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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/47 20200101AFI20240927BHJP
   D06F 33/40 20200101ALI20240927BHJP
   D06F 34/16 20200101ALI20240927BHJP
   D06F 34/18 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
D06F33/47
D06F33/40
D06F34/16
D06F34/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020106078
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000120
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-04-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小室 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】久野 功二
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-170676(JP,A)
【文献】特開2010-259603(JP,A)
【文献】特開2011-240040(JP,A)
【文献】特開2019-162324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0032267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00~60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と、
前記外箱内に弾性的に支持された水槽と、
前記水槽内に回転可能に設けられた回転槽と、
予め設定された通常の回転制御の内容で前記回転槽を回転させて前記回転槽内の洗濯物の脱水を行う通常脱水処理を実行可能な通常脱水処理部と、
前記通常脱水処理の実行中にアンバランスを検知するアンバランス検知処理を実行可能なアンバランス検知処理部と、
前記通常脱水処理の実行中に前記アンバランス検知処理部がアンバランスを検知した場合に前記通常脱水処理をやり直すリトライ処理を実行可能なリトライ処理部と、
前記リトライ処理によって前記通常脱水処理が所定回数実行された場合に前記通常脱水処理よりも低速回転域の時間を長くした回転制御の内容で脱水を行う修正脱水処理を実行可能な修正脱水処理部と、を備え、
前記修正脱水処理は、前記通常脱水処理よりも中間回転域の時間を長くした回転制御の内容で脱水を行う処理を含み、
前記低速回転域は、前記回転槽の回転数が30rpm以上、かつ、40rpm以下に設定されており、
前記中間回転域は、前記回転槽の回転数が40rpmを超えて、かつ、90rpm以下に設定されており、
前記修正脱水処理における前記中間回転域の時間は、前記通常脱水処理における前記中間回転域の時間よりも前記回転槽の回転数が緩やかに上昇する、
洗濯機。
【請求項2】
前記修正脱水処理において脱水を開始してから前記低速回転域を超えるまでの時間は、前記通常脱水処理において脱水を開始してから前記中間回転域を超えるまでの時間よりも長く設定されている、
請求項に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記修正脱水処理は、前記低速回転域において一定回転数を一定時間維持する処理を更に含む、
請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記修正脱水処理は、前記回転槽が停止した状態から前記回転槽の回転数が前記低速回転域を超えて最高回転数に到達するまでの時間を前記通常脱水処理の場合に比べて長くする処理を含む、
請求項1からのいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記通常脱水処理の実行前に実行されて前記回転槽内の洗濯物の重量を検知する重量検知処理を実行可能な重量検知処理部を更に備え、
前記重量検知処理によって検知された洗濯物の重量が所定重量以下である場合に、前記通常脱水処理が実行されずに前記修正脱水処理が実行される、
請求項1からのいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記水槽が前記外箱に接触したことを検知する接触検知処理を実行可能な接触検知処理部を更に備え、
前記修正脱水処理は、前記接触検知処理部によって前記水槽が前記外箱に接触したことを所定回数検知した場合に実行される、
請求項1からのいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記通常脱水処理の実行中に前記アンバランス検知処理部がアンバランスを検知した場合に前記回転槽に給水を行って洗濯物のアンバランスを修正するアンバランス修正処理を実行可能なアンバランス修正処理部を更に備え、
前記修正脱水処理は、前記アンバランス修正処理の後に前記リトライ処理が実行されてもなお前記アンバランス検知処理部にて洗濯物のアンバランスが検知された場合に実行される、
請求項1からのいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記修正脱水処理は、実行の要否をユーザの任意で選択可能である、
請求項1からのいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
バスタオルやバスマット等の一枚物の洗濯物は単独で脱水運転を行う場合、回転槽内の洗濯物の片寄りによってアンバランスが生じやすい。このとき、アンバランスの発生は、一枚物の洗濯物が丸まった状態で発生することが多く見られる。ところで、従来の構成において、脱水時にアンバランスを検知すると脱水の再起動や給水を伴う修正動作が実行される。しかしながら、丸まった状態の一枚物の洗濯物は、脱水の再起動や修正動作を繰り返し行ってもアンバランスの状況は改善され難い。そのため、従来の構成では、アンバランスの解消について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-162324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、アンバランスを効率的に解消することができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗濯機は、外箱と、前記外箱内に弾性的に支持された水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられた回転槽と、予め設定された通常の回転制御の内容で前記回転槽を回転させて前記回転槽内の洗濯物の脱水を行う通常脱水処理を実行可能な通常脱水処理部と、前記通常脱水処理の実行中にアンバランスを検知するアンバランス検知処理を実行可能なアンバランス検知処理部と、前記通常脱水処理の実行中に前記アンバランス検知処理部がアンバランスを検知した場合に前記通常脱水処理をやり直すリトライ処理を実行可能なリトライ処理部と、前記リトライ処理によって前記通常脱水処理が所定回数実行された場合に前記通常脱水処理よりも低速回転域の時間を長くした回転制御の内容で脱水を行う修正脱水処理を実行可能な修正脱水処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態による洗濯機の一例を概略的に示す図
図2】第1実施形態による洗濯機について、制御装置の電気的構成の一例を示すブロック図
図3】第1実施形態による洗濯機について、脱水工程における回転槽の回転数の変化の一例を経時的に示す図
図4】第1実施形態による洗濯機について、脱水工程の初期段階における回転槽の回転数の変化の一例を経時的に示す図
図5】第1実施形態による洗濯機について、制御装置によって実行される脱水工程の制御内容の一例を示すフローチャート
図6】第2実施形態による洗濯機について、制御装置によって実行される脱水工程の制御内容の一例を示すフローチャート
図7】第3実施形態による洗濯機について、制御装置によって実行される脱水工程の制御内容の一例を示すフローチャート
図8】第4実施形態による洗濯機について、制御装置によって実行される脱水工程の制御内容の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1から図5を参照して第1実施形態について説明する。図1に示す洗濯機10は、回転槽13の回転軸が水平へ向かう横軸型又は後方へ向かって下降傾斜した斜め軸型のドラム式洗濯機である。なお、洗濯機10は、回転槽13の回転軸が垂直方向へ向いた縦軸型の洗濯機でも良い。本実施形態の洗濯機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、モータ14、排水経路15、及び排水弁16を備えている。なお、図1において、洗濯機10の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機10の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を洗濯機10の上側とする。また、洗濯機10のユーザから見て手前側を洗濯機10の前側とし、ユーザの反対側つまり洗濯機10の背面側を洗濯機10の後側とする。
【0009】
外箱11は、例えば鋼板などによって略矩形の箱状に形成されている。水槽12は、外箱11内に配置されて図示しないサスペンションによって弾性的に支持されている。回転槽13は、水槽12内に回転可能に配置されている。水槽12及び回転槽13は、いずれも円筒形状の軸方向の一方側つまり前方側が開口し、他方側つまり後方側に底部を有する、いわゆる有底円筒状に形成されている。
【0010】
また、回転槽13は、バッフル131と多数の孔132とを有している。バッフル131は、回転槽13の内周壁に複数例えば3つ設けられており、回転槽13内に収容された洗濯物を撹拌及び掻き上げる機能を有する。孔132は、回転槽13の内周壁の全域にわたって形成されており、例えば脱水工程時においては水が出入りする通水孔としての機能を有する。
【0011】
モータ14は、水槽12の底部外側に設けられている。モータ14は、回転槽13に接続されており、回転槽13を直接的に回転駆動させる機能を有する。モータ14は、詳細は図示しないが、例えば回転数を変更可能なブラシレスのダイレクトドライブモータで構成されている。なお、モータ14は、ダイレクトドライブモータに限らず、クラッチ機構及びブレーキ装置等を有する構成であっても良い。
【0012】
排水経路15は、水槽12内に貯留されている水を洗濯機10の機外に排出するための経路である。排水経路15は、例えば可撓性を有する排水ホースで構成されており、一方の端部が排水弁16に接続され、他方の端部が洗濯機10の機外に引き出されている。
【0013】
排水弁16は、電磁的に開閉動作が可能な液体用の開閉弁である。排水弁16は、水槽12の底部に設けられた排水口121と排水経路15との間に設けられている。排水弁16は、制御装置60からの制御信号に基づき、排水経路15を開閉する。
【0014】
また、洗濯機10は、接続口21、給水経路22、給水弁23、及び処理剤自動投入装置30を有している。接続口21は、ホース100を介して水道の蛇口等の外部の給水源に接続される。給水経路22は、外部の給水源から供給された水を水槽12及び回転槽13内に給水するための経路である。給水経路22は、一方の端部が給水弁23に接続され、他方の端部が水槽12に接続されている。給水弁23は、電磁的に開閉動作可能な液体用の開閉弁である。給水弁23は、接続口21と給水経路22との間に設けられている。給水弁23は、制御装置60からの制御信号に基づき、給水経路22を開閉する。
【0015】
処理剤自動投入装置30は、複数回分の洗濯運転に必要な洗剤などの洗濯処理剤を貯留しておき、洗濯運転の進行に伴い必要量の洗濯処理剤を自動で水槽12に投入する機能を有する。処理剤自動投入装置30は、外箱11の上部に設けられており、給水経路22と接続している。したがって、外部の給水源から供給された水は、処理剤自動投入装置30から供給される洗濯処理剤と給水経路22内にて直接的に混合し水槽12内に供給される。
【0016】
この場合、処理剤自動投入装置30は、例えば図示しないピストンポンプを用いて予め処理剤自動投入装置30に貯留された洗濯処理剤を自動で水槽12内に供給することが可能な構成としている。なお、洗濯機10は、処理剤自動投入装置30に代えて、又は処理剤自動投入装置30に加えて手動投入装置を備え、ユーザが洗濯運転の開始前に手動投入装置に手動で1回の洗濯運転に必要な洗濯処理剤を投入する構成としても良い。なお、本実施形態において、洗濯処理剤とは、例えば粉末洗剤や液体洗剤等の洗剤、及び柔軟剤や香り付け剤等の仕上げ剤を含む概念である。この場合、処理剤自動投入装置30は、液体洗剤及び液体の仕上げ剤に対応し、手動投入装置は、液体洗剤と粉末洗剤との両方、及び液体の仕上げ剤に対応している。
【0017】
洗濯機10は、図2に示すように、操作パネル41、電流センサ51、回転センサ52、水位センサ53、振動センサ54、及び制御装置60を備えている。操作パネル41は、表示部や操作部が設けられており、ユーザの入力操作を受け付けるとともに、入力された操作内容及び運転状況等を表示する。電流センサ51及び回転センサ52は、モータ14に設けられている。電流センサ51は、モータ14に流れる電流を検知することができる。回転センサ52は、モータ14の回転数を検出することができる。水位センサ53は、水槽12内の水位を検出することができる。振動センサ54は、例えば3次元加速度センサ等で構成されており、水槽12の外周面に設けられている。振動センサ54は、水槽12に生じる振動又は衝撃を検知することができる。
【0018】
制御装置60は、例えば図示しないCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、洗濯機10の動作全般の制御を行う。制御装置60には、モータ14、排水弁16、給水弁23、操作パネル41、電流センサ51、回転センサ52、水位センサ53、及び振動センサ54が電気的に接続されている。これらモータ14、排水弁16、給水弁23、操作パネル41、電流センサ51、回転センサ52、水位センサ53、及び振動センサ54は、制御装置60により制御される。
【0019】
また、制御装置60は、CPUにおいて制御プログラムを実行することにより、重量検知処理部61、接触検知処理部62、回転数検知処理部63、通常脱水処理部64、アンバランス検知処理部65、リトライ処理部66、アンバランス修正処理部67、及び修正脱水処理部68をソフトウェアにより仮想的に実現する。なお、制御装置60は、これらの処理部61~68を集積回路等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより実現しても良い。
【0020】
重量検知処理部61は、重量検知処理を実行することができる。重量検知処理は、通常脱水処理の実行前に実行されて回転槽13内の洗濯物の重量を検知する処理を含む。本実施形態の場合、重量検知処理部61は、洗濯運転の初期の段階、具体的には給水工程前に実行されて、乾燥状態つまり給水による水を含んでいない状態の洗濯物の重量を検知する。なお、重量検知処理部61は、これに限らず、脱水工程前に実行されて、湿潤状態つまり給水による水を含んだ状態の洗濯物の重量を検知する構成としても良い。重量検知処理部61は、回転槽13を低速で回転させ、その際にモータ14のq軸電流を電流センサ51が測定することにより洗濯物の重量を検知する。なお、重量検知処理部61は、回転槽13内の洗濯物の重量を重量計等によって直接物理的に測定する構成でも良い。
【0021】
接触検知処理部62は、接触検知処理を実行可能である。接触検知処理は、水槽12が外箱11に接触したことを検知する処理を含む。この場合、接触検知処理部62は、振動センサ54から取得した水槽12の衝撃すなわち加速度を測定し、その加速度に基づいて水槽12が外箱11に接触したことを検知する。そして、接触検知処理部62は、水槽12の加速度の大きさが予め設定された閾値以上であった場合に水槽12が外箱11に接触したと判定する。
【0022】
回転数検知処理部63は、回転数検知処理を実行可能である。回転数検知処理は、接触検知処理によって水槽12が外箱11に接触したことを検知されたときの回転槽13の回転数を検知する処理を含む。この場合、回転数検知処理部63は、回転センサ52がモータ14の回転数つまり回転槽13の回転数を測定することにより、回転槽13の回転数を検知する。
【0023】
通常脱水処理部64は、通常脱水処理を実行することができる。通常脱水処理は、予め設定された通常の回転制御の内容で回転槽13を回転させて回転槽13内の洗濯物の脱水を行う処理を含む。ユーザが任意で専用の洗濯コース等を設定しない場合つまり通常の洗濯コースにおいては、脱水工程が開始されると通常脱水処理が実行される。
【0024】
アンバランス検知処理部65は、アンバランス検知処理を実行することができる。アンバランス検知処理は、通常脱水処理の実行中にアンバランスを検知する処理を含む。アンバランス検知処理部65は、例えば振動センサ54から取得した水槽12の振動すなわち加速度を測定し、その加速度に基づいてアンバランスの発生を検知する。そして、アンバランス検知処理部65は、水槽12の加速度の大きさが予め設定された閾値以上であった場合にアンバランスが発生したと判定する。なお、アンバランスの検知方法はこれに限らず、回転センサ52が検知しているモータ14の回転数の増減に応じてアンバランスを検知する構成としても良いし、回転槽13の内部が撮影できるカメラ等の撮像手段を設けて当該撮像手段によって撮影された画像に基づいて直接アンバランスを検知する構成としても良い。
【0025】
リトライ処理部66は、リトライ処理を実行することができる。リトライ処理は、通常脱水処理の実行中にアンバランス検知処理部65がアンバランスを検知した場合に通常脱水処理をやり直す処理を含む。制御装置60は、アンバランス検知処理部65によってアンバランスが検知されると回転槽13の回転を一旦停止させ、その後、通常脱水処理部64に対して再度通常脱水処理の実行を指示する。なお、リトライ処理は、回転槽13の回転が完全に停止された状態から再度通常脱水処理を実行する構成に限らず、回転槽13の回転が完全には停止されない範囲内で回転数を下げてから通常脱水処理を再度実行する構成であっても良い。
【0026】
アンバランス修正処理部67は、アンバランス修正処理を実行することができる。アンバランス修正処理は、通常脱水処理の実行中にアンバランス検知処理部65がアンバランスを検知した場合に回転槽13に給水を行って洗濯物のアンバランスを修正する処理を含む。この場合、アンバランス修正処理は、給水弁23を開放して給水経路22から水槽12内に一定量の給水を行い、その後モータ14を駆動することによって回転槽13を正逆方向へ回転動作したのちに、排水弁16を開放して排水経路15から排水することによって行われる。このようにして、給水と回転槽13の回転動作とによって洗濯物がほぐされてアンバランスの発生を解消することができる。
【0027】
このように、リトライ処理部66とアンバランス修正処理部67とは、アンバランスが検知された場合にアンバランスの解消手段として実行される点において共通している。そして、リトライ処理やアンバランス修正処理を適宜実行することによってアンバランスの解消が図られる。ここで、バスタオルやバスマット等の吸水性が高い一枚物は、乾燥時の重量が300~500g程度であるのに対し脱水工程前の水を含んだ状態の重量は約1.5kg程度にまで重くなるため、回転槽13内で洗濯物の片寄りが生じると水槽12の振動量が過大となる。この場合、特に回転槽13の回転数が150rpm以下の低い回転数において振動が大きくなり、アンバランスの検知が多発することが確認されており、結果としてリトライ処理やアンバランス修正処理が頻発してしまう。さらに、一枚物の洗濯物が丸まった状態つまり広がりきっていない状態では、リトライ処理やアンバランス修正処理を繰り返してもアンバランスの発生は解消され難く適切に脱水工程が完了されない場合がある。
【0028】
一般的に、回転槽13の回転数が徐々に上昇し60rpm付近から洗濯物に作用する遠心力が洗濯物に作用する重力よりも大きくなり洗濯物が回転槽13の内周壁に徐々に張り付くことが知られている。ここで、本願発明者は、脱水工程の起動時において60rpmより手前の回転数、つまり洗濯物が回転槽13の内周壁に張り付く前の回転数の帯域の時間を延ばして、洗濯物が遠心力で回転槽内壁に張り付く前にある程度脱水することで、回転槽13内の一枚物の洗濯物が広がりやすくなり、更に洗濯物が含んでいる水分量を減らす、つまり洗濯物の重量を減らすことでアンバランスの発生が改善されることを見出した。
【0029】
そこで、本実施形態の場合、修正脱水処理部68は、修正脱水処理を実行することができる。修正脱水処理は、リトライ処理によって通常脱水処理が所定回数実行された場合に通常脱水処理よりも低速回転域R1の時間を長くした回転制御の内容で脱水を行う処理を含む。低速回転域R1は、回転槽13の回転によって回転槽13内の洗濯物に作用する遠心力が洗濯物に作用する重力よりも小さくなる帯域、つまり洗濯物が回転槽13の内周壁に張り付く前の回転数の帯域に設定されている。具体的には、低速回転域R1は回転槽13の回転数が30rpm以上、かつ、40rpm以下に設定されている。
【0030】
このようにして、修正脱水処理を実行することによってアンバランスを効率よく解消することができる。さらに、リトライ処理の実行回数を制限することでリトライ処理の頻発を防ぐことができるため、修正脱水処理を行わない場合に比べて脱水工程に要する時間ひいては洗濯運転全体に要する時間の延長を防ぐことができる。
【0031】
また、修正脱水処理は、低速回転域R1において一定回転数を一定時間維持する処理を更に含む。このようにして、回転槽13を上下振動の少ない低速回転の状態を一定時間維持することによって回転槽13の回転のバランスを保つことができ、回転槽13内の洗濯物を効率よく広げることができる。
【0032】
さらに、修正脱水処理は、通常脱水処理よりも中間回転域R2の時間を長くした回転制御の内容で脱水を行う処理を含む。この場合、中間回転域R2は、低速回転域R1を超えてから一枚物の洗濯物の脱水時に振動が大きくなりやすい150rpm以下の回転数に至るまでの間に設定されている。具体的には、中間回転域R2は回転槽13の回転数が40rpm以上、かつ、90rpm以下に設定されている。このように、中間回転域R2における脱水の時間を長くすることによって、一枚物の洗濯物の脱水時に振動が大きくなりやすい回転数に到達する前にある程度脱水して洗濯物の重量を極力軽くすることができる。これにより、回転槽13の振動量が抑えられアンバランスの発生を抑制することができる。
【0033】
また、修正脱水処理は、回転槽13の回転数が低速回転域R1を超えてから最高回転数に到達するまでの時間を通常脱水処理の場合に比べて長くする処理を含む。こうすることで、回転槽13が最高回転数に至って高速回転する際に洗濯物が回転槽13の内周壁から離れ難い状態とすることができる。これにより、回転槽13内を洗濯物が移動することによって発生する回転槽13の加振力が低減し、アンバランスの発生を抑えることができる。
【0034】
以下に、脱水工程における通常脱水処理と修正脱水処理の具体的態様の一例について、図3及び図4を参照して説明する。図3及び図4の横軸は脱水工程中における時間、縦軸は回転槽13の回転数を示している。また、図3及び図4において、通常脱水処理の回転制御の状態を点線で示し、修正脱水処理における回転制御の状態を実線で示す。さらに、通常脱水処理及び修正脱水処理では回転槽13の回転数を線形的に上昇させることで脱水が行われる。
【0035】
通常脱水処理が実行されると、制御装置60はモータ14を駆動して、回転槽13を停止状態から15秒程度で約90rpmに到達させる。つまり、通常脱水処理では、回転槽13の回転開始から約90rpmに到達するまで時間に対して直線的に回転槽13の回転数は上昇するため、通常脱水処理には低速回転域R1は数秒程度しか存在しない。これに対し、修正脱水処理が実行されると、制御装置60はモータ14を駆動して回転槽13を停止状態から5秒程度で約30rpmの回転数つまり低速回転域R1に到達させる。そして、制御装置60は低速回転域R1の状態を30秒程度維持する。このようにして、通常脱水処理には短時間しか存在しない低速回転域R1の時間を長くすることによって洗濯物が広がりやすい状態にすることができ、アンバランスの発生を解消して脱水工程を円滑に進めることができる。なお、低速回転域R1は、回転数を約30rpmの状態に維持して低速回転域R1の時間を長くする、つまり回転槽13の回転数一定を維持する構成としているが、これに限らず、回転数の上昇率を抑えて低速回転域R1の時間を長くする構成としても良い。
【0036】
そして、修正脱水処理では、低速回転域R1を維持した後、制御装置60は回転槽13の回転数を緩やかに増加し35秒程度をかけて約90rpmに到達させる。つまり、修正脱水処理において中間回転域R2の状態が35秒程度維持される。一方、通常脱水処理には低速回転域R1と同様、中間回転域R2も数秒程度しか存在しない。このようにして、通常脱水処理には短時間しか存在しない中間回転域R2の時間を長くすることによって、一枚物の洗濯物の脱水時に振動が大きくなりやすい回転域この場合150rpmに到達する前の脱水時間を長くすることができる。これにより、洗濯物の重量が軽くなるため、回転槽13の振動量を抑えることができ、アンバランスの発生を解消することができる。
【0037】
通常脱水処理及び修正脱水処理において、回転槽13の回転数が約90rpmに到達した以降は、同様の回転制御の内容が実行される。具体的には、回転槽13の回転数が約90rpmに到達すると、制御装置60は回転数が約90rpmの状態を10秒程度維持する。制御装置60は、この間に例えば振動センサ54によって検知される振動から水槽12の共振が発生しているか否かを判断する。その後、制御装置60は、回転槽13の回転数を上昇させていく過程において共振の判定を複数回この場合180rpm付近と240rpm付近にて2回行い、最終的に最高回転数720rpm程度まで回転数を上昇させて定常状態で高速回転させる。このようにして、回転槽13が高速回転で維持されることによって洗濯物に含まれる水分が遠心力によって排出されていく。
【0038】
ここで、通常脱水処理において回転槽13の回転数が低速回転域R1を超えてから最高回転数この場合720rpmに至るまでの時間をX1とする。また、修正脱水処理において回転槽13の回転数が低速回転域R1を超えてから最高回転数この場合720rpmに至るまでの時間をX2とする。X1とX2を比較すると、図3に示すように、X1が約95秒であるのに対し修正脱水処理における時間X2が約120秒である。このように、修正脱水処理において中間回転域R2の時間を長くしたことによって、通常脱水処理に比べて、回転槽13の回転数が低速回転域R1を超えてから最高回転数に至るまでの時間は長くなる。
【0039】
制御装置60は、操作パネル41に対するユーザからの操作を受けて又は予め設定された予約内容によって洗濯運転を実行する。本実施形態の場合、洗濯運転は、給水工程、洗い工程、すすぎ工程、及び脱水工程を含む一連の工程を意味する。以下では、図5も参照して、脱水工程における制御内容について説明する。なお、以下の説明において、通常脱水処理部64、アンバランス検知処理部65、リトライ処理部66、アンバランス修正処理部67、及び修正脱水処理部68で行われる処理は、全て制御装置60が主体となって行うものとして説明する。
【0040】
制御装置60は、脱水工程を実行すると(図5の脱水工程開始)、まずステップS11において、リトライ処理の実行回数N1とリトライ処理の累積実行回数T1をリセットする。この場合、累積実行回数T1は脱水工程におけるリトライ処理の実行回数N1の合計値を示すものである。次に、制御装置60は、ステップS12において、通常脱水処理部64の処理により予め設定された通常の回転制御の内容で回転槽13を回転させて回転槽13内の洗濯物の脱水を開始する。
【0041】
制御装置60は、ステップS12において通常脱水処理を開始してからステップS23において脱水工程を終了する(ステップS23でYES)までの間、アンバランス検知処理部65の処理によりアンバランスが発生しているか否かを判断する(ステップS13)。制御装置60は、アンバランスを検知しない場合(ステップS13でNO)、ステップS23に処理を移行させる。
【0042】
一方、制御装置60は、アンバランスの発生を検知した場合(ステップS13でYES)、ステップS14に処理を移行させて、リトライ処理の実行回数N1が所定回数E1以下であるか否かを判断する。所定回数E1は、特に限定はしないが、2、3回程度が好ましい。リトライ処理を2、3回繰り返してもアンバランスが発生する場合は、同じ条件で再度リトライ処理を行ってもアンバランスの発生が解消される見込みは低く、無駄に脱水工程の時間が長くしてしまうからである。リトライ処理の実行回数N1が所定回数E1を超えていた場合(ステップS14でNO)、制御装置60はステップS15に処理を移行させる。
【0043】
制御装置60は、ステップS15においてアンバランス修正処理部67の処理によりアンバランス修正処理を実行する。そして、制御装置60は、次のステップS16にてリトライ処理部66の処理によってリトライ処理を実行し、その後リトライ処理の実行回数N1のカウントをリセット(ステップS17)して、ステップS13に戻ってステップS13以降の処理を再度実行する。
【0044】
一方、ステップS14においてリトライ処理の実行回数N1が所定回数E1以下であった場合(ステップS14でYES)、制御装置60は、ステップS18に処理を移行させる。制御装置60は、ステップS18においてリトライ処理部66の処理によりリトライ処理を実行し、その後リトライ処理の実行回数N1を1加算し(ステップS19)、ステップS20に処理を移行させる。このように、アンバランスが発生した場合、制御装置60は、所定回数E1に至るまでリトライ処理を実行し、その後、アンバランス処理を実行する。したがって、制御装置60は、リトライ処理E1回とアンバランス処理1回を1セットとして繰り返し実行することができる。
【0045】
制御装置60は、ステップS20においてリトライ処理の累積実行回数T1を1加算し、ステップS21に処理を移行させる。そして、制御装置60は、ステップS21において累積実行回数T1が所定回数Tr例えば8回を超えたか否かを判断する。リトライ処理の累積実行回数T1が所定回数Tr以下である場合(ステップS21でNO)、制御装置60はステップS13に処理を移行させ、ステップS13以降の処理を再度実行する。一方、累積実行回数T1が所定回数Trを超えた場合(ステップS21でYES)、制御装置60はステップS22に処理を移行させる。
【0046】
制御装置60は、ステップS22において修正脱水処理部68の処理により修正脱水処理を実行する。制御装置60は、リトライ処理によって通常脱水処理が所定回数Trに至るまで実行された場合に、修正脱水処理を実行する。したがって、通常脱水処理は所定回数Trを超えて実行されることがない。こうすることで、リトライ処理が頻発することによる脱水工程に要する時間の延長を防ぐとともに、通常脱水処理では解消が困難であるアンバランスの状況を修正脱水処理によって効果的に解消することができる。
【0047】
そして、制御装置60は、ステップS23において、脱水工程が終了したか否かを判断する。脱水工程が未だ終了していない場合(ステップS23でNO)、制御装置60は、ステップS13に処理を移行させ、ステップS13以降の処理を再度実行する。また、脱水工程が終了した場合(ステップS23でYES)、制御装置60は、一連の制御を終了する(エンド)。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、洗濯機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、通常脱水処理部64、アンバランス検知処理部65、リトライ処理部66、及び修正脱水処理部68を備えている。通常脱水処理部64は、通常脱水処理を実行可能である。通常脱水処理は、予め設定された通常の回転制御の内容で回転槽13を回転させて回転槽13内の洗濯物の脱水を行う処理を含む。アンバランス検知処理部65は、アンバランス検知処理を実行可能である。アンバランス検知処理は、通常脱水処理の実行中に洗濯物のアンバランスを検知する処理を含む。
【0049】
リトライ処理部66は、リトライ処理を実行可能である。リトライ処理は、通常脱水処理の実行中にアンバランス検知処理部65が洗濯物のアンバランスを検知した場合に通常脱水処理をやり直す処理を含む。修正脱水処理部68は、修正脱水処理を実行可能である。修正脱水処理は、リトライ処理によって通常脱水処理が所定回数E1実行された場合に通常脱水処理よりも低速回転域R1の時間を長くした回転制御の内容で脱水を行う処理を含む。
【0050】
これによれば、低速回転域R1にて洗濯物を広がりやすい状態とすることでアンバランスの発生を効率的に解消することができる。また、リトライ処理を頻発させることがなくなるため、リトライ処理に要する時間、つまりアンバランスの発生を解消するために要する時間の低減を図ることができる。
【0051】
また、低速回転域R1は、回転槽13の回転によって回転槽13内の洗濯物に作用する遠心力が洗濯物に作用する重力よりも小さくなる帯域に設定されている。つまり、低速回転域R1は、洗濯物が回転槽13の内周壁に張り付く前の回転数の帯域に設定されている。これによれば、回転槽13の回転数が上昇し回転槽13の内周壁に洗濯物が張り付く前に洗濯物を広げることが可能となり、アンバランスの発生を抑えて脱水工程の立ち上がりを円滑にすることができる。
【0052】
また、低速回転域R1は、回転槽13の回転数が30rpm以上、かつ、40rpm以下に設定されている。これによっても、回転槽13の回転数が上昇し回転槽13の内周壁に洗濯物が張り付く前に洗濯物を広げることが可能となり、アンバランスの発生を抑えて脱水工程の立ち上がりを円滑にすることができる。
【0053】
また、修正脱水処理は、低速回転域R1において一定回転数を一定時間維持する処理を更に含む。これによれば、回転槽13の回転のバランスを保つことができ、洗濯物をより広がりやすくすることができる。これにより、アンバランスの発生を防止することができるため、脱水工程を円滑に進めることができる。
【0054】
さらに、修正脱水処理は、回転槽13の回転数が低速回転域R1を超えてから最高回転数に到達するまでの時間を通常脱水処理の場合に比べて長くする処理を含む。これによれば、低速回転域R1を超えてから、つまり回転槽13の内周壁に洗濯物が張り付き始めてから最高回転数に到達するまでの時間を長くすることによって、洗濯物が回転槽13の内周壁から離れ難い状態とすることができる。これにより、回転槽13内の洗濯物が移動することによって発生する回転槽13の加振力が低減しアンバランスの発生を抑えることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図6を参照して説明する。
本実施形態の構成は、図5に示した脱水工程における制御内容以外、第1実施形態と同様とする。つまり、本実施形態では、脱水工程の制御内容が上記第1実施形態と異なる。具体的には、制御装置60は、脱水工程を実行すると(図6の脱水工程開始)、まずステップA11において、リトライ処理の実行回数N2とアンバランス修正処理の累積実行回数T2をリセットする。この場合、累積実行回数T2は脱水工程におけるアンバランス修正処理の実行回数の合計値を示すものである。次に、制御装置60は、ステップA12において、通常脱水処理部64の処理により予め設定された通常の回転制御の内容で回転槽13を回転させて回転槽13内の洗濯物の脱水を開始する。
【0056】
制御装置60は、ステップA12において通常脱水処理を開始してからステップA24において脱水工程を終了する(ステップA24でYES)までの間、アンバランス検知処理部65の処理によりアンバランスが発生しているか否かを判断する(ステップA13)。制御装置60は、アンバランスを検知しない場合(ステップA13でNO)、制御装置60はステップA24に処理を移行させる。一方、制御装置60は、アンバランスの発生を検知した場合(ステップA13でYES)、ステップA14に処理を移行させて、リトライ処理の実行回数N2が所定回数E2以下であるか否かを判断する。所定回数E2は、特に限定はないが、2、3回程度が好ましい。リトライ処理を2、3回繰り返してもアンバランスが発生する場合は、同じ条件で再度リトライ処理を行ってもアンバランスの発生が解消される見込みは低く、無駄に脱水工程の時間が長くしてしまうからである。
【0057】
リトライ処理の実行回数N2が所定回数E2以下であった場合(ステップA14でYES)、制御装置60は、ステップA15に処理を移行させる。制御装置60は、ステップA15においてリトライ処理部66の処理によりリトライ処理を実行し、その後リトライ処理の実行回数N2を1加算し(ステップA16)、ステップA13に処理を移行させ、ステップA13以降の処理を再度実行する。
【0058】
一方、リトライ処理の実行回数N2が所定回数E2を超えていた場合(ステップA14でNO)、制御装置60は、ステップA17に処理を移行させる。制御装置60は、ステップA17においてアンバランス修正処理部67の処理によりアンバランス修正処理を実行する。そして、制御装置60は、次のステップA18にてリトライ処理部66の処理によりリトライ処理を実行する。制御装置60は、その後リトライ処理の実行回数N2のカウントをリセット(ステップA19)して、ステップA20に処理を移行させる。制御装置60は、ステップA20においてアンバランス修正処理の累積実行回数T2を1加算し、処理をステップA21に移行させる。
【0059】
制御装置60は、ステップA21においてアンバランス修正処理の累積実行回数T2が所定回数Taを超えたか否かを判断する(ステップA21)。所定回数Taは、特に限定はしないが、2、3回程度が好ましい。アンバランス修正処理を2、3回繰り返してもアンバランスが発生する場合は、同じ条件で再度アンバランス修正処理を行ってもアンバランスの発生が解消される見込みは低く、無駄に脱水工程の時間を延長し更に給水量を増加してしまうからである。アンバランス処理の累積実行回数T2が所定回数Ta以下である場合(ステップA21でNO)、制御装置60はステップA13に処理を移行させ、ステップA13以降の処理を再度実行する。一方、累積実行回数T2が所定回数Taを超えた場合(ステップA21でYES)、制御装置60はステップA22に処理を移行させる。
【0060】
制御装置60は、ステップA22においてアンバランス検知処理部65の処理によりアンバランスが発生しているか否かを判断する。アンバランスを検知しない場合(ステップA22でNO)、制御装置60はステップA24に処理を移行させる。アンバランスの発生を検知した場合(ステップA22でYES)、制御装置60はステップA23に処理を移行させる。
【0061】
制御装置60は、ステップA23において修正脱水処理部68の処理により修正脱水処理を実行する。このように、修正脱水処理は、アンバランス修正処理の後にリトライ処理が実行されてもなおアンバランス検知処理部65にてアンバランスが検知された場合に実行される。つまり、制御装置60は、アンバランス修正処理が所定回数Taに至るまで実行された場合に、修正脱水処理を実行する。したがって、アンバランス修正処理は所定回数Taを超えて実行されることがない。こうすることで、アンバランス修正処理が頻発することによる脱水工程に要する時間の延長及び水量の増加を防ぐことができる。さらに、通常脱水処理では解消が困難であるアンバランスの状況を修正脱水処理によって効果的に解消することができる。
【0062】
そして、制御装置60は、ステップA24において、脱水工程が終了したか否かを判断する。脱水工程が未だ終了していない場合(ステップA24でNO)、制御装置60は、ステップA13に処理を移行させ、ステップA13以降の処理を再度実行する。また、脱水工程が終了した場合(ステップA24でYES)、制御装置60は、一連の制御を終了する(エンド)。
【0063】
以上説明した第2実施形態によれば、洗濯機10は、アンバランス修正処理の実行回数に応じて修正脱水処理を行うことが可能となる。したがって、脱水工程中におけるアンバランス修正処理を頻発させることなく効果的にアンバランスを解消することができる。この結果、アンバランス修正処理に要する時間及び水量、つまりアンバランスの発生を解消するために要する時間及び水量の低減を図ることができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態の制御装置60は、脱水工程において、図5に示す制御内容に替えて、図7に示す制御内容を実行する。図7に示す脱水工程の制御内容は、図5に示すステップS11からステップS23の処理に加えて、ステップB11の処理が追加されたものである。この場合、制御装置60は、修正脱水処理の実行判断を、例えば洗濯運転の初期の段階で重量検知処理部61が検知した乾燥状態の洗濯物の重量に基づいて行うことができる。
【0065】
具体的には、制御装置60は、脱水工程を実行すると(図7の脱水工程開始)、ステップB11において、重量検知処理によって検知された洗濯物の重量M1が所定重量Mを超えているか否かを判断する。所定重量Mは、特に限定はしないが、300gから700g程度が好ましい。洗濯物の重量M1が所定重量Mを超えていた場合(ステップB11でYES)、制御装置60はステップS11に処理を移行し、ステップS11以降の処理を進める。
【0066】
一方、洗濯物の重量M1が所定重量M以下であった場合(ステップB11でNO)、制御装置60はステップS22に処理を移行させる。そして、制御装置60はステップS22において修正脱水処理部68の処理により修正脱水処理を実行する。
【0067】
これによれば、修正脱水処理は、重量検知処理によって検知された洗濯物の重量M1が所定重量M以下である場合に実行することができる。この場合、洗濯物の重量M1は給水工程前つまり給水前の乾燥状態の洗濯物の重量である。ここで、リトライ処理やアンバランス修正処理は、乾燥状態の洗濯物の重量が概ね300gから700g程度と比較的軽量である場合に多発することがある。したがって、比較的軽量の洗濯物の脱水時には通常脱水処理に対して修正脱水処理を優先して実行することにより、リトライ処理やアンバランス修正処理が実行されることを未然に防止でき、脱水工程に要する時間を効率よく短縮することができる。
【0068】
なお、洗濯物の重量M1と所定重量Mは、乾燥状態の洗濯物に限らず、例えば脱水工程の開始時つまり湿潤状態の洗濯物の重量に基づく構成であっても良い。この場合、所定重量Mは例えば1.5kgから3kg程度に設定することができる。この範囲は、乾燥状態において比較的軽量な洗濯物の湿潤状態における洗濯物重量を想定したものである。こうすることで、濡れた状態の洗濯物に対して脱水運転のみが実行される場合であっても、上記同様に、通常脱水処理に対して修正脱水処理を優先して実行することができる。これにより、リトライ処理やアンバランス修正処理が実行されることを未然に防止して、脱水工程に要する時間を効率よく短縮することができる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図8を参照して説明する。
本実施形態の制御装置60は、脱水工程において、図5に示す制御内容に替えて、図8に示す制御内容を実行する。この場合、制御装置60は、修正脱水処理の実行判断を接触検知処理部62が検知した水槽12と外箱11との接触に基づいて行う。具体的には、制御装置60は、脱水工程を実行すると(図8の脱水工程開始)、ステップC11において通常脱水処理部64の処理により通常脱水処理を実行する。そして、制御装置60は、ステップC11において通常脱水処理を開始してからステップC21において脱水工程を終了する(ステップC21でYES)までの間、接触検知処理部62の処理により水槽12と外箱11とが接触したか否かを判断する(ステップC12)。接触が検知されない場合(ステップC12でNO)、制御装置60はステップC21に処理を移行させる。
【0070】
一方、接触が検知された場合(ステップC12でYES)、制御装置60はステップC13に処理を移行させて、その接触回数Iが所定回数Nc例えば5回を超えたか否かを判断する。制御装置60は、接触回数Iが所定回数Nc以下である場合(ステップC13でNO)、ステップC12に処理を移行させ、ステップC12以降の処理を再度実行する。制御装置60は、接触回数Iが所定回数Ncを超えた場合(ステップC13でYES)、ステップC14に処理を移行させる。
【0071】
制御装置60は、ステップC14において回転数検知処理部63の処理により回転数検知処理を実行する。このとき、制御装置60は、回転数検知処理によって検知された回転槽13の回転数Ns1が所定回転数Ns以下であるか否かを判断する。この場合、所定回転数Nsは例えば150rpmに設定することができる。一枚物の洗濯物によって回転槽13に片寄りを生じていると、回転槽13の回転数が150rpm以下の低い回転数にて振動量が大きくなり、これに伴い水槽12と外箱11との接触の可能性も高くなる。したがって、所定回転数Nsを低い回転数に設定しておけば、所定回転数Ns以下で接触検知処理部62にて接触が検知された場合、回転槽13の片寄りが発生していると推定することができる。このように、回転槽13内の洗濯物の片寄りを推定することで、アンバランスが発生することを未然に回避することができる。
【0072】
また、回転槽13の回転数Ns1が所定回転数Nsを超えていた場合(ステップC14でNO)、制御装置60は、ステップC15に処理を進める。制御装置60は、ステップC15において、回転槽13の回転数Ns1が所定回転数NsのA倍であるか否かを判断する。本実施形態の場合、例えば所定回転数Ns=150rpmに設定され、A=3に設定される。この場合、制御装置60は、ステップC15において、回転槽13の回転数Ns1が150rpm以下であるか否かを判断する。
【0073】
回転槽13の回転数Ns1が所定回転数NsのA倍を超えていた場合(ステップC15でNO)、制御装置60は回転槽13の回転を止めて脱水工程を中止し(ステップC16)、操作パネル41の表示部に脱水ができないことを表示してユーザへの報知を行う(ステップC17)。報知は表示部への表示に限らず、ブザー等の音により行う構成であっても良い。
【0074】
一方、制御装置60は、ステップC15において、回転槽13の回転数Ns1が所定回転数NsのA倍以下であった場合(ステップC15でYES)、ステップC18に処理を移行させる。そして、制御装置60はステップC18においてアンバランス修正処理部67の処理によりアンバランス修正処理を実行する。そして、制御装置60は、次のステップC19にてリトライ処理部66の処理によりリトライ処理を実行し、ステップC21に処理を進める。このとき、回転槽13の回転数が所定回転数Ns例えば150rpmを超えている場合は発生する回転エネルギーが高まっており、リトライ処理のみを実行してもアンバランスが解消されない可能性が高い。そこで、このような場合にはアンバランス修正処理を実行することで効率良く脱水工程を実行することができる。
【0075】
制御装置60は、回転槽13の回転数Ns1が所定回転数Ns以下であった場合(ステップC14でYES)、処理をC20に移行させる。そして、制御装置60はステップC20において修正脱水処理部68の処理により修正脱水処理を実行する。このように、修正脱水処理は、接触検知処理によって水槽12と外箱11とが所定回数Ncを超えて接触が検知されたときの回転槽13の回転数が所定回転数Ns以下である場合に実行される。こうすることで、接触検知処理によって検知された接触が回転槽13内の洗濯物の片寄りに起因しているものであると推定することができる。そして、通常脱水処理から修正脱水処理に脱水処理を変更することによってアンバランスの発生を未然に回避することができる。結果として、リトライ処理やアンバランス修正処理を実行することがなくなり、脱水工程に要する時間の延長及び水量の増加を防ぐことができる。
【0076】
また、制御装置60は、ステップC21において、脱水工程が終了したか否かを判断する。脱水工程が未だ終了していない場合(ステップC21でNO)、制御装置60は、ステップC12に処理を移行させ、ステップC12以降の処理を再度実行する。また、脱水工程が終了した場合(ステップC21でYES)、制御装置60は、一連の制御を終了する(エンド)。
【0077】
以上説明した第4実施形態によれば、洗濯機10は、接触検知処理部62を備えている。接触検知処理部62は、接触検知処理を実行可能である。接触検知処理は、水槽12が外箱11に接触したことを検知する処理を含む。そして、修正脱水処理は、接触検知処理部62によって水槽12が外箱11に接触したことを所定回数Nc検知した場合に実行される。これによれば、接触検知処理部が検知した結果に基づいて脱水修正処理の実行をすることができる。これにより、リトライ処理やアンバランス修正処理を実行することなく適切にアンバランスの発生を回避することができる。さらに、リトライ処理やアンバランス修正処理が頻発することによる脱水工程に要する時間の延長及び水量の増加を防ぐことができる。また、通常脱水処理では解消が困難であるアンバランスの状況を修正脱水処理によって効果的に解消することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
上記各実施形態において、修正脱水処理は、その実行の要否が制御装置60によって判断されるものについて説明したが、修正脱水処理は、実行の要否をユーザの任意で選択可能であるものとしても良い。例えば修正脱水処理を含んだ洗濯コースをユーザが選択できる構成としても良い。このとき、洗濯コースは、操作パネル41に対するユーザの入力操作によって選択される構成に限らず、洗濯機10と洗濯機10と通信する通信機能を有する例えばスマートフォン等の携帯端末に対してユーザが入力操作することで選択される構成であっても良い。これによれば、ユーザが修正脱水処理の実行を意図的に選択することができるため利便性が向上する。
【0079】
なお、上記した各実施形態では、リトライの実行回数、アンバランス修正処理の実行回数、洗濯物の重量、水槽と外箱の接触回数、回転槽の回転数等について、具体的数値を挙げながら説明したが、それら具体的数値は一例を示したに過ぎず、適宜変更が可能であることは勿論である。また、洗濯機10の全体のハードウェア構成、運転コースの種類等についても、様々な変更が可能である。更には、上記した複数の実施形態を任意に組み合わせて実施することも可能である。
【0080】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10…洗濯機、11…外箱、12…水槽、13…回転槽、61…重量検知処理部、62…接触検知処理部、64…通常脱水処理部、65…アンバランス検知処理部、66…リトライ処理部、67…アンバランス修正処理部、68…修正脱水処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8