IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7561535撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
<>
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図1
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図2
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図3
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図4
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図5
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図6
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図7
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図8
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図9
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図10
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図11
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図12
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図13
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図14
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図15
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図16
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図17
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図18
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図19
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図20
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図21
  • 特許-撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/68 20230101AFI20240927BHJP
   G03B 7/097 20210101ALI20240927BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240927BHJP
   H04N 23/72 20230101ALI20240927BHJP
   H04N 23/741 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
H04N23/68
G03B7/097
G03B15/00 H
G03B15/00 Q
H04N23/72
H04N23/741
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020130770
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2021192498
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020097832
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 準
(72)【発明者】
【氏名】若嶋 駿一
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-206021(JP,A)
【文献】特開平08-054557(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092650(WO,A1)
【文献】特表2009-514435(JP,A)
【文献】特開2003-279848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/68
H04N 23/741
H04N 23/72
G03B 7/097
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間内を所定の速度で移動し得る被写体を撮像する撮像手段と、
特定被写体の姿勢情報と、特定被写体の所定時間後における速度とを関連付けた機械学習により作成された学習済みモデルを用いて、前記撮像手段により撮像された被写体の画像から、それ以降の画像を撮像する時点における被写体の速度を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された被写体の推定速度に基づいて、前記撮像手段における前記それ以降の画像の撮像の撮像条件として、絞り値、シャッター速度、ISO感度を決定するための制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記推定手段は、ライブビュー動作において前記撮像手段により撮像された被写体の画像から、前記それ以降の画像を撮像する時点における被写体の速度を推定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記それ以降の画像の撮像のための、絞り値と、シャッター速度と、ISO感度とを決定するためのプログラム線図を切り替えることにより前記撮像条件の制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記推定速度を、被写体の像面上のサイズに応じて補正する補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像装置の角速度を検出する角速度センサと、加速度を検出する加速度センサとをさらに備え、前記制御手段は、前記角速度センサと前記加速度センサの出力にさらに基づいて、前記それ以降の画像の撮像のための撮像動作を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記推定速度と、前記角速度センサの出力と前記加速度センサの出力に基づいて算出された前記撮像装置の速度とに基づいて、被写体と前記撮像装置の相対速度を算出することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記相対速度が第1の閾値未満であり、前記撮像装置の速度が第2の閾値以上である場合に、流し撮りが行われていると判断することを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、流し撮りが行われていると判断した場合に、前記それ以降の画像の撮像のための、絞り値と、シャッター速度と、ISO感度とを、流し撮り用のプログラム線図を用いて決定することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記推定速度に基づいて、ライブビューのフレームレートを制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記推定速度が遅い場合よりも速い場合の方がライブビューのフレームレートが高くなるように制御することを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、さらに前記推定速度に基づいて、ハイダイナミックレンジ信号を得るための方式を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記推定速度が第3の閾値以上である場合は、ハイダイナミックレンジ信号を得るための方式として、ゲイン切り替え方式を用い、前記推定速度が前記第3の閾値未満である場合は、ハイダイナミックレンジ信号を得るための方式として、蓄積時間切り替え方式を用いることを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記推定手段は、被写体の加速度をさらに推定することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記推定手段は、前記撮像手段の蓄積時間の中心時刻における被写体の速度を推定し、前記制御手段は、前記蓄積時間の中心時刻における推定速度に基づいて、撮像動作を制御することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記撮像手段により異なる時刻に撮影された少なくとも2枚の画像から、特定の被写体を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された特定の被写体の速度を算出する算出手段と、をさらに備え、前記学習済みモデルは、前記抽出手段により抽出された特定の被写体の画像と前記算出手段により算出された前記特定の被写体の速度とを用いて、速度の推定のための学習をさらに行うことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記算出手段は、前記少なくとも2枚の画像から前記抽出手段により抽出された前記特定の被写体の位置の差分情報から、前記特定の被写体の画角方向の速度を算出し、前記特定の被写体の複数の特徴点の移動量から、前記特定の被写体の法線方向の速度を算出し、前記画角方向の速度と前記法線方向の速度とを用いて、前記特定の被写体の速度を算出することを特徴とする請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記算出手段により算出された速度を補正する第2の補正手段を更に備えることを特徴とする請求項15または16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記第2の補正手段は、被写体の像面上のサイズに応じて前記速度を補正することを特徴とする請求項17に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記第2の補正手段は、使用するレンズの撮像倍率に基づいて前記速度を補正することを特徴とする請求項17に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記第2の補正手段は、前記撮像手段による測距情報に基づいて、前記速度を補正することを特徴とする請求項17に記載の撮像装置。
【請求項21】
シャッターボタンをさらに備え、前記シャッターボタンが半押しまたは全押しされている間に、前記学習済みモデルは、速度の推定のための学習をさらに行うことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項22】
電子ビューファインダと近接センサとをさらに備え、前記近接センサが前記電子ビューファインダへの物体の近接を検知している間に、前記学習済みモデルは、速度の推定のための学習をさらに行うことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項23】
タッチパネルをさらに備え、前記タッチパネルへのタッチ動作が検出されてから一定の時間の間、前記学習済みモデルは、速度の推定のための学習をさらに行うことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項24】
前記学習済みモデルは、前記撮像装置の動きが大きい場合に、速度の推定のための学習を行わないことを特徴とする請求項15乃至23のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項25】
前記推定手段は、被写体の所定時間後の加速度を推定する第2の学習済みモデルをさらに有することを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項26】
実空間内を所定の速度で移動し得る被写体を撮像する撮像手段を備える撮像装置を制御する方法であって、
特定被写体の姿勢情報と、特定被写体の所定時間後における速度とを関連付けた機械学習により作成された学習済みモデルを用いて、前記撮像手段により撮像された被写体の画像から、それ以降の画像を撮像する時点における被写体の速度を推定する推定工程と、
前記推定工程において推定された被写体の推定速度に基づいて、前記撮像手段における前記それ以降の画像の撮像の撮像条件として、絞り値、シャッター速度、ISO感度を決定するための制御を行う制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項27】
請求項26に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項28】
請求項26に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置において、動く被写体を撮影する場合の被写体ブレを抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体の撮像条件を決定するにあたり、被写体ブレを抑制するような制御を行う撮像装置が知られている。
【0003】
特許文献1では、撮像した複数の画像を用いて被写体の動きベクトルと背景の動きベクトルを求め、被写体の動きベクトルから被写体の動きを、背景の動きベクトルから撮像装置の動きを求め、それらに基づいて撮像条件を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4379918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示されている技術では、複数の画像間の被写体の移動量から被写体の速度を求めている。そのため、例えば、動物が獲物に飛びかかるときなどのように急な速度変化がある場合は、その速度変化を精度良く求めることが困難である。そのような場合には、被写体ブレを抑制しきれない。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、動く被写体を撮影する場合に、被写体ブレを抑制することができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる撮像装置は、実空間内を所定の速度で移動し得る被写体を撮像する撮像手段と、特定被写体の姿勢情報と、特定被写体の所定時間後における速度とを関連付けた機械学習により作成された学習済みモデルを用いて、前記撮像手段により撮像された被写体の画像から、それ以降の画像を撮像する時点における被写体の速度を推定する推定手段と、前記推定手段により推定された被写体の推定速度に基づいて、前記撮像手段における前記それ以降の画像の撮像の撮像条件として、絞り値、シャッター速度、ISO感度を決定するための制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動く被写体を撮影する場合に、被写体ブレを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の撮像装置の第1の実施形態であるデジタルカメラの構成を示すブロック図。
図2】推定部のブロック構成を示す図。
図3】推定部に入力される画像の例を示す図。
図4】被写体の移動速度に対応するプログラム線図の例を示す図。
図5】第1の実施形態における被写体の速度に基づいてプログラム線図を切り替える動作を示すフローチャート。
図6】流し撮りの例を示す図。
図7】第1の実施形態における流し撮り時にプログラム線図を切り替える動作を示すフローチャート。
図8】第1の実施形態における流し撮り時のプログラム線図。
図9】第2の実施形態におけるライブビューのフレームレートを切り替える動作を示すフローチャート。
図10】第3の実施形態における撮像素子の構造を示す図。
図11】第3の実施形態における単位画素の回路図。
図12】第3の実施形態における単位列回路の回路図。
図13】蓄積時間切り替え方式のHDRにおける蓄積と読み出しのタイミングを示す図。
図14】蓄積時間切り替え方式のHDRにおける画素領域全体の読み出し動作のタイミングチャート。
図15】ゲイン切り替え方式のHDRにおける画素領域全体の読み出し動作のタイミングチャート。
図16】被写体の推定速度に応じてHDR画像の撮像動作を切り替える動作を示すフローチャート。
図17】第4の実施形態における、ライブビュー撮影及び被写体の速度推定の動作を示すタイミング図。
図18】推定速度を補間することにより、任意のタイミングにおける推定速度を得る例を示した図。
図19】蓄積開始時の被写体速度による蓄積時間の制御について示す図。
図20】蓄積中心の被写体速度による蓄積時間の制御について示す図。
図21】第6の実施形態における推定部のブロック構成を示す図。
図22】第6の実施形態における学習モデルの学習を概略的に説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の撮像装置の第1の実施形態であるデジタルカメラ100の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、レンズ部101は、被写体の光学像を撮像素子105に結像させる。また、レンズ部101では、レンズ駆動装置102によってズーム制御、フォーカス制御、絞り制御などが行われる。メカニカルシャッター103は、シャッター駆動装置104によって制御される。撮像素子105は、CCDやCMOSセンサなどからなり、レンズ部101により結像された被写体像を光電変換して、画像信号を出力する。
【0013】
信号処理回路106は、撮像素子105から出力される画像信号に対して、各種の補正処理、データ圧縮処理、現像処理などを行う。また、信号処理回路106は、画像信号にゲインをかけるデジタルゲイン処理を行うゲイン部106aを備える。測光部107は、画像信号から被写体輝度を求める。推定部108は、画像信号から被写体の撮像時(現在から所定時間が経過した後の時刻)における被写体の速度を推定及び学習する。
【0014】
制御部109は、各種演算を行うとともに、デジタルカメラ100全体を制御する。動きセンサ110は、デジタルカメラ100の動きの角速度を検出する角速度センサ(ジャイロセンサ)と、加速度を検出する加速度センサとを備える。メモリ部111は、画像データを一時的に記憶する。インターフェース部(I/F部)112は、記録媒体113へのデータの記録または記録媒体113からのデータの読み出しを行うためのインターフェースである。記録媒体113は、画像データの記録または読み出しを行うための着脱可能な半導体メモリ等からなる。
【0015】
表示部114は、各種情報や撮影画像を表示する表示部であり、電子ビューファインダ(EVF)と液晶表示部(LCD)を含む。電子ビューファインダには接眼部が設けられており、接眼部を介して、EVFパネルに表示された画像を視認することができる。近接センサ115は、EVFの接眼部付近に配置され、接眼部への物体の近接を検知する。
【0016】
操作部116は、電源スイッチ、シャッタースイッチ、タッチパネルを含む。シャッタースイッチは、シャッターボタンが半押しされることによってオートフォーカス(AF)等の撮影準備動作を開始させる指示スイッチSW1と、シャッターボタンが全押しされることによって撮像を開始させる指示スイッチSW2を含む。タッチパネルは、LCD上に積層されており、ユーザーのタッチ動作を検知する。
【0017】
図2は、推定部108のブロック構成を示す図である。推定部108は、速度推定部201と、補正部202とを備えて構成される。速度推定部201は、メモリ部111に保持された1枚の画像信号の入力に対し、画像信号中の被写体の所定時間後の記録用画像の撮像時点における速度を推定して出力する。所定時間後の撮像のタイミングは、制御部109から通知される。
【0018】
この被写体の速度の推定は、公知のディープラーニング技術等を用いて、入力された画像中の被写体と、その被写体の次の動作の速度とを関連付けて機械学習させ、作成された学習済みモデルを用いることにより実現できる。そのため、急な動きの変化についても、事前にその兆候が写った入力画像を用いることにより、急な動きの変化があっても、速度を推定することが可能となる。
【0019】
図3は、推定部201に入力される画像の例を示す図である。図3(a)のように立っている犬の画像が速度推定部201に入力された場合、速度推定部201は0km/hという推定速度を出力する。図3(b)のように走っている犬の画像が速度推定部201に入力された場合、速度推定部201は例えば30km/hという推定速度を出力する。
【0020】
補正部202は、入力された画像における被写体の像面上のサイズに応じて、速度推定部201から出力された推定速度を補正する。具体的には、像面上で被写体のサイズが小さければ、像面上での速度が遅くなるように、逆に大きければ、像面上での速度が速くなるように補正する。また、補正部202は、被写体の像面上のサイズではなく、被写体までの距離とレンズ部101の撮像倍率を用いて、速度推定部201から出力された推定速度を補正してもよい。
【0021】
補正部202は、補正された被写体の推定速度を制御部109へ送る。制御部109は、被写体の推定速度に応じて対応するプログラム線図を選択し、測光部107により求められたEV値(Exposure value)に基づいて、シャッタースピード、ISO感度、絞りといった撮像条件を決定する。制御部109が、前述した被写体の推定速度に基づいて、非移動性、低速、中速、高速の移動の種別を判断している。ここでは、被写体の推定速度が閾値未満であれば非移動性被写体として取り扱う。
【0022】
図4は、移動の種別ごとのプログラム戦図を示す図である。図4(a)は非移動性被写体のプログラム線図、図4(b)は低速移動性被写体のプログラム線図、図4(c)は中速移動性被写体のプログラム線図、図4(d)は高速移動性被写体のプログラム線図の例をそれぞれ示している。どのプログラム線図も、最大絞り(開口径が一番大きい絞り)F1.4、最小絞り(開口径が一番小さい絞り)F22としている。ISO感度については、ゲイン部106aがISO感度に応じたゲインをかけることにより、ISO100~ISO1638400の範囲で設定可能である。また、撮像素子105内でゲインをかけてもよい。
【0023】
非移動性の被写体に分類された場合は、図4(a)の非移動性被写体のプログラム線図が選択される。図4(a)の非移動性被写体のプログラム線図では、所定の輝度範囲(図中のEV4からEV20)で、測光部107で計測されたEV値に応じて、絞りとシャッタースピードの制御が行われる。最大絞りとなる領域301、最小絞りとなる領域302では、シャッタースピードのみで制御が行われる。
【0024】
低速の移動性被写体に分類された場合は、シャッタースピードを極端に遅くすると被写体ブレを起こすため、図4(b)の低速の移動性被写体のプログラム線図が選択される。図4(b)の低速の移動性被写体のプログラム線図では、非移動性被写体のプログラム線図と同様に、所定の輝度範囲(図中のEV8からEV20)でISO感度を固定し、絞りとシャッタースピードの制御が行われる。低速の移動性被写体のプログラム線図が非移動性被写体のプログラム線図と異なる点は、シャッタースピードが1/30秒となる領域303では、シャッタースピードが固定され、絞りとISO感度制御が行われることである。最大絞りとなる領域304では、ISO感度制御のみが行われる。
【0025】
中速の移動性被写体に分類された場合は、被写体ブレを防ぐために更にシャッタースピードを速くする必要があり、図4(c)の中速の移動性被写体のプログラム線図が選択される。図4(c)の中速の移動性被写体のプログラム線図では、低速の移動性被写体のプログラム線図と同様に、所定の輝度範囲(図中のEV12からEV20)でISO感度が固定され、絞りとシャッタースピードの制御が行われる。シャッタースピードが1/125秒となる領域305では、シャッタースピードが固定され、絞りとISO感度制御が行われる。最大絞りとなる領域306ではISO感度制御のみが行われる。
【0026】
高速の移動性被写体に分類された場合は、被写体ブレを防ぐために更にシャッタースピードを速くする必要があり、図4(d)の高速の移動性被写体のプログラム線図が選択される。図4(d)の高速の移動性被写体のプログラム線図では、低速の移動性被写体のプログラム線図と同様に、所定の輝度範囲(図中のEV16からEV20)でISO感度が固定され、絞りとシャッタースピードの制御が行われる。シャッタースピードが1/500秒となる領域307では、シャッタースピードが固定され、絞りとISO感度制御が行われる。最大絞りとなる領域308では、ISO感度制御のみが行われる。
【0027】
以下に、デジタルカメラ100自身がシャッタースピード、ISO感度、絞りといった撮像条件を決定するP (プログラム)モードにおいて、撮像素子105から出力された画像を表示部114に表示しながら静止画撮影を行う、いわゆるライブビュー撮影の動作について説明する。
【0028】
本実施形態では、ライブビュー撮影時の事前撮影画像を用いて推定部108で被写体の速度を推定し、推定速度に応じて制御部109が、撮像条件を決定するプログラム線図を切り替える。
【0029】
図5は、被写体の推定速度に応じてプログラム線図を切り替える動作を示すフローチャートである。デジタルカメラ100の電源が投入されると、このフローチャートの動作が開始され、ライブビュー撮影が開始される。
【0030】
ステップS401では、制御部109は、撮像素子105から出力された画像信号に対して、信号処理回路106を用いて、各種補正処理、データ圧縮処理、現像処理等の画像処理を行う。処理された画像データは、メモリ部111に保持された後、表示部114に表示される。この際、撮像素子105から出力される画像信号は、推定部108での被写体速度の推定、および表示部114での表示に用いられるため、信号処理回路106においてリサイズされていてもよい。また、表示部114と推定部108には、それぞれ異なる画像処理を行った画像を個別に入力してもよい。
【0031】
ステップS402では、制御部109は、メモリ部111に保持された一枚の画像に対して、速度推定部201を用いて所定時間後の被写体の速度を推定する。ここでの所定時間とは、ライブビュー撮影(ライブビュー動作)における次のフレームの撮像時刻までの時間である。
【0032】
ステップS403では、制御部109は、補正部202を用いて被写体の像面上のサイズに応じて、被写体の推定速度を補正する。
【0033】
ステップS404では、制御部109は、補正部202において補正された被写体の推定速度に対して、高速、中速、低速、非移動性の分類を行う。高速移動性被写体であればステップS405、中速移動性被写体であればステップS406、低速移動性被写体であればステップS407、非移動性被写体であればステップS408にそれぞれ進む。ステップS405、S406、S407、S408では、制御部109は、それぞれの被写体速度に対応したプログラム線図を選択する(撮像動作を制御する)。
【0034】
ステップS409では、制御部109は、選択されたプログラム線図と測光部107の求めたEV値とに基づいて、シャッタースピード(シャッター速度)、ISO感度、絞りといった撮像条件を決定する。
【0035】
ステップS410では、制御部109は、レリーズボタンが押下されたか否かを判定する。レリーズボタンが押下されれば、ステップS411に進み、ステップS409で決定された撮像条件で記録用の撮像を行う。撮像された画像信号は、信号処理回路106で信号処理が施された後にメモリ部111に保持され、I/F部112を介して記録媒体113に記録される。ステップS410においてレリーズボタンが押下されなければ、ステップS401に戻り、一連の動作を繰り返す。
【0036】
なお、ライブビューのフレームレートが高くフレーム間の時間が短い場合は、被写体の速度の推定処理がライブビューの次のフレームまでに完了しないことがある。この場合、推定処理を数フレームに1回行うようにし、推定する被写体の速度のタイミングを次フレーム以降の撮像時刻としてもよい。
【0037】
上記では、撮影モードがPモードである場合のライブビュー撮影動作について説明したが、撮影者が任意に絞りを設定するAv(絞り優先)モード、撮影者が任意にシャッタースピードを設定するTv(シャッタースピード優先)モードにも適用可能である。Pモードでは、推定部108が出力する被写体の推定速度に基づき、被写体ブレが起こるシャッタースピードが設定されないようシャッタースピードが制限されたプログラム線図が選択される。
【0038】
これに対し、Tvモードでは、任意にシャッタースピードを設定できる。この場合、Tvモードにおいては、撮影者が設定できるシャッタースピードを制限せず、被写体ブレが起こるようなシャッタースピードが設定された場合、表示部114に被写体ブレが起こる可能性がある旨を通知する表示を行ってもよい。また、被写体ブレが起こるようなシャッタースピードを設定できないように制限してもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、所定時間後の撮像時の被写体の速度を推定し、その速度に対応したプログラム線図を選択することにより、被写体ブレを起こしにくい撮像条件を設定することが可能となる。
【0040】
次に、第1の実施形態の変形例として、撮像条件の設定に、角速度センサ、加速度センサを含む動きセンサ110の情報を参照する場合について説明する。
【0041】
例えば流し撮りで走っている犬を撮影する場合、第1の実施形態のフローチャートに従えばシャッタースピードは遅くならないよう制御される。しかし、流し撮りの場合は、図6に示すように、被写体が像面上では移動せず、加えて背景は流れる必要がある。そのため、シャッタースピードが速すぎてはいけない。つまり、移動性被写体を検出しても、移動性被写体のプログラム線図が選択されないようにする必要がある。そこで、本変形例では、流し撮りを行う際には、デジタルカメラ100が被写体を追尾する動きを動きセンサ110で検出して、流し撮りが行われているか否かを判断する。
【0042】
図7は、流し撮りの判別を含めたデジタルカメラ100の動作を示すフローチャートである。ステップS601~ステップS603、ステップS609~ステップS611は、図5のステップS401~ステップS403、ステップS409~ステップS411とそれぞれ同様であるため説明を省略する。
【0043】
ステップS604では、制御部109は、ステップS602で推定された被写体の速度情報と、動きセンサ110による角速度情報、加速度情報とを参照し、デジタルカメラ100の速度と、被写体とデジタルカメラ100の相対速度を算出する。
【0044】
ステップS605では、制御部109は、ステップS604で算出されたデジタルカメラ100の速度と、被写体とデジタルカメラ100の相対速度とから、流し撮りが行われているか否かを判定する。例えば、相対速度が閾値未満であり、動きセンサ110により検出されたデジタルカメラ100の速度が閾値以上であれば、デジタルカメラ100が被写体を追いかけている流し撮りと判断することができる。その場合、制御部109は、ステップS606で流し撮りのプログラム線図を選択する。
【0045】
相対速度が閾値以上であれば、被写体ブレ、もしくは手振れによる像ブレが生じる可能性があるので、ステップS607では、ステップS602、S603で分類した被写体速度の分類に基づいて、移動性被写体のプログラム線図を選択する。この動作は、図5のステップS404~S407の動作と同様である。相対速度、デジタルカメラ100の速度の双方が共に閾値未満であれば、被写体ブレ、手振れによる像ブレのどちらも生じにくいので、制御部109は、ステップS608で非移動性被写体のプログラム線図を選択する。
【0046】
図8は、流し撮りのプログラム線図を示す図である。流し撮りのプログラム線図では、所定の輝度の範囲(図中EV2からEV16)でISO感度が固定され、絞りとシャッタースピードの制御が行われる。シャッタースピードが速いと背景が流れなくなるため、シャッタースピードが1/125秒、絞りが最小絞りである領域701では、シャッタースピードを固定し、ISO感度の制御のみを行う。
【0047】
一方、シャッタースピードが遅い場合、流し撮りのパンニングによる手振れで像ブレが発生するため、シャッタースピードが1/2秒、絞りが最大絞りとなる領域702では、シャッタースピードを固定し、ISO感度の制御のみを行う。
【0048】
以上説明したように、第1の実施形態の変形例では、流し撮りを行っている場合に移動性被写体を検出しても、流し撮りのプログラム線図を選択することができ、被写体に対して背景が流れている画像を取得することが可能となる。
【0049】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ライブビューを用いた撮影時の撮像条件について説明したが、本実施形態ではライブビューそのものの動作について説明する。ライブビュー撮影は、撮像素子105から出力された画像を表示部114に表示しながら静止画撮影を行う動作である。
【0050】
ライブビューで移動性被写体を撮影する場合、撮像素子105からの出力が低フレームレートであれば表示部114の表示は、被写体の動きがコマ送りのように表示される。そのため、撮像素子105からの出力のフレームレートは、移動性被写体をなめらかに表示できる高フレームレートであることが望ましい。
【0051】
しかし、高フレームレートで撮像素子105から画像信号を出力すると、デジタルカメラ100の消費電力が大きくなる。そのため、ライブビュー撮影で非移動性被写体を撮影する場合、撮像素子からの出力のフレームレートは低フレームレートであることが望ましい。
【0052】
図9は、被写体の推定速度に応じてライブビューのフレームレートを切り替える動作を示すフローチャートである。ステップS801~ステップS803は図5のステップS401~ステップS403と同様であるため説明を省略する。
【0053】
ステップS804では、制御部109は、被写体の推定速度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。被写体の推定速度が閾値以上ならステップS805に進み、ライブビューの高フレームレート駆動動作を選択する。被写体の推定速度が閾値未満の場合、ステップS806に進み、ライブビューの低フレームレート駆動動作を選択する。
【0054】
ステップS807では、制御部109は、ライブビューの終了操作が行われたか否かを判定する。ライブビューの終了操作が行われた場合は、ステップS808でライブビューを終了する。ステップS807でライブビューの終了操作が行われなければ、ステップS801に戻り、一連の動作を繰り返す。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、ライブビューで移動性被写体が存在した場合は高フレームレートでなめらかに表示し、非移動性被写体の場合は低フレームレートで消費電力を抑制することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態では、フレームレートが高低の二種類の場合について説明したが、複数のフレームレートを持ち、被写体の推定速度に応じて選択できるようにしてもよい。
【0057】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、低い露出と高い露出の画像信号を合成したHDR信号(ハイダイナミックレンジ信号)を取得する場合の、撮像素子の駆動方式の切り替えについて説明する。
【0058】
初めに、HDR信号を取得できる撮像素子の画素構造について説明する。HDR信号を取得できる画素構造として、隣接2画素が同色のカラーフィルターを持つ構造が知られている。この画素構造においてHDR画像を取得する方式には、隣接同色2画素の蓄積時間を異ならせる蓄積時間切り替え方式と、ゲインを異ならせるゲイン切り替え方式とがある。
【0059】
図10は、本実施形態の撮像素子105Aの構造を示す図である。撮像素子105Aは、画素領域900、垂直制御回路902、水平制御回路903、タイミングジェネレータ(以下、TG)904、行選択スイッチ905,906、垂直転送線907、列回路909、信号加算部910を備えて構成される。
【0060】
画素領域900には、単位画素901が行列状に配置されている。単位画素901は、前述したように、隣接した同色のカラーフィルターを有する2画素で構成される。そのため単位画素901には、2本の垂直転送線907が接続される。また、垂直転送線907には1本当たり1つの単位列回路908が接続されている。
【0061】
図10では、説明を分かりやすくするために、画素領域900に4×4画素の単位画素901が示されている例を示しているが、実際上はさらに多数の画素が配置される。なお、垂直制御回路902は、画素領域900の画素を行選択スイッチ905,906により1行単位で選択する。単位画素901から垂直転送線907を介して読み出された画素信号は、複数の単位列回路908で構成される列回路909でデジタル信号に変換され、信号合成部910に入力される。
【0062】
信号合成部910は、単位画素901のうち、同色カラーフィルターの隣接2画素から読み出された低い露出と高い露出の信号を合成し、HDR信号を生成する。合成の手法としては、例えば、露出の高い信号が飽和している場合、露出の低い信号を用いてHDR信号を生成する方法がある。なお、HDR信号を生成する方法は任意の合成方法を用いることが可能であり、合成方法は限定されない。
【0063】
TG904は、各画素の画素信号を出力するための制御信号を垂直制御回路902および水平制御回路903に送出する。なお、TG904は信号合成部910にも制御信号を送出する。
【0064】
図11は、同色カラーフィルターの単位画素901の構造を示す図である。単位画素901はフォトダイオード1001(PDa),1002(PDb)、転送トランジスタ1003,1004、FD容量追加スイッチ1005,1006、追加FD容量1007,1008、FD1009,1010、リセットトランジスタ1011,1012、増幅トランジスタ1013,1014を備えて構成される。
【0065】
図12は、単位列回路908の構造を示す図である。単位列回路908は、コンパレータ1101、カウンタ1102、Nメモリ1103、Sメモリ1104、CDS回路1105を備えて構成される。
【0066】
コンパレータ1101は、単位画素901から読み出された画素信号と不図示のランプ信号rampを比較する。画素信号とランプ信号の大小関係が反転すると、コンパレータ1101の出力も反転する。カウンタ1102は入力されたクロック信号clkに基づきカウント動作を行い、コンパレータ1101の出力が反転するとカウント動作を停止することでAD変換を行う。
【0067】
AD変換後、カウンタ1102は、保持しているカウント値がFD(フローティングディフュージョン部)のリセットレベルのAD変換結果であればNメモリ1103に、画素信号のAD変換結果であればSメモリ1104に出力する。CDS回路1105は、Sメモリ1104の保持している値からNメモリ1103の保持している値を減算することにより、画素信号からリセットノイズ成分を取り除いた信号を得る。
【0068】
図13は、HDRの方式として蓄積時間切り替え方式を用いる場合の蓄積動作と読み出し動作を示す図である。PDa1001は、期間P1にリセットが行われ、期間P2で蓄積が行われる。その後、期間P3で読み出し動作が行われる。一方、PDb1002は、期間P1にリセットが行われ、期間P4で蓄積が行われる。その後、期間P5で読み出し動作が行われる。一連の動作はPDa1001、PDb1002で共に同じであるが、蓄積を行う期間である期間P2と期間P4の長さが異なる。これにより低い露出と高い露出の信号を得ることが可能となる。これらの信号を信号合成部910で合成することにより、HDR信号を得ることができる。
【0069】
HDR信号を得る方式としてゲイン切り替え方式を用いる場合は、信号FDa(図11参照)をLo、信号FDb(図11参照)をHiにする。これにより、PDb1002側のFD容量が増加し、PDa1001に対してPDb1002の画素信号のゲインが低くなる。これにより低い露出と高い露出の信号を得ることが可能となる。これらの信号を信号合成部910で合成することによりHDR信号を得ることができる。
【0070】
なお、異なるゲインでの読み出しを、FD容量の変更ではなく、コンパレータ1101に供給されるランプ信号の変更や、不図示の単位列回路908内のプリアンプのゲインの変更により行ってもよい。
【0071】
図14は、HDR信号を得る方式として蓄積時間切り替え方式を用いる場合の画素領域900全体の読み出し動作を示す図である。
【0072】
タイミングT1301において、PDa1001、PDb1002共にリセット動作が各行順次に行われ、蓄積が開始される。次にタイミングT1302において、PDa1001の読み出しが開始され、全行読み出しが終わるまで各行ごとに読み出される。次にタイミングT1303において、PDb1002の読み出しが開始され、全行読み出しが終わるまで各行ごとに読み出される。以降のタイミングT1304からT1306の動作はタイミングT1301からT1303と同様の動作である。PDa1001、PDb1002共に蓄積開始のタイミングが同じであるが、読み出しのタイミングが異なるため、蓄積時間が異なる。
【0073】
図15は、HDR信号を得る方式としてゲイン切り替え方式を用いる場合の画素領域900全体の読み出し動作を示す図である。タイミングT1401において、PDa1001、PDb1002共にリセット動作が各行順次に行われ、蓄積が開始される。次にタイミングT1402において、PDa1001、PDb1002共に読み出しが開始され、全行読み出しが終わるまで各行ごとに読み出される。以降のタイミングT1403からT1404の動作はタイミングT1401からT1402と同様の動作である。PDa1001、PDb1002共に蓄積開始のタイミング、読み出しのタイミングが同じであるため、蓄積時間は同一である。
【0074】
ゲイン切り替え方式において、面内の輝度差が大きい場合、画素信号にゲインをかけても光量が極端に少ない暗部では階調が得られない場合がある。一方、蓄積時間切り替え方式では、ゲインをかけずに蓄積時間を長くすることにより高い露出の信号を得る。このためゲイン切り替え方式に比べて高い露出の信号の暗部の階調を得ることができる。
【0075】
しかし、移動性被写体が存在した場合、異なる蓄積時間の内、蓄積時間の長いフォトダイオードで被写体ブレが生じてしまう。そのため、移動性被写体の場合は、ゲイン切り替え方式を用いることが望ましく、非移動性被写体の場合は蓄積時間切り替え方式を用いることが望ましい。
【0076】
図16は、被写体の推定速度に応じてHDR信号を得る方式を切り替える動作を示すフローチャートである。ステップS1501~ステップS1503は、図5のステップS401~ステップS403と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
ステップS1504では、制御部109は、被写体の推定速度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。被写体の推定速度が閾値以上であれば、ステップS1505に進み、撮像素子105Aにゲイン切り替え方式の動作を行わせる。被写体の推定速度が閾値未満であれば、ステップS1506に進み、撮像素子105Aに蓄積時間切り替え方式の動作を行わせる。
【0078】
ステップS1507では、制御部109は、撮影の終了操作が行われたか否かを判定する。撮影の終了操作が行われた場合は、ステップS1508で撮像画像を記録して終了する。ステップS1507で撮影の終了操作が行われなければ、ステップS1501に戻り、一連の動作を繰り返す。
【0079】
以上説明したように、本実施形態では、所定時間後の撮像時における被写体の推定速度に基づいてHDR信号を得る方式を切り替えている。このことにより、撮影条件などに基づいてHDR信号を得る方式を切り替える場合に比べて、より被写体ブレを抑制することができる。また、露光量、蓄積時間の閾値によりHDR信号を得る方式を機械的に切り替える場合に比べて、より被写体ブレを抑制することができる。
(第4の実施形態)
第1乃至第3の実施形態では、ライブビュー撮影で取得した画像から次のフレーム、あるいはその次のフレームの被写体速度を推定し、その推定結果に基づき撮像動作の制御を行っていた。しかし、撮影者は任意のタイミングでレリーズボタンを押下するため、ライブビュー撮影において一定間隔で行われる被写体の速度が推定される時刻と、撮影時刻が異なる可能性がある。
【0080】
図17は、第1乃至第3の実施形態における、ライブビュー撮影及び被写体の速度推定の動作のタイミングを示した図である。図17の動作は撮像素子105から一定間隔毎に出力された画像を表示部114に表示しながら静止画撮影を行う、いわゆるライブビュー撮影の動作である。ここではタイミングT1702、タイミングT1705、タイミングT1708の一定間隔ごとに画像の読み出しが開始される。
【0081】
タイミングT1701でリセット動作が各行順次に行われ蓄積が開始される。次にタイミングT1702において、順次各行ごとに読み出しが開始され、タイミングT1703において、全行の読み出しが完了する。その後、推定部108は、タイミングT1703で取得された画像を用いてタイミングT1705での被写体速度の推定を行う。
【0082】
制御部109は被写体の推定速度に基づき、タイミングT1704のリセット動作の開始タイミングを制御することにより、蓄積時間を制御する。なお、蓄積時間が長く、リセット動作を行うタイミングT1704が推定完了以前のタイミングとなるような場合があるため、タイミングT1704は被写体速度の推定完了以降となるよう、蓄積時間に制限を設けてもよい。
【0083】
タイミングT1704でリセット動作、タイミングT1705で読み出し動作が行われた後、推定部108は、タイミングT1706で取得された画像を用いてライブビューの次のフレームの読み出しのタイミングT1708での被写体速度の推定を行う。このとき、タイミングT1708は、タイミングT1705の被写体速度の推定に基づき制御部109によって制御される。
【0084】
次に、タイミングT1707でリセット動作、タイミングT1708で読み出し動作が行われる。ここではタイミングT1708における被写体の推定速度が速い場合の例を示している。そのため、制御部109が被写体の推定速度に基づき蓄積時間が短くなるようタイミングT1707のリセット動作の開始を遅らせるよう制御している。
【0085】
次に、レリーズボタンが押下された場合の動作について説明する。タイミングT1709でレリーズボタンが押下された場合、制御部109によりタイミングT1709でリセット動作と蓄積の開始、タイミングT1710で読み出しの開始が指示され、静止画が取得される。この場合、タイミングT1709における被写体の推定速度は得られていないため、制御部109は、レリーズボタンが押下されたタイミングT1709の直近であるタイミングT1708の被写体の推定速度に基づいて蓄積時間を制御する。
【0086】
このため、被写体の推定速度が推定されたタイミングT1708とレリーズボタンが押下されたタイミングT1709で被写体速度が異なる場合、蓄積時間の制御が適切ではなくなる。
【0087】
図18は、本実施形態における一定間隔で行われる所定時間後の被写体速度の推定に対し、その間の推定速度を補間することにより、任意のタイミングにおける推定速度を得る例を示した図である。
【0088】
図18(a)は、取得した画像から、異なる2つの所定時間後の被写体速度を推定し、2つの時刻間の被写体の推定速度を補間する動作のタイミングを示した図である。図18(a)については、図17と異なる点について説明する。
【0089】
図17において、推定部108は、タイミングT1703で取得された画像を用いてライブビューの次のフレームの読み出し開始タイミングT1705の被写体速度の推定を行う。それに対して、図18においては、推定部108はタイミングTa1803で取得された画像を用いて、ライブビューの次のフレームの読み出し開始タイミングTa1805に加え、さらにその次のフレームの読み出し開始タイミングTa1808の被写体速度の推定を行う。換言すれば、図17では被写体速度の推定を次のフレームに対してのみ行っていたが、図18では次のフレームと、さらにその次のフレームに対して行う。
【0090】
さらに推定部108は、得られたタイミングTa1805とタイミングTa1808での被写体の推定速度から、タイミングTa1805とタイミングTa1808の間における被写体の推定速度を補間する。この推定速度の補間は線形補間など公知の手法を用いることで実現することができる。同様に、推定部108はタイミングTa1806で得られた画像についてもライブビューの次のフレームの読み出しのタイミングTa1808と、さらにその次のフレームの読み出しのタイミングTa1811での被写体速度の推定を行い、間を補間する。この補間処理により任意のタイミングにおいて被写体の推定速度を得ることができる。
【0091】
このため、タイミングTa1810でレリーズボタンが押下されても、制御部109は、補間されたタイミングTa1810での被写体の推定速度に基づき、蓄積時間の制御を行うことができる。
【0092】
なお、速度推定に要する時間が短い場合、1つ前のフレームで行われた速度推定結果との補間であってもよい。
【0093】
これを、図18(a)を用いて、具体的に説明する。タイミングTa1808とタイミングTa1811間の補間を例に説明すると、タイミングTa1806では、タイミングTa1806で得られた画像から、タイミングTa1808とタイミングTa1811の速度を推定するとともに、その間の補間を行っている。
【0094】
ここで、速度推定に要する時間が短く、タイミングTa1809で得られた画像を用いた次のフレームであるタイミングTa1811の速度推定が、レリーズボタンが押下されるTa1810よりも早く完了したとする。この場合、タイミングTa1811の推定速度は新たに求められた推定速度を使用し、タイミングTa1806より求められたタイミングTa1808の推定速度との補間からタイミングTa1810の推定速度を求める。
【0095】
これにより、タイミングTa1809とタイミングTa1811の間の補間に用いられるタイミングTa1811の速度推定を、より近傍のタイミングTa1809の画像を用いて得ることができる。そのため、レリーズボタンが押下されるタイミングTa1810での補間された推定速度の精度を高めることができる。
【0096】
図18(b)は、取得した画像から所定時間後の被写体速度と被写体加速度を推定し、次の被写体の推定速度が得られるまでの間を補間する動作のタイミング図である。
【0097】
ここでの被写体加速度とは、被写体速度の時間に対する変化量であり、公知のディープラーニング技術等を用いて、入力された画像内の被写体とその被写体の次の動作の加速度を関連付けて機械学習させた学習モデルを用いることで実現できる。
【0098】
図18(b)において、推定部108は、タイミングTb1803で取得された画像を用いてライブビューの次のフレームの読み出しのタイミングTb1805での被写体速度、および被写体加速度の推定を行う。
【0099】
同様に推定部108は、タイミングTb1806、タイミングTb1809で取得された画像を用いて、それぞれライブビューの次のフレームの読み出しのタイミングTb1808、タイミングTb1811での被写体速度、被写体加速度の推定を行う。
【0100】
さらに、推定部108はタイミングTb1805での被写体の推定速度、推定加速度を用いて次の推定結果が得られるタイミングTb1808までの被写体の推定速度を補間する。同様に推定部108はタイミングTb1808での推定結果からタイミングTb1811までの被写体の推定速度を補間する。この補間処理により任意のタイミングにおいて被写体の推定速度を得ることができる。
【0101】
このため、タイミングTb1810でレリーズボタンが押下されても、制御部109は補間されたタイミングTb1810での被写体の推定速度に基づき、蓄積時間の制御を行うことができる。
【0102】
以上説明したように、一定間隔で行われる所定時間後の被写体速度の推定に対し、その間の推定速度を補間することにより、任意のタイミングにおける推定速度が得られる。これにより、撮影者がレリーズボタンを押下するタイミングの被写体の推定速度に基づいた撮像動作の制御を行うことが可能となる。
【0103】
(第5の実施形態)
第1乃至第4の実施形態では、レリーズボタンが押下されたタイミング、もしくはその近傍のタイミングでの被写体の推定速度を用いて撮像動作を制御している。しかし、被写体の推定速度に応じて蓄積時間を制御する場合、レリーズボタンが押下され蓄積が開始された後も被写体の速度は変化する場合がある。例えば被写体が急加速している場合、被写体の推定速度は蓄積開始時と蓄積終了時で大きく異なる。
【0104】
本実施形態では、蓄積時間の制御を、レリーズボタンが押下されたタイミング、もしくはその近傍のタイミングでの被写体の推定速度ではなく、蓄積中心(蓄積の中心時刻)における被写体の推定速度を用いて行う。蓄積時間が蓄積開始時の被写体速度ではなく、蓄積中心の被写体速度に応じて制御されると、被写体ブレの抑制等をより適切に行うことができる。
【0105】
図19は、第4の実施形態における、蓄積開始時の被写体速度による蓄積時間の制御について示す図である。図19(a)は、蓄積時間の決定のフローチャート、図19(b)は、図19(a)のフローチャートに従った場合の被写体の推定速度及び蓄積タイミングの関係を示している。
【0106】
ステップS1901において、任意のタイミングにおける被写体速度の推定が行われる。この推定は、図18(a)で示した2フレーム間の推定速度による補間、もしくは図18(b)で示した被写体加速度による補間を用いればよい。これにより図19(b)の曲線Vで示されるタイミングtにおける被写体推定速度が得られる。
【0107】
ステップS1902においてレリーズボタンが押下されると、レリーズタイムラグを考慮し、蓄積開始タイミングが決定される。次にステップ1903で蓄積が開始される。
【0108】
図19(b)においてレリーズはタイミングT1901、蓄積開始はタイミングT1902となり、その時の被写体速度Vsに基づいた蓄積時間が決定され、蓄積終了はタイミングT1903となる。
【0109】
この場合、タイミングT1902とタイミングT1903での被写体速度はそれぞれVs、Veであり、速度差が生じる。そのため、図19(b)のような被写体が加速する場合、蓄積開始時における被写体速度から決定された撮影条件(蓄積時間)では、被写体ブレが十分抑制できない可能性がある。
【0110】
図20は、本実施形態における蓄積中心の被写体速度を用いた蓄積時間の制御について示す図である。図20(a)は、蓄積時間の決定のフローチャート、図20(b)は、図20(a)のフローチャートに従った場合の被写体の推定速度及び蓄積タイミングの関係を示している。
【0111】
ステップS2001において、任意のタイミングにおける被写体速度の推定が行われる。この推定は、図18(a)で示した2フレーム間の推定速度による補間、もしくは図18(b)で示した被写体加速度による補間を用いればよい。
【0112】
ステップS2002において、タイミングtに対する被写体の推定速度に基づいて蓄積時間が決定される。さらに被写体速度と蓄積時間の対応から、タイミングtに対する被写体の推定速度をタイミングtに対する蓄積時間へと変換する。
【0113】
次にステップS2003において、タイミングtが蓄積中心となるよう決定された蓄積時間からタイミングtに対する蓄積開始タイミングを求める。
【0114】
図20(a)のフローチャートによる蓄積中心の被写体速度を用いた蓄積時間の制御について図20(b)を用いて詳細に説明する。
【0115】
ステップS2001において、任意のタイミングにおける被写体速度の推定、補間が行われる。これにより図20(b)の曲線Yで示されるタイミングtに対する被写体の推定速度が得られる。
【0116】
ステップS2002において、タイミングtに対する被写体推定速度からタイミングtにおける蓄積時間が得られる。
【0117】
ステップS2003において、タイミングtに対する蓄積時間がタイミングtに対して対称となるよう、蓄積開始タイミングと蓄積終了タイミングを決定する。これにより図20(b)の曲線Xで示される蓄積中心の被写体推定速度に基づいた蓄積開始タイミングと、曲線Zで示される蓄積中心の被写体推定速度に基づいた蓄積終了タイミングが得られる。
【0118】
ステップS2004において、レリーズにより蓄積開始タイミングが決定されると、曲線Xと曲線Zにより蓄積時間が決定される。
【0119】
あるタイミングTを蓄積中心とする例について説明する。タイミングTにおける被写体の推定速度に基づいて蓄積時間Aが決定される(ステップS2002)。このタイミングTを蓄積中心とするため、蓄積開始はT-(A/2)、蓄積終了はT+(A/2)となる(ステップS2003)。
【0120】
これによりステップS2004において、タイミングT2001でレリーズが押下され、蓄積開始がT-(A/2)となった場合、蓄積時間をAとすれば、蓄積中心の被写体速度に基づいた制御となる。
【0121】
換言すれば、被写体の推定速度から蓄積時間が決定されていたのを、被写体の推定速度と蓄積時間の関係を用いて、蓄積開始タイミングから蓄積時間が決定されるよう、タイミングtにおける被写体の推定速度を蓄積開始タイミングに変換している。
【0122】
以上説明したように、本実施形態によれば、蓄積中心の被写体速度に応じて蓄積時間を制御することができ、被写体ブレの抑制等をより適切に行うことが可能となる。なお、被写体の加減速に応じて、制御に用いる被写体速度を蓄積開始での速度、蓄積中心での速度、蓄積終了での速度と切り替えてもよい。
【0123】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の撮像装置の構成は、図1に示した第1の実施形態のデジタルカメラ100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0124】
図21は、図1に示した推定部108の第6の実施形態における構成を示すブロック図である。推定部108は、速度推定部2101、推定用補正部2102、特定被写体検出部2111、速度算出部2112、学習用補正部2113、学習モデル調整部2114、学習モデル記憶部2121を備えて構成される。
【0125】
速度推定部2101は、メモリ部111から出力された1枚の画像信号に対し、学習モデル記憶部2121に保持された学習モデルを参照して、画像信号中の被写体の所定時間後の撮像時における速度を推定して出力する。所定時間後の撮像のタイミングは、制御部109から通知される。
【0126】
この被写体の速度の推定は、公知のディープラーニング技術等を用いて、入力された画像中の被写体とその被写体の次の動作の速度を関連付けて機械学習させた学習モデルを用いることで実現することができる。学習モデルには、1枚の特定被写体画像と特定被写体の所定時間後の速度が関連付けて学習されている。
【0127】
1枚の特定被写体画像には特定被写体の姿勢情報が含まれており、例えば、学習モデルは、ディープラーニング技術により特定被写体の姿勢情報と特定被写体の所定時間後の速度を関連付けて学習されている。そのため、急な動きについても事前にその兆候が写った入力画像を用いることにより、急な動きの速度を推定することができる。特定被写体検出部2111、速度算出部2112、学習モデル調整部2114は、後述する学習モデルの学習に用いられる。
【0128】
例えば、推定部108に、すでに説明した図3(a)のように立っている犬の画像が入力された場合、速度推定部2101は0km/hという推定速度を出力する。図3(b)のように走っている犬の画像が速度推定部2101に入力された場合、速度推定部2101は30km/hという推定速度を出力する。
【0129】
推定用補正部2102は、入力された画像における被写体の像面上のサイズに応じて、速度推定部2101から出力された推定速度を補正する。具体的には、像面上で被写体のサイズが小さければ、像面上での速度が遅くなるように、逆に大きければ、像面上での速度が速くなるように補正する。
【0130】
また、推定用補正部2102は、被写体の像面上のサイズではなく、被写体までの距離とレンズ部101の撮像倍率を用いて、速度推定部2101から出力された推定速度を補正してもよい。また、公知の測距技術による測距情報を用いて速度推定部2101から出力された推定速度を補正してもよい。
【0131】
推定用補正部2102は、補正された被写体の推定速度を制御部109へ送る。制御部109は、被写体の推定速度に応じて対応するプログラム線図を選択し、測光部107により求められたEV値(Exposure value)に基づいて、シャッタースピード、ISO感度、絞りといった撮像条件を決定する。制御部109が、前述した被写体の推定速度に基づいて、非移動性、低速、中速、高速の移動の種別を判断している。ここでは、被写体の推定速度が閾値未満であれば非移動性被写体として取り扱う。
【0132】
ここで、非移動性被写体、低速移動性被写体、中速移動性被写体、高速移動性被写体にそれぞれ適用するプログラム線図は、第1の実施形態で示した、図4のプログラム線図と同様である。
【0133】
具体的には、図4(a)は、非移動性被写体に対するプログラム線図、図4(b)は、低速移動性被写体に対するプログラム線図、図4(c)は、中速移動性被写体に対するプログラム線図、図4(d)は高速移動性被写体に対するプログラム線図の例をそれぞれ示している。図4のプログラム線図及びその選択方法については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0134】
また、撮像装置がシャッタースピード、ISO感度、絞りといった撮像条件を決定するP (プログラム)モードにおいて、撮像素子105から出力された画像を表示部114に表示しながら静止画撮影を行う、いわゆるライブビュー撮影の動作についても、図5に示した第1の実施形態の動作と同様であるため、説明を省略する。つまり、本実施形態においても、ライブビュー撮影時の事前撮影画像を用いて推定部108で被写体の速度を推定し、推定速度に応じて制御部109が撮像条件を決定するプログラム線図を、図4に示したようなプログラム線図から選択し、切り替える。
【0135】
続いて、推定部108における学習モデルの学習について説明する。図22は、学習モデルの学習を概略的に説明する図である。
【0136】
図22において、情報9000は、メモリ部111に保持された情報であり、撮影時刻情報(9011,9012,…)と画像(9001,9002,…)を含む。画像9001の撮影時刻が撮影時刻情報1(9011)、画像9002の撮影時刻が撮影時刻情報2(9012)、画像9003の撮影時刻が撮影時刻情報3(9013)、画像9004の撮影時刻が撮影時刻情報4(9014)と一致する。
【0137】
情報9020は、特定被写体検出部2111に保持された情報であり、特定被写体の像面上の位置と大きさを抽出した情報を含む。位置・大きさ情報9021は、画像9001に対応し、位置・大きさ情報9022は、画像9002に対応し、位置・大きさ情報9023は、画像9003に対応し、位置・大きさ情報9024は、画像9004に対応する。
【0138】
情報9030は、速度算出部2112に保持された情報の一部であり、速度時刻情報を含む。情報9040は、速度算出部2112に保持された情報の一部であり、速度情報を含む。速度時刻情報9031は、速度情報9041に対応し、速度時刻情報9032は、速度情報9042に対応し、速度時刻情報9033は、速度情報9043に対応し、速度時刻情報9034は、速度情報9044に対応する。図22中の破線は、どの情報がどの情報を元に計算されるかを概略的に示す破線である。
【0139】
以下に、図22に従って学習モデルの学習方法について説明する。
【0140】
メモリ部111は、少なくとも2枚の、異なる時刻に撮影された画像(9001,9002,…)を、それぞれの撮影時刻情報(9011,9012,…)とともに保持する。
【0141】
特定被写体検出部2111は、メモリ部111から画像(9011,9012,…)を読み出し、その画像から事前に登録した特定被写体(例えば、特定の犬)を検出し、検出された位置と大きさの情報(9021,9022,…)を特定する。特定した被写体の位置・大きさ情報を所定のフレーム数分保持する。
【0142】
速度算出部2112は、特定被写体検出部2111から読み出した特定被写体の位置情報と、メモリ部111から読み出した撮影時刻情報とから、被写体速度と対応する時刻(速度時刻情報)を計算して保持する。具体的には、特定被写体検出部2111から2つの位置情報(9021,9022)を読み出して移動量を算出する。
【0143】
また、メモリ部111から上記の位置情報(9021,9022)に対応した撮影時刻情報(9011,9012)を読み出して時間差を算出する。上記の算出した移動量を、算出した時間差で割ることにより、撮影時刻9011と撮影時刻9012の平均時刻9031における特定被写体の速度9041を算出して、保持する。
【0144】
また、以上で算出した速度は、カメラと被写体を結んだ直線と垂直な平面方向(以下、画角方向と呼称する)の速度である。なお、画像毎に特定被写体中の複数の特徴点(例えば、特定の犬の両目)を検出し、画像間における各特徴点の変化量(例えば、特定の犬の両目の間の長さの変化量)から、撮像装置と被写体を直線で結んだ方向(以下、法線方向と呼称する)速度も算出して、画角方向の速度とのベクトル演算により被写体の速度を算出してもよい。
【0145】
学習用補正部2113は、被写体速度を、画像の被写体の像面上のサイズによらない被写体の姿勢に関連付けた速度とするため、特定被写体検出部2111から読み出した特定被写体の像面上でのサイズに基づいて、速度算出部2112から出力された被写体速度を補正し、保持する。
【0146】
具体的には、像面上での特定被写体のサイズが小さければ速度算出部2112からの入力を大きくして保持し、像面上での被写体サイズが大きければ速度算出部2112からの入力を小さくして保持する。また、学習用補正部2113は、被写体の像面上のサイズではなく、被写体までの距離とレンズ部101の撮像倍率を用いて速度算出部2112から読み出した推定速度を補正してもよい。また、公知の撮像面測距技術等を用いて算出した被写体距離を用いて、速度算出部2112から読み出した推定速度を補正してもよい。
【0147】
上記の速度算出を繰り返し行うことにより、撮影時刻9012と撮影時刻9013の平均時刻9032での速度9042、撮影時刻9013と撮影時刻9014の平均時刻9033での速度9043等を算出することができる。
【0148】
学習モデル調整部2114は、メモリ部111から画像を読み出し、学習用補正部2113から画像の撮影時刻から所定の遅れ時間後の速度を読み出す。そして、読み出した画像情報を学習データ、読み出した速度を教師データとして、学習モデル記憶部2121に保持された学習モデルに学習させる。例えば、画像9001を学習データとし、速度情報9042を教師データとする。
【0149】
上記の動作を繰り返すことにより、1枚の画像中に含まれる事前に登録した特定被写体の姿勢から、所定の遅れ時間後の速度を予測するための学習データを作成して学習することができる。
【0150】
また、特定被写体の位置・大きさ情報は特定被写体検出部2111、速度情報と速度時刻情報は速度算出部2112、補正後の速度情報は学習用補正部2113にそれぞれ保持するように説明したが、メモリ部111に一括して保持してもよい。
【0151】
また、学習モデル記憶部2121に複数の学習モデルを有し、上記所定の遅れ時間を複数個学習してもよい。このようにすることで、1枚の画像から複数の所定の遅れ時間後の速度を予測することができる。
【0152】
また、速度算出部2112で、速度時刻情報(9031,9032,…)と対応する速度情報(9041,9042,…)に基づいて加速度を算出し、画像と加速度を関連付けて学習してもよい。
【0153】
具体的には、学習モデル記憶部2121には、学習モデルとは別に、画像-加速度学習モデルを保持しておく。速度算出部2112は、2つの速度情報(例えば、速度情報9041,9042)の差分(差分情報)を、対応する2つの速度時刻情報(例えば、速度時刻情報9031,9032)の差分(差分情報)で割ることにより、被写体加速度を算出して保持する。
【0154】
学習用補正部2113、学習モデル調整部2114は、画像と速度を関連付けて学習する場合と同様である。このようにすることで、1枚の画像から所定の遅れ時間後の加速度を予測することができる。
【0155】
また、学習モデルは、工場出荷時には汎用的な学習モデル(例えば、犬全般について学習したモデル)を保持しておき、各ユーザーが上記の特定被写体に対する学習を行うことにより、特定の被写体に特化した学習モデルを作成してもよい。このようにすることで、特定被写体の学習が不足している場合でも、1枚の画像から所定の遅れ時間後の速度を予測することができる。
【0156】
また、学習モデルの学習は、電源スイッチが入っている間中常に繰り返し行ってもよいが、シャッターボタンが半押しされて指示スイッチSW1がオン、またはシャッターボタンが全押しされて指示スイッチSW2がオンの場合に繰り返し行うことが好ましい。このようにすることで、ユーザーの撮りたい特定被写体が画角に入っている確率が高くなり、効率的に学習を行うことができる。また、学習モデルの学習を行うタイミングの別の例として、接眼検知センサ115がオンの時や、タッチパネルにタッチ動作があった後の所定時間の間などとしてもよい。
【0157】
また、手振れ等でカメラの動きが大きい時は、被写体の速度を正確に求めることができない可能性があるため、カメラの動きが大きい時の信号を学習に用いると、学習モデルの学習が不正確になる可能性がある。そのため、動きセンサ110内の加速度センサの出力からカメラの動きが大きいことを示す信号が出力された場合には、学習モデルの学習を停止するようにしてもよい。
【0158】
以上説明したように、所定時刻後の撮像時の被写体の速度を推定し、対応したプログラム線図を選択することにより、被写体の状態変化によらず被写体ブレを起こしにくい撮像条件を設定することが可能となる。
【0159】
なお、本実施形態でも、流し撮りを行う場合には、流し撮りのプログラム線図を用いるが、流し撮りを行う場合の動作は、第1の実施形態の図7に示した動作と同様であるため、説明を省略する。
【0160】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0161】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0162】
105:撮像素子、106:信号処理回路、108:推定部、109:制御部、110:動きセンサ、201:速度推定部、202:補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22