(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】クルミを検出するためのプライマーセット及びそれを用いたクルミの検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6895 20180101AFI20240927BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240927BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12Q1/6895 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2020094219
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聡
(72)【発明者】
【氏名】田口 大夢
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071836(JP,A)
【文献】特開2008-000128(JP,A)
【文献】特開2007-282626(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093753(WO,A2)
【文献】Food Chemistry,2015年,Vol.177,pp.111-119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルミを検出するためのプライマーセットであって、
配列番号1に示す塩基配列A1
を3’末端に含むオリゴヌクレオチドを含むプライマーA、並びに
配列番号2に示す塩基配列B1
を3’末端に含むオリゴヌクレオチドを含むプライマーB
を含むプライマーセット。
【請求項2】
(C1)配列番号3に示す塩基配列C1、
(C2)塩基配列C1と相同な塩基配列C2、
(C3)塩基配列C1のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C3、
(C4)塩基配列C3と相同な塩基配列C4、
(C5)塩基配列C1と相補的な塩基配列C5、
(C6)塩基配列C5と相同な塩基配列C6、
(C7)塩基配列C5のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C7、
(C8)塩基配列C5と相同な塩基配列C8
(C9)配列番号7の第22~45位と相補的な塩基配列のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C9、及び、
(C10)塩基配列C9と相補的な塩基配列C10
から選択される塩基配列Cを含むオリゴヌクレオチドを含むプローブCを更に含む、請求項1に記載のプライマーセット。
【請求項3】
試料中のクルミを検出する方法であって、
前記試料に由来するDNAを鋳型とし、請求項1又は2に記載のプライマーセットを用いて核酸増幅反応を行うこと、及び
前記核酸増幅反応による増幅産物を検出すること
を含む方法。
【請求項4】
前記プライマーセットが、請求項2に記載のプライマーセットであり、
前記増幅産物の検出を、前記増幅産物と前記プローブCとの結合を検出することにより行う、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が飲食品試料である、請求項3又は4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品中の食物アレルゲンであるクルミを検出するために利用することができるプライマーセット及びそれを用いたクルミの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クルミは、クルミ科クルミ属(Juglans)に属する植物であり、その仁の部分がナッツとして食用される。
【0003】
クルミはアレルギーを引き起こす食物アレルゲンの1つであり、患者によっては微量の摂取であっても重篤なアナフィラキシーショックを引き起こす場合がある。また、食物アレルギー患者の数は近年増加の一途をたどっており、世界的に大きな社会問題の一つとなっている。
非特許文献1には、クルミ属に属する複数の植物種を調べたところ、いずれもアレルゲンタンパク質を含んでいたことが記載されている。
【0004】
飲食品中のクルミを検出する方法として、クルミに特有のDNAの塩基配列を、プライマーセットを用いた核酸増幅法により増幅し、増幅産物の有無を検出する方法が挙げられる。クルミを検出するための核酸増幅法を開示する文献として、例えば非特許文献2~8が挙げられる。なお、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は核酸増幅反応のうち、DNAポリメラーゼを用いて連鎖的に目的とする配列の核酸を増幅させる反応を指す。
【0005】
なお、クルミ属と近縁でナッツとして食用される植物としてカリア属(Carya)植物が知られている。商業的に栽培されるカリア属植物は主に、Carya illinoinensis(ペカン)及びCarya cathayensis(山核桃)である。ペカンはクルミとは異なる食品として一般に認識されている。
【0006】
一方、特許文献1には、飲食品中に含まれるアレルゲンである小麦、そば、落花生を共通のPCR条件でのリアルタイムPCR法により検出することができるプライマーセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Comstock, S.S., McGranahan, G., Peterson, W.R., Teuber, S.S., 2004. Extensive in vitro cross-reactivity to seed storage proteins is present among walnut (Juglans) cultivars and species. Clin Exp Allergy 34, 1583-1590.
【文献】Brezna, B., Hudecova., Kuchta, T., 2006. A novel real-time polymerase chain reaction (PCR) method for the detection of walnuts in food. Eur Food Res Technol 223, 373-377.
【文献】Yano, T., Sakai, Y., Uchida, K., Nakao, Y., Ishihata, K., Nakano, S., Yamada, T., Sakai, S., Urisu, A., Akiyama, H., Maitani, T., 2007. Detection of Walnut Residues in Processed Foods by Polymerase Chain Reaction. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 71, 1793-1796.
【文献】Wang, H., Yuan, F., Wu, Y., Yang, H., Xu, B., Liu, Z., Chen, Y., 2009. Detection of Allergen Walnut Component in Food by an Improved Real-Time PCR Method. Journal of Food Protection 72, 2433-2435.
【文献】Lopez-Calleja, I.M., de la Cruz, S., Gonzalez, I., Garcfa, T., Martin, R., 2015. Market analysis of food products for detection of allergenic walnut (Juglans regia) and pecan (Carya illinoinensis) by real-time PCR. Food Chemistry 177, 111-119.
【文献】Linacero, R., Ballesteros, I., Sanchiz, A., Prieto, N., Iniesto, E., Martinez, Y., Pedrosa, M.M., Muzquiz, M., Cabanillas, B., Rovira, M., Burbano, C., Cuadrado, C., 2016. Detection by real time PCR of walnut allergen coding sequences in processed foods. Food Chemistry 202, 334-340.
【文献】Ito, M., Mizota, T., Kitaguchi, T., Ohno, K., Ohba, T., Tanaka, M., 2018. Simultaneous detection of eight species of tree nut in foods using two tetraplex polymerase chain reaction assays. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 82, 1985-1991.
【文献】Kim, J.H., Hong, J.Y., Moon, J.-C., Kwon, K., Jang, C.S., 2018. Development of molecular markers for detecting almond, peanut, pine nut, and walnut in commercial food using quantitative real-time PCR. Appl Biol Chem 61, 345-354.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一以上の実施形態は、カリア属植物と区別してクルミを検出するための新たな手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書は本発明の以下の1以上の実施形態を開示する。
(1)クルミを検出するためのプライマーセットであって、
(A1)配列番号1に示す塩基配列A1、
(A2)塩基配列A1と相同な塩基配列A2、
(A3)塩基配列A1のうち3’末端塩基から連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列A3、及び、
(A4)塩基配列A3と相同な塩基配列A4
から選択される塩基配列Aを3’末端に含むオリゴヌクレオチドを含むプライマーA、並びに
(B1)配列番号2に示す塩基配列B1、
(B2)塩基配列B1と相同な塩基配列B2、
(B3)塩基配列B1のうち3’末端塩基から連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列B3、及び、
(B4)塩基配列B3と相同な塩基配列B4
から選択される塩基配列Bを3’末端に含むオリゴヌクレオチドを含むプライマーB
を含むプライマーセット。
(2)(C1)配列番号3に示す塩基配列C1、
(C2)塩基配列C1と相同な塩基配列C2、
(C3)塩基配列C1のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C3、
(C4)塩基配列C3と相同な塩基配列C4、
(C5)塩基配列C1と相補的な塩基配列C5、
(C6)塩基配列C5と相同な塩基配列C6、
(C7)塩基配列C5のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C7、
(C8)塩基配列C5と相同な塩基配列C8
(C9)配列番号7の第22~45位と相補的な塩基配列のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C9、及び、
(C10)塩基配列C9と相補的な塩基配列C10
から選択される塩基配列Cを含むオリゴヌクレオチドを含むプローブCを更に含む、(1)に記載のプライマーセット。
(3)試料中のクルミを検出する方法であって、
前記試料に由来するDNAを鋳型とし、(1)又は(2)に記載のプライマーセットを用いて核酸増幅反応を行うこと、及び
前記核酸増幅反応による増幅産物を検出すること
を含む方法。
(4)前記プライマーセットが、(2)に記載のプライマーセットであり、
前記増幅産物の検出を、前記増幅産物と前記プローブCとの結合を検出することにより行う、
(3)に記載の方法。
(5)前記試料が飲食品試料である、(3)又は(4)に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一以上の実施形態によれば、カリア属植物と区別してクルミを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例のプライマープローブセットを用い条件1により行ったリアルタイムPCRの増幅曲線を示す。
【
図2】
図2は、比較例のプライマープローブセットを用い条件1’により行ったリアルタイムPCRの増幅曲線を示す。
【
図3】
図3は、比較例のプライマープローブセットを用い条件2により行ったリアルタイムPCRの増幅曲線を示す。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例で用いたプライマープローブセットの、クルミ属(Juglans)のクルミの4種(J.regia、J.nigra、J.mandshurica、J.ailanthifolia)と、カリア属(Carya)のペカンの2種(C.cathayensis、C.illinoinensis)のITS-2の塩基配列(配列番号7~12)との対応関係を示す。一重下線で示した塩基は、クルミ属に共通し、且つ、Carya属と異なる塩基を指す。二重下線で示した塩基は、Juglans属内で多型のある塩基を指す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.目的>
本発明の一以上の実施形態に係るプライマーセット及びそれを用いた検出方法は、以下の要求を満たすことを目的とする。
【0014】
(検出対象)
非特許文献1から、クルミ属(Juglans)に属する植物はいずれもアレルゲン性を有すると考えられる。このため、アレルゲンとしてのクルミを検出する目的では、種間の区別なく検出できることが望まれる。
【0015】
一方、Carya illinoinensis(ペカン)、Carya cathayensis(山核桃)等のカリア属植物はクルミとは異なる食品として一般に認識されているため、カリア属植物と区別してクルミ属植物のみを検出することが望ましい。
【0016】
そこで本発明の一以上の実施形態は、カリア属植物のDNAを増幅せず、クルミのDNAを種に関わらず同程度の効率で増幅することができるプライマーセット及び該プライマーセットを用いたクルミの検出方法を提供することを目的とする。
【0017】
本明細書においてクルミとは、クルミ属植物を指す。商業的にクルミとして栽培されているクルミ属植物としては、具体的には、Juglans regia(カシグルミ、セイヨウグルミ、ペルシャグルミ、テウチグルミ)、Juglans nigra(クログルミ)、Juglans mandshurica、Juglans ailanthifolia等が挙げられる。Juglans mandshurica及びJuglans ailanthifoliaは、どちらもナガグルミ、シナノグルミ又はオニグルミと称される場合がある。
【0018】
(感度)
アレルゲンの検出のためには、1μgクルミタンパク質/g試料(=1ppm)相当の濃度の検出を可能にすることが望ましい。
【0019】
クルミの仁のタンパク質含有量は14.6g/100g(食品成分データベース)であるから、1μgクルミタンパク質/g試料は、6.8μgクルミ/g試料に相当する。
【0020】
試料及びクルミから同じ収率でDNAが回収できると仮定した場合、6.8μgクルミ/g試料は、340fgクルミDNA/50ng試料DNAに相当する。
【0021】
そこで本発明の一以上の実施形態は、340fgクルミDNA/50ng試料DNAの濃度で存在するクルミDNAを増幅することができるプライマーセット及び該プライマーセットを用いたクルミの検出方法を提供することを目的とする。
【0022】
(頑健性)
飲食品中に含まれる原料由来のDNAは、加工の過程で断片化される可能性がある。このため、核酸増幅反応によりクルミDNAを増幅し、増幅産物の有無を検出する場合、増幅される標的DNA断片長は短いほど、加工の影響を受けず安定した検出が可能である。
【0023】
そこで本発明の一以上の実施形態は、クルミDNAに含まれる150bp以下の断片長の標的配列を増幅することができるプライマーセット及び該プライマーセットを用いたクルミの検出方法を提供することを目的とする。
【0024】
(従来技術との比較)
非特許文献2~8には、クルミに特有のDNAの塩基配列を、所定のプライマーセットを用いた核酸増幅法により増幅し、増幅産物の有無を検出する方法が記載されている。しかし、上記の要求を満たす方法は開示されていない。
【0025】
例えば非特許文献2に記載の方法は、検出感度がタンパク質濃度として100μg/g試料であり、上記の感度の要求を満たさない。
非特許文献3に記載の方法は、ペカンとクルミとを区別せずに検出する方法であり、上記の検出対象の要求を満たさない。
非特許文献4に記載の方法は、検出感度がタンパク質濃度として10μg/g試料であり、上記の感度の要求を満たさない。
非特許文献6に記載の方法は、検出感度がタンパク質濃度として100μg/g試料であり、上記の感度の要求を満たさない。
非特許文献7に記載の方法では、標的DNA断片長が501bpであり、上記の頑健性の要求を満たさない。
非特許文献8に記載の方法は、ペカンとクルミとを区別せずに検出する方法であり、上記の検出対象の要求を満たさない。
【0026】
非特許文献5に記載の方法は、クルミをペカンと区別して検出することができ、検出感度がタンパク質量として0.1μg/g試料であり、標的DNA断片長が70である。しかし、後述する実施例で確認されているように、非特許文献5に記載のプライマープローブセットを用いた検出方法では、カシグルミとオニグルミの検出感度が大きく異なることが確認されている。このため上記の検出対象の要求を満たさない。
【0027】
(PCR条件)
特許文献1では、小麦、そば及び落花生のDNAを、共通のPCR条件(具体的には実施例に示す条件1)によるリアルタイムPCR法により検出することが記載されている。特許文献1に記載の小麦、そば及び落花生のDNAを増幅するための共通のPCR条件は、サイクル数が比較的短い。クルミDNAを、特許文献1に記載の前記PCR条件により増幅することができれば、ユーザーにとって簡便な操作で、クルミ、小麦、そば及び落花生のDNAの有無を検出することが可能になる。
【0028】
そこで本発明の一以上の実施形態は、より好ましくは、クルミのDNAを、特許文献1に記載の小麦、そば及び落花生のDNAを増幅するための共通のPCR条件により増幅することができるプライマーセット及び該プライマーセットを用いたクルミの検出方法を提供することを更なる目的とする。
【0029】
<2.クルミを検出するためのプライマーセット>
本発明の一以上の実施形態に係る、クルミを検出するためのプライマーセットは、
(A1)配列番号1に示す塩基配列A1、
(A2)塩基配列A1と相同な塩基配列A2、
(A3)塩基配列A1のうち3’末端塩基から連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列A3、及び、
(A4)塩基配列A3と相同な塩基配列A4
から選択される塩基配列Aを3’末端に含むオリゴヌクレオチドを含むプライマーA、並びに
(B1)配列番号2に示す塩基配列B1、
(B2)塩基配列B1と相同な塩基配列B2、
(B3)塩基配列B1のうち3’末端塩基から連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列B3、及び、
(B4)塩基配列B3と相同な塩基配列B4
から選択される塩基配列Bを3’末端に含むオリゴヌクレオチドを含むプライマーB
を含むことを特徴とする。
【0030】
なお前記プライマーA、プライマーB及び後述するプライマーCに関して、二つの塩基配列が「相同」であるとは、互いに相同な二つの塩基配列を塩基配列Xが塩基配列Yとした場合、好ましくは、以下の(A)、(B)及び(C)のいずれか1以上の関係を満たすことを指す。
(A)塩基配列Yが、塩基配列Xにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列である。
(B)塩基配列Yが、塩基配列Xと80%以上100%未満の同一性を有する塩基配列である。
(C)塩基配列Yが、塩基配列Xの相補塩基配列とストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)ことができる。
【0031】
前記(A)において「1若しくは数個」とは好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個を指し、最も好ましくは1個である。また、「欠失、置換、付加及び/又は挿入」はより好ましくは置換である。
【0032】
前記(B)において、同一性の値は、複数の塩基配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DANASYS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。塩基配列の同一性の値は、一致度が最大となるように一対の塩基配列をアライメントした際に一致する塩基の数を算出し、当該一致する塩基の数の、比較した塩基配列の全塩基数に対する割合として算出される。ここで、ギャップがある場合、上記の全塩基数は、1つのギャップを1つの塩基として数えた塩基数である。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al, Nuc. Acids. Res. 25, 3389-3402, 1977及びAltschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990を参照されたい。
【0033】
前記(B)において、同一性は、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性である。
【0034】
前記(C)を含め、本明細書において「ストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)」とは、2つの核酸断片が標準的なハイブリダイゼーション条件下で相互にハイブリダイズすることを意味する(Expression of cloned genes in E.coli(Molecular Cloning:A laboratory manual(1989))Cold Springharbor Laboratory Press,New York,USA,9.47-9.62及び11.45-11.61)。より具体的には、例えば以下の式で求められるTm値を基準としてハイブリダイゼーション(例えば約3.0×SSCまたは2.0×SSC、30℃または37℃)を行った後、ハイブリダイゼーションの条件よりストリンジェンシーの高い条件での洗浄(例えば約2.0×SSC、30℃、37℃、40℃、44℃もしくは48℃以上、または1.0×SSCもしくは0.5×SSC、37℃以上など)を行うことを意味する。ハイブリダイズする塩基配列などに応じて適宜ハイブリダイゼーションおよび洗浄に適切な「ストリンジェントな条件」を選択することは、当技術分野では周知技術である。
Tm=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(fraction G+C)-(600/N)
[Na+]:Na+のモル濃度(mol/L)
fraction G+C:オリゴヌクレオチド中のGおよびCの割合(%)
N:オリゴヌクレオチドの長さ(塩基数)
【0035】
なお、「ストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)」とは、特に記載しない限り、以下においても同じ意味で使用する。
【0036】
当該プライマーセットはクルミに由来するDNA、より詳細にはリボゾームRNA遺伝子のITS(Internal Transcribed Spacer)-2にある一部の領域を増幅することができるように設計されている。
【0037】
プライマーAは、クルミに由来する二本鎖DNAのITS-2の一方の鎖上の、配列番号1に示す塩基配列A1の相補配列と、ストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)ことができる。また、プライマーBは、クルミに由来するDNAのITS-2の他方の鎖上の、配列番号2に示す塩基配列B1の相補配列と、ストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)ことができる。プライマーAとプライマーBとを含むプライマーセットを用い、クルミ由来DNAを鋳型として核酸増幅反応を行うと、クルミ由来DNAのITS-2に含まれる150bp以下の領域を含むDNA断片が増幅産物として生成する。
【0038】
配列表、
図4及び実施例の表1を参照して、プライマーAとプライマーBとを含む前記プライマーセットが、クルミのDNAを種に関わらず同程度の効率で増幅することができ、且つ、カリア属植物のDNAを増幅しないことの理由を説明する。
【0039】
プライマーAの具体例として、配列番号1に示す塩基配列A1からなるオリゴヌクレオチドからなる、実施例に記載の「JI2フォワードプライマー」が挙げられる。プライマーBの具体例として、配列番号2に示す塩基配列B1からなるオリゴヌクレオチドからなる、実施例に記載の「JI2リバースプライマー」が挙げられる。Juglans regiaのDNAのITS-2の塩基配列(AF303809.1)の一部を配列番号7に示す。
図4に示すように、JI2フォワードプライマーは配列番号7の第1~21位に一致し、JI2リバースプライマーは配列番号7の第56~74位の逆相補鎖に一致する。JI2フォワードプライマーとJI2リバースプライマーを用い、Juglans regiaのDNAを鋳型として核酸増幅反応を行うことにより、ITS-2の74bpからなる標的領域のDNA断片を増幅することができる。増幅される標的領域は150bpよりも短いため、Juglans regiaのDNAを含む試料が加熱等の加工を受けていても残存している可能性が高い。
【0040】
また、
図4では、Juglans regiaのITS-2の配列番号7に示す標的領域と、クルミ属(Juglans)に属するJuglans nigra、Juglans mandshurica及びJuglans ailanthifolia、並びに、カリア属(Carya)に属するCarya cathayensis及びCarya illinoinensisの対応する領域(それぞれ配列番号8、9、10、11及び12に示す)とのアライメント結果を示す。Juglans regiaのITS-2の配列番号7に示す標的領域のうち第21位、第25位、第33位、第43位、第52位、第56位、第64位、第65位は、クルミ属に共通しカリア属では異なる塩基(一重下線で示す)である。また、Juglans regiaのITS-2の配列番号7に示す標的領域のうち第46位、第49位は、クルミ属内で多型のある塩基(二重下線で示す)である。
【0041】
JI2フォワードプライマー(配列番号1に示す塩基配列からなる)は、クルミ属に共通しカリア属では異なる塩基を、特異性に影響の大きい3’末端の第21位に含む。JI2リバースプライマー(配列番号2に示す塩基配列からなる)は、クルミ属に共通しカリア属では異なる塩基を、特異性に影響の大きい3’末端の第19位に含み更に第10位及び第11位に含む。このためJI2フォワードプライマーとJI2リバースプライマーとを用い、クルミのDNAを鋳型として核酸増幅反応を行った場合、クルミのDNAを種に関わらず同程度の効率で増幅産物を増幅することができ、且つ、カリア属植物のDNAは増幅されない。JI2フォワードプライマーがハイブリダイズするクルミDNAのITS-2の領域にハイブリダイズすることができるプライマーAと、JI2リバースプライマーがハイブリダイズするクルミDNAのITS-2の領域にハイブリダイズすることができるプライマーBとを含む本実施形態に係るプライマーセットを用いた場合にも、同様に、カリア属植物のDNAを増幅せずに、クルミのDNAを種に関わらず同程度の効率で増幅産物を増幅することが可能である。
【0042】
なお
図4では比較のために、非特許文献5に記載のWalITSフォワードプライマー(配列番号4)とWalITSリバースプライマー(配列番号5)のITS-2塩基配列上の対応位置を示す。これらのプライマーは3’末端の塩基がクルミ属とカリア属の共通した塩基である。このため、これらのプライマーを用いた核酸増幅反応では、カリア属植物のDNAを誤って増幅する可能性があり、クルミの検出の目的では好ましくないと考えられる。
【0043】
続いて、プライマーA及びプライマーBのより好ましい実施形態について説明する。
プライマーAにおけるオリゴヌクレオチドは、塩基配列A1、塩基配列A2、塩基配列A3及び塩基配列A4から選択される塩基配列Aを3’末端に含むものであればよく、塩基配列Aの5’末端側に付加された他の塩基配列を含んでいてもよいし、塩基配列Aのみからなるものであってもよい。プライマーAにおけるオリゴヌクレオチドの長さ(塩基数)は特に限定されないが、通常は35塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは28塩基以下、より好ましくは26塩基以下、より好ましくは25塩基以下である。プライマーAは、前記オリゴヌクレオチドのみからなるものであってもよいし、前記オリゴヌクレオチドに標識物質、タグ等の他の要素が連結されたものであってもよい。前記他の要素は前記オリゴヌクレオチドのどの位置に連結されていてもよいが、前記オリゴヌクレオチドの5’末端に連結されていることが特に好ましい。
塩基配列A1は、配列番号1に示す塩基配列を指す。
【0044】
塩基配列A2は、塩基配列A1と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列A2は、塩基配列A1と、少なくとも、塩基配列A1(配列番号1)の第21位の塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列A2は、その3’末端塩基から連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上の部分塩基配列A2-3’が、塩基配列A1(配列番号1)の3’末端塩基(配列番号1の第21位塩基)から連続した同塩基数の部分塩基配列A1-3’と同一であり、塩基配列A2の、部分塩基配列A2-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列A2-5’が、塩基配列A1の、部分塩基配列A1-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列A1-5’と相同である。
【0045】
塩基配列A3は、塩基配列A1(配列番号1)のうち、3’末端塩基(すなわち配列番号1の第21位塩基)から連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上の部分塩基配列である。
【0046】
塩基配列A4は、塩基配列A3と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列A4は、塩基配列A3と、少なくとも、塩基配列A1(配列番号1)の第21位に相当する塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列A4は、その3’末端塩基から連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上の部分塩基配列A4-3’が、塩基配列A3の3’末端塩基(配列番号1の第21位塩基に対応する)から連続した同塩基数の部分塩基配列A3-3’と同一であり、塩基配列A4の、部分塩基配列A4-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列A4-5’が、塩基配列A3の、部分塩基配列A3-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列A3-5’と相同である。
【0047】
プライマーBにおけるオリゴヌクレオチドは、塩基配列B1、塩基配列B2、塩基配列B3及び塩基配列B4から選択される塩基配列Bを3’末端に含むものであればよく、塩基配列Bの5’末端側に付加された他の塩基配列を含んでいてもよいし、塩基配列Bのみからなるものであってもよい。プライマーBにおけるオリゴヌクレオチドの長さ(塩基数)は特に限定されないが、通常は30塩基以下、好ましくは28塩基以下、より好ましくは25塩基以下、より好ましくは23塩基以下、より好ましくは20塩基以下である。プライマーBは、前記オリゴヌクレオチドのみからなるものであってもよいし、前記オリゴヌクレオチドに標識物質、タグ等の他の要素が連結されたものであってもよい。前記他の要素は前記オリゴヌクレオチドのどの位置に連結されていてもよいが、前記オリゴヌクレオチドの5’末端に連結されていることが特に好ましい。
塩基配列B1は、配列番号2に示す塩基配列を指す。
【0048】
塩基配列B2は、塩基配列B1と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列B2は、少なくとも、塩基配列B1と、塩基配列B1(配列番号2)の第19位、第11位及び第10位の塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列B2は、その3’末端塩基から連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは11塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列B2-3’が、塩基配列B1(配列番号2)の3’末端塩基(配列番号2の第19位塩基)から連続した同塩基数の部分塩基配列B1-3’と同一であり、塩基配列B2の、部分塩基配列B2-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列B2-5’が、塩基配列B1の、部分塩基配列B1-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列B1-5’と相同である。
【0049】
塩基配列B3は、塩基配列B1(配列番号2)のうち、3’末端塩基(すなわち配列番号2の第19位塩基)から連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは11塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列である。
【0050】
塩基配列B4は、塩基配列B3と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列B4は、少なくとも、塩基配列B3と、塩基配列B1(配列番号2)の第19位、第11位及び第10位に相当する塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列B4は、その3’末端塩基から連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは11塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列B4-3’が、塩基配列B3の3’末端塩基(配列番号2の第19位塩基に対応する塩基)から連続した同塩基数の部分塩基配列B3-3’と同一であり、塩基配列B4の、部分塩基配列B4-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列B4-5’が、塩基配列B3の、部分塩基配列B3-3’の5’末端側の残りの部分塩基配列B3-5’と相同である。
【0051】
上記のプライマーA及びプライマーBを含むクルミを検出するためのプライマーセットには、更にプローブを含めることができる。プローブはプライマーA及びプライマーBを用いた核酸増幅反応により増幅された増幅産物中の標的配列の少なくとも一部の領域にストリンジェントな条件下で結合する(ハイブリダイズする)ことができるオリゴヌクレオチドを含むものであればよい。
【0052】
プローブは、オリゴヌクレオチドのみからなるものであってもよいし、オリゴヌクレオチドに蛍光物質(例えば、FAMTM、TETTM、VICTM、HEXTM、NEDTM、PET等)及び/又は消光物質(クエンチャー)(例えば、TAMRATM、ROXTM、MGB、BHQ(Black Hole Quencher)TM、BBQ(Blackberry Quencher)TM等)で標識されていてもよい。このように標識されたプローブはTaqManTMプローブとも称される。好ましくは、オリゴヌクレオチドの一方の端に蛍光物質が連結され他方の端に消光物質が連結される。
【0053】
プローブは、より好ましくは、
(C1)配列番号3に示す塩基配列C1、
(C2)塩基配列C1と相同な塩基配列C2、
(C3)塩基配列C1のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C3、
(C4)塩基配列C3と相同な塩基配列C4、
(C5)塩基配列C1と相補的な塩基配列C5、
(C6)塩基配列C5と相同な塩基配列C6、
(C7)塩基配列C5のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C7、
(C8)塩基配列C5と相同な塩基配列C8
(C9)配列番号7の第22~45位と相補的な塩基配列のうち連続した5塩基以上の部分塩基配列である塩基配列C9、及び、
(C10)塩基配列C9と相補的な塩基配列C10
から選択される塩基配列Cを含むオリゴヌクレオチドを含むプローブCである。
【0054】
配列表、
図4及び実施例の表1を参照して、プローブCが、クルミの種に関わらずプライマーA及びプライマーBによるクルミDNAの増幅産物に同程度の効率で結合することができることの理由を説明する。
【0055】
プローブCの具体例として、配列番号3に示す塩基配列C1からなるオリゴヌクレオチドからなる、実施例に記載の「JI2プローブ」が挙げられる。
図4に示すように、JI2プローブは、Juglans regiaのDNAのITS-2の塩基配列(AF303809.1)の一部である配列番号7の第26~45位の塩基配列の逆相補配列である。JI2プローブは、プライマーA及びプライマーBによるクルミDNAの増幅産物のうち、配列番号7の第26~45位に相当する塩基配列にハイブリダイズすることができる。
【0056】
また、
図4に示す通り、Juglans regiaのITS-2の配列番号7に示す標的領域のうち第33位、第43位は、クルミ属に共通しカリア属では異なる塩基(一重下線で示す)であり、第46位、第49位はクルミ属内で多型のある塩基(二重下線で示す)である。
【0057】
JI2プローブ(配列番号3に示す塩基配列からなる)は、Juglans regiaのITS-2の配列番号7に示す塩基配列のうち第26~45位に相当する塩基配列にハイブリダイズするため、クルミの種に関わらずプライマーA及びプライマーBによるクルミDNAの増幅産物に同程度の効率でハイブリダイズすることができる。同様に、JI2プローブがハイブリダイズするクルミDNAのITS-2の領域又はその相補鎖にハイブリダイズすることができる他のプライマーCもまた、クルミの種に関わらずプライマーA及びプライマーBによるクルミDNAの増幅産物に同程度の効率でハイブリダイズすることができる。
【0058】
なお
図4では比較のために、非特許文献5に記載のWalITSプローブ(配列番号6)のITS-2塩基配列上の対応位置を示す。WalITSプローブは、クルミ属内で多型のある配列番号7の第46位及び第49位の塩基にハイブリダイズする部分を含んでいる。このため核酸増幅反応による増幅産物の検出にWalITSプローブを用いる場合、クルミ属の種間で検出感度が異なる可能性があり好ましくないと考えられる。
【0059】
続いて、プローブCのより好ましい実施形態について説明する。
プローブCにおけるオリゴヌクレオチドは、塩基配列C1、塩基配列C2、塩基配列C3、塩基配列C4、塩基配列C5、塩基配列C6、塩基配列C7及び塩基配列C8から選択される塩基配列Cを少なくとも一部に含むものであればよく、塩基配列Cの3’末端側及び/又は5’末端側(好ましくは5’末端側のみ)に付加された他の塩基配列を含んでいてもよいし、塩基配列Cのみからなるものであってもよい。プローブCにおけるオリゴヌクレオチドの長さ(塩基数)は特に限定されないが、通常は30塩基以下、好ましくは28塩基以下、より好ましくは25塩基以下である。プローブCは、前記オリゴヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドに、前記蛍光物質及び/又は前記消光物質が連結されたものである。
塩基配列C1は、配列番号3に示す塩基配列を指す。
【0060】
塩基配列C2は、塩基配列C1と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列C2は、少なくとも、塩基配列C1と、塩基配列C1(配列番号3)の第3位及び第13位の塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列C2は、連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列C2-1が、塩基配列C1(配列番号3)の対応する部分塩基配列C1-1と同一であり、塩基配列C2の、部分塩基配列C2-1以外の残りの部分塩基配列が、塩基配列C1の、部分塩基配列C1-1以外の残りの部分塩基配列と相同である。
【0061】
塩基配列C3は、塩基配列C1(配列番号3)のうち連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列である。塩基配列C3は、塩基配列C1(配列番号3)のうち少なくとも第3位及び第13位の塩基を含む部分塩基配列であることが好ましい。
【0062】
塩基配列C4は、塩基配列C3と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列C4は、少なくとも、塩基配列C3と、塩基配列C1(配列番号3)の第3位及び第13位に相当する塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列C4は、連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列C4-1が、塩基配列C3の対応する部分塩基配列C3-1と同一であり、塩基配列C4の、部分塩基配列C4-1以外の残りの部分塩基配列が、塩基配列C3の、部分塩基配列C3-1以外の残りの部分塩基配列と相同である。
塩基配列C5は、配列番号3に示す塩基配列C1と相補的な塩基配列を指す。
【0063】
塩基配列C6は、塩基配列C5と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列C6は、少なくとも、塩基配列C5と、塩基配列C1(配列番号3)の第3位及び第13位の塩基に対応する塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列C6は、連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列C6-1が、塩基配列C5の対応する部分塩基配列C5-1と同一であり、塩基配列C6の、部分塩基配列C6-1以外の残りの部分塩基配列が、塩基配列C5の、部分塩基配列C5-1以外の残りの部分塩基配列と相同である。
【0064】
塩基配列C7は、塩基配列C5のうち連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列である。塩基配列C7は、塩基配列C5のうち、塩基配列C1(配列番号3)の第3位及び第13位の塩基に対応する塩基を含む部分塩基配列であることが好ましい。
【0065】
塩基配列C8は、塩基配列C7と相同な塩基配列である。好ましくは、塩基配列C8は、少なくとも、塩基配列C7と、塩基配列C1(配列番号3)の第3位及び第13位に対応する塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列C8は、連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列C8-1が、塩基配列C7の対応する部分塩基配列C7-1と同一であり、塩基配列C8の、部分塩基配列C8-1以外の残りの部分塩基配列が、塩基配列C7の、部分塩基配列C7-1以外の残りの部分塩基配列と相同である。
【0066】
塩基配列C9は、配列番号7の第22~45位と相補的な塩基配列のうち連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列である。塩基配列C9は、配列番号7の第22~45位と相補的な塩基配列のうち、5’末端から第3位及び第13位の塩基を少なくとも含む部分塩基配列であることが好ましい。
【0067】
塩基配列C10は、塩基配列C9と相補的な塩基配列である。好ましくは、塩基配列C10は、少なくとも、塩基配列C9と、配列番号7の第22~45位と相補的な塩基配列の、5’末端から第3位及び、第13位に相当する塩基は同一である。より好ましくは、塩基配列C10は、連続した5塩基以上、好ましくは8塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上の部分塩基配列C10-1が、塩基配列C9の対応する部分塩基配列C9-1と同一であり、塩基配列C10の、部分塩基配列C10-1以外の残りの部分塩基配列が、塩基配列C9の、部分塩基配列C9-1以外の残りの部分塩基配列と相同である。
【0068】
上記のプライマーA、プライマーB又はプローブに含まれるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA自動合成装置を利用して合成することができる。
【0069】
本発明の一以上の実施形態に係るプライマーセットは上記の各要素が、それぞれ別個の容器に収容されていてもよいし、また一回の使用及び使用量ごとに容器に収容されていてもよい。あるいは、複数回分の量が一つの容器に収容されていてもよい(使用者は一回の使用に必要な量を取り出して用いることができる)。上記の各要素は乾燥形態で容器に収容されていてもよいし、適当な溶媒中に溶解した形態で容器に収容されていてもよい。
【0070】
本発明の一以上の実施形態に係るプライマーセットは、dNTPミックス、DNAポリメラーゼ、SYBR(登録商標)Green I、塩化マグネシウム、及び使用説明書より選択される一以上の要素を含めることができる。
【0071】
本発明の一以上の実施形態に係るプライマーセットは、食物アレルゲンを検出するための一以上の別のプライマーセットと組み合わせて、食物アレルゲン検出用キットとしてもよい。
【0072】
前記食物アレルゲンを検出するための一以上の別のプライマーセットとしては、小麦、そば、落花生等の食物アレルゲンを検出するための一以上のプライマーセットが挙げられる。小麦を検出するためのプライマーセット、そばを検出するためのプライマーセット、及び/又は落花生を検出するためのプライマーセットとしては、特許文献1(特開2016-101142号公報)に記載のプライマーセットが好ましい。本発明の一以上の実施形態に係るプライマーセットは、特許文献1に記載の、小麦、そば及び落花生を検出するための共通のPCR条件でのリアルタイムPCR法によりクルミDNAの増幅と検出が可能である。このため、本発明の一以上の実施形態に係るプライマーセットを用いることによって、小麦及、そば及び/又は落花生検出用のPCR条件下にて、クルミの検出を行うことが可能である。このため、小麦及、そば及び/又は落花生、並びにクルミの検出を、同一条件下にて同時に進めることができ、分析の手間を少なくすることができる。
【0073】
<3.試料中のクルミを検出する方法>
本発明の一以上の実施形態に係る、試料中のクルミを検出する方法は、
前記試料に由来するDNAを鋳型とし、クルミを検出するための前記プライマーセットを用いて核酸増幅反応を行うこと、及び
前記核酸増幅反応による増幅産物を検出すること
を含むことを特徴とする。
【0074】
前記試料は、好ましくは飲食品試料である。飲食品試料とは、飲食品組成物、飲食品組成物の原料、加工途中の飲食品原料、或いは、これらの処理物(例えば抽出物、粉砕物、溶解物)等を含む試料であってよい。このクルミの検出方法で得られた結果は、アレルギー表示の正しさの確認や、アレルギー表示をするべきか否かの判断材料に用いることができる。
検出対象となるクルミの範囲は既述の通りである。
【0075】
試料からのDNAの抽出は、核酸抽出法として当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、フェノール/クロロホルム法、界面活性剤による細胞溶解やプロテアーゼ酵素による細胞溶解、ガラスビーズによる物理的破壊方法、凍結溶融を繰り返す処理方法、及びそれらの組合せを用いて行うことができる。また、市販のDNeasy Plant mini KitやGenomic-tip 20/G、DNeasy mericon Food Kit(いずれもQIAGEN社)、GM quicker 4(ニッポンジーン社)等の各種DNA抽出キットを用いてもよい。
【0076】
抽出されたDNAの濃度および精製度は、分光光度計を用いて波長230、260、及び280nmにおける吸光度を測定することにより評価することができる。
例えば抽出されたDNAの濃度は、下記式を用いて算出することができる。
DNA濃度(ng/μL)=波長260nmにおける吸光度×50
【0077】
DNAの精製度は、核酸増幅反応が良好に行われるべく260/230nmの吸光度比が2.0以上、260/280nmの吸光度比が1.8~2.0であることが好ましい。
【0078】
さらに、抽出されたDNAについて、植物又は動物が共通に持つ内在性遺伝子に対するプライマーセットを用いて核酸増幅反応を行い、増幅産物が得られることを確認してもよい。
【0079】
試料から抽出されたDNAは、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」に記載されるDNAの調製方法に基づいて適宜濃度を調整することができる。濃度調整したDNAは、適宜鋳型DNAとして利用することができる。好ましくは5~500ngとなる量にて、より好ましくは50ngとなる量にて鋳型DNAとして利用する(この量は、消費者庁が情報提供する「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」にて特定される量である)。
【0080】
核酸増幅反応は、耐熱性ポリメラーゼを用いる核酸増幅反応であってもよいし、鎖置換型ポリメラーゼを用いる核酸増幅反応であってもよい。ポリメラーゼは好ましくはDNAポリメラーゼである。
【0081】
DNAポリメラーゼを用いる核酸増幅反応法としてはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)が挙げられる。
【0082】
PCR法は、例えばSaiki RK,et al.,Science,230:1350-1354(1985)や植物細胞工学別冊、植物のPCR実験プロトコル、島本功・佐々木卓治監修(1995年)等に記載されている通常の方法に基づいて行うことができる。PCR条件(変性、アニーリング、伸長の各ステップの温度及び時間、ならびにサイクル数等)、PCR反応液の組成(緩衝液の種類、プライマー濃度、DNAポリメラーゼの種類や濃度、dNTP濃度、塩化マグネシウム濃度等)は、前記プライマーセットを用いたPCRにおいて高感度でPCR増幅産物が得られるような条件を予備実験等により当業者であれば適切に選択及び設定することができる。DNAポリメラーゼ、dNTP濃度、塩化マグネシウム濃度等がほぼ最適化されたPCR用マスターミックス等が市販されており、これらを利用してもよい。
【0083】
前記PCR法として、定性PCR法を利用することができる。定性PCR法においては、試料から抽出されたDNA中に含まれるクルミDNAを、プライマーA及びプライマーBを含む前記プライマーセットを利用するPCRにより増幅し、それを電気泳動により分離、染色することで検出することができる。
【0084】
プライマーA及びプライマーBを含む前記プライマーセットを用いた場合には、増幅産物の有無、好ましくは約74bpのサイズの増幅産物の有無を指標として、クルミの混入を検出することができる。クルミのITS-2配列の少なくとも一部を含む、好ましくは上記サイズの増幅産物が検出されれば、試料にクルミが混入していると判定することができ、前記増幅産物が検出されなければ、試料にクルミが混入していないと判定することができる。
【0085】
前記プライマーセットを用いることにより高感度でのクルミの検出が可能である。下記実施例に詳述されるとおりPCR反応液25μLの系で、50fgのクルミDNAを検出することができる。この検出感度はクルミの種間で同程度である。
【0086】
前記プライマーセットは、好ましくは、プローブを更に含み、より好ましくは前記プローブCを含む。増幅産物の検出を、増幅産物とプローブとの結合を検出することにより行うことができる。プローブを用いる検出方法としては、後述するTaqManTM法によるリアルタイムPCR法が挙げられる。
【0087】
前記PCR法として、リアルタイムPCR法を利用することができる。
【0088】
リアルタイムPCR法は、インターカレーター法及びTaqManTM法のいずれも用いることができるが、好ましくはTaqManTM法を利用する。
【0089】
インターカレーター法では、蛍光を発する化合物(例えば、SYBR(登録商標)Green I等)をPCR反応液に含むことにより、これが増幅されたDNAに結合する。これに励起光を照射することにより蛍光を発し、この蛍光強度を測定することにより、増幅産物の生成量を測定することができる。
【0090】
一方、TaqManTM法では、蛍光物質で標識されたプローブ(TaqManTMプローブ)をPCR反応液に含むことにより、これがアニーリングステップで増幅されたDNA中の標的配列に結合(ハイブリダイズ)する。その後の伸長反応ステップで、Taq DNAポリメラーゼのもつ5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により、DNAに結合(ハイブリダイズ)したプローブが分解され、その際、蛍光物質がプローブから遊離し蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、増幅産物の生成量を測定することができる。リアルタイムPCRを行う装置は特に限定されず、ABI PRISM 7900HT(ライフテクノロジーズ社)、LightCycler 96(ロシュ・ダイアグノスティクス社)等、リアルタイムPCRを可能とする様々な機種を用いることができ、特に限定はされない。
【0091】
リアルタイムPCR法においては、試料から抽出されたDNA中に含まれるクルミDNAを、前記プライマーセットを利用するPCRにより増幅し、上記のとおり、蛍光強度を測定することによりPCR増幅産物の生成量を測定し、増幅曲線を得る。次に、蛍光シグナルが有意に増加したサイクル数(Cq値)を指標とするか、または蛍光シグナルがサイクル数に対して指数関係にある領域で、蛍光量増加(ΔRn)の適当な閾値(Threshold)を設定し、適当なサイクル数条件下にて、増幅曲線と閾値(Threshold)が交わるサイクル数(Ct値(Threshold Cycle))を指標とすることで、クルミの混入有無を検出することができる。すなわち、適当なサイクル数条件下にて、蛍光シグナルの有意な増加が見られるか、または増幅曲線と閾値が交わる場合には、試料中にクルミが混入していることを示し、一方、蛍光シグナルの有意な増加が見られないか、または増幅曲線と閾値が交わらない場合には、試料中にクルミが混入していないことを示す。
【0092】
前記プライマーセットを使用する定性PCR法又はリアルタイムPCR法と、特許文献1に記載の小麦検出用プライマーセット、そば検出用プライマーセット、及び/又は落花生検出用プライマーセットを使用する定性PCR法又はリアルタイムPCR法とは、同一の条件下でも、いずれも目的とする感度を維持しつつ、目的とする配列でのみ標的増幅産物が得られる。このため、本発明のクルミの検出方法は、特許文献1に記載の小麦の検出方法、そばの検出方法、及び/又は、落花生の検出方法と、同一の条件下にて同時に行うことができ、試料中の食物アレルゲンを、迅速かつ効率的に検出することができる。
【0093】
以下、実施例に基づいて本発明の具体的な実施形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
<1.目標>
クルミ定性リアルタイムPCR法を、小麦そば落花生定性リアルタイムPCR法と同じPCR温度条件で分析可能であること、及び、クルミ属(Juglans)に属するクルミを特異的に検出することができ、且つ、クルミ属の種間で感度が異ならないことを目標として行った。
【0095】
<2.方法>
<2.1.試料>
以下4種類の試料を市場から入手した。いずれも焙煎されていた。
殻付きカシグルミ(Juglans regia)
殻付きオニグルミ(Juglans mandshurica、またはJuglans ailanthifolia)
殻付きペカン(Carya illinoinensis)
山核桃(Carya cathayensis)の仁
【0096】
<2.2.DNA抽出>
オニグルミは殻を割って取り出した仁0.1gから、Genomic-tip 20/Gを用い、キットの説明書に従って抽出DNA溶液を得た。
【0097】
カシグルミ、ペカンは殻を割って取り出した仁、それぞれ0.1g、0.5gから、GM quicker 4を用い、キットの説明書に従って抽出DNA溶液を得た。
【0098】
山核桃は仁の周囲を削って得られた1.0gから、GM quicker 4を用い、キットの説明書に従って抽出DNA溶液を得た。
【0099】
抽出DNA溶液のDNA濃度は微量分光光度計で定量し、TE(pH8.0)で20ng/μLに希釈した。
【0100】
オニグルミ、カシグルミ抽出DNAの段階希釈溶液は、サケ精子DNA 20ng/μLを用いて10倍ずつ希釈した。終濃度がそれぞれ20pg/μL、2pg/μL、200fg/μL、20fg/μLの抽出DNA溶液をリアルタイムPCRに用いた。
【0101】
【0102】
<2.4.リアルタイムPCR>
PCR反応液は、1x QuantiTect Probe PCR Master mix、0.2μMフォワードプライマーおよびリバースプライマー、0.1Mプローブを含み、2.5μLの鋳型DNA試料液を入れて全量25μLとなるように作製した。装置はLightCycler96を用いた。
【0103】
PCR温度条件は、下記の3種類である。
【0104】
条件1は、特許文献1(特開2016-101142号公報)に記載の、小麦、そば及び落花生を検出するための共通のPCR条件である。
【0105】
条件1’は、条件1のサイクル数を42サイクルから50サイクルに延ばした条件である。
【0106】
条件2は、比較例のプライマープローブセット(WalITS)によるPCRに最適化した条件である。
【0107】
【0108】
Cq値の算出に用いた解析条件は、LightCycler96ではデフォルトを用いた。
【0109】
鋳型DNA試料液として前記抽出DNA液を用いた。測定試料中のDNA量は以下の通り。
カシグルミDNA、オニグルミDNA:それぞれ50pg、5pg、500fg、50fg
ペカンDNA、山核桃DNA:50ng(=5×107fg)
【0110】
<2.5.DNA量の算出>
カシグルミDNA試料の名目DNA量のfgベースでの常用対数をx軸、得られたCq値をy軸として検量線を作成した。検量線の傾きと切片からDNA量を算出した。
DNA量(fg)=10^((試料のCq値-切片)/傾き)
【0111】
<3.結果>
PCR結果から算出されたDNA量を次表に示す。
【0112】
【0113】
実施例のプライマープローブセットを用い条件1により行ったリアルタイムPCRの増幅曲線を
図1に示す。
【0114】
比較例のプライマープローブセットを用い条件1’により行ったリアルタイムPCRの増幅曲線を
図2に示す。
【0115】
比較例のプライマープローブセットを用い条件2により行ったリアルタイムPCRの増幅曲線を
図3に示す。
【0116】
実施例のプライマープローブセットを用い、特許文献1(特開2016-101142号公報)に記載の、小麦、そば及び落花生を検出するための共通のPCR条件である条件1により行ったリアルタイムPCR法により、ペカン、山核桃を誤って検出せず、且つ、オニグルミとカシグルミを検出することができた。カシグルミの検出感度に対して、オニグルミの検出感度は1/2~2倍以内であった。
【0117】
比較例のプライマープローブセットを用い条件1によりリアルタイムPCR法を行った場合、42サイクルの時点で増幅産物量が閾値に達していない試料があった。そこで、比較例のプライマープローブセットを用い、サイクル数を50まで延ばした以外は条件1と同様の条件1’によりリアルタイムPCR法を行った。その結果、ペカンを誤って検出することはなかったものの、オニグルミの検出感度は、カシグルミの検出感度の約1/100であった。
【0118】
比較例のプライマープローブセットを用い、比較例のプライマープローブセットの配列に応じて最適化した条件2によりリアルタイムPCR法を行ったところ、オニグルミの検出感度は、カシグルミの検出感度の約1/2程度にまで改善されたものの、増幅曲線形状がオニグルミとカシグルミで異なり、山核桃を誤って検出した(
図3)。
【0119】
<4.考察>
実施例のプライマープローブセットは、特許文献1(特開2016-101142号公報)に記載の、小麦、そば及び落花生を検出するための共通のPCR条件でのリアルタイムPCR法によりクルミ属(Juglans)に属するクルミを特異的に検出することができ、且つ、クルミ属の種間で感度が異ならなかった。すなわち上記の目標が達成された。
【0120】
一方、比較例のプライマープローブセットは、小麦、そば及び落花生を検出するための共通のPCR条件、及び、最適化されたPCR条件のどちらでも、クルミ属の種間で検出感度は異なり、上記の目標を達成することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、飲食品の分野におけるアレルゲンの検出の目的で利用することができる。
【配列表】