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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/10 20060101AFI20240927BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20240927BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E03D11/10
E03D5/10
E03D11/02 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020188850
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077823
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159202(JP,A)
【文献】特開2011-202400(JP,A)
【文献】特開2007-224524(JP,A)
【文献】特開2003-278253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路であって、下流側に向かうに連れて上昇する上昇水路と、前記上昇水路の内下面の上端縁部を少なくとも構成する水路頂部と有する排水管路と、
前記排水管路の下流側に向けて水を吐き出し、前記水路頂部よりも下方に設けられるジェット吐出部と、
前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更することで、前記排水管路内における封水の貯留容量を可変に設定可能な水位設定機構と、を備える便器装置。
【請求項2】
前記水位設定機構は、前記封水によって前記排水管路が遮断された状態のまま、下限水位から上限水位までの水位範囲内で前記許容水位を変更可能である請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、
前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と
力によって動作可能な電動部と、を備え
記水位設定機構は、前記封水によって前記排水管路が遮断された状態のまま、下限水位から上限水位までの水位範囲内で前記許容水位を変更可能であり
記水位設定機構は、前記電動部の動作に連動して前記許容水位を変更可能であり、
前記許容水位は、前記電動部が動作を解除した状態にあるとき、前記下限水位よりも高い水位に維持される便器装置。
【請求項4】
前記排水管路内において前記排水管路を遮断する前記封水よりも下流側に設けられる管内空間を備え、
前記管内空間は、本便器装置の周囲の大気空間とは別に設けられ、前記管内空間のエアを逃がすための逃がし空間に連通される請求項1から3のいずれか1項に記載の便器装置。
【請求項5】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、
前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と、を備え、
記水位設定機構は、前記排水管路の内部水路の開度を調整することで前記許容水位を変更可能な弁部材を備える便器装置。
【請求項6】
前記排水管路内において前記排水管路を遮断する前記封水よりも下流側に設けられる管内空間を備え、
前記管内空間は、
閉位置にある前記弁部材よりも上流側に設けられる上流側空間と、
前記閉位置にある前記弁部材よりも下流側に設けられる下流側空間と、
前記上流側空間と前記下流側空間を連通するエア抜き経路と、を有する請求項5に記載の便器装置。
【請求項7】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、
前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と、を備え、
記排水管路は、前記便器本体の一部として前記便器本体に設けられる便器排水路と、前記便器排水路に着脱可能に接続される管路構成部材と、を備え、
前記水位設定機構は、前記管路構成部材に取り付けられる便器装置。
【請求項8】
前記水位設定機構を駆動可能な駆動源と、
前記便器本体に給水することによって便器洗浄を実行可能な給水装置と、を備え、
前記駆動源は、
前記便器洗浄前に、前記許容水位を上げるように前記水位設定機構を駆動する嵩上げ駆動を実行し、
前記便器洗浄中に、前記許容水位を下げるように前記水位設定機構を駆動する嵩下げ駆動を実行する請求項1または2に記載の便器装置。
【請求項9】
前記給水装置は、前記嵩上げ駆動後かつ前記嵩下げ駆動前に、前記封水の実水位を上げるための水を前記便器本体に足す水足し動作を実行可能である請求項8に記載の便器装置。
【請求項10】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端側部分を構成するリム部を備え、
本便器装置は、前記リム部に設けられ、前記便鉢部内に水を吐き出すリム吐出部を備え、
前記給水装置は、前記便器洗浄を実行するとき、前記リム吐出部のみに給水するリム洗浄と、少なくとも前記ジェット吐出部に給水するジェット洗浄とを順に実行可能であり、 前記駆動源は、前記ジェット洗浄中に前記嵩下げ駆動を実行する請求項8から9のいずれかに記載の便器装置。
【請求項11】
前記給水装置は、前記嵩上げ駆動後かつ前記嵩下げ駆動前に、前記封水の実水位を上げるための水を前記便器本体に足す水足し動作を実行可能であり
記便器本体は、前記便鉢部の上端側部分を構成するリム部を備え、
本便器装置は、前記リム部に設けられ、前記便鉢部内に水を吐き出すリム吐出部を備え、
前記給水装置は、前記便器洗浄を実行するとき、前記リム吐出部のみに給水するリム洗浄と、少なくとも前記ジェット吐出部に給水するジェット洗浄とを順に実行可能であり、 前記駆動源は、前記ジェット洗浄中に前記嵩下げ駆動を実行し、
記給水装置は、前記リム洗浄を実行することによって、前記水足し動作を実行する請求項に記載の便器装置。
【請求項12】
便鉢部と、前記便鉢部の上端側部分を構成するリム部とを有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、
前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と
記水位設定機構を駆動可能な駆動源と、
前記便器本体に給水することによって便器洗浄を実行可能な給水装置と
記リム部に設けられ、前記便鉢部内に水を吐き出すリム吐出部と、
前記排水管路の下流側に向けて水を吐き出すジェット吐出部と、を備え
記駆動源は、
前記便器洗浄前に、前記許容水位を上げるように前記水位設定機構を駆動する嵩上げ駆動を実行し、
前記便器洗浄中に、前記許容水位を下げるように前記水位設定機構を駆動する嵩下げ駆動を実行し、
記給水装置は、前記便器洗浄を実行するとき、前記リム吐出部のみに給水するリム洗浄と、少なくとも前記ジェット吐出部に給水するジェット洗浄とを順に実行可能であり、 前記駆動源は、前記ジェット洗浄中に前記嵩下げ駆動を実行し、
記水位設定機構は、前記排水管路の内部水路の開度を調整することで前記許容水位を変更可能な弁部材を備え、
前記給水装置は、前記便器洗浄を実行するとき、前記ジェット洗浄後に前記封水となる水を前記便器本体に給水する水溜め動作を実行可能であり、
前記駆動源は、前記水溜め動作中に前記嵩上げ駆動を実行する便器装置。
【請求項13】
ユーザの特定動作を検知可能なセンサを備え、
前記給水装置は、前記センサの検知結果に基づいて、前記水足し動作を実行する請求項9または11に記載の便器装置。
【請求項14】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、
前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と
記水位設定機構を駆動可能な駆動源と、
前記便器本体に給水することによって便器洗浄を実行可能な給水装置と、を備え、
前記駆動源は、
前記便器洗浄前に、前記許容水位を上げるように前記水位設定機構を駆動する嵩上げ駆動を実行し、
前記便器洗浄中に、前記許容水位を下げるように前記水位設定機構を駆動する嵩下げ駆動を実行し、
記駆動源は、前記給水装置の給水路に接続される蓄圧器であり、
前記蓄圧器は、
加圧した状態の水を前記給水路に放出する動作に連動して前記嵩下げ駆動を実行し、
前記給水路から水を導入する動作に連動して前記嵩上げ駆動を実行する便器装置。
【請求項15】
便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路であって、下流側に向かうに連れて上昇する上昇水路と、前記上昇水路の内下面の上端縁部を少なくとも構成する水路頂部と有する排水管路と、
前記排水管路の下流側に向けて水を吐き出し、前記水路頂部よりも下方に設けられるジェット吐出部と、
前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更することで、前記排水管路内における封水の貯留容量を可変に設定可能な水位設定機構と、を備える便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、便鉢部を有する便器本体と、便鉢部の底部に接続される排水管路と、排水管路の一部を開閉する管路開閉手段と、排水管路内に送風する送風手段とを備える便器装置を開示する。この便器装置は、便鉢部での汚物の付着を防ぐため、管路開閉手段によって排水管路の一部が閉鎖された状態で送風手段を駆動することで、便鉢部内の溜水の水位を上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-159202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1の開示技術に関して検討を進めた結果、次の新たな認識を得るに至った。特許文献1の開示技術は、便鉢部内の溜水の水位に着目しているものの、排水管路内に貯留される封水の水位に関しては考慮していない。この封水の水位との関係で、便器洗浄時において、排水管路を通して排出される水の流量(以下、排水流量という)を調整するうえで、特許文献1の開示技術は改良の余地があった。
【0005】
本開示の目的の1つは、便器洗浄時における排水流量を調整できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便器装置は、便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、前記排水管路内に前記封水が貯留された状態のまま、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と、を備える。
【0007】
本開示の他の便器装置は、便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部の底部に接続され、自身の内部に封水を貯留する排水管路と、前記排水管路の下流側に向けて水を吐き出し、前記排水管路の水路頂部よりも下方に設けられるジェット吐出部と、前記排水管路内に貯留できる前記封水の最高水位である許容水位を変更可能な水位設定機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の便器装置に関する側面断面図である。
図2】第1実施形態の便器装置に関する他の側面断面図である。
図3図1の拡大図である。
図4図2の拡大図である。
図5図3の弁部材の斜視図である。
図6図4のVI-VI断面の一部を示す断面図である。
図7】第1実施形態の便器装置に関する構成図である。
図8】第1実施形態の便器装置に関する他の構成図である。
図9】第1実施形態の便器洗浄に関連する動作を示す流れ図である。
図10A】第1実施形態の便器洗浄に関連する第1の動作図である。
図10B】第1実施形態の便器洗浄に関連する第2の動作図である。
図10C】第1実施形態の便器洗浄に関連する第3の動作図である。
図10D】第1実施形態の便器洗浄に関連する第4の動作図である。
図10E】第1実施形態の便器洗浄に関連する第5の動作図である。
図11】第2実施形態の便器装置に関する側面断面図である。
図12】第2実施形態の便器装置に関する他の側面断面図である。
図13】第3実施形態の便器装置に関する構成図である。
図14】第3実施形態の便器洗浄に関連する動作を示す流れ図である。
図15】第3実施形態の便器洗浄に関連する動作図である。
図16】第4実施形態の便器装置に関する構成図である。
図17】第4実施形態の便器洗浄に関連する動作を示す流れ図である。
図18】第5実施形態の便器装置に関する側面断面図である。
図19】変形形態の便器装置に関する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は、符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「取り付け」、「接続」とは、特に明示がない限り、言及する条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
【0010】
以下、各構成要素の位置関係に関して、互いに直交する三つの方向を用いて説明する。この方向とは、前後方向X、左右方向(図示せず)及び上下方向Zである。前後方向X、左右方向は水平方向であり、便器本体14に搭載される便座11に通常の姿勢で座る着座者の前後左右と対応する。上下方向Zは鉛直方向である。
【0011】
(第1実施形態)図1図2を参照する。図1は、後述する弁部材44が開位置Pa1にあり、図2は、弁部材44が閉位置Pa2にある状態を示す。便器装置10は、主に、汚物を受けるための便鉢部12を有する便器本体14と、便鉢部12に接続される排水管路16と、排水管路16内に貯留される封水Waの許容水位(後述する)を設定可能な水位設定機構18とを備える。
【0012】
本実施形態の便器本体14は陶器を素材とする。便器本体14の素材は特に限られず、例えば、樹脂、金属等でもよい。便器本体14は洋風大便器である。本実施形態の便器本体14は、便鉢部12内の溜水Wbの水位上昇により生じる落差を用いて汚物を押し流す洗い落とし式である。便器本体14は、便鉢部12の上端側部分を構成するリム部20を備える。リム部20の内周面は、便鉢部12の上端開口部12aから下方に向かう一部の範囲を構成する。
【0013】
便器装置10は、便器本体14の内部に水を吐き出す吐出部22A、22Bを備える。吐出部22A、22Bは、リム部20に設けられるリム吐出部22Aと、排水管路16の下流側に向けて水を吐き出すジェット吐出部22Bと、を含む。
【0014】
本実施形態のリム吐出部22Aは、便器本体14の一部として設けられ、リム部20の内周面に開口するリム吐出孔である。この他にも、リム吐出部22Aは、便器本体14とは別体のノズル等でもよい。リム吐出部22Aは、給水装置72(後述する)を通して供給される水を吐き出す。リム吐出部22Aは、便鉢部12内に水を吐き出すことによって、便鉢部12内を洗浄する洗浄水流を形成する。
【0015】
本実施形態のジェット吐出部22Bは、便器本体14の一部として設けられ、排水管路16の内壁面に開口するジェット吐出孔である。この他にも、ジェット吐出部22Bは、便器本体14とは別体のノズル等でもよい。ジェット吐出部22Bは、排水管路16の水路頂部42の最低位置(後述する)よりも下方に設けられる。ジェット吐出部22Bは、給水装置72(後述する)を通して供給される水を吐き出す。ジェット吐出部22Bは、排水管路16の下流側に向けて水を吐き出すことによって、汚物の排出を促進するジェット水流を形成する。
【0016】
排水管路16は、建物に設置される排水管24に接続される。本実施形態の排水管24は、トイレ室の床Fに設置される床排水仕様である。排水管路16の入口16aは便鉢部12の底部に開口する。排水管路16は、便器本体14の一部として便器本体14に設けられる便器排水路26を備える。本実施形態の排水管路16は、更に、便器排水路26と排水管24を接続する排水ソケット28と、便器排水路26と排水ソケット28を接続する接続配管30と、を備える。本実施形態の便器排水路26は、便器排水路26の下流側端部から上流側に向かう範囲の全域において、陶器によって構成される。
【0017】
排水管路16は、排水管路16の内部に形成されるとともに汚物等の通り道となる内部水路32を備える。内部水路32は、下流側に向かうに連れて上昇する上昇水路34と、上昇水路34よりも下流側に設けられ、下流側に向かうに連れて下降する下降水路36とを備える。本実施形態の内部水路32は、この他に、上昇水路34と下降水路36を接続するストレート水路38を備える。本実施形態において、上昇水路34は便器排水路26に設けられ、下降水路36は排水ソケット28に設けられる。本実施形態のストレート水路38は、下流側に向かうにつれて後向きに直線的に延びており、便器排水路26の下流側端部及び接続配管30の内部に設けられる。
【0018】
排水管路16は、便器排水路26に設けられ、自身の内部に封水Waを貯留可能な封水貯留部40を備える。封水貯留部40は、上昇水路34を含む範囲において、排水管路16の入口16aから排水管路16の奥側に向かって設けられる。封水Waは、排水管路16内における流れ方向での気体の流れを遮断する。封水Waの一部は、溜水Wbとして便鉢部12内に溜められる。
【0019】
図3図4を参照する。内部水路32は、上昇水路34と下降水路36との間に設けられる水路頂部42を備える。水路頂部42は、上昇水路34の内下面の上端縁部を少なくとも構成している。本実施形態の水路頂部42は、上昇水路34の他に、ストレート水路38の内下面によって構成される。本実施形態の水路頂部42は、便器排水路26によって構成される便器部分42aと、便器部分42aよりも下流側に設けられ、後述する弁部材44によって構成される弁部分42bとを備える。水路頂部42は、封水Waの許容水位が下限水位WL1(後述する)にあるとき、上昇水路34内の水が下降水路36内に流れ込むときに越えるべき箇所となる。排水管路16内に水路頂部42の最低位置を超える水が入り込んだとき、その水が水路頂部42から下流側に溢れ出ることで、封水Waの許容水位が下限水位WL1(後述する)に設定される。
【0020】
水位設定機構18は、排水管路16内に貯留できる封水Waの最高水位である許容水位を可変に設定可能である。ここでの「許容水位」とは、封水Waが静止した状態にあるとき、封水貯留部40を含む範囲において、排水管路16内に貯留できる封水Waの最高水位をいう。ここでの「封水Waの水位」とは、排水管路16内における封水Waの水面Wcの高さ位置をいい、便鉢部12内における溜水Wbの水面Wdの高さ位置は考慮しない(図1図2も参照)。ここでの高さ位置とは、上下方向Zでの位置をいう。
【0021】
図3図5を参照する。本実施形態の水位設定機構18は、排水管路16の内部水路32の開度を調整可能な弁部材44を備える。弁部材44は、上昇水路34とは別の箇所の開度、詳しくは、上昇水路34よりも下流側においてストレート水路38の開度を調整可能である。弁部材44は、内部水路32において水路頂部42のある箇所の開度を調整可能であるともいえる。弁部材44は、内部水路32において水路頂部42の便器部分42aよりも下流側に配置される。
【0022】
本実施形態の弁部材44は、可変容積室46を備える袋体である。本実施形態の弁部材44は、外筒部48と内筒部50を備える二重筒構造の袋体である。可変容積室46は、外筒部48と内筒部50との間に形成される。外筒部48は、可変容積室46に対して圧力伝達媒体を出し入れするための環状開口部52と、環状開口部52の周縁部を形成するとともに排水管路16に取り付けられる一対の取付部54と、可変容積室46の容積の増減に伴い伸縮可能なベローズ部56と、を備える。
【0023】
弁部材44は、内部水路32の少なくとも一部を閉塞可能な弁体部58A、58Bを備える。本実施形態の弁体部58A、58Bは、下側に設けられる第1弁体部58A(以下、下側弁体部58Aという)と、上側に設けられる第2弁体部58B(以下、上側弁体部58Bという)とを含む。下側弁体部58Aは、内筒部50の下側部分によって構成され、上側弁体部58Bは、内筒部50の上側部分によって構成される。
【0024】
弁部材44は、可変容積室46の容積を変化させることによって内部水路32の開度を調整可能である。詳しくは、弁部材44は、可変容積室46の収縮によって内部水路32の開度を大きくする(図3参照)。弁部材44は、可変容積室46の膨張によって内部水路32の開度を小さくする(図4参照)。以下、弁部材44の位置に関して、弁部材44によって調整可能な範囲において、内部水路32の開度を最も大きくする位置を開位置Pa1といい、内部水路32の開度を最も小さくする位置を閉位置Pa2という。弁部材44が開位置Pa1にあるとき、内部水路32を流れることのできる流体(例えば、水等)の流量が最大となる。弁部材44が閉位置Pa2にあるとき、内部水路32を流れることのできる流体の流量が最小となる。
【0025】
弁部材44は、弁部材44の下流側端部に設けられる環状端面部44aを備える。環状端面部44aは、弁部材44が開位置Pa1にあるとき、側面視において、上流側に向かって窪む凹部44bを備える。下側弁体部58Aの下流側端部は、凹部44bにおいて凹部44bの底部44cより上側の部分を形成する。上側弁体部58Bの下流側端部は、凹部44bにおいて凹部44bの底部44cより下側の部分を形成する。
【0026】
本実施形態の弁部材44は、その内部に内部水路32の一部を形成している。この条件は、少なくとも弁部材44が開位置Pa1にあるときに満たされ、本実施形態では閉位置Pa2にあるときも満たされる。本実施形態の弁部材44は、中心線CL1に直交する断面において、下側弁体部58Aによって、内部水路32の内下面の少なくとも一部を形成している。これは、少なくとも弁部材44が開位置Pa1にあるときに満たされ、本実施形態では、弁部材44が閉位置Pa2にあるときも満たされる。この他にも、本実施形態の弁部材44は、中心線CL1に直交する断面において、上側弁体部58によって、内部水路32の内上面の少なくとも一部を形成している。ここでの「内下面」は、例えば、内部水路32において中心線CL1から下方の面をいい、「内上面」は、内部水路32において中心線CL1から上方の面をいう。本実施形態の弁部材44は、内部水路32の一部としてストレート水路38を形成している。
【0027】
本実施形態の弁部材44は、その凹部44bの底部44cよりも上流側において、中心線CL1周りの全周に亘る範囲において内部水路32を形成している。この条件は、本実施形態において、凹部44bの底部44cから弁部材44の上流側端部までの中心線方向Ddでの範囲において満たされる。ここでの中心線方向Ddとは、内部水路32の中心線CL1に沿った方向をいう。この条件は、弁部材44によって調整される内部水路32の開度によらず満たされる。
【0028】
図3図4図6を参照する。水位設定機構18は、弁部材44によって内部水路32の開度を調整することによって、封水Waの許容水位を可変に設定可能である。詳しくは、下側弁体部58Aは、開位置Pa1にあるとき、内部水路32の中心線CL1に沿って延びるように設けられ、内部水路32の中心線CL1周りにある内周面の一部となる(図3参照)。このとき、下側弁体部58Aは、排水管路16内に封水Waを堰き止め不能となり、水路頂部42を構成する。このとき、上側弁体部58Bも、内部水路32の中心線CL1に沿って延びるように設けられ、内部水路32の中心線CL1周りにある内周面の一部となる。このとき、水位設定機構18によって設定される封水Waの許容水位は、水路頂部42の最低位置42cに揃う高さ位置にある下限水位WL1となる。ここでの最低位置42c(図6参照)とは、内部水路32の中心線CL1と直交する断面において水路頂部42で最も低い位置をいう。下限水位WL1にあるとき、弁部材44は、封水Waを堰き止め不能である。下限水位WL1にあるとき、弁部材44の内部水路32を形成する箇所は、下流側に向かう途中で、内部水路32において上向きに突き出る段部を形成しない形状であるともいうことができる。
【0029】
下側弁体部58Aは、閉位置Pa2にあるとき、内部水路32の内下面から上向きに突き出ており、下流側に向かうに連れて連続的に高くなるように設けられる(図4参照)。このとき、下側弁体部58Aは、排水管路16内に封水Waを堰き止め可能となる。このとき、上側弁体部58Bは、内部水路32の内上面から下向きに突き出ており、下流側に向かうに連れて連続的に低くなるように設けられる。このとき、水位設定機構18によって設定される封水Waの許容水位は、下側弁体部58Aの上端縁部58aの最低位置58bに揃う高さ位置にある上限水位WL2となる。水位設定機構18は、水路頂部42の最低位置42cよりも上方に許容水位を設定可能であるともいえる。
【0030】
このように水位設定機構18は、下限水位WL1から上限水位WL2までの水位範囲内で封水Waの許容水位を変更可能である。本実施形態の水位設定機構18は、この水位範囲において段階的、詳しくは、下限水位WL1と上限水位WL2との二段階に許容水位を設定可能である。水位設定機構18は、この他にも、この水位範囲において三段階以上の段階的に許容水位を設定可能でもよいし、この水位範囲において連続的に許容水位を設定可能であってもよい。本実施形態の水位設定機構18は、便器排水路26を動かすことなく許容水位を変更可能である。
【0031】
水位設定機構18は、封水Waの許容水位を変更することで、排水管路16内における封水Waの貯留容量も可変に設定可能である。ここでの「封水Waの貯留容量」とは、封水Waが静止した状態にあるとき、封水貯留部40を含む範囲において、排水管路16内に貯留できる封水Waの最大量をいう。封水Waの許容水位が下限水位WL1に設定される場合、封水Waの貯留容量は小さくなる。封水Waの許容水位が上限水位WL2に設定される場合、封水Waの貯留容量は大きくなる。
【0032】
本実施形態の水位設定機構18は、排水管路16内に封水Waが貯留された状態のまま、封水Waの許容水位を変更可能である。例えば、排水管路16内に封水Waが貯留された状態のまま、水位設定機構18によって封水Waの許容水位を下限水位WL1から上限水位WL2まで上げることができる。封水Waの許容水位を上限水位WL2から下限水位WL1まで下げる過程でも同様である。ここでの「封水Waが貯留された状態」という条件を満たすうえで、封水Waによって排水管路16を遮断していなくともよい。例えば、封水Waの許容水位が下限水位WL1にあるとき、封水Waによって排水管路16を遮断していなくともよいということである。
【0033】
本実施形態の水位設定機構18は、封水Waによって排水管路16が遮断された状態のまま、下限水位WL1から上限水位WL2までの水位範囲内で、封水Waの許容水位を変更可能である(図1図2も参照)。水位設定機構18によって設定される封水Waの許容水位によらず、封水Waによって排水管路16内での気体の流れを遮断可能であるということである。水位設定機構18によって設定される封水Waの許容水位は、水位範囲内の何れにあるときも、封水貯留部40の内上面の最深箇所40aよりも上方に設けられることになる。
【0034】
弁部材44の下側弁体部58Aは、開位置Pa1から閉位置Pa2に動く過程で上昇するように動き、閉位置Pa2から開位置Pa1に動く過程で下降するように動く。弁部材44は、少なくとも部分的に上昇することによって開位置Pa1から閉位置Pa2に動き、少なくとも部分的に下降することによって閉位置Pa2から開位置Pa1に動くことになる。別の観点からいうと、水位設定機構18は、少なくとも弁部材44の一部を上昇させることによって許容水位を上げ、少なくとも弁部材44の一部を下降させることによって許容水位を下げることになる。
【0035】
図1図2を参照する。便器装置10は、排水管路16内において排水管路16を遮断する封水Waよりも下流側に設けられる管内空間60を備える。管内空間60は、封水Waの水面Wc上から排水管路16の下流端部までの範囲に設けられる。管内空間60は、便器装置10の周囲の大気空間63とは別に設けられる逃がし空間64に連通される。ここでの大気空間63とは、大気が満ちている空間をいう。逃がし空間64は、排水管路16が遮断された状態のまま封水Waの実水位を上げるときに、管内空間60のエアを逃がすために用いられる。本実施形態の逃がし空間64は、排水管24の内部空間によって構成される。大気空間63とは別に逃がし空間64を設けることで、封水Waの実水位を上げるときに、排水管24内の臭気が大気空間63に漏れ出る事態を避けることができる。
【0036】
管内空間60は、閉位置Pa2にある弁部材44よりも上流側に設けられる上流側空間62と、閉位置Pa2にある弁部材44よりも下流側に設けられる下流側空間64と、上流側空間62と下流側空間64を連通するエア抜き経路66と、を有する。
【0037】
上流側空間62は、排水管路16において封水Waの水面Wcから閉位置Pa2にある弁部材44までの範囲に設けられる。下流側空間64は、排水管路16において閉位置Pa2にある弁部材44から排水管路16の下流側端部までの範囲に設けられる。上流側空間62は、排水管路16における弁部材44による開度調整箇所よりも上流側に設けられ、下流側空間64は、その開度調整箇所よりも下流側に設けられるとも捉えることができる。下流側空間64は、前述の逃がし空間64に連通している。
【0038】
本実施形態のエア抜き経路66は、弁部材44の下側弁体部58Aと上側弁体部58Bとの間に形成される(図6も参照)。エア抜き経路66は、弁部材44が閉位置Pa2に配置された状態のまま封水Waの実水位を上げるとき、上流側空間62のエアを下流側空間64に抜くために用いられる。
【0039】
以上の工夫点による効果を説明する。
【0040】
(A)水位設定機構18は、封水Waの許容水位を変更可能である。これにより、水位設定機構18によって、封水Waの許容水位を上げたうえで水足し動作(後述する)をすることで、封水Waの実水位を上げることができる(図10B参照)。ひいては、封水Waの実水位が低いままの場合と比べ、管内空間60に残存するエア(以下、残存エア)の体積を減少させることができる。管内空間60の残存エアの体積が減少するほど、排水管路16を通り抜けようとする水に対する残存エアによる抵抗を小さくできる。よって、封水Waの許容水位が低いままの場合と比べ、便器洗浄時において排水流量を増大し易くすることができる。ひいては、便器洗浄時における排水流量を調整し易くすることができる。
【0041】
水位設定機構18は、排水管路16内に封水Waを貯留した状態のまま、封水Waの許容水位を変更可能である。よって、排水管路16内に封水Waを貯留しない状態のまま許容水位を変更する場合と比べ、封水Waの許容水位を上げたうえで水足し動作によって封水Waの実水位を上げるときに、便器本体14に足すべき水の量を減らすことができる。
【0042】
(B)水位設定機構18は、封水Waによって排水管路16が遮断された状態のまま、下限水位WL1から上限水位WL2までの水位範囲内で、封水Waの許容水位を変更可能である。よって、異物の噛み込み等に起因して、水位設定機構18が動作不能になった場合でも、封水Waによって臭気の逆流を安定して防止できる。特に、外部電源を要する電動部100(後述する)に連動して水位設定機構18が動作する場合、外部電源の停電に起因して、水位設定機構18が動作不能になる。この場合も、ここで説明した効果を得られる利点がある。
【0043】
(C)逃がし空間64を設けることにより、管内空間60に残存するエアの抵抗を抑制しつつ、封水Waの実水位を容易に上げることができる。
【0044】
(D)エア抜き経路66を形成することにより、下流側空間64に残存するエアの抵抗を抑制しつつ、封水Waの実水位を容易に上げることができる。
【0045】
便器装置10の他の特徴を説明する。図3を参照する。排水管路16は、排水管路16を構成する管体からなる管路構成部材68を備える。本実施形態の管路構成部材68は接続配管30である。便器排水路26は、便器排水路26の下流側端部に設けられる筒状の被接続部26aを備える。管路構成部材68の上流側端部は、便器排水路26の被接続部26aが内側に差し込まれた状態で、便器排水路26に接続される。管路構成部材68の上流側端部は、第1シール部材70を介して、便器排水路26の被接続部26aに水密に接続される。第1シール部材70は、環状の弾性体であり、管路構成部材68の上流側端部と便器排水路26の被接続部26aとの間に配置される。
【0046】
管路構成部材68は、便器排水路26の被接続部26aに着脱可能に接続される。管路構成部材68と便器排水路26は、便器排水路26の被接続部26aの軸線方向に相対移動させることで互いに着脱可能である。本実施形態の被接続部36aは後向きに延びている。これにより、管路構成部材68に対して便器本体14を前後方向Xに相対移動させることで、便器排水路26に対して管路構成部材68を着脱可能となる。
【0047】
(E)水位設定機構18は、管路構成部材68の内側に配置され、管路構成部材68に取り付けられる。本実施形態において、水位設定機構18は、弁部材44の一対の取付部54を管路構成部材68に取り付けることで、管路構成部材68に取り付けられる。これにより、既設の便器排水路26に新設の管路構成部材68を接続することで、既設の便器装置10に水位設定機構18を後付けで組み込み可能になる。
【0048】
図7図8を参照する。図7は、弁部材44が開位置Pa1にあり、図8は、弁部材44が閉位置Pa2にある状態を示す。便器装置10は、便器本体14に給水可能な給水装置72と、水位設定機構18を駆動可能な駆動源74と、を備える。
【0049】
給水装置72は、水源75から吐出部22A、22Bに供給される水の通り道となる給水路76A、76Bと、給水路76A、76Bを開閉可能な開閉弁78A、78Bと、開閉弁78A、78Bを制御可能な制御部80と、を備える。
【0050】
水源は、例えば、上水道、ポンプ付きタンク等である。本実施形態の給水路76A、76Bは、リム吐出部22Aに給水するための第1給水路76Aと、ジェット吐出部22Bに給水するための第2給水路76Bとを含む。
【0051】
本実施形態の開閉弁78A、78Bは、第1給水路76Aを開閉可能な第1開閉弁78Aと、第2給水路76Bを開閉可能な第2開閉弁78Bとを含む。本実施形態の開閉弁78A、78Bは、電磁弁、つまり、電気駆動弁である。開閉弁78A、78Bは、電気駆動弁の他の例として電動弁でもよい。この他にも、第1給水路76A、第2給水路76Bに共通して用いられる三方弁でもよい。この場合、第1開閉弁78Aは第2開閉弁78Bを兼ねることになる。
【0052】
開閉弁78A、78Bが開弁状態にあるとき、開閉弁78A、78Bに対応する給水路76A、76Bを通して吐出部22A、22Bに給水される。この結果、その吐出部22A、22Bから水が吐き出されることで、便器本体14に給水される。開閉弁78A、78Bが閉弁状態にあるとき、開閉弁78A、78Bに対応する給水路76A、76Bによる便器本体14に対する給水が停止する。この結果、吐出部22A、22Bからの水の吐き出しが停止することで、便器本体14に対する給水が停止する。
【0053】
制御部80は、例えば、CPU、ROM、RAM等のハードウェアとソフトウェアを組み合わせたコンピュータである。制御部80は、例えば、便器本体14の後部に搭載されるケーシング82(図1参照)に設置される。
【0054】
給水装置72は、便器本体14に給水することで便器洗浄を実行可能である。便器洗浄は、所定の洗浄開始条件を満たしたときに実行される。ここでの洗浄開始条件は、例えば、制御部80によって洗浄開始指令を取得することである。洗浄開始指令は、例えば、リモートコントローラ、スマートフォン等の操作機器に対する操作を通じて制御部80に入力される。この他の洗浄開始条件は、例えば、レバー等の操作部材に対する洗浄開始操作がなされることである。
【0055】
本実施形態の給水装置72は、便器洗浄を実行するとき、リム吐出部22Aのみに給水するリム洗浄と、少なくともジェット吐出部22Bに給水するジェット洗浄とを順に実行可能である。給水装置72は、この他に、ジェット洗浄後に、封水となる水を便器本体14に給水する水溜め動作を実行可能である。
【0056】
リム洗浄は、予め定められた時間t1の間、第1開閉弁78Aを開弁状態に維持することで実行される。リム洗浄によって、リム吐出部22Aから吐き出される水によって便鉢部12内に洗浄水流が形成される。リム洗浄をするとき、第2開閉弁78Bは閉弁状態に維持され、ジェット吐出部22Bから水が吐き出されない。リム洗浄をすることで、便鉢部12内の汚物を洗い落とすことができる。
【0057】
ジェット洗浄は、予め定められた時間t2の間、第2開閉弁78Bを開弁状態に維持することで実行される。ジェット洗浄によって、ジェット吐出部22Bから吐き出される水によって排水管路16内にジェット水流が形成される。ジェット洗浄をするとき、リム吐出部22Aから洗浄水を吐き出してもよいし、吐き出さなくともよい。ジェット洗浄をすることで、排水管路16を通して、リム洗浄で洗い落とされた汚物を排出することができる。以上のリム洗浄、ジェット洗浄によって、少ない水量の洗浄水で効率的に便器洗浄を実行することができる。
【0058】
ジェット洗浄によって、排水管路16の封水貯留部40内の封水Waの多くが排出され、その実水位が大きく下げられる。水溜め動作は、ジェット洗浄により下げられた封水Waの実水位を上げるために実行される。水溜め動作は、予め定められた時間t3の間、第1開閉弁78Aを開弁状態に維持することで実行される。水溜め動作によって、リム吐出部22Aから吐き出される水が、封水Waの一部として、排水管路16の封水貯留部40に溜められる。
【0059】
以上のように、便器洗浄によって便器本体14に給水されると、便器本体14の便鉢部12内が洗浄水流によって洗浄される。便鉢部12内の汚物は、便器洗浄によって便器本体14に給水されると、排水管路16を通して排出される。
【0060】
駆動源74は、分岐路84を介して第2給水路76Bに接続され、第2給水路76Bを通る水を貯留可能な蓄圧器86である。蓄圧器86は、側面視において、接続配管30と上下方向Zに重なる位置で、かつ、接続配管30の下方に配置される(図1参照)。蓄圧器86は、ボルト等を用いて、便器本体14に固定される。分岐路84は、第2開閉弁78Bよりも上流側にて第2給水路76Bから分岐しており、第2給水路76Bにおいて分岐路84よりも上流側には逆止弁88が設置される。
【0061】
蓄圧器86は、長尺状のタンク90と、タンク90内においてタンク90の長手方向に移動可能に配置される区画部材92と、を備える。区画部材92は、例えば、ダイヤフラム等の弾性膜である。区画部材92は、タンク90の内部空間を長手方向に隔てることで、タンク90内を主室94と副室96とに区画する。主室94は、第2給水路76Bに連通され、第2給水路76Bから流入する水で満たされている。副室96は、ホース等の配管部材97(図1も参照)を介して、弁部材44の可変容積室46に連通され、圧力伝達媒体で満たされている。圧力伝達媒体は流体である。圧力伝達媒体は、例えば、空気等の気体の他、水、オイル等の液体である。
【0062】
蓄圧器86は、主室94の容積を小さくする方向Da1に区画部材92を付勢可能な第1付勢部材98を備える。第1付勢部材98は、例えば、コイルスプリング等の弾性部材である。
【0063】
図8を参照する。第2開閉弁78Bが閉弁状態に切り替わると、主室94には第2給水路76Bから水が導入される。区画部材92は、主室94内に導入される水の静水圧によって、第1付勢部材98の付勢力に抗して、主室94の容積を大きくする方向Da2に移動する。この結果、蓄圧器86は、第2給水路76Bの水の静水圧によって加圧された状態の水を貯留する。
【0064】
区画部材92は、第2給水路76Bから水を導入する水導入動作の過程で、主室94内の水の静水圧によって、副室96の容積を小さくする方向Da2に移動する。これにより、区画部材92は、副室96内の圧力伝達媒体とともに可変容積室46内の圧力伝達媒体を加圧し、可変容積室46を膨張させる。この結果、弁部材44が開位置Pa1から閉位置Pa2まで動かされ、許容水位を下限水位WL1から上限水位WL2まで方向Dc1に上げるように水位設定機構18が駆動される。駆動源74(ここでは蓄圧器86)は、水導入動作に連動して、許容水位を上げるように水位設定機構18を駆動する嵩上げ駆動を実行することになる。
【0065】
図7を参照する。第2開閉弁78Bが開弁状態に切り替わると、区画部材92は、第1付勢部材98の付勢力によって、主室94の容積を小さくする方向Da1に移動する。蓄圧器86は、この区画部材92の移動によって、加圧した状態の水を主室94から第2給水路76Bに放出する。これにより、蓄圧器86内の加圧した水が第2給水路76B内の水に合流し、第2給水路76Bを通して大圧力の水を便器本体14に供給できる。
【0066】
区画部材92は、加圧した状態の水を第2給水路76Bに放出する放水動作の過程で、第1付勢部材98の付勢力によって、副室96の容積を大きくする方向Da1に移動する。これにより、区画部材92は、副室96内の圧力伝達媒体とともに可変容積室46内の圧力伝達媒体を減圧し、可変容積室46を収縮させる。この結果、弁部材44が閉位置Pa2から開位置Pa1まで動かされ、許容水位を上限水位WL2から下限水位WL1まで方向Dc2に下げるように水位設定機構18が駆動される。駆動源74(ここでは蓄圧器86)は、放水動作に連動して、許容水位を下げるように水位設定機構18を駆動する嵩下げ駆動を実行することになる。
【0067】
次に、図9を参照しつつ、本実施形態の便器装置10における便器洗浄に関連する動作の一例を説明する。図10Aも参照する。排水管路16には、前回の便器洗浄によって、下限水位WL1以下の実水位の封水Waが貯留される。水位設定機構18は、便器洗浄に先立って、下限水位WL1よりも高い待機水位WL3に許容水位を設定する(S10)。本実施形態の待機水位WL3は上限水位WL2である。この条件は、例えば、前回の便器洗浄後に駆動源74によって嵩上げ駆動を実行することで満たされる。
【0068】
給水装置72の制御部80は、洗浄開始条件を満たすと、便器洗浄を開始する。給水装置72は、便器洗浄を開始すると、リム洗浄(S12)→ジェット洗浄(S14)→水溜め動作(S16)の順で実行する。
【0069】
図10Bも参照する。給水装置72は、リム吐出部22Aから水Weを吐き出すリム洗浄を実行することで(S12)、方向Dc1に封水Waの実水位を上げるための水を便器本体14に足す水足し動作を実行可能である。水足し動作を実行することによって、封水Waの実水位を少なくとも待機水位WL3まで上げることができる。給水装置72は、便器洗浄に先立って実行される駆動源74による嵩上げ駆動後、かつ、次に説明する嵩下げ駆動前に、水足し動作を実行することになる。このとき、洗い落とし式の便器本体14においては、便鉢部12内の溜水Wbの実水位も、下限水位WL1以下の実水位から少なくとも待機水位WL3まで上げることができる。
【0070】
図10Cも参照する。給水装置72がジェット吐出部22Bから水Weを吐き出すジェット洗浄を実行すると(S14)、そのジェット洗浄中に蓄圧器86は放水動作を実行する。蓄圧器86は、前述の通り、放水動作に連動して、許容水位を下限水位WL1まで方向Dc2に下げるように水位設定機構18を駆動する嵩下げ駆動を実行する。駆動源74は、ジェット洗浄中、つまり、便器洗浄中に嵩下げ駆動を実行することになる。ここでの「便器洗浄中」とは、特に、排水管路16の封水貯留部40を通して汚物を排出する水流(本実施形態ではジェット水流)が形成されているときをいう。
【0071】
図10Dも参照する。排水管路16内の封水Waの多くはジェット洗浄によって排出され、その実水位が下げられる。給水装置72によってリム吐出部22Aから水Weを吐き出す水溜め動作を実行すると(S16)、ジェット洗浄により下げられた封水Waの実水位を上げることができる。水溜め動作によって、水溜め動作時に水位設定機構18によって設定される許容水位(ここでは下限水位WL1)まで封水Waの実水位が上げられる。
【0072】
図10Eも参照する。給水装置72による便器洗浄が終了すると、蓄圧器86は水導入動作を実行する。蓄圧器86は、前述の通り、水導入動作に連動して、許容水位を待機水位WL3まで方向Dc1に上げるように水位設定機構18を駆動する嵩上げ駆動を実行する(S18)。これにより、水位設定機構18は、許容水位を待機水位WL3に戻すように設定する。駆動源74は、次回の便器洗浄前に嵩上げ駆動を実行することになる。
【0073】
以上の工夫点による効果を説明する。
【0074】
(F)駆動源74は、便器洗浄中に、許容水位を下げるように水位設定機構18を駆動する嵩下げ駆動を実行する。これにより、便器洗浄中に、水位設定機構18による許容水位の下げ幅Wx(図10C参照)に応じた分だけ封水Waの実水位を下げることができる。ここでの下げ幅Wxは、本実施形態では、待機水位WL3から下限水位WL1までの高さの差となる。これに伴い、便器洗浄中に、封水Waの実水位の下げ幅に等しい落差分の押込力を排水管路16内の水に付与し易くなる。ひいては、この押込力によって、排水管路16内の水を汚物とともに早期に排出できる。
【0075】
この他に、洗い落とし式の便器本体14においては、嵩下げ駆動を実行することによって、便器洗浄中に、水位設定機構18による許容水位の下げ幅Wxに応じた分だけ、溜水Wbの実水位も下げることができる。これに伴い、便器洗浄中に、封水Waの落差分の押込力を排水管路16内の水に付与しつつ、溜水Wbの実水位の下げ幅に等しい落差分の押込力を便鉢部12内の水に付与し易くなる。ひいては、この押込力によって、便鉢部12内の水を汚物とともに早期に排出できる。本実施形態の便器本体14では、リム洗浄によって生じた溜水Wbの落差を用いて汚物を押し流すことになる。本実施形態の便器本体14では、このように汚物を押し流す過程で、ジェット洗浄によって、汚物の排出を促進できる。
【0076】
(G)給水装置72は、便器洗浄前に実行される嵩上げ駆動後、かつ、便器洗浄中に実行される嵩下げ駆動前に水足し動作を実行可能である。これにより、便器洗浄中に実行される嵩下げ駆動前に自動的に封水の実水位を上げることができる。
【0077】
(H)駆動源74は、ジェット洗浄中に嵩下げ駆動を実行する。よって、ジェット洗浄によるジェット水流の勢いによって汚物の排出を促進しつつ、前述の水頭分の押込力も用いて汚物を早期に排出できる。
【0078】
(I)給水装置72は、リム洗浄を実行するによって、水足し動作を実行する。これにより、便鉢部12内を洗浄しつつ、封水の実水位を上げることができる。
【0079】
(J)駆動源74を構成する蓄圧器86は、放水動作及び水導入動作に連動して、嵩下げ駆動及び嵩上げ駆動を実行できる。よって、蓄圧器86とは別に駆動源74を設ける場合と比べて、部品点数を削減できる。
【0080】
水位設定機構18は、排水管路16の水路頂部42によって定まる下限水位WL1よりも許容水位を高くすることができる。よって、下限水位WL1よりも高い所要の許容水位(例えば、待機水位WL3)を確保しつつも、排水管路16の水路頂部42の高さを低くすることができる。これとともに、許容水位が下限水位WL1にあるとき、封水貯留部40に貯留される封水Waの量を減らすことができる。この結果、下限水位WL1よりも高い所要の許容水位を確保しつつ、ジェット洗浄によって、少ない水量の洗浄水で封水貯留部40内の汚物、汚水等を排出できる。
【0081】
この他にも、前述のように排水管路16の水路頂部42の高さを低くすることで、破封状態(図10C参照)にあるときに封水貯留部40に貯留される水の量を減らすことができる。これに伴い、破封状態にあるときに、ジェット洗浄によって封水貯留部40内の水を排出するうえで、ジェット吐出部22Bから吐き出すべき水の流量を減らすことができる。ひいては、ジェット洗浄時の騒音の低減が実現できる。
【0082】
便器装置10の他の特徴を説明する。図7図8を参照する。給水装置72は、電源(不図示)から供給される電力によって動作可能な電動部100を備える。本実施形態の電動部100は、第2開閉弁78Bを構成する電磁弁である。本実施形態の電源は、商用電源等の外部電源である。この他にも、電源は、便器本体14に搭載されるバッテリー等でもよい。
【0083】
第2開閉弁78Bは、第2給水路76Bの一部となる内部通路102と、内部通路102を開閉可能な弁体104と、弁体104を開弁方向Db1に駆動するソレノイドコイル106と、弁体104を閉弁方向Db2に付勢する第2付勢部材108と、を備える。
【0084】
図7を参照する。第2開閉弁78Bは、ソレノイドコイル106に通電した状態にあるとき、ソレノイドコイル106によって弁体104を開弁方向Db1に駆動し、弁体104によって内部通路102を開く開弁状態となる。第2開閉弁78Bが開弁状態にあるとき、電動部100は、電力を用いて動作した状態(以下、動作状態Sa1という)にあることになる。
【0085】
電動部100が動作解除状態Sa2(後述する)から動作状態Sa1に切り替わると、駆動源74(ここでは蓄圧器86)は、前述の通り、放水動作に連動して嵩下げ駆動を実行する。これにより、駆動源74は、水位設定機構18によって設定される許容水位を下限水位WL1まで方向Dc2に下げる。この後、駆動源74は、電動部100が動作状態Sa1に維持されている間、水位設定機構18によって設定される許容水位を下限水位WL1に維持する。
【0086】
図8を参照する。第2開閉弁78Bは、ソレノイドコイル106に対する通電が解除された状態にあるとき、第2付勢部材108によって弁体104を閉弁方向Db2に駆動し、弁体104によって内部水路32を閉じる閉弁状態となる。第2開閉弁78Bが閉弁状態にあるとき、電動部100は、電力を用いた動作が解除された状態(以下、動作解除状態Sa2という)にあることになる。
【0087】
電動部100が動作状態Sa1から動作解除状態Sa2に切り替わると、駆動源74(ここでは蓄圧器86)は、前述の通り、水導入動作に連動して嵩上げ駆動を実行する。これにより、駆動源74は、水位設定機構18によって設定される許容水位を待機水位WL3まで方向Dc1に上げる。この後、駆動源74は、電動部100が動作解除状態Sa2に維持されている間、水位設定機構18によって設定される許容水位を待機水位WL3に維持する。
【0088】
(K)このように、水位設定機構18は、電動部100の動作に連動して許容水位を変更可能である。この他に、許容水位は、電動部100が動作解除状態Sa2にあるとき、下限水位WL1よりも高い待機水位WL3に維持される。これにより、電源が停電したとき、水位設定機構18によって設定される許容水位が下限水位WL1になる場合と比べ、封水Waの実水位を高い状態に維持し易くなる。ひいては、電源が停電したとき、臭気の逆流を防止し易くなる。
【0089】
(第2実施形態)図11図12を参照する。図11は、弁部材44が開位置Pa1にあり、図12は、弁部材44が閉位置Pa2にある状態を示す。
【0090】
本実施形態の便器装置10は、第1実施形態と比べて、水位設定機構18の弁部材44、エア抜き経路66、排水管路16において相違する。
【0091】
本実施形態の弁部材44は、ベローズ110と、ベローズ110に固定される板状の弁体部58Cと、を備える。ベローズ110は、外周面に形成された蛇腹構造を備える筒状体である。ベローズ110の軸線方向の一端部には弁体部58Cが固定され、その他端部は排水管路16に固定される。弁体部58Cは、支軸112を介して排水管路16に回転可能に接続される。弁部材44は、弁体部58Cの回転を伴い内部水路32の開度を調整可能である。可変容積室46は、ベローズ110の内部においてベローズ110と弁体部58Cによって囲まれた箇所に形成される。ベローズ110は、可変容積室46の容積の増減に伴い伸縮可能である。
【0092】
本実施形態の弁部材44は、上昇水路34よりも下流側において、内部水路32に設けられる開閉口45を開閉することで、内部水路32の開度を調整可能である。本実施形態の開閉口45は便器排水路26の下流端に設けられる下流端開口26bによって構成される。下流端開口26bは、ストレート水路38の下流端に設けられる。弁部材44が閉位置にあるとき、弁体部58Cによって開閉口45の全体が閉塞される。このとき、弁部材44の弁体部58Cが開閉口45の開口周縁部に突き当たることで、開閉口45が閉塞される。このとき、弁部材44は、内部水路32の一部を完全に閉じる全閉状態となる。
【0093】
便器排水路26は、便器排水路26の下流端開口26bとは別の箇所に設けられる貫通孔118を備える。貫通孔118は、水路頂部42よりも上方に設けられる。詳しくは、貫通孔118は、便器排水路26の中心線CL1よりも上方に設けられ、内部水路32の内上面に設けられる。本実施形態の貫通孔118は、便器排水路26の被接続部26aを径方向に貫通している。
【0094】
本実施形態の上流側空間62は、便器排水路26の下流端開口26bよりも上流側に設けられる。本実施形態の下流側空間64は、排水ソケット28の内部に形成される。この下流側空間64の一部は、排水ソケット28の上流端部分と便器排水路26の外周側部分の間に形成される。貫通孔118は、エア抜き経路66の少なくとも一部を構成する。本実施形態の貫通孔118はエア抜き経路66の全体を構成する。本実施形態によっても前述の(D)の効果を得ることができる。
【0095】
水位設定機構18によって設定される下限水位WL1は、水路頂部42に揃う高さ位置となる(図11参照)。水位設定機構18によって設定される上限水位WL2は、エア抜き経路66を構成する貫通孔118と重なる高さ位置となる(図12参照)。本実施形態の上限水位WL2は、貫通孔118の上端開口部に揃う高さ位置となる。よって、便器排水路26の内下面に開口する場合と比べ、水位設定機構18によって設定される上限水位WL2を高くすることができる。
【0096】
本実施形態の排水管路16は接続配管30を備えていない。本実施形態の管路構成部材68は、排水ソケット28である。水位設定機構18は、管路構成部材68を構成する排水ソケット28の内側に配置され、管路構成部材68に取り付けられる。本実施形態によっても、前述の(E)の効果を得ることができる。
【0097】
この他に、本実施形態の便器装置10は、前述した(A)~(C)、(F)~(K)で説明した構成要素(図示せず)を備え、それらの説明に対応する効果を得られる。
【0098】
(第3実施形態)図13を参照する。本実施形態の便器装置10は、第1実施形態と比べて、駆動源74において相違する。詳しくは、本実施形態の便器装置10は駆動源74となる蓄圧器86を備えていない。本実施形態の駆動源74は、弁部材44の可変容積室46を加圧及び減圧可能なポンプ機構114である。ポンプ機構114は、例えば、給気ポンプと減圧弁の組み合わせである。この場合、減圧弁を閉弁状態に維持したまま給気ポンプを駆動することにより可変容積室46が加圧される。給気ポンプの駆動を停止して減圧弁を開弁状態に維持することで可変容積室46が減圧される。ポンプ機構114の具体例は特に限定されず、例えば、給気ポンプと排気ポンプの組み合わせでもよい。
【0099】
ポンプ機構114によって可変容積室46を加圧すると可変容積室46が膨張し、弁部材44が閉位置Pa2(図4と同様)まで動かされ、許容水位を上限水位WL2まで上げるように水位設定機構18が駆動される。ポンプ機構114によって可変容積室46を減圧すると可変容積室46が収縮し、弁部材44が開位置Pa1(図3と同様)まで動かされ、許容水位を下限水位WL1まで下げるように水位設定機構18が駆動される。ポンプ機構114は、制御部80に電気的に接続される。制御部80による制御のもとでポンプ機構114によって可変容積室46を加圧及び減圧可能である
【0100】
図14を参照する。本実施形態の便器装置10における便器洗浄に関連する動作の一例を説明する。S10、S12は第1実施形態と共通となる。S14において、本実施形態では、制御部80によって駆動源74としてのポンプ機構114を制御することによって、嵩下げ駆動を実行する点で相違する。
【0101】
この他に、第1実施形態の動作と比べて、S16の水溜め動作時の動作において相違する。詳述する。図15を参照する。給水装置72のジェット洗浄(S14)によって封水Waの実水位が下げられると、封水Waによる遮断が解除される破封状態となる。給水装置72によってリム吐出部22Aから水Weを吐き出す水溜め動作を実行すると(S16)、破封状態にあるときに封水Waの実水位が上げられる。封水Waの実水位を封水貯留部40の内上面の最深箇所40aよりも上方まで上げると、破封状態が解除される。
【0102】
本実施形態の制御部80は、このような水溜め動作中に駆動源74によって嵩上げ駆動を実行する。駆動源74は、排水管路16が破封状態にあるときに嵩上げ駆動を実行するとも捉えることができる。これは、例えば、制御部80によって第1開閉弁78Aを開弁状態に維持している間に、制御部80によって駆動源74(ここではポンプ機構114)を用いて嵩上げ駆動を実行することで実現される。水溜め動作中に嵩上げ駆動を実行することで、排水管路16の内部水路32の開度が弁部材44によって小さくなる。これにより、破封状態が解除されるまでの間の臭気の逆流を抑制できる。
【0103】
(第4実施形態)図16を参照する。便器装置10は、ユーザの特定動作を検知可能なセンサ116を備える。センサ116は、ユーザの特定動作として、便座11に対する着座動作を検知可能である。ここでの着座動作とは、便座11に着座する動作そのものをいう。センサ116は、例えば、光電センサ、タッチセンサ、感圧センサ等である。光電センサは、例えば、赤外線センサ等である。センサ116は、例えば、ケーシング82(図1参照)に設置される。
【0104】
給水装置72の制御部80は、センサ116に電気的に接続される。制御部80は、センサ116による検知結果に基づいて、水足し動作を実行する。詳しくは、制御部80は、センサ116によりユーザの特定動作(本実施形態では着座動作)を検知したことを契機として、水足し動作を実行する。
【0105】
図17を参照する。本実施形態の便器装置10における便器洗浄に関連する動作の一例を説明する。第1実施形態と同様、排水管路16には、前回の便器洗浄によって、下限水位WL1を実水位とする封水Waが貯留される。水位設定機構18は、便器洗浄に先立って、許容水位を待機水位WL3に設定する(S10)。
【0106】
給水装置72の制御部80は、洗浄開始条件を満たすまでの間、センサ116の出力を監視する。制御部80は、洗浄開始条件を満たすまでの間に、センサ116によってユーザの特定動作(ここでは着座動作)が検知された場合(S20のY)、水足し動作を実行する(S22)。水足し動作を実行することによって、水足し動作の実行前と比べて、便鉢部12内の溜水Wbの水面サイズを大きくすることができる。ユーザが着座動作をしたとき、ユーザは座位姿勢で用便することになる。ユーザが座位姿勢で小水を用便した場合、便鉢部12の前寄りの箇所に小水が当たり易くなる。この場合に、溜水Wbの水面サイズを大きくすることで、溜水Wbに直接に小水を当て易くなる。ひいては、便鉢部12に小水を付着し難くすることができる。
【0107】
給水装置72の制御部80は、洗浄開始条件を満たす前に、センサ116によって特定動作(ここでは着座動作)を検知しない場合(S20のN)、水足し動作を実行しない(S24)。これにより、便鉢部12内の溜水Wbの水面サイズを大きくせずに維持したままにできる。ユーザが着座動作を実行しないとき、ユーザは立位姿勢で小水を用便することになる。この場合、座位姿勢で小水を用便する場合と比べ、便鉢部12の後寄りの箇所に小水が当たり易くなる。よって、溜水Wbの水面サイズを大きくしなくとも、溜水Wbに直接に小水を当て易くなる。ひいては、水足し動作を実行する場合と比べて、節水効果を期待できる。
【0108】
他のS12、S14、S16、S18は第1実施形態と共通となる。ただし、S22において水足し動作を実行した場合、S12のリム洗浄によって水足し動作が実行されないことになる。同様に、S24において水足し動作を実行しない場合、S12のリム洗浄によって水足し動作が実行される。
【0109】
以上のように、給水装置72は、センサ116の検知結果に基づいて、水足し動作を実行する。よって、ユーザの特定動作に連動して給水装置72によって封水Waの実水位を上げることができる。特に、ユーザの特定動作を検知するタイミングで、便器本体14に水を足すことによって、ユーザが用便する直前に便鉢部12を濡らした状態を実現できる。よって、封水Waの実水位を常に上げたままにする場合と比べて、汚物の付着を抑制できる利点がある。
【0110】
同様の効果を得る観点から、センサ116は、ユーザの特定動作として、便座11に対して着座しようとする前に行う所定の着座前動作を検知可能であってもよい。着座前動作は、例えば、トイレ室に入室する動作、便座11に近づく動作等をいう。
【0111】
(第5実施形態)図18を参照する。本実施形態の便器装置10は、第2実施形態と比べて、便器本体14の種類において相違する。詳しくは、第1、第2実施形態等では、便器本体14として、トイレ室の床F上に置かれる床置き式の便器本体14を説明した。本実施形態の便器本体14は、トイレ室の床Fから間隔を空けて配置される壁掛け式である。壁掛け式の便器本体14は、トイレ室の壁部Wに突き当てた状態で便器受け部材(不図示)に固定される。便器受け部材は、例えば、トイレ室の壁部の裏側に配置される支持フレーム等である。このように、便器本体14の種類は壁掛け式及び床置き式の何れでもよい。
【0112】
この他に、本実施形態の排水管24(不図示)は、トイレ室の壁部Wに設置される壁排水仕様である。このように、排水管24の種類は床排水仕様及び壁排水仕様の何れもでもよい。
【0113】
本実施形態の管路構成部材68も、第2実施形態と同様、排水ソケット28である。管路構成部材68の上流側端部は、第1実施形態と同様、第1シール部材70を介して、便器本体14の被接続部26aに水密に接続される。第1シール部材70は、筒状をなし、その径方向に貫通する貫通孔120を備える。管路構成部材68は、第1シール部材70の貫通孔120と排水管路16内の下流側空間64を連通させる連通路122を備える。本実施形態のエア抜き経路66は、便器本体14の貫通孔118、第1シール部材70の貫通孔120及び連通路122によって構成される。
【0114】
本実施形態の開閉口45は便器排水路26の下流端開口26bよりも下流側において排水ソケット28に設けられる。弁部材44の弁体部58Cは、開閉口45の開口周縁部に突き当たることで、開閉口45を閉塞可能である。弁体部58Cは、開閉口45の開口周縁部に対する突き当て箇所に設けられる弾性部58Dと、弾性部58Dを挟んで開閉口45とは反対側に設けられる硬質部58Eとを備える。弾性部58Dは、シート状をなし、弾性体によって構成される。弾性体は、例えば、ゴム系樹脂、スポンジ等である。硬質部58Eは、例えば、非ゴム系樹脂、金属等である。これにより、開閉口45の開口周縁部に弁体部58Cを突き当てたとき、弾性部58Dが変形することで、弁体部58Cを開閉口45に密着させ易くなる。
【0115】
各構成要素の他の変形形態を説明する。
【0116】
排水管路16は、排水ソケット28を備えなくともよい。排水管路16は、上昇水路34よりも下流側に下降水路36が設けられていなくともよい。排水管路16は、ストレート水路38を備えなくともよい。排水管路16の水路頂部42は、上昇水路34のみによって構成されてもよいともいえる。
【0117】
排水管24は床排水仕様を例に説明した。排水管24は、この他にも、壁排水仕様でもよい。
【0118】
水位設定機構18は、封水Waの許容水位を可変に設定できればよく、その具体例は特に限定されない。水位設定機構18によって設定される許容水位の水位範囲の一部において、封水Waによる排水管路16の遮断が解除されてもよい。
【0119】
水位設定機構18は、管路構成部材68の他に、便器排水路26に取り付けられてもよい。水位設定機構18が取り付けられる管路構成部材68は、接続配管30、排水ソケット28に限定されない。
【0120】
排水管路16の内部水路32において弁部材44によって開度が調整される箇所は特に限定されない。例えば、内部水路32の上昇水路34でもよい。弁部材44の具体的構造は特に限定されず、弁部材44は可変容積室46を備えずともよい。弁部材44は、例えば、直線的に進退することによって、内部水路32の開度を調整可能でもよい。
【0121】
逃がし空間64は、実施形態とは異なり、排水管24の内部空間とは別に設けられてもよい。逃がし空間64は、例えば、排水管路16とは別体に設けられる膨縮可能な袋体の内部空間によって構成されてもよい。
【0122】
管内空間60は、エア抜き経路66を有していなくともよい。エア抜き経路66は、封水Waの実水位を上げるとき、言い換えると、水足し動作を実行するときに、上流側空間62と下流側空間64を連通していればよい。この条件を満たすタイミングであれば、上流側空間62と下流側空間64を連続的に連通していてもよいし、一時的に連通していてもよい。
【0123】
電動部100は、電磁弁の他にも、駆動源74を兼ねるソレノイドアクチュエータ等のリニアアクチュエータでもよい。この場合、駆動源74は、動作解除状態にあるとき、付勢部材(例えば、バネ)の付勢力によって、水位設定機構18による許容水位が待機水位WL3となるように維持すればよい。駆動源74は、動作状態にあるとき、付勢力に抗して水位設定機構18に駆動力を付与することで、水位設定機構18による許容水位が下限水位WL1となるよう維持すればよい。
【0124】
待機水位WL3は、下限水位WL1よりも高ければよく、上限水位WL2よりも低くともよい。例えば、下限水位WL1→待機水位WL3→上限水位WL2の順で許容水位が高くなるように設定してもよい。この場合、便器洗浄前は設定水位を許容水位WL3に維持し、便器洗浄中に設定水位を許容水位WL3から上限水位WL2に上げてもよい。このような許容水位の変更は制御部80による制御を用いて実行してもよい。
【0125】
駆動源74は、蓄圧器86、ポンプ機構114に限定されない。駆動源74は、例えば、モータ等でもよい。
【0126】
給水装置72は、吐出部22A、22Bに水を供給する給水路76Aを用いて、リム洗浄を実行することで水足し動作を実行する例を説明した。水足し動作を実行するうえで用いられる給水路の具体例は特に限定されない。例えば、衛生洗浄装置の洗浄ノズルに水を供給する給水路を用いて水足し動作を実行してもよい。この場合、リム洗浄の実行途中に水足し動作を実行してもよいし、リム洗浄の実行前に水足し動作を実行してもよい。
【0127】
水足し動作は給水装置72によって実行される例を説明した。この他にも、水足し動作は、手動で実行してもよい。例えば、駆動源74による嵩上げ駆動後かつ嵩下げ駆動前に、ペットボトル等の水を便鉢部12内に手動で入れることで水足し動作を実行してもよい。
【0128】
給水装置72は、便器洗浄中にリム洗浄によって水足し動作を実行してもよいし(第1実施形態)、便器洗浄前に水足し動作を実行してもよい(第4実施形態)。この他にも、センサ116の検知結果に基づいて便器洗浄前に水足し動作を実行したうえで、便器洗浄中にリム洗浄によって水足し動作を実行してもよい。つまり、複数の水足し動作を実行することで、封水Waの実水位を所定の許容水位(例えば、待機水位WL3)まで上げてもよい。いずれにしても、給水装置72は、嵩上げ駆動後かつ嵩下げ駆動前に水足し動作を実行していればよい。
【0129】
嵩上げ駆動は、便器洗浄の途中に実行されてもよい。例えば、給水装置72によるジェット洗浄(S14)→水位設定機構18による嵩上げ駆動(S10)→給水装置72による水溜め動作(S16)の順で実行してもよい。
【0130】
便器装置10は、水以外の他の洗浄媒体を便器本体14の便鉢部12に供給する洗浄媒体供給装置を備えてもよい。ここでの洗浄媒体とは、例えば、洗浄泡、アルカリ性液体及び酸性液体の何れかをいう。ここでの洗浄媒体としての「水」は、水素イオン指数(以下、pHという)が6以上8未満の水の単相流をいう。「洗浄泡」は、液体とエアの混相流をいう。ここでの液体のpHは特に限定されない。アルカリ性液体は、水垢の除去に用いられる。アルカリ性液体は、例えば、重曹、酸素系漂白剤(例えば、過炭酸ナトリウム)、塩素系漂白剤等の溶液である。この他のアルカリ性液体は、例えば、アルカリ性酵素を含有する液体である。酸性液体は、黒カビの除去に用いられる。酸性液体は、例えば、クエン酸、尿石除去剤等の溶液である。この他の酸性液体は、例えば、塩酸、有機酸、酸性酵素等を含有する液体である。
【0131】
洗浄泡を用いる場合、便器洗浄に先立って、封水Waの実水位が下限水位WL1から待機水位WL3まで上げられた状態で、洗浄媒体供給装置により洗浄泡を供給してもよい。これにより、溜水Wbの水面サイズが大きくなった状態のもとで洗浄泡を供給することで、便鉢部12内における広範囲を洗浄泡で覆うことができる。
【0132】
この他にも、洗浄泡を用いる場合、便器洗浄に先立って、封水Waの実水位が下限水位WL1以下に維持された状態で、洗浄媒体供給装置により洗浄泡を供給してもよい。つまり、封水Waの実水位を待機水位WL3まで上げることなく、洗浄媒体供給装置により洗浄泡を供給したうえで、便器洗浄を実行してもよい。これにより、溜水Wbの水面サイズが小さくなった状態のもとで洗浄泡を供給することになる。よって、封水Waの実水位を待機水位WL3まで上げた場合と比べ、溜水Wbの全体を洗浄泡で覆うために供給すべき洗浄泡の量を減らすことができる。
【0133】
図19を参照する。本変形形態の便器装置10には、第2実施形態の便器装置10に洗浄媒体供給装置(不図示)が組み込まれている。便鉢部12は、下限水位WL1にある溜水Wbの前方において溜水Wbの水面(図11も参照)から上方に延びる立面部130と、立面部130の上端縁部に接続され、立面部130よりも緩やかに傾斜する緩斜面部132と、を備える。立面部130と緩斜面部132は便鉢部12の前部に設けられる。立面部130の上端縁部と緩斜面部132の内周端縁部との境界部には上向きに凸となる凸曲面部134が形成される。
【0134】
水位設定機構18によって、封水Waの実水位を下限水位WL1よりも高い待機水位WL3(例えば、上限水位WL2)に維持した状態のもと、洗浄媒体供給装置により洗浄泡Bを供給してもよい。この待機水位WL3は、例えば、便鉢部12の前部において凸曲面部134よりも上方まで溜水Wbの水面が達する水位となる。これにより、溜水Wb上に洗浄泡Bを貯めることで、便鉢部12の前部に小水等が着水しようとしたときに、洗浄泡によって飛沫の発生を効果的に抑えることができる。
【0135】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造には、製造誤差等を考慮すると同一とみなすことができる誤差の分だけずれた構造も当然に含まれる。
【0136】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0137】
10…便器装置、12…便鉢部、14…便器本体、16…排水管路、18…水位設定機構、20…リム部、22A…リム吐出部、22B…ジェット吐出部、24…排水管、26…便器排水路、32…内部水路、44…弁部材、60…管内空間、62…上流側空間、63…大気空間、64…下流側空間、64…逃がし空間、66…エア抜き経路、68…管路構成部材、72…給水装置、74…駆動源、76A、76B…給水路、86…蓄圧器、100…電動部、116…センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19