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特許7561570レーダカバー及びレーダカバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レーダカバー及びレーダカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240927BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20240927BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01Q1/42
B29C45/14
B60R13/00
G01S7/03 246
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020177296
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068549
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】太田 耕志朗
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183817(JP,A)
【文献】特開2020-036189(JP,A)
【文献】特開2007-142780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0076958(US,A1)
【文献】特開2019-217863(JP,A)
【文献】特開2013-214844(JP,A)
【文献】特開2012-107913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/42
B29C 45/14
B60R 13/00
G01S 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に凹部が設けられた透明部材と、前記凹部に収容されるインナコアと、前記透明部材の背面側に配置される支持部材とを備えるレーダカバーであって、
前記凹部の内壁面は、前記インナコアの表面よりも表面粗さが大きな粗面とされていることを特徴とするレーダカバー。
【請求項2】
前記インナコアは、前記透明部材側から視認可能な樹脂層を備えることを特徴とする請求項1記載のレーダカバー。
【請求項3】
前記インナコアは、前記樹脂層のみによって形成されていることを特徴とする請求項2記載のレーダカバー。
【請求項4】
前記凹部の内壁面と前記インナコアの表面との間に微小空隙が複数設けられていることを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のレーダカバー。
【請求項5】
背面に凹部が設けられた透明部材と、前記凹部に収容されるインナコアと、前記透明部材の背面側に配置される支持部材とを備えるレーダカバーの製造方法であって、
前記凹部の内壁面が前記インナコアの表面よりも表面粗さが大きな粗面とされた前記透明部材を形成する透明部材形成工程と、
前記凹部に前記インナコアを配置するインナコア配置工程と、
前記凹部に前記インナコアが配置された前記透明部材の背面に前記支持部材を形成する支持部材形成工程と
を有することを特徴とするレーダカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダカバー及びレーダカバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波等の電波を用いて車両の周囲の障害物等を検知するレーダユニットが車両に搭載されている。このようなレーダユニットは、車両の前面に設けられるレーダカバーの内側に配置されており、レーダカバー等を透過する電波の送受信を行う。このため、上述のようなレーダユニットを備える車両においては、レーダカバーは、電波の減衰を抑制しつつ当該電波を透過可能に形成する必要がある。
【0003】
一方で、レーダカバーは、車両の前面に配置されることから、車両の意匠上、極めて重要な部分であり、高級感や質感を向上させるために光輝性を付与することが多い。光輝性を付与するため、めっき処理を施すことが一般的である。しかしながら、めっき層は電波を透過しない。このため、近年、光輝性を付与しかつ電波を透過可能とするため、電波が透過可能な光輝性膜を形成する技術が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-46183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーダカバーの光輝領域に対してサテン生地調の質感を付与することが提案されている。サテン生地の目視上の質感は、光沢がありつつざらつきのある質感である。このようなサテン生地調の質感を実現するためには、例えば光輝性膜の表面の全反射率を低下させて乱反射率を増加させることが考えられる。しかしながら、光輝性膜は非常に薄い膜であることから凹凸形状を設けて乱反射率を高めることが容易でない。
【0006】
さらに、一般的に光輝性膜は、希少金属であるインジウムによって形成される。また、このようなインジウムによって形成された光輝性膜の両側にはコート層を設ける必要もある。インジウムはスパッタリング装置等によって形成され、コート層はインジウムとは別の工程にて形成する必要がある。このため、希少金属を用いた光輝性膜を有するレーダカバーの製造工程は煩雑なものとなる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、乱反射率が高い光輝領域を有するレーダカバーを簡易に製造可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、背面に凹部が設けられた透明部材と、上記凹部に収容されるインナコアと、上記透明部材の背面側に配置される支持部材とを備えるレーダカバーであって、上記凹部の内壁面は、上記インナコアの表面よりも表面粗さが大きな粗面とされているという構成を有する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記インナコアが、上記透明部材側から視認可能な樹脂層を備えるという構成を有する。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記インナコアが、上記樹脂層のみによって形成されているという構成を有する。
【0012】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記凹部の内壁面と上記インナコアの表面との間に微小空隙が複数設けられているという構成を有する。
【0013】
第5の発明は、背面に凹部が設けられた透明部材と、上記凹部に収容されるインナコアと、上記透明部材の背面側に配置される支持部材とを備えるレーダカバーの製造方法であって、上記凹部の内壁面が上記インナコアの表面よりも表面粗さが大きな粗面とされた上記透明部材を形成する透明部材形成工程と、上記凹部に上記インナコアを配置するインナコア配置工程と、上記凹部に上記インナコアが配置された上記透明部材の背面に上記支持部材を形成する支持部材形成工程とを有するという構成を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透明部材の背面に設けられた凹部の内壁面が、インナコアの表面よりも表面粗さが大きな粗面とされている。透明部材の外側から入射した光は、粗面とされた凹部の内壁面で散乱される。このため、外部からレーダカバーを目視する者には、凹部が設けられた領域に光輝性が付与されているように視認される。また、透明部材の外側から入射した光の一部は、インナコアの表面で反射される。このため、外部からレーダカバーを目視する者には、インナコアの色も視認される。この結果、透明部材の凹部が設けられた領域は、インナコアの色に対して乱反射された光が重なって視認され、光輝性膜が設けられていなくとも乱反射率が高い光輝領域として視認される。つまり、本発明によれば、光輝性膜を設けずに、乱反射率が高い光輝領域を有するレーダカバーとすることができる。したがって、本発明によれば、乱反射率が高い光輝領域を有するレーダカバーを簡易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)が、本発明の一実施形態におけるレーダカバーを備えるラジエータグリルの正面図であり、(b)が、本発明の一実施形態におけるレーダカバーの拡大正面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの模式的な断面図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるレーダカバーの製造方法について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーダカバーの製造方法の一実施形態について説明する。
【0017】
図1(a)は、本実施形態のレーダカバー10を備えるラジエータグリル1の正面図であり、図1(b)は、本第1実施形態のレーダカバー10の拡大正面図である。また、図2は、本実施形態のレーダカバー10の模式的な断面図である。
【0018】
ラジエータグリル1は、車両のエンジンルームに通じる開口を塞ぐように車両の前面に設けられており、エンジンルームへの通気を確保しかつエンジンルームへの異物の進入を防止している。ラジエータグリル1の中央には、エンジンルーム内に配置されるレーダユニットRに対向するようにしてレーダカバー10が設けられている。なお、ラジエータグリル1において、レーダカバー10を除く部位は、電波透過性を有する必要性がないことから、例えばクロム(Cr)によってめっき処理されている。
【0019】
レーダユニットR(図2参照)は、例えばミリ波を発信する発信部、反射波を受信する受信部、及び、演算処理を行う演算部等を有している。このレーダユニットRは、レーダカバー10を透過する電波の送受信を行い、受信した電波に基づいて車両の周囲状況を検知する。例えば、レーダユニットRは、障害物までの距離や障害物の相対速度等を算出して出力する。
【0020】
レーダカバー10は、レーダユニットRを車両の正面側から見て覆うように配置されている。このレーダカバー10は、図1(b)に示すように、車両の正面側から見て、車両メーカのエンブレムを示す図形や文字等を表す光輝領域10Aと、当該光輝領域10Aの視認性を向上させる黒色領域10Bを有する部品である。本実施形態において光輝領域10Aには、サテン調の質感が付与されている。このようなレーダカバー10は、図2に示すように、透明部材11と、インナコア12と、ベース部材13(支持部材)とを備えている。
【0021】
透明部材11は、最も車両の外側に配置される略矩形状の透明材料により形成される部位である。この透明部材11は、車両の外部からのインナコア12の視認性を高めるため、表側の面が円滑面とされている。また、透明部材11の背面(裏側の面)には、インナコア12が配置される凹部11aが形成されている。また、透明部材11の背面の凹部11aが設けられていない領域は、ベース部材13との固着面とされている。
【0022】
凹部11aは、インナコア12を収容する部位であり、収容されたインナコア12を車両の前方側から立体的に視認可能とする。この凹部11aは、車両メーカのエンブレム等の図形や文字等の形状に沿って設けられている。このような凹部11aにインナコア12が収容されることによって、上述の光輝領域10Aが形成される。つまり、光輝領域10Aは、インナコア12が透明部材11の表面側(すなわちレーダカバー10の外側)から視認可能な領域である。
【0023】
このように、本実施形態においては、透明部材11の背面のうち、凹部11aの内壁面となっている部位は、透明部材11の表側から見て光輝領域10Aと重なる。以下の説明において、この透明部材11の背面のうち、凹部11aの内壁面が、透明部材11の表側から見て光輝領域10Aと重なる領域を、インナコア配置領域R1と称する。また、透明部材11の背面のうち、凹部11aが設けられていない領域は、上述のようにベース部材13と固着された領域とされている。以下の説明において、この透明部材11の背面のうち、ベース部材13と固着された領域をベース部材固着領域R2と称する。
【0024】
インナコア配置領域R1である凹部11aの内壁面は、透明部材11の外部から入射した外光を散乱する表面粗さとされた粗面となっている。つまり、本実施形態においては、透明部材11の背面のうち、透明部材11の表側から見て光輝領域10Aと重なる領域が外光を散乱する粗面とされている。このような凹部11aの内壁面は、インナコア12の表面よりも表面粗さ(例えば、算術平均粗さや最大高さ)が大きな粗面とされている。
【0025】
透明部材11は、例えば金型を用いた射出成形によって形成される。このため、金型の表面をブラスト処理等によって表面処理することで、粗面からなる内壁面を有する凹部11aが設けられた透明部材11を形成することができる。なお、例えば、凹部11aの内壁面が粗面とされていない透明部材11を形成し、その後、ブラスト処理等の後加工によって凹部11aの内壁面を粗面とするようにしても良い。
【0026】
なお、後述のようにインナコア12は、凹部11aに対して収容され、透明部材11側の表面が凹部11aの内壁面に対して当接されている。つまり、本実施形態において透明部材11の背面のうち、インナコア12が当接される領域が粗面からなるインナコア配置領域R1となっている。このため、凹部11aの内壁面が円滑面である場合と比較して、透明部材11と透明部材11に当接されるインナコア12との接触面積が減少されている。
【0027】
また、ベース部材固着領域R2は、後述する黒色領域10Bを形成するベース部材13が固着される領域である。このベース部材固着領域R2を透過する外光は、ベース部材13に吸収される。このため、ベース部材固着領域R2は、外光を散乱させる必要性はないが、例えば表面粗さが凹部11aの内壁面よりもさらに大きな粗面とされている。このように、ベース部材固着領域R2の表面粗さが大きいと、ベース部材固着領域R2の表面粗さが小さな場合と比較して透明部材11と、透明部材11に対して溶着されるベース部材13との接触面積が増加し、透明部材11とベース部材13とが強固に固着される。
【0028】
なお、上述のように、ベース部材固着領域R2に入射した外光は、ベース部材13に吸収される。このため、ベース部材固着領域R2の表面粗さを大きくしても、ベース部材固着領域R2における凹凸形状は目立つことがない。したがって、ベース部材固着領域R2の表面粗さをインナコア配置領域R1よりも大きくしても、レーダカバー10の外観印象に大きな影響を与えることはない。ただし、ベース部材固着領域R2における表面粗さは、特に限定されるものではなく、例えば凹部11aの内壁面よりも小さくても良い。
【0029】
図1(b)において、黒色領域10Bが光輝領域10Aを全周に亘って囲んでいることから分かるように、ベース部材固着領域R2は、透明部材11の表面側から見て光輝領域10A(すなわちインナコア12)を全周にて囲んで配置されている。ベース部材固着領域R2においては、透明部材11とベース部材13とが強固に固着されてシール性が高い。このため、このようなベース部材固着領域R2によって光輝領域10Aを全周に亘って連続して囲うことによって、外気や水分が透明部材11とベース部材13との境界部分からインナコア12に到達することを抑止することができる。
【0030】
このような透明部材11は、例えば、透明のPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されており、1.5mm~10mm程度の厚さとされている。また、透明部材11の表側の面には、必要に応じて、傷付き防止のためのハードコート処理、又はウレタン系塗料のクリヤコート処理が施される。なお、耐傷性を備える透明合成樹脂であれば、これらの傷付き防止処理は不要である。
【0031】
インナコア12は、透明部材11の内部に収容される部材であり、透明部材11とベース部材13との間に配置されている。本実施形態においてインナコア12は、樹脂のみによって形成されている。なお、インナコア12は、樹脂のみによって形成されている構成に限定されるものではない。外部から視認可能な樹脂層を備えていれば良い。つまり、本実施形態においてインナコア12は、外部から視認可能なお樹脂層のみによって形成されている。このようなインナコア12は、インジウム等からなる金属製の光輝性膜を備えていない。
【0032】
インナコア12は射出成形等によって成形されており、例えばABS、PC又はPET等の合成樹脂によって形成されている。このインナコア12は、透明部材11の凹部11aを埋設する凸状の形状とされており、透明部材11の凹部11aに嵌合される。このようなインナコア12の表面は、透明部材11の凹部11aの内壁面よりも表面粗さが小さな円滑面とされている。
【0033】
図2の拡大図に示すように、表面粗さが相対的に大きな凹部11aの内壁面と、表面粗さが相対的に小さなインナコア12の表面とが当接されることによって、透明部材11とインナコア12との境界部分には、複数の微小空隙Kが設けられている。このような多数の微小空隙Kは、微小空隙Kが設けられていない場合と比較して光の散乱を促進し、光輝領域10Aにおける外光の乱反射の割合をより高める。
【0034】
このようなインナコア12の色は特に限定されるものではないが、例えば灰色とすることが考えられる。インナコア12が灰色とされ、さらに粗面である凹部11aの内壁面による外光の散乱効果が加わることによって、外部から光輝領域10Aがサテン調の金属光沢を有しているように視認される。
【0035】
ベース部材13は、透明部材11の背面側に配置されており、黒色の樹脂材料から形成されている。このベース部材13は、エンジンルーム側に突出する係合部13aを有している。この係合部13aは、先端部が爪状に成形されており、当該先端部が例えばラジエータグリル本体に係止される。このように透明部材11の背面のベース部材固着領域R2に対して固着されたベース部材13は、透明部材11の外側から視認可能とされており、上述の黒色領域10Bを形成している。このベース部材13は、光輝領域10A以外の領域を黒色に視認させ、相対的に光輝領域10Aの視認性を向上させる。
【0036】
このようなベース部材13は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、有色のPC、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、0.5mm~10mm程度の厚さとされている。
【0037】
続いて、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について説明するための概略図である。
【0038】
まず、図3(a)に示すように、透明部材11を形成する(透明部材形成工程)。例えば、透明部材11は、樹脂材料を射出成形することによって形成される。この射出成形により、凹部11aを有する透明部材11を形成することができるため、後工程により凹部11aを形成する必要はない。ここで、本実施形態においては、例えば射出成形に用いる金型に対して、インナコア配置領域R1及びベース部材固着領域R2を粗面とする凹凸を予め形成しておく。これによって、1度の射出成形によって、インナコア配置領域R1及びベース部材固着領域R2が粗面とされた透明部材11を形成することができる。なお、必要に応じて、透明部材11の表面側(車両外側に向く面)あるいは全面には、耐久性等を向上させるためのハードコート処理を施しても良い。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、インナコア12を形成する。例えば、射出成形によりインナコア12が形成される。本実施形態においては、インナコア12に対してコート層や金属製の光輝性膜を形成しない。このため、インナコア12を形成した樹脂の色が外部から視認されるインナコア12の色とされている。インナコア12の形成は、図3(a)で示した透明部材11の形成を待って行う必要はない。図3(a)で示した透明部材11の形成工程と並行して、インナコア12を形成することによって、レーダカバー10の製造時間を短縮することができる。
【0040】
続いて、図3(c)に示すように、インナコア12を透明部材11の凹部11aに嵌合する(インナコア配置工程)。次に、図3(d)に示すように、ベース部材13を形成する(支持部材形成工程)。ここでは、凹部11aにインナコア12が設置された透明部材11を、射出成形用の金型の内部に配置し、透明部材11の背面側に溶融した樹脂を射出するインサート成形を行うことで、ベース部材13を形成する。このようなベース部材13は、インサート成形時の熱により透明部材11と溶着され、インナコア12を覆うように配置される。また、インナコア12の裏面も、ベース部材13に溶着される。これによって、インナコア12がベース部材13により支持される。
【0041】
以上のような本実施形態のレーダカバー10は、背面に凹部11aが設けられた透明部材11と、凹部11aに収容されるインナコア12と、透明部材11の背面側に配置されるベース部材13とを備えている。また、本実施形態のレーダカバー10において、凹部11aの内壁面は、インナコア12の表面よりも表面粗さが大きな粗面とされている。
【0042】
このような本実施形態のレーダカバー10によれば、透明部材11の背面に設けられた凹部11aの内壁面が、インナコア12の表面よりも表面粗さが大きな粗面とされている。透明部材11の外側から入射した光は、粗面とされた凹部11aの内壁面で散乱される。このため、外部からレーダカバー10を目視する者には、凹部11aが設けられた領域に光輝性が付与されているように視認される。また、透明部材11の外側から入射した光の一部は、インナコア12の表面で反射される。このため、外部からレーダカバー10を目視する者には、インナコア12の色も視認される。この結果、透明部材11の凹部11aが設けられた領域は、インナコア12の色に対して乱反射された光が重なって視認され、金属製の光輝性膜が設けられていなくとも乱反射率が高い光輝領域10Aとして視認される。つまり、本実施形態のレーダカバー10によれば、光輝性膜を設けずに、乱反射率が高い光輝領域10Aを有するレーダカバー10とすることができる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、乱反射率が高い光輝領域10Aを有し、かつ、簡易に製造することができる。
【0043】
また、本実施形態のレーダカバー10によれば、透明部材11の背面領域の光輝領域10Aと重なる領域が粗面とされているため、同領域が凹凸の少ない円滑面である場合と比較し、インナコア12と透明部材11との接触面積を小さくすることができる。このため、光輝領域10Aに圧着痕が発生することを抑制することができる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、簡易に光輝領域10Aに対してサテン調の質感を付与することが可能でありかつ光輝領域10Aにおける圧着痕の発生を抑制することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態のレーダカバー10では、ベース部材固着領域R2の表面粗さがインナコア12の表面よりも大きいことから透明部材11とベース部材13との固着力が強化される。また、ベース部材固着領域R2において外光がベース部材13に吸収されるため、表面粗さを大きくしても、ベース部材固着領域R2における凹凸形状は目立つことがない。したがって、ベース部材固着領域R2の表面粗さを大きくしても、レーダカバー10の外観印象に大きな影響を与えることはない。よって、本実施形態のレーダカバー10によれば、レーダカバー10の外観印象に大きな影響を与えることなく、透明部材11とベース部材13との固着力を向上させることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、ベース部材13が固着された領域が、透明部材11の表面側から見て光輝領域10Aを全周にて囲んで配置されている。ベース部材13が固着された領域であるベース部材固着領域R2は、透明部材11とベース部材13とが強固に固着されてシール性が高い。このため、ベース部材固着領域R2によって光輝領域10Aを全周に亘って連続して囲うことによって、外気や水分が透明部材11とベース部材13との境界部分からインナコア12に到達することを抑止することができ、インナコア12の外観が劣化することを防止することができる。
【0046】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、インナコア12が、透明部材11側から視認可能な樹脂層を備えている。このような本実施形態のレーダカバー10によれば、インナコア12の視認可能な部位が樹脂であっても外光の乱反射によって光輝領域10Aに光沢感を付与することができる。このため、樹脂の色を変更することによって、金属膜では表現できない質感を光輝領域10Aに付与することができる。金属と比較すると樹脂の方が色の選択制が幅広いことから、本実施形態のレーダカバー10によれば、光輝領域10Aの色の選択自由度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、インナコア12が、樹脂層のみによって形成されている。このため、複数材料を積層してインナコア12を形成する場合と比較して、インナコア12の形成を簡易に行うことができる。例えば、インナコアに金属製の光輝性膜をスパッタリング装置によって形成すると共に、光輝性膜を挟むようにコート層を塗装によって形成する場合には、コート層の塗装工程と、光輝性膜の製膜工程が、別途必要になる。しかしながら、本実施形態のレーダカバー10によれば、これらの塗装工程や製膜工程を省くことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のレーダカバー10においては、凹部11aの内壁面とインナコア12の表面との間に微小空隙Kが複数設けられている。このため、微小空隙Kが設けられていない場合と比較して光の散乱を促進し、光輝領域10Aにおける外光の乱反射の割合をより高めることができる。
【0049】
また、本実施形態のレーダカバー10の製造方法は、凹部11aの内壁面がインナコア12の表面よりも表面粗さが大きな粗面とされた透明部材11を形成する透明部材形成工程と、凹部11aにインナコア12を配置するインナコア配置工程と、凹部11aにインナコア12が配置された透明部材11の背面にベース部材13を形成するベース部材形成工程とを有する。このため、透明部材11の背面に設けられた凹部11aの内壁面が、インナコア12の表面よりも表面粗さが大きな粗面とされたレーダカバー10を製造することができ、光輝性膜を設けずに、乱反射率が高い光輝領域10Aを有するレーダカバー10とすることができる。したがって、乱反射率が高い光輝領域10Aを有するレーダカバー10を簡易に製造することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、インナコア12が樹脂のみからなる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、インナコア12の表面の前部あるいは一部に対して塗料層を形成することも可能である。このため、例えば、外部から視認可能なインナコア12の縁部のみに塗料層を形成し、光輝領域10Aの縁部に他の領域と異なる色調を付与することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1……ラジエータグリル、10……レーダカバー、10A……光輝領域、10B……黒色領域、11……透明部材、11a……凹部、12……インナコア、13……ベース部材、13a……係合部、K……微小空隙、R……レーダユニット、R1……インナコア配置領域、R2……ベース部材固着領域
図1
図2
図3