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特許7561574浮体、液化二酸化炭素の積込方法、液化二酸化炭素の揚荷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】浮体、液化二酸化炭素の積込方法、液化二酸化炭素の揚荷方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/08 20060101AFI20240927BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240927BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240927BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20240927BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B63B25/08 B
B63H21/38 C
B63B25/16 F
B63B27/24 E
F17C13/00 302D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020180559
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071534
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513140(JP,A)
【文献】特表2019-512072(JP,A)
【文献】特開2009-279979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/08
B63H 21/38
B63B 25/16
B63B 27/24
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体本体と、
前記浮体本体に配置され、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、
外部から供給される液化二酸化炭素を前記タンク内に放出する積込配管と、を備え、
前記積込配管は、
前記タンクの外部に配置されて前記タンクの上方で水平方向に延び、第一の内径を有した第一積込配管と、
一端が前記第一積込配管に接続されて前記タンクの外部から内部に延びるとともに、前記タンク内で上下方向に延び、上下方向における下側端である他端が前記タンク内で開口し、前記第一の内径よりも小さい第二の内径を有した第二積込配管と、
を備える浮体。
【請求項2】
前記積込配管は、
基端が前記第一積込配管に接続され、先端が前記タンク内で開口し、前記第二の内径よりも大きい第三の内径を有した第三積込配管、を更に備える
請求項1に記載の浮体。
【請求項3】
浮体本体と、
前記浮体本体に配置され、液化二酸化炭素を貯留可能な複数のタンクと、
複数の前記タンクのそれぞれに設けられて、前記タンク内の液化二酸化炭素を前記浮体本体の外部に送り出す揚荷配管と、
前記複数のタンクをなす第一のタンクと第二のタンクとの間に跨がるように配置され、前記第一のタンク内と前記第二のタンク内とを連通させる移送配管と、を備え、
前記移送配管は、
前記第一のタンク側に配置され、第一の内径を有した第一移送配管と、
一端が前記第一移送配管に接続されるとともに、他端が前記第二のタンク内で開口し、前記第一の内径よりも小さい第二の内径を有した第二移送配管と、
を備え、
前記第一移送配管は、前記第一のタンクと前記第二のタンクとの双方の外部に配置されて、前記第一のタンク及び前記第二のタンクの上方で水平方向に延びる中間部を備え、
前記第二移送配管は、前記第二のタンクの外部から内部に延びるとともに、前記第二のタンク内で上下方向に延びて、前記第二移送配管の下側端が前記他端として前記第二のタンク内で開口している
浮体。
【請求項4】
前記移送配管は、
基端が前記第一移送配管に接続され、先端が前記第二のタンク内で開口し、前記第二の内径よりも大きい第三の内径を有した第三移送配管、を更に備える
請求項3に記載の浮体。
【請求項5】
請求項2に記載の浮体における、液化二酸化炭素の積込方法であって、
前記第一積込配管から前記第二積込配管を通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、
前記タンク内の液化二酸化炭素の液位が定められた液位に到達したら、前記第一積込配管から前記第三積込配管を通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、を含む
液化二酸化炭素の積込方法。
【請求項6】
請求項4に記載の浮体における、液化二酸化炭素の揚荷方法であって、
前記第一のタンク内を加圧することで、前記第一のタンク内の液化二酸化炭素を、前記第一移送配管から前記第二移送配管を通して前記第二のタンク内に移送する工程と、
前記第二のタンク内の液化二酸化炭素の液位が定められた液位に到達したら、前記第一のタンク内の液化二酸化炭素を、前記第一移送配管から前記第三移送配管を通して前記第二のタンク内に移送する工程と、
前記第二のタンク内の前記液化二酸化炭素を、前記揚荷配管により前記第二のタンクの外部に送り出す工程と、を含む
液化二酸化炭素の揚荷方法。
【請求項7】
浮体本体と、
前記浮体本体に配置され、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、
外部から供給される液化二酸化炭素を前記タンク内に放出する積込配管と、を備え、
前記積込配管は、
前記タンクの外部に配置され、第一の内径を有した第一積込配管と、
一端が前記第一積込配管に接続されるとともに、他端が前記タンク内で開口し、前記第一の内径よりも小さい第二の内径を有した第二積込配管と、
を備え、
前記積込配管は、
基端が前記第一積込配管に接続され、先端が前記タンク内で開口し、前記第二の内径よりも大きい第三の内径を有した第三積込配管、を更に備える
浮体。
【請求項8】
浮体本体と、
前記浮体本体に配置され、液化二酸化炭素を貯留可能な複数のタンクと、
複数の前記タンクのそれぞれに設けられて、前記タンク内の液化二酸化炭素を前記浮体本体の外部に送り出す揚荷配管と、
前記複数のタンクをなす第一のタンクと第二のタンクとの間に跨がるように配置され、前記第一のタンク内と前記第二のタンク内とを連通させる移送配管と、を備え、
前記移送配管は、
前記第一のタンク側に配置され、第一の内径を有した第一移送配管と、
一端が前記第一移送配管に接続されるとともに、他端が前記第二のタンク内で開口し、前記第一の内径よりも小さい第二の内径を有した第二移送配管と、
を備え、
前記移送配管は、
基端が前記第一移送配管に接続され、先端が前記第二のタンク内で開口し、前記第二の内径よりも大きい第三の内径を有した第三移送配管、を更に備える
浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体、液化二酸化炭素の積込方法、液化二酸化炭素の揚荷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された燃料タンクは、液化ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を燃料タンクに積み込むための積込配管(パイプライン)を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-528119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タンク内に液化二酸化炭素を収容する場合、以下のような理由により、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。すなわち、タンク内で開口する積込配管や揚荷配管の配管下端における液化二酸化炭素の圧力は、タンク運用圧に応じたものとなる。特許文献1に開示されたような構成では、積込配管や揚荷配管において最も高い位置となる配管頂部は、タンク内の最高液位よりも上方に位置する。配管頂部における液化二酸化炭素の圧力は、配管下端における液化二酸化炭素の圧力に対し、タンク内の液化二酸化炭素の液面と配管頂部との高低差によるヘッド圧に応じた分だけ低くなる。つまり、積込配管や揚荷配管においては、配管頂部における液化二酸化炭素の圧力が、タンク内における液化二酸化炭素の圧力よりも低くなる。
【0005】
液化二酸化炭素は、気相、液相、固相が共存する三重点の圧力(三重点圧力)が、LNGやLPGの三重点圧力に比較して高く、運用時におけるタンク運用圧との差異が小さい。その結果、タンク運用圧(タンクの設計圧力)によっては、液化二酸化炭素の圧力が最も低くなる配管頂部において、液化二酸化炭素の圧力が三重点圧力以下となり、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発が生じることがある。すると、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発の蒸発潜熱により、蒸発せずに残った液化二酸化炭素の温度低下が生じ、配管頂部内で液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される。積込配管や揚荷配管内でドライアイスが生成されると、配管内における液化二酸化炭素の流れが阻害され、液化二酸化炭素の積込・揚荷作業に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、配管内のドライアイス生成を抑え、液化二酸化炭素の積込・揚荷作業を円滑に行うことができる浮体、液化二酸化炭素の積込方法、液化二酸化炭素の揚荷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る浮体は、浮体本体と、タンクと、積込配管と、を備える。前記タンクは、前記浮体本体に配置されている。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留可能である。前記積込配管は、外部から供給される液化二酸化炭素を前記タンク内に放出する。前記積込配管は、第一積込配管と、第二積込配管と、を備える。第一積込配管は、前記タンクの外部に配置されて前記タンクの上方で水平方向に延びている。前記第一積込配管は、第一の内径を有している。前記第二積込配管は、一端が前記第一積込配管に接続されて前記タンクの外部から内部に延びるとともに、前記タンク内で上下方向に延び、上下方向における下側端である他端が前記タンク内で開口している。前記第二積込配管は、前記第一の内径よりも小さい第二の内径を有している。
【0008】
本開示に係る浮体は、浮体本体と、複数のタンクと、揚荷配管と、移送配管と、を備えている。前記タンクは、前記浮体本体に配置されている。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留可能である。前記揚荷配管は、複数の前記タンクのそれぞれに設けられている。前記揚荷配管は、前記タンク内の液化二酸化炭素を前記浮体本体の外部に送り出す。前記移送配管は、第一の前記タンクと第二の前記タンクとの間に跨がるように配置されている。前記移送配管は、前記第一のタンク内と前記第二のタンク内とを連通させる。前記移送配管は、第一移送配管と、第二移送配管と、を備えている。前記第一移送配管は、前記第一のタンク側に配置されている。前記移送配管は、第一の内径を有している。前記第二移送配管は、一端が前記第一移送配管に接続されるとともに、他端が前記第二のタンク内で開口している。前記第二移送配管は、前記第一の内径よりも小さい第二の内径を有している。前記第一移送配管は、前記第一のタンクと前記第二のタンクとの双方の外部に配置されて、前記第一のタンク及び前記第二のタンクの上方で水平方向に延びる中間部を備え、前記第二移送配管は、前記第二のタンクの外部から内部に延びるとともに、前記第二のタンク内で上下方向に延びて、前記第二移送配管の下側端が前記他端として前記第二のタンク内で開口している。
【0009】
本開示に係る液化二酸化炭素の積込方法は、上記したような浮体における、液化二酸化炭素の積込方法である。液化二酸化炭素の積込方法は、前記第一積込配管から前記第二積込配管を通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、前記タンク内の液化二酸化炭素の液位が定められた液位に到達したら、前記第一積込配管から前記第三積込配管を通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、を含む。
【0010】
本開示に係る液化二酸化炭素の揚荷方法は、上記したような浮体における、液化二酸化炭素の揚荷方法である。液化二酸化炭素の揚荷方法は、前記第一のタンク内を加圧することで、前記第一のタンク内の液化二酸化炭素を、前記第一移送配管から前記第二移送配管を通して前記第二のタンク内に移送する工程と、前記第二のタンク内の液化二酸化炭素の液位が定められた液位に到達したら、前記第一のタンク内の液化二酸化炭素を、前記第一移送配管から前記第三移送配管を通して前記第二のタンク内に移送する工程と、前記第二のタンク内の前記液化二酸化炭素を、前記揚荷配管により前記第二のタンクの外部に送り出す工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の浮体、液化二酸化炭素の積込方法、液化二酸化炭素の揚荷方法によれば、配管内のドライアイス生成を抑え、積込・揚荷作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の各実施形態に係る浮体としての船舶の概略構成を示す平面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る船舶に設けられたタンク、積込配管、揚荷配管を示す図であり、図1のII-II矢視断面図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る船舶に設けられたタンク、積込配管、揚荷配管を示す断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法の手順を示すフローチャートである。
図5】本開示の第二実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法で、第二積込配管を通して液化二酸化炭素を積み込んでいる状態を示す断面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法で、第三積込配管を通して液化二酸化炭素を積み込んでいる状態を示す断面図である。
図7】本開示の第三実施形態に係る船舶に設けられたタンク、積込配管、揚荷配管を示す断面図である。
図8】本開示の第四実施形態に係る船舶に設けられたタンク、積込配管、揚荷配管を示す断面図である。
図9】本開示の第四実施形態に係る液化二酸化炭素の揚荷方法の手順を示すフローチャートである。
図10】本開示の第四実施形態に係る液化二酸化炭素の揚荷方法で、第二積込配管を通して液化二酸化炭素を移送している状態を示す断面図である。
図11】本開示の第四実施形態に係る液化二酸化炭素の揚荷方法で、第三積込配管を通して液化二酸化炭素を移送している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態に係る浮体、液化二酸化炭素の積込方法、液化二酸化炭素の揚荷方法について、図1図11を参照して説明する。
<第一実施形態>
(船舶の構成)
図1に示すように、本開示の実施形態において、浮体である船舶1は、液化二酸化炭素を運搬する。この船舶1は、浮体本体としての船体2と、タンク設備10Aと、を少なくとも備えている。
【0014】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示無し)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有する。船底(図示無し)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示無し)により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。この実施形態で例示する上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0015】
船体2内には、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。貨物搭載区画8は、上甲板5に対して下方の船底に向けて凹み、上方に開口している。
【0016】
(タンク設備の構成)
タンク設備10Aは、貨物搭載区画8内に、船首尾方向Daに沿って、複数が配置されている。本開示の実施形態において、タンク設備10Aは、船首尾方向Daに間隔を空けて二個配置されている。
【0017】
図2に示すように、タンク設備10Aは、タンク11と、積込配管20Aと、揚荷配管30と、を少なくとも備えている。
この実施形態において、タンク11は、船体2に配置されている。タンク11は、例えば、水平方向に延びる円筒状をなす。タンク11は、その内部に液化二酸化炭素Lを収容する。タンク本体は、筒状部12と、端部球状部13と、を備えている。筒状部12は、水平方向を長手方向Dxとして延びている。この実施形態において、筒状部12は、長手方向Dxに直交する断面形状が円形の、円筒状に形成されている。端部球状部13は、筒状部12の長手方向Dxの両端部にそれぞれ配置されている。各端部球状部13は、半球状で、筒状部12の長手方向Dx両端の開口を閉塞している。なお、タンク11は、円筒状に限られるものではなく、タンク11は球形、方形等であってもよい。
【0018】
積込配管20Aは、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込む。積込配管20Aは、第一積込配管21と、第二積込配管22と、を備えている。
【0019】
第一積込配管21は、船外の液化二酸化炭素供給施設等から液化二酸化炭素が供給される供給管(図示無し)が着脱可能に接続される。第一積込配管21は、タンク11の外部に配置されている。この実施形態における第一積込配管21は、タンク11の上下方向Dvの上方で、水平方向に延びている。第一積込配管21は、第一の内径D1を有している。
【0020】
第二積込配管22の一端22a(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、第一積込配管21に接続されている。第二積込配管22は、タンク11の頂部を貫通してタンク11の外部から内部に延びている。第二積込配管22は、タンク11内で上下方向Dvに延びている。第二積込配管22の他端22b(言い換えれば、上下方向Dvにおける下側端)は、タンク11内の下部で下方を向いて開口している。第二積込配管22は、第一の内径D1よりも小さい第二の内径D2を有している。この実施形態において、第二積込配管22は、その全長にわたって第二の内径D2を有している。第二積込配管22は、他端22b側の一定長のみを、第二の内径D2で形成し、一端22a側は、第一積込配管21と同じ第一の内径D1で形成してもよい。
【0021】
揚荷配管30は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外に送出する。揚荷配管30は、タンク11の外部からタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部に延びている。揚荷配管30の先端部は、タンク11内の下部に配置されている。揚荷配管30の先端部には、ポンプ31が設けられている。ポンプ31は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを吸い込む。揚荷配管30は、ポンプ31で吸い込んだ液化二酸化炭素Lを、タンク11外(船外)に送出する。
【0022】
(作用効果)
上述したような船舶1では、液化二酸化炭素Lが、第一積込配管21から第二積込配管22を通してタンク11内に積み込まれる。第二積込配管22の第二の内径D2は、第一積込配管21の第一の内径D1よりも小さい。そのため、第二積込配管22では、第一積込配管21よりも、圧力損失ΔPが大きくなる。
【0023】
ここで、積込配管20Aの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力Pは、下式(1)で表される。
=P-ρg(h-h)/1000+ΔP ・・・(1)
ただし、
:積込配管20Aの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力(kPaG)
:タンク11の上部における液化二酸化炭素Lの圧力(kPaG)
ρ:液化二酸化炭素Lの液密度(kg/m
g:重力加速度(m/s
:タンク11の最下部から積込配管20Aの配管頂部までの高さ(m)
:タンク11の最下部から液化二酸化炭素Lの液面までの高さ(m)
【0024】
上式(1)により、積込配管20Aの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力(P)は、圧力損失ΔPの分だけ高められる。積込配管20Aの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力が高められることで、液化二酸化炭素Lの圧力が三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、積込配管20A内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管20A内のドライアイス生成を抑え、積込作業を円滑に行うことが可能となる。
【0025】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る浮体、液化二酸化炭素の積込方法の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と第三積込配管23を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0026】
図3に示すように、タンク設備10Bは、タンク11と、積込配管20Bと、揚荷配管30と、を少なくとも備えている。
積込配管20Bは、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込む。積込配管20Bは、第一積込配管21と、第二積込配管22と、第三積込配管23と、を備えている。
【0027】
第一積込配管21は、船外の液化二酸化炭素供給施設等から液化二酸化炭素が供給される供給管(図示無し)が着脱可能に接続される。第一積込配管21は、タンク11の外部に配置されている。第一実施形態の同様に、第一積込配管21は、タンク11の上下方向Dvの上方で、水平方向に延びている。第一積込配管21は、第一の内径D1を有している。
【0028】
第二積込配管22の一端22a(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、第一積込配管21に接続されている。第二積込配管22は、タンク11の頂部を貫通してタンク11の外部から内部に延びている。第二積込配管22は、タンク11内で上下方向Dvに延びている。第二積込配管22の他端22b(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、タンク11内の下部で下方を向いて開口している。第二積込配管22は、第一の内径D1よりも小さい第二の内径D2を有している。
【0029】
第三積込配管23の基端23a(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、第一積込配管21に接続されている。第三積込配管23は、タンク11の頂部を貫通してタンク11の外部から内部に延びている。第三積込配管23は、タンク11内で上下方向Dvに延びている。第三積込配管23の先端23b(言い換えれば、上下方向Dvにおける下側端)は、タンク11内の下部で下方を向いて開口している。第三積込配管23は、第二の内径D2よりも大きい第三の内径D3を有している。なお、第三の内径D3は、第一積込配管21の第一の内径D1と同一であってもよい。
【0030】
第二積込配管22には、開閉弁24が設けられている。この開閉弁24は、第二積込配管22を開閉する。同様に、第三積込配管23には、開閉弁25が設けられている。開閉弁25は、第三積込配管23を開閉する。
【0031】
(液化二酸化炭素の積込方法の手順)
図4に示すように、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法S1は、第二積込配管22を通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S2と、第三積込配管23を通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S3と、を含んでいる。
【0032】
図5に示すように、第二積込配管22を通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S2では、開閉弁24を開状態、開閉弁25を閉状態とする。これにより、第一積込配管21と第二積込配管22とが連通された状態になる。この状態で、船外から供給される液化二酸化炭素Lは、第一積込配管21から第二積込配管22を通してタンク11内に送り込まれる。このとき、第二積込配管22の第二の内径D2は、第一積込配管21の第一の内径D1よりも小さい。そのため、第二積込配管22における圧力損失ΔPが大きくなり、積込配管20A内でドライアイスが生成されることを抑えつつ、液化二酸化炭素Lの積込が行われる。
【0033】
図6に示すように、その後、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が、予め定めた規定液位に到達したら、第三積込配管23を通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S3に移行する。これには、開閉弁24を閉状態、開閉弁25を開状態にする。これにより、第一積込配管21と第三積込配管23とが連通された状態になる。上記のようにタンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、規定液位に達すると、タンク11内の液化二酸化炭素Lと積込配管20Bの配管頂部との差圧が小さくなる。これにより、積込配管20Bの配管頂部で液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となる。
【0034】
このような状態で実施される工程S3では、船外から供給される液化二酸化炭素Lを、第一積込配管21から第三積込配管23を通してタンク11内に送り込むことができる。第三積込配管23の第三の内径D3は、第二積込配管22の第二の内径D2よりも大きい。そのため、工程S2に比較し、第三積込配管23を通してタンク11内に供給する液化二酸化炭素Lの流量を増大させることができる。
【0035】
(作用効果)
上述した第二実施形態の船舶1、液化二酸化炭素Lの積込方法S1では、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が低いときには、液化二酸化炭素Lを、第一積込配管21から第二積込配管22を通してタンク11内に積み込むようにしている。そして、第二積込配管22の第二の内径D2は、第一積込配管21の第一の内径D1よりも小さいため、第二積込配管22で生じる圧力損失ΔPにより、積込配管20Bの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力が高められる。これにより、積込配管20B内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることを抑えられる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管20B内のドライアイス生成を抑え、積込作業を円滑に行うことが可能となる。
また、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、規定液位に達した後は、第三積込配管23を通して液化二酸化炭素Lをタンク11に積み込む。これにより、液化二酸化炭素Lの積込を短時間で行うことが可能となる。
【0036】
<第三実施形態>
次に、本開示に係る浮体、液化二酸化炭素の積込方法の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、上述した第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図7に示すように、タンク設備10Cは、複数のタンク11と、積込配管20Cと、揚荷配管30と、移送配管40Cと、を少なくとも備えている。
積込配管20Cは、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込む。この第三実施形態の積込配管20Cは、複数のタンク11のそれぞれに一つずつ設けられている。
【0037】
揚荷配管30は、各タンク11内の液化二酸化炭素Lを、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外に送出する。揚荷配管30は、タンク11の外部からタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部に延びている。揚荷配管30の先端部は、タンク11内の下部に配置されている。揚荷配管30の先端部には、ポンプ31が備えられている。ポンプ31は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを吸い込む。揚荷配管30は、ポンプ31で吸い込んだ液化二酸化炭素Lを、タンク11外(船外)に送出する。この第三実施形態の揚荷配管30も、積込配管20Cと同様に、複数のタンク11のそれぞれに一つずつ設けられている。なお、以下の説明においては、複数のタンク11として第一のタンク11Pと第二のタンク11Qとの二つを備える場合を一例にして説明する。
【0038】
移送配管40Cは、第一のタンク11Pと第二のタンク11Qとの間に跨がるように配置されている。移送配管40Cは、第一のタンク11P内と第二のタンク11Q内とを連通させている。この移送配管40Cにより、第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに液化二酸化炭素Lを移送することが可能になっている。移送配管40Cは、第一移送配管41と、第二移送配管42と、を備えている。
【0039】
第一移送配管41は、第一のタンク11P側に配置されている。この第一移送配管41の第一端41aは、第一のタンク11P内に挿入され、第一のタンク11P内の下部で下方を向いて開口している。第一移送配管41は、第一端41aから上方に向かって延びて、第一のタンク11Pの外部に至っている。第一移送配管41のうち第一のタンク11Pと第二のタンク11Qとの双方の外部に配置されている中間部41bは、第一のタンク11P及び第二のタンク11Qの上方で水平方向に延びている。上記第一移送配管41は、第一の内径D11を有している。
【0040】
第二移送配管42の一端42aは、第一移送配管41に接続されている。第二移送配管42は、第二のタンク11Qの頂部を貫通して第二のタンク11Qの外部から内部に延びている。第二移送配管42は、第二のタンク11Q内で上下方向Dvに延びている。第二移送配管42の他端42bは、第二のタンク11Q内の下部で下方を向いて開口している。第二移送配管42は、第一の内径D11よりも小さい第二の内径D12を有している。この第三実施形態において、第二移送配管42は、その全長にわたって第二の内径D12を有している。第二移送配管42は、他端42b側の一定長のみを、第二の内径D12で形成し、一端42a側は、第一移送配管41と同じ第一の内径D11で形成してもよい。
【0041】
移送配管40Cには、開閉弁45が設けられている。開閉弁45は、移送配管40Cを開閉する。開閉弁45は、通常時は閉状態とされている。
各タンク11(第一のタンク11P、第二のタンク11Q)において、タンク11内の液化二酸化炭素Lを揚荷する場合は、各タンク11内で、揚荷配管30に設けられたポンプ31を作動させる。すると、ポンプ31によって、タンク11内の液化二酸化炭素Lが吸い込まれ、揚荷配管30を通して船外に送出される。
【0042】
第一のタンク11Pのポンプ31が、故障等によって所要の機能を発揮できない状態となった場合、開閉弁45を開状態とする。すると、移送配管40Cを通して、第一のタンク11P内と第二のタンク11Q内とが連通する。この状態で、第一のタンク11P以外の他のタンク(例えば、第二のタンク11Q)内の加圧用ガスGp(例えばボイルオフガス)を、不図示の加圧用ガス管を通して第一のタンク11Pに挿入する。すると、第一のタンク11P内の気相の圧力が高まり、第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lが加圧される。これにより、第一のタンク11P内の気相の圧力と第二のタンク11Q内の気相の圧力との圧力差により、第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lが、移送配管40C(第一移送配管41、第二移送配管42)を通して、第二のタンク11Q内に送り込まれる。第一のタンク11Pから第二のタンク11Q内に移送された液化二酸化炭素Lは、第二のタンク11Qの揚荷配管30に設けられたポンプ31により、揚荷配管30を通して船外に送出される。
【0043】
(作用効果)
上述したような船舶1では、液化二酸化炭素Lが、第一移送配管41から第二移送配管42を通して第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに移送される。第二のタンク11Qに移送された液化二酸化炭素Lは、第二のタンク11Qの揚荷配管30を通して外部に送り出される。このようにして、第一のタンク11Pの揚荷配管30で揚荷作業が行えない場合であっても、第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lを、第二のタンク11Qを介して外部に揚荷することができる。
そして、第二移送配管42の第二の内径D12が、第一移送配管41の第一の内径D11よりも小さいため、第二移送配管42では、第一移送配管41よりも、圧力損失ΔPが大きくなり、移送配管40Cを流通する液化二酸化炭素Lの圧力を圧力損失ΔPの分だけ高めることができる。そのため、移送配管40Cの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力が高められ、液化二酸化炭素Lの圧力が三重点圧力に近づくことを抑えることができる。これにより、移送配管40C内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、移送配管40Cにより第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに液化二酸化炭素Lを移送する場合においても、移送配管40C内のドライアイス生成を抑え、移送作業及び揚荷作業を円滑に行うことが可能となる。
【0044】
<第四実施形態>
次に、本開示に係る浮体、液化二酸化炭素の揚荷方法の第四の実施形態について説明する。以下に説明する第四の実施形態においては、第三実施形態に対し、第三移送配管43を備える構成のみが異なるので、第三実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、タンク設備10Dは、複数のタンク11と、複数の積込配管20Cと、複数の揚荷配管30と、移送配管40Dと、を少なくとも備えている。なお、この第四実施形態においても、タンク11が二つ(第一のタンク11P及び第二のタンク11Q)の場合を一例にして説明する。
【0046】
移送配管40Dは、第一のタンク11Pと第二のタンク11Qとの間に跨がるように配置されている。移送配管40Dは、第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに液化二酸化炭素Lを移送する。移送配管40Dは、第一移送配管41と、第二移送配管42と、第三移送配管43と、を備えている。
【0047】
第一移送配管41は、第一のタンク11P側に配置されている。この第一移送配管41の第一端41aは、第一のタンク11P内に挿入され、第一のタンク11P内の下部で下方を向いて開口している。第一移送配管41のうち、第一のタンク11Pと第二のタンク11Qとの双方の外部に配置されている中間部41bは、第一のタンク11P及び第二のタンク11Qの上方で水平方向に延びている。上記第一移送配管41は、第一の内径D11を有している。
【0048】
第二移送配管42の一端42a(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、第一移送配管41に接続されている。第二移送配管42は、第二のタンク11Qの頂部を貫通して第二のタンク11Qの外部から内部に延びている。第二移送配管42は、第二のタンク11Q内で上下方向Dvに延びている。第二移送配管42の他端42bは、第二のタンク11Q内の下部で下方を向いて開口している。第二移送配管42は、第一の内径D11よりも小さい第二の内径D12を有している。
【0049】
第三移送配管43の基端43a(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、第一移送配管41に接続されている。第三移送配管43は、第二のタンク11Qの頂部を貫通して第二のタンク11Qの外部から内部に延びている。第三移送配管43は、第二のタンク11Q内で上下方向Dvに延びている。第三移送配管43の先端43b(言い換えれば、上下方向Dvにおける下側端)は、タンク11内の下部で下方を向いて開口している。第三移送配管43は、第二の内径D2よりも大きい第三の内径D13を有している。なお、第三の内径D13は、第一移送配管41の第一の内径D11と同一であってもよい。
【0050】
第二移送配管42には、開閉弁46が設けられている。開閉弁46は、第二移送配管42を開閉する。第三移送配管43には、開閉弁47が設けられている。開閉弁47は、第三移送配管43を開閉する。開閉弁46、47は、通常時は閉状態とされている。
各タンク(第一のタンク11P、第二のタンク11Q)において、タンク11内の液化二酸化炭素Lを揚荷する場合は、各タンク11内で、揚荷配管30に設けられたポンプ31を作動させる。すると、ポンプ31によって、タンク11内の液化二酸化炭素Lが吸い込まれ、揚荷配管30を通して船外に送出される。
【0051】
(液化二酸化炭素の揚荷方法の手順)
第一のタンク11Pのポンプ31が、故障等によって所要の機能を発揮できない状態となった場合、以下の液化二酸化炭素の揚荷方法S11を実行する。
図9に示すように、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の揚荷方法S11は、第二移送配管42を通して液化二酸化炭素Lを移送する工程S12と、第三移送配管43を通して液化二酸化炭素Lを移送する工程S13と、液化二酸化炭素Lを外部に送り出す工程S14と、を含んでいる。
【0052】
図10に示すように、第二移送配管42を通して液化二酸化炭素Lを移送する工程S12では、開閉弁46を開状態、開閉弁47を閉状態とする。これにより、第一移送配管41と第二移送配管42とが連通された状態になる。この状態で、加圧用ガスGpとして、第一のタンク11P以外の他のタンク(例えば、第二のタンク11Q)内のボイルオフガスを、不図示の加圧用ガス管を通して第一のタンク11Pに導入する。すると、第一のタンク11P内の気相の圧力が高まり、第一のタンク11P内の気相の圧力と、第二のタンク11Q内の気相の圧力との圧力差が生じる。これにより、第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lが、第一移送配管41、第二移送配管42を通して、第二のタンク11Q内に送り込まれる。このとき、第二移送配管42の第二の内径D2は、第一移送配管41の第一の内径D1よりも小さい。そのため、第二移送配管42における圧力損失ΔPが大きくなり、移送配管40D内でドライアイスが生成されることを抑えつつ、液化二酸化炭素Lの積込が行われる。
【0053】
図11に示すように、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lの液位が、予め定めた規定液位に到達したら、第三移送配管43を通して液化二酸化炭素Lを移送する工程S13に移行する。これには、開閉弁46を閉状態、開閉弁47を開状態にする。これにより、第一移送配管41と第三移送配管43とが連通された状態になる。
上記のようにタンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、規定液位に達すると、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lと移送配管40Dの配管頂部との差圧が小さくなる。これにより、移送配管40Dの配管頂部で液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となる。
このような状態で工程S13が実施される。この工程S13では、上記と同様に加圧用ガスGpを用い、第一移送配管41から第三移送配管43を通して、第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lを第二のタンク11Q内に移送する。このとき、第三移送配管43の第三の内径D3は、第二移送配管42の第二の内径D2よりも大きい。そのため、工程S12に比較し、第三移送配管43を通して第二のタンク11Q内に供給する液化二酸化炭素Lの流量を増大させることができる。
【0054】
液化二酸化炭素Lを第二のタンク11Qの外部に送り出す工程S14では、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lを、揚荷配管30によりタンク11の外部に送り出す。このような工程S14は、上記の工程S12、S13と並行して実施しても良い。
【0055】
(作用効果)
上述したような船舶1、液化二酸化炭素Lの揚荷方法S11では、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が低いときには、第二移送配管42を通して液化二酸化炭素Lを第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに移送することで、移送配管40D内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。また、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lと移送配管40Dの配管頂部との差圧が小さくなり、配管頂部で液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となった場合には、第三移送配管43を通して液化二酸化炭素Lを第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに移送する。これにより、液化二酸化炭素Lの移送を短時間で行うことができる。その結果、移送配管40Dにより第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに液化二酸化炭素Lを移送する場合においても、移送配管40D内のドライアイス生成を抑え、移送作業及び揚荷作業を円滑に行うことが可能となる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記各実施形態では、二つのタンク11を備える構成としたが、タンク11の個数や配置はこれに限られない。三つ以上のタンク11を備えていてもよい。また、上記各実施形態では、複数のタンク11を船首尾方向Daに並べて配置する場合を例示したが、タンク11は、船幅方向(言い換えれば、左右舷方向)に並べて配置してもよい。
【0057】
また、上記各実施形態では、浮体として船舶1を例示したが、これに限られない。浮体は、推進機構を備えない洋上浮体設備であってもよい。
【0058】
<付記>
各実施形態に記載の浮体1、液化二酸化炭素Lの積込方法、液化二酸化炭素Lの揚荷方法は、例えば以下のように把握される。
【0059】
(1)第1の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、前記浮体本体2に配置され、液化二酸化炭素Lを貯留可能なタンク11と、外部から供給される液化二酸化炭素Lを前記タンク11内に放出する積込配管20A、20Bと、を備え、前記積込配管20A、20Bは、前記タンク11の外部に配置され、第一の内径D1を有した第一積込配管21と、一端22aが前記第一積込配管21に接続されるとともに、他端22bが前記タンク11内で開口し、前記第一の内径D1よりも小さい第二の内径D2を有した第二積込配管22と、を備える。
浮体1の例としては、船舶や洋上浮体設備が挙げられる。浮体本体2の例としては、船体や洋上浮体設備の浮体本体2が挙げられる。
【0060】
この浮体1では、液化二酸化炭素Lが、第一積込配管21から第二積込配管22を通してタンク11内に積み込まれる。第二積込配管22の第二の内径D2は、第一積込配管21の第一の内径D1よりも小さい。そのため、第二積込配管22では、第一積込配管21よりも、圧力損失ΔPが大きくなる。これにより、積込配管20A、20Bを流通する液化二酸化炭素Lの圧力が圧力損失ΔPの分だけ高められる。積込配管20A、20Bの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力が高められることで、液化二酸化炭素Lの圧力が三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、積込配管20A、20B内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管20A、20B内のドライアイス生成を抑え、積込作業を円滑に行うことが可能となる。
【0061】
(2)第2の態様に係る浮体1は、(1)の浮体1であって、前記積込配管20Bは、基端23aが前記第一積込配管21に接続され、先端23bが前記タンク11内で開口し、前記第二の内径D2よりも大きい第三の内径D3を有した第三積込配管23、を更に備える。
【0062】
これにより、第二積込配管22よりも大きな第三の内径D3を有した第三積込配管23を通して液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込めば、液化二酸化炭素Lの積込を短時間で行うことができる。
【0063】
(3)第3の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、前記浮体本体2に配置され、液化二酸化炭素Lを貯留可能な複数のタンク11と、複数の前記タンク11のそれぞれに設けられて、前記タンク11内の液化二酸化炭素Lを前記浮体本体2の外部に送り出す揚荷配管30と、前記複数のタンク11をなす第一のタンク11Pと第二のタンク11Qとの間に跨がるように配置され、前記第一のタンク11P内と前記第二のタンク11Q内とを連通させる移送配管40C,40Dと、を備え、前記移送配管40C,40Dは、前記第一のタンク11P側に配置され、第一の内径D11を有した第一移送配管41と、一端42aが前記第一移送配管41に接続されるとともに、他端42bが前記第二のタンク11Q内で開口し、前記第一の内径D11よりも小さい第二の内径D12を有した第二移送配管42と、を備える。
【0064】
これにより、移送配管40C、40Dを通して、第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに液化二酸化炭素Lを移送することができる。第二のタンク11Qに移送された液化二酸化炭素Lは、第二のタンク11Qの揚荷配管30を通して外部に送り出される。このようにして、第一のタンク11Pの揚荷配管30で揚荷作業が行えない場合であっても、第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lを、第二のタンク11Qを介して外部に揚荷することができる。
第二移送配管42の第二の内径D12は、第一移送配管41の第一の内径D11よりも小さい。そのため、第二移送配管42では、第一移送配管41よりも、圧力損失ΔPが大きくなる。これにより、移送配管40C、40Dを流通する液化二酸化炭素Lの圧力が圧力損失ΔPの分だけ高められる。移送配管40C、40Dの配管頂部における液化二酸化炭素Lの圧力が高められることで、液化二酸化炭素Lの圧力が三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、移送配管40C、40D内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、移送配管40C、40D内のドライアイス生成を抑え、移送作業及び揚荷作業を円滑に行うことが可能となる。
【0065】
(4)第4の態様に係る浮体1は、(3)の浮体1であって、前記移送配管40Dは、基端43aが前記第一移送配管41に接続され、先端43bが前記第二のタンク11Q内で開口し、前記第二の内径D12よりも大きい第三の内径D13を有した第三移送配管43、を更に備える。
【0066】
これにより、第二移送配管42よりも大きな第三の内径D13を有した第三移送配管43を通して液化二酸化炭素Lを移送すれば、液化二酸化炭素Lの移送を短時間で行うことができる。
【0067】
(5)第5の態様に係る液化二酸化炭素Lの積込方法S1は、(2)の浮体1における、液化二酸化炭素Lの積込方法S1であって、前記第一積込配管21から前記第二積込配管22を通して前記タンク11内に液化二酸化炭素Lを積み込む工程S2と、前記タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が定められた液位に到達したら、前記第一積込配管21から前記第三積込配管23を通して前記タンク11内に液化二酸化炭素Lを積み込む工程S3と、を含む。
【0068】
これにより、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が低いときには、第一積込配管21を通して液化二酸化炭素Lをタンク11に積み込むことで、積込配管20B内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。また、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、タンク11内の液化二酸化炭素Lと積込配管20Bの配管頂部との差圧が小さくなり、配管頂部で液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となった場合には、第三積込配管23を通して液化二酸化炭素Lをタンク11に積み込む。これにより、液化二酸化炭素Lの積込を短時間で行うことができる。
【0069】
(6)第6の態様に係る液化二酸化炭素Lの揚荷方法S11は、(4)の浮体1における、液化二酸化炭素Lの揚荷方法S11であって、前記第一のタンク11P内を加圧することで、前記第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lを、前記第一移送配管41から前記第二移送配管42を通して前記第二のタンク11Q内に移送する工程S12と、前記第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lの液位が定められた液位に到達したら、前記第一のタンク11P内の液化二酸化炭素Lを、前記第一移送配管41から前記第三移送配管43を通して前記第二のタンク11Q内に移送する工程S13と、前記第二のタンク11Q内の前記液化二酸化炭素Lを、前記揚荷配管30により前記第二のタンク11Qの外部に送り出す工程S14と、を含む。
【0070】
これにより、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lの液位が低いときには、第二移送配管42を通して液化二酸化炭素Lを第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに移送することで、移送配管40D内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。また、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、第二のタンク11Q内の液化二酸化炭素Lと移送配管40Dの配管頂部との差圧が小さくなり、配管頂部で液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となった場合には、第三移送配管43を通して液化二酸化炭素Lを第一のタンク11Pから第二のタンク11Qに移送する。これにより、液化二酸化炭素Lの移送を短時間で行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1…船舶(浮体)
2…船体(浮体本体)
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
5…上甲板
7…上部構造
8…貨物搭載区画
10A~10D…タンク設備
11…タンク
11P…第一のタンク
11Q…第二のタンク
12…筒状部
13…端部球状部
20A~20C…積込配管
21…第一積込配管
22…第二積込配管
22a…一端
22b…他端
23…第三積込配管
23a…基端
23b…先端
24、25…開閉弁
30…揚荷配管
31…ポンプ
40C,40D…移送配管
41…第一移送配管
41a…第一端
41b…中間部
42…第二移送配管
42a…一端
42b…他端
43…第三移送配管
43a…基端
43b…先端
45~47…開閉弁
Gp…加圧用ガス
L…液化二酸化炭素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11