(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】重機接触防止システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240927BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G08G1/16
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2020205475
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】平川 彩織
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】緒方 晶星
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/151280(WO,A1)
【文献】特開2002-215862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機に接触対象が接近した場合に、警告を行って接触防止を図るためのシステムであって、
前記重機と前記接触対象との距離を測定する接近距離測定手段と、
前記接近距離測定手段における距離の測定結果に基づいて、重機と接触対象とが接触する可能性をレベル分けして警告を行う接触可能性警告手段と、
前記接近距離測定手段及び前記接触可能性警告手段の動作状況を監視する警告動作監視手段と、
前記警告動作監視手段において、前記接近距離測定手段または前記接触可能性警告手段が動作していないと判断した場合に、その旨の警告を行う警告動作停止警告手段と、
前記接近距離測定手段における測定結果が予め定めた危険レベルを超えた場合に、重機の動作を停止させる重機動作停止手段と、
前記接近距離測定手段、前記接触可能性警告手段、前記警告動作監視手段、前記警告動作停止警告手段、前記重機動作停止手段の動作データを一元管理するデータ管理手段と、
を備え、
前記データ管理手段は、運転手毎に、前記接近距離測定手段、前記接触可能性警告手段、前記警告動作監視手段、前記警告動作停止警告手段、前記重機動作停止手段の動作データを収集して管理する、
ことを特徴とする重機接触防止システム。
【請求項2】
重機に接触対象が接近した場合に、警告を行って接触防止を図るためのシステムであって、
前記重機と前記接触対象との距離を測定する接近距離測定手段と、
前記接近距離測定手段における距離の測定結果に基づいて、重機と接触対象とが接触する可能性をレベル分けして警告を行う接触可能性警告手段と、
前記接近距離測定手段及び前記接触可能性警告手段の動作状況を監視する警告動作監視手段と、
前記警告動作監視手段において、前記接近距離測定手段または前記接触可能性警告手段が動作していないと判断した場合に、その旨の警告を行う警告動作停止警告手段と、
前記接近距離測定手段における測定結果が予め定めた危険レベルを超えた場合に、重機の動作を停止させる重機動作停止手段と、
前記接近距離測定手段、前記接触可能性警告手段、前記警告動作監視手段、前記警告動作停止警告手段、前記重機動作停止手段の動作データを一元管理するデータ管理手段と、
を備え、
前記データ管理手段は、重機毎及び運転手毎に、前記接近距離測定手段、前記接触可能性警告手段、前記警告動作監視手段、前記警告動作停止警告手段、前記重機動作停止手段の動作データを収集して管理するとともに、
前記収集して管理する重機毎の動作データに基づいて、各重機の作業危険レベルを判定する重機作業危険レベル判定手段と、
前記重機作業危険レベル判定手段における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた重機を特定する危険作業重機特定手段と、
を備えたことを特徴とする重機接触防止システム。
【請求項3】
重機に接触対象が接近した場合に、警告を行って接触防止を図るためのシステムであって、
前記重機と前記接触対象との距離を測定する接近距離測定手段と、
前記接近距離測定手段における距離の測定結果に基づいて、重機と接触対象とが接触する可能性をレベル分けして警告を行う接触可能性警告手段と、
前記接近距離測定手段及び前記接触可能性警告手段の動作状況を監視する警告動作監視手段と、
前記警告動作監視手段において、前記接近距離測定手段または前記接触可能性警告手段が動作していないと判断した場合に、その旨の警告を行う警告動作停止警告手段と、
前記接近距離測定手段における測定結果が予め定めた危険レベルを超えた場合に、重機の動作を停止させる重機動作停止手段と、
前記接近距離測定手段、前記接触可能性警告手段、前記警告動作監視手段、前記警告動作停止警告手段、前記重機動作停止手段の動作データを一元管理するデータ管理手段と、
を備え、
前記データ管理手段は、重機毎及び運転手毎に、前記接近距離測定手段、前記接触可能性警告手段、前記警告動作監視手段、前記警告動作停止警告手段、前記重機動作停止手段の動作データを収集して管理するとともに、
前記収集して管理する重機毎の動作データに基づいて、各重機の作業危険レベルを判定する重機作業危険レベル判定手段と、
前記重機作業危険レベル判定手段における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた重機を特定する危険作業重機特定手段と、
前記収集して管理する運転手毎の動作データに基づいて、各運転手の作業危険レベルを判定する運転手作業危険レベル判定手段と、
前記運転手作業危険レベル判定手段における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた運転手を特定する危険作業運転手特定手段と、
を備えたことを特徴とする重機接触防止システム。
【請求項4】
前記データ管理手段により管理されているデータを送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段により送信されたデータを受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段により受信したデータを表示するデータ表示手段と、
を備えたことを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の重機接触防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重機接触防止システムに関するものであり、詳しくは、重機に接触対象が接近した場合に、警告を行って接触防止を図るためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーショベル、ブルドーザ、クレーン等の重機で作業を行う場合には、重機の作業領域内に人や物が存在すると、重機が人や物に接触するおそれがあり、重大な事故が発生する危険性がある。そこで、重機作業を行う場合には、重機が人や物に接触しないように十分な注意を払い作業を行っている。
【0003】
重機には死角があり、運転手が作業領域内に人や物が存在することを直接目視できない場合がある。また、運転手が作業に集中するあまり、周囲の状況に対して注意が及ばない場合もある。そこで、このような場合であっても、安全な作業を行うことができるようにした技術が種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、互いに干渉し合う位置に設置された2基以上のクレーンにおいて、クレーン作業中にクレーンが相互に衝突することを防止するための技術である。このクレーン衝突防止方法は、互いに干渉し合う位置に設置された2基以上のクレーンにおいて、各クレーンの所定各動作要素を検出し、当該検出値をコンピュータで演算処理して接近度を「安全域」「警戒域」「危険域」の3水準に区分し、各水準に応じて色別発光する表示装置により運転管理するようにしたものである。
【0005】
特許文献2に記載された技術は、重機を用いた送電線作業を確実に管理することための技術である。この送電線作業管理システムは、重機に搭載されたGPS装置から送信されてくる位置情報データに基づいて重機の特定および位置確認を行い、重機が送電線の近接範囲内に警報滞在時間を超えて滞在していると警報を発するように指示する重機侵入判定部と、重機侵入判定部から警報を発するように指示されると、管理用警報画面を送電線作業管理システムに表示し、警報文を含む警報信号を所有者端末装置にインターネットを介して送信し、巡視員用注意喚起文を含む巡視員用電子メールおよび運転者用注意喚起文を含む運転者用電子メールを巡視員携帯電話および運転者携帯電話に携帯電話網を介してそれぞれ送信する警報部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-282292号公報
【文献】特開2009-265786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献に記載された技術を含めて従来の技術では、重機が人や物に接触(衝突)することを防止することはできる。しかし、接触(衝突)が発生する原因について詳細な検討が加えられていないため、過去の危険事象を将来の安全管理に反映することができない。すなわち、重機の接触防止に関して、過去の危険事象のデータを適切に管理しておけば、現在の安全管理だけではなく将来における安全管理に役立てることができ、さらに一層、重機の接触防止に寄与することができる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、重機の接触防止に関して、過去の危険事象のデータを適切に管理することにより、現在だけではなく将来に亘って適切な安全管理を行うことが可能な重機接触防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る重機接触防止システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る重機接触防止システムは、重機に接触対象が接近した場合に、警告を行って接触防止を図るためのシステムに関するものであり、接近距離測定手段と、接触可能性警告手段と、警告動作監視手段と、警告動作停止警告手段と、重機動作停止手段と、データ管理手段とを備えたことを基本的な構成とするものである。
【0010】
接近距離測定手段は、重機と接触対象との距離を測定するための手段である。接触可能性警告手段は、接近距離測定手段における距離の測定結果に基づいて、重機と接触対象とが接触する可能性をレベル分けして警告を行うための手段である。警告動作監視手段は、接近距離測定手段及び接触可能性警告手段の動作状況を監視するための手段である。警告動作停止警告手段は、警告動作監視手段において、接近距離測定手段または接触可能性警告手段が動作していないと判断した場合に、その旨の警告を行うための手段である。重機動作停止手段は、接近距離測定手段における測定結果が予め定めた危険レベルを超えた場合に、重機の動作を停止させるための手段である。データ管理手段は、各手段の動作データを一元管理するための手段である。
【0011】
さらに、データ管理手段は、運転手毎に、接近距離測定手段、接触可能性警告手段、警告動作監視手段、警告動作停止警告手段、重機動作停止手段の動作データを収集して管理する。
【0012】
上述した基本的な構成に加えて、データ管理手段は、重機毎及び運転手毎に、接近距離測定手段、接触可能性警告手段、警告動作監視手段、警告動作停止警告手段、重機動作停止手段の動作データを収集して管理するとともに、収集して管理する重機毎の動作データに基づいて、各重機の作業危険レベルを判定する重機作業危険レベル判定手段と、重機作業危険レベル判定手段における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた重機を特定する危険作業重機特定手段とを備えた構成とすることが可能である。
【0013】
上述した基本的な構成に加えて、データ管理手段は、重機毎及び運転手毎に、接近距離測定手段、接触可能性警告手段、警告動作監視手段、警告動作停止警告手段、重機動作停止手段の動作データを収集して管理するとともに、収集して管理する重機毎の動作データに基づいて、各重機の作業危険レベルを判定する重機作業危険レベル判定手段と、重機作業危険レベル判定手段における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた重機を特定する危険作業重機特定手段と、収集して管理する運転手毎の動作データに基づいて、各運転手の作業危険レベルを判定する運転手作業危険レベル判定手段と、運転手作業危険レベル判定手段における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた運転手を特定する危険作業運転手特定手段とを備えた構成とすることが可能である。
【0014】
上述した各構成に加えて、データ管理手段により管理されているデータを送信するデータ送信手段と、データ送信手段により送信されたデータを受信するデータ受信手段と、データ受信手段により受信したデータを表示するデータ表示手段とを備えた構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る重機接触防止システムによれば、重機と接触対象との距離を常時監視し、両者が接触(衝突)する可能性がある場合には、その旨の警告を行うとともに、危険レベルが高い場合には重機の動作を停止させる。また、重機と接触対象との接触(衝突)を防止するために設けた各手段のデータを一元管理している。
【0016】
したがって、重機と接触対象との接触(衝突)を未然に防止することができるとともに、過去の危険事象のデータを適切に管理することができるので、現在だけではなく将来に亘って適切な安全管理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る重機接触防止システムの機能ブロック図。
【
図2】本発明の実施形態に係る重機接触防止システムの構成を示す模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係る重機接触防止システムにおける処理手順(重機接触防止処理)を示すフローチャート。
【
図4】本発明の実施形態に係る重機接触防止システムにおける処理手順(データ管理処理)を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る重機接触防止システムを説明する。
図1~4は本発明の実施形態に係る重機接触防止システムを説明するもので、
図1は機能ブロック図、
図2は構成を示す模式図、
図3及び
図4は処理手順を示すフローチャートである。
【0019】
<重機接触防止システムの概要>
本発明の実施形態に係る重機接触防止システムは、
図1及び
図2に示すように、重機に接触対象が接近した場合に、警告を行って接触(衝突)防止を図るためのシステムに関するものである。この重機接触防止システムは、主要な構成要素として、接近距離測定手段10と、接触可能性警告手段20と、警告動作監視手段30と、警告動作停止警告手段40と、重機動作停止手段50と、データ管理手段60とを備えている。
【0020】
なお、各手段は、各手段としての機能を発揮するための機器及びその付帯装置や、各手段として機能するコンピュータシステム及び当該コンピュータにインストールされ、コンピュータシステムを各手段として機能させるためのソフトウェアにより構成される。
【0021】
本発明の実施形態の説明で用いる用語について説明する。重機とは、建築用及び土木用、それ以外の用途の重機全般のことであり、例えば、パワーショベル、ブルドーザ、クレーン(クレー車を含む)のことをいう。さらに、大規模な工事現場で使用する大型の重機だけではなく、狭隘地(例えば、街中の小規模な工事現場)で使用する小型の重機も含んでいる。また、接触対象とは、重機と接触する可能性がある人や物のことであり、重機同士が接触する場合も含んでいる。また、重機と接触対象との距離とは、重機が移動して接触対象(人・物)に近づいた場合、接触対象(人・物)が移動して重機に近づいた場合の双方において、重機と接触対象とが相対的に接近した場合の距離のことをいう。また、接触とは、衝突を含む概念である。
【0022】
<接近距離測定手段>
接近距離測定手段10は、重機と接触対象との距離を測定するための手段である。接近距離測定手段10は、一般的に市販されている測距センサを用いることができる。本実施形態において、測距センサは重機に搭載されている。測距センサには種々の態様があるが、大別して、光学センサと、電波センサと、超音波センサとがある。
【0023】
光学センサは、発射して対象物から反射してきた光の位相差を利用して、重機と接触対象との距離を測定する。電波センサは、パルス状とした電波を送信アンテナから送信し、対象物からの反射波が受信アンテナに戻ってくるまでの時間を測定することにより、重機と接触対象との距離を測定する。超音波センサは、超音波を発射して、対象物に反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより、重機と接触対象との距離を測定する。
【0024】
上述したように、測距センサには種々の態様があり、それぞれ特性が異なっている。このため、2種類以上の測距センサにより接近距離測定手段10を構成し、重機と接触対象との位置関係、重機と接触対象との相対接近速度、測距を行う環境及び状況に応じて、測距センサを使い分けることが好ましい。例えば、重機または接触対象の移動速度、天候、作業現場の地形や環境等に応じて、測距センサを使い分ける。
【0025】
また、GNSS技術を用いて、重機及び接触対象の距離を測定してもよい。また、重機及び接触対象の双方を撮影可能な位置に撮影装置(デジタルカメラ等)を設置して、重機及び接触対象を撮影することにより、両者の距離を測定してもよい。さらに、上述した測距技術を組み合わせて、重機と接触対象の距離を測定してもよい。
【0026】
<接触可能性警告手段>
接触可能性警告手段20は、接近距離測定手段10における距離の測定結果に基づいて、重機と接触対象とが接触する可能性をレベル分けして警告を行うための手段である。接触可能性警告手段20は、重機に搭載(あるいは重機の作業場所に設置)した警告ランプや表示装置、重機に搭載(あるいは重機の作業場所に設置)したスピーカシステム、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムが備える表示装置、携帯情報端末(スマートフォンやタブレット端末等)の表示装置等により構成する。
【0027】
警告のレベル分けは、重機と接触対象との距離に基づいて定めることができる。警告レベルは重機の種類や大きさ、作業内容により異なるが、例えば、
図2に示すように、重機に対して接触対象が所定範囲を超えて接近し始めた状態(レベル1)、重機に対して接触対象がさらに接近し、そのままの状態では危険が発生する可能性がある状態(レベル2)、接触対象が重機の作業範囲(ショベルの回転範囲、クレーンによる吊り荷の移動範囲、重機の進行方向直近)に存在し、重機と接触対象とが接触(衝突)する可能性が高い状態(レベル3)等に区分けすることができる。
【0028】
警告表示の態様、警告音の音量及び態様は、警告レベルの重要度に応じて変更する。例えば、レベル1、レベル2、レベル3の順で、警告ランプの発光色を、黄色、黄色と赤色の交互点滅、赤色としたり、表示装置において警告レベルを表示したり、警告音の音量を警告レベルに応じて大きくしたり、警告音の発音間隔を警告レベルに応じて短くする等により、警告レベルの重要度を報知することができる。
【0029】
<警告動作監視手段>
警告動作監視手段30は、接近距離測定手段10及び接触可能性警告手段20の動作状況を監視するための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。接近距離測定手段10及び接触可能性警告手段20の動作状況とは、例えば、接近距離測定手段10及び接触可能性警告手段20がオンになっているか否か、あるいは接近距離測定手段10及び接触可能性警告手段20が正常に動作しているか否かのことである。
【0030】
特に、重機と接触対象とが頻繁に接近する状況下では、接触可能性警告手段20が動作し続けることになり、警告ランプの表示や警告音が作業の邪魔になる場合がある。例えば、警告ランプの発光が眩しく、あるいは注意が逸らされ作業状態を的確に目視できなかったり、警告音が大きすぎて作業監督者の指示を聞き取れなかったり、周囲の状況を的確に認識できなかったりすることがある。
【0031】
このような場合に、運転手が、安易に接近距離測定手段10や接触可能性警告手段20の電源をオフにしてしまうと、せっかく接近警告を行っているにもかかわらず、安全性を担保することができない。また、接近距離測定手段10または接触可能性警告手段20が正常に動作していない場合にも、安全性を担保することができない。そこで、本発明に係る重機接触防止システムでは、警告動作監視手段30を設けることにより、不用意に接近距離測定手段10や接触可能性警告手段20の電源がオフにされたことや、接近距離測定手段10や接触可能性警告手段20が正常に動作していないことを警告して、安全性を担保するようになっている。
【0032】
<警告動作停止警告手段>
警告動作停止警告手段40は、警告動作監視手段30において、接近距離測定手段10または接触可能性警告手段20が動作していないと判断した場合に、その旨の警告を行うための手段である。警告動作停止警告手段40は、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムが備える表示装置、携帯情報端末の表示装置等により構成する。
【0033】
また、警告動作停止警告手段40として、重機に搭載(あるいは重機の作業場所に設置)した警告ランプや表示装置、重機に搭載(あるいは重機の作業場所に設置)したスピーカシステムを利用することもできる。また、接近距離測定手段10または接触可能性警告手段20の電源がオフされている場合や正常に動作していない場合には、その旨を運転手に報知するだけではなく、即刻、管理者に報知する必要があるため、管理者が認識可能なコンピュータシステムが備える表示装置や携帯情報端末の表示装置にその旨を表示することが好ましい。さらに、管理者が所持する携帯情報端末が備えるスピーカシステムを利用し、管理者に対して警告音を発生することが好ましい。
【0034】
<重機動作停止手段>
重機動作停止手段50は、接近距離測定手段10における測定結果が予め定めた危険レベルを超えた場合に、重機の動作を停止させるための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。例えば、接近距離測定手段10における測定結果が予め定めた危険レベルを超えた場合(直ちに重機の動作を停止させないと重大な事故に繋がる可能性がある場合)に、重機停止信号を発信するようにしておき、重機動作停止手段50が重機停止信号を受信すると、重機のエンジンをオフにしたり、重機を構成する機器が動作しないようにしたりする。
【0035】
<データ管理手段>
データ管理手段60は、接近距離測定手段10、接触可能性警告手段20、警告動作監視手段30、警告動作停止警告手段40、重機動作停止手段50の動作データを一元管理するための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。データ管理手段60は、例えば、各手段から収集したデータによりデータベースを構築して管理する。データ管理手段60により管理している各種のデータは、接触事故を含む各種事象の発生要因を分析して、将来の安全性確保のために使用することができる。
【0036】
また、データ管理手段60は、重機毎または運転手毎の少なくとも一方について、接近距離測定手段10、接触可能性警告手段20、警告動作監視手段30、警告動作停止警告手段40、重機動作停止手段50の動作データを収集して管理することができる。そして、重機毎に各手段の動作データを収集して管理している場合に、重機作業危険レベル判定手段61と、危険作業重機特定手段62とを備えることが好ましい。また、運転手毎に各手段の動作データを収集して管理している場合に、運転手作業危険レベル判定手段63と、危険作業運転手特定手段64とを備えることが好ましい。
【0037】
<重機作業危険レベル判定手段/運転手作業危険レベル判定手段>
重機作業危険レベル判定手段61は、収集して管理する重機毎の動作データに基づいて、各重機の作業危険レベルを判定するための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。判定した重機作業危険レベルは、危険作業重機特定手段62における重機の特定に使用する。
【0038】
運転手作業危険レベル判定手段63は、収集して管理する運転手毎の動作データに基づいて、各運転手の作業危険レベルを判定するための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。判定した運転手作業危険レベルは、危険作業運転手特定手段64における運転手の特定に使用する。
【0039】
<危険作業重機特定手段/危険作業運転手特定手段>
危険作業重機特定手段62は、重機作業危険レベル判定手段61における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた重機を特定するための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。
【0040】
作業危険レベルが高い重機を特定することにより、当該重機に対して、重点的な監視体制を構築することができ、適切な安全管理を行うことができる。例えば、作業危険レベルが高い重機には、接近距離測定手段10、接触可能性警告手段20、警告動作監視手段30、警告動作停止警告手段40、重機動作停止手段50等に何らかの不具合が存在する場合があり、各手段の動作を確認して適切な処理(修理や調整)を施すことにより、重機の作業危険レベルを下げることができる。
【0041】
危険作業運転手特定手段64は、運転手作業危険レベル判定手段63における判定結果が、予め定めた作業危険レベルを超えた運転手を特定するための手段であり、重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムの機能手段とすることができる。
【0042】
作業危険レベルが高い運転手を特定することにより、当該運転手に対して、重点的な監視体制を構築することができ、適切な安全管理を行うことができる。作業者は、常に同一の企業に勤務しているとは限らず、転職や出向等により、他の企業に勤務することになる場合がある。また、個人事業主である運転手も存在する。さらに、運転手が運転する重機が常に同一であるとは限らない。このような場合に、運転手を個々に特定して作業危険レベルを把握することにより、より一層、適切な安全管理を行うことができる。
【0043】
<データ管理手段で管理するデータの利用>
データ管理手段60で管理するデータを有効利用する場合に、データ管理手段60により管理されているデータを送信するデータ送信手段70と、データ送信手段70により送信されたデータを受信するデータ受信手段80と、データ受信手段80により受信したデータを表示するデータ表示手段90とを備えた構成とすることが好ましい。
【0044】
<データ送信手段>
データ送信手段70は、本実施形態に係る重機接触防止システムを構成するコンピュータシステムが備える手段であり、データ送信を行うための機器及びプログラムにより構成する。一般的なコンピュータシステムは、インターネット回線、無線データ通信回線、無線電話回線等を用いてデータを送受信するための機能手段を搭載しており、データ送信手段70は、このデータ送受信機能により実現することができる。
【0045】
<データ受信手段>
データ受信手段80は、データ表示手段90において表示するデータを受信するための手段であり、データ受信を行うための機器及びプログラムにより構成する。一般的なコンピュータシステムや携帯情報端末は、インターネット回線、無線データ通信回線、無線電話回線等を用いてデータを送受信するための機能手段を搭載しており、データ受信手段80は、このデータ送受信機能により実現することができる。
【0046】
<データ表示手段>
データ表示手段90は、コンピュータシステムに付帯した表示装置(液晶表示装置)、携帯情報端末(タブレット端末、スマートフォン等)等から構成することができる。表示装置は現場管理事務所等に設置し、携帯情報端末は現場監督者等に所持させる。
【0047】
<重機接触防止の手順>
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の実施形態に係る重機接触防止システムを用いた重機接触防止の手順について説明する。本発明の実施形態に係る重機接触防止システムでは、重機に測距センサ、警告ランプ、警告音発生スピーカを搭載し、現場事務所に設置したコンピュータシステムを用いて重機接触防止システムの機能手段を構成し、当該コンピュータシステムに付帯する表示装置や現場監督者が所持する携帯情報端末(スマートフォン)の表示画面に各種データの表示を行う。
【0048】
本発明の実施形態に係る重機接触防止システムにおける重機接触防止処理は、重機接触防止処理と、データ管理処理とに大別することができる。以下、本発明の実施形態に係る重機接触防止システムが備えるすべての機能について説明するが、一部の工程を含まない構成としたり、さらに他の工程を含む構成としたりすることができる。
【0049】
重機接触防止を行うには、
図3に示すように、重機と接触対象との距離を測定し(S1)、測定結果に基づいて、重機と接触対象とが接触する可能性をレベル分けして警告を行う(S2)。また、接近距離測定手段10である測距センサ及び接触可能性警告手段20である警告ランプの動作状況を判断し(S3)、接近距離測定手段10または接触可能性警告手段20が動作していないと判断した場合に、その旨の警告を行う(S4)。
【0050】
また、測定結果が予め定めた危険レベルを超えているか否かを判断し(S5)、測定結果が予め定めた危険レベルを超えている場合には、重機の動作を停止させる(S6)。
【0051】
収集したデータの処理を行うには、
図4に示すように、重機接触防止システムにより収集しているデータを一元管理する(S11)。この際、重機毎または運転手毎の少なくとも一方について、データ管理を行う。そして、各重機または各運転手の作業危険レベルを判定する(S12)。そして、予め定めた作業危険レベルを超えた重機または運転手が存在するか否かを確認し(S13)、作業危険レベルが予め定めた作業危険レベルを超えた重機または運転手を特定する(S14)。
【0052】
また、図示しないが、重機接触防止システムにより収集して管理しているデータを、コンピュータシステムの表示装置や、携帯情報端末に送信して、表示画面にデータを表示することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 接近距離測定手段
20 接触可能性警告手段
30 警告動作監視手段
40 警告動作停止警告手段
50 重機動作停止手段
60 データ管理手段
61 重機作業危険レベル判定手段
62 危険作業重機特定手段
63 運転手作業危険レベル判定手段
64 危険作業運転手特定手段
70 データ送信手段
80 データ受信手段
90 データ表示手段