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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】計測器
(51)【国際特許分類】
   G01D 18/00 20060101AFI20240927BHJP
   G01D 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01D18/00
G01D3/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020202886
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090468
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】横山 健
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-244916(JP,A)
【文献】特開平5-34145(JP,A)
【文献】特開平11-37808(JP,A)
【文献】実開昭63-67924(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 18/00
G01D 3/00-3/10
G01K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の出力レベルの物理量に相当する基準信号を発生する基準器が接続されるチャンネルを有する端子部を備えた計測器において、
前記端子部のチャンネルに接続された基準器が発生する基準信号を所定のサンプリング周期で測定する測定部と、
前記測定部にて測定した基準信号の設定値に対する測定値の誤差を登録するときに操作する登録キーを有し、前記基準器が接続されたチャンネルの基準信号の測定値を表示する操作表示部と、
前記操作表示部の登録キーが押下されたときに、前記操作表示部に表示される基準信号の測定値の最小表示桁を四捨五入した値を前記設定値として判断し、該設定値と前記測定値との差を誤差として登録する誤差登録部と、を備えたことを特徴とする計測器。
【請求項2】
異なる出力レベルの物理量に相当する基準信号を順次切り替えて発生する基準器が接続されるチャンネルを有する端子部を備えた計測器において、
前記端子部のチャンネルに接続された基準器が順次発生する基準信号を所定のサンプリング周期で測定する測定部と、
前記測定部にて測定した基準信号の測定値の最小表示桁を四捨五入した値を設定値として判断し、該設定値と前記測定値との差を誤差として登録する誤差登録部と、を備えたことを特徴とする計測器。
【請求項3】
前記端子部が複数のチャンネルを有し、
前記基準器が前記複数のチャンネルに選択的に接続されたときに、前記誤差を同時に登録するチャンネルを前記操作表示部にて選択的に指定することを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定期間毎の定期的な校正が必要な記録計などの計測器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録計は、被測定対象の温度、電流、電圧などの物理量の変化を示すデータに基づく波形を記録する計測器として従来より知られている。
【0003】
従来、測定値を表示する目盛により測定値を確認できる記録計では、下記特許文献1に開示されるように、目盛の校正範囲を設定し、校正範囲の両端の2点で各々求められる測定値とこの測定値の表示値との関係式を連立することにより校正範囲の補正値を求め、2点の校正点間をリニアライズ演算して補正式を得ていた。
【0004】
また、従来の記録計の校正方法として、基準器を用いた方法が知られている。この方法では、(1)~(6)の手順に従って校正を行っている。
(1)校正用電圧発生器を基準器として記録計の端子部のチャンネルに接続する。
(2)基準器から所定の出力レベルの物理量(例えば温度:0℃、100℃、…)に相当する起電力を基準信号として出力する。
(3)記録計が指示する測定値と基準信号との誤差を確認して記録する。
(4)基準器が出力する基準信号の出力レベル毎に補正値を設定する。
(5)使用チャンネル数分だけ(1)~(4)の作業を繰り返す。
(6)再校正((2),(3)の作業)し、誤差が基準内であることを確認する。
【0005】
ところで、近年、例えば熱処理に用いられる記録計では、予め決められた期間毎(例えば3カ月毎)の定期的な校正が必要であり、加えて、記録計の端子部の各チャンネルに接続されるセンサに求められる精度も厳しくなっており、より高精度な校正が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平1-272920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の校正方法では、校正範囲の両端の2点の校正点間をリニアライズ演算して得た補正式を用いて校正を行うので、誤差を許容範囲内に収めて高精度な校正の要求に応えるのが困難であった。
【0008】
また、上述した基準器を用いた方法では、基準器から基準信号を出力して記録計の測定値と基準信号との誤差を確認して記録し、基準器が出力する基準信号の出力レベル毎に補正値を設定する作業を使用チャンネル数分だけ繰り返し行う必要があるので、校正作業に手間と時間を要し、ユーザの作業負担となっていた。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、ユーザにかかる作業負担を軽減して校正に必要な誤差の登録を行うことができる計測器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された計測器は、所定の出力レベルの物理量に相当する基準信号を発生する基準器が接続されるチャンネルを有する端子部を備えた計測器において、
前記端子部のチャンネルに接続された基準器が発生する基準信号を所定のサンプリング周期で測定する測定部と、
前記測定部にて測定した基準信号の設定値に対する測定値の誤差を登録するときに操作する登録キーを有し、前記基準器が接続されたチャンネルの基準信号の測定値を表示する操作表示部と、
前記操作表示部の登録キーが押下されたときに、前記操作表示部に表示される基準信号の測定値の最小表示桁を四捨五入した値を前記設定値として判断し、該設定値と前記測定値との差を誤差として登録する誤差登録部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載された計測器は、異なる出力レベルの物理量に相当する基準信号を順次切り替えて発生する基準器が接続されるチャンネルを有する端子部を備えた計測器において、
前記端子部のチャンネルに接続された基準器が順次発生する基準信号を所定のサンプリング周期で測定する測定部と、
前記測定部にて測定した基準信号の測定値の最小表示桁を四捨五入した値を設定値として判断し、該設定値と前記測定値との差を誤差として登録する誤差登録部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載された計測器は、請求項1の計測器において、
前記端子部が複数のチャンネルを有し、
前記基準器が前記複数のチャンネルに選択的に接続されたときに、前記誤差を同時に登録するチャンネルを前記操作表示部にて選択的に指定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザにかかる作業負担を低減し、校正に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る計測器の校正を行うときの接続構成を示すブロック図である。
図2】本発明に係る計測器の校正時の設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の計測器1は、被測定対象の測定データ(以下、測定値ともいう)を経時的に記録する記録計であり、端子部2、測定部3、操作表示部4、記憶部5、制御部6、通信部7を備えて概略構成される。
【0017】
端子部2は、計測器1の本体背面に設けられ、複数のチャンネルCH1,CH2,…,CHn(例えば48チャンネル)を有し、計測器1の校正時に基準器8が選択的に接続される。なお、端子部2は、1チャンネルのみ有する構成であってもよい。
【0018】
基準器8は、計測器1の校正用電圧発生器であり、設定された所定の出力レベルの物理量(温度、質量、湿度、ガス濃度、圧力など)に相当する電圧値の基準信号を発生する。基準器8は、例えば温度が物理量の場合、ユーザが出力レベルとして温度値を設定すると、この温度値に相当する電圧値の基準信号を発生する。
【0019】
なお、図示はしないが、端子部2の複数のチャンネルCH1,CH2,…,CHnには、計測器1にて測定雰囲気中の物理量を検出する際に、各種センサ(例えば温度センサ、重量センサ、湿度センサ、ガスセンサ、圧力センサなど)が選択的に着脱交換可能に接続される。具体的に、部品の熱処理を行う連続炉の炉内の測定雰囲気中の温度を検出する場合には、例えば熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、半導体などで構成される温度センサを炉内の所定箇所に適宜配置し、温度センサを端子部2の複数のチャンネルCH1,CH2,…,CHnに選択的に接続する。
【0020】
測定部3は、端子部2の複数のチャンネルに選択的に接続された基準器8が発生する基準信号を所定のサンプリング周期でチャンネル毎に測定する。
【0021】
操作表示部4は、操作部と表示部の両方の機能を兼ね備えたものであり、計測器1の本体の所定箇所(例えば本体の前面)に設けられ、タッチパネルの他、液晶表示器、エレクトロルミネセンス(EL:Electroluminescence )などの表示部、オペレータが手動操作する設定キーや操作キー、表示部の表示画面上のタッチキーなどの操作部を備えて構成される。
【0022】
操作表示部4は、制御部6の制御により、計測器1の校正に使用される誤差の登録を行うときに図2の設定画面4aを表示する。
【0023】
図2の設定画面4aの左上部には、誤差の登録対象となるチャンネルを表示する表示窓11が表示され、この表示窓11に並設して操作キー12が配置され、この操作キー12を押下したときに表示される不図示の設定入力画面上のキーボードを操作して表示窓11に表示するチャンネルの番号を入力して指定することができる。図2の設定画面4aでは、誤差の登録対象としてCH1が表示窓11に表示された状態を示している。
【0024】
また、表示窓11と操作キー12の下部には、表示窓11のチャンネルの各設定値と各設定値に対応する誤差の一覧が表示される。図2の設定画面4aでは、No.1の設定値の表示窓13に「0.0」、誤差の表示窓14に「0.3」、No.2の設定値の表示窓13に「100.0」、誤差の表示窓14に「0.2」、No.3の設定値の表示窓13に「200.0」、誤差の表示窓14に「0.2」、No.4の設定値の表示窓13に「300.0」、誤差の表示窓14に「0.3」が表示された状態を示している。
【0025】
さらに、各設定値の表示窓13には、操作キー15が並設して配置されている。この操作キー15を操作すると、不図示のキーボードを配置した設定入力画面が表示され、キーボードを操作して表示窓13に表示する設定値を手動で入力できるようになっている。
【0026】
また、各設定値に対応する誤差の表示窓14には、操作キー16が並設して配置されている。この操作キー16を操作すると、不図示のキーボードを配置した設定入力画面が表示され、キーボードを操作して表示窓14に表示する誤差の値を手動で入力できるようになっている。
【0027】
図2の設定画面4aの右側中央には、基準信号の測定データ(測定値)を表示する表示窓17が表示される。この表示窓17には、測定部3にて所定のサンプリング周期で測定された表示窓11のチャンネルの基準信号の測定値が逐次切り替え表示される。
【0028】
測定値を表示する表示窓17の下には、基準器8が複数のチャンネルに接続されたときに、誤差(基準信号の設定値に対する測定値の誤差)を同時に登録するチャンネルを選択的に表示窓18,19と操作キー20,21が並設される。
【0029】
図2の設定画面4aでは、fromの右側の表示窓18に並設する操作キー20を押下したときに表示される不図示の設定入力画面上のキーボードを操作してチャンネルの番号を入力する。同様に、toの右側の表示窓19に並設する操作キー21を操作したときに表示される不図示の設定入力画面上のキーボードを操作してチャンネルの番号を入力する。これにより、誤差を同時に登録するチャンネルの範囲を選択的に指定することができる。
【0030】
例えばfromの右側の表示窓18に並設する操作キー20を押下して不図示の設定入力画面上のキーボードを操作して「1」を入力し、toの右側の表示窓19に並設する操作キー21を押下して不図示の設定入力画面上のキーボードを操作して「5」を入力すると、誤差を同時に登録するチャンネルとしてCH1~CH5の範囲が選択指定される。
【0031】
なお、表示窓19の下にはクリアキー22が配置されている。このクリアキー22を押下すると、表示窓18,19に表示されるチャンネルの番号が初期値(例えば「1」)にクリアされる。
【0032】
図2の設定画面4aに並設される表示窓18と操作キー20の下部には、基準信号の設定値に対する測定値の誤差を登録するときに操作される登録キー4bが配置される。
【0033】
本実施の形態では、登録キー4bが押下されたときに、表示窓17に表示される基準信号の測定値の一の位を四捨五入した値が設定値として判断される。
【0034】
図2の設定画面4aの右最下部には、設定画面4aのスナップ画像を撮るときに押下されるスナップショットキー23が配置される。このスナップショットキー23の押下により撮像された設定画面4aのスナップ画像は記憶部5に保存される。
【0035】
図2の設定画面4aの左最下部には、不図示の確認画面を表示するための戻るキー24が配置される。戻るキー24を押下したときの不図示の確認画面では、設定画面4aに一覧表示された指定チャンネルの各設定値に対する基準信号の測定値の誤差の登録を確定するか否かを「はい」または「いいえ」の選択によって行われる。
【0036】
なお、誤差の登録の確定は、上述した戻るキー24を押下したときの不図示の確認画面における「はい」または「いいえ」の選択の他、設定画面4a上に別途設けられる不図示の確定キーの押下、確定キーを兼ねる登録キー4bの押下により行うこともできる。
【0037】
また、図2の設定画面4aでは、表示画面の左から「No.」、「設定値」、「誤差」の順に一覧表示し、「測定値」を一覧表示とは別の表示窓17に表示する構成であるが、これに限定されるものではない。例えば「測定値」を図2の設定画面4aの一覧表示に組み込み、表示画面の左から「No.」、「設定値」、「測定値」、「誤差」の順に一覧表示してもよい。
【0038】
操作表示部4は、例えば連続炉の炉内の測定雰囲気中の温度を検出する際に、使用するセンサの種類(例えば熱電対の場合は、K熱電対、E熱電対、J熱電対、T熱電対)の設定、測定データの収録開始/停止、測定データの取り込み時間間隔である記録間隔の設定、警報を出力する上下限警報値の設定、表示画面に表示する測定データのチャンネル数の設定、各チャンネルの測定レンジを示すスケールの範囲の設定、各チャンネルの表示色の設定など、計測器1を駆動する上で必要な各種設定を行う際に操作し、操作された各種設定信号を制御部6に出力する。
【0039】
また、操作表示部4は、制御部6にて表示内容が制御され、図2の設定画面4aの表示の他、各種センサからの各チャンネルの測定データのトレンド表示、不図示の通信手段を介して取り込んだ各種データの表示などを行う。
【0040】
記憶部5は、例えばROM、RAMの他、計測器1の本体に着脱可能なメモリカードや外部記憶装置などの外部記憶媒体などで構成され、記録計のデータ処理に関する各種処理プログラム、測定部3にて測定したチャンネル毎の測定値を記憶する。さらに、記憶部5は、最終的に確定した設定値毎の測定値の誤差の一覧データを、チャンネル毎にテーブル化したファイルとして記憶する。
【0041】
制御部6は、例えば各部を統括制御するCPUなどのマイクロプロセッサで構成され、表示制御部6a、誤差登録部6bを備える。
【0042】
表示制御部6aは、被測定対象の温度、電流、電圧などの物理量の変化を示すデータに基づく波形表示の制御の他、端子部2のチャンネル毎の基準信号の設定値に対する測定値の誤差を登録するときに、操作表示部4による図2の設定画面4aの表示を制御する。
【0043】
誤差登録部6bは、操作表示部4の登録キー4bが押下されたときに、設定画面4aの表示窓17に表示される基準信号の測定値の一の位を四捨五入した値を設定値として判断し、この設定値と基準信号の測定値との差を誤差として登録する。
【0044】
通信部7は、記憶部5に記憶された情報(チャンネル毎の測定値、設定値毎の測定値の誤差の一覧データなど)を、無線通信や有線ネットワークを介して外部機器9(コンピュータ、コントローラ、ハードディスク、メモリカードなど)との間で通信するものである。なお、上記一覧データの記録項目としては、チャンネル毎の各設定値に対する誤差の数値データ以外に、調整日時、機器情報(製造番号など)、担当者、装置名、有効期限などがある。
【0045】
次に、上記のように構成される計測器1の校正に用いられる基準信号の設定値に対する測定値の誤差の登録方法について説明する。ここでは、端子部2のチャンネルCH1に基準器8を接続し、基準信号の設定値に対する測定値の誤差を登録する場合を例にとって説明する。
【0046】
基準器8を端子部2のチャンネルCH1に接続して基準器8の出力(温度値)を設定し、設定した出力(温度値)に相当する電圧値の基準信号を基準器8から発生する。例えば0℃に相当する電圧値の基準信号を発生するように基準器8の出力(温度値)を設定する。
【0047】
そして、図2の設定画面4aにおいて、誤差の登録対象となるチャンネルの番号を指定する。例えば図2の設定画面4aにおいて、表示窓11に「1」が表示されるように操作キー12を押下して不図示の設定入力画面上のキーボードを操作し、誤差の登録対象となるチャンネルの番号「1」を入力する。
【0048】
そして、基準器8から基準信号を発生し、測定部3による測定が開始されると、測定部3にて所定のサンプリング周期で測定した基準信号の測定値が設定画面4aの表示窓17に逐次表示される。
【0049】
ユーザは、設定画面4aの表示窓17に表示される基準信号の測定値を確認し、測定値が安定したときに登録キー4bを押下する。ユーザによって登録キー4bが押下されると、誤差登録部6bは、そのときに設定画面4aの表示窓17に表示される基準信号の測定値の一の位を四捨五入した値を設定値として判断し、この設定値と表示窓17の基準信号の測定値との差を誤差として登録する。
【0050】
以下、基準器8の出力(温度値)を例えば0℃から100℃、200℃、300℃、…と変えて設定し、設定した基準器8の各出力において、上述した動作をチャンネル毎に実行する。これにより、計測器1の端子部2のチャンネル毎の基準信号の各設定値に対する測定値の誤差を登録する。
【0051】
なお、同時に複数のチャンネルの基準信号の各設定値に対する測定値の誤差を登録する場合、例えばCH1~CH6の基準信号の各設定値に対する測定値の誤差を登録する場合は、図2の設定画面4aにおいて、fromの右側の表示窓18に並設する操作キー20を押下して「1」を入力し、toの右側の表示窓19に並設する操作キー21を押下して「6」を入力する。これにより、登録対象のチャンネルとしてCH1~CH6の範囲が選択指定される。
【0052】
そして、全てのチャンネル毎の基準信号の各設定値に対する測定値の誤差が基準値以内に収まるまで上述した動作を繰り返して誤差の登録を行い、全てのチャンネル毎の基準信号の各設定値に対する測定値の誤差が基準値以内に収まることを確認し、不図示の確認画面で誤差の登録を確定して計測器1の校正を終了する。
【0053】
そして、校正後の計測器1の端子部2の複数のチャンネルに温度センサを選択的に接続して測定を行う場合には、測定部3にて測定した測定値に対し、対応するチャンネルに登録された誤差に基づいて測定値を補正する。例えば図2の設定画面4aのように、チャンネルCH1の測定値300.3℃の一の位を四捨五入して300.0℃を設定値として誤差:0.3℃が登録されている場合、温度センサを端子部のチャンネルCH1に接続したときの測定値が「300.9℃」であれば、測定値300.9℃から誤差0.3℃(補正値:-0.3℃)を差し引き、300.6℃が補正後の測定値となる。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、ユーザが設定画面4a上で測定値の変化を確認した上で登録キー4bを押下し、登録キー4bを押下したときの測定値の一の位を四捨五入した値を設定値として判断し、この設定値と測定値との差を誤差として登録している。これにより、ユーザにかかる作業負担を低減し、校正に要する時間を短縮することができる。
【0055】
ところで、上述した誤差の登録方法では、登録キー4bを用いて基準信号の各設定値に対する測定値の誤差を登録しているが、登録キー4bを用いずに登録を行うこともできる。この場合、基準器8は、異なる出力レベルの物理量(例えば異なる温度値)に応じた基準信号を順次切り替えて発生する。基準信号の切り替えは、例えば制御部6の制御により、測定値が予め設定した許容範囲内に安定したときや予め設定した時間毎に行われる。そして、測定部3は、端子部2のチャンネルに接続された基準器8が順次発生する基準信号を所定のサンプリング周期で測定する。その後、誤差登録部6bは、測定部3にて測定したチャンネル毎の基準信号の測定値の一の位を四捨五入した値をチャンネル毎の設定値として判断し、チャンネル毎の設定値と対応するチャンネル毎の測定値との差を誤差として登録する。これにより、計測器1の端子部2のチャンネルに基準器8を接続して基準信号を発生するだけでチャンネル毎の設定値と測定値との誤差を自動的に登録することができ、ユーザにかかる作業負担をさらに低減することができる。
【0056】
また、上述した実施の形態では、計測器1として記録計を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。本発明が採用される計測器1は、所定期間毎の定期的な校正が必要な計測関連機器であればよい。具体的な計測器1としては、例えば測定雰囲気の物理量を検出する各種センサの測定データを収録するデータロガー(データ収録装置)の他、収録した測定データを用いて外部機器を制御する調節計や制御装置(コントローラ)などがある。
【0057】
さらに、上述した実施の形態では、基準器8が温度に対応する基準信号(温度値に応じた電圧値)を発生しているが、基準器8が例えば質量、湿度、圧力などの物理量に対応する基準信号を発生する場合でも同様の校正を行うことが可能である。
【0058】
また、図1における操作表示部4は、操作部と表示部の機能を一体化した構成として説明したが、操作部と表示部を機能分けして個別に構成することもできる。
【0059】
以上、本発明に係る計測器の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 計測器
2 端子部
3 測定部
4 操作表示部
4a 設定画面
4b 登録キー
5 記憶部
6 制御部
6a 表示制御部
6b 誤差登録部
7 通信部
8 基準器
9 外部機器
11,13,14,17,18,19 表示窓
12,15,16,20,21 操作キー
22 クリアキー
23 スナップショットキー
24 戻るキー
図1
図2