(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エッチング組成物、これを用いた絶縁膜のエッチング方法及び半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240927BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240927BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20240927BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/76 L
H01L29/78 371
(21)【出願番号】P 2020148458
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109544
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515268869
【氏名又は名称】エスケー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム チョル ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ クヮン クク
(72)【発明者】
【氏名】クヮク ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボム
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ハ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ジン キュン
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538139(JP,A)
【文献】特表2019-501517(JP,A)
【文献】特開2017-114966(JP,A)
【文献】特開2009-206462(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/76
H01L 21/336
H01L 29/78
H10B 43/27
H10B 41/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸、Si原子を1つ以上含むシラン化合物、及び下記化学式1で表されるアンモニウム塩を含む、
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【化1】
ここで、L
1~L
3は独立して、置換又は非置換されたヒドロカルビレンであり、R
1~R
4は独立して、水素、置換又は非置換されたヒドロカルビルであり、X
n-はn価の陰イオンであり、nは1~3の整数である。
【請求項2】
前記Xは、ハロゲン、C
1-C
10のカルボキシレート、トシレート、硫酸塩、メシレート、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホスフェート、ヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、及び硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項3】
前記L
1~L
3は独立して、置換又は非置換されたC
1-C
5のアルキレンである、請求項1に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項4】
前記L
1~L
3はすべて同一である、請求項3に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項5】
前記L
1~L
3は-CH
2CH
2-又は-CH
2CH(CH
3)-である、請求項4に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項6】
前記ヒドロカルビルは置換又は非置換されたC
1-C
20のアルキル又は置換又は非置換されたC
6-C
20のアリールである、請求項1に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項7】
前記R
1~R
3は水素であり、R
4は水素又はC
1-C
20のアルキルである、請求項1に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項8】
前記R
4は水素又は-CH
3である、請求項7に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項9】
前記化学式1は下記(1)~(14)の構造から選択される、請求項1に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【化2】
(OAcはアセテートを示し、OTsはトシレートを示し、OMsはメシレートを示す。)
【請求項10】
前記シラン化合物は下記化学式2で表される、請求項1に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【化3】
前記化学式2中、R
51~R
54は互いに独立して水素、置換又は非置換されたヒドロカルビル、置換又は非置換されたヘテロヒドロカルビルであり、R
51~R
54はそれぞれ存在するか、又は2つ以上がヘテロ元素を介して互いに連結されたリング状である。
【請求項11】
リン酸70~95重量%、シラン化合物0.001~5重量%、化学式1で表されるアンモニウム塩0.001~10重量%を含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の
シリコン窒化膜のエッチング組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項の
シリコン窒化膜のエッチング組成物を用いる、絶縁膜
としてのシリコン窒化膜のエッチング方法。
【請求項13】
基板上にトンネル酸化膜、ポリシリコン膜、バッファ酸化膜、及びパッド窒化膜を順に形成する段階と、
前記ポリシリコン膜、前記バッファ酸化膜、及び前記パッド窒化膜を選択的にエッチングしてトレンチを形成する段階と、
SOD酸化膜を形成して前記トレンチをギャップフィル(gap-fill)する段階と、
前記パッド窒化膜を研磨停止膜として前記SOD酸化膜に対して化学機械研磨(CMP)工程を行う段階と、
請求項1から請求項11のいずれか一項の
シリコン窒化膜のエッチング組成物を用いたウェットエッチングによって前記パッド窒化膜を除去する段階と、
前記バッファ酸化膜を除去する段階と、を含む、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング組成物、特に酸化膜のエッチング率を最小限に抑えるとともに、窒化膜を選択的に除去することができる高選択比のエッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン酸化膜(SiO2)などの酸化膜及びシリコン窒化膜(SiNx)などの窒化膜は、代表的な絶縁膜であり、これらのシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜は半導体製造工程においてそれぞれ単独で、又は1層以上の膜が交互に積層されて用いられる。また、このような酸化膜及び窒化膜は、金属配線などの導電性パターンを形成するためのハードマスクとしても利用される。
【0003】
上記窒化膜を除去するためのウェットエッチング工程では、一般にリン酸(phosphoric acid)と脱イオン水(deionized water)との混合物が用いられている。上記脱イオン水は、エッチング率の減少及び酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択性の変化を防止するために添加されるものであるが、供給される脱イオン水の量の微細な変化でも窒化膜エッチング除去工程において不良が発生するという問題がある。また、上記リン酸は強酸で腐食性を有しており、取り扱いに困難がある。
【0004】
これを解決するために、従来はリン酸(H3PO4)にフッ酸(HF)又は硝酸(HNO3)などを含むエッチング組成物を利用して窒化膜を除去する技術が公知となっていたが、却って酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択比を阻害させる結果をもたらした。また、リン酸とケイ酸、又はケイ酸塩を含むエッチング組成物を利用する技術も公知となっていたが、ケイ酸やケイ酸塩は基板に影響を及ぼす可能性があるパーティクルを発生させ、却って半導体製造工程に適さないという問題点がある。
【0005】
しかし、このような窒化膜の除去のためのウェットエッチング工程でリン酸を利用する場合、酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択比の低下によって窒化膜のみならず、SOD酸化膜までもエッチングされて有効酸化膜高さ(Effective Field Oxide Height、EFH)を調整することが困難となる。そのため、窒化膜の除去のための十分なウェットエッチング時間を確保することができなかったり、追加工程が必要となったりし、素子特性の変化を誘発して素子特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
したがって、半導体製造工程で酸化膜に対して窒化膜を選択的にエッチングしながらも、パーティクルの発生のような問題点を有しない高選択比のエッチング組成物が求められている。
【0007】
一方、従来のエッチング組成物に添加される添加剤であるシラン系添加剤は、溶解度が低く適正溶解度が確保されず、その結果、エッチング組成物内でパーティクルの析出及び基板の異常成長をもたらすという問題があった。このようなパーティクルは、シリコン基板に残留して基板上に実現される素子の不良をもたらしたり、エッチング又は洗浄工程に用いられる機器に残留して機器故障の原因となるという問題がある。
【0008】
さらに、エッチング液の長期保管時に窒化膜及びシリコン酸化膜のエッチング速度が変化するようになって選択度が変化することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、酸化膜のエッチング率を最小限に抑えるとともに、窒化膜を選択的に除去することができ、素子特性に悪影響を及ぼすパーティクルの発生などの問題点を有しない高選択比のエッチング組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、保存安定性に優れたエッチング組成物を提供することである。
【0011】
尚、本発明のさらに他の目的は、上記エッチング組成物を用いた絶縁膜のエッチング方法及び半導体素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、エッチング組成物を提供しようとするものである。本発明の一実施例によると、リン酸、Si原子を1つ以上含むシラン化合物、及び下記化学式1で表されるアンモニウム塩を含むエッチング組成物を提供する。
【化1】
ここで、L
1~L
3は独立して、置換又は非置換されたヒドロカルビレンであり、R
1~R
4は独立して、水素、置換又は非置換されたヒドロカルビルであり、X
n-はn価の陰イオンであり、nは1~3の整数である。
【0013】
上記Xは、ハロゲン、C1-C10のカルボキシレート、トシレート、硫酸塩、メシレート、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホスフェート、ヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、及び硝酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0014】
上記L1~L3は独立して、置換又は非置換されたC1-C5のアルキルレンであってもよく、すべて同一であることがより好ましく、例えば、上記L1~L3は-CH2CH2-又は-CH2CH(CH3)-であってもよい。
【0015】
上記ヒドロカルビルは、置換又は非置換されたC1-C20のアルキル又は置換又は非置換されたC6-C20アリールであってもよい。
【0016】
例えば、上記R1~R3は水素であり、R4は水素又はC1-C20のアルキルであってもよく、より具体的には、上記R4は水素又は-CH3であってもよい。
【0017】
上記化学式1のアンモニウム塩は、下記式(1)~(14)の構造から選択されるものであってもよい。
【化2】
(OAcはアセテートを示し、OTsはトシレートを示し、OMsはメシレートを示す。)
【0018】
上記シラン化合物は下記化学式2で表されるものであってもよい。
【化3】
【0019】
上記化学式2中、R51~R54は互いに独立して水素、置換又は非置換されたヒドロカルビル、置換又は非置換されたヘテロヒドロカルビルであり、R51~R54はそれぞれ存在するか、又は2つ以上がヘテロ元素を介して互いに連結されたリング状である。
【0020】
上記した各実施例のエッチング組成物は、リン酸70~95重量%、シラン化合物0.001~5重量%、化学式1で表されるアンモニウム塩0.001~10重量%を含んでもよい。
【0021】
本発明は、上記したエッチング組成物を用いた絶縁膜のエッチング方法を提供し、上記絶縁膜のエッチング方法を含む半導体素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるエッチング組成物は、酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択比が高い。
【0023】
また、本発明のエッチング組成物を用いると、窒化膜除去時に酸化膜の膜質の損傷や酸化膜のエッチングに起因する電気的特性の低下を防止するとともに、パーティクルの発生を防止して素子特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例による絶縁膜のエッチング方法を例示した工程断面図である。
【
図2】本発明の実施例による絶縁膜のエッチング方法を例示した工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、エッチング組成物、特に酸化膜のエッチング率を最小限に抑えるとともに、窒化膜を選択的に除去することができる高選択比を有し、保存安定性に優れたエッチング組成物を提供するためのものである。
【0026】
本発明のエッチング組成物はリン酸を含む。上記リン酸はシリコン窒化物と反応して窒化膜をエッチングするものであり、上記リン酸は下記反応式(1)のようにシリコン窒化物と反応してシリコン窒化物をエッチングする。
3Si3N4+27H2O+4H3PO4→4(NH4)3PO4+9SiO2H2O(1)
【0027】
本発明のエッチング組成物は、下記化学式1で表されるアンモニウム塩を含む。
【化4】
【0028】
上記化学式1中、L1~L3は独立して、置換又は非置換されたヒドロカルビレンである。上記L1~L3は独立して、置換又は非置換されたC1-C5のアルキレン、例えば、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-であってもよい。上記L1~L3は互いに異なってもよいことは言うまでもなく、すべて同一であってもよい。
【0029】
上記化学式1中、R1~R4は独立して、水素、置換又は非置換されたヒドロカルビルである。上記ヒドロカルビルは置換又は非置換されたC1-C20のアルキル又は置換又は非置換されたC6-C20アリールであってもよい。上記R1~R4は互いに異なってもよいことは言うまでもなく、2以上が同一であってもよい。例えば、上記R1~R3は水素であり、R4は水素又は-CH3のような置換又は非置換されたC1-C20のアルキルであってもよい。
【0030】
上記化学式1中、Xn-はn価の陰イオンであり、好ましくは、nが1~3のうちいずれか1つの整数である陰イオンであってもよい。例えば、上記Xは、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン元素であってもよく、アセテートのようなC1-C10のカルボキシレート、トシレート、硫酸塩、メシレート、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホスフェート、ヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、及び硝酸塩で構成される群から選択されるものであってもよい。
【0031】
本発明で提供される化学式1で表されるアンモニウム塩は、シラン化合物に対して構造的安定性を提供し、シラン化合物の分解又は異常成長のような現象の発生を抑制してエッチング組成物のパーティクルの生成を抑制し、シリコン酸化物に対するエッチング抑制の役割を維持するようにする。
【0032】
本発明のエッチング組成物に含まれるアンモニウム塩は、上記化学式1で表されるものであればいずれか1つを単独で用いることができることは言うまでもなく、2以上を混合して用いることもできる。本発明で用いられる化学式1で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記式(1)~(14)のアンモニウム塩であってもよい。
【化5】
(OAcはアセテートを示し、OTsはトシレートを示し、OMsはメシレートを示す。)
【0033】
上記化学式1のアンモニウム塩は、エッチング組成物のパーティクル生成を防止することができ、全重量に対して0.001~10重量%の含有量で添加することができる。0.001重量%未満添加すると、パーティクルの生成抑制効果がわずかであり、10重量%を超えて添加すると、アンモニウム塩がパーティクルの生成を加速化させる可能性がある。
【0034】
上記化学式1のアンモニウム塩は、例えば、0.001~5重量%、0.001~3重量%、0.001~2重量%、0.001~1重量%、0.005~5重量%、0.005~3重量%、0.005~2重量%、0.005~1重量%、0.01~5重量%、0.01~3重量%、0.01~2重量%、0.01~1重量%、0.05~5重量%、0.05~3重量%、0.05~2重量%、0.05~1重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.1~1重量%、0.5~5重量%、0.5~3重量%、0.5~2重量%、0.5~1重量%の含有量であってもよい。
【0035】
本発明のエッチング組成物はシラン化合物を含む。本発明において、シラン化合物は、Si原子を1つ以上含むシラン化合物であれば適切に用いることができ、より好ましくは、下記式2で表されるシラン化合物であってもよい。
【化6】
【0036】
上記化学式2中、R51~R54は互いに独立して、水素、C1-C20のヒドロカルビルのような置換又は非置換されたヒドロカルビル又はC1-C20のヘテロヒドロカルビルのような置換又は非置換されたヘテロヒドロカルビルであってもよい。上記R51~R54はそれぞれ存在するか、又は2つ以上がヘテロ元素を介して互いに連結された環状であってもよい。例えば、水素、置換又は非置換されたC1-C20のアルキル、或いは置換又は非置換されたC1-C20のヘテロアルキルなどであってもよい。このとき、上記ヘテロ元素は特に限定しないが、例えば、N、S、O、Pなどであってもよい。
【0037】
上記化学式2で表されるシラン化合物は、エッチング組成物の全重量に対して0.005~1重量%の含有量で含むことができる。
【0038】
さらに、本発明のエッチング組成物は、化学式1で表されるアンモニウム塩以外のアンモニウム塩をさらに含むことができる。
【0039】
上記アンモニウム塩として、アンモニウムイオンを有する化合物であって、本発明が属する分野において通常用いられるものを、本発明でも好適に用いることができる。かかるアンモニウム塩として、これに限定するものではないが、例えば、アンモニア水、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、フッ酸アンモニウムなどを挙げることができ、これらのうちいずれか1つを単独で用いることができることは言うまでもなく、2以上を混合して用いることもできる。
【0040】
さらに、本発明のエッチング組成物は、エッチング性能をさらに向上させるために、本技術分野において通常用いられる任意の添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、腐食防止剤などを挙げることができる。
【0041】
本発明のエッチング組成物は、酸化膜と窒化膜を含む半導体素子から窒化膜を選択的にエッチング除去するために用いられるものであり、上記窒化膜は、シリコン窒化膜、例えば、SiN膜、SiON膜などを含むことができる。
【0042】
また、酸化膜は、シリコン酸化膜、例えば、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density Plasma)膜、熱酸化(thermal oxide)膜、BPSG(Borophosphate Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate Glass)膜、LPTEOS(Low Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium Temperature oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization Layer)膜、ALD(Atomic Layer Deposition)膜、PE-酸化(Plasma Enhanced oxide)膜、O3-TEOS(O3-Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、及びその組み合わせで構成される群から選択される少なくとも1以上の膜であってもよい。
【0043】
本発明のエッチング組成物を用いるエッチング工程は、ウェットエッチング方法、例えば、浸漬させる方法、噴射する方法などによって行われることができる。
【0044】
本発明のエッチング組成物を用いるエッチング工程の例を
図1及び
図2に概略的に示した。
図1及び
図2は、一例として、フラッシュメモリ素子の素子分離工程を示す工程断面図である。
【0045】
先ず、
図1に示すように、基板10上にトンネル酸化膜11、ポリシリコン膜12、バッファ酸化膜13、及びパッド窒化膜14を順に形成した後、ポリシリコン膜12、バッファ酸化膜13、及びパッド窒化膜14を選択的にエッチングしてトレンチを形成する。続いて、トレンチをギャップフィルするまでSOD酸化膜15を形成した後、パッド窒化膜14を研磨停止膜としてSOD酸化膜15に対してCMP工程を行う。
【0046】
次に、
図2に示すように、リン酸溶液を用いたウェットエッチングによってパッド窒化膜14を除去した後、洗浄工程を介してバッファ酸化膜13を除去する。これにより、フィールド領域に素子分離膜15Aが形成される。
【0047】
エッチング工程におけるプロセス温度は、50~300℃の範囲、好ましくは100~200℃の範囲、より好ましくは156℃~163℃の範囲であってもよく、適正温度は、他の工程とその他の要因を考慮して必要に応じて変更されることができる。
【0048】
このように、本発明のエッチング組成物を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法によると、窒化膜と酸化膜が交互に積層されるか、又は混在する場合、酸化膜に対する窒化膜の選択的エッチングが可能である。また、従来のエッチング工程で問題となったパーティクルの発生を防止し、工程の安定性及び信頼性を確保することができる。
【0049】
したがって、このような方法は、半導体素子の製造工程において酸化膜に対する窒化膜の選択的エッチングが必要ないくつかの過程に効率的に適用されることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の一例を示すものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0051】
[合成例1]
100mLの丸底フラスコにトリエタノールアミン10gを投入し、エタノール30mlを投入した後、撹拌した。
【0052】
N2条件を維持しながら、0℃で冷却した後、酢酸4.1gを徐々に投入した。フラスコの外部温度が90℃になるまで昇温した後、24時間還流反応させた。
【0053】
外部温度が40℃になるように冷却し、減圧蒸留してエタノールをすべて削除した後、12時間追加真空乾燥して、下記式(1)のアンモニウム塩添加剤1を得た。
【化7】
【0054】
1H-NMR(DMSO-d6):5.00(broad、4H)、3.71(t、6H)、2.67(t、6H)、1.98(s、3H)
【0055】
[合成例2]
100mlの丸底フラスコにトリエタノールアミン10gを投入し、アセトニトリル30mlを投入した後、撹拌した。
【0056】
N2条件を維持しながら、0℃で冷却した後、ジメチル硫酸4.3gを徐々に投入した。フラスコの外部温度が90℃になるまで昇温した後、60時間還流反応させた。
【0057】
外部温度が25℃となるように冷却し、アセトニトリル層を除去した後、アセトニトリル30mlを再びフラスコに投入し、洗浄除去した。
【0058】
12時間追加真空乾燥して、下記式(2)のアンモニウム塩添加剤2を得た。
【化8】
【0059】
1H-NMR(DMSO-d6):4.78(broad、3H)、3.81(m、6H)、3.49(t、6H)、3.12(s、3H)
【0060】
[合成例3]
100mlの丸底フラスコにトリイソプロパノールアミン5gを投入し、エタノール30mlを投入した後、撹拌した。
【0061】
0℃で冷却した後、70%硝酸1.65mlを徐々に投入した。フラスコの外部温度が90℃になるまで昇温した後、20時間還流反応させた。
【0062】
外部温度が50℃になるように冷却し、減圧蒸留してエタノールを除去した。濃縮残渣にトルエン50mlを投入し、再び減圧蒸留した後、24時間追加真空乾燥して、下記式(3)のアンモニウム塩添加剤3を得た。
【化9】
【0063】
1H-NMR(DMSO-d6):4.94(broad、4H)、3.78(m、3H)、2.61(m、6H)、1.31(m、9H)
【0064】
[合成例4]
100mlの丸底フラスコにトリイソプロパノールアミン10gを投入し、エタノール30mlを投入した後、撹拌した。
【0065】
0℃で冷却した後、メチルp-トルエンスルホネート9.7gを徐々に投入した。フラスコの外部温度が90℃になるまで昇温した後、24時間還流反応させた。
【0066】
外部温度が50℃になるように冷却し、減圧蒸留してエタノールを除去した。濃縮残渣にアセトン50mlを投入して洗浄した後、再び減圧蒸留し、24時間追加真空乾燥して、下記式(4)のアンモニウム塩添加剤4を得た。
【化10】
【0067】
1H-NMR(DMSO-d6):7.48(d、2H)、7.12(d、2H)、5.05(broad、3H)、3.69(m、3H)、2.59(m、6H)、2.28(s、3H)、1.42(m、9H)
【0068】
実施例1
半導体ウェハ上に500Å(オングストローム)の厚さで蒸着されたシリコン酸化膜(SiOx)、及び5000Åの厚さのシリコン窒化膜(SiN)が形成された基板を設けた。
【0069】
表1に示すように、85%リン酸99.4重量%に3-アミノプロピルシラントリオール0.5重量%、アンモニウム塩添加剤10.1重量%を添加して100重量%になるように混合してエッチング組成物を製造した。
【0070】
実施例2~4
アンモニウム塩添加剤2~4を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でエッチング組成物をそれぞれ製造した。
【0071】
比較例1
アンモニウム塩添加剤を用いていないことを除いては、実施例1と同様の方法でエッチング組成物を製造した。
【0072】
比較例2
アンモニウム塩添加剤として、(NH4)OAc(アンモニウムアセテート)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でエッチング組成物を製造した。
【0073】
<エッチング組成物の製造及び選択比の測定>
実施例1~4及び比較例1で得られたそれぞれのエッチング組成物を丸底フラスコに入れ、60分間加熱して158℃に上昇させた後、上記シリコンウェハを浸漬して、720秒、6000秒浸漬させてエッチング工程を行った。
【0074】
パターンが形成されたシリコンウエハの表面を選択的にエッチングした後、シリコン酸化膜と窒化膜のエッチング前/後の膜質の厚さを薄膜厚さ測定装置(NANO VIEW、SEMG-1000)であるエリプソメトリを用いて測定し、そこからシリコン酸化膜のエッチング速度(SiO E/R、Å)、窒化膜のエッチング速度(SiN E/R、Å)、及び選択比を計算した。その結果を表1に示した。
【0075】
選択比は、酸化膜エッチング速度に対する窒化膜エッチング速度の比を表し、エッチング速度は初期値とエッチング処理後の膜厚の差をエッチング時間(分)で割って算出した値である。
【0076】
【0077】
表1から分かるように、エッチング組成物の添加剤として、アンモニウム塩添加剤1~4を添加したエッチング組成物を適用したとき、比較例1に比べてエッチング選択比が著しく高く示されることが分かる。また、シリコン窒化膜のエッチング速度(SiN E/R)の面からも、比較例1のエッチング組成物に比べて著しく優れた効果を示し、シリコン窒化膜のエッチング工程に最適化されたエッチング組成物を提供することができることを確認した。
【0078】
かかる結果から、本発明で提供するアンモニウム塩を添加剤として用いる場合には、活性シリコン系構造安定性を向上させる結果が確認できる。これにより、シリコン窒化膜のエッチング速度、エッチング選択比、及びエッチングの安定性を向上させ、エッチング工程の効率を向上させることができるエッチング組成物を提供することができることが確認された。
【0079】
エッチング組成物の経時変化の確認
上記比較例1及び実施例1のエッチング組成物を約70℃で一定期間保管した後、上記エッチング組成物に対して7日毎に同一の条件で再びエッチングテストを行い、その結果を表2に示した。
【0080】
【0081】
上記表2から分かるように、21日後に、比較例1の上記エッチング組成物は、エッチング速度(SiN E/R)及び選択比が大幅に減少する結果を示した。これに対し、アンモニウム塩添加剤1を添加した実施例1の上記エッチング組成物は、エッチング速度(SiN E/R)及び選択比がほとんど変化しない結果を示すことが分かる。上記の結果から、本発明の一例によるエッチング組成物は、エッチング速度及び選択比に優れることは言うまでもなく、保管安定性に優れるため、長期保管時にも優れたエッチング特性を維持することができることが分かる。
【0082】
上記の結果は、アンモニウム塩添加剤1の構造的安定性の効果により、3-アミノプロピルシラントリオール間の分解又は異常成長のような現象の発生なしに、シリコン酸化膜に対するエッチング抑制の役割を維持することができることを示す。