(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】鉱業トラックのためのブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 55/40 20060101AFI20240927BHJP
F16D 65/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16D55/40 F
F16D55/40 A
F16D65/12 M
(21)【出願番号】P 2020504134
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 US2018041987
(87)【国際公開番号】W WO2019022965
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-22
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】320009406
【氏名又は名称】シーエムビーエフ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】クリス・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・デサトニック
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・コース
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭30-4963(JP,B1)
【文献】特開平4-54332(JP,A)
【文献】特開昭53-65568(JP,A)
【文献】特表2000-515615(JP,A)
【文献】特開2006-144927(JP,A)
【文献】米国特許第6089357(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、前記フレームに対して回転可能なシャフトと、を有する機器のためのブレーキシステムであって、
前記シャフトを包囲するケージ部分であって、前記ケージ部分の周り
に配置される複数の第1のチャンバおよび第2のチャンバを画定する、ケージ部分と、
前記ケージ部分内に交互の配列で配置される一連のロータおよびステータであって、複数の前記ロータは、前記シャフトに動作可能に連結されかつ前記フレームに対して前記シャフトとともに回転するよう構成されており、複数の前記ステータは、前記フレームに動作可能に連結されかつ前記フレームに対して回転しないように固定されるよう構成されており、前記ロータおよび前記ステータの各々は、炭素繊維強化炭素材料から構成されたモノリシック部品である、一連のロータおよびステータと、
前記ロータおよび前記ステータにかかる力を方向付けるために前記ロータおよび前記ステータの交互の配列の片側において、前記ケージ部分内に配置される負荷分散プレートと、
前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列に対向する前記負荷分散プレートと同じ側に力を付与するよう各々が配置された第1のブレーキアクチュエータおよび第2のブレーキアクチュエータと、
を備えており、
前記第1のブレーキアクチュエータは、それぞれの第1のチャンバ内に配置される複数の第1のピストンを含み、前記第1のピストンは、前記第1のピストンのうち前記負荷分散プレートとは反対の側におけるそれぞれの前記第1のチャンバの加圧が前記第1のピストンを前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列を圧縮するために前記負荷分散プレートに動作可能に係合させ、それによって前記ロータおよび前記ステータがともに圧縮され、これによってブレーキングトルクが発生するように、それぞれの前記第1のチャンバ内に配置されており、
前記第2のブレーキアクチュエータは、それぞれの第2のチャンバ内に配置される複数の第2のピストンを含み、かつ前記負荷分散プレートのうち複数の前記第1のピストンと同じ側に配置されており、
前記第2のブレーキアクチュエータは、ブレーキングトルクを発生させるために前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列を圧縮するために前記第2のピストンを前記負荷分散プレートに動作可能に係合させるよう付勢するために、前記第2のピストンのうち前記負荷分散プレートとは反対の側においてそれぞれの前記第2のピストンに動作可能に連結された複数のバネを含み、
前記第2のチャンバの加圧が、前記バネの付勢に打ち勝つように、前記第2のブレーキアクチュエータは、前記第2のピストン
の前記負荷分散プレートと同じ側において流体入口を含み、
前記ケージ部分を含み、かつ前記フレームに取り付けられかつ前記フレームに対して回転しないよう固定されるよう構成されたハウジングをさらに備えており、
複数の前記ステータの各々は、前記ステータの外周においてノッチおよび隆起部の少なくとも一方を含み、
前記ケージ部分は、前記ケージ部分の内周において、複数の前記ステータを前記フレームに対して回転しないように固定するために、前記ステータの前記ノッチまたは前記隆起部のうちの一方に係合するためのノッチおよび隆起部の他方を含む、ことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記シャフトとともに回転するように前記シャフトに取り付けられるよう構成されたハブをさらに備えており、
複数の前記ロータは、前記ハブを介して前記シャフトに動作可能に連結されるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
複数の前記ロータの各々は、キーおよびキー溝の少なくとも一方を含み、
前記ハブは、複数の前記ロータを前記ハブおよび前記シャフトとともに回転させるために、前記ロータの前記キーまたは前記キー溝のうちの一方と係合するためのキーおよびキー溝の少なくとも他方を含むことを特徴とする請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記負荷分散プレートは、複数の前記第1のピストンと前記一連のロータおよびステータとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
複数の前記ロータおよび前記ステータは、オイルの流れがないよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
フレームと、
前記フレームに対して回転可能なシャフトと、
ブレーキシステムと、
を備えており、
前記ブレーキシステムは、
前記シャフトを包囲するケージ部分であって、前記ケージ部分の周り
に配置される複数の第1のチャンバおよび第2のチャンバを画定する、ケージ部分と、
前記ケージ部分内に交互の配列で配置される一連のロータおよびステータであって、複数の前記ロータは、前記シャフトに動作可能に連結されかつ前記フレームに対して前記シャフトとともに回転可能であり、複数の前記ステータは、前記フレームに動作可能に連結されかつ前記フレームに対して回転しないよう固定されており、前記ロータおよび前記ステータの各々は、炭素繊維強化炭素材料から構成されたモノリシック部品である、一連のロータおよびステータと、
前記ロータおよび前記ステータにかかる力を方向付けるために前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列の片側において、前記ケージ部分内に配置される負荷分散プレートと、
前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列に対向する前記負荷分散プレートと同じ側に力を付与するよう各々が配置された第1のブレーキアクチュエータおよび第2のブレーキアクチュエータと、
を備えており、
前記第1のブレーキアクチュエータは、それぞれの第1のチャンバ内に配置される複数の第1のピストンを含み、前記第1のピストンは、前記第1のピストンのうち前記負荷分散プレートとは反対の側におけるそれぞれの前記第1のチャンバの加圧が前記第1のピストンを前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列を圧縮するために前記負荷分散プレートに動作可能に係合させ、それによって前記ロータおよび前記ステータがともに圧縮され、これによってブレーキングトルクが発生するように、それぞれの前記第1のチャンバ内に配置されており、
前記第2のブレーキアクチュエータは、それぞれの第2のチャンバ内に配置される複数の第2のピストンを含み、かつ前記負荷分散プレートのうち複数の前記第1のピストンと同じ側に配置されており、
前記第2のブレーキアクチュエータは、ブレーキングトルクを発生させるために前記ロータおよび前記ステータの前記交互の配列を圧縮するために前記第2のピストンを前記負荷分散プレートに動作可能に係合させるよう付勢するために、前記第2のピストンのうち前記負荷分散プレートとは反対の側においてそれぞれの前記第2のピストンに動作可能に連結された複数のバネを含み、
前記第2のチャンバの加圧が、前記バネの付勢に打ち勝つように、前記第2のブレーキアクチュエータは、前記第2のピストン
の前記負荷分散プレートと同じ側において流体入口を含み、
前記ケージ部分を含み、かつ前記フレームに取り付けられかつ前記フレームに対して回転しないよう固定されるよう構成されたハウジングをさらに備えており、
複数の前記ステータの各々は、前記ステータの外周においてノッチおよび隆起部の少なくとも一方を含み、
前記ケージ部分は、前記ケージ部分の内周において、複数の前記ステータを前記フレームに対して回転しないように固定するために、前記ステータの前記ノッチまたは前記隆起部のうちの一方に係合するためのノッチおよび隆起部の他方を含む、ことを特徴とする機器。
【請求項7】
前記シャフトは車軸であることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記シャフトがスピンドルであることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項9】
前記シャフトに取り付けられかつ前記シャフトとともに回転可能な少なくとも1つのホイールをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月26日に出願された米国仮特許出願第62/537,153号(係属中)の利益を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ブレーキシステムに関し、より詳細には、鉱業トラックなどの大型のオフハイウェイ装備車両を含むディーゼル電気自動車および他の機器のためのブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
鉱業トラックおよび他の大型のオフハイウェイ装備車両は、多くの場合、ディーゼル電気自動車として構成されている。ディーゼル電気自動車は、電気を生成するためにディーゼルエンジンを使用し、当該電気は、車両を推進するために複数の電気モータに動力を供給するよう使用される。また、電気モータは、モータが電気を生成するために使用される回生モードで動作できる。回生モードでは、電気モータはブレーキとして機能し、車両を遅くさせるつまり減速させる。続いて、ブレーキプロセスにおいてモータによって生成された電気は、バッテリーに蓄えられるかまたは廃熱として廃棄され得る。
【0004】
この推進システムの結果として、ディーゼル電気自動車の機械式ブレーキは、2つの主要な機能を有する。まず第一に、機械式ブレーキは、緊急ブレーキとして機能し得る。そのため、電気的な故障またはモータの故障の場合に、機械式ブレーキは、フルスピードで移動する過積載車両を停止できなければならない。当該車両は、ISO3450仕様の要件を満たす必要がある。第二に、機械式ブレーキは、車両の最終的なブレーキを提供し得る。この点に関し、低速(例えば時速10km未満)では、電気モータは、車両の減速つまり遅くすることに効果がない。したがって、機械式ブレーキは、車両を完全に停止させるために使用される。典型的には、こうした停止は非常に勢いが弱い。
【0005】
ディーゼル電気自動車で使用される従来の機械式ブレーキは、2つの設計のうちの1つを有する。典型的には、小型から中型のトラック(例えば約200トン以上300トン以下)には、ドライキャリパーブレーキが典型的に使用される。そうしたブレーキは、キャリパーと、1セットのパッドと、スチールまたは鋳鉄のロータと、から構成されている。これらブレーキは比較的安価であり得る一方で、高い摩耗率によって、6か月から12か月ごとの頻度でパッドを交換することが要求される場合がある。さらに、これらブレーキは、重量のある車両に使用される場合、ISO3450緊急停止仕様に合格することができない。これに関して、エネルギーおよび温度が望ましくないほど高くなると、摩耗の増加および/または係数の減衰が生じる。
【0006】
中型から大型のトラック(例えば約200トンから300トン以上)には、ウェットブレーキが典型的に使用される。そうしたブレーキは、一組の摩擦ディスクおよびスチール製の対向プレートから構成されている。摩擦ディスクは、スチールコアの両側に結合された紙ベースの摩擦材料を含む。また、オイルの流動および分配に役立つように、溝が摩擦材料に切り込まれている。摩擦ディスクは、内径に切り込まれたスプラインを含んでもよく、同時にスチール製の対向プレートは、外径に切り込まれたスプラインを含んでもよい。典型的には、摩擦ディスクは回転するが、一方で対向プレートは回転しない。ディスクは、片側において作動ピストンを備えるハウジング内に封入されている。ハウジングは、部分的にオイルが充填されてもよく、またはオイルが、ポンプによってハウジングを通るよう循環されてもよい。ブレーキングが所望される場合、ピストンが作動し、それによってブレーキングトルクが発生するようすべての摩擦ディスクおよび対向ディスクが圧縮される。これらのブレーキは比較的長い耐用期間を有してもよくかつISO3450仕様および緊急停止に容易に合格し得るが、ブレーキが外れた場合にブレーキ内のオイルの流れによって引き起こされる寄生的な空転が、エンジンの馬力を奪い、燃料効率の低下を引き起こすことがある。さらに、これらブレーキは、ドライキャリパーブレーキよりも著しく大きくかつより複雑であり、オイルポンプ、貯留部、熱交換器、および他の構成部品を必要とするため、費用および重量がより増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上述の従来のブレーキシステムの欠点を克服する、鉱業トラックなどのオフハイウェイ装備車両のための改良されたブレーキシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、フレームと当該フレームに対して回転可能なシャフトとを有する装備部品のためのブレーキシステムは、一連のロータおよびステータを含み、一連のロータおよびステータは、シャフトに動作可能に連結されるよう構成されかつフレームに対してシャフトとともに回転するよう構成された複数のロータと、フレームに動作可能に連結されるよう構成されかつフレームに対して回転しないよう固定されるよう構成された複数のステータと、を含む。ブレーキシステムはまた、少なくとも1つの第1のピストンを含む第1のブレーキアクチュエータを含み、当該第1のピストンは、第1のチャンバ内において、当該第1のチャンバの加圧が少なくとも1つの第1のピストンをロータおよびステータの少なくとも1つに動作可能に係合させ、それによってロータおよびステータがともに圧縮され、これによってブレーキングトルクが発生するように、配置されている。ブレーキシステムはさらに、少なくとも1つの第2のピストンに動作可能に連結された少なくとも1つのバネを含む第2のブレーキアクチュエータを含んでもよく、当該第2のピストンは、第2のチャンバ内において、当該第2のチャンバの減圧が少なくとも1つの第2のピストンをロータおよびステータの少なくとも1つに動作可能に係合させ、それによってロータおよびステータがともに圧縮され、これによってブレーキングトルクが発生するように、配置されている。
【0009】
一実施形態において、ロータおよびステータの少なくとも1つは、モノリシック部品を含む。別の実施形態では、ロータおよびステータの少なくとも1つは、カーボン-カーボン(carbon-carbon)を含む。複数のステータは、複数のロータと交互の配列で配置されてもよい。
【0010】
別の実施形態では、ブレーキシステムは、シャフトとともに回転するようシャフトに取り付けられるよう構成されたハブをさらに含み、複数のロータは、当該ハブを介して、シャフトに動作可能に連結されるよう構成されている。複数のロータの各々は、キーおよびキー溝の少なくとも一方を含んでもよく、ハブは、複数のロータをハブおよびシャフトとともに回転させるべく、ロータの少なくとも一方のキーまたはキー溝と係合するためのキーおよびキー溝の他方の少なくとも一方を含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、ブレーキシステムはさらに、フレームに取り付けられかつ当該フレームに対して回転しないよう固定されるよう構成されたハウジングを含み、複数のステータの各々は、ノッチおよび隆起部の少なくとも一方を含み、ハウジングは、複数のステータをフレームに対して回転しないよう固定すべく、ステータのノッチまたは隆起部の一方に係合するためのノッチおよび隆起部の他方の少なくとも1つを含む。
【0012】
別の実施形態では、ブレーキシステムはさらに、少なくとも1つの第1のピストンがロータおよびステータの少なくとも1つと動作可能に係合した場合に複数のロータおよびステータの均等な圧縮を提供するために、少なくとも1つの第1のピストンと一連のロータおよびステータとの間に配置された負荷分散プレートを含む。一実施形態において、複数のロータおよびステータは、オイルの流れがないよう構成される。
【0013】
さらに別の実施形態では、装備部品は、フレームと、当該フレームに対して回転可能なシャフトと、ブレーキシステムと、を含む。ブレーキシステムは、一連のロータおよびステータを含み、一連のロータおよびステータは、シャフトに動作可能に連結されかつフレームに対してシャフトとともに回転可能な複数のロータと、フレームに動作可能に連結されかつフレームに対して回転しないよう固定される複数のステータと、を含む。ブレーキシステムはまた、少なくとも1つの第1のピストンを含む第1のブレーキアクチュエータを含み、当該第1のピストンは、第1のチャンバ内において、当該第1のチャンバの加圧が少なくとも1つの第1のピストンをロータおよびステータの少なくとも1つに動作可能に係合させ、それによってロータおよびステータがともに圧縮され、これによってフレームに対するシャフトの回転に抵抗するためのブレーキングトルクが発生するように、配置されている。ブレーキシステムはさらに、少なくとも1つの第2のピストンに動作可能に連結された少なくとも1つのバネを含む第2のブレーキアクチュエータを含んでもよく、第2のピストンは、第2のチャンバ内において、当該第2のチャンバの減圧が少なくとも1つの第2のピストンをロータおよびステータの少なくとも1つに動作可能に係合させ、それによってロータおよびステータがともに圧縮され、これによってフレームに対するシャフトの回転に抵抗するためのブレーキングトルクが発生するように、配置されている。
【0014】
一実施形態において、シャフトは車軸である。別の実施形態では、シャフトはスピンドルである。装備部品は、シャフトに取り付けられかつ当該シャフトとともに回転可能な少なくとも1つのホイールをさらに含んでもよい。
【0015】
一実施形態において、ロータおよびステータの少なくとも1つは、モノリシック部品を含む。別の実施形態では、ロータおよびステータの少なくとも1つは、カーボン-カーボンを含む。複数のステータは、複数のロータと交互の配列で配置されてもよい。
【0016】
さらに別の実施形態では、フレームを有する装備部品のためのブレーキシステムは、フレームに対して回転可能に構成された複数のロータと、フレームに動作可能に連結されるよう構成されかつフレームに対して回転しないように固定されるよう構成された複数のステータとを含む一連のロータおよびステータを含む。ブレーキシステムはまた、少なくとも1つの第1のピストンを含む第1のブレーキアクチュエータを含み、当該第1のピストンは、第1のチャンバ内において、当該第1のチャンバの加圧が少なくとも1つの第1のピストンをロータおよびステータの少なくとも1つに動作可能に係合させ、それによってロータおよびステータがともに圧縮され、これによってブレーキングトルクが発生するように、配置されている。ブレーキシステムは、少なくとも1つの第2のピストンに動作可能に連結された少なくとも1つのバネを含む第2のブレーキアクチュエータをさらに含んでもよく、第2のピストンは、第2のチャンバ内において、当該第2のチャンバの減圧が少なくとも1つの第2のピストンをロータおよびステータの少なくとも1つに動作可能に係合させ、それによってロータおよびステータがともに圧縮され、これによってブレーキングトルクが発生するように、配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の原理に基づく例示的なブレーキシステムを含む鉱業トラックの側方立面図である。
【
図2】鉱業トラックのフレームおよび回転シャフトに連結された例示的なブレーキシステムを示す、
図1の鉱業トラックの詳細な断面図である。
【
図4】ブレーキシステムの油圧流体経路を示す、
図2のブレーキシステムの部分分解図である。
【
図5】ブレーキシステムの様々な連動する特徴を示す、
図2のブレーキシステムの部分分解図である。
【
図7A】後退ポジションにあるブレーキシステムの第1のピストンを示す、
図6の切断線7A-7Aに沿った断面図である。
【
図7B】展開ポジションにある第1のピストンを示す、
図7Aと同様の断面図である。
【
図8A】展開ポジションにあるブレーキシステムの第2のピストンを示す、
図6の切断線8A-8Aに沿った断面図である。
【
図8B】後退ポジションにある第2のピストンを示す、
図8Aと同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで図面、とりわけ
図1および
図2を参照すると、ディーゼル電気自動車として構成された鉱業トラック10などのオフハイウェイ装備車両は、本発明の原理に基づく例示的なブレーキシステム12を含む。鉱業トラック10が図示されているが、ブレーキシステム12は、任意の適切なオフハイウェイ装備車両または無限軌道車両などの他の装備部品に使用するよう構成されてもよい。図示された鉱業トラック10は、フレーム14と、フレーム14に対して回転可能な前車軸もしくは後車軸またはスピンドルなどのシャフト16と、シャフト16とともに回転するようシャフト16に取り付けられる少なくとも1つのホイール18と、を含む。以下により詳細に説明するように、ブレーキシステム12の様々な構成要素は、シャフト16およびホイール18の回転ひいては鉱業トラック10の移動に対する抵抗力を提供するために、フレーム14および/またはシャフト16に動作可能に連結されている。ブレーキシステム12は、ウェットブレーキの欠点の多くを回避しながらウェットブレーキの利点の多くを伴う改善されたブレーキ性能を提供し得る。例えば、ブレーキシステム12は、ウェットブレーキ内のオイルによって引き起こされる寄生的な空転を伴わず、複雑さ、重量、およびコストが低減された、低い摩耗率ひいては長い耐用期間を示し得る。ブレーキシステム12の特徴は、本開示で提供されるこれらの機能的利点および他の利益の各々を明確にするために以下でさらに詳細に説明される。
【0019】
ここで
図2および
図3を参照すると、ブレーキシステム12は、ベース部分20と、ケージ部分22と、油圧分離プレート24と、ハウジングを形成すべくともに固定状態で連結されかつ鉱業トラック10のフレーム14に取り付けられるよう構成されたキャップ部分26と、さらに、シャフト16に取り付けられるよう構成されたハブ28と、を含む。このため、ハブ28は、ハブ28がシャフト16の回転とともに回転し得るように、シャフト16の対応するスプライン34に機械的に係合するためのスプライン32を有する中心穴30を含む。
【0020】
図示されたベース部分20は、略環状のプレート40と、プレート40からケージ部分22へ向けて延在する略環状のプラットフォーム42と、を含み、プラットフォーム42は、鉱業トラック10のシャフト16を受け入れるための中心穴44を画定する。ベース部分20は、フレーム14に対して移動しないように固定されるように、鉱業トラック10のフレーム14に動作可能に連結されるよう構成されている。そのため、図示されたベース部分20は、ベース部分20をフレーム14に連結すべく、ねじ付きボルト48などの締結具を受け入れるためにプレート40に設けられた複数の貫通穴46を含む。ねじ付きボルト48の頭部を収容するために、プラットフォーム42の周縁にノッチ(図示せず)が設けられてもよい。図示されたベース部分20はまた、ケージ部分22をベース部分20に連結するために、ねじ付きボルト52などの締結具をねじ留め可能に受け入れるべくプラットフォーム42に設けられた複数のねじ切りされためくら穴50を含む。図示されるように、プラットフォーム42は、以下で説明される理由から、その周縁にまたは当該周縁付近に複数の空気流スロット54を含んでもよい。
【0021】
図示されたケージ部分22は、下側リング60および上側本体62を含み、これら下側リング60および上側本体62は、開口部66によって互いから離間された複数の支持体64によって互いから間隔をあけられかつ連結されている。上側本体62は、略環状であり、かつベース部分20の中心穴44との整列のためにかつ鉱業トラック10のシャフト16の受け入れのために中心穴68を画定する。下側リング60と上側本体62と支持体64とは、ともに、ハブ28および/または他の構成要素を受け入れるための略内側空間70を画定し、当該ハブ28は、下側リング60に隣接する側においてベース部分20のプラットフォーム42によって少なくとも部分的に包囲されてもよい。そのため、ケージ部分22の下側リング60は、ベース部分20との連結のために、ねじ付きボルト52を受け入れるための複数の貫通穴72を含む。図示されるように、貫通穴72の一部は、支持体64を通って延在しており、ケージ部分22をベース部分20に連結するねじ付きボルト52の頭部を受け入れるために、そうした貫通穴72と同心状の支持体64にカウンターボア74が設けられてもよい。加えてまたは代替的に、ベース部分20をフレーム14に連結するねじ付きボルト48の頭部を収容するために、下側リング60の周縁にノッチ76が設けられてもよい。
【0022】
図2および
図3の参照に続いてここで
図4を参照すると、ケージ部分22の上側本体62は、上側本体62の第1の表面84と第2の表面86との間に延在する複数の第1および第2のチャンバ80、82を含み、第1および第2のチャンバ80、82の各々は、第1および第2の表面84、86の各々に開かれている。図示されたケージ部分22において、複数の第1のチャンバ80は3つの第1のチャンバ80を含み、複数の第2のチャンバ82は、第1のチャンバ80の間に複数対で配置される6つの第2のチャンバ82を含む。なお、チャンバ80、82の他の数および/または配置が使用されてもよいことを理解されたい。図示されるように、複数の第1および第2のチャンバ80、82それぞれから油圧流体を流出(ブリーディング)させるために、第1および第2の流体ブリーダ経路90、92が上側本体62の第1の表面84に沿って延在している。チャンバ80、82および流体ブリーダ経路90、92の機能および目的は、以下でより詳細に説明される。いずれにしても、図示されたケージ部分22は、分離プレート24および/またはキャップ部分26をケージ部分22に連結するために、ねじ付きボルト96および/またはねじ付きスタッド98などの締結具をねじ留め可能に受け入れるべく上側本体に設けられた複数のねじ切りされためくら穴94を含む。
【0023】
図示されるように、分離プレート24は、略環状であり、ベース部分20およびケージ部分22の中心穴44、68との整列のためかつ鉱業トラック10のシャフト16の受け入れのための中心穴100を画定する。分離プレート24は、ケージ部分22の複数の第2のチャンバ82と整列するよう構成された複数のチャンバ穴102と、複数の第1のチャンバ80との整列のための複数の流体供給開口部104と、を含んでおり、それによって分離プレート24は、部分的に第1のチャンバ80の各々をカバーし、流体供給開口部104は、ケージ部分22とは反対側にある分離プレート24の側から油圧流体が第1のチャンバ80の各々に入ることを可能にする。図示された分離プレート24は、分離プレート24をケージ部分22および/またはキャップ部分26に連結するねじ付きボルト96および/またはねじ付きスタッド98を受け入れるための複数の貫通穴106をさらに含む。
【0024】
ケージ部分22の上側本体62に連結されると、分離プレート24は、上側本体62の第1の表面84における第1および第2の流体ブリーダ経路90、92を境界付けて、当該第1および第2の流体ブリーダ経路90、92内に油圧流体をおおむね保持する。図示されるように、分離プレート24は、油圧流体が、ケージ部分22とは反対にある分離プレート24の側へ向けて第1および第2の流体ブリーダ経路90、92から退出できるようにするための流体ブリーダ開口部108を含む。
【0025】
図示されたキャップ部分26は、第1および第2の表面112、114と、ケージ部分22から離れるように第2の表面114から延在する複数の第1および第2のタワー116、118と、を有する略環状のプレート110を含む。プレート110は、ベース部分20、ケージ部分22、および分離プレート24の中心穴44、68、100との整列のためかつ鉱業トラック10のシャフト16の受け入れのための中心穴120を画定する。複数対のめくら穴122は、プレート110の第2の表面114から第2のタワー118の各々の中に延在し、かつ分離プレート24のチャンバ穴102およびケージ部分22の第2のチャンバ82と整列するよう構成される。図示されるように、第1および第2の流体供給経路130、132は、複数の第1および第2のチャンバ80、82それぞれに油圧流体を供給するためにプレート110の第2の表面114に沿って延在する。第1および第2の油圧流体入口ポート140、142は、第1のタワー116の1つに設けられ、かつ第1および第2の流体供給経路130、132それぞれと流体連通する。同様に、第1および第2の油圧流体ブリーダポート144、146は、第1のタワー116の1つに設けられ、かつ第1および第2の流体ブリーダ経路90、92それぞれと流体連通する。
【0026】
図示されるように、キャップ部分26は、当該キャップ部分26を分離プレート24および/またはケージ部分22に連結するねじ付きボルト96および/またはねじ付きスタッド98を受け入れるためにプレート110に設けられた複数の貫通穴148を含む。キャップ部分26が分離プレート24に連結されると、分離プレート24は、プレート110の第2の表面114における第1および第2の流体供給経路130、132を境界付け、当該第1および第2の流体供給経路130、132中に油圧流体をおおむね保持する。分離プレート24における流体供給開口部104は、流体が、流体入口ポート140、142から対応するチャンバ80、82へ移動できるようにする。
【0027】
図2および
図3の参照に続いてここで
図5を参照すると、ブレーキシステム12は、ケージ部分22の内部空間70内に収納された一連のまたは一組150の略ディスク形状のロータ152およびステータ154を含む。ロータ152は、シャフト16に動作可能に連結され、かつフレーム14に対してシャフト16とともに回転するよう構成される。そのため、ロータ152は各々、ハブ28の対応するキー溝164によって受け入れられるよう構成された複数のキー162を有する中心穴160を含む。シャフト16およびハブ28がともに回転するとき、キー溝164は、対応するキー162と機械的に係合し、それによってロータ152はハブ28およびシャフト16とともに回転される。ロータ152は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な他の方法でシャフト16に連結され得ることを理解されたい。
【0028】
ステータ154は、フレーム14に動作可能に連結され、かつフレーム14に対して回転しないよう固定されるよう構成される。そのため、ステータ154は各々、ケージ部分22の対応する隆起部172を受け入れるためにステータ154の外周に沿うノッチ170と、ハブ28が通り抜けるサイズになされた中心穴174とを含む。この様式においてシャフト16が回転した場合、隆起部172とノッチ170との間の係合によって、ステータ154がフレーム14に対して回転することが防止され、同時にハブ28および/またはシャフト16は、中心穴174内で自由に回転し得る。図示された実施形態では、隆起部172は、ケージ部分22の支持体64の内面に設けられている。ステータ154が、本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な方法でフレーム14に連結され得ることを理解されたい。
【0029】
ロータ152およびステータ154が互いから離間された場合にロータ152がシャフト16とともに自由に回転できるように、かつロータ152およびステータ154がともに圧縮またはクランプされた場合にロータ152とステータ154との間に生じる摩擦によってブレーキングトルクが発生してロータ152の回転に抵抗するように、ロータ152およびステータ154はシャフト16の軸線に沿ってわずかに自由に移動できる。これに関して、ロータ152および/またはステータ154の各々は、ブレーキの用途に適した摩擦材料から構成されてもよい。例えば、ロータ152および/またはステータ154は、一般的に炭素繊維強化炭素またはカーボン-カーボンと称される、炭素のマトリックスにおける炭素繊維強化材のモノリシック部品を備えてもよい。カーボン-カーボンは低い摩耗率を示し、したがってロータ152およびステータ154に耐久性をもたらすこと、およびモノリシック構造が各ロータ152およびステータ154の厚さのかなりの部分をブレーキ中に有用な材料として利用できるようにし得ることを理解されたい。なお、任意の他の適切な材料および/または適切な構造(例えば非モノリシック構造)が、ロータ152および/またはステータ154に使用されてもよい。例えば、ロータ152および/またはステータ154は、スチールコアの両側に結合されるかまたはモノリシック部品となるよう製造された焼結金属ベースの摩擦材料を含んでもよい。一実施形態において、複数のロータ152およびステータ154は、使用中にオイルの流れがないよう構成される。いずれにしても、ロータ152およびステータ154を圧縮することによって発生するブレーキングトルクは、キー162およびキー溝164を介してロータ152からハブ28に伝達されてもよく、かつシャフト16およびホイール18の回転に抵抗するようにスプライン32、34を介してハブ28からシャフト16に伝達されてもよい。
【0030】
実質的な熱が、ロータ152およびステータ154によるブレーキングトルクの発生中に生成され得ることを理解されたい。ベース部分20のプラットフォーム42における空気流スロット54は、ブレーキシステム12からそうした熱を逃すよう伝達するのに役立ち得る。加えてまたは代替的に、ケージ部分22の支持体64同士の間の開口部66は、ブレーキシステム12から熱を逃がすよう伝達するのに役立ち得る。
【0031】
図示されるように、略V字形状の板バネ180は、隣接するステータ154同士の間においてこれらステータ154の周縁にまたはその付近に配置されてもよく、これらステータ154を互いから離れるよう付勢し、これによって、ブレーキングトルクが所望されない場合にステータ154が不注意でこれらステータ154間にロータ152をクランプすること(当該クランプは、寄生的な空転を導き得る)が防止される。例えば、板バネ180は、ステータ154にわたって配置された周縁金属クリップ182に連結されてもよい。そうしたクリップ182は、板バネ180によってステータ154同士の間で担持される負荷の下でステータ154が破損するのを回避するために、耐荷重性のものであってもよい。図示されている実施形態では、3つのロータ152および4つのステータ154が、所定のステータ154で始まって終わる交互の配列で配置される。なお、他のさまざまな数のロータおよびステータは、任意の適切な順番で配置されてもよい。例えば、4つのロータおよび5つのステータが、交互の配列で配置されてもよい。一実施形態において、鉱業トラックの各前輪は、後方ブレーキシステムがギアボックスの後ろで動作する場合などにおいて、後輪に関するトルク要件が低減されるため、後輪のブレーキシステムに比べてより多くのロータおよびステータを有するブレーキシステムを装備してもよい。例えば、後方ブレーキシステムは、3つのロータおよび4つのステータを包含してもよく、同時に前方ブレーキシステムは、4つのロータおよび5つのステータを包含してもよい。
【0032】
図3の参照に続いてここで
図6、
図7Aおよび
図7Bを参照すると、ブレーキシステム12は、鉱業トラック10の運転中にロータ152およびステータ154をともに圧縮するために使用され得る常用ブレーキアクチュエータ200を含む。図示された実施形態では、常用ブレーキアクチュエータ200は、ケージ部分22の3つの第1のチャンバ80内に配置された3つの第1のピストン202を含む。それぞれ第1の流体供給経路130および第1の流体ブリーダ経路90と流体連通する第1の流体入口204および第1の流体出口206は、ロータ152およびステータ154とは反対側にある各第1のピストン202の側に設けられており、それによって第1の流体供給経路130を介して油圧流体を用いて第1のチャンバ80を加圧することは、第1のピストン202を、後退ポジション(
図7A)からロータ152およびステータ154へ向けて展開ポジション(
図7B)へ展開させる。図示されていないが、油圧流体が貯留部から第1の流体供給経路130を通って第1のチャンバ80に流動できるように、第1のチャンバ80の加圧が、ブレーキペダルなどのコントローラを介してバルブを開くことによって達成されてもよいことを理解されたい。図示されるように、ケージ部分22の内部空間70への油圧流体の漏出を防止するために、各第1のピストン202とそれぞれの第1のチャンバ80との間にガスケット208が設けられてもよい。いずれにしても、展開ポジションにある場合、シャフト16の回転に抵抗するためのブレーキングトルクを発生させるべく、ベース部分20のプラットフォーム42に対してロータ152およびステータ154をともに圧縮するかまたはクランプするために、第1のピストン202は、ロータ152および/またはステータ154の少なくとも1つと動作可能に係合してもよい。
【0033】
図示された実施形態では、負荷分散プレート210は、第1のピストン202と一組150のロータ152およびステータ154との間に配置されており、それによって第1のピストン202とロータ152および/またはステータ154との間の動作係合は、負荷分散プレート210を介して達成される。負荷分散プレート210は、フレーム14に対して回転しないよう固定されてもよく、かつステータ154にある程度類似していてもよい。とりわけ、負荷分散プレート210は、ケージ部分22の対応する隆起部172を受け入れるために負荷分散プレート210の外周(
図3)に沿うノッチ212と、ハブ28が通り抜けるサイズになされた中心穴214と、を含んでもよい。この様式では、負荷分散プレート210は、一貫性がありかつ信頼できるブレーキングトルクのために、ロータ152およびステータ154のそれぞれの表面領域にわたってロータ152およびステータ154のほぼ均等な圧縮を提供してもよい。加えてまたは代替的に、熱バリアディスク216は、第1のピストン202およびチャンバ80をブレーキングトルクの発生中に生じる熱から遮断するために、ねじ付きボルト218などの締結具を介して第1のピストン202に連結されてもよい。
【0034】
図示されるように、第1のピストン202をロータ152およびステータ154から離れるように付勢するために、複数のバネ220が、第1のピストン202のうちロータ152およびステータ154と同じ側において第1のピストン202の各々とそれぞれの第1のチャンバ80の表面との間に設けられる。したがって、第1のピストン202をロータ152およびステータ154へ向けて展開させるために、第1のチャンバ80の閾値加圧(threshold pressurization)は、バネ220の付勢に打ち勝つよう要求されることがある。これによって、第1のピストン202が、ロータ152およびステータ154をともに不注意で圧縮されることを防止することができ、かつこれらのバネ220は、ピストンストロークを摩擦摩耗に基づいて理想的な適用遅延に調整するために油圧スラックアジャスタの動作を可能にするよう残留圧力を提供する。第1の流体供給経路130内の流体の流れを減少させるかまたは停止して第1の流体入口204を通じて圧力が抜け出ることが可能となるようにすることなどによって第1のチャンバ80が減圧される場合、第1のピストン202は、ロータ152およびステータ154から離れるようバネ220によって推進されてもよく、かつ板バネ180は、ロータ152のクランプを解除してブレーキングトルクを発生させるようステータ154を互いから離れるように付勢してもよい。第1のピストン202は、バネ220によってロータから離れるように付勢され得る152およびステータ154、および板バネ180は、ステータ154を互いに離れるように付勢して、ロータ152のクランプを解除し、ブレーキングトルクの生成を停止することができる。
【0035】
図3および
図6の参照に続いてここで
図8Aおよび8Bを参照すると、ブレーキシステム12は、例えば緊急事態にあるかまたは鉱業トラック10が使用されなくなる場合などにおいて、鉱業トラック10の運転中にロータ152およびステータ154をともに圧縮するために使用され得る緊急またはパーキングブレーキアクチュエータ230をさらに含む。一実施形態において、パーキングブレーキアクチュエータ230は、スプリング採用油圧解除(SAHR)ブレーキを含んでもよい。図示されるように、パーキングブレーキアクチュエータ230は、ケージ部分22の6つの対応する第2のチャンバ82内に配置される6つの第2のピストン232と、ロータ152およびステータ154へ向けて第2のピストン232を付勢するために、3つの対応するタワー118のめくら穴122内の第2のピストン232にわたって配置される6つのバネ234と、を含む。この様式では、第2のピストン232は、シャフト16の回転に抵抗するためのブレーキングトルクを発生させるべくベース部分20のプラットフォーム42に対してロータ152およびステータ154をともに圧縮するかまたはクランプするために、ロータ152および/またはステータ154の少なくとも1つと動作可能に係合してもよい。
【0036】
図示された実施形態では、負荷分散プレート210は、常用ブレーキアクチュエータ200に関して上述した様式と同様の様式で、第2のピストン232と一連のロータ152およびステータ154との間に配置される。加えてまたは代替的に、熱バリアディスク236は、第2のピストン232およびチャンバ82を、ブレーキングトルクの発生中に生じる熱から遮断するために、締結具238を介して第2のピストン232に連結されてもよい。
【0037】
第2の流体供給経路132および第2の流体ブリーダ経路92のそれぞれと流体連通する第2の流体入口240および第2の流体出口242は、各第2のピストン232のうちロータ152およびステータ154と同じ側に設けられており、それによって、バネ234の付勢に打ち勝つのに十分な程度の第2の流体経路132を介する油圧流体を用いた第2のチャンバ82の加圧が、第2のピストン232を、ロータ152およびステータ154から離れるよう展開させる。鉱業トラック10の通常の運転中、第2のチャンバ82は、第2のピストン232が不注意でロータ152およびステータ154をともに圧縮することを防止するために、第2のピストン232を展開ポジション(
図8A)に維持するために加圧されてもよい。鉱業トラック10の駐車中または緊急事態の際、第2のチャンバ82は減圧されてもよく、バネ234は、ブレーキングトルクを発生させる(
図8B)ために、第2のピストン232をロータ152およびステータ154へ向けて付勢できる。図示されていないが、第2のチャンバ82の減圧は、第2の流体供給経路132を通る貯留部から第2のチャンバ82への油圧流体の流れを遅くするかまたは妨げるように、パーキングブレーキレバーなどのコントローラを介してバルブを閉じることによって実現され得ることを理解されたい。図示されるように、ケージ部分22の内部空間70への油圧流体の漏出を防止するために、各第2のピストン232とそれぞれの第2のチャンバ82との間にガスケット244が設けられてもよい。加えてまたは代替的に、各第2のピストン232とそれぞれのチャンバ82との間に液密シールを提供するために、各第2のピストン232とそれぞれのチャンバ82との間に1つ以上のOリング246、248が設けられてもよい。
【0038】
図示された実施形態では、タワー118の各めくら穴122内にカラム250が設けられており、カラム250は、それぞれのバネ234とほぼ同心である。カラム250の外面は、バネ234のためのセンタリングを提供してもよく、かつバネ234の圧縮および/または展開中にバネ234をガイドしてもよい。加えてまたは代替的に、カラム250は、少なくとも部分的に中空であってもよく、カラム250の内面は、第2のピストン232の後退および/または展開中に第2のピストン232をガイドしてもよい。それぞれの第2のピストン232に近接するカラム250の端面は、バネ234が過剰に圧縮されかつ/または損傷される前に第2のピストン232を停止するよう第2のピストン232の展開を制限してもよい。
【0039】
したがって、ブレーキシステム12は、ウェットブレーキの欠点の多くを回避すると同時に、ウェットブレーキの利点の多くを伴う改善されたブレーキ性能を提供し得る。例えば、ブレーキシステム12は、低い摩耗率ひいては長い耐用期間を示し得る。ケージ部分22の内部空間70内および/またはロータ152およびステータ154上にオイルが存在しないことによって、ウェットブレーキ内のオイルによって引き起こされる寄生的な空転が回避され、さらに、複雑な重油の循環装備の必要性が回避される。
【0040】
本発明がその1つ以上の実施形態の説明によって例示され、同時に実施形態がかなり詳細に説明されているが、当該実施形態は、添付の請求項の範囲をそうした詳細に制限するかまたは多少なりとも限定することを意図していない。付加的な利点および変更は、当業者に容易に理解されよう。したがって、本発明は、そのより広い態様において、特定の詳細、例示的な装置および方法、ならびに図示されかつ説明された例示的な例に限定されない。それゆえ、本発明から逸脱することなく、そうした詳細から展開されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 鉱業トラック
12 ブレーキシステム
14 フレーム
16 シャフト
18 ホイール
20 ベース部分
22 ケージ部分
24 分離プレート
26 キャップ部分
28 ハブ
30 中心穴
32、34 スプライン
40 略環状のプレート
42 略環状のプラットフォーム
48、52、96 ねじ付きボルト
54 空気流スロット
60 下側リング
62 上側本体
64 支持体
66 開口部
70 内側空間
76 ノッチ
80 第1のチャンバ
82 第2のチャンバ
90 第1の流体ブリーダ経路
92 第2の流体ブリーダ経路
104 流体供給開口部
108 流体ブリーダ開口部
110 略環状のプレート
116 第1のタワー
118 第2のタワー
130 第1の流体供給経路
132 第2の流体供給経路
140 第1の油圧流体入口ポート
142 第2の油圧流体入口ポート
144 第1の油圧流体ブリーダポート
146 第2の油圧流体ブリーダポート
152 ロータ
154 ステータ
164 キー溝
162 キー
172 隆起部
170 ノッチ
180 板バネ
182 クリップ
200 常用ブレーキアクチュエータ
202 第1のピストン
204 第1の流体入口
206 第1の流体出口
210 負荷分散プレート
212 ノッチ
216、236 熱バリアディスク
220、234 バネ
230 パーキングブレーキアクチュエータ
232 第2のピストン
240 第2の流体入口
242 第2の流体出口
246、248 Oリング
250 カラム