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特許7561600メンブレン式散気装置、散気設備およびメンブレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】メンブレン式散気装置、散気設備およびメンブレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/40 20220101AFI20240927BHJP
   C02F 3/20 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
B01F25/40
C02F3/20 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020211018
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097833
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安堂 豪
(72)【発明者】
【氏名】上木 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】若原 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 晃
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-097834(JP,A)
【文献】特開2000-263081(JP,A)
【文献】特開2005-081203(JP,A)
【文献】特開2020-014999(JP,A)
【文献】特開2005-334847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F
C02F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に気泡を放出させるメンブレン式散気装置であって、
中心に挿入部を有するチューブ状に形成されたメンブレンと、
メンブレンの挿入部に挿入された管状の支持部材と、
気体供給部と、を有し、
メンブレンは、少なくとも一部に、表裏2枚のシート部材で袋状に構成された袋状部を有し、
気体供給部は外部からメンブレンの袋状部内に連通する通気流路を有し、
メンブレンの袋状部の外周面を構成するシート部材に、気体供給部の通気流路を通って袋状部内に供給された気体を外部へ放出するための複数のスリットが形成されていることを特徴とするメンブレン式散気装置。
【請求項2】
上記請求項1に記載のメンブレン式散気装置を有する散気設備であって、
メンブレン式散気装置に気体を供給する給気管を有し、
メンブレン式散気装置はアダプタを介して給気管に固定され、
アダプタはメンブレン式散気装置と給気管との間に挟まれ、
気体供給部はアダプタに嵌め込まれ、
通気流路は給気管内とメンブレンの袋状部内とに連通していることを特徴とする散気設備。
【請求項3】
アダプタはメンブレン式散気装置の下部に設けられ、
給気管はメンブレン式散気装置の下方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の散気設備。
【請求項4】
上記請求項1に記載のメンブレン式散気装置のメンブレンの製造方法であって、
表裏2枚のシート部材で、袋状に構成された袋状部を有するとともに外形が四角形のメンブレンシートを形成し、
メンブレンシートの対向する2辺同士を接合してチューブ状に形成することを特徴とするメンブレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に気泡を放出させるメンブレン式散気装置、散気設備およびメンブレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のメンブレン式散気装置としては、例えば図20に示すように、槽200内の被処理水201中に多数の気泡202を放出させるものがある。このメンブレン式散気装置203は、チューブ状に形成されたメンブレン204と、メンブレン204に挿入された支持管205と、空気供給部206とを有するものがある。
【0003】
メンブレン204の端部はリング状のバンド等の固定具207で支持管205に水密に固定されている。支持管205は給気管208に接続されている。空気供給部206は、給気管208からメンブレン204の内周と支持管205の外周との間に連通する通気流路209を有している。
【0004】
給気管208から空気供給部206の通気流路209を通ってメンブレン204の内周と支持管205の外周との間に供給された空気210を外部へ放出するための複数のスリット211が、メンブレン204に形成されている。
【0005】
これによると、空気210が給気管208から空気供給部206の通気流路209を通ってメンブレン204の内周と支持管205の外周との間に供給されることにより、メンブレン204が膨張し、空気210がメンブレン204のスリット211から気泡202として被処理水201中に放出される。
【0006】
尚、上記のようなメンブレン式散気装置203は例えば下記特許文献1に記載されている。
【0007】
また、上記のようなメンブレン式散気装置203とは別に、図21図22に示すように、本体が帯状に長く延びる袋状体301の一端部に給気ノズル302を設けたメンブレン式散気装置300がある。袋状体301は、不通気性のシート状部材303と通気性のシート状部材304とを溶着して接合したものである。
【0008】
袋状体301は一対の棒状の支持部材305で支持されており、両支持部材305は固定部材306に固定されている。
【0009】
これによると、空気307を給気ノズル302から袋状体301内に供給することにより、袋状体301が空気307の圧力で膨らみ、袋状体301内の空気307が、通気性のシート状部材304を通り、気泡として槽309内の被処理水中に放出される。尚、このような袋状体301を用いたメンブレン式散気装置300は例えば下記特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-81203
【文献】特許第5404189
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、図20に示したメンブレン式散気装置203では、メンブレン204の端部をバンド等の固定具207で支持管205の外周に水密に固定する必要があり、長年にわたる使用によってメンブレン204が劣化した場合、固定具207の取付部分における水密性が低下して、空気210が漏出してしまうといった問題がある。
【0012】
また、図21図22に示した別のメンブレン式散気装置300では、袋状体301全体が空気307の圧力によって大きく膨らむので、袋状体301に強大な浮力が発生する。このため、袋状体301が浮き上がらないように固定するための支持部材305や固定部材306が大型化し、これに伴ってメンブレン式散気装置300が大型になるといった問題がある。
【0013】
本発明は、散気用の気体の漏出を防止することができるとともに、小型化を図ることができるメンブレン式散気装置、散気設備およびメンブレンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本第1発明は、液体中に気泡を放出させるメンブレン式散気装置であって、
中心に挿入部を有するチューブ状に形成されたメンブレンと、
メンブレンの挿入部に挿入された管状の支持部材と、
気体供給部と、を有し、
メンブレンは、少なくとも一部に、表裏2枚のシート部材で袋状に構成された袋状部を有し、
気体供給部は外部からメンブレンの袋状部内に連通する通気流路を有し、
メンブレンの袋状部の外周面を構成するシート部材に、気体供給部の通気流路を通って袋状部内に供給された気体を外部へ放出するための複数のスリットが形成されているものである。
【0015】
これによると、メンブレン式散気装置を運転することにより、気体が気体供給部の通気流路を通ってメンブレンの袋状部内に供給され、メンブレンの袋状部が膨らんで、袋状部内の散気用の気体がスリットから外部へ放出される。これにより、多数の気泡がメンブレン式散気装置から液体中に放出される。
【0016】
ここで、チューブ状に形成されたメンブレンは袋状部を有しており、気体をメンブレンの袋状部内に供給するため、管状の支持部材をメンブレンの挿入部に挿入した後、メンブレンの端部をバンド等の固定具で支持部材の外周に水密に固定する必要はない。これにより、固定具が不要となり、メンブレンが劣化して固定具の取付部分における水密性が低下するようなことはなく、散気用の気体の漏出を防止することができる。
【0017】
また、メンブレンの挿入部に支持部材が挿入されているので、支持部材はメンブレンの袋状部が挿入部の内側に向かって膨らむことを規制する。これにより、メンブレンの袋状部は、挿入部の内側に向かって膨らもうとしても支持部材に妨げられ、主に挿入部の外側へ向かって僅かに膨らむ。このため、メンブレンに作用する浮力が減少し、メンブレンが浮き上がらないように固定している支持部材を小型化することができ、これに伴ってメンブレン式散気装置を小型化することができる。
【0020】
本第発明は、上記第1発明に記載のメンブレン式散気装置を有する散気設備であって、
メンブレン式散気装置に気体を供給する給気管を有し、
メンブレン式散気装置はアダプタを介して給気管に固定され、
アダプタはメンブレン式散気装置と給気管との間に挟まれ、
気体供給部はアダプタに嵌め込まれ、
通気流路は給気管内とメンブレンの袋状部内とに連通しているものである。
【0021】
これによると、散気用の気体は給気管内から気体供給部の通気流路を通ってメンブレンの袋状部内に供給される。
【0022】
本第発明における散気設備は、アダプタはメンブレン式散気装置の下部に設けられ、
給気管はメンブレン式散気装置の下方に配置されているものである。
【0023】
これによると、多数の気泡は、給気管に遮られることなく、メンブレン式散気装置から液体中に放出される。
【0024】
本第発明は、上記第1発明に記載のメンブレン式散気装置のメンブレンの製造方法であって、
表裏2枚のシート部材で、袋状に構成された袋状部を有するとともに形が四角形のメンブレンシートを形成し、
メンブレンシートの対向する2辺同士を接合してチューブ状に形成するものである。
【0025】
これによると、袋状部を有するチューブ状のメンブレンを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によると、メンブレンの端部をバンド等の固定具で支持部材の外周に水密に固定する必要はなく、これにより、固定具が不要となり、メンブレンが劣化して固定具の取付部分における水密性が低下するようなことはなく、気体の漏出を防止することができる。
【0027】
また、メンブレンの袋状部は、挿入部の内側に向かって膨らもうとしても支持部材に妨げられ、主に挿入部の外側へ向かって僅かに膨らむため、メンブレンに作用する浮力が減少し、メンブレンが浮き上がらないように固定している支持部材を小型化することができる。これにより、メンブレン式散気装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態における散気設備の斜視図である。
図2】同、散気設備に備えられるメンブレン式散気装置の側面図である。
図3】同、メンブレン式散気装置の端部の断面図である。
図4】同、メンブレン式散気装置のメンブレンと支持部材との斜視図である。
図5】同、メンブレン式散気装置のメンブレンの一部切欠き平面図である。
図6】同、メンブレン式散気装置のメンブレンの一部切欠き底面図である。
図7】同、メンブレン式散気装置の支持部材の断面図である。
図8】同、散気設備のメンブレン式散気装置と給気管との連結部分の断面図である。
図9図8におけるX-X矢視図である。
図10】同、メンブレン式散気装置の気体供給ノズルの斜視図である。
図11図10におけるX-X矢視図である。
図12図10におけるY-Y矢視図である。
図13】同、メンブレン式散気装置の気体供給ノズルの一部切欠き平面図である。
図14】同、メンブレン式散気装置の気体供給ノズルの一部切欠き底面図である。
図15】同、散気設備のアダプタ本体の上側の斜視図である。
図16】同、散気設備のアダプタ本体の下側の斜視図である。
図17】同、散気設備のアダプタ本体と給気管と気体供給ノズルとを分解したときの図である。
図18】同、メンブレン式散気装置のメンブレンの製造方法の手順を示す図である。
図19】同、メンブレン式散気装置のメンブレンの製造方法の手順を示す図である。
図20】従来のメンブレン式散気装置の図である。
図21】従来の別のメンブレン式散気装置の平面図である。
図22図21におけるX-X矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、1は、例えば下水処理場等に設置された好気槽(図示省略)内に設けられた散気設備である。散気設備1は、槽内の活性汚泥からなる被処理水3(液体の一例)中に浸漬されており、被処理水3中に気泡4を放出させる複数のメンブレン式散気装置10と、各メンブレン式散気装置10に空気11(散気用の気体の一例)を供給する給気管12と、メンブレン式散気装置10を給気管12に固定するアダプタ14(図8参照)と、槽外から給気管12に空気11を供給するブロワ15とを有している。
【0031】
図2図6に示すように、メンブレン式散気装置10は、中心に挿入部16を有するチューブ状(円筒状)に形成されたメンブレン17と、メンブレン17の挿入部16に挿入された円管状の支持部材18と、気体供給ノズル19(気体供給部の一例)とを有している。
【0032】
メンブレン17は、表裏2枚のシート部材21,22を溶着して袋状に構成された袋状部23を有している。これらシート部材21,22は軟質弾性材の合成樹脂からなり、表側のシート部材21は袋状部23の外周面を構成し、裏側のシート部材22は袋状部23の内周面を構成している。
【0033】
メンブレン17の長手方向Aにおける中央部で且つ上部には、円形の第1開口部24が形成されている。挿入部16はメンブレン17の両端部に貫通しており、挿入部16とメンブレン17の上方とは第1開口部24を介して連通している。
【0034】
また、図8図9図18に示すように、メンブレン17の長手方向Aにおける中央部で且つ下部には、円形の第1および第2貫通孔26,27が形成されている。このうち第1貫通孔26は表側のシート部材21に形成されている。また、第2貫通孔27は、第1貫通孔26よりも小径であり、裏側のシート部材22に形成されている。第1貫通孔26の中心と第2貫通孔27の中心とは同軸上にある。
【0035】
図4図6に示すように、両シート部材21,22は溶着部分29において溶着されている。この溶着部分29は、メンブレン17の両端部に全周にわたり形成された端部溶着部分29aと、第1開口部24の周囲に形成された中央溶着部分29bと、端部溶着部分29aと中央溶着部分29bとの間に形成された長手方向溶着部分29cを有している。
【0036】
表側のシート部材21には、気体供給ノズル19から袋状部23内に供給された空気11を外部へ放出するための多数のスリット30が形成されている。尚、図6の仮想線で示すように、表側のシート部材21の下部には、スリット30を形成していない不形成領域31が設けられており、不形成領域31と溶着部分29以外の領域にスリット30が形成されている。
【0037】
尚、例えば図2等の図面においては、スリット30を見易くするために長円形状に描いているが、実際には、スリット30は、散気を行っていない時は閉じており、散気を行っている時は、僅かに開口する切れ込みである。
【0038】
図4図7に示すように、支持部材18は両端が開放された樹脂製の円管であり、支持部材18の長手方向Aにおける中央部で且つ上部には、円形の第2開口部33が形成されている。図8図9に示すように、支持部材18をメンブレン17の挿入部16に挿入した状態で、メンブレン17の第1開口部24の位置と支持部材18の第2開口部33の位置とが一致する。
【0039】
また、図7に示すように、支持部材18の長手方向Aにおける中央部で且つ下部には、ボルト挿通孔34が形成されている。図8図9に示すように、支持部材18のボルト挿通孔34の位置とメンブレン17の裏側のシート部材22の第2貫通孔27の中心位置とが一致する。
【0040】
図2図6図8図14に示すように、気体供給ノズル19は、メンブレン17の長手方向Aにおける中央部に設けられており、円形の筒部37と鍔部38と天板部39とを有している。筒部37は、メンブレン17の表側のシート部材21の第1貫通孔26(図18参照)に挿入され、メンブレン17の下方に突出している。筒部37の下端部には、一対の切欠部41と、給気管12内に開口する流入口42とが形成されている。
【0041】
鍔部38は、筒部37の上端部に形成されて筒部37の径方向における外側へ張り出しており、図8図9に示すように、メンブレン17の袋状部23内に入り込んでいる。鍔部38の外周面には、袋状部23内に開口する複数の流出口43が形成されている。尚、表側のシート部材21の第1貫通孔26(図18参照)の周辺部分は全周にわたり鍔部38の下面に溶着されており、これにより、気体供給ノズル19がメンブレン17に取り付けられている。
【0042】
天板部39は筒部37の上端部に形成されており、天板部39には上下方向に貫通するボルト挿入孔45が形成されている。
【0043】
気体供給ノズル19には、流入口42と流出口43とに連通する通気流路46が形成されている。また、気体供給ノズル19の上面には、支持部材18の外周面に沿って円弧状に湾曲した凹部47が形成されている。
【0044】
図8図9に示すように、アダプタ14は、メンブレン式散気装置10と給気管12との間に設けられるアダプタ本体50と、締結部材51とを有している。図15図17に示すように、アダプタ本体50は直方体状の部材であり、アダプタ本体50の下面には、給気管12の外周面に沿って円弧状に湾曲した凹部52が形成されている。また、アダプタ本体50には、上下方向に貫通する円形の第1嵌込孔53が形成されている。
【0045】
図1に示すように、給気管12はメンブレン式散気装置10の下方且つ直交する方向に配置されている。図17に示すように、給気管12の上端部には、給気管12の内外に貫通する複数の円形の第2嵌込孔54が形成されている。
【0046】
アダプタ本体50の第1嵌込孔53の位置と給気管12の第2嵌込孔54の位置とは一致している。図8図9図17に示すように、気体供給ノズル19の筒部37は、上方から、アダプタ本体50の第1嵌込孔53と、給気管12の第2嵌込孔54とに嵌め込まれており、下端部が第2嵌込孔54から給気管12内に突入している。
【0047】
図8図9に示すように、締結部材51は、アダプタ本体50をメンブレン式散気装置10と給気管12との間に挟んだ状態で、メンブレン式散気装置10と給気管12とを連結する部材であって、T頭ボルト57とナット58とを有している。
【0048】
T頭ボルト57の頭部57aは、下方から、気体供給ノズル19の筒部37の両切欠部41に嵌め込まれて、給気管12の上端部の内周面に係合している。また、T頭ボルト57のボルト本体部57bは、下方から、気体供給ノズル19のボルト挿入孔45と、メンブレン17の裏側のシート部材22の第2貫通孔27と、支持部材18のボルト挿通孔34とに挿通され、支持部材18内に突入している。ナット58は支持部材18内でT頭ボルト57に螺合している。
【0049】
尚、裏側のシート部材22の第2貫通孔27の周辺部分は全周にわたり支持部材18の外周面と気体供給ノズル19の天板部39との間に挟まれている。また、支持部材18のボルト挿通孔34には、ゴム等の弾性体からなる円筒状のシール部材60(パッキン)が嵌め込まれている。これにより、給気管12内から気体供給ノズル19の通気流路46を通ってメンブレン17の袋状部23内に供給される空気11の一部がボルト挿通孔34とボルト本体部57bとの間から支持部材18内に漏出するのを防止している。
【0050】
上記構成における作用を以下に説明する。
【0051】
図1図8図9に示すように、ブロワ15を駆動することにより、空気11がブロワ15から給気管12内に供給され、給気管12内の空気11が気体供給ノズル19の流入口42から通気流路46を通って流出口43からメンブレン17の袋状部23内に流入し、袋状部23が膨らんで、袋状部23内の空気11がスリット30から外部へ放出される。これにより、多数の気泡4がメンブレン式散気装置10から被処理水3中に放出される。
【0052】
ここで、チューブ状に形成されたメンブレン17は袋状部23を有しており、空気11を袋状部23内に供給するため、管状の支持部材18をメンブレン17の挿入部16に挿入した後、メンブレン17の端部をバンド等の固定具で支持部材18の外周に水密に固定する必要はない。これにより、固定具が不要となり、メンブレン17が劣化して固定具の取付部分における水密性が低下するようなことはなく、空気11の漏出を防止することができる。
【0053】
また、メンブレン17の挿入部16に支持部材18が挿入されているので、支持部材18はメンブレン17の袋状部23が挿入部16の内側(すなわち支持部材18の径方向における中心)に向かって膨らむことを規制する。これにより、メンブレン17の袋状部23は、挿入部16の内側に向かって膨らもうとしても支持部材18に妨げられ、主に挿入部16の外側(すなわち支持部材18の径方向における外側)へ向かって僅かに膨らむ。このため、メンブレン17に作用する浮力が減少し、メンブレン17が浮き上がらないように固定している支持部材18を小型化することができ、これに伴ってメンブレン式散気装置10を小型化することができる。
【0054】
また、気体供給ノズル19はメンブレン17の長手方向Aにおける中央部に設けられているため、空気11は、気体供給ノズル19の通気流路46を通ってメンブレン17の中央部から両端部に向かって均一に袋状部23内に供給される。このため、多数の気泡4が、メンブレン17から局所的に偏って放出されることはなく、メンブレン17から均一に放出される。
【0055】
また、図1に示すように、給気管12はメンブレン式散気装置10の下方に配置されているため、多数の気泡4は、給気管12に遮られることなく、メンブレン式散気装置10のスリット30から被処理水3中に放出される。
【0056】
以下に、上記メンブレン式散気装置10のメンブレン17の製造方法について説明する。
【0057】
先ず、図18に示すように、多数のスリット30を形成した表側のシート部材21の第1貫通孔26に気体供給ノズル19の筒部37を挿入し、第1貫通孔26の周辺部分を気体供給ノズル19の鍔部38の下面に溶着して、気体供給ノズル19を表側のシート部材21に取り付けておく。
【0058】
その後、図19示すように、表側のシート部材21の外周縁65(図18参照)と裏側のシート部材22の外周縁66(図18参照)とを溶着して、袋状部23を有する長方形のメンブレンシート67を形成する。尚、図19中の点描部分が表側のシート部材21と裏側のシート部材22との溶着部分29である。
【0059】
その後、図19に示すように、メンブレンシート67の対向する長辺68同士を接合してチューブ状に形成することにより、図4に示すように、内部に袋状部23を有するとともに中央部に挿入部16を有し、上部に第1開口部24を有するとともに、下部に気体供給ノズル19を備えたメンブレン17が形成される。
【0060】
これによると、袋状部23を有するチューブ状のメンブレン17を容易に製造することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図6の仮想線に示すように、スリット30を形成していない不形成領域31が表側のシート部材21の下部に形成されているが、第2の実施の形態として、気体供給ノズル19の周辺に形成されている不形成領域31を表側シート部材21の下部から上方へ拡張したものであってもよい。
【0061】
上記各実施の形態では、図4図9に示すように、円管状の支持部材18と円筒状のメンブレン17とを示したが、このような形状に限定されるものではなく、例えば、上半分の半円管状の支持部材18と半円筒状のメンブレン17とを用いてもよい。あるいは、三角形の管状の支持部材18と筒状のメンブレン17とを用いたり、四角形(多角形)の管状の支持部材18と筒状のメンブレン17とを用いてもよい。
【0062】
上記各実施の形態では、散気用の気体として空気11を使用しているが、空気11以外の気体を使用してもよい。
【0063】
上記各実施の形態では、図18図19示すように、表側のシート部材21と裏側のシート部材22とを溶着して、袋状部23を有するメンブレンシート67を形成しているが、表側のシート部材21を複数のシート片に分割し、袋状部23を形成するために必要な領域にのみ、表側のシート部材21のシート片を裏側のシート部材22に1以上配置し、シート片の周縁を裏側のシート部材22に溶着することによって、袋状部23を有するメンブレンシート67を形成してもよい。
【0064】
上記各実施の形態では、図19示すように、長方形のメンブレンシート67を用いてチューブ状のメンブレン17を形成しているが、正方形のメンブレンシート67を用いてもよい。また、長方形や正方形以外の歪な四角形或いは近似形状が四角形のメンブレンシート67を用いてチューブ状のメンブレン17を形成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 散気設備
3 被処理水(液体)
4 気泡
10 メンブレン式散気装置
11 空気(散気用の気体)
12 給気管
14 アダプタ
16 挿入部
17 メンブレン
18 支持部材
19 気体供給ノズル(気体供給部)
21 表側のシート部材
22 裏側のシート部材
23 袋状部
30 スリット
46 通気流路
67 メンブレンシート
68 メンブレンシートの長辺
A 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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