(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 69/06 20060101AFI20240927BHJP
F16H 39/02 20060101ALI20240927BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01D69/06
F16H39/02
B60K17/10 C
(21)【出願番号】P 2020215620
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀三
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】森脇 崇文
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-237144(JP,A)
【文献】特開2002-192971(JP,A)
【文献】特許第6113040(JP,B2)
【文献】特許第5134557(JP,B2)
【文献】特開2013-188185(JP,A)
【文献】特開2005-172054(JP,A)
【文献】特開2015-068404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00-33/14
A01D 43/00-43/04
A01D 43/08-46/30
A01D 51/00
A01D 67/00-69/12
F16H 39/00-47/26
B60K 17/10-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの動力を変速する静油圧式無段変速装置と、前記静油圧式無段変速装置の変速出力を減速して
左右の走行装置に伝達するギア式の走行伝動機構と、が備えられ、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧ポンプが前記エンジンの動力によって回転する駆動軸に連動連結され、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧モータが前記走行伝動機構の
走行用入力軸に連動連結され、
前記可変容量型油圧ポンプと前記可変容量型油圧モータとが油圧配管を介して接続され
、
前記可変容量型油圧ポンプが1つであり、
前記可変容量型油圧モータが1つであって、かつ、前記左右の走行装置を駆動する収穫機。
【請求項2】
前記エンジンの出力軸から前記駆動軸を含む複数の分岐伝動軸に動力を分岐伝達するギア噛み合い式の動力分岐機構が備えられている請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記動力分岐機構は、1つの伝動ケースに収納される状態で、前記エンジンの出力軸に接続された
分岐用入力軸の動力をギアの咬み合いにより複数の分岐伝動軸に分岐させるように構成され、
前記複数の分岐伝動軸のうちのいずれか一つが前記駆動軸として前記可変容量型油圧ポンプに連動連結され、
前記複数の分岐伝動軸のうちの他の分岐伝動軸が、他の油圧機器に作動油を供給する作業用油圧ポンプに連動連結されている請求項2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記エンジンの出力軸と前記分岐用入力軸とが同一軸芯状に位置する状態で接続されている請求項3に記載の収穫機。
【請求項5】
エンジンと、前記エンジンの動力を変速する静油圧式無段変速装置と、前記静油圧式無段変速装置の変速出力を減速して走行装置に伝達するギア式の走行伝動機構と、が備えられ、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧ポンプが前記エンジンの動力によって回転する駆動軸に連動連結され、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧モータが前記走行伝動機構の入力軸に連動連結され、
前記可変容量型油圧ポンプと前記可変容量型油圧モータとが油圧配管を介して接続され、
前記エンジン及び前記走行伝動機構は、左右中心部が機体の左右方向略中央に位置する状態で備えられ、
前記
可変容量型油圧ポンプにより供給される作動油を貯留する作動油タン
ク、前記可変容量型油圧ポンプ、及び、前記可変容量型油圧モータが、機体の左右方向一方側に寄った位置に配備されて
いる収穫機。
【請求項6】
前記エンジンの出力軸から前記駆動軸を含む複数の分岐伝動軸に動力を分岐伝達するギア噛み合い式の動力分岐機構が備えられ、
前記動力分岐機構は、1つの伝動ケースに収納される状態で、前記エンジンの出力軸に接続された分岐用入力軸の動力をギアの咬み合いにより複数の分岐伝動軸に分岐させるように構成され、
前記複数の分岐伝動軸のうちのいずれか一つが前記駆動軸として前記可変容量型油圧ポンプに連動連結され、
前記複数の分岐伝動軸のうちの他の分岐伝動軸が、他の油圧機器に作動油を供給する作業用油圧ポンプに連動連結され、
前記伝動ケースが、機体の左右方向で前記作動油タンクと同じ側に寄った位置に配備されている請求項5に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン、サトウキビ収穫機等の収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の収穫機では、車体の走行用変速装置として静油圧式無段変速装置(Hydro Static Transmission)(以下の説明において、HSTと略称する場合がある)が用いられる。このHSTは無段階の変速操作が行えるので、圃場等の不整地を走行する収穫機において操縦操作し易い利点がある。HSTは、可変容量型の油圧ポンプと可変容量型の油圧モータとを備えているが、HSTを収穫機に採用する場合、従来では、油圧ポンプと油圧モータとが一体的に組み付けられた状態で用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、油圧ポンプと油圧モータとが一体的に組み付けられているために、HSTを、例えば、左右の走行装置に動力を伝達するためのギア式の走行伝動機構の近傍に配置して、エンジンの動力を、離間した伝動軸同士での動力伝達が可能なベルト伝動機構等を介してHSTの入力軸に伝達させる必要がある。
【0005】
しかし、エンジンと走行伝動機構とは離間する状態で設置されるので、長い距離にわたって動力伝達を行わなければならず、ベルト伝動機構が複数必要であり、しかも、中継用の伝動軸及び複数のギア噛み合い機構等も必要となるなど、複雑な機械式の動力伝達機構が必要であり、コスト増を招く不利な面があった。例えば、伝動ベルトの交換作業等のメンテナンス作業が必要となり、また、修理交換のためのランニングコストも必要であり、コスト増を招くものとなっていた。
【0006】
そこで、無段階変速を行えるという静油圧式無段変速装置の利点を生かしながらも、メンテナンス等の手間を少なくしてコスト低減を図れるようにすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る収穫機の特徴構成は、エンジンと、前記エンジンの動力を変速する静油圧式無段変速装置と、前記静油圧式無段変速装置の変速出力を減速して左右の走行装置に伝達するギア式の走行伝動機構と、が備えられ、前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧ポンプが前記エンジンの動力によって回転する駆動軸に連動連結され、前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧モータが前記走行伝動機構の走行用入力軸に連動連結され、前記可変容量型油圧ポンプと前記可変容量型油圧モータとが油圧配管を介して接続され、前記可変容量型油圧ポンプが1つであり、前記可変容量型油圧モータが1つであって、かつ、前記左右の走行装置を駆動する点にある。
【0008】
本発明によれば、可変容量型油圧ポンプはエンジンの近傍に配置され、エンジンの動力によって直接駆動される。一方、可変容量型油圧モータは走行伝動機構の近傍に配置され、走行伝動機構の入力軸を直接駆動する。可変容量型油圧ポンプと可変容量型油圧モータとの間は、自由に配索することが可能な油圧配管によって接続される。その結果、可変容量型油圧ポンプと可変容量型油圧モータとが離間する状態で配置される場合のようにメンテナンス作業の手間を掛ける不利を回避できる。
【0009】
従って、無段階変速を行えるという静油圧式無段変速装置の利点を生かしながらも、メンテナンス等の手間を少なくしてコスト低減を図れるようにすることが可能となった。
【0010】
本発明においては、前記エンジンの出力軸から前記駆動軸を含む複数の分岐伝動軸に動力を分岐伝達するギア噛み合い式の動力分岐機構が備えられていると好適である。
【0011】
本構成によれば、エンジンの動力をギア噛み合い式の動力分岐機構によって分岐させるので、伝動ベルトのすべり等の動力のロスが少ない状態で複数の分岐伝動軸に動力を伝達することができる。そして、このようにして分岐された動力によって効率よく可変容量型油圧ポンプを駆動することができる。
【0012】
本発明においては、前記動力分岐機構は、1つの伝動ケースに収納される状態で、前記エンジンの出力軸に接続された分岐用入力軸の動力をギアの咬み合いにより複数の分岐伝動軸に分岐させるように構成され、前記複数の分岐伝動軸のうちのいずれか一つが前記駆動軸として前記可変容量型油圧ポンプに連動連結され、前記複数の分岐伝動軸のうちの他の分岐伝動軸が、他の油圧機器に作動油を供給する作業用油圧ポンプに連動連結されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、1つの伝動ケースにコンパクトに収納されたギア噛み合い式の動力分岐機構を介して、可変容量型油圧ポンプの駆動軸、及び、他の作業用油圧ポンプの駆動用の分岐伝動軸等に対して、動力のロスが少ない状態で良好に動力伝達することができる。
本発明においては、前記エンジンの出力軸と前記分岐用入力軸とが同一軸芯状に位置する状態で接続されていると好適である。
【0014】
本発明に係る収穫機の特徴構成は、エンジンと、前記エンジンの動力を変速する静油圧式無段変速装置と、前記静油圧式無段変速装置の変速出力を減速して走行装置に伝達するギア式の走行伝動機構と、が備えられ、前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧ポンプが前記エンジンの動力によって回転する駆動軸に連動連結され、前記静油圧式無段変速装置の可変容量型油圧モータが前記走行伝動機構の入力軸に連動連結され、前記可変容量型油圧ポンプと前記可変容量型油圧モータとが油圧配管を介して接続され、前記エンジン及び前記走行伝動機構は、左右中心部が機体の左右方向略中央に位置する状態で備えられ、前記可変容量型油圧ポンプに供給される作動油を貯留する作動油タンク、前記可変容量型油圧ポンプ、及び、前記可変容量型油圧モータが、機体の左右方向一方側に寄った位置に配備されていると点にある。
【0015】
本発明によれば、可変容量型油圧ポンプはエンジンの近傍に配置され、エンジンの動力によって直接駆動される。一方、可変容量型油圧モータは走行伝動機構の近傍に配置され、走行伝動機構の入力軸を直接駆動する。可変容量型油圧ポンプと可変容量型油圧モータとの間は、自由に配索することが可能な油圧配管によって接続される。その結果、可変容量型油圧ポンプと可変容量型油圧モータとが離間する状態で配置される場合のようにメンテナンス作業の手間を掛ける不利を回避できる。
従って、無段階変速を行えるという静油圧式無段変速装置の利点を生かしながらも、メンテナンス等の手間を少なくしてコスト低減を図れるようにすることが可能となった。
又、本発明によれば、機体の左右方向一方側に片寄った状態で、油圧配管が必要となる油圧機器類をまとめて配置させるようにしたので、油圧配管をできるだけ短い経路で効率よく配策することができる。
本発明においては、前記エンジンの出力軸から前記駆動軸を含む複数の分岐伝動軸に動力を分岐伝達するギア噛み合い式の動力分岐機構が備えられ、前記動力分岐機構は、1つの伝動ケースに収納される状態で、前記エンジンの出力軸に接続された分岐用入力軸の動力をギアの咬み合いにより複数の分岐伝動軸に分岐させるように構成され、前記複数の分岐伝動軸のうちのいずれか一つが前記駆動軸として前記可変容量型油圧ポンプに連動連結され、前記複数の分岐伝動軸のうちの他の分岐伝動軸が、他の油圧機器に作動油を供給する作業用油圧ポンプに連動連結され、前記伝動ケースが、機体の左右方向で前記作動油タンクと同じ側に寄った位置に配備されていると好適である。
本構成によれば、エンジンの動力をギア噛み合い式の動力分岐機構によって分岐させるので、伝動ベルトのすべり等の動力のロスが少ない状態で複数の分岐伝動軸に動力を伝達することができる。そして、このようにして分岐された動力によって効率よく可変容量型油圧ポンプを駆動することができる。又、1つの伝動ケースにコンパクトに収納されたギア噛み合い式の動力分岐機構を介して、可変容量型油圧ポンプの駆動軸、及び、他の作業用油圧ポンプの駆動用の分岐伝動軸等に対して、動力のロスが少ない状態で良好に動力伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】エンジン、走行伝動部、及び、油圧操作系の配置を示す側面図である。
【
図4】エンジン、走行伝動部、及び、油圧操作系の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る収穫機の実施形態を収穫機の一例であるサトウキビ収穫機に適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0018】
〔全体構成〕
図1、
図2は、サトウキビ収穫機の全体を示す図であり、
図1は側面図、
図2は平面図である。この実施形態では、
図1,2に符号(F)で示す方向が機体前側、符号(B)で示す方向が機体後側である。
図2に符号(L)で示す方向が機体左側、
図2に符号(R)で示す方向が機体右側である。
【0019】
サトウキビ収穫機は、操向操作可能な左右の前部走行装置としての前車輪1と、操向不能で且つ回転駆動される左右の後部走行装置としての後車輪2とを備えて、後車輪2を駆動することで走行可能な車輪走行式に構成されている。
【0020】
機体には、運転部3と、植立している作物を刈り取る刈取部4と、サトウキビの上部の葉部分を切断するトッパ5と、刈取部4にて刈り取られた作物を後上方に搬送する搬送装置としてのフィーダ6と、フィーダ6によって搬送される作物(サトウキビ)と夾雑物とを分離する分離装置7と、夾雑物と分離された作物(収穫物)を機体外方側に斜め上方に向けて搬送して排出する排出コンベア8と、機体各部に動力を供給するエンジン9と、が備えられている。
【0021】
運転部3は、機体前部の高い位置に備えられ、キャビン10によって周囲が覆われている。図示はしていないが、キャビン10の内部には、運転座席、ステアリングハンドル、操作パネル等が備えられている。キャビン10の左右両側の側面部には開閉可能なドア部が備えられている。図示はしないが、左右の前車輪1は、ステアリングハンドルの操作に伴って、油圧シリンダを有するステアリング装置51(
図6参照)により操向操作可能に構成されている。
【0022】
刈取部4は、機体の前下部に備えられている。刈取部4には、植立作物のうち収穫対象を分草して案内する左右の分草装置11と、圃場に植立する作物を刈り取って後方に送り込む刈取ヘッダ12と、が備えられている。
【0023】
左右の分草装置11は、油圧モータにより回転駆動される縦向き姿勢の分草回転体13が備えられている。左右の分草装置11は、リンク機構14を介して機体フレーム15に昇降可能に支持されている。
【0024】
刈取ヘッダ12は、左右の分草装置11の後方に連なるように設けられた左右の側壁17(
図2参照)と、その左右の側壁17にて挟まれた領域内に作物を前倒れ姿勢になるように押し倒しながら後方に掻き込むローラ、作物の株元を切断する切断装置18等、が備えられている。切断装置18は、左右の分草装置11の後方に位置して、油圧モータの駆動により上下軸芯周りで回転する左右一対の回転式カッターを備えている。
【0025】
フィーダ6は、
図2に示すように、刈取ヘッダ12の左右の側壁17の間隔と略同じ搬送幅を有し、搬送始端部が切断装置18の後方に連なる低い位置に設けられている。フィーダ6は、機体後上方に向けて作物を搬送するように、後上がり傾斜姿勢に設けられている。フィーダ6は、全体として、略矩形筒状の搬送経路を形成する剛性の高い構造体が形成されている。
【0026】
フィーダ6の内部には、
図6に示すように、左右両側の側壁の間において、搬送方向に沿って適宜間隔をあけて掻き出し回転体が作物の移送経路の上下両側に備えられ、上下両側の掻き出し回転体が、互いに逆方向に回転駆動され、それらの間に収穫物を挟み込んで後方に搬送するように構成されている。
【0027】
フィーダ6は搬送終端部において、搬送されてくる長尺状の作物を運搬トラックへ積載して搬送するときに取扱いが容易な長さになるように細断するように構成されている。
【0028】
分離装置7は、図示はしないが、油圧モータによって上下軸芯周りで回転駆動されるファンが内装され、ファンの通風作用によって、フィーダ6の搬送終端部から排出される作物に含まれる細かな茎稈屑や葉切れ等の夾雑物を分離して外方に排出する。すなわち、フィーダ6の後端部から排出される作物は、排出される途中でファンによる吸引作用を受けて、細かな茎稈屑や葉切れ等の比較的軽い夾雑物が上方に吸引され、外方に排出される。夾雑物に比べて重い作物(サトウキビ)は、ファンにより吸引されることなく、そのまま下方に落下する。
【0029】
分離装置7の直下方側であって且つフィーダ6の後端部よりも後下方側に、フィーダ6から下方に排出された作物を受止め回収する受止めホッパー19が備えられている。受止めホッパー19にて受止められた作物は排出コンベア8の搬送始端部に排出される。
【0030】
排出コンベア8は、機体フレーム15の後部に設けられたコンベア支持フレーム20によって全体が支持されており、機体の後下部から機体外方上方に向けて延びている。排出コンベア8は、図示しない油圧モータにより駆動され、作物を係止搬送して搬送終端部から運搬用トラックの荷台に落下排出する。
【0031】
(伝動構造)
次に、伝動構造について説明する。
図3に示すように、運転部3の後側でかつフィーダ6の前部上方に位置する状態でエンジン9が備えられている。エンジン9はエンジン支持フレーム21に支持されている。エンジン9の出力軸9aがエンジン9の左側に突出する状態で設けられている。
【0032】
左右の後車輪2の間であってかつフィーダ6の後部下方に位置する状態で、エンジン9の動力を左右の後車輪2に伝達する走行伝動部22が備えられている。走行伝動部22は、機体フレーム15に支持されている。走行伝動部22は、
図4に示すように、エンジン9の動力を左右の後車輪2に伝達するギア式の伝動機構等(図示せず)をケース内に収容する走行伝動機構としてのミッションケース23が左右中央位置に備えられ、ミッションケース23の左右両側に車軸ケース24を介してギア式の減速機構を内装した左右の減速ケース25が備えられている。
【0033】
エンジン9の動力を無段階に変速して、変速後の動力をミッションケース23に伝達する静油圧式無段変速装置(HST)26が備えられている。
【0034】
エンジン9の左側には、エンジン9の出力軸9aから複数の分岐伝動軸27~31に動力を分岐伝達するギア噛み合い式の動力分岐機構32が備えられている。
図5に示すように、動力分岐機構32は、エンジン9の側壁に連結された1つの伝動ケース33に収納されている。動力分岐機構32は、エンジン9の出力軸9aに接続された
分岐用入力軸34の動力を、ギアの咬み合いにより、複数(5つ)の分岐伝動軸27~31に分岐させるように構成されている。
【0035】
分岐用入力軸34が、伝動ケース33から右側(エンジン9側)に突出して、エンジン9の出力軸9aと同一軸芯状に配置されている。エンジン9の動力が分岐用入力軸34に伝達される。5つの分岐伝動軸、すなわち、第1~第5の分岐伝動軸27~31が、伝動ケース33から左側(エンジン9の反対側)に突出しており、伝動ケース33に回転可能に支持されている。
【0036】
図6に示すように、
分岐用入力軸34が延長されて
分岐用入力軸34により第1分岐伝動軸27が一体的に形成されている。第2分岐伝動軸28が、第1分岐伝動軸27に対して後側に配置されている。第3分岐伝動軸29が、第1分岐伝動軸27に対して前側に配置されている。第4分岐伝動軸30が、第1分岐伝動軸27に対して上側に配置されている。第5分岐伝動軸31が、第3分岐伝動軸29に対して上側に配置されている。
【0037】
伝動ケース33の内部において、第1分岐伝動軸27に一体で回転可能に取り付けられた第1伝動ギヤ35と、第2分岐伝動軸28に一体で回転可能に取り付けられた第2伝動ギヤ36と、第3分岐伝動軸29に一体で回転可能に取り付けられた第3伝動ギヤ37と、第4分岐伝動軸30に一体で回転可能に取り付けられた第4伝動ギヤ38、第5分岐伝動軸31に一体で回転可能に取り付けられた第5伝動ギヤ39と、第1伝動ギヤ35と第2伝動ギヤ36との間に配置された中継伝動ギヤ40と、が設けられている。
【0038】
中継伝動ギヤ40と第1伝動ギヤ35とが咬み合い、中継伝動ギヤ40と第2伝動ギヤ36とが咬み合っている。第1伝動ギヤ35と第3伝動ギヤ37とが咬み合い、第1伝動ギヤ35と第4伝動ギヤ38とが咬み合っている。第3伝動ギヤ37と第5伝動ギヤ39とが咬み合っている。
【0039】
分岐用入力軸34の動力が、上記各ギアを介して、第1分岐伝動軸27、第2分岐伝動軸28、第3分岐伝動軸29、第4分岐伝動軸30、及び、第5分岐伝動軸31に分岐伝達される。
【0040】
図4に示すように伝動ケース33の左側に複数の油圧ポンプが備えられ、上記各分岐伝動軸27~31により駆動される状態で油圧ポンプが連動連結されている。
図6に示すように、第1分岐伝動軸27に、同一軸芯にて連動駆動される連動型の第1油圧ポンプ41及び第2油圧ポンプ42が連結されている。第2分岐伝動軸28に第3油圧ポンプ43が連結され、第3分岐伝動軸29に第4油圧ポンプ44が連結されている。第4分岐伝動軸30に、同一軸芯にて連動駆動される連動型の第5油圧ポンプ45及び第6油圧ポンプ46が連結されている。第5分岐伝動軸31に第7油圧ポンプ47が連結されている。
【0041】
機体前後中間部の左側下部に位置する状態で、作動油を貯留する作動油タンク48が備えられている。上記各油圧ポンプは、作動油タンク48に貯留されている作動油を自己が対応する油圧機器に作動油を供給する。
【0042】
第1油圧ポンプ41は、刈取部4に備えられている他の油圧機器としての複数の油圧モータ(分草用油圧モータ等)に供給する。第2油圧ポンプ42は、他の油圧機器としてのフィーダ6に備えられている搬送駆動用の油圧モータに作動油を供給する。第3油圧ポンプ43は、可変容量型の油圧ポンプであり、ミッションケース23の横側に取り付けられている可変容量型油圧モータ49に作動油を供給する。
【0043】
従って、第3油圧ポンプ43を駆動する第2分岐伝動軸28が、エンジン9の動力によって回転する駆動軸に対応する。
【0044】
可変容量型油圧モータ49の出力軸49aは、ミッションケース23の走行用入力軸50に同一軸芯状に配置され、出力軸49aの変速後の動力がミッションケース23の走行用入力軸50に伝達される。ミッションケース23内のギア式の伝動機構を介して左右の後車輪2に動力伝達される。
【0045】
第4油圧ポンプ44は、他の油圧機器としての分離装置7のファンを駆動する分離用油圧モータ等に作動油を供給する。第5油圧ポンプ45は、他の油圧機器としての油圧式のステアリング装置51に作動油を供給する。第6油圧ポンプ46は、他の油圧機器としての排出コンベア8に備えられるコンベア用油圧モータに作動油を供給する。第7油圧ポンプ47は、他の油圧機器としてのラジエータ52を冷却するためのファン53を駆動する冷却用油圧モータ54に作動油を供給する。この冷却用油圧モータ54は方向切換弁55の作動により回転方向を切り換えることができる。
【0046】
従って、第1油圧ポンプ41、第2油圧ポンプ42、第4油圧ポンプ44~第7油圧ポンプ47が、作業用油圧ポンプSPに対応している。
【0047】
図3に示すように、エンジン9の左横側に備えられた可変容量型の第3油圧ポンプ43と、ミッションケース23の左横側に備えられた可変容量型の油圧モータ54とが、油圧配管56を介して接続されている。この可変容量型の第3油圧ポンプ43と、可変容量型の油圧モータ54と、それらを接続する油圧配管56とにより、エンジン9の動力を無段階に変速して左右の後車輪2に伝達可能な静油圧式無段変速装置(HST)26が構成されている。
【0048】
図4に示すように、エンジン9及びミッションケース23は、左右中心部が機体の左右方向略中央に位置する状態で備えられている。そして、作動油タンク48、伝動ケース33、複数の作業用油圧ポンプSP、可変容量型の第3油圧ポンプ43、及び、可変容量型油圧モータ49が、機体の左右方向一方側としての左側に寄った位置に配備されている。
【0049】
このように油圧関連機器を機体の左右方向一方側に配置することで、作動油タンク48から油圧ポンプSP,43までの吸引用油圧配管、油圧ポンプSP,43から油圧モータ49等の油圧機器までの供給用油圧配管、油圧機器から作動油タンク48までの戻り用油圧配管等を、できるだけ短い経路で効率よく配策することが可能となる。
【0050】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、複数の分岐伝動軸27~31のうちのいずれか一つが可変容量型油圧ポンプ43に連動連結される構成としたが、この構成に代えて、エンジン9の出力軸9aに可変容量型油圧ポンプ43が連動連結される構成としてもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、エンジン9の出力軸9aから複数の分岐伝動軸27~31に動力を分岐伝達するギア噛み合い式の動力分岐機構32が備えられる構成としたが、このようなギア噛み合い式の動力分岐機構32ではなく、エンジン9の出力軸9aからチェーン式の伝動機構やベルト式伝動機構を介して別の複数の伝動軸に動力を伝達させ、そのうちの1つに可変容量型油圧ポンプに連動連結される構成としてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、作動油タンク48、伝動ケース33、可変容量型油圧ポンプ43、及び、可変容量型油圧モータ49が、機体の左側に寄った位置に配備される構成としたが、この構成に代えて、これらが機体右側に寄った位置に配備される構成としてもよい。また、これらの装置が機体左右方向のいずれか一方に寄せるのではなく、任意の位置に配備するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、サトウキビ収穫機に限らず、コンバイン、トウモロコシ収穫機等の他の種類の収穫機にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
2 走行装置
9 エンジン
9a 出力軸
23 走行伝動機構
26 静油圧式無段変速装置
27~31 分岐伝動軸
28 駆動軸
32 動力分岐機構
33 伝動ケース
34 分岐用入力軸
43 可変容量型油圧ポンプ
48 作動油タンク
49 可変容量型油圧モータ
50 走行用入力軸
56 油圧配管
SP 作業用油圧ポンプ