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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二次電池の充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240927BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020095816
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021191147
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】窪田 陽介
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-278878(JP,A)
【文献】特開2002-051479(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002520(WO,A1)
【文献】特開2005-110337(JP,A)
【文献】特開2004-342580(JP,A)
【文献】特開2018-196248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の状態を計測する計測部と、
前記計測部の計測結果に基づいて、充電時間と前記二次電池の温度との関係を示す目標温度プロファイルを作成する目標作成部と、
前記目標温度プロファイルに従った温度変化が生じるように前記二次電池に充電電流を送る充電制御部と、
充電時間と前記二次電池の温度との1つの関係を表わす基準温度プロファイルを記憶した記憶部と、
を備え
前記目標作成部は、前記基準温度プロファイルを補正して前記目標温度プロファイルを作成することを特徴とする二次電池の充電制御装置。
【請求項2】
充電予定時間を取得する時間取得部を更に備え、
前記目標作成部は、前記計測部の計測結果と前記充電予定時間とに基づいて前記目標温度プロファイルを作成することを特徴とする請求項1記載の二次電池の充電制御装置。
【請求項3】
前記計測結果には、前記二次電池の温度と充電率とが含まれ、
前記目標作成部は、前記二次電池の温度と制限温度とに基づき、前記基準温度プロファイルを温度軸方向に平行移動、拡縮又はこれら両方を行い、あるいは、前記充電率に基づき、前記基準温度プロファイルを時間軸方向に拡縮、時間軸方向における一部の切り出し又はこれら両方を行い、前記目標温度プロファイルを作成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二次電池の充電制御装置。
【請求項4】
充電時、前記充電電流が制限電流に達して、前記二次電池の温度変化が前記目標温度プロファイルを下回る場合に、前記二次電池を冷却する冷却装置の出力を下げる要求を出力することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の二次電池の充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の充電方式として定電流定電圧方式など様々な方式が知られている。従来の二次電池の充電方式では、さらに、二次電池の温度に基づき充電電流を制御することも行われている。例えば特許文献1の充電方式では、充電中の二次電池の温度変化率が閾値を超えた場合に充電電流が低減又は停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-154239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の充電方法には、例えば劣化を抑制しつつ短時間に充電を完了したいという要求が課される。その他、様々な要求が課されることもある。従来の充電方法が、このような要求を完全に満たすということはなく、二次電池の充電方法には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、二次電池の状態に応じた良好な充電を実現できる二次電池の充電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
二次電池の状態を計測する計測部と、
前記計測部の計測結果に基づいて、充電時間と前記二次電池の温度との関係を示す目標温度プロファイルを作成する目標作成部と、
前記目標温度プロファイルに従った温度変化が生じるように前記二次電池に充電電流を送る充電制御部と、
充電時間と前記二次電池の温度との1つの関係を表わす基準温度プロファイルを記憶した記憶部と、
を備え
前記目標作成部は、前記基準温度プロファイルを補正して前記目標温度プロファイルを作成することを特徴とする二次電池の充電制御装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の二次電池の充電制御装置において、
充電予定時間を取得する時間取得部を更に備え、
前記目標作成部は、前記計測部の計測結果と前記充電予定時間とに基づいて前記目標温度プロファイルを作成することを特徴とする。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の二次電池の充電制御装置において、
前記計測結果には、前記二次電池の温度と充電率とが含まれ、
前記目標作成部は、前記二次電池の温度と制限温度とに基づき、前記基準温度プロファイルを温度軸方向に平行移動、拡縮又はこれら両方を行い、あるいは、前記充電率に基づき、前記基準温度プロファイルを時間軸方向に拡縮、時間軸方向における一部の切り出し又はこれら両方を行い、前記目標温度プロファイルを作成することを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の二次電池の充電制御装置において、
充電時、前記充電電流が制限電流に達して、前記二次電池の温度変化が前記目標温度プロファイルを下回る場合に、前記二次電池を冷却する冷却装置の出力を下げる要求を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充電制御部が、目標温度プロファイルに従った温度変化が生じるように、二次電池の充電電流を制御する。目標温度プロファイルが好適な特性を有していれば、上記の充電制御により、良好な充電が実現される。さらに、本発明によれば、目標作成部が、二次電池の状態の計測結果に基づいて目標温度プロファイルを作成する。したがって、二次電池のそのときどきの状態に応じた目標温度プロファイルを作成でき、これらによって、二次電池の状態に応じた良好な二次電池の充電を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電動車両及び二次電池の充電制御装置を示す図である。
図2】記憶部に記憶された基準温度プロファイルを示す図である。
図3】目標温度プロファイルの第1例を示す説明図である。
図4】目標温度プロファイルの第2例を示す説明図である。
図5】充電制御装置が実行する充電制御処理を示すフローチャートである。
図6】充電制御処理を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電動車両及び二次電池の充電制御装置を示す図である。
【0014】
本実施形態の電動車両1は、駆動輪2と、駆動輪2の動力を発生する走行モータ3と、走行モータ3を駆動するインバータ4と、走行モータ3に電力を供給する二次電池5とを備える。二次電池5は、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであり、高電圧を出力する。二次電池5には、温度、充放電電流等を計測する計測部6が設けられている。さらに、電動車両1は、二次電池5を冷却する冷却装置(例えば冷却ファン)9と、充電終了時刻などの充電条件をユーザが入力可能な操作パネル12と、電動車両1の制御を行う車両制御部11と、走行モータ3以外の機器(補機、アクセサリ機器など)に電力を供給する機器バッテリ8と、二次電池5の電力を用いて機器用の電力を供給するDC/DCコンバータ7とを備える。さらに、電動車両1は、充電ケーブル51を介して外部から電力が入力されるインレット13と、二次電池5の充電制御を行う充電制御装置20とを備える。充電制御装置20は、車載充電器に含まれていてもよい。
【0015】
車両制御部11は、計測部6からの計測結果を受けて、二次電池5の温度、SOC(充電率:State of Charge)などを管理するバッテリ管理部、冷却装置9の駆動制御を行う周辺機器制御部、操作パネル12を介したユーザからの操作入力処理を行う入出力制御部、ユーザの運転操作に基づきインバータ4を制御する駆動制御部などを含む。入出力制御部により、ユーザは、操作パネル12から、充電開始指令、充電終了指令などの指令を入力できる。さらに、入出力制御部により、ユーザは、操作パネル12から、充電開始時刻、充電終了時刻などの充電時間を指定する指令が入力可能であってもよい。車両制御部11は、互いに通信を行って連携して動作する複数のECU(Electronic Control Unit)から構成される。
【0016】
充電制御装置20は、インレット13を介して入力された電力を用いて生成した充電電流を二次電池5へ送って、二次電池5を充電する。充電制御装置20には、車両制御部11から二次電池5の温度情報及びSOC情報などが送られる。さらに、充電制御装置20には、車両制御部11から、操作パネル12を介して入力された充電に関するユーザ指令(充電開始指令、充電時間を指定する指令など)が送られる。さらに、充電制御装置20は、冷却装置9の出力を低減する要求を含む周辺機器の制御要求を車両制御部11に出力できる。
【0017】
充電制御装置20は、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを備え、CPUが制御プログラムを実行することで、充電制御装置20において複数のソフトウエア機能モジュールが実現される。複数のソフトウエア機能モジュールには、目標温度プロファイルのデータ202aを作成する目標作成部202と、充電電流の出力制御を行う充電制御部203とが含まれる。さらに、充電制御装置20は、基準温度プロファイルのデータ201aを予め格納した記憶部201と、入力電力から充電電流を生成する電力変換回路とを備える。充電制御部203は、上記のソフトウエア機能モジュールの部分と、電力変換回路とを含み、これらが協働して充電電流を出力する。目標作成部202は、本発明に係る時間取得部としても機能する。
【0018】
図2は、記憶部に記憶された基準温度プロファイルを示す図である。基準温度プロファイルF(t)は、図2及び次のデータテーブル1に示すように、充電時間tと二次電池5の温度Tとの基準関係を表わす。基準温度プロファイルF(t)は、基準とする充電開始状態(例えば開始温度Tr0=20℃、SOC=5%)から基準とする充電終了状態(例えばSOC=100%)まで、理想的な充電を行ったときに得られる各時点における二次電池5の温度を表わす。理想的な充電とは、例えば二次電池5の劣化を抑制しつつ短時間に満充電にできる充電等である。理想的な充電を実現する各時点における充電電流等のパラメータ及び各時点における二次電池5の温度は、実験又はシミュレーションによって予め求められる。理想的な充電として課される要求は、劣化の抑制、並びに、高速な充電に限られず、様々な要求が追加又は代替されてもよい。課される要求が変わった場合には、実験又はシミュレーションによって、その要求を満たす充電電流等のパラメータと充電中の各時点で生じる二次電池5の温度とを求め、求められた各時点における温度が基準温度プロファイルF(t)として採用されればよい。なお、記憶部201に記憶される基準温度プロファイルのデータ201aは、データテーブル形式のデータに限られず、関数形式のデータであってもよい。
【0019】
【表1】
【0020】
目標作成部202は、二次電池5の充電を開始する際、二次電池5の状態情報(温度情報及びSOC情報等)と基準温度プロファイルF(t)とに基づいて、目標温度プロファイルを作成する。目標作成部202は、二次電池5の状態情報及び基準温度プロファイルF(t)に加えて、外部環境情報(二次電池5の周囲温度、冷却能力など)などの他の情報を含め、これらの情報に基づいて、目標温度プロファイルを作成してもよい。目標作成部202は、より具体的には、基準温度プロファイルF(t)を上記の情報に基づいて補正することで、目標温度プロファイルを作成する。目標温度プロファイルは、充電中、目標とする二次電池5の各時点の温度を表わす。目標温度プロファイルが作成されると、そのデータ202aが一時的に記憶される。
【0021】
図3は、目標温度プロファイルの第1例を示す説明図である。図3の例は、充電時の二次電池5の開始温度T0が、基準温度プロファイルF(t)の開始温度Tr0よりも低い場合を示す。さらに、図3の例は、充電開始時のSOCが、基準とする充電開始状態のSOC(基準温度プロファイルF(t)の設計時に基準としたもの)と同等である場合を示す。この場合、目標作成部202は、基準温度プロファイルF(t)を温度軸の方向へ平行移動及び拡縮を行って、目標温度プロファイルF(t)を作成する。平行移動は、基準温度プロファイルF(t)の開始点A0が、実際の開始温度T0上に位置するように行われる。拡縮は、制限温度Tmaxから余裕度δTを差し引いた温度が、目標温度プロファイルF(t)の最高温度点に重なるように行われる。このような、平行移動と拡縮とにより、基準温度プロファイルF(t)とほぼ比例関係にある温度変化率で、かつ、開始温度T0から制限温度Tmaxの近傍まで温度が変化する目標温度プロファイルF(t)が作成される。
【0022】
図4は、目標温度プロファイルの第2例を示す説明図である。図4の例は、充電時の二次電池5の開始温度T0が、基準温度プロファイルF(t)の開始温度Tr0よりも低く、かつ、充電開示時間(t=0)のSOC(=N%)が、基準温度プロファイルF(t)を作成する際に基準とした開始SOC(=5%)よりも高い場合を示す。充電開始時のSOCが高いと、満充電にするのに必要な時間が短縮される。目標作成部202は、先ず、充電開示時のSOC(=N%)から、満充電になるまでの予定時間を計算する。予定時間は、開始SOCの差分(N%-5%)に相当する電力量を、標準的な充電序盤の充電電力で除算して得てもよいし、目標作成部202が、開始SOCの差分と予定時間との標準的な関係を示すデータテーブルを予め保持し、このデータテーブルを参照することで得てもよい。
【0023】
予定時間を計算したら、目標作成部202は、基準温度プロファイルF(t)の開始点A0から終了点Anまでの時間長が、上記の予定時間となるように、基準温度プロファイルF(t)を時間軸に沿った方向に拡縮する。なお、目標作成部202は、基準温度プロファイルF(t)を時間軸に沿って拡縮する替わりに、例えば、基準温度プロファイルF(t)から上記予定時間分の範囲を切り出す処理を行ってもよい。切り出す範囲は、例えば開始点A0から予定時間分の範囲、時間軸における中央の予定時間分の範囲、あるいは、終了点Anから予定時間分前の範囲としてもよい。さらに、目標作成部202は、切り出しと拡縮との両方を行ってもよい。上記の時間軸方向の拡縮処理、切り出し処理、又はこれら両方の処理により、予定時間分の温度変化が示された中間補正後の基準温度プロファイルFR1(t)が得られる。
【0024】
続いて、目標作成部202は、中間補正後の基準温度プロファイルFR1(t)を、温度軸方向へ平行移動及び拡縮を行って、目標温度プロファイルF(t)を作成する。平行移動及び拡縮は、図3で説明した方法と同様に行われる。このような補正処理により、基準温度プロファイルF(t)とほぼ比例関係にある温度変化率で、予定時間にかけて、開始温度T0から制限温度Tmaxの近傍まで温度が変化する目標温度プロファイルF(t)が作成される。
【0025】
なお、目標作成部202は、上記の基準温度プロファイルF(t)の平行移動、拡縮、切り出しに加えて、二次電池5の状態、外部環境、又はこれら両方に応じた別の補正処理を加えて、目標温度プロファイルF(t)を作成してもよい。また、記憶部201には、二次電池5の状態、外部環境、又はこれら両方に応じた複数の基準温度プロファイルF(t)が記憶され、目標作成部202は、状況に応じた1つの基準温度プロファイルF(t)を選択及び使用して、目標温度プロファイルF(t)を作成してもよい。
【0026】
充電制御部203は、二次電池5の充電開始制御、充電電流の出力制御、並びに、充電終了制御を行う。充電電流の出力制御において、充電制御部203は、充電中に計測された二次電池5の温度情報に基づき、フィードフォワード制御及びフィードバック制御を行って、二次電池5の温度が目標温度プロファイルF(t)に従って変化するように、充電電流を増減する。充電制御部203は、さらに、充電処理中、冷却装置9の出力の調整要求を行うことができる。
【0027】
<充電制御処理>
図5は、充電制御装置が実行する充電制御処理を示すフローチャートである。図6は、充電制御処理を説明するタイミングチャートである。充電制御処理は、充電ケーブル51を介して外部電源が接続され、かつ、操作パネル12を介してユーザが入力した充電開始指令が発動されることで開始される。ユーザが入力した指令には、何時から何時まで充電というように、充電の予定時間が含まれていてもよい。
【0028】
充電制御処理が開始されると、先ず、目標作成部202は二次電池5の温度及びSOCを取得する(ステップS1)。温度情報及びSOC情報は、車両制御部11から充電制御装置20へ送られる。次に、目標作成部202は、充電の予定時間を取得する(ステップS2)。ステップS2の処理は、本発明に係る時間取得部としての処理に相当する。予定時間は、図4で説明したように二次電池5のSOCから計算される。ユーザが入力した指令に予定時間が含まれる場合には、SOCから計算された予定時間と、指令に含まれる予定時間とのうち、短い方が選択されればよい。
【0029】
目標作成部202は、さらに、記憶部201から基準温度プロファイルF(t)のデータ201aを読み込み(ステップS3)、基準温度プロファイルF(t)を二次電池5の温度、SOC、充電の予定時間に基づき補正して、目標温度プロファイルF(t)を作成する(ステップS4)。作成方法は、図3及び図4を参照して説明した通りである。
【0030】
続いて、充電制御装置20では、充電制御部203が二次電池5の充電を開始し、充電時間tのカウントを開始する(ステップS5)。以下、カウント値をtと記す。そして、充電制御部203は、充電電流の出力制御を行うループ処理(ステップS6~S12)を繰り返し実行する。
【0031】
ループ処理において、先ず、充電制御部203は二次電池5の計測温度Tを取得し、時間変化率ΔT/Δtを計算する(ステップS6)。そして、充電制御部203は、現時点の計測温度Tと、現時点を示す時間カウント値tにおける目標温度プロファイルの値F(t)との差分、並びに、現時点の計測温度の時間変化率ΔT/Δtと、時間カウント値tにおける目標温度プロファイルの時間微分|d(F)/dt|t=tnとの差分から、二次電池5の計測温度Tが目標温度プロファイルF(t)に従って変化するように、要求充電電流の増減量を計算する(ステップS7)。すなわち、目標温度プロファイルF(t)よりも温度が低くなりそうなときには、温度が上がるように充電電流を増やし、目標温度プロファイルF(t)よりも温度が高くなりそうなときには、温度が下がるように充電電流を減らすように、充電制御部203は要求充電電流の増減量を計算する。
【0032】
続いて、充電制御部203は、要求充電電流が制限電流を超えていないか判別する(ステップS8)。制限電流は、二次電池5以外の構成により制限される電流値であってもよく、例えば充電ケーブル51の仕様、充電制御部203に含まれる電力変換回路の仕様等から定められてもよい。要求充電電流は、二次電池5の温度が低くて、電流の増加が継続した場合に、制限電流を超える場合がある。この場合、二次電池5の温度は、目標温度プロファイルF(t)の温度よりも低い状態にある。
【0033】
ステップS8の判別結果がYESであれば、充電制御部203は、要求充電電流を制限電流に抑える(ステップS9)。さらに、充電制御部203は、所定期間、冷却装置9の出力を低減する要求を車両制御部11に出力する(ステップS10)。ステップS10の処理により、冷却装置9の能力が所定期間下がり、二次電池5の温度を目標温度プロファイルF(t)に近づけることができる。さらに、冷却装置9の使用電力が低減し、DC/DCコンバータ7を介した二次電池5からの電力消費が低減されて、二次電池5の充電効率を向上できる。
【0034】
続いて、あるいは、ステップS8の判別結果がNOであれば、充電制御部203は、充電の終了条件を満たすか判別する(ステップS11)。終了条件は、目標温度プロファイルF(t)の終了時間に達した場合、あるいは、それよりも前にSOCが100%に達した場合などである。
【0035】
そして、ステップS11の判別結果がNOであれば、充電制御部203は、要求充電電流が出力されるように充電電流の出力制御を行い(ステップS12)、処理をステップS6に戻す。そして、充電制御部203は、充電電流の制御を行うループ処理(ステップS6~S12)を繰り返す。一方、ステップS11の判別結果がYESであれば、充電制御部203は、充電電流を停止し(ステップS13)、充電制御処理を終了する。
【0036】
このような充電制御処理により、図6に示すように、充電電流が適宜制御されて、目標温度プロファイルF(t)に沿って二次電池5の温度(実温度)が変化する充電が実現される。
【0037】
以上のように、本実施形態の充電制御装置20及び電動車両1によれば、目標温度プロファイルF(t)に従った温度変化が生じるように二次電池5に充電電流を送る充電制御部203を備える。したがって、適正な目標温度プロファイルF(t)が得られれば、目標温度プロファイルF(t)に従った充電により、良好な充電を実現できる。さらに、本実施形態の充電制御装置20及び電動車両1によれば、目標作成部202は、計測部6の計測結果を用いて目標温度プロファイルF(t)を作成する。したがって、目標作成部202は、二次電池5の状態に応じた目標温度プロファイルF(t)を作成できる。これらにより、二次電池5の状態に応じた良好な充電が実現される。
【0038】
さらに、本実施形態の充電制御装置20及び電動車両1によれば、目標作成部202が充電の予定時間を取得し、二次電池5の状態と予定時間とに基づいて、目標温度プロファイルF(t)を作成する。したがって、目標作成部202は、充電時間の長さに適した目標温度プロファイルF(t)を作成することができ、充電時間の長さにも応じた良好な充電を実現できる。
【0039】
さらに、本実施形態の充電制御装置20及び電動車両1によれば、基準温度プロファイルF(t)を記憶した記憶部201を有し、目標作成部202は、基準温度プロファイルF(t)を補正して目標温度プロファイルF(t)を作成する。したがって、予め様々な要求を満たした充電を可能とする理想的な基準温度プロファイルF(t)を用意しておくことで、目標作成部202は、二次電池5の状態に応じて良好な充電を可能とする目標温度プロファイルF(t)を、容易に作成することができる。
【0040】
さらに、本実施形態の充電制御装置20及び電動車両1によれば、目標作成部202は、二次電池5の温度、制限温度、充電率等に基づき、基準温度プロファイルF(t)を温度軸方向、時間軸方向又はこれら両方に拡縮し、一部切り出し、温度軸方向に平行移動して、目標温度プロファイルF(t)を作成する。これにより、目標作成部202は、二次電池5の状態に応じて良好な充電を可能とする目標温度プロファイルF(t)を容易に作成できる。
【0041】
さらに、本実施形態の充電制御装置20及び電動車両1によれば、充電電流が制限電流に達して、二次電池5の温度変化が目標温度プロファイルF(t)を下回る場合に、充電制御部203が車両制御部11へ冷却装置9の出力低減要求を送る(図5のステップS10)。したがって、冷却能力の低下により、二次電池5の温度を目標温度プロファイルF(t)に近づけることができ、さらに、冷却装置9の使用電力が低減することで、二次電池5の充電効率を向上できる。
【0042】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、目標作成部が基準温度プロファイルを補正して目標温度プロファイルを作成したが、目標作成部は、基準温度プロファイルを用いることなく、良好な充電を可能とする目標温度プロファイルを作成してもよい。また、上記実施形態では、充電制御装置が電動車両内に備わる構成としたが、充電制御装置は、充電ステーションの充電装置に備わる構成としてもよい。その他、外部から充電制御装置への電力供給の方法など、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 電動車両
5 二次電池
9 冷却装置
13 インレット
20 充電制御装置
201 記憶部
202 目標作成部
203 充電制御部
(t) 基準温度プロファイル
(t) 目標温度プロファイル
T0 開始温度
Tmax 制限温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6