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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】吐出ポンプ及びポンプ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65D47/34 200
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020163027
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022041788
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020145447
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172313(JP,A)
【文献】特開2012-051613(JP,A)
【文献】特開2019-043607(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062236(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0134798(US,A1)
【文献】実開昭63-007660(JP,U)
【文献】特開2022-013549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、
前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有する吐出口部と、
前記吐出口部を保持し、前記口部の軸方向に沿って前記容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられる吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドの押下動作に伴い前記内容物を前記吐出口側に送出するポンプ機構と、
前記吐出ヘッドに対して所定の向きに取り付けられた状態で前記吐出口から前記軸方向に所定の距離離間し、且つ、前記吐出口に対して前記軸方向上方が開口する枠状部を含む吐出ヘッドカバーと、
を備え、
前記吐出ヘッドカバーが前記所定の向きに取り付けられた状態で前記枠状部を前記軸方向に沿って前記容器本体側に押下することにより、前記吐出ヘッドが押下され、前記吐出口から前記開口の内側を通過して前記枠状部の外部に吐出されるよう構成され
前記吐出ヘッドカバーは前記吐出ヘッドから脱着可能であり、
前記所定の向きとは軸方向において逆の向きであり、且つ、前記枠状部が前記容器本体に当接するように前記吐出ヘッドカバーを前記吐出ヘッドに取り付け可能である吐出ポンプ。
【請求項2】
内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、
前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有する吐出口部と、
前記吐出口部を保持し、前記口部の軸方向に沿って前記容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられる吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドの押下動作に伴い前記内容物を前記吐出口側に送出するポンプ機構と、
前記吐出ヘッドに対して所定の向きに取り付けられた状態で前記吐出口から前記軸方向に所定の距離離間し、且つ、前記吐出口に対して前記軸方向上方が開口する枠状部を含む吐出ヘッドカバーと、
を備え、
前記吐出ヘッドカバーが前記所定の向きに取り付けられた状態で前記枠状部を前記軸方向に沿って前記容器本体側に押下することにより、前記吐出ヘッドが押下され、前記吐出口から前記開口の内側を通過して前記枠状部の外部に吐出されるよう構成され
前記吐出ヘッドカバーは、前記枠状部が前記軸方向と同軸になるようにして前記所定の向きに配置される第一姿勢と、前記枠状部が前記軸方向と交差する向きとなる第二姿勢とに変位可能に前記吐出ヘッドに取り付けられ、
前記第二姿勢のとき、当該吐出ヘッドカバーの変位に伴って前記吐出口も前記軸方向と交差する向きに変位され、当該吐出ヘッドカバーの一部を前記軸方向に沿って前記容器本体側に押下することにより、前記吐出ヘッドが押下される吐出ポンプ。
【請求項3】
前記吐出ヘッドは、前記吐出口部が前記第一姿勢に応じた第一位置から、前記第二姿勢に応じた第二位置への移動を案内する案内溝を有し、
前記吐出口部は前記枠状部を前記第一姿勢から前記第二姿勢に変位させることで、前記案内溝に案内され、前記第一位置から前記第二位置へ移動する請求項2に記載の吐出ポンプ。
【請求項4】
前記吐出ヘッドは、前記吐出口部を前記第一位置で保持する第一保持部と、前記吐出口部を前記第二位置で保持する第二保持部とを有する請求項3に記載の吐出ポンプ。
【請求項5】
前記吐出ヘッドカバーは前記吐出ヘッドから脱着可能であり
記所定の向きとは軸方向において逆の向きであり、且つ、前記枠状部が前記容器本体に当接するように前記吐出ヘッドカバーを前記吐出ヘッドに取り付け可能である請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の吐出ポンプ。
【請求項6】
前記枠状部の押下面に、複数の凸部を備える請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の吐出ポンプ。
【請求項7】
前記吐出ヘッドカバーは、
前記所定の向きに取り付けられた状態で前記枠状部が前記吐出口に対して軸方向上方に所定の距離離間するように支持する支持部と、
前記支持部に設けられる開口部と、
を備える請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の吐出ポンプ。
【請求項8】
前記ポンプ機構と前記吐出口部とは蛇腹状の伸縮可能な連結チューブにより連結される請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の吐出ポンプ。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の吐出ポンプと、容器本体とを備えたポンプ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内に収容された内容物をポンプ機構により吐出する吐出ポンプ及びポンプ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、感染症予防又は感染症拡大対策として、手指の消毒が求められている。例えば、事業所、店舗、病院、公共施設等、各種施設の入口には消毒用アルコール等の消毒液が配置され、来訪者に手指の消毒を促している。消毒液は、例えば、特許文献1に開示されるような吐出ポンプを備えたポンプ容器に収容される。当該吐出ポンプは、内容物が吐出されるノズルを有するノズルヘッドと、ポンプ機構とを有し、ノズルヘッドを手のひらなどで押下するといった簡易な操作で、ポンプ機構が作動し、容器本体に収容された内容物が吸引されて所定量の消毒液がノズルから吐出させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-81592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種施設の入口等に配置された消毒液は、不特定多数の来訪者が使用する。ノズルヘッドは手指を消毒する前に押下操作されるため、ノズルヘッドにはウィルスや細菌等が付着するおそれがある。来訪者はノズルヘッドを押下操作した後に手指を消毒するため、ノズルヘッドに触れることで手指に付着したウィルスは除去、除菌される。しかしながら、ノズルヘッドと手のひら等の接触面積は比較的大きく、不特定多数の来訪者が触れるため、不衛生な印象を受ける場合がある。また、本来であれば使用の都度ノズルヘッドも消毒、除菌等されることが好ましい。さらに、これらの施設ではドアノブや手すりなどの手指が触れる箇所の定期的な消毒、除菌が求められる。そのような場合に、例えば、ペーパータオル等に容器から吐出された消毒液を簡易に染み込ませることができたり、消毒箇所等に消毒液を直接噴出させるなどスプレーとして使用することができればより好ましい。
【0005】
そこで、本発明の課題は、簡易に操作することができ、且つ、押下操作部を衛生的に保持することが容易な吐出ポンプ及びポンプ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有する吐出口部と、前記吐出口部を保持し、前記口部の軸方向に沿って前記容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられる吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの押下動作に伴い前記内容物を前記吐出口側に送出するポンプ機構と、前記吐出ヘッドに対して所定の向きに取り付けられた状態で前記吐出口から前記軸方向に所定の距離離間し、且つ、前記吐出口に対して前記軸方向上方が開口する枠状部を含む吐出ヘッドカバーと、を備え、前記吐出ヘッドカバーが前記所定の向きに取り付けられた状態で前記枠状部を前記軸方向に沿って前記容器本体側に押下することにより、前記吐出ヘッドが押下され、前記吐出口から前記開口の内側を通過して前記枠状部の外部に吐出されるよう構成され、前記吐出ヘッドカバーは前記吐出ヘッドから脱着可能であり、前記所定の向きとは軸方向において逆の向きであり、且つ、前記枠状部が前記容器本体に当接するように前記吐出ヘッドカバーを前記吐出ヘッドに取り付け可能であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、前記内容物を外部に吐出するための吐出口を有する吐出口部と、前記吐出口部を保持し、前記口部の軸方向に沿って前記容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられる吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの押下動作に伴い前記内容物を前記吐出口側に送出するポンプ機構と、前記吐出ヘッドに対して所定の向きに取り付けられた状態で前記吐出口から前記軸方向に所定の距離離間し、且つ、前記吐出口に対して前記軸方向上方が開口する枠状部を含む吐出ヘッドカバーと、を備え、前記吐出ヘッドカバーが前記所定の向きに取り付けられた状態で前記枠状部を前記軸方向に沿って前記容器本体側に押下することにより、前記吐出ヘッドが押下され、前記吐出口から前記開口の内側を通過して前記枠状部の外部に吐出されるよう構成され、前記吐出ヘッドカバーは、前記枠状部が前記軸方向と同軸になるようにして前記所定の向きに配置される第一姿勢と、前記枠状部が前記軸方向と交差する向きとなる第二姿勢とに変位可能に前記吐出ヘッドに取り付けられ、前記第二姿勢のとき、当該吐出ヘッドカバーの変位に伴って前記吐出口も前記軸方向と交差する向きに変位され、当該吐出ヘッドカバーの一部を前記軸方向に沿って前記容器本体側に押下することにより、前記吐出ヘッドが押下されることを特徴とする
【0008】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記吐出ヘッドは、前記吐出口部が前記第一姿勢に応じた第一位置から、前記第二姿勢に応じた第二位置への移動を案内する案内溝を有し、前記吐出口部は前記枠状部を前記第一姿勢から前記第二姿勢に変位させることで、前記案内溝に案内され、前記第一位置から前記第二位置へ移動することが好ましい。
【0009】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記吐出ヘッドは、前記吐出口部を前記第一位置で保持する第一保持部と、前記吐出口部を前記第二位置で保持する第二保持部とを有することが好ましい。
【0010】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記吐出ヘッドカバーは前記吐出ヘッドから脱着可能であり、前記所定の向きとは軸方向において逆の向きであり、且つ、前記枠状部が前記容器本体に当接するように前記吐出ヘッドカバーを前記吐出ヘッドに取り付け可能であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る吐出ポンプは、前記枠状部の押下面に、複数の凸部を備えることが好ましい。
【0012】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記吐出ヘッドカバーは、前記所定の向きに取り付けられた状態で前記枠状部が前記吐出口に対して軸方向上方に所定の距離離間するように支持する支持部と、前記支持部に設けられる開口部と、を備えることが好ましい。
【0013】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記ポンプ機構と前記吐出口部とは蛇腹状の伸縮可能な連結チューブにより連結されることが好ましい。
【0014】
本発明に係るポンプ容器は、吐出ポンプと、容器本体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、内容物を外部に吐出するための吐出口を有する吐出口部と、前記口部の軸方向に沿って容器本体側に押下可能に前記装着部に設けられる吐出ヘッドと、吐出ヘッドの押下動作に伴い内容物を吐出口側に送出するポンプ機構と、を備えている。吐出ヘッドには、軸方向において吐出口から軸方向に所定の距離離間し、且つ、吐出口に対して軸方向上方が開口する枠状部を含む吐出ヘッドカバーが取り付けられている。この枠状部を軸方向に沿って押下することにより、吐出ヘッドが押下され、吐出口から開口の内側を通過して枠状部の外部に内容物が吐出される。そのため、枠状部を使用者の手のひら等で容器本体側に押下するという簡易な動作で、手のひら等に内容物を付着させることができる。枠状部が押下操作部となるため、手のひら等と押下操作部との接触面積を小さくすることができ、押下操作部を衛生的に保持することが容易になる。さらに、手のひら等に付着しなかった余剰の内容物は枠状部等に落下する。よって、内容物として消毒液等を収容すれば、使用の都度、枠状部も消毒等されるため、押下操作部を衛生的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施の形態のポンプ容器の正面図であり、一部を断面図として表している。但し、断面部分は図4に示すA-A矢視断面を表す。
図2図1に示すポンプ容器の側面図であり、一部を断面図として表している。但し、断面部分は、図4に示すB-B矢視断面を表す。
図3図1に示すポンプ容器が備える吐出ポンプの各部を説明するための図であり、(a)は取付部の側面部の内側に設けられた嵌合用蝶番を示し、(b)は図2に示すC-C矢視断面図であり、(c)は図2に示すD-D矢視断面図である。
図4図1に示すポンプ容器の上面図である。
図5図1に示すポンプ容器の第一姿勢における使用形態を説明するための図である。
図6図1に示すポンプ容器の第二姿勢における使用形態を説明するための図である。
図7】本発明の第二の実施の形態のポンプ容器において、吐出ヘッドカバーを所定の向き及び第一姿勢となるように取り付けた状態を示す正面図であり、一部を断面図として表している。但し、断面部分は図10(c)に示すB-B矢視断面を表す。
図8図7に示すポンプ容器において、吐出ヘッドカバーを所定の向きとは逆の向きに取り付けた状態を示す正面図であり、一部を断面図として表している。
図9図7に示す吐出ポンプに設けられる回転体を説明するための図であり、(a)は回転体の上面図であり、(b)は(a)に示すD-D矢視断面図であり、(c)は下面図であり、(d)は(a)に示すE-E矢視断面図であり、(e)は当該回転体を90度回転させた状態を示す一部断面図である。
図10図7に示す吐出ポンプに設けられる回転体及び吐出ヘッドカバーを説明するための図であり、(a)は図7に示すA-A矢視断面図であり、(b)は吐出ヘッドカバーに設けられる係止爪を示す図であり、(c)は当該吐出ポンプの上面図である。
図11図7に示すポンプ容器の第一姿勢における使用形態を説明するための図である。
図12図7に示すポンプ容器の第二姿勢における使用形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の第一の実施の形態及び第二の実施の形態を説明する。
【0018】
〈第一の実施の形態〉
図1は第一の実施の形態の吐出ポンプ100a及び当該吐出ポンプ100aの正面図であり、一部を断面図として表している。図1に示すように、ポンプ容器100は、容器本体10と、容器本体10の口部11に装着部20を介して装着される吐出ポンプ100aとを備えている。以下では、内容物として消毒用アルコールや消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の消毒液が収容される場合を想定して説明するが、内容物は各種液体を収容することができる。
【0019】
吐出ポンプ100aは、内容物を収容する容器本体10の口部11に装着される装着部20と、内容物を外部に吐出するための吐出口31を有する吐出口部30と、吐出口部30を保持する吐出ヘッド40と、吐出ヘッド40の押下動作に伴い作動するポンプ機構50と、吐出ヘッド40に取り付けられる吐出ヘッドカバー60(吐出カバー)と、吐出ヘッドカバー60の姿勢を図1に示す第一姿勢と、第一姿勢から略90度回転させた第二姿勢(図6参照)に変位可能に吐出ヘッドカバー60を吐出ヘッド40に取り付ける取付部70とを備えている。
【0020】
以下、各部の具体的な構成を説明する。なお、本明細書において「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであり、容器本体10を図1に示す正立姿勢に配置した状態で、吐出ポンプ100aを容器本体10の口部11に装着したときに、容器本体10が位置する側を「下」、吐出ヘッド40が位置する側を「上」と称するものとする。また、「軸方向」とは、容器本体10の口部11の中心軸Oの軸方向を意味する。また、図1は吐出ポンプ100a及びポンプ容器100の正面図である。
【0021】
容器本体10は、底部12、胴部13、肩部14及び上記口部11を備え、これらは一体に構成されている。図1に示す例では、胴部13は底部12の周囲に立設されると共に、肩部14に向かって徐々に縮径されている。口部11は胴部13よりも小径であり、肩部14により、口部11と胴部13とが連設されている。口部11の外周面には雄ねじ11aが設けられている。
【0022】
装着部20は、上方及び下方がそれぞれ開口する筒状の装着筒21を備えている。装着筒21の軸方向中間位置には中蓋面22が設けられている。装着筒21の内周面には、中蓋面22の下方に、雌ねじ21aが設けられている。上記口部11に設けられた雄ねじ11aにこの雌ねじ21aを螺合させることで、装着部20が容器本体10の口部11に装着される。中蓋面22には厚み方向に貫通する孔に連設して、中蓋面22の下面から下方に突出する挿通筒23が設けられている。挿通筒23には吐出ヘッド40に設けられる挿入筒45及びポンプ機構50の一部が軸方向上下に移動可能に挿入される。なお、この点については後述する。
【0023】
液体を霧状にして吐出口31から吐出するスプレーノズルとして構成されている。吐出口部30は吐出ヘッド40に保持されて、吐出ヘッドカバー60が第一姿勢から第二姿勢に変位すると、吐出口部30が共に第一姿勢に応じた第一位置Pから第二姿勢に応じた第二位置P図6参照)に移動する。なお、この点については、後述する。
【0024】
吐出口部30は蛇腹状の伸縮可能な連結チューブ35によりポンプ機構50と連結されている。ここで、図2は吐出ポンプ100a及び当該吐出ポンプ100aの側面図であり、一部を断面図として表している。なお、図2では一部符号を省略している。図2に示すように、連結チューブ35の長さは、吐出口部30が第一位置Pに保持された状態であるときに吐出ヘッド40内で十分撓むような長さとされている。
【0025】
再び、図1を参照する。図1に示すように、吐出ヘッド40は装着筒21に対して軸方向に上下に移動可能に挿入される。具体的には装着筒21に挿入される下部カバー部41と、吐出ヘッドカバー60が取付部70を介して取り付けられる上部カバー部42と、下部カバー部41と上部カバー部42とを連設する連設部43と、下部カバー部41内に収容保持される台座部44とを備えている。
【0026】
台座部44は、有天短筒状に形成されている。台座部44の天面には厚み方向に貫通する孔に連設して、その下面から下方に突出する挿入筒45が設けられている。挿入筒45は上記装着筒21に設けられた挿通筒23に対して軸方向に沿って上下に移動可能に挿入されている。
【0027】
下部カバー部41は略筒状に形成されている。下部カバー部41は台座部44を収容保持した状態で装着筒21内を軸方向上下に移動可能に構成される。装着筒21の内周面上端には径方向軸側に突出する抜止部21bが設けられ、下部カバー部41の外周面下端には径方向外側に突出する抜止部41aが設けられ、これらにより、吐出ヘッド40が装着筒21から抜け止めされている。また、中蓋面22の上面に下部カバー部41が当接することで、吐出ヘッド40の軸方向下方への移動が規制される。
【0028】
上部カバー部42は、図1に示すように筒状の側壁部42aと、側壁部42aの上部を覆うドーム状の曲面を有する天壁部42bとを備えている。上部カバー部42には、吐出口部30を保持すると共に、吐出口部30を上記第一姿勢に応じた第一位置Pから、上記第二姿勢に応じた第二位置Pへの移動を案内する案内溝48が設けられる(図2図3(b)参照)。また、上部カバー部42の側壁部42aには、図1に示す正面視においてその両側方に軸方向に略直交する方向に突出する一対の嵌合部49が設けられており、この嵌合部49に取付部70の側面部71の内面に設けられる嵌合用蝶番71aが回動可能に嵌合される(図3(a)参照)。
【0029】
次に、案内溝48について、図2及び図3を参照しながら説明する。図3(b)は図2におけるC-C矢視断面図である。図1図2及び図3(b)では吐出口部30が第一位置Pに保持された状態を示している。図2及び図3(b)に示すように、第一位置Pは天壁部42bと中心軸Oとが交差する位置に相当する。天壁部42bには、この第一位置Pに相当する位置から側壁部42aに向かって、吐出口部30の幅と略同程度の幅の天壁部側貫通溝48aが形成されている。
【0030】
第二位置Pは嵌合用蝶番71aを嵌合部49に嵌合させた状態で吐出ヘッドカバー60を嵌合部49の中心軸Qを回転軸として略90度回転させたときに、底面部61の挿入孔61aが移動する位置に相当する(図6参照)。図2及び図3(b)に示すように、側壁部42aには、吐出口部30の幅と略同程度の幅の側壁部側貫通溝48cが天壁部側貫通溝48aに連なって第二位置Pまで形成されている。天壁部側貫通溝48aと側壁部側貫通溝48cによって上記案内溝48が形成される。
【0031】
図2及び図3(b)に示すように、吐出口部30は、上部カバー部42の内側から案内溝48に挿入され、その先端が吐出ヘッドカバー60の底面部61に設けられた挿入孔61aに挿入される(図4参照)。そのため、図2に示す第一姿勢から図6に示す第二姿勢まで吐出ヘッドカバー60を傾斜させるようにして回転させると、吐出口部30は底面部61の挿入孔61aに押されながら案内溝48に案内されて第一位置Pから第二位置Pまで移動する。なお、吐出ヘッドカバー60を第二姿勢から第一姿勢に戻すべく、吐出ヘッドカバー60を逆方向に回転させれば、吐出口部30も第二位置Pから第一位置Pに移動する。
【0032】
吐出口部30は第一位置P及び第二位置Pでそれぞれ次の構成により移動が規制される。吐出口部30の外周面には、図3(b)の拡大図に示すように、凹溝30aが一対設けられる。凹溝30aは軸方向に平行に設けられる。天壁部側貫通溝48aには第一位置Pにおいて溝面から吐出口部30側に突出するように設けられる一対の第一規制部48bが設けられている。そのため、吐出口部30が第一位置Pに移動すると、天壁部側貫通溝48aの溝面と第一規制部48bとによって吐出口部30の移動が規制され、吐出口部30は第一位置Pに保持される。
【0033】
同様に、側壁部側貫通溝48cにも第二位置Pにおいて溝面から吐出口部30側に突出するように設けられる一対の第二規制部48dが設けられている(図2及び図3(b)参照)。そのため、吐出口部30が第二位置Pに移動すると、側壁部側貫通溝48cの溝面と第二規制部48dとによって吐出口部30の移動が規制され、吐出口部30は第二位置Pに保持される。
【0034】
次に、図1を参照しながら、ポンプ機構50について説明する。ポンプ機構50は、短管状に形成されたステム51と、ステム51の下端に連設されるホルダー部52と、当該ホルダー部52に保持されるピストン部53と、ピストン部53を軸方向上下に移動可能に収容するシリンダ54と、シリンダ54の下端に設けられた吸込口54aに連設し、容器本体10の底部12に向けて延在する吸込チューブ55と、吸込弁56等を備えている。
【0035】
ホルダー部52はステム51の下端から周方向外側に突出する円環状の押圧部52aと、当該押圧部52aから垂設され、ピストン部53の頭部を挟持する挟持部52bとを備えている。ピストン部53は第一ピストン53aと第二ピストン53bとを備え、ホルダー部52により保持される。ピストン部53はスプリングにより軸方向上方付勢されている。
【0036】
次にポンプ機構50の容器本体10に対する取付構造について説明する。シリンダ54の上端には、その外周面から外側に突出するフランジ部54bが設けられている。フランジ部54bの外径は口部11の外径と略同じ大きさであり、フランジ部54bの下面は、可撓性のパッキン57を介して、容器本体10の口部11に当接される。口部11に装着部20が装着されると、口部11と中蓋面22とにフランジ部54bが挟み込まれ、シリンダ54等が容器本体10内に挿入された状態で容器本体10に保持される。
【0037】
このとき、ステム51及びホルダー部52は口部11の上方に配置される。ステム51は吐出ヘッド40の台座部44に設けられた挿入筒45に圧入されており、ステム51は挿入筒45に対して軸方向に移動不能に保持されている。ホルダー部52の押圧部52aの上面には挿入筒45の下端45aが当接されている。ホルダー部52は装着筒21の中蓋面22に設けられた挿通筒23に対して軸方向上下に移動可能に挿入される。
【0038】
次に、図1及び図4を参照しながら吐出ヘッドカバー60について説明する。図4は当該ポンプ容器100の上面図である。吐出ヘッドカバー60は、図1及び図4に示すように、底面部61と、この底面部61の外径より大きな内径の略円形の開口を有する円環状の板状部材からなるリング状部(枠状部)62と、底面部61に対してリング状部62を軸方向に所定の距離離間した状態で支持する支持部63とを有する。底面部61及びリング状部62は同軸となるように支持部63により支持される。なお、図1に示す第一姿勢のとき、リング状部62は底面部61に対して軸方向上方に配置される。このような位置関係となるようにリング状部62が配置される向きを本発明にいう所定の向きとする。
【0039】
底面部61の中心部分には挿入孔61aが形成されている。挿入孔61aには、吐出口31がリング状部62側を向くようにして、吐出口部30が挿入される。挿入孔61aに吐出口部30の先端が挿入されることで、吐出口31とリング状部62とが軸方向に所定の距離離間した状態で、同軸に配置される。また、図4に示すように、リング状部62にはその上面に上方に突出する複数の凸部62aが設けられている。この複数の凸部62aはリング状部62と同軸円を描くように所定の間隔を開けて配列されている。
【0040】
第一の実施の形態において、支持部63は、図示例では、3本の板状部材63aから構成されている。各板状部材63aの両端が底面部61とリング状部62とに接続されることで、底面部61に対してリング状部62を支持している。各板状部材63aは上面視において等間隔に配置されている(図4参照)。また、各板状部材63aの間は開口部となっている。3本の板状部材63aのうち、1本の板状部材63aは第二姿勢(図6参照)の際に、容器本体10の載置面に対して上方に位置する。そのため、第二姿勢では残りの2本の板状部材63aとの間に形成される開口部が載置面に上方に面するように配置される。
【0041】
次に、図1図3を参照しながら、取付部70について説明する。取付部70は、上記嵌合用蝶番71aを内面に有する側面部71と、両側面部71の間に設けられる前面部72と、背面部73とによって、上部カバー部42を取り囲むように設けられる。図2及び図3(a)に示すように、前面部72は上部カバー部42の天壁部42bのみを覆う程度の大きさとされている。吐出ヘッドカバー60を第一姿勢から第二姿勢に回転させたとき、図6に示すように前面部72は下部カバー部41の上端及び連設部43に当接し、吐出ヘッドカバー60の回転移動を規制するストッパーとして機能する。側面部71は吐出ヘッドカバー60を第一姿勢から第二姿勢に回転させるときに下部カバー部41と干渉しない長さ及び形状とされている。また、第二姿勢において、背面部73は口部11の上方に配置され、上部カバー部42の天壁部42bの全面を覆うことができる程度の面積を有する(図6参照)。嵌合用蝶番71aは側面部71の内側に溝状に形成されたものであり、その先端はC字状に開口し、上述のとおり嵌合部49に対して回動可能に嵌合する(図3(a)、(c)参照)。図2及び図3(a)に示すように、背面部73は上部カバー部42の背面側から離間するように設けられている。
【0042】
次に、図5及び図6を参照して当該吐出ポンプ100aの動作を説明する。なお、図5及び図6では一部符号を省略している。
図5に示すように、吐出ヘッドカバー60が第一姿勢になるように配置されたとき、リング状部62が第一の押下操作部として機能する。手のひら等でリング状部62を軸方向に押下すると、吐出ヘッド40が押し下げられる。当該動作に伴い、台座部44が軸方向下方に移動し、台座部44と共にステム51及びホルダー部52が軸方向下方に移動する。そして、ピストン部53が軸方向下方に押し下げられて、ポンプ機構50が作動する。ポンプ機構50により吸い上げられた内容物は連結チューブ35を介して吐出口部30側に送出される。吐出口31はリング状部62を向いている。また、ポンプ機構50により所定の勢いが付与された状態で内容物が吐出される。そのため、内容物は吐出口31から吐出されたときよりも拡径しながら上方に向かって噴霧される。そして、噴霧された内容物はリング状部62の略中央に設けられた円形の開口の内側を通過しつつ、リング状部62の上方(外部)に吐出され、リング状部62を押下した手のひら等に内容物が付着する。
【0043】
一方、図6に示すように、吐出ヘッドカバー60が第二姿勢になるように配置されたとき、背面部73が第二の押下操作部として機能する。例えば、図6に示すように、指等で背面部73を軸方向に押下すると、吐出ヘッド40が押し下げられる。第二姿勢では、吐出口部30が上記案内溝48に案内されて第二位置Pに保持されており、吐出口31は軸方向に対して略直交する方向を向いている。そのため、第二姿勢では、ポンプ機構50から送出された内容物が軸方向に略直交する向きに噴霧される。
【0044】
以上説明した第一の実施の形態の吐出ポンプ100aによれば、吐出ヘッドカバー60を第一姿勢になるように配置した場合、リング状部62を使用者の手のひら等で容器本体10側に押下するという簡易な動作で、手のひら等に内容物を付着させることができる。その際、第一の押下操作部をリング状部62とすることで、当該押下操作部を円形の平板状に構成した場合と比較すると、押下操作部と手のひらとの接触面積が小さくすることができる。そのため、操作時に操作者から押下操作部に移行する汚れやウィルス等の付着面積が小さくなる。また、操作後にこれらを拭き取る作業等も簡易になる。これらのことから、押下操作部を衛生的に保持することが容易である。さらに、手のひら等に付着しなかった余剰の内容物はリング状部62等に落下する。よって、内容物として消毒液等を収容すれば、使用の都度、吐出ヘッドカバー60側には消毒液が落下し、吐出ヘッドカバー60を衛生的に保持することができる。
【0045】
本実施の形態では、第一姿勢時におけるリング状部62を上面(押下面)には複数の凸部62aが設けられている。そのため、手のひらとの接触面積をより小さくすることができる。さらに、凸部62aが滑り止めとなり、リング状部62を安定した状態で下方に押下することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、リング状部62を底面部61に対して支持する支持部63が3本の板状部材63aから構成されている。そのため、吐出口31から吐出された内容物が吐出ヘッドカバー60内に貯留することがない。従って、リング状部62を押下した際に手のひら側から落下した内容物が吐出ヘッドカバー60内に貯留されることがなく、吐出ヘッドカバー60を衛生的に保持することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、吐出ヘッドカバー60が取付部70により第一姿勢と第二姿勢とに変位可能に吐出ヘッド40に取り付けられている。そのため、使用形態に応じて、第一姿勢と第二姿勢に変位させて使用可能な2way容器として使用することができる。例えば、第一姿勢では、上述したように押下操作する手のひら等に直接内容物を付着させてもよいし、ハンドラップ容器のようにペーパータオル等の塗布具に内容物を付着させるようにしてもよい。また、第二姿勢では、当該ポンプ容器100を例えば頭部を押下すると、軸方向と交差する方向に内容物が噴霧されるスプレー容器のように使用することができる。
【0048】
また、本実施の形態では吐出ヘッドカバー60を第二姿勢に変位させたときに、平板状の背面部73が口部11の上方に配置されるようにし、当該背面部73を第二の押下操作部として機能するため、第二姿勢の場合も吐出ヘッド40の押下操作が容易である。
【0049】
さらに、本実施の形態では上述のとおり支持部63を3本の板状部材63aにより構成し、第二の姿勢の際には1本の板状部材63aが容器本体10の載置面に対して軸方向上方に配置され、残りの2本の板状部材63aの間の開口部を載置面上方において広い面積で確保することができる。そのため、第二姿勢で吐出ヘッド40を押下させた際に、吐出口31から内容物を噴霧する際の噴霧範囲を広くしたときに、支持部63に遮られることなく、リング状部62に加えて開口部からも内容物を外部に噴霧することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態では、上部カバー部42に案内溝48を設け、吐出口部30を案内溝48に沿って第一姿勢に応じた第一位置Pから第二姿勢に応じた第二位置Pに移動させることで簡易に内容物が吐出される方向を切り替えることができる。その際、本実施の形態では、吐出ヘッドカバー60を傾斜させて回転させるという簡易な操作で吐出口部30を案内溝48に沿って移動させることができる。そのため、従来の2way仕様の吐出容器のように、例えば、吐出口31を複数設けて、使用しない吐出口31をシール部により塞ぐ必要がなく、簡易な構成とすることができる。また、シール部により吐出口31を塞ぐ際は、シール部を回転させる構成が一般に採用されている。この場合、シール部を狭い空間内で回転させる必要があるため、シール部を回転させる操作が困難であったり、力を要する場合がある。一方、上記構成によれば、上述のとおり、リング状部62を軽い力で押すだけで、吐出ヘッドカバー60の回転と共に吐出口部30を移動させることができるため、この切替操作も簡易である。
【0051】
さらに、本実施の形態では、吐出口部30とポンプ機構50とが蛇腹状の伸縮可能な連結チューブ35により連結されている。また、連結チューブ35は吐出ヘッド40内で十分撓むような長さとされている。そのため、第一姿勢と第二姿勢との変位時の吐出口部30の移動を阻害することがない。また、吐出口部30を移動させるときに、吐出口部30と連結チューブ35との連結部、ポンプ機構50と連結チューブ35との連結部(ステム51との挿入部)に負荷が加わり連結チューブ35が潰れて直角に曲がるのを防止し、第一姿勢と第二姿勢とを切替を繰り返すことによる連結チューブ35の劣化を抑制すると共に、連結チューブ35が潰れて吐出口31側への内容物が移動できないといった状態を抑制することができる。
【0052】
上記第一の実施の形態は本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の一例であり、本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態では、円形の開口を有する円環状の平板部材からなるリング状部を上記第一の押下操作部とした。しかしながら、本発明に係る吐出ポンプでは、上記リング状部62を、上記吐出ヘッドカバー60が所定の向きに取り付けられたときに、吐出口31の軸方向上方が開口し、当該開口の矩形、多角形、不定形等、各種形状の枠状に形成された枠状部に置換し、当該枠状部を上記第一の押下操作部として機能させてもよい。このとき、枠状部は、開口形状と外形状とが相似形である必要はない。つまり、本発明にいう枠状部では開口形状と外形状とは異なる形状であってもよく、枠状部の具体的な形状が限定される訳ではない。
【0053】
また、上記実施の形態では、吐出ヘッドカバー60を3本の板状部材63aにより構成し、互いに隣接する板状部材63aの間を開口部としたが、板状部材63aの数は3本に限定されるものではなく、その数が限定されるものではない。上記実施の形態のように支持部63を複数の板状部材63aにより構成し、隣接する板状部材63aの間を開口部とすれば、吐出ヘッドカバー60内に内容物が貯留されるのを抑制することができる。しかしながら、底面部61、支持部63及びリング状部62を一体に形成したカップ状或いは皿状に形成してもよい。また、その際にメッシュ状或いは多数の孔を設けることなど、底面部61とリング状部62との間を支持する支持部として構成しつつ、支持部に開口部を複数設けることで、リング状部62を吐出口31に対して軸方向上方に配置しつつ、吐出口31から吐出された内容物が吐出ヘッドカバー60内に貯留されないようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0054】
さらに、吐出口部30の構成やポンプ機構50等の具体的な構成は特に限定されるものではなく、適宜、従来公知の構成を採用することができる。また、上記実施の形態において、吐出ヘッドカバー60を、吐出ヘッド40に対して取付部70により簡易に脱着可能な構成としてもよい。ユーザが吐出ヘッドカバー60を吐出ヘッド40から簡易に脱着可能な構成とすることで、所望のタイミングで吐出ヘッドカバー60を洗浄することができる。そのため、操作押下部としての吐出ヘッドカバー60を衛生的に保持することができる。
【0055】
また、当該ポンプ容器100及び吐出ポンプ100aは容器包装材として用いられる各種樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリエチレン樹脂(PE)の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等)を適宜採用することができる。また、抗菌剤が練り込まれた樹脂材料等により吐出ポンプ100a及びポンプ容器100が構成されていてもよいし、表面に抗菌コート等が施されていてもよい。さらに、容器本体10は樹脂製に限らず、硝子製、金属製等でもよい。
【0056】
〈第二の実施の形態〉
次に、図7図12を参照して第二の実施の形態のポンプ容器200及び吐出ポンプ200aについて説明する。図7及び図8はそれぞれ第二の実施の形態のポンプ容器200の正面図であり、図7は吐出ヘッド80に対して吐出ヘッドカバー90を本発明にいう所定の向きに取り付けた状態を示し、図8は吐出ヘッドカバー90を軸方向において逆向きに取り付けた状態を示している。
【0057】
まず、図7を参照して、第二の実施の形態のポンプ容器及び吐出ポンプ200aの概略の構成を説明する。図7に示すように、ポンプ容器200は、容器本体210と、容器本体210の口部211に装着部25を介して装着される吐出ポンプ200aとを備えている。吐出ポンプ200aは、上記装着部25と、内容物を外部に吐出するための吐出口31を有する吐出口部30と、吐出口部30を保持する吐出ヘッド80と、吐出ヘッド80の押下動作に伴い作動するポンプ機構50と、吐出ヘッド80に取り付けられる吐出ヘッドカバー90とを備えている。吐出ヘッドカバー90はリング状部92を含む。第二の実施の形態のポンプ容器200及び吐出ポンプ200aでは、吐出ヘッドカバー90を軸周りに回転させることで吐出ヘッド80から脱着可能に構成されている。
【0058】
当該ポンプ容器200及び吐出ポンプ200aについても、吐出ヘッドカバー90を吐出ヘッド80に対して所定の向きとなるように取り付けたときに、リング状部92を軸方向に沿って容器本体210側に押下することにより、吐出ヘッド80が押下され、容器本体210に収容された内容物が吐出口31からリング状部92の開口の内側を通過してリング状部92の外部に噴霧されるよう構成されている(図11参照)。また、第二の実施の形態のポンプ容器200においても、吐出ヘッドカバー90を所定の向きに取り付けたときに吐出口31とリング状部92とが同軸になるように配置される第一姿勢と、第一姿勢から略90度回転させた第二姿勢(図12参照)に変位可能にされており、第二姿勢では内容物が軸方向に略直交する向きに噴霧される。
【0059】
また、当該ポンプ容器200及び吐出ポンプ200aでは、図8に示すように吐出ヘッドカバー90を図7に示す「所定の向き」とは軸方向において「逆の向き」に吐出ヘッド80に取り付けることができる。なお、第二の実施の形態において「所定の向き」とは、リング状部92と吐出口31とが同軸に配置されたときに、リング状部92が吐出口31に対して上方に位置する向きをいう。
【0060】
当該ポンプ容器200及び吐出ポンプ200aでは吐出ヘッドカバー90を吐出ヘッド80に対して脱着可能に取り付けられているため、第一の実施の形態のポンプ容器100及び吐出ポンプ100aとは、吐出ヘッド80及び吐出ヘッドカバー90の構成が一部異なる。以下では、第一の実施の形態とは構成の異なる点について主に説明する。なお、吐出口部30、ポンプ機構50等の第一の実施の形態と略同じ構成については、同じ名称及び符号を付して説明を省略するものとする。また、図7図12においても第一の実施の形態と略同じ構成については一部符号を省略している。
【0061】
図7を参照して、装着部25について説明する。装着部25は容器本体210の口部211に装着されるキャップ部26と、キャップ部26の天蓋面26aの下方に設けられる挿通筒27と、キャップ部26の上方に設けられる装着筒28と、キャップ部26に装着されるオーバーキャップ部29とを備えている。
【0062】
キャップ部26は有天短筒状に形成されており、その外周面の内面に設けられた雌ねじ(図示略)が容器本体210の口部211に設けられた雄ねじ211aに螺合することで、当該装着部25が容器本体210の口部11に装着される。天蓋面26aは中央部分が開口する環状形状を成す。
【0063】
挿通筒27は、キャップ部26の天蓋面26aの開口部分に連設し、容器本体210の口部211の内側に垂下するように設けられている。挿通筒27にはポンプ機構50の一部が軸方向上下に移動可能に挿入される。
【0064】
装着筒28は、天蓋面26aの上面に立設されている。装着筒28の外径はキャップ部26より小径であり、挿通筒27より大径になるように構成されている。装着筒28には吐出ヘッド80の一部が軸方向上下に移動可能に挿入される。装着筒28の上端には抜止部28aが設けられており、吐出ヘッド80が抜け止めされる。オーバーキャップ部29はキャップ部26及び装着筒28の一部を覆うオーバーキャップであり、その下部にキャップ部26が嵌め込まれる。
【0065】
次に、吐出ヘッド80の構成を説明する。吐出ヘッド80は、上記装着筒28に対して軸方向上下に移動可能に挿入される下部筒状部81と、下部筒状部81に連設される上部筒状部82と、上部筒状部82に対して回転可能に取り付けられる回転体85とを備えている。
【0066】
下部筒状部81は有天短筒状に形成されており、その下端には抜止部81aが設けられている。装着筒28に対して下部筒状部81が軸方向上方に移動したとき、当該抜止部81aと装着筒28に設けられた抜止部28aとにより下部筒状部81の移動が規制されると共に抜け止めされている。また、下部筒状部81の天面81bの略中央には厚み方向に貫通する孔が設けられている。下部筒状部81の天面81bの下面には、この孔の周囲を取り囲むように下方に突出する環状嵌合溝81cが設けられている。環状嵌合溝81cには、ポンプ機構50のステム51が圧入される。なお、ポンプ機構50は、ステム51の他に、第一の実施の形態と同様にステム51の下端に連設されるホルダー部52と、ピストン部53等を備えている。第二の実施の形態では、ポンプ機構50には、ホルダー部52の外面等と下部筒状部81の内面との間に介在するシール部材58が設けられている。
【0067】
上部筒状部82は下部筒状部81と同径の筒状に形成されており、下部筒状部81の外周面に連設されている。上部筒状部82の外周面には径方向外側に突出する一対の嵌合部82aが設けられている。
【0068】
次に、図7図9及び図10(a)を参照しながら、回転体85について説明する。図9(a)は回転体85の上面図、(b)は(a)のD-D矢視断面図、(c)は下面図、(d)は(a)におけるE-E断面図、(e)は回転体85を上部筒状部82の嵌合部82aの中心軸Qに対して略90度回転させた状態を示す図である。また、図10(a)は吐出ヘッド80と吐出ヘッドカバー90の係合状態を示す図であり、図7におけるA-A矢視断面図である。
【0069】
図7及び図9(a)、(b)等に示すように回転体85は上部筒状部82よりも大径の筒状に形成された側壁部85aと、側壁部85aの上部を覆うドーム状の曲面を有する天壁部85bとを備えている。図9(a)、(b)に示すように、側壁部85aの一部は切り欠かれており、回転体85を図7図9(b)に示す第一姿勢の状態から、図9(d)、図12に示す第二姿勢に回転させたときに、側壁部85aが上部筒状部82及び下部筒状部81に干渉しないようにされている。
【0070】
また、図7及び図9(b)に示すように側壁部85aの内周面には、上記嵌合部82a(図7及び図10(a)参照)が回動可能に嵌合される嵌合用蝶番85cが設けられている。図9(b)に示すように嵌合用蝶番85cの軸方向下方には、軸方向に沿って案内溝85dが設けられている。案内溝85dの軸方向下方は溝幅が徐々に広くなるようにされている。当該吐出ポンプ200aを組み立てる際に、嵌合部82aが案内溝85dに挿入されるように位置決めをして、回転体85を上部筒状部82に被せて下方に押下することで、嵌合部82aが上記のとおり嵌合用蝶番85cに回動可能に嵌合される。
【0071】
図9(a)~(e)に示すように、天壁部85bの略中央には吐出口部30が挿入保持される保持部85eが設けられている。図7に示すように、吐出口部30は保持部85eに圧入され、保持部85eにより保持される。また、図9(c)に示すように、天壁部85bの内面には保持部85eの周囲から放射状に側壁部85a側に向かって延びる複数の補強リブ85fが設けられている。さらに、図9(a)等に示すように、側壁部85aの外周面には、吐出ヘッドカバー90の係止爪91a、91bが係合される二つの係合凸部86a、86bが設けられている(図10(a)、(b)参照)。二つの係合凸部86a、86bの大きさは異なる。各係合凸部86a、86bをそれぞれ対応する係止爪91a、91b内に回転させながら挿入することで、係止爪91a、91bにそれぞれ設けられた凹部91c、91dに係合凸部86a、86bが係合する。
【0072】
次に、図7図8及び図10を参照しながら吐出ヘッドカバー90について説明する。図8は、吐出ヘッドカバー90を上記所定の向きとは逆向きになるように吐出ヘッドカバー90が吐出ヘッド80に取り付けられた状態を示す正面図であり、図10(b)は係止爪91a、91bを示し、図10(c)は吐出ヘッドカバー90を所定の向きになるように吐出ヘッド80に取り付けたときの、当該ポンプ容器200の上面図である。吐出ヘッドカバー90は、筒状に形成され、吐出ヘッド80に外挿される筒状の取付カバー部91と、リング状部(枠状部)92と、3本の板状部材93aより構成される支持部93とを有する。
【0073】
吐出ヘッドカバー90を所定の向きで吐出ヘッド80に取り付けたとき、図7に示すように、吐出口31、取付カバー部91及びリング状部92は同軸になるように位置決めされている。また、第一の実施の形態と同様にリング状部92の上面には、上方に突出する複数の凸部92aが設けられている(図10(c)参照)。リング状部92及び支持部93は、具体的な形状に一部異なる点はあるものの、第一の実施の形態のリング状部62及び支持部63と略同様の構成、作用及び効果を有する。但し、第二の実施の形態では、第一の実施の形態にいう底面部61がないため、支持部93は取付カバー部91とリング状部92とに連結されている。
【0074】
図10(a)、(b)に示すように取付カバー部91の下部91eの内面に上述した係止爪91a、91bが設けられている。また、取付カバー部91の上部91fは下部91eよりも拡径されている。所定の向きに吐出ヘッドカバー90を吐出ヘッド80に取り付けると上記したとおり、係止爪91a、91bがそれぞれ係合凸部86a、86bに係合した状態となり、下部91eの下端は回転体85の下部に設けられた径方向外側に拡径された段部85g(図7図8図9(b)、(d)参照)に当接されている。
【0075】
第二の実施の形態では、図8に示すように、吐出ヘッドカバー90を所定の向きとは軸方向において逆向きに吐出ヘッド80に取り付けることができる。このとき、取付カバー部91が回転体85に外挿され、取付カバー部91の下部91eにより回転体85が圧接される。また、リング状部92は容器本体210の肩部212に設けられた嵌合溝213に嵌合される。このように吐出ヘッドカバー90を逆向きに吐出ヘッド80に取り付けることで、吐出ヘッド80の押し込み防止用のストッパーとして吐出ヘッドカバー90を機能させることができる。
【0076】
次に、図11を参照しながら当該吐出ポンプ200aの動作を説明する。なお、図11では一部符号を省略している。図11は吐出ヘッドカバー90が吐出ヘッド80に所定の向きに取り付けられ、且つ、第一姿勢になるように配置された状態を示す。第一姿勢では、第一の実施の形態と同様にリング状部92が第一の押下操作部として機能する。手のひら等でリング状部92を軸方向に押下すれば、吐出ヘッド80が軸方向下方に押し込まれる。このとき、下部筒状部81に設けられた環状嵌合溝81cにポンプ機構50のステム51が圧入されているため、これに伴い、ポンプ機構50が作動して内容物が吸い上げられる。吸い上げられた内容物は連結チューブ35を介して吐出口部30側に送出され、吐出口31から上方に向かって噴霧される。
【0077】
一方、図12に示すように、吐出ヘッドカバー90のリング状部92を傾斜させるように回転させると、回転体85が上部筒状部82に設けられた嵌合部82a(図7参照)の中心軸Q(図12参照)を回転軸として回転し、吐出ヘッドカバー90が約90度回転する。この第二姿勢になるように吐出ヘッドカバー90が配置されたとき、吐出ヘッドカバー90の取付カバー部91の一部が第二の押下操作部として機能する。この第二姿勢では、ポンプ機構50から送出された内容物が軸方向に略直交する向きに噴霧される。
【0078】
以上説明した第二の実施の形態の吐出ポンプ200aについても、吐出ヘッドカバー90を使用形態に応じて、第一姿勢と第二姿勢に変位させて使用可能な2way容器として使用することができ、第一姿勢ではリング状部92を押下操作部とすることができる。よって、第一の実施の形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
一方、第二の実施の形態では、回転体85を上部筒状部82に対して回転可能に設け、回転体85に対して吐出ヘッドカバー90を脱着可能に取り付けるようにした。そのため、本実施の形態では、吐出ヘッドカバー90を簡易な構成とすることができる。また、ユーザは所望のタイミングで吐出ヘッドカバー90を取り外して、吐出ヘッドカバー90を洗浄することができる。そのため、第一の実施の形態と比較すると、吐出ヘッドカバー90をより衛生的に保持することができる。
【0080】
さらに、本実施の形態では、図8に示すように、上記所定の向きとは軸方向において逆の向きに、吐出ヘッドカバー90を吐出ヘッド80に取り付けることができる。このときリング状部92は容器本体210の肩部212に設けられた嵌合溝213に嵌合されるため、吐出ヘッド80を押下することができなくなる。このようにストッパーとして機能させれば、流通時や販売時、或いは不使用時に吐出ヘッド80が誤って押下されて内容物が外部に吐出されるのを抑制することができる。さらに、不使用時や流通梱包時にはこのように吐出ヘッドカバー90を吐出ヘッド80に対して逆の向きに取り付けることで、使用時と比較すると、軸方向において当該ポンプ容器200をコンパクトにすることができる。そのため、収納時や梱包時に要するスペースを小さくすることができる。
【0081】
なお、上記第二の実施の形態についても本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の一例であり、本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば第一の実施の形態で述べたような種々の変更が可能である。また、第二の実施の形態では、吐出ヘッドカバー90を軸周りに回転させることで、吐出ヘッド80から脱着可能に構成したが、吐出ヘッド80に対して吐出ヘッドカバー90を脱着可能に取り付ける方法は上記方法に限定されるものではない。また、第二の実施の形態のように、吐出ヘッドカバー90を上記所定の向きとは逆の向きに吐出ヘッド80に脱着可能に構成すれば上記ストッパーとしても用いることができて好ましいが、本発明ではこれに限定されるものではない。吐出ヘッドカバー90が吐出ヘッド80から単に脱着可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 :容器本体
11 :口部
11a :雄ねじ
12 :底部
13 :胴部
14 :肩部
20 :装着部
21 :装着筒
21a :雌ねじ
21b :抜止部
22 :中蓋面
23 :挿通筒
25 :装着部
26 :キャップ部
26a :天蓋面
27 :挿通筒
28 :装着筒
28a :抜止部
29 :オーバーキャップ部
30 :吐出口部
30a :凹溝
31 :吐出口
35 :連結チューブ
40 :吐出ヘッド
41 :下部カバー部
41a :抜止部
42 :上部カバー部
42a :側壁部
42b :天壁部
43 :連設部
44 :台座部
45 :挿入筒
45a :下端
48 :案内溝
48a :天壁部側貫通溝
48b :第一規制部
48c :側壁部側貫通溝
48d :第二規制部
49 :嵌合部
50 :ポンプ機構
51 :ステム
52 :ホルダー部
52a :押圧部
52b :挟持部
53 :ピストン部
53a :第一ピストン
53b :第二ピストン
54 :シリンダ
54a :吸込口
54b :フランジ部
55 :吸込チューブ
56 :吸込弁
57 :パッキン
58 :シール部材
60 :吐出ヘッドカバー(吐出カバー)
61 :底面部
61a :挿入孔
62 :リング状部(枠状部)
62a :凸部
63 :支持部
63a :板状部材
70 :取付部
71 :側面部
71a :嵌合用蝶番
72 :前面部
73 :背面部
80 :吐出ヘッド
81 :下部筒状部
81a :抜止部
81b :天面
81c :環状嵌合溝
82 :上部筒状部
82a :嵌合部
85 :回転体
85a :側壁部
85b :天壁部
85c :嵌合用蝶番
85d :案内溝
85e :保持部
85f :補強リブ
85g :段部
86a、86b:係合凸部
90 :吐出ヘッドカバー
91 :取付カバー部
91a、91b:係止爪
91c、91d:凹部
91e :下部
91f :上部
92 :リング状部
92a :凸部
93 :支持部
93a :板状部材
100 :ポンプ容器
100a:吐出ポンプ
200 :ポンプ容器
200a:吐出ポンプ
210 :容器本体
211 :口部
211a:雄ねじ
212 :肩部
213 :嵌合溝
O :中心軸
P1 :第一位置
P2 :第二位置
Q :中心軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12