(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】吐水装置および吐水システム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/20 20060101AFI20240927BHJP
E03C 1/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A47K3/20
E03C1/04
(21)【出願番号】P 2020151553
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】森 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209142(JP,A)
【文献】特開2018-161220(JP,A)
【文献】特開2009-125290(JP,A)
【文献】特開2010-220723(JP,A)
【文献】特開2008-43464(JP,A)
【文献】特開平9-103381(JP,A)
【文献】特開平3-77556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
A47K 3/20 - 3/40
E03C 1/04 - 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴流を
槽体内に吐水する噴流吐水部と、
前記噴流の上方を通るシャワー流を
前記槽体内に吐水するシャワー流吐水部と、を備え、
前記シャワー流吐水部のすべての吐水孔は、前記噴流吐水部の吐水孔よりも上方に位置
し、
前記噴流吐水部の前記吐水孔は、前記槽体の上面よりも高い位置に設けられる吐水装置。
【請求項2】
正面視において、前記噴流の吐水範囲は、前記シャワー流の吐水範囲内に収まる請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記噴流吐水部は、当該噴流吐水部の前記吐水孔を飛び出るときの流れ方向および流量の少なくとも一方が時間的に変化するように前記噴流を吐水する請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記噴流吐水部の吐水方向は、前記シャワー流吐水部の吐水方向よりも下向きである請求項1から3のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項5】
平面視において、前記シャワー流吐水部の複数のシャワー吐水孔は、吐水方向に直交する水平方向に連続して存在している請求項1から4のいずれかに記載の吐水装置。
【請求項6】
槽体と、
前記槽体内に吐水する請求項1から5のいずれかに記載の吐水装置と、
を備える吐水システム。
【請求項7】
前記吐水装置は、前記槽体内の水を取り込んで前記槽体内に吐水する請求項6に記載の吐水システム。
【請求項8】
槽体と、
前記槽体に固定される吐水装置と、を備え、
前記吐水装置は、
噴流を前記槽体内に吐水する噴流吐水部と、
前記噴流の上方を通るシャワー流を前記槽体内に吐水するシャワー流吐水部と、
を含
み、
前記噴流吐水部の吐水孔は、前記槽体の上面よりも高い位置に設けられる吐水システム。
【請求項9】
槽体と、
前記槽体内の水を取り込んで前記槽体内に吐水する吐水装置と、を備え、
前記吐水装置は、
噴流を前記槽体内に吐水する噴流吐水部と、
前記噴流の上方を通るシャワー流を前記槽体内に吐水するシャワー流吐水部と、
を含
み、
前記噴流吐水部の吐水孔は、前記槽体の上面よりも高い位置に設けられる吐水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐水装置および吐水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴者に対するマッサージ等を目的として、水流を吐水する吐水装置が知られている。例えば、噴流を吐水する吐水部と、環状の膜状流を吐水する吐水部とを備える吐水装置が提案されている(特許文献1)。この吐水装置では、環状の膜状水で噴流を囲むことで、噴流の飛沫の飛散を抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、膜状流は環状である。環状の膜状流は、表面張力の影響によって吐水部から離れるにつれてすぼまり、内側の噴流と早期に合流する。このため、噴流を浴びる吐水部からの距離によっては、噴流の飛沫の飛散を抑止できない。
【0005】
本開示はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、より確実に噴流の飛沫の飛散を抑止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の吐水装置は、噴流を吐水する噴流吐水部と、噴流の上方を通るシャワー流を吐水するシャワー流吐水部と、を備える。シャワー流吐水部のすべての吐水口は、噴流吐水部の吐水口よりも上方に位置する。
【0007】
本開示の別の態様は、吐水システムである。この吐水システムは、槽体と、槽体内に吐水する上述の吐水装置と、を備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、吐水システムである。この吐水システムは、槽体と、槽体に固定される吐水装置と、を備える。吐水装置は、噴流を槽体内に吐水する噴流吐水部と、噴流の上方を通るシャワー流を槽体内に吐水するシャワー流吐水部と、を含む。
【0009】
本開示のさらに別の態様も吐水システムである。この吐水システムは、槽体と、槽体内の水を取り込んで槽体内に吐水する吐水装置と、を備える。吐水装置は、噴流を槽体内に吐水する噴流吐水部と、噴流の上方を通るシャワー流を槽体内に吐水するシャワー流吐水部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る吐水システムの構成図である。
【
図2】実施の形態に係る吐水システムの構成図である。
【
図3】
図1の吐水装置を周辺構造とともに示す模式的な正面図である。
【
図4】
図1の吐水装置を周辺構造とともに示す模式的な平面図である。
【
図5】
図1の吐水装置の各吐水部の吐水方向を示す図である。
【
図7】
図6の吐水装置を周辺構造とともに示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
図1、
図2を参照する。
図1は吐水装置10の模式的な側面図でもある。
図2は吐水装置10の模式的な正面図でもある。吐水システム18は、衛生設備12に用いられる。本実施の形態では、衛生設備12は浴室設備である。
【0013】
吐水システム18は、吐水装置10と、吐水装置10から吐水された水を受けることが可能な槽体20と、槽体20から吐水装置10に水を供給する給水路22と、給水路22の途中に設けられる弁装置24およびポンプ26と、弁装置24およびポンプ26を制御する制御装置28と、を備える。
【0014】
以降、説明の便宜上、吐水装置10の吐水方向に沿った水平方向を前後方向X、前後方向Xに直交する水平方向を左右方向Y、前後方向Xおよび左右方向Yに直交する方向を上下方向Zという。吐水孔38,40側から吐水装置10を前後方向Xに見て、手前側(すなわち吐水孔38,40側)を前側、奥側を後ろ側という。このような方向の表記は吐水装置10の使用姿勢を制限するものではなく、吐水装置10は用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0015】
槽体20は、浴室設備の浴槽である。吐水装置10には、槽体20内の水(不図示)が給水路22を介して供給される。
【0016】
給水路22は、弁装置24より上流側に設けられる上流側水路22aと、弁装置24より下流側に設けられる第1下流側水路22bおよび第2下流側水路22cと、を含む。上流側水路22aの途中には、ポンプ26が設けられる。第1下流側水路22bは、吐水装置10の噴流吐水部50(後述)に水を供給するための水路であり、上流側は弁装置24に連通し、下流側は噴流吐水部50に連通する。第2下流側水路22cは、シャワー流吐水部52(後述)に水を供給するための水路であり、上流側は弁装置24に連通し、下流側はシャワー流吐水部52に連通する。
【0017】
弁装置24は、第1下流側水路22bおよび第2下流側水路22cのそれぞれと上流側水路22aとの連通の有無を切り替え可能である。弁装置24は、例えば、多方弁等の切替弁や複数の開閉弁を用いて構成される。
【0018】
弁装置24は、制御装置28による制御または手動操作を通じて、第1下流側水路22bおよび第2下流側水路22cの両方と上流側水路22aとを連通する。このとき、ポンプ26によって槽体20内の水を吸引して圧送することで、噴流吐水部50およびシャワー流吐水部52に水が供給される。これにより、噴流吐水部50から噴流F1が吐水されるとともに、シャワー流吐水部52からシャワー流F2が吐水される。
【0019】
吐水装置10は、筐体32と、筐体32の内部に形成される噴流吐水部50およびシャワー流吐水部52と、を備える。筐体32は、衛生設備12のベース30に固定される。本実施の形態では、槽体20の上面開口部の周縁部に設けられる槽体20のフランジ部がベース30を構成する。筐体32は、不図示の固定構造、例えばねじ構造や爪と爪受け等を用いてベース30に固定される。
【0020】
噴流吐水部50は、第1下流側水路22bと連通する2つの噴流水路34と、2つの噴流水路34の下流側に設けられる噴流吐水孔38と、を含む。噴流水路34および噴流吐水孔38の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0021】
シャワー流吐水部52は、第2下流側水路22cと連通するシャワー水路36と、シャワー水路36の下流側に設けられる複数のシャワー吐水孔40と、を含む。シャワー水路36の数は特に限定されず、2つ以上であってもよい。
【0022】
本実施形態では、噴流水路34およびシャワー水路36には、鉛直下方から水が供給される。
【0023】
噴流吐水部50の2つの噴流吐水孔38は、筐体32の前面部に開口する。噴流吐水孔38は、正面視において(すなわち前後方向Xに前側から見て)、左右方向Xを長手方向とし、上下方向Zを短手方向とする長方形状である。噴流吐水孔38は例えば、左右方向Yの長さが32mm、上下方向Zの長さが8mmである。2つの噴流吐水孔38は、左右方向Yに間隔をあけて設けられる。
【0024】
シャワー流吐水部52の複数のシャワー吐水孔40は、筐体32の前面部に開口する。複数のシャワー吐水孔40の分布範囲Rの形状は、特に限定しない。左右方向Xを長手方向とし、上下方向Zを短手方向とする長方形状である。すなわち、複数のシャワー吐水孔40は、左右方向Yを長手方向とする帯状に配置される。複数のシャワー吐水孔40の分布範囲Rは、すべてのシャワー吐水孔40が収まる最小の長方形状で表されてもよい。複数のシャワー吐水孔40は、同一直径の円形状である。複数のシャワー吐水孔40は、例えば0.3~2.5mmの範囲の直径を有する。
【0025】
複数のシャワー吐水孔40はすべて、2つの噴流吐水孔38よりも上方に設けられる。2つの噴流吐水孔38はそれぞれ、少なくとも1つのシャワー吐水孔40と上下に重なる位置に設けられる。すなわち、2つの噴流吐水孔38はそれぞれ、少なくとも一部がシャワー吐水孔40の分布範囲Rと上下に重なる位置に設けられる。
【0026】
この例では、2つの噴流吐水孔38はそれぞれ、その全体がシャワー吐水孔40と上下に重なる位置に設けられる。すなわち、2つの噴流吐水孔38はそれぞれ、その全体がシャワー吐水孔40の分布範囲Rと上下に重なる位置に設けられる。言い換えると、2つの噴流吐水孔38はそれぞれ、平面視(すなわち視点Qから上下方向Zの下向きに見た場合)において、シャワー吐水孔40の分布範囲Rの内側に収まる位置に設けられる。
【0027】
図1、
図3、
図4を参照する。噴流吐水部50は、第1下流側水路22bから噴流水路34に供給される水を、2つの噴流吐水孔38のそれぞれから噴流F1として吐水する。噴流吐水部50は、流れ方向や流量が時間的に一定となるように噴流F1を吐水する。ここでは噴流吐水部50は、ユーザの肩に当たるように噴流F1を吐水する。各図には、噴流F1の吐水範囲が示される。2つの噴流吐水孔38から吐水される噴流F1は、前側に向かうほど互いに近づいている。
【0028】
ここで「噴流」は、「(i)周囲の水流と比較して太い、具体的には直径が2倍以上である水流」および「(ii)周囲の水流と近接していない、具体的には着水地点に同心円状に広がる水膜が周囲の水流のそれと重ならない水流」の少なくとも一方を満たす水流であって、ユーザの身体に当たったときに単体での刺激感を知覚させる水流をいう。
【0029】
シャワー流吐水部52は、第2下流側水路22cからシャワー水路36に供給される水を、複数のシャワー吐水孔40からシャワー流F2として吐水する。シャワー流吐水部52は、流量が時間的に一定となるようにシャワー流F2を吐水する。シャワー流吐水部52は、噴流F1の上方を通るようにシャワー流F2を吐水する。ここでは、シャワー流吐水部52は、ユーザの首に当たるようにシャワー流F2を吐水する。各図には、シャワー流F2の吐水範囲が示される。この例では、シャワー流F2に噴流F1が衝突している(範囲S1参照)。
【0030】
ここで「シャワー流」は、太さが同一の複数の水流の集まりであって、一本一本の水流の浴び心地知覚できないほど近接している複数の水流、具体的には着水地点に同心円状に広がる水膜が当該複数の水流のうちのいずれかの水流のそれと重なり合う複数の水流の集まりをいう。
【0031】
シャワー流F2は、側面視において(すなわち左右方向Yに見て)、シャワー吐水孔40から離れるにつれて下方に向かう放物線状をなすように吐水される。この例において噴流F1は、側面視において、シャワー流F2が描く放物線より緩やかな放物線状をなすように吐水される。噴流F1は、直線状をなすように噴流吐水部50から吐水されてもよい。この例においてシャワー流F2は、側面視において、噴流F1と合流するまでは噴流F1の上方のみを通るようにシャワー流吐水部52から吐水される。シャワー流F2は、槽体20内の水により受けられるまでは噴流F1の上方のみを通るようにシャワー流吐水部52から吐水されてもよい。
【0032】
以上が吐水システム18の基本構成である。続いて、その効果を説明する。
【0033】
噴流だけでは肩全体に広がらないため温浴効果が乏しく、シャワー流だけでは刺激感が弱いためマッサージ効果が乏しい。これに対し本実施の形態によれば、勢いが強い噴流F1と、幅広であるシャワー流F2とを同時にユーザに浴びせることができる。これにより、刺激感を与えつつ、広い範囲を温めることができる。例えば、噴流F1を肩に当てて肩をマッサージしつつ、シャワー流F2を首や肩に当てて広い範囲で温めることができる。
【0034】
水流がユーザなどの物体と衝突すると飛沫が生じる。シャワー流F2は、一本一本の水流が細いため、生じる飛沫は小さくかつ勢いも弱いため、その飛沫が例えばユーザの顔に飛散しても、ユーザに与える不快感は小さい、あるいはユーザに不快感を与えない。噴流F1は、水流が太いすなわち流量が多いため、生じる飛沫は大きくかつ勢いも強いため、その飛沫が例えばユーザの顔に飛散すると、ユーザに不快感を与える。これに対し本実施の形態では、シャワー流F2がカーテンのように機能して噴流F1の飛沫が遮られる。つまり、噴流F1の飛沫の飛散範囲が制限される。
【0035】
具体的には、シャワー水路36はユーザの首に当たるようにシャワー流F2を吐水し、噴流水路34はユーザの肩に当たるように噴流F1を吐水する。したがって、噴流F1とユーザの肩との衝突によって大きくて勢いの強い飛沫が生じるものの、シャワー流F2によってシャワー流F2よりも上方への噴流F1の飛沫の飛散が制限され、例えばユーザの顔への飛沫の飛散を抑止できる。つまり、顔に近い身体部位である肩に噴流F1を浴びせつつも、それによって生じた大きくて勢いの強い飛沫がユーザの顔に飛散するのをシャワー流F2によって抑止できる。
【0036】
噴流F1の上方を通る膜状流を吐水し、この膜状流によって噴流F1による飛沫の飛散を抑止することも考えられる。膜状流を吐水する場合は、左右方向Yに長いスリット状の吐水孔から吐水することになる。スリット状の吐水孔は、一般に長手方向における中央の強度が弱く、水圧によって中央のスリット幅が広がるなどの変形が生じやすい。あらかじめスリット幅(すなわち上下方向Zの幅)を広くしておけば、変形を避けられる。スリット幅が広くなると、その分、流量が多くなるため、高価なハイパワーのポンプ26が必要となり、吐水システム18は高価になる。
【0037】
これに対し、本実施の形態では、シャワー流F2によって噴流F1による飛沫の飛散を抑止する。シャワー流F2の複数のシャワー吐水孔40のそれぞれは、小さな孔であるため、強度は強く、変形は生じにくい。したがって、シャワー吐水孔40の上下方向Zの幅すなわち直径を小さくでき、その分、流量が少なくなるため、安価なローパワーのポンプ26で足りるため、吐水システム18は安価になる。
【0038】
シャワー流F2では、環状の膜状流のように表面張力の影響によって早期に噴流F1と合流してしまうことは生じ得ない。
【0039】
次に、吐水システム18の他の特徴的な構成を説明する。
【0040】
図3を参照する。正面視において、噴流F1の吐水範囲はシャワー流F2の吐水範囲内に収まる。言い換えると、正面視において、噴流F1の吐水範囲はシャワー流F2の吐水範囲からはみ出ない。これは例えば、平面視において、2つの噴流吐水孔38がシャワー吐水孔40の分布範囲Rの内側に収まる位置に設けられることで実現される。
【0041】
噴流F1の吐水範囲は、噴流吐水部50を飛び出てからユーザなどの物体、シャワー流F2、および固定構造物のいずれかに当たるまでの間に噴流F1が通る範囲をいい、噴流F1が描く軌跡により表される。シャワー流F2の吐水範囲は、シャワー流吐水部52を飛び出てからユーザなどの物体および固定構造物のいずれかに当たるまでの間にシャワー流F2が通る範囲をいい、シャワー流F2が描く軌跡により表される。「固定構造物」は、噴流F1およびシャワー流F2の周囲にある構造物をいい、本実施形態では槽体20である。
【0042】
噴流F1の吐水範囲がシャワー流F2の吐水範囲内に収まることで、噴流F1の飛沫の前方や上方への飛散をより確実に抑止できる。
【0043】
図5を参照する。噴流吐水部50の吐水方向D1は、シャワー流吐水部52の吐水方向D2よりも下向きに設定される。吐水方向D1は、噴流吐水部50の噴流吐水孔38の中心線CL1に沿った方向をいう。吐水方向D2は、シャワー流吐水部52のシャワー吐水孔40の中心線CL2に沿った方向をいう。
【0044】
噴流F1は、シャワー流F2より勢いが強くなりやすいため、シャワー流F2よりも直線的に飛びやすい。このため、吐水方向D1と吐水方向D2を平行にした場合、噴流F1は、放物線状のシャワー流F2に対して噴流吐水部50に近い箇所P1で衝突しうる(二点鎖線の噴流F1)。
【0045】
これに対し本実施形態では、吐水方向D1は吐水方向D2よりも下向きであるため、放物線状のシャワー流F2に対して噴流水路34に近い箇所P1で噴流F1が衝突する事態を避けられる。これにより、噴流吐水部50から遠い箇所まで噴流F1を届かせることができ、噴流F1を直接に浴びられる範囲を広くできる。この例では、噴流吐水部50から遠い箇所P2で噴流F1をシャワー流F2に衝突させている。槽体20内の水により噴流F1を受けさせてもよい。
【0046】
図2、3を参照する。シャワー流吐水部52の複数のシャワー吐水孔40は、平面視(すなわち視点Qから上下方向Zの下向きに見た場合)において左右方向Yに隙間無く設けられる。言い換えると、複数のシャワー吐水孔40は、平面視において、左右方向Yに連続して存在している。複数のシャワー吐水孔40は、特に限定しないが本実施の形態では、上下2列に並ぶように設けられている。この例では、各列の複数のシャワー吐水孔40は、左右方向Yに等間隔に並んでいる。上の列の複数のシャワー吐水孔40と下の列のシャワー吐水孔40とは、シャワー吐水孔40ひとつ分だけ左右方向Yにずれている。上の列のシャワー吐水孔40と下の列のシャワー吐水孔40とは、上下に重なるように設けられてもよい。
【0047】
これらの場合、平面視において、シャワー流F2を構成する複数本の水流は左右方向Yに隙間無く並び、シャワー流F2は膜状を呈する。これにより、そうではない場合と比べて、シャワー流F2はより確実に噴流F1の飛沫の飛散を抑止できる。
【0048】
以上、本開示について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0049】
(変形例1)
実施の形態とは異なり、噴流吐水部50は、流れ方向が時間的に変化するように噴流F1を吐水してもよい。
【0050】
図6、
図7を参照する。本変形例では、噴流吐水部50は流体素子44をさらに備える。流体素子44の内部の流路は噴流水路34の一部を構成し、当該流路の下流側端部は噴流吐水孔38を構成する。
【0051】
流体素子44は、吐水装置10全体の向きを変えることなく、噴流吐水孔38から飛び出るときの流れ方向が時間的に変化するように噴流F1を吐水する。
【0052】
例えば流体素子44は、
図7の例では、噴流吐水孔38から飛び出るときの流れ方向を左右方向Yに揺動させるように時間的に変化させる。この場合、噴流吐水部50から波状の噴流F1が放射状に吐水される。
図7では波状の噴流F1の吐水範囲S3を一点鎖線で示す。
【0053】
例えば流体素子44は、所定の軸線に沿った軸方向の速度成分と軸線に直交する径方向の速度成分を有する噴流であって、径方向の速度成分が軸線周りに回転するよう時間的に変化する噴流を吐水するものであってもよい。この場合、噴流吐水部50から螺旋状の噴流F1が放射状に吐水される。
【0054】
流体素子44の具体例は特に限定されない。例えば流体素子44は、特表2008-517762号公報に記載されるように、内部の合流室内で一対の水流を衝突させることで噴流F1の流れ方向を揺動するものであってもよい。例えば流体素子44は、カルマン渦を利用して噴流F1の流れ方向を揺動するものであってもよいし、コアンダ効果を利用して噴流F1の流れ方向を揺動するものであってもよい。
【0055】
噴流F1の流れ方向が時間的に変化する場合、噴流F1を浴びる箇所は経時的に変化するため、流れ方向が時間的に一定の場合と比べて噴流F1を浴びた箇所に形成される水膜が薄くなり、飛沫が生じやすい。このような状況のもとでも、シャワー流F2により、噴流F1による飛沫の飛散を抑止できる。
【0056】
噴流F1の流れ方向が時間的に変化する場合、流れ方向が時間的に一定の場合と比べて噴流F1の吐水範囲が広くなる。このような場合でも、噴流F1の吐水範囲がシャワー流F2の吐水範囲内に収まることで、噴流F1による飛沫の飛散を効果的に抑止できる。
【0057】
(変形例2)
実施の形態とは異なり、噴流吐水部50は、流量が時間的に変化するように噴流F1を吐水してもよい。
【0058】
例えば、噴流吐水部50が気泡供給部をさらに備え、当該気泡供給部が噴流水路34を流れる水に断続的に気泡を供給することで、噴流F1の流れ方向に向かって流量の少ない領域と流量の多い領域を形成してもよい。
【0059】
例えば、噴流吐水部50は、噴流吐水孔38から飛び出るときの流量がゼロと正の値との間で時間的に変化するように噴流F1を吐水してもよい。つまり、噴流吐水部50は、噴流F1を断続的に吐水してもよい。これは例えば、噴流水路34の下流側端部に複数の噴流吐水孔38を設け、噴流水路34に配置した羽根車により複数の噴流吐水孔38を開閉することで実現できる。
【0060】
噴流F1の流量が時間的に変化する場合、噴流F1を浴びる箇所に形成される水膜の厚みが経時的に変化する。このため、水膜の厚みが薄くなったタイミングで大流量の噴流F1を浴びると、飛沫が生じやすい。このような状況のもとでも、シャワー流F2により、噴流F1による飛沫の飛散を抑止できる。
【0061】
(変形例3)
実施の形態とは異なり、少なくとも1つのシャワー吐水孔40の直径が他のシャワー孔の直径と異なっていてもよい。
【0062】
複数のシャワー吐水孔40の形状は、円形状に限定されず、例えば多角形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。複数のシャワー吐水孔40は、すべてが同一の形状でなくてもよく、円形状のシャワー吐水孔40と多角形状のシャワー吐水孔40が混在していてもよい。
【0063】
(変形例4)
実施の形態とは異なり、シャワー流吐水部52の複数のシャワー吐水孔40のうちの少なくとも1つは、噴流吐水部50の噴流吐水孔38と同じ高さか噴流吐水孔38よりも下方に設けられてもよい。例えば、複数のシャワー吐水孔40の分布範囲Rの両端が、噴流吐水孔38と同じ高さか噴流吐水孔38よりも下方に位置してもよい。
【0064】
(変形例5)
噴流F1の吐水範囲の一部は、正面視において、シャワー流F2の吐水範囲外にはみ出てもよい。
【0065】
(変形例6)
実施の形態では、2つの噴流吐水孔38がそれぞれ少なくとも1つのシャワー吐水孔40と上下に重なる位置に設けられる場合について、すなわち2つの噴流吐水孔38がそれぞれ少なくとも一部がシャワー吐水孔40の分布範囲Rと上下に重なる位置に設けられる場合について説明した。しかしながら、これには限定されず、正面視において、噴流F1の吐水範囲とシャワー流F2の吐水範囲が少なくとも部分的に重なっていればよく、2つの噴流吐水孔38はそれぞれ、いずれのシャワー吐水孔40とも上下に重ならない位置、すなわちシャワー吐水孔40の分布範囲Rと上下に重ならない位置に設けられてもよい。
【0066】
(変形例7)
噴流吐水部50の吐水方向D1は、シャワー流吐水部52の吐水方向D2と平行であってもよいし、吐水方向D2より上向きであってもよい。
【0067】
(変形例8)
実施の形態とは異なり、槽体20は、浴槽とは別に設けられてもよい。
【0068】
実施の形態とは異なり、ベース30は、槽体20の上面開口部より下方に設けられる槽体20の内周壁部によって構成されてもよいし、衛生設備12の壁体16によって構成されてもよい。つまり、吐水装置10は浴槽14の内周壁部や壁体16に固定されてもよい。
【0069】
実施の形態とは異なり、衛生設備12は、例えば、キッチン設備、洗面設備、トイレ設備などであってもよい。この場合、槽体20は、例えば、キッチンシンク、手洗シンクなどであってもよい。この場合、ベース30は、キッチンシンクや手洗いシンクのフランジ部であってもよいし、室内空間を区画する壁体であってもよい。
【0070】
実施の形態とは異なり、噴流吐水部50とシャワー流吐水部52は別々の筐体に収容されてもよい。
【0071】
実施の形態とは異なり、吐水システム18は、弁装置24を備えなくてもよい。
【0072】
実施の形態とは異なり、吐水装置10は、例えば、シャワー装置、水栓装置などとして構成されてもよい。
【0073】
(変形例9)
弁装置24は、第1下流側水路22bと上流側水路22aを連通し、第2下流側水路22cと上流側水路22aの連通を遮断することが可能であってもよい。この場合、吐水装置10は、噴流F1のみを吐水する。弁装置24は、第2下流側水路22cと上流側水路22aを連通し、第1下流側水路22bと上流側水路22aの連通を遮断することが可能であってもよい。この場合、吐水装置10は、シャワー流F2のみを吐水する。
【0074】
つまり、吐水装置10は、噴流F1のみを吐水するモード、シャワー流F2のみを吐水するモード、および噴流F1およびシャワー流F2を同時に吐水するモード、の3つの吐水モードを実行可能であってもよい。
【0075】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本開示を説明した。実施の形態は、本開示の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0076】
F1 噴流、F2 シャワー流、10 吐水装置、34 噴流水路、36 シャワー水路。