行に配置されている。なお、第1照明スタンド32及び第2照明スタンド60は、それぞれ、ブレーキ付きのキャスタ(図示省略)を有してもよい。第1照明スタンド32の近傍に第1照明スタンド32を保護する第1ガード(図示省略)を設けてもよい。第2照明スタンド60の近傍に第2照明スタンド60を保護する第2ガード(図示省略)を設けてもよい。
【0048】
続いて、上記参考例の作用効果について説明する。
【0049】
上記実施形態の作用と同様に、第1照明スタンド32及び第2照明スタンド60を所定のセット領域SAから十分に離隔させることができる。そのため、曲げロボット22の一部又はロボットハンド26に吸着されたワークWがカメラ30、第1照明スタンド32、及び第2照明スタンド60に干渉することがなく、カメラ30等によって曲げロボット22の動作範囲が制限されない。従って、上記参考例によれば、曲げ加工の加工精度を十分に確保しつつ、曲げ加工システム88の曲げ加工の自由度を高めることができる。
【0050】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、適宜の変更を行うことにより、その他、種々な態様で実施可能である。そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0051】
10 曲げ加工システム
12 プレスブレーキ
14 パレット
16 台座
18 低頭ボルト
20 ガイドフレーム
22 曲げロボット
24 ロボットアーム
26 ロボットハンド
28 支柱
28a 鉛直部(垂直部)
28b 水平部
30 カメラ(撮像ユニット)
32 第1照明スタンド(第1照明ユニット)
34 第1支持フレーム
36 第1ビーム部材
38 第1ブラケット
38s スリット
40 取付ボルト
42 第1照明
44 取付ボルト
46 可動ボルト
48 照明本体
50 アクリルパネル
52 LED
54 調整治具
56 治具本体
58 レーザポインタ
60 第2照明スタンド(第2照明ユニット)
62 第2支持フレーム
64 第2ビーム部材
66 第2ブラケット
66s スリット
68 取付ボルト
70 第2照明
72 取付ボルト
74 可動ボルト
76 照明本体
78 アクリルパネル
80 LED
82 第1ガード
84 第2ガード
86 安全柵
88 曲げ加工システム
SA セット領域(搬入領域)
TA 搬出領域
EG 出入通路
FS 調整シート
C 照射範囲
P 照射範囲に対応する箇所
W ワーク(板金)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17