(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】圧力センサ及び位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20240927BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240927BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01L1/16 B
G06F3/041 602
G06F3/02 E
(21)【出願番号】P 2020214939
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】304014143
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】大村 皇治
(72)【発明者】
【氏名】望月 規之
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌士
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225407(WO,A1)
【文献】特開昭48-023335(JP,A)
【文献】特開2014-235134(JP,A)
【文献】特開2009-156641(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196359(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0154533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G06F 3/041
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板の上に
形成されている下部電極と、
前記下部電極の上に圧電体が形成されている圧電体層と、
前記圧電体層の上に
形成されている上部電極と、
前記上部電極の上に形成されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部と
を備え、
前記圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されて
おり、
前記上部電極及び前記下部電極は、一定の厚さの前記圧電体層を挟んで平行に形成されている、
圧力センサ。
【請求項2】
基板と、
基板の上に形成されている下部電極と、
前記下部電極の上に圧電体が形成されている圧電体層と、
前記圧電体層の上に形成されている上部電極と、
前記上部電極の上に形成されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部と
を備え、
前記圧電体層は、
前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されており、
前記基板と平行な面における前記圧力印加部に対応する領域内の面積が、前記圧力印加部の位置によって異なる、
圧力センサ。
【請求項3】
基板と、
基板の上に形成されている下部電極と、
前記下部電極の上に圧電体が形成されている圧電体層と、
前記圧電体層の上に形成されている上部電極と、
前記上部電極の上に形成されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部と
を備え、
前記圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されており、
前記圧電体層には、前記圧電体が形成されていない複数の空隙部が形成されており、
第1圧力印加部に対応する前記圧電体層の第1圧電体領域が有する前記空隙部の体積は、前記第1圧力印加部とは異なる第2圧力印加部に対応する前記圧電体層の第2圧電体領域が有する前記空隙部の体積とは異なる、
圧力センサ。
【請求項4】
前記圧電体層の厚さは、前記圧力印加部の位置によって異なる、請求項
2又は3のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記圧電体層は、複数の前記圧力印加部に対応する複数の圧電体領域を有しており、複数の前記圧電体領域のそれぞれと他の圧電体領域との間に、前記圧電体が形成されていない隙間領域が設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記上部電極及び前記下部電極は、一定の厚さの前記圧電体層を挟んで平行に形成されている、請求項
2又は3のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記圧力センサと、
前記上部電極及び前記下部電極から出力される検出信号を受け取る信号受信部と、
前記基板と平行な面における複数の前記圧力印加部の位置と、当該圧力印加部に圧力がそれぞれ印加された場合の前記検出信号の基準値とが関連付けられた圧力印加部データを記憶する記憶部と、
前記信号受信部が受信した前記検出信号と前記圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった前記圧力印加部の位置を特定する特定部と
を備える、
位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサ及び位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電体を2つの電極で挟み、圧電体を歪ませるように外力を印加することで、2つの電極間に電圧を発生させる圧電効果を用いたセンサ素子が知られている。そして、このようなセンサ素子を複数並べることにより、外力が印加された位置を検出する位置検出装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような位置検出装置は、検出したい位置ごとにセンサ素子を配置していた。この場合、検出したい位置の増加に伴ってセンサ素子の数が増加するので、位置検出装置が複雑になってしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数のセンサ素子を配置することなく、複数の圧力印加位置の中から実際に外力が印加された位置を特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、基板と、基板の上に形成されている下部電極と、前記下部電極の上に圧電体が形成されている圧電体層と、前記圧電体層の上に形成されている上部電極と、前記上部電極の上に形成されており、外部から圧力が印加される複数の圧力印加部とを備え、前記圧電体層は、前記基板と平行な面において、単位面積あたりの前記圧電体の体積が前記圧力印加部の位置によって異なるように前記圧電体が形成されている、圧力センサを提供する。
【0007】
前記圧電体層の厚さは、前記圧力印加部の位置によって異なっていてもよい。
前記圧電体層は、前記基板と平行な面における前記圧力印加部に対応する領域内の面積が、前記圧力印加部の位置によって異なっていてもよい。
【0008】
前記圧電体層は、複数の前記圧力印加部に対応する複数の圧電体領域を有しており、複数の前記圧電体領域のそれぞれと他の圧電体領域との間に、前記圧電体が形成されていない隙間領域が設けられていてもよい。
【0009】
前記圧電体層には、前記圧電体が形成されていない複数の空隙部が形成されており、第1圧力印加部に対応する前記圧電体層の第1圧電体領域が有する前記空隙部の体積は、前記第1圧力印加部とは異なる第2圧力印加部に対応する前記圧電体層の第2圧電体領域が有する前記空隙部の体積とは異なっていてもよい。
【0010】
前記上部電極及び前記下部電極は、一定の厚さの前記圧電体層を挟んで平行に形成されていてもよい。
【0011】
第1の態様の前記圧力センサと、前記上部電極及び前記下部電極から出力される検出信号を受け取る信号受信部と、前記基板と平行な面における複数の前記圧力印加部の位置と、当該圧力印加部に圧力がそれぞれ印加された場合の前記検出信号の基準値とが関連付けられた圧力印加部データを記憶する記憶部と、前記信号受信部が受信した前記検出信号と前記圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった前記圧力印加部の位置を特定する特定部とを備える、位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のセンサ素子を配置することなく、複数の圧力印加位置の中から実際に外力が印加された位置を特定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】比較対象の位置検出装置10の構成例を示す。
【
図2】本実施形態に係る位置検出装置100の第1構成例を示す。
【
図3】本実施形態に係る位置検出装置100の第2構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<従来の位置検出装置10の構成例>
図1は、比較対象の位置検出装置10の構成例を示す。本実施形態において、直交する3つの軸をX軸、Y軸、Z軸として示す。位置検出装置10は、圧力センサ20と信号処理部30とを備える。圧力センサ20は、圧力印加部40と、基板50と、センサ素子60と、下地層70と、保護膜80と、配線90とを有する。
【0015】
圧力印加部40は、位置検出装置10に複数設けられており、外部から圧力が印加される。
図1は、第1圧力印加部40A、第2圧力印加部40B、および第3圧力印加部40Cの3つの圧力印加部40が位置検出装置10に設けられている例を示す。圧力印加部40は、例えば、ユーザ等の操作によって圧力が印加される。一例として、圧力印加部40は、ユーザの指先によって押圧される。圧力印加部40は、例えば、押ボタン、キーボタンの形状に形成されている。これに代えて、複数の圧力印加部40は、弾性を有する板状又はフィルム状の部材の上面に印刷等によって区分けされている複数の領域であってもよい。圧力印加部40は、例えば、不図示の筐体等に取り付けられている。
【0016】
基板50は、XY面と略平行な面を有し、当該面上にセンサ素子60等の部材が形成されている。基板50は、位置検出装置10の強度を保つための部材であることが望ましい。基板50は、例えば、屈曲させることが可能な材料で形成されている。この場合、基板50は、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム、フレキシブル基板等である。
【0017】
センサ素子60は、基板50の上に複数形成されている。なお、センサ素子60は、基板50の上面に形成されている下地層70の上面に形成されていてもよい。下地層70は、一例として、架橋PVP(ポリビニルピロリドン)膜である。センサ素子60は、外部から加わった圧力を検出する。1つのセンサ素子60は、1つの圧力印加部40に対応して設けられており、1つの圧力印加部40が押圧されたことを検出できるように配置されている。
図1は、3つの圧力印加部40に対応して、3つのセンサ素子60が基板50の上に形成されている例を示す。センサ素子60は、下部電極62、上部電極64、及び圧電体層66を有する。
【0018】
下部電極62及び上部電極64は、導電性の材料で形成されている。下部電極62及び上部電極64は、金属の材料を含むことが望ましい。下部電極62及び上部電極64は、圧電体層66を挟んで形成されている。
【0019】
圧電体層66は、下部電極62の上面に圧電体が形成されている部位である。圧電体は、圧電効果を有する強誘電体性を有する材料である。圧電体は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のポリマー、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスである。
【0020】
保護膜80は、複数のセンサ素子60を覆うように形成されている。保護膜80は、樹脂等である。保護膜80は、例えば、パリレン等のポリマーである。なお、圧力印加部40は、保護膜80の上に設けられている。圧力印加部40は、押圧されていない状態において、保護膜80と接触するように設けられていてもよく、これに代えて、保護膜80との間には空隙があるように設けられていてもよい。
【0021】
配線90は、センサ素子60の下部電極62及び上部電極64と信号処理部30とを電気的に接続する。配線90は、センサ素子60ごとに設けられている。信号処理部30は、センサ素子60から生じた電圧を検出して、複数のセンサ素子60のうち圧力が印加されたセンサ素子60を特定する。また、信号処理部30は、特定したセンサ素子60に対応する圧力印加部40を外力が印加された圧力印加部40として特定できる。
【0022】
以上のように、圧力センサ20は、圧力印加部40が押圧されると、圧電体層66に圧力が加わるようにセンサ素子60が圧力印加部40の位置に対応して配置されている。そして、センサ素子60は、圧電効果により、圧電体層66に加わった圧力に応じた電圧を下部電極62及び上部電極64の間に生じさせる。
【0023】
センサ素子60は、例えば、
図1に示す検出波形の例のように、ユーザが指で圧力印加部40を押圧すると、定常状態の電圧よりも大きい電圧を発生させる。また、センサ素子60は、ユーザが指で圧力印加部40を押圧した状態から指を圧力印加部40から離すと、定常状態の電圧よりも小さい電圧を発生させる。信号処理部30は、例えば、このような検出波形の最大振幅値を検出することにより、圧力が印加されたセンサ素子60を特定する。
【0024】
以上の位置検出装置10は、ユーザの操作入力を検出する入力デバイスとして機能することができる。位置検出装置10は、例えば、ユーザが指で第1圧力印加部40Aを押圧したことに応じて、センサ素子60Aが電圧を発生させる。したがって、信号処理部30は、センサ素子60Aに接続されている配線90から所定の電圧値が発生したことに応じて、センサ素子60Aに対応する位置の第1圧力印加部40Aが押圧されたことを検出できる。信号処理部30は、検出した圧力印加部40の情報を外部の回路、装置等に出力する。
【0025】
これにより、位置検出装置10は、例えば、タッチパネル、テンキー、キーボード等の入力デバイスとして構成される。位置検出装置10は、圧電効果を利用しているので、静電容量を利用する入力デバイスと比較して、水滴や埃が介在しても誤検出を低減することができる。
【0026】
このような位置検出装置10において、位置の検出分解能を向上させたい場合、入力可能な圧力印加部40の数を増加させたい場合等が生じることがある。この場合、圧力センサ20の圧力を検出したい位置ごとに、センサ素子60を配置しなければならない。しかしながら、センサ素子60を増加させることにより、センサ素子60の配置、配線90の配置、信号処理部30の回路等が複雑になってしまい、位置検出装置10を製造すること、保守、点検等が困難になってしまうことがあった。そこで、本実施形態に係る位置検出装置は、複数のセンサ素子60等を配置することなく、複数の圧力印加部40の中から実際に圧力が加わった圧力印加部40の位置を検出できるようにする。
【0027】
<本実施形態に係る位置検出装置100の構成例>
図2は、本実施形態に係る位置検出装置100の第1構成例を示す。本実施形態に係る位置検出装置100において、
図1に示された比較対象の位置検出装置10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、重複する説明を省略する。位置検出装置100は、圧力センサ110と信号処理部150とを備える。圧力センサ110は、圧力印加部40、基板50、下地層70、保護膜80、配線90、下部電極120、上部電極130、及び圧電体層140を有する。
【0028】
下部電極120は、基板50の上に形成されている。
図2は、下部電極120が下地層70の上面に形成されている例を示す。下部電極120は、一体に形成されていることが望ましい。上部電極130は、圧電体層140の上に形成されている。上部電極130は、圧電体層140の上面に形成されていることが望ましい。上部電極130は、一体に形成されていることが望ましい。下部電極120及び上部電極130は、導電性の材料で形成されている。
【0029】
圧電体層140は、下部電極120の上に圧電体が形成されている部位である。圧電体層140は、下部電極120の上面に形成されていることが望ましい。圧電体は、圧電効果を有する強誘電体性を有する材料である。圧電体は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のポリマー、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスである。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る位置検出装置100は、比較対象の位置検出装置10の複数のセンサ素子60の代わりに、下部電極120、上部電極130、及び圧電体層140が形成されている。言い換えると、位置検出装置100は、共通の下部電極120と共通の上部電極130が圧電体層140を挟んで形成されている。そして、圧力印加部40が、保護膜80を介して上部電極130の上に形成されている。
【0031】
圧電体層140は、基板50と略平行な面(XY面)において、単位面積あたりの圧電体の体積が圧力印加部40の位置によって異なるように圧電体が形成されている。
図2は、圧電体層140の厚さが圧力印加部40の位置によって異なる例を示す。圧電体層140の圧電効果は、圧電体に同じ圧力が加わっても、圧力が加わった圧電体の体積に応じて、発生させる電圧が異なる。
【0032】
例えば、第1圧力印加部40Aに外力が印加された場合に、第1圧力印加部40Aの直下の第1圧力印加部40Aに対応して圧力が加わる圧電体層140の一部を第1圧電体領域141とする。また、第2圧力印加部40Bに外力が印加され、第2圧力印加部40Bの直下の第2圧力印加部40Bに対応して圧力が加わる圧電体層140の一部を第2圧電体領域142とする。同様に、第3圧力印加部40Cに外力が印加された場合に圧力が加わる圧電体層140の一部を第3圧電体領域143とする。
【0033】
図2の場合、第1圧電体領域141の基板50に垂直な方向(Z軸方向)の厚さは、第2圧電体領域142の厚さよりも薄く形成されているので、第1圧電体領域141の体積は、第2圧電体領域142の体積よりも小さい。同様に、第2圧電体領域142の体積は、第3圧電体領域143の体積よりも小さい。
【0034】
圧電体の体積が大きければ大きいほど、圧電体から出力される電荷の量が増える。したがって、
図2に示す構造を有する圧力センサ110の場合、ある大きさの外力が第1圧力印加部40A、第2圧力印加部40B及び第3圧力印加部40Cのそれぞれに印加された場合に圧電体層140が発生する電圧は、互いに異なっている。例えば、ある大きさの外力が第1圧力印加部40Aに加わって第1圧電体領域141から発生する電圧の大きさは、当該外力と略同一の大きさの外力が第2圧力印加部40Bに加わって第2圧電体領域142から発生する電圧の大きさよりも小さい。したがって、共通の下部電極120及び上部電極130に発生する電圧の値を検出することにより、どこの圧力印加部40に外力が印加したかを判断することができる。
【0035】
配線90は、このように下部電極120及び上部電極130に発生する電圧を検出信号として信号処理部150に伝送する。信号処理部150は、圧力センサ110から出力された検出信号の波形(例えば振幅)に基づいて、外力が加わった圧力印加部40を特定する。信号処理部150は、信号受信部160と、特定部170と、記憶部180とを有する。
【0036】
信号受信部160は、上部電極130及び下部電極120から出力される検出信号を受け取る。信号受信部160は、例えば、増幅回路、A/D変換回路等を含み、受信した検出信号をデジタル信号に変換する。信号受信部160は、変換したデジタル信号を特定部170に供給する。
【0037】
特定部170は、信号受信部160が受信した検出信号と圧力印加部データとに基づいて、外力が加わった圧力印加部40の位置を特定する。圧力印加部データは、基板50と平行な面における複数の圧力印加部40の位置と、当該圧力印加部40に圧力がそれぞれ印加された場合の検出信号の基準値とが関連付けられたデータである。
【0038】
例えば、第1圧力印加部40Aを指で押圧して第1圧電体領域141から発生する電圧の最大振幅値の平均値をV1ave、誤差の許容値をΔVとする。この場合、第1圧力印加部40Aに対応する検出信号の基準値ST1は、平均値から誤差の許容値を差し引いた値(V1ave-ΔV)である。同様に、第2圧力印加部40Bに対応する検出信号の基準値ST2は、第2圧力印加部40Bを指で押圧して第2圧電体領域142から発生する電圧の最大振幅値の平均値から誤差の許容値を差し引いた値(V2ave-ΔV)である。また、第3圧力印加部40Cに対応する検出信号の基準値ST3も同様にV3ave-ΔVである。
【0039】
この場合、特定部170は、例えば、検出信号の最大振幅値が基準値ST2よりも小さく、かつ、基準値ST1以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第1圧力印加部40Aであることを特定する。同様に、特定部170は、検出信号の最大振幅値が基準値ST3よりも小さく、かつ、基準値ST2以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第2圧力印加部40Bであることを特定する。また、特定部170は、検出信号の最大振幅値が基準値ST3以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第3圧力印加部40Cであることを特定してもよい。
【0040】
これに代えて、検出信号の基準値は、1つの圧力印加部40に対して、電圧値の範囲を示す2つの値が設定されていてもよい。例えば、第1圧力印加部40Aに対応する検出信号の基準値は、平均値から誤差の許容値を差し引いた値ST1m(V1ave-ΔV)と平均値に誤差の許容値を加算した値ST1p(V1ave+ΔV)である。
【0041】
この場合、特定部170は、例えば、検出信号の最大振幅値が基準値ST1pよりも小さく、かつ、基準値ST1m以上となったことに応じて、外力が加わった圧力印加部40が第1圧力印加部40Aであることを特定する。特定部170は、このように統計的な手法により定められた基準値、又は、設計値等から定められた基準値等を用いることにより、外力が加わった圧力印加部40をより正確に特定することができる。
【0042】
特定部170は、例えば、特定した外力の加わった位置の情報を外部の回路、装置等に供給する。また、特定部170は、特定した外力の加わった位置の情報を表示部等に表示してもよい。特定部170は、特定した外力の加わった位置の情報を記憶部180に記憶してもよい。このような特定部170は、例えば、CPU等である。
【0043】
記憶部180は、複数の圧力印加部40の位置と検出信号の基準値とが関連付けられた圧力印加部データを記憶する。記憶部180は、特定部170が動作に用いる設定値、閾値、及びパラメータ等を記憶してもよい。記憶部180は、CPU等が少なくとも特定部170の一部として動作する場合、CPU等が実行するプログラムの情報を格納してもよい。また、記憶部180は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。
【0044】
記憶部180は、一例として、BIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、及び作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。これにより、CPU等は、記憶部180に記憶されたプログラムを実行することによって特定部170として機能する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る圧力センサ110は、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なっているので、外力が印加した場合に発生する検出信号の最大振幅値が圧力印加部40の位置に応じて異なる。したがって、位置検出装置100は、圧力センサ110の検出信号の最大振幅値と複数の基準値とを比較することにより、検出信号が発生した圧電体層140の領域に対応する圧力印加部40の位置を特定できる。
【0046】
このような圧電体層140を有する圧力センサ110は、複数のセンサ素子60を設けることなく、圧電体層140を挟む共通の下部電極120及び上部電極130を用いた簡便な構成とすることができる。そして、位置検出装置100は、このような簡便な構成の圧力センサ110を用いることで、配線90の数を低減させることができる。また、位置検出装置100は、共通の下部電極120及び上部電極130から出力された検出信号をデジタル信号に変換してデジタル処理するだけで、複数の圧力印加部40の中から実際に外力が印加された圧力印加部40の位置を簡便に特定することができる。
【0047】
以上の本実施形態に係る圧力センサ110において、圧電体層140の厚さが圧力印加部40の位置によって異なる例を説明したが、これに限定されることはない。圧力センサ110においては、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なっていればよく、圧電体層140は、基板50と平行な面における圧力印加部40に対応する領域内の面積が、圧力印加部40の位置によって異なるように形成されていてもよい。
【0048】
例えば、基板50と平行な平面における平面視で、第1圧力印加部40Aに対応する第1圧電体領域141の面積は、第2圧力印加部40Bに対応する第2圧電体領域142の面積よりも小さくなるように形成されていてもよい。同様に、平面視で、第2圧力印加部40Bに対応する第2圧電体領域142の面積は、第3圧力印加部40Cに対応する第3圧電体領域143の面積よりも小さくなるように形成されていてもよい。
【0049】
これにより、圧力印加部40の位置によって、圧電体層140の圧電体の単位面積あたりの体積を異ならせることができる。なお、基板50の垂直方向の圧電体層140の厚さは、略一定の厚さに形成されていてもよい。この場合、上部電極130及び下部電極120は、略一定の厚さの圧電体層140を挟んで略平行に形成される。このような上部電極130及び下部電極120は、階段状に形成する部分がないので、製造しやすく、また、段切れ等によって電気的な特性に悪影響を及ぼす欠陥を生じにくくすることができる。
【0050】
なお、圧電体層140の複数の圧電体領域は、隙間等によって分離されて形成されてもよい。また、圧電体層140の複数の圧電体領域は、空隙等によって体積がそれぞれ異なるように形成されていてもよい。このような圧力センサ110aを有する位置検出装置100について、次に説明する。
【0051】
図3は、本実施形態に係る位置検出装置100の第2構成例を示す。第2構成例の圧力センサ110aが有する圧電体層140は、複数の圧力印加部40に対応する複数の圧電体領域を有しており、複数の圧電体領域のそれぞれと他の圧電体領域との間に、圧電体が形成されていない隙間領域144が設けられている例を示す。このように、複数の圧電体領域を分離することにより、1つの圧電体領域に圧力が加わった場合に、隣接する圧電体領域にも圧力が加わることを防止でき、検出信号の雑音成分を低減することができる。
【0052】
また、圧電体層140には、圧電体が形成されていない複数の空隙部146が更に形成されている。そして、第1圧力印加部40Aに対応する圧電体層140の第1圧電体領域141が有する空隙部146の体積は、第1圧力印加部40Aとは異なる第2圧力印加部40Bに対応する圧電体層140の第2圧電体領域142が有する空隙部146の体積とは異なるように圧電体層140が形成されている。
【0053】
これにより、圧電体の単位面積あたりの体積が圧力印加部40の位置によって異なるように圧電体層140を形成することができる。また、圧電体の厚さを略一定にすることができ、上部電極130及び下部電極120を、一定の厚さの圧電体層140を挟んで平行に形成することもできる。このような隙間領域144、空隙部146等は、例えば、エッチング等によって容易に形成することができる。したがって、第2構成例の位置検出装置100も、簡便に製造することができ、また、複数のセンサ素子を配置することなく、複数の圧力が印加される位置の中から実際に外力が印加された位置を特定することができる。
【0054】
<圧力センサ110の製造方法>
圧力センサ110を製造する方法は任意であるが、例えば以下のように圧電体をスクリーン印刷する方法により製造することができる。第1圧電体領域141、第2圧電体領域142及び第3圧電体領域143の形状に対応する領域以外の領域をマスクしたマスクパターンを準備する。
【0055】
下部電極120にマスクパターンを載せた状態で、第1圧電体領域141、第2圧電体領域142及び第3圧電体領域143に圧電体を印刷した後に、印刷した圧電体を焼結させる。圧電体が所定の温度に下がった後に、第2圧電体領域142及び第3圧電体領域143に圧電体を印刷する。この際に印刷する圧電体の厚みは、例えば第1圧電体領域141に印刷した圧電体の厚みと同一とする。印刷した圧電体を焼結させ、圧電体が所定の温度に下がった後、第3圧電体領域143に圧電体を印刷する。そして、印刷した圧電体を焼結させる。このようにして形成した圧電体層140に上部電極130を形成し、下部電極120及び上部電極130に配線90を接続する。以上の手順により、位置によって圧電体層の厚みが異なる圧力センサ110を製造することができる。
【0056】
<圧力センサ110aの製造方法>
圧力センサ110aも圧力センサ110と同様に、圧電体をスクリーン印刷する方法により製造することができる。圧力センサ110aを製造する場合、マスクパターンにおける第1圧電体領域141、第2圧電体領域142及び第3圧電体領域143に対応する領域の形状が、
図3における第1圧電体領域141、第2圧電体領域142及び第3圧電体領域143の形状に対応している。下部電極120にマスクパターンを載せた状態で、第1圧電体領域141、第2圧電体領域142及び第3圧電体領域143に圧電体を印刷して形成した圧電体層140に上部電極130を形成し、下部電極120及び上部電極130に配線90を接続することで、圧力センサ110aを製造することができる。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0058】
10 位置検出装置
20 圧力センサ
30 信号処理部
40 圧力印加部
50 基板
60 センサ素子
62 下部電極
64 上部電極
66 圧電体層
70 下地層
80 保護膜
90 配線
100 位置検出装置
110 圧力センサ
120 下部電極
130 上部電極
140 圧電体層
141 第1圧電体領域
142 第2圧電体領域
143 第3圧電体領域
144 隙間領域
146 空隙部
150 信号処理部
160 信号受信部
170 特定部
180 記憶部