(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240927BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240927BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20240927BHJP
C09J 129/14 20060101ALI20240927BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
C09J7/35
C09J7/22
C09J129/14
B32B17/10
(21)【出願番号】P 2020541819
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027389
(87)【国際公開番号】W WO2021010402
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019130849
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 錦良
(72)【発明者】
【氏名】武田 祐磨
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章吾
(72)【発明者】
【氏名】岡沢 伸吾
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135447(WO,A1)
【文献】特開2007-055822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 17/10
C03C 27/00-29/00
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、
第1の層と、
前記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層と、
前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置された第3の層とを備え、
前記第1の層が、ポリビニルアセタール樹脂を含み、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が60モル%以上85モル%以下であり、
中間膜を、
日射透過率(Ts2100)が70%である厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に挟み込んで、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラスXを得たときに、
下記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の前記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下であり、
前記合わせガラスXの20℃での損失係数が0.24以上であり、
前記合わせガラスXの日射透過率が50%以下である、合わせガラス用中間膜。
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、前記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、前記合わせガラスXに190W/m
2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の前記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【請求項2】
前記キセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の前記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値が20Hz以上である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記合わせガラスXを20℃で56日間以上保管したときに、ISO16940に準拠した中央加振法により求められる保管後の前記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数が650Hz以下である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第2の層は、中間膜の表面層であり、
前記第3の層は、中間膜の表面層であり
、
前記第2の層が、熱可塑性樹脂を含み、
前記第3の層が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第2の層に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記第3の層に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項4に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層が、可塑剤を含み、
前記第2の層が、可塑剤を含み、
前記第3の層が、可塑剤を含む、請求項
1~5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層のガラス転移温度が5℃以下であり、
前記第2の層のガラス転移温度が25℃以上であり、
前記第3の層のガラス転移温度が25℃以上である、請求項
1~6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が10モル%以下である、請求項
1~7
のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以上である、請求項
1~7
のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である、請求項
1~9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度をBモル%とし、アセチル化度をAモル%としたときに、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルブチラール樹脂は、式:B≧-0.88×A+78.6を満足するポリビニルブチラール樹脂である、請求項10に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
遮熱粒子を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第2の層が、遮熱粒子を含み、
前記第3の層が、遮熱粒子を含む、請求項
1~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第2の層が、遮熱粒子を含み、
前記第3の層が、遮熱粒子を含み、
前記第2の層及び前記第3の層の双方とは異なる層が遮熱粒子を含まない、請求項
1~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
前記第2の層が、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックの内の少なくとも1種の成分とを含み、
前記第3の層が、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックの内の少なくとも1種の成分とを含む、請求項
1~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
前記第2の層に含まれる前記成分が、ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7又はカーボンブラックであり、
前記第3の層に含まれる前記成分が、ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7又はカーボンブラックである、請求項15に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
前記第2の層に含まれる前記遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子であり、
前記第3の層に含まれる前記遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子である、請求項13~16のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項18】
一端と、前記一端の反対側に他端とを有し、
前記他端の厚みが、前記一端の厚みよりも大きい、請求項1~17のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項19】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1~18のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
【請求項20】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されており、
前記合わせガラス用中間膜は、3層以上の構造を有し、
前記合わせガラス用中間膜は、第1の層と、前記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層と、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置された第3の層とを備え、
前記第1の層が、ポリビニルアセタール樹脂を含み、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が60モル%以上85モル%以下であり、
下記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下であり、
20℃での損失係数が0.24以上であり、
日射透過率が50%以下である、合わせガラス。
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、合わせガラスの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、合わせガラスに190W/m
2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【請求項21】
前記第1の合わせガラス部材が、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスであり、
前記第2の合わせガラス部材が、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスである、請求項19又は20に記載の合わせガラス。
【請求項22】
日射透過率が48%以下である、請求項19~21のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、1層の構造又は2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜が開示されている。この中間膜は、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子と紫外線遮蔽剤とを含む第1の層を備える1層の構造を有する単層の中間膜であるか、又は、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む第1の層と、紫外線遮蔽剤を含む第2の層とを備える2層以上の積層構造を有する多層の合わせガラス用中間膜である。
【0004】
下記の特許文献2には、熱可塑性樹脂と、インモニウム化合物及びアミニウム化合物の内の少なくとも一種とを含有する第1の層と、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含有する第2の層とを備え、第1の層に含まれている熱可塑性樹脂が、水酸基の含有率が25モル%以下の熱可塑性樹脂である合わせガラス用中間膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2012/115198A1
【文献】特開2011-042552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の合わせガラスでは、遮熱性を高めることができる。しかしながら、特許文献1,2に記載のような遮熱性能を有する従来の合わせガラスでは、周囲の温度の変化に伴って、合わせガラスの遮音性が変化することがある。例えば、従来の合わせガラスでは、比較的高い温度領域(例えば22℃~40℃)において、合わせガラスの遮音性が変化することがあり、その結果、温度によっては遮音性を高めることができないことがある。
【0007】
本発明の目的は、比較的高い温度領域において、合わせガラスの遮音性の変化を抑えることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、中間膜を、厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に挟み込んで、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラスXを得たときに、下記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の前記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下であり、前記合わせガラスXの20℃での損失係数が0.24以上であり、前記合わせガラスXの日射透過率が50%以下である、合わせガラス用中間膜(本明細書において、「合わせガラス用中間膜」を「中間膜」と略記することがある)が提供される。
【0009】
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、前記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、前記合わせガラスXに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の前記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0010】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記キセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の前記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の前記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値が20Hz以上である。
【0011】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記合わせガラスXを20℃で56日間以上保管したときに、ISO16940に準拠した中央加振法により求められる保管後の前記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数が650Hz以下である。
【0012】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、3層以上の構造を有し、第1の層と、前記第1の層の第1の表面側に配置された第2の層と、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置された第3の層とを備え、前記第2の層は、中間膜の表面層であり、前記第3の層は、中間膜の表面層であり、前記第1の層が、熱可塑性樹脂を含み、前記第2の層が、熱可塑性樹脂を含み、前記第3の層が、熱可塑性樹脂を含む。
【0013】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層が、可塑剤を含み、前記第2の層が、可塑剤を含み、前記第3の層が、可塑剤を含む。
【0014】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層のガラス転移温度が5℃以下であり、前記第2の層のガラス転移温度が25℃以上であり、前記第3の層のガラス転移温度が25℃以上である。
【0015】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、前記第2の層に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、前記第3の層に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0016】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が10モル%以下である。
【0017】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以上である。
【0018】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である。
【0019】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度をBモル%とし、アセチル化度をAモル%としたときに、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルブチラール樹脂は、式:B≧-0.88×A+78.6を満足するポリビニルブチラール樹脂である。
【0020】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、遮熱粒子を含む。
【0021】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層が、遮熱粒子を含み、前記第3の層が、遮熱粒子を含む。
【0022】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層が、遮熱粒子を含み、前記第3の層が、遮熱粒子を含み、前記第2の層及び前記第3の層の双方とは異なる層が遮熱粒子を含まない。
【0023】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層が、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックの内の少なくとも1種の成分とを含み、前記第3の層が、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックの内の少なくとも1種の成分とを含む。
【0024】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層に含まれる前記成分が、ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7又はカーボンブラックであり、前記第3の層に含まれる前記成分が、ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7又はカーボンブラックである。
【0025】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層に含まれる前記遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子であり、前記第3の層に含まれる前記遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子である。
【0026】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、一端と、前記一端の反対側に他端とを有し、前記他端の厚みが、前記一端の厚みよりも大きい。
【0027】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【0028】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されており、下記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下であり、20℃での損失係数が0.24以上であり、日射透過率が50%以下である、合わせガラスが提供される。
【0029】
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、合わせガラスの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、合わせガラスに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0030】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記第1の合わせガラス部材が、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスであり、前記第2の合わせガラス部材が、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスである。
【0031】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、日射透過率が48%以下である。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜を、厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に挟み込んで、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラスXを得る。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下である。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記合わせガラスXの20℃での損失係数が0.24以上である。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記合わせガラスXの日射透過率が50%以下である。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記の構成が備えられているので、比較的高い温度領域において、合わせガラスの遮音性の変化を抑えることができる。
【0033】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜とを備え、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記合わせガラス用中間膜が配置されている。本発明に係る合わせガラスでは、上記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下である。本発明に係る合わせガラスは、20℃での損失係数が0.24以上であり、日射透過率が50%以下である。本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、比較的高い温度領域において、遮音性の変化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0036】
(合わせガラス用中間膜)
本発明に係る合わせガラス用中間膜(以下、「中間膜」と略記することがある)は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。
【0037】
本発明に係る中間膜を、厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に挟み込んで、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラスXを得る。
【0038】
本発明に係る中間膜では、下記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下である。本発明に係る中間膜では、上記合わせガラスXの20℃での損失係数が0.24以上である。本発明に係る中間膜では、上記合わせガラスXの日射透過率が50%以下である。
【0039】
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、上記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、上記合わせガラスXに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0040】
本発明に係る中間膜では、上記の構成が備えられているので、比較的高い温度領域において、合わせガラスの遮音性の変化を抑えることができる。
【0041】
従来の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスでは、比較的高い温度領域(例えば22℃~40℃、特に25℃前後)において、該合わせガラスの遮音性(例えば2000Hz~5000Hzにおける遮音性)が変化することがある。例えば、従来の合わせガラス用中間膜では、温度変化に伴って、中間膜に含まれる可塑剤が層間を移動したり、樹脂層のヤング率等が変化したりすることによって、合わせガラスの遮音性が変化することがあり、その結果、温度によっては遮音性を高めることができないことがある。また、遮熱粒子を含む従来の合わせガラス用中間膜では、該遮熱粒子が太陽光を吸収することで中間膜の温度が上昇しやすく、その結果、合わせガラスの遮音性が変化することがある。
【0042】
これに対して、本発明に係る中間膜では、上記の構成が備えられているので、比較的高い温度領域(例えば22℃~40℃、特に25℃前後)において、合わせガラスの遮音性の変化を抑えることができる。従って、本発明に係る中間膜では、該中間膜を用いた合わせガラスが比較的高い温度領域で用いられても、高い遮音性を発揮することができる。本発明に係る中間膜では、例えば、合わせガラスが太陽光に晒された環境であっても、遮音性を高めることができる。また、本発明に係る中間膜では、合わせガラスの遮熱性を高めることができる。
【0043】
本発明に係る中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、2層の構造を有していてもよく、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、第1の層を備える。本発明に係る中間膜は、第1の層のみを備える単層の中間膜であってもよく、第1の層と他の層とを備える多層の中間膜であってもよい。
【0044】
上記中間膜は、第1の層のみを有していてもよく、第1の層に加えて第2の層を備えていてもよい。上記中間膜は、該中間膜における表面層として、第2の層を備えることが好ましい。上記第2の層は、中間膜の表面層であることが好ましい。上記中間膜が上記第2の層を備える場合に、上記第1の層の第1の表面側に、上記第2の層が配置される。
【0045】
上記中間膜は、3層以上の構造を有していてもよく、第1の層及び第2の層に加えて第3の層を備えていてもよい。上記中間膜は、該中間膜における表面層として、第3の層を備えることが好ましい。上記第3の層は、中間膜の表面層であることが好ましい。上記中間膜が上記第2の層及び上記第3の層を備える場合に、上記第1の層の上記第1の表面とは反対の第2の表面側に、上記第3の層が配置される。
【0046】
上記第1の層と上記第2の層との間、及び、上記第1の層と上記第3の層との間には、他の層が備えられていてもよい。
【0047】
本発明に係る中間膜を、厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に挟み込んで、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラスXが作製される。
【0048】
上記合わせガラスXは、上記キセノン光照射試験を行うために、また、合わせガラスXの損失係数、二次共振周波数及び日射透過率を測定するために作製される。
【0049】
上記合わせガラスXは、以下のようにして作製されることが好ましい。
【0050】
厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に中間膜を挟み、積層体を得る。得られた積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着する。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラスXを得る。
【0051】
なお、合わせガラスにおける中間膜を合わせガラス部材から剥離して、上記合わせガラスXを作製してもよい。
【0052】
本発明では、合わせガラスXについて、以下のキセノン光照射試験を行う。
【0053】
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、上記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、上記合わせガラスXに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0054】
合わせガラスXの上記キセノン光照射試験は、より具体的には、以下のようにして測定される。
【0055】
(1)ISO16940に準拠した中央加振法により、上記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数を求める。
【0056】
(2)20℃の無風条件下で、上記合わせガラスXに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。キセノン光を照射するための装置としては、ソーラーシミュレーター装置(例えば朝日分光社製「HAL-320」)等が挙げられる。照度を測定するための装置としては、照度計(例えば、Keysight Technologies社製「KEYSIGHT U1252B、センサーEKO Pyranometer ML-01」)等が挙げられる。なお、合わせガラスXの主面と光源(キセノンランプ等)との距離は、照度が190W/m2となるように配置される限り特に限定されない。
【0057】
(3)ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数を求める。この際、キセノン光照射後2分以内(好ましくは1分以内)に該二次共振周波数を求める。
【0058】
(4)上記(1)で求めたキセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、上記(3)で求めたキセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0059】
本発明の効果を発揮する観点から、キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値は70Hz以下である。
【0060】
キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数との差の絶対値は、好ましくは1Hz以上、より好ましくは20Hz以上、好ましくは65Hz以下、より好ましくは45Hz以下、更に好ましくは33Hz以下である。上記差の絶対値が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0061】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、キセノン光を照射する前の上記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数は、好ましくは530Hz以上、より好ましくは560Hz以上、好ましくは680Hz以下、より好ましくは640Hz以下、更により好ましくは599Hz以下である。
【0062】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスXの二次共振周波数は、好ましくは500Hz以上、より好ましくは530Hz以上、好ましくは600Hz以下、より好ましくは565Hz以下である。
【0063】
なお、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲等に制御する方法としては、以下の方法が挙げられる。(1)可塑剤の含有量を調整する方法。一般的に、可塑剤の含有量を少なくすると、二次共振周波数は大きくなる。(2)後述の第1の層、第2の層又は第3の層のヤング率を制御する方法。一般的に、ヤング率を大きくすると、二次共振周波数は大きくなる。(3)中間膜の遮熱性能を制御する方法。一般的に、中間膜の遮熱性能を高めると、上記差の絶対値は大きくなる。(4)後述の第2の層(表面層)又は第3の層(表面層)の厚みを制御する方法。一般的に、第2の層又は第3の層の厚みを大きくすると、二次共振周波数は小さくなる。(5)後述の第1の層(中間層)の厚みを制御する方法。一般的に、第1の層の厚みを大きくすると、二次共振周波数は小さくなる。これらの方法を適宜組み合わせることで、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することができる。
【0064】
上記合わせガラスXを20℃で56日間以上保管したときに、ISO16940に準拠した中央加振法により求められる保管後の上記合わせガラスXの20℃での二次共振周波数は、好ましくは530Hz以上、より好ましくは560Hz以上、好ましくは650Hz以下、より好ましくは600Hz以下である。上記二次共振周波数が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。この二次共振周波数は上記合わせガラスXを20℃で56日間保管した後に測定されることが好ましい。
【0065】
本発明の効果を発揮する観点から、上記合わせガラスXの20℃での損失係数は0.24以上である。
【0066】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記合わせガラスXの20℃での損失係数は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.26以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下である。
【0067】
上記合わせガラスXの20℃での損失係数は、ISO16940に準拠した中央加振法により測定される。
【0068】
本発明の効果を発揮する観点及び遮熱性を高める観点から、上記合わせガラスXの日射透過率は50%以下である。
【0069】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点及び遮熱性をより一層高める観点からは、上記合わせガラスXの日射透過率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、好ましくは48%以下、より好ましくは44%以下である。
【0070】
上記合わせガラスXの日射透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して測定される。
【0071】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0072】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0073】
図1に示す中間膜11は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。中間膜11は、3層の構造を有する。第1の層1の第1の表面1aに、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0074】
なお、第2の層2と第1の層1との間、及び、第1の層1と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第2の層2と第1の層1、及び、第1の層1と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0075】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0076】
図2に示す中間膜11Aは、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜11Aは、第1の層である。中間膜11Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11Aは、合わせガラス用中間膜である。
【0077】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層のガラス転移温度は、好ましくは-10℃以上、より好ましくは-6℃以上、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下である。
【0078】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第2の層のガラス転移温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは28℃以上、好ましくは45℃以下、より好ましくは35℃以下である。
【0079】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第3の層のガラス転移温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは28℃以上、好ましくは45℃以下、より好ましくは35℃以下である。
【0080】
上記ガラス転移温度は、粘弾性測定により求められる。上記粘弾性測定は、具体的には、以下のようにして行われる。
【0081】
試験片を、室温23±2℃、湿度25±5%の環境下に12時間保管する。次いで、TAインスツルメント社製の粘弾性測定装置「ARES-G2」を用いて、粘弾性を測定する。治具として直径8mmのパラレルプレートを用い、せん断モード、3℃/分の降温速度で100℃から-20℃まで温度を低下させる条件、並びに周波数1Hz及び歪1%の条件で測定する。
【0082】
中間膜自体を用いて、粘弾性測定を行ってもよい。この場合に、測定結果から、上記第1の層、第2の層、第3の層に由来するtanδのピーク等を読み取ってもよい。2層以上の構造を有する中間膜に関しては、各層間を剥離して、測定対象の層のガラス転移温度を測定してもよい。また、合わせガラスの場合は、液体窒素等で合わせガラスを冷却後に合わせガラス部材と中間膜とを剥離し、剥離した中間膜を用いて粘弾性測定を行ってもよい。
【0083】
以下、本発明に係る中間膜、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層、並びに中間膜に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0084】
(熱可塑性樹脂)
上記中間膜は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、脂肪族ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂((メタ)アクリロイル基を有する重合体)等が挙げられる。なお、ポリオキシメチレン(又はポリアセタール)樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂に含まれる。上記熱可塑性樹脂として、これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。上記熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0085】
上記中間膜は、熱可塑性樹脂(0)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記中間膜に含まれる熱可塑性樹脂(0)は、ポリビニルアセタール樹脂(0)であることが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層に含まれる熱可塑性樹脂(1)は、ポリビニルアセタール樹脂(1)であることが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層に含まれる熱可塑性樹脂(2)は、ポリビニルアセタール樹脂(2)であることが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層に含まれる熱可塑性樹脂(3)は、ポリビニルアセタール樹脂(3)であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(2)と上記熱可塑性樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記熱可塑性樹脂(1)は、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)と異なることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(0)、上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(0)、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0087】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材又は他の層に対するポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の接着力がより一層高くなる。
【0088】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70モル%~99.9モル%の範囲内である。
【0089】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0090】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0091】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0092】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。上記アルデヒドは、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドであることが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドであることがより好ましく、n-ブチルアルデヒドであることが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記中間膜は、熱可塑性樹脂(0)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂(0)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記中間膜に含まれる熱可塑性樹脂(0)は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第1の層は、ポリビニルアセタール樹脂(1)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第1の層に含まれる熱可塑性樹脂(1)は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第2の層は、ポリビニルアセタール樹脂(2)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第2の層に含まれる熱可塑性樹脂(2)は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第3の層は、ポリビニルアセタール樹脂(3)として、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。上記第3の層に含まれる熱可塑性樹脂(3)は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記中間膜、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれるポリビニルブチラール樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0094】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0095】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは17モル%以上、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは19モル%以下、特に好ましくは18モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が15モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また25モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0096】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31.5モル%以上、更に好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36.5モル%以下、特に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0097】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、及び、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0098】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0099】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0100】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、10モル%以下であることが好ましく、15モル%以上であることも好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が10モル%以下である場合に、該ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1.1モル%以上、好ましくは9モル%以下、より好ましくは7モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が15モル%以上である場合に、該ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度は、好ましくは16モル%以上、より好ましくは17モル%以上、好ましくは25モル%以下、より好ましくは23モル%以下、更に好ましくは19モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。また、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度は、10モル%以下であってもよく、15モル%以上であってもよい。
【0101】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0102】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0103】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0104】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。また、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0105】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度をBモル%とし、アセチル化度をAモル%としたときに、ポリビニルアセタール樹脂(1)は、式:B≧-0.88×A+78.6を満足するポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。この場合、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0106】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)がポリビニルブチラール樹脂である場合において、該ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度をBモル%とし、アセチル化度をAモル%としたときに、該ポリビニルブチラール樹脂は、式:B≧-0.88×A+78.6を満足するポリビニルブチラール樹脂であることが特に好ましい。この場合、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することがより一層容易になり、本発明の効果を更に一層効果的に発揮することができる。
【0107】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0108】
上記アセタール化度は、以下のようにして求める。主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を求める。得られた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を求める。この百分率で示した値がアセタール化度である。
【0109】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0110】
上記中間膜中に含まれる熱可塑性樹脂100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。上記中間膜の熱可塑性樹脂の主成分(50重量%以上)は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0111】
(可塑剤)
上記中間膜は、可塑剤を含むことが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、またポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、耐衝撃性及び耐貫通性により一層優れ、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤(1)と上記可塑剤(2)と上記可塑剤(3)とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記可塑剤(1)、上記可塑剤(2)及び上記可塑剤(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は有機エステル可塑剤であることが好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0113】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0114】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0115】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0116】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0117】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0118】
【0119】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基であることが好ましく、炭素数6~10の有機基であることがより好ましい。
【0120】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことが好ましい。上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0121】
上記第1の層において、上記熱可塑性樹脂(1)100重量部(上記熱可塑性樹脂(1)がポリビニルアセタール樹脂(1)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部)に対する上記可塑剤(1)の含有量を、含有量(1)とする。上記含有量(1)は、好ましくは68重量部以上、より好ましくは72重量部以上、更に好ましくは75重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは86重量部以下、更に好ましくは84重量部以下、特に好ましくは82重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。また、含有量(1)が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0122】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部(上記熱可塑性樹脂(2)がポリビニルアセタール樹脂(2)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部)に対する上記可塑剤(2)の含有量を、含有量(2)とする。上記含有量(2)は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、特に好ましくは35重量部以上、好ましくは41重量部以下、より好ましくは39重量部以下、更に好ましくは38重量部以下、特に好ましくは37重量部以下である。上記含有量(2)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)が上記上限以下であると、曲げ剛性がより一層高くなる。
【0123】
上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)100重量部(上記熱可塑性樹脂(3)がポリビニルアセタール樹脂(3)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部)に対する上記可塑剤(3)の含有量を、含有量(3)とする。上記含有量(3)は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、特に好ましくは35重量部以上、好ましくは41重量部以下、より好ましくは39重量部以下、更に好ましくは38重量部以下、特に好ましくは37重量部以下である。上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(3)が上記上限以下であると、曲げ剛性がより一層高くなる。
【0124】
上記含有量(1)と上記含有量(2)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記含有量(1)と上記含有量(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。合わせガラスの遮音性を高める観点からは、上記含有量(1)と上記含有量(2)とは同一であるか、又は、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことがより好ましい。合わせガラスの遮音性を高める観点からは、上記含有量(1)と上記含有量(3)とは同一であるか、又は、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことがより好ましい。
【0125】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0126】
(遮熱性物質)
上記中間膜は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記遮熱性物質は、後述の着色剤にも該当することがある。
【0127】
上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックの内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、成分Xは、着色剤としての機能も発揮してもよい。遮熱性をより一層高めるからは、上記遮熱性物質は、上記成分Xと上記遮熱粒子とを含むことがより好ましい。上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分X1を含むか、又は遮熱粒子を含んでいてもよい。遮熱性をより一層高めるからは、上記遮熱性物質は、上記成分X1と遮熱粒子とを含むことがより好ましい。上記遮熱性物質は、カーボンブラックを含むか、又は遮熱粒子を含んでいてもよい。遮熱性をより一層高めるからは、上記遮熱性物質は、カーボンブラックと遮熱粒子とを含むことがより好ましい。
【0128】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックの内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性物質である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アントラシアニン化合物及びカーボンブラックを用いることができる。
【0130】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0131】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0132】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7又はカーボンブラックであることが好ましい。ピグメントブルー15及びピグメントグリーン7は、銅原子を含有するフタロシアニン化合物である。
【0133】
上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0134】
上記成分X1を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分X1の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記成分X1を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分X1の含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分X1の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0135】
上記カーボンブラックを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記カーボンブラックの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記カーボンブラックを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記カーボンブラックの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記カーボンブラックの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0136】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層が上記遮熱粒子を含み、上記第3の層が上記遮熱粒子を含み、上記第2の層及び上記第3の層の双方は異なる層が遮熱粒子を含まないことも好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
上記遮熱粒子を含むことにより、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0138】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0139】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0140】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB6)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0141】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0142】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WO3で表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0143】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0144】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0145】
合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、第2の層が、上記遮熱粒子と、上記成分Xとを含み、上記第3の層が、上記遮熱粒子と、上記成分Xとを含むことが好ましい。
【0146】
上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0147】
(着色剤)
上記中間膜は、着色剤を含むことが好ましい。上記中間膜が着色剤により着色されることにより、意匠性を高めたり、プライバシー保護性を高めたりすることができる。また、上記中間膜が着色剤により着色されることにより、遮熱性能がより一層向上し、日射透過率を低くすることができる。上記着色剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記着色剤は、前述の遮熱性物質にも該当することがある。
【0148】
過度の色むらを効果的に抑える観点からは、上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、着色剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、着色層であることが好ましい。過度の色むらを効果的に抑える観点からは、上記中間膜の中間層が着色剤を含むことが好ましく、着色層であることが好ましい。上記第1の層が着色剤を含む場合に、上記第2の層は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記第1の層が着色層である場合に、上記第2の層は、着色層であってもよく、着色層でなくてもよい。上記第1の層が着色剤を含む場合に、上記第3の層は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記第1の層が着色層である場合に、上記第3の層は、着色層であってもよく、着色層でなくてもよい。上記中間膜の表面層は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよく、着色層であってもよく、着色層でなくてもよい。
【0149】
遮熱性をより一層高め、日射透過率を低くする観点からは、上記第2の層は、着色剤を含むことが好ましく、上記第3の層は、着色剤を含むことが好ましい。遮熱性をより一層高め、日射透過率を低くする観点からは、上記第2の層は、着色層であることが好ましく、上記第3の層は、着色層であることが好ましい。これらの場合に、上記第1の層は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよく、着色層であってもよく、着色層でなくてもよい。
【0150】
上記着色剤としては、顔料及び染料等が挙げられる。
【0151】
着色剤が染料と顔料との何れに該当するかは、カラーインデックスによる分類から判別することができる。
【0152】
本明細書において、カラーインデックスに記載されていない着色剤等については、「顔料」及び「染料」は、以下のように定義されてもよい。ポリビニルブチラール樹脂(ポリビニルアルコールの重合度1700、水酸基の含有率30モル%、アセチル化度1モル%、ブチラール化度69モル%)を用意する。このポリビニルブチラール樹脂100重量部と、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、ポリビニルブチラール樹脂と3GOと着色剤との合計量100重量%に対して0.015重量%の含有量となる着色剤とを混練し、押し出して得られる厚さ760μmの樹脂膜(単層)を得る。この樹脂膜と、JIS R3106:1998に準拠して測定された可視光線透過率が90%の2枚のクリアガラス(厚み2.5mm)とを用いて合わせガラスを作製した際に、得られる合わせガラスのヘイズ値が0.35%以上となる着色剤を顔料とする。ヘイズ値が0.35%未満となる着色剤は染料とする。
【0153】
上記顔料は、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。上記有機顔料は、金属原子を有する有機顔料であってもよく、金属原子を有さない有機顔料であってもよい。上記顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0154】
上記有機顔料としては、フタロシアニン化合物、キナクドリン化合物、アゾ化合物、ペンタフェン化合物、ジオキサジン化合物、ペリレン化合物、インドール化合物及びジオキサジン化合物等が挙げられる。
【0155】
上記有機顔料の色調は、黄色、橙色、赤色、バイオレット色、青色又は緑色であることが好ましい。
【0156】
上記無機顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化亜鉛及び酸化チタン等が挙げられる。
【0157】
上記中間膜は、上記顔料として、フタロシアニン化合物、キナクドリン化合物、アゾ化合物、ペンタフェン化合物、ジオキサジン化合物、ペリレン化合物、インドール化合物又はカーボンブラックを含むことが好ましい。上記中間膜は、上記顔料として、フタロシアニン化合物を含んでいてもよく、キナクドリン化合物、ペリレン化合物又はインドール化合物を含んでいてもよく、カーボンブラックを含んでいてもよい。
【0158】
上記染料としては、ピレン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系染料、及びアゾ系染料等が挙げられる。上記染料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0159】
上記ピレン系染料としては、Solvent Green5(CAS79869-59-3)及びSolvent Green7(CAS6358-69-6)等が挙げられる。
【0160】
上記アミノケトン系染料としては、Solvent Yellow98(CAS12671-74-8)、Solvent Yellow85(CAS12271-01-1)及びSolvent Red179(CAS8910-94-5)、及びSolvent Red135(CAS71902-17-5)等が挙げられる。
【0161】
上記アントラキノン系染料としては、Solvent Yellow163(CAS13676091-0)、Solvent Red207(CAS15958-69-6)、Disperse Red92(CAS12236-11-2)、Solvent Violet13(CAS81-48-1)、Disperse Violet31(CAS6408-72-6)、Solvent Blue97(CAS61969-44-6)、Solvent Blue45(CAS37229-23-5)、Solvent Blue104(CAS116-75-6)及びDisperse Blue214(CAS104491-84-1)等が挙げられる。
【0162】
上記アゾ系染料としては、Solvent Yellow30(CAS3321-10-4)、Solvent Red164(CAS70956-30-8)、及びDisperse Blue146(CAS88650-91-3)等が挙げられる。
【0163】
上記着色剤を含む着色層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記着色剤の含有量は、好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.0003重量%以上、更に好ましくは0.0005重量%以上、特に好ましくは0.0008重量%以上である。上記着色剤を含む着色層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記着色剤の含有量は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。上記着色剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、良好に着色することができ、また、遮熱性をより一層高くすることができる。
【0164】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。なお、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの6種の金属を意味する。上記金属塩Mの使用により、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0165】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0166】
また、上記金属塩Mは、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、又は炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0167】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0168】
上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜とガラス板との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0169】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0170】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0171】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0172】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0173】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤である。上記紫外線遮蔽剤は、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0174】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0175】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0176】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を遮蔽する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0177】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0178】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0179】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0180】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0181】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキサルアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0182】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0183】
上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上である。上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。上記紫外線遮蔽剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制することができる。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0184】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0185】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0186】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0187】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアシッドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0188】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0189】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H-BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0190】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0191】
(他の成分)
上記中間膜、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0192】
(赤外線反射層)
上記中間膜は、赤外線反射層を備えていてもよい。上記赤外線反射層は赤外線を反射する層である。上記赤外線反射層は、赤外線を反射する性能を有していれば特に限定されない。
【0193】
上記赤外線反射層は、上記第1の層と上記第2の層との間、又は、上記第1の層と上記第3の層との間に配置されてもよい。また、上記第2の層又は上記第3の層が赤外線反射層であってもよい。
【0194】
上記赤外線反射層は、上記第2の層の上記第1の層とは反対の表面側に配置されていてもよく、上記第3の層の上記第1の層とは反対の表面側に配置されていてもよい。この場合に、上記中間膜は、上記赤外線反射層の上記第2の層とは反対の表面側に第4の層が配置されていてもよく、上記赤外線反射層の上記第3の層とは反対の表面側に第4の層が配置されていてもよい。
【0195】
上記赤外線反射層としては、金属箔付き樹脂フィルム、樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルム、グラファイトを含むフィルム、多層樹脂フィルム及び液晶フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、赤外線を反射する性能を有する。
【0196】
上記赤外線反射層は、金属箔付き樹脂フィルム、グラファイトを含むフィルム、多層樹脂フィルム又は液晶フィルムであることが好ましく、金属箔付き樹脂フィルム、多層樹脂フィルム又は液晶フィルムであることがより好ましい。これらのフィルムは、赤外線の反射性能にかなり優れている。従って、これらのフィルムの使用により、遮熱性がより一層高く、高い可視光線透過率をより一層長期間に渡り維持できる合わせガラスが得られる。
【0197】
上記赤外線反射層は、多層樹脂フィルム又は液晶フィルムであることが更に好ましい。これらのフィルムは、金属箔付き樹脂フィルムに比べて電磁波を透過することができるため、車内での電子機器の使用時に妨害することなく合わせガラスの使用が可能になる。
【0198】
上記金属箔付き樹脂フィルムは、樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの外表面に積層された金属箔とを備える。上記樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。上記金属箔の材料としては、アルミニウム、銅、銀、金、パラジウム、及びこれらを含む合金等が挙げられる。
【0199】
上記樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルムは、樹脂層(樹脂フィルム)に、金属層及び誘電層が交互に任意の層数で積層された多層積層フィルムである。なお、上記樹脂層上に金属層及び誘電層が形成された多層積層フィルムでは、金属層及び誘電層の全てが交互に積層されていることが好ましいが、金属層/誘電層/金属層/誘電層/金属層/金属層/誘電層/金属層のように、一部が交互に積層されていない構造部分があってもよい。
【0200】
上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)の材料としては、上記金属箔付き樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの材料と同様の材料が挙げられる。上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリフッ化ビニリデン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナイロン6,11,12,66などのポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルイミド等が挙げられる。上記多層積層フィルムにおける上記金属層の材料としては、上記金属箔付き樹脂フィルムにおける上記金属箔の材料と同様の材料が挙げられる。上記金属層の両面もしくは片面に、金属もしくは金属の混合酸化物のコート層を付与することができる。上記コート層の材料としては、ZnO、Al2O3、Ga2O3、InO3、MgO、Ti、NiCr及びCu等が挙げられる。
【0201】
上記多層積層フィルムにおける上記誘電層の材料としては、例えば酸化インジウム等が挙げられる。
【0202】
上記多層樹脂フィルムは、複数の樹脂フィルムが積層された積層フィルムである。上記多層樹脂フィルムの材料としては、上記多層積層フィルムにおける上記樹脂層(樹脂フィルム)の材料と同様の材料が挙げられる。上記多層樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの積層数は、2以上であり、3以上であってもよく、5以上であってもよい。上記多層樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの積層数は、1000以下であってもよく、100以下であってもよく、50以下であってもよい。
【0203】
上記多層樹脂フィルムは、異なる光学的性質(屈折率)を有する2種類以上の熱可塑性樹脂層が交互に又はランダムに任意の層数で積層された多層樹脂フィルムであってもよい。このような多層樹脂フィルムは、所望の赤外線反射性能が得られるように構成される。
【0204】
上記液晶フィルムとしては、任意の波長の光を反射するコレステリック液晶層を任意の層数で積層したフィルムが挙げられる。このような液晶フィルムは、所望の赤外線反射性能が得られるように構成される。
【0205】
上記赤外線反射層と上記第2の合わせガラス部材との積層体は、金属箔付き第2の合わせガラス部材であってもよい。この場合に、金属箔が、赤外線反射層として機能する。
【0206】
赤外線を反射する性能に優れることから、上記赤外線反射層が、800nm~2000nmの範囲内の少なくとも1つの波長において、赤外線透過率が40%以下である性質を有することが好ましい。なお、後述する実施例で用いた赤外線反射層の赤外線透過率は、上記の好ましい条件を満足する。800nm~2000nmの範囲内の少なくとも1つの波長において、赤外線透過率はより好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。
【0207】
上記赤外線反射層の波長800nm~2000nmの範囲における各波長の透過率は、具体的には、以下のようにして測定される。単独の赤外線反射層を用意する。分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、赤外線反射層の波長800nm~2000nmにおける各波長の分光透過率を得る。
【0208】
合わせガラスの遮熱性を効果的に高める観点からは、赤外線反射層の波長800nm~1200nmでの赤外線反射率は、好ましくは20%以上、より好ましくは22%以上、更に好ましくは25%以上である。
【0209】
上記赤外線反射層の波長800nm~1200nmでの赤外線反射率は、具体的には以下のようにして測定される。分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、赤外線反射層の波長800nm~1200nmにおける各波長の反射率を得る。各波長での反射率のうち、最も反射率が低い値が上記下限以上であることが好ましい。
【0210】
合わせガラスの透明性を効果的に高める観点からは、上記赤外線反射層の波長380nm~780nmでの可視光線透過率は好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。
【0211】
上記可視光線透過率は、分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3211:1998に準拠して、波長380nm~780nmにて測定される。
【0212】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
上記中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性を充分に高める観点からは、中間膜の平均厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の平均厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性がより一層高くなる。中間膜の平均厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0213】
中間膜の平均厚みをTとする。上記第1の層の平均厚みは、好ましくは0.035T以上、より好ましくは0.0625T以上、更に好ましくは0.1T以上、好ましくは0.4T以下、より好ましくは0.375T以下、更に好ましくは0.25T以下、特に好ましくは0.15T以下である。上記第1の層の平均厚みが0.4T以下であると、曲げ剛性がより一層良好になる。また、上記第1の層の平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0214】
上記第2の層及び上記第3の層の各平均厚みは、好ましくは0.3T以上、より好ましくは0.3125T以上、更に好ましくは0.375T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。上記第2の層及び上記第3の層の各平均厚みは、0.46875T以下であってもよく、0.45T以下であってもよい。また、上記第2の層及び上記第3の層の各平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの曲げ剛性がより一層高くなる。また、上記第2の層及び上記第3の層の各平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0215】
上記第2の層の平均厚みと上記第3の層の平均厚みとの合計は、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、更に好ましくは0.85T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。また、上記合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの曲げ剛性がより一層高くなる。また、上記合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記差の絶対値及び上記二次共振周波数を上記の好ましい範囲に制御することが容易になり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0216】
上記中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、中間膜において対向し合う両側の端部である。上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜は、上記一端の厚みと上記他端の厚みとが同じである中間膜であってもよく、上記他端の厚みが上記一端の厚みよりも大きい中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0217】
上記中間膜の一端と他端との間の距離をLとする。中間膜は、上記一端から上記他端に向かって0Lの位置から0.4Lの位置の領域に最小厚みを有し、上記他端から上記一端に向かって0Lの位置から0.4Lの位置の領域に最大厚みを有することが好ましい。中間膜は、上記一端から上記他端に向かって0Lの位置から0.3Lの位置の領域に最小厚みを有し、上記他端から上記一端に向かって0Lの位置から0.3Lの位置の領域に最大厚みを有することがより好ましい。中間膜は、上記一端から上記他端に向かって0Lの位置から0.2Lの位置の領域に最小厚みを有し、上記他端から上記一端に向かって0Lの位置から0.2Lの位置の領域に最大厚みを有することがより一層好ましい。上記中間膜は、上記一端から上記他端に向かって0Lの位置から0.1Lの位置の領域に最小厚みを有し、上記他端から上記一端に向かって0Lの位置から0.1Lの位置の領域に最大厚みを有することがより更に好ましい。上記中間膜は一端に最小厚みを有し、他端に最大厚みを有することが特に好ましい。
【0218】
上記中間膜は、厚み均一部位を有していてもよい。上記厚み均一部位とは、中間膜の上記一端と上記他端とを結ぶ方向での10cmの距離範囲あたり、厚みが10μmを超えて変化していないことをいう。従って、上記厚み均一部位は、中間膜の上記一端と上記他端とを結ぶ方向での10cmの距離範囲あたり、厚みが10μmを超えて変化していない部位をいう。具体的には、上記厚み均一部位は、中間膜の上記一端と上記他端とを結ぶ方向で厚みが全く変化していないか、又は、中間膜の上記一端と上記他端とを結ぶ方向での10cmの距離範囲あたり、厚みが10μm以下で変化している部位をいう。
【0219】
上記中間膜の最大厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.8mm以上であり、好ましくは3.8mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
【0220】
上記中間膜の一端と他端との距離Lは、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下であり、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上である。
【0221】
中間膜は、巻かれて、中間膜のロール体とされてもよい。ロール体は、巻き芯と、該巻き芯の外周に巻かれた中間膜とを備えていてもよい。
【0222】
本発明に係る中間膜の製造方法は特に限定されない。本発明に係る中間膜の製造方法としては、単層の中間膜の場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。本発明に係る中間膜の製造方法としては、多層の中間膜の場合に、例えば、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0223】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0224】
上記中間膜は、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記中間膜は、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0225】
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上述した合わせガラス用中間膜が配置されている。
【0226】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記合わせガラス用中間膜が配置されている。本発明に係る合わせガラスでは、下記のキセノン光照射試験によって求められる、キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値が70Hz以下であることが好ましい。本発明に係る合わせガラスは、20℃での損失係数が0.24以上であり、日射透過率が50%以下であることが好ましい。
【0227】
キセノン光照射試験:ISO16940に準拠した中央加振法により、合わせガラスの20℃での二次共振周波数を求める。20℃の条件下で、合わせガラスに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数を求める。キセノン光を照射する前の合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0228】
合わせガラスの上記キセノン光照射試験は、より具体的には、以下のようにして測定される。
【0229】
(1)ISO16940に準拠した中央加振法により、上記合わせガラスの20℃での二次共振周波数を求める。
【0230】
(2)20℃の無風条件下で、上記合わせガラスに190W/m2のキセノン光を20分間照射する。キセノン光を照射するための装置としては、ソーラーシミュレーター装置(例えば朝日分光社製「HAL-320」)等が挙げられる。照度を測定するための装置としては、照度計(例えば、Keysight Technologies社製「KEYSIGHT U1252B、センサーEKO Pyranometer ML-01」)等が挙げられる。なお、合わせガラスの主面と光源(キセノンランプ等)との距離は、照度が190W/m2となるように配置される限り特に限定されない。
【0231】
(3)ISO16940に準拠した中央加振法により、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスの二次共振周波数を求める。この際、キセノン光照射後2分以内(好ましくは1分以内)に該二次共振周波数を求める。
【0232】
(4)上記(1)で求めたキセノン光を照射する前の上記合わせガラスの二次共振周波数と、上記(3)で求めたキセノン光を照射した後の上記合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値を算出する。
【0233】
本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、比較的高い温度領域において、遮音性の変化を抑えることができる。
【0234】
キセノン光を照射する前の上記合わせガラスの二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスの二次共振周波数との差の絶対値は、好ましくは1Hz以上、より好ましくは20Hz以上、好ましくは65Hz以下、より好ましくは45Hz以下、更に好ましくは33Hz以下である。上記差の絶対値が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0235】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、キセノン光を照射する前の上記合わせガラスの20℃での二次共振周波数は、好ましくは530Hz以上、より好ましくは560Hz以上、好ましくは680Hz以下、より好ましくは640Hz以下、更好ましくは599Hz以下である。
【0236】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、キセノン光を照射した後の上記合わせガラスの二次共振周波数は、好ましくは500Hz以上、より好ましくは530Hz以上、好ましくは600Hz以下、より好ましくは565Hz以下である。
【0237】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記合わせガラスの20℃での損失係数は、好ましくは0.26以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下である。
【0238】
上記合わせガラスの20℃での損失係数は、ISO16940に準拠した中央加振法により測定される。
【0239】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点及び遮熱性をより一層高める観点からは、上記合わせガラスの日射透過率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、好ましくは48%以下、より好ましくは44%以下である。
【0240】
上記合わせガラスの日射透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して測定される。
【0241】
図3は、
図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0242】
図3に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11とを備える。中間膜11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0243】
中間膜11の第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11の第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層2の外側の表面2aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0244】
図4は、
図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0245】
図4に示す合わせガラス31Aは、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11Aとを備える。中間膜11Aは、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0246】
中間膜11Aの第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11Aの第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0247】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に係る合わせガラス用中間膜である。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。
【0248】
上記第1の合わせガラス部材は、第1のガラス板であることが好ましい。上記第2の合わせガラス部材は、第2のガラス板であることが好ましい。
【0249】
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材がそれぞれガラス板又はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであり、かつ上記合わせガラスが、上記第1,第2の合わせガラス部材として、少なくとも1枚のガラス板を含むことが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
【0250】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代わる合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0251】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材はそれぞれ、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスであることが好ましい。赤外線透過率が高く、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、上記第1の合わせガラス部材は、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスであることが好ましく、グリーンガラスであることがより好ましい。赤外線透過率が低く、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、上記第2の合わせガラス部材は、グリーンガラス又は熱線吸収板ガラスであることが好ましく、グリーンガラスであることがより好ましい。上記第1の合わせガラス部材が、クリアガラスであり、かつ上記第2の合わせガラス部材が熱線吸収板ガラスであることが好ましい。上記熱線吸収板ガラスは、JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラスである。
【0252】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の各厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記第1,第2の合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記第1,第2の合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0253】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70℃~110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120℃~150℃及び1MPa~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、中間膜における各層を積層してもよい。
【0254】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築物用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0255】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0256】
用いたポリビニルアセタール樹脂では、アセタール化に、炭素数4のn-ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0257】
以下の材料を用意した。
【0258】
(熱可塑性樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂1(ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)、平均重合度3000、水酸基の含有率17モル%、アセチル化度12モル%、アセタール化度(ブチラール化度)71モル%)
ポリビニルアセタール樹脂2(ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)、平均重合度3000、水酸基の含有率18モル%、アセチル化度8モル%、アセタール化度(ブチラール化度)74モル%)
ポリビニルアセタール樹脂3(ポリビニルブチラール樹脂(PVB3)、平均重合度3000、水酸基の含有率19モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)80モル%)
ポリビニルアセタール樹脂4(ポリビニルブチラール樹脂(PVB4)、平均重合度3000、水酸基の含有率15モル%、アセチル化度16モル%、アセタール化度(ブチラール化度)69モル%)
ポリビニルアセタール樹脂5(ポリビニルブチラール樹脂(PVB5)、平均重合度3000、水酸基の含有率18モル%、アセチル化度16モル%、アセタール化度(ブチラール化度)66モル%)
ポリビニルアセタール樹脂6(ポリビニルブチラール樹脂(PVB6)、平均重合度1700、水酸基の含有率30モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)69モル%)
ポリビニルアセタール樹脂7(ポリビニルブチラール樹脂(PVB7)、平均重合度1700、水酸基の含有率31モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)68モル%)
ポリビニルアセタール樹脂8(ポリビニルブチラール樹脂(PVB8)、平均重合度1700、水酸基の含有率29モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)70モル%)
【0259】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
【0260】
(遮熱性物質又は着色剤)
遮熱粒子:
錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子、平均粒子径0.01μm)
セシウムドープ酸化タングステン粒子(CWO粒子、平均粒子径0.02μm)
成分X:
ピグメントブルー15(銅原子を含有するフタロシアニン化合物)
ピグメントグリーン7(銅原子を含有するフタロシアニン化合物)
ピグメントブラック1(カーボンブラック)
フタロシアニン化合物X(バナジウム原子を含有するフタロシアニン化合物、山田化学工業社製「FDN-001」)
その他:
ソルベントレッド146(S.R.146、アントラキノン染料、1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-フェノキシ-9,10-アントラキノン)
ピグメントブルー60(P.B60、アントラキノン染料、6,15-ジヒドロジナフト[2,3-a:2,3-h]フェナジン-5,9,14,18-テトラオン)
【0261】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0262】
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0263】
以下の合わせガラス部材を用意した。
【0264】
(合わせガラス部材)
グリーンガラス1(厚さ2mm、日射透過率(Ts2100)70%)
グリーンガラス2(厚さ1.9mm、日射透過率(Ts2100)70%)
熱線吸収板ガラス(厚さ1.9mm、日射透過率(Ts2100)62%)
【0265】
(実施例1)
第1の層を形成するための組成物の作製:
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た。
【0266】
ポリビニルアセタール樹脂1(PVB1)100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)74重量部
得られる第1の層中で0.2重量%となる量のTinuvin326
得られる第1の層中で0.2重量%となる量のBHT
【0267】
第2の層及び第3の層を形成するための組成物の作製:
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物を得た。
【0268】
ポリビニルアセタール樹脂6(PVB6)100重量部
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)38重量部
得られる第2,第3の層中で0.16重量%となる量のITO粒子
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量のTinuvin326
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量のBHT
【0269】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物と、第2の層及び第3の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第2の層(厚み345μm)/第1の層(厚み110μm)/第3の層(厚み345μm)の積層構造を有する中間膜(厚み800μm)を作製した。
【0270】
合わせガラスの作製:
厚み2mmのグリーンガラス2枚の間に中間膜を挟み、積層体を得た。得られた積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスを得た。合わせガラスをカットし、縦25mm及び横300mmのサイズを有する合わせガラス(1)を得た。また、合わせガラスをカットし、縦500mm及び横500mmのサイズを有する合わせガラス(2)を得た。
【0271】
(実施例2~5及び比較例1)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、第1,第2,第3の層の厚みを表1,2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。
【0272】
(実施例6)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量を表2に示すように変更したこと、遮熱粒子としてCWO粒子を表2に示す含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。
【0273】
(実施例7)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、合わせガラス部材の種類を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。
【0274】
(実施例8)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、合わせガラス部材の種類を表3に示すように変更したこと、遮熱性物質及び着色剤としてピグメントブルー15を表3に示す含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。
【0275】
(実施例9)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、合わせガラス部材の種類を表3に示すように変更したこと、遮熱性物質及び着色剤としてピグメントグリーン7を表3に示す含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。
【0276】
(実施例10)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、合わせガラス部材の種類を表3に示すように変更したこと、遮熱性物質及び着色剤としてピグメントブルー15を表3に示す含有量で用いたこと、遮熱性物質としてITO粒子を表3に示す含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。実施例10では、得られる第2,第3の層中で0.022重量%となる量のピグメントブルー15及び得られる第2,第3の層中で0.16重量%となる量のITO粒子を用いた。
【0277】
(実施例11)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、合わせガラス部材の種類を表4に示すように変更したこと、遮熱性物質及び着色剤としてピグメントブラック1、ソルベントレッド146、ピグメントブルー60を表4に示す含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。実施例11では、得られる第2,第3の層中で0.001重量%となる量のピグメントブラック1、得られる第2,第3の層中で0.0005重量%となる量のソルベントレッド146及び得られる第2,第3の層中で0.0007重量%となる量のピグメントブルー60を用いた。
【0278】
(実施例12)
ポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の含有量、合わせガラス部材の種類を表4に示すように変更した。また、遮熱性物質及び着色剤としてフタロシアニン化合物Xを表4に示す含有量で用い、遮熱性物質としてITO粒子及びCWO粒子を表4に示す含有量で用いた。これら以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。実施例12では、得られる第2,第3の層中で0.24重量%となる量のITO粒子、得られる第2,第3の層中で0.01重量%となる量のCWO粒子及び得られる第2,第3の層中で0.0008重量%となる量のフタロシアニン化合物Xを用いた。
【0279】
(実施例13)
中間膜の一端の厚み及び他端の厚みを表4に示すように変更して、他端の厚みが一端の厚みよりも大きい中間膜(楔状の中間膜)を作製したこと以外は、実施例4と同様にして、中間膜及び合わせガラス(1),(2)を得た。なお、実施例13では、中間膜の一端に対応する合わせガラスの一端から他端に向かって5cmの位置が合わせガラス(1),(2)に存在するように合わせガラスをカットし、この位置において、後述の評価を行った。
【0280】
(実施例14)
赤外線反射層として、Nano90s(住友スリーエム社製、多層樹脂フィルム)を用意した。この赤外線反射層を用いて、第4の層(390μm)/赤外線反射層(100μm)/第2の層(厚み345μm)/第1の層(厚み110μm)/第3の層(厚み345μm)の積層構造を有する中間膜を作製した。また、得られた中間膜及び表5に示す合わせガラス部材を用いて、実施例1と同様にして、合わせガラス(1),(2)を作製した。なお、各層の組成は、表5に示す。
【0281】
(評価)
実施例1~6,13及び比較例1で得られた合わせガラス(1)は、上記合わせガラスXに相当する。
【0282】
(1)日射透過率
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3106:1998に準拠して、得られた合わせガラス(1)の波長300nm~2500nmでの日射透過率(Tds:Solar Direct Transmittance)を測定した。
【0283】
(2)可視光線透過率
分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3211:1998に準拠して、得られた合わせガラス(1)の波長380nm~780nmにおける可視光線透過率(Tv:Visible Transmittance)を測定した。
【0284】
(3)損失係数(20℃)
ISO16940に準拠した中央加振法により、得られた合わせガラス(1)の20℃での損失係数を測定した。
【0285】
(4)キセノン光照射試験
20℃の無風条件下で、得られた合わせガラス(1),(2)に190W/m2のキセノン光を20分間照射した。
【0286】
(4-1)二次共振周波数
キセノン光照射前後の合わせガラス(1)の表面の温度を測定した。また、キセノン光照射前の合わせガラス(1)について、ISO16940に準拠した中央加振法により、20℃での二次共振周波数を求めた。また、キセノン光照射後2分以内に、キセノン光照射後の合わせガラス(1)について、ISO16940に準拠した中央加振法により、二次共振周波数を求めた。得られた二次共振周波数から、キセノン光を照射する前の合わせガラス(1)の二次共振周波数と、キセノン光を照射した後の合わせガラス(1)の二次共振周波数との差の絶対値を算出した。
【0287】
(4-2)音響透過損失(4000Hz)
音源室である第1の残響室と、受音室である第2の残響室とが連結されたISO 10140-5に準拠した残響室を用意した。キセノン光照射前の合わせガラス(2)を、第1の残響室と、第2の残響室との間に設置した。リオン社の音響透過損失測定装置「インテンシティプローブSI-50、マルチチャンネルアナライザーSA-02」を用いて、20℃及び周波数4000Hzでの音響透過損失測定を測定した。具体的には、JIS A1441-1に準拠した音響透過損失(dB)をインテンシティ法で測定した。中心周波数は1/3オクターブバンドで測定した。また、キセノン光照射後2分以内に、キセノン光照射後の合わせガラス(2)についても同様にして、周波数4000Hzでの音響透過損失(dB)を測定した。得られた音響透過損失から、キセノン光を照射する前の合わせガラス(2)の音響透過損失と、キセノン光を照射した後の合わせガラス(2)の音響透過損失との差の絶対値を算出した。
【0288】
詳細及び結果を下記の表1~6に示す。なお、表中、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤の記載は省略した。また、表中、遮熱性物質又は着色剤の含有量は、第2,第3の層100重量%中での含有量を示す。
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
【符号の説明】
【0295】
1…第1の層
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第2の層
2a…外側の表面
3…第3の層
3a…外側の表面
11…中間膜
11A…中間膜(第1の層)
11a…第1の表面
11b…第2の表面
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31,31A…合わせガラス