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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】トランススプライシング分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240927BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240927BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/09 Z
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N7/01
A61K31/7105
A61K31/711
A61K35/76
A61K48/00
A61P27/02
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020557945
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019027981
(87)【国際公開番号】W WO2019204514
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】62/658,658
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/658,667
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(73)【特許権者】
【識別番号】520399763
【氏名又は名称】アスィディアン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン フィリップ アール.
(72)【発明者】
【氏名】シュネップ ブルース シー.
(72)【発明者】
【氏名】ベネット ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーリー スコット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー クリシュナ ジャワハルラール
(72)【発明者】
【氏名】スン ジュンウェイ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/087900(WO,A1)
【文献】特表2016-516424(JP,A)
【文献】Colella, P. et al.,Efficient gene delivery to the coneenriched pig retina by dual AAV vectors,Investigative Ophthalmology and Visual Science,2014年,Vol. 55(13),URL: https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2268747,[retrieved on 2023.5.17]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3'から5'の方向で機能的に連結された、
(a)ABCA4イントロン23に結合す結合ドメインであって、該結合ドメインが、100200個のヌクレオチドの長さの範囲の配列を含み、かつSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410またはヌクレオチド801~990内の少なくとも100個の連続ヌクレオチドを含む結合部位に対して90%~100%相補的である、結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介するプライシングドメインであって、5’スプライス部位を含む、スプライシングドメイン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられ、ABCA4における変異が修正される、
前記核酸トランススプライシング分子。
【請求項2】
前記変異がABCA4エキソン1~23またはイントロン1~23のうちのいずれか1つに存在している、請求項1記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項3】
結合ドメインが、
(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410;
(b)SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950;または
(c)SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990
内の少なくとも100個の連続ヌクレオチドを含む結合部位に対して90%~100%相補的である
請求項1または2記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項4】
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)ABCA4イントロン22に結合する結合ドメインであって、該結合ドメインが、100200個のヌクレオチドの長さの範囲の配列を含み、かつSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1,350内の少なくとも100個の連続ヌクレオチドを含む結合部位に対して90%~100%相補的である、結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介すスプライシングドメインであって、5’スプライス部位を含む、スプライシングドメイン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
【請求項5】
結合ドメインが125~150個のヌクレオチドの長さの範囲の、150~175個のヌクレオチドの長さの範囲の、175~200個のヌクレオチドの長さの範囲のまたは150個のヌクレオチドの長さの配列を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項6】
結合ドメインが、結合部位の20個またはそれより多くの連続ヌクレオチドに100%相補的である20個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項7】
結合ドメインが、結合部位の50個またはそれより多くの連続ヌクレオチドに100%相補的である50個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、請求項6記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項8】
結合ドメインが、結合部位の100個またはそれより多くの連続ヌクレオチドに100%相補的である100個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、請求項7記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項9】
結合ドメインが、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190;
(b)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320;または
(c)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350
内の少なくとも100個の連続ヌクレオチドを含む結合部位に対して90%~100%相補的である
請求項4または5記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項10】
結合ドメインが、結合部位に95%~100%相補的である、請求項1~9のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項11】
(i)コードドメインがcDNA配列である、
(ii)コードドメインが、天然に存在する配列を含む、
(iii)コードドメインがコドン最適化配列を含む、
(iv)核酸トランススプライシング分子が、前記スプライシングドメインとスペーサー配列を含む人工イントロンを含む
(v)核酸トランススプライシング分子が、3,000~4,000個のヌクレオチドの長さである、
(vi)ABCA4遺伝子における変異がスターガルト病と関連している、および/または
(vii)変異が光受容体細胞において発現されている、
請求項1~10のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子。
【請求項12】
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)100~200個のヌクレオチドの長さの範囲の配列を含み、かつSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190内の結合部位においてABCA4イントロン22に結合す結合ドメインであって、該結合部位の50個またはそれより多くのヌクレオチドに100%相補的である50個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロンであって、スプライシングドメインが5’スプライス部位を含む、人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子
【請求項13】
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)100~200個のヌクレオチドの長さの範囲の配列を含み、かつSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320内の結合部位においてABCA4イントロン22に結合する結合ドメインであって、該結合部位の50個またはそれより多くのヌクレオチドに100%相補的である50個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロンであって、スプライシングドメインが5’スプライス部位を含む、人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
【請求項14】
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)100~200個のヌクレオチドの長さの範囲の配列を含み、かつSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350内の結合部位においてABCA4イントロン22に結合する結合ドメインであって、該結合部位の50個またはそれより多くのヌクレオチドに100%相補的である50個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロンであって、スプライシングドメインが5’スプライス部位を含む、人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子をコードするDNA。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子をコードする、プロウイルスプラスミド。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子をコードする、アデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項18】
光受容体細胞を優先的に標的とする、および/またはAAV5カプシドタンパク質、AAV8カプシドタンパク質、AAV8(b)カプシドタンパク質、もしくはAAV9カプシドタンパク質を含む、請求項17記載のAAV。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子、請求項15記載のDNA、請求項16記載のプロウイルスプラスミド、または請求項17もしくは18記載のAAVを含む、薬学的組成物。
【請求項20】
対象の標的細胞内のABCA4遺伝子における変異を修正するための医薬の調製における、請求項19記載の薬学的組成物の使用。
【請求項21】
それを必要とする対象においてABCA4エキソン1~23のうちのいずれか1つまたは複数における変異を修正するための医薬の調製における、請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物の使用。
【請求項22】
ABCA4における変異と関連している障害を有する対象を処置するための医薬の調製における、請求項19記載の薬学的組成物の使用。
【請求項23】
ABCA4エキソン1~23またはイントロン1~23のうちのいずれか1つまたは複数における変異と関連している障害を有する対象を処置するための医薬の調製における、請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物の使用。
【請求項24】
(a)対象がスターガルト病を有している、
(b)前記組成物が、網膜下注射、硝子体内注射、もしくは静脈内注射による投与用に製剤化され、および/または
(c)対象が前記医薬の投与後においてABCA4タンパク質発現の少なくとも10%の増大を示す、
請求項2023のいずれか一項記載の使用。
【請求項25】
AAV 5'ITR、調節配列の機能的制御下の請求項1~14のいずれか一項記載の核酸トランススプライシング分子または請求項15記載のDNA、およびAAV3'ITRを含むゲノムベクターが内部にパッケージングされているアセンブルされたカプシドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、ともに2018年4月17日に出願された米国特許仮出願第62/658,658号および同第62/658,667号の優先権の利益を主張する。これらの特許仮出願の内容はどちらも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子形式にて提出されており参照によりその全体が本明細書に組み入れられる配列表を含む。2019年3月17日に作成された前記ASCIIコピーは、51219-016WO2_Sequence_Listing_04.16.19_ST25という名称であり、608,489バイトのサイズである。
【0003】
発明の分野
一般に、本発明は、ABCA4トランススプライシング分子およびCEP290トランススプライシング分子を特色とする。
【背景技術】
【0004】
背景
スターガルト病は、急速に、または長年にわたって起こり得る中心の視野および色覚の低下を特徴とする進行性の眼疾患である。周辺視野は一般的に損なわれないままである。ABCA4遺伝子の全長上の種々の変異がスターガルト病を引き起こし得る。スターガルト病のための現在開発中の処置としては、ABCA4のレンチウイルスによる送達、ビタミンAの化学修飾バリアントおよび網膜色素上皮細胞の治療が挙げられる。
【0005】
レーバー先天性黒内障(Leber congenital amourosis)10型(LCA 10)は、幼児期に始まる重度の視力障害を特徴とする病態である。この視力低下は毛様体の欠陥による光受容体の死滅と関連している。LCA 10と関連している最も一般的な公知の変異は、CEP290遺伝子のイントロン26のヌクレオチド1,655のアデニンがグアニンで置き換えられている点変異であり、これにより、エキソン26とエキソン27の間で隠れ終止コドンがスプライシングされるスプライス欠陥がもたらされる。この常染色体性劣性変異は非機能性の中心体タンパク質の産生を引き起こし、LCA 10に特徴的な失明を引き起こす。
【0006】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター媒介性遺伝子治療は、ヒトにおいて証明された安全性プロファイルを有し、さまざまな遺伝子欠陥を処置するための将来有望なアプローチである。しかしながら、AAVベクターは、ウイルス生物学によって決定される制限、例えば、ABCA4遺伝子またはCEP290遺伝子を置き換えるのに必要なものなどの大型の核酸分子の送達の障害となり得るパッケージングサイズ制約を有し得る。したがって、ABCA4内およびCEP290内における変異を修正するための組成物および方法の必要性が本分野において存在している。
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明は、核酸トランススプライシング分子およびABCA4遺伝子内またはCEP290遺伝子における変異を修正するためのその使用方法に関する。本明細書において提供する組成物および方法は、ABCA4内における変異と関連している疾患、例えばスターガルト病(例えば、スターガルト病1型)、またはCEP290における変異と関連している疾患、例えばLCA(例えば、LCA10)の処置または予防に有用であり得る。
【0008】
ABCA4
第1の局面において、本発明はABCA4トランススプライシング分子を特色とする。例えば、本発明により、3'から5'の方向または5'から3'の方向のいずれかで機能的に連結された、(a)イントロン19、22、23または24からなる群より選択される標的ABCA4イントロンに結合するように構成された結合ドメイン;(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および(c)機能性ABCA4エキソンを含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと該標的ABCA4イントロンに隣接している内在性ABCA4エキソンとをトランススプライシングするように構成されており、それにより、該内在性ABCA4エキソンが該機能性ABCA4エキソンで置き換えられ、ABCA4内における変異が修正される、核酸トランススプライシング分子を提供する。
【0009】
いくつかの態様では、結合ドメインが変異の3'側の標的ABCA4イントロンに結合し、該変異がABCA4エキソン1~24またはイントロン1~24のうちのいずれか1つに存在している。いくつかの態様では、標的ABCA4イントロンがイントロン19であり、変異がABCA4エキソン1~19またはイントロン1~19のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン1~19を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:25のヌクレオチド990~2,174のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,670~2,174のうちのいずれか1個もしくは複数個、例えばSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,810~2,000のうちのいずれか1個もしくは複数個、例えばSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,870~2,000のうちのいずれか1個もしくは複数個、例えばSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,920~2,000のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン19に結合するように構成される。
【0010】
いくつかの態様では、標的ABCA4イントロンがイントロン23であり、変異がABCA4エキソン1~23またはイントロン1~23のうちのいずれか1つに存在しており、および/またはコードドメインがABCA4エキソン1~23を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド80~570またはヌクレオチド720~1,081のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン23に結合するように構成される。
【0011】
いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位(例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410を包含する1~200、6~150、12~100または20~80個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410を包含する1~6、6~12、12~18、18~24、24~50、50~100、100~150または150~200個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410を包含する少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個または少なくとも200個のヌクレオチドの結合部位)においてABCA4イントロン23に結合するように構成される。例えば、特定の態様では、結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちの6個またはそれより多くを含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的(例えば、アンチセンス)である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちの1個または複数個を有するABCA4の結合部位の対応する相補的ヌクレオチドセットに相補的である連続核酸残基セットを含み、ここで、該結合ドメインの該連続核酸残基セットは6~500個の残基の長さ(例えば、8~400、12~300、16~200、24~280または50~150個の残基の長さ、例えば、100~200、6~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~80、80~100、100~120、120~150、150~200または200~300個の残基の長さ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160個またはそれより多くの残基の長さ)である。
【0012】
いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位(例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950を包含する1~200、6~150、12~100または20~80個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950を包含する1~6、6~12、12~18、18~24、24~50、50~100、100~150または150~200個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950を包含する少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個または少なくとも200個のヌクレオチドの結合部位)においてABCA4イントロン23に結合するように構成される。例えば、特定の態様では、結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちの6個またはそれより多くを含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的(例えば、アンチセンス)である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちの1個または複数個を有するABCA4の結合部位の対応する相補的ヌクレオチドセットに相補的である連続核酸残基セットを含み、ここで、該結合ドメインの該連続核酸残基セットは6~500個の残基の長さ(例えば、8~400、12~300、16~200、24~280または50~150個の残基の長さ、例えば、100~200、6~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~80、80~100、100~120、120~150、150~200または200~300個の残基の長さ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160個またはそれより多くの残基の長さ)である。
【0013】
いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位(例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990を包含する1~200、6~150、12~100または20~80個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990を包含する1~6、6~12、12~18、18~24、24~50、50~100、100~150または150~200個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990を包含する少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個または少なくとも200個のヌクレオチドの結合部位)においてABCA4イントロン23に結合するように構成される。例えば、特定の態様では、結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちの6個またはそれより多くを含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的(例えば、アンチセンス)である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちの1個または複数個を有するABCA4の結合部位の対応する相補的ヌクレオチドセットに相補的である連続核酸残基セットを含み、ここで、該結合ドメインの該連続核酸残基セットは6~500個の残基の長さ(例えば、8~400、12~300、16~200、24~280または50~150個の残基の長さ、例えば、100~200、6~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~80、80~100、100~120、120~150、150~200または200~300個の残基の長さ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160個またはそれより多くの残基の長さ)である。
【0014】
他の態様では、標的ABCA4イントロンがイントロン24であり、変異がABCA4エキソン1~24またはイントロン1~24のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン1~24を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:30のヌクレオチド600~1,250またはヌクレオチド1,490~2,660のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン24に結合するように構成される。他の態様では、結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド1,000~1,200のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0015】
いくつかの態様では、結合ドメインが変異の5'側の標的ABCA4イントロンに結合し、該変異がABCA4エキソン23~50またはイントロン22~49のうちのいずれか1つに存在している。例えば、いくつかの態様では、標的ABCA4イントロンがイントロン23であり、変異がABCA4エキソン24~50またはイントロン23~49のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン24~50を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド80~1,081のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン23に結合するように構成される。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド230~1,081のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド250~400のうちのいずれか1個もしくは複数個またはSEQ ID NO:29のヌクレオチド690~850のうちのいずれか1個もしくは複数個を含む。
【0016】
いくつかの態様では、標的ABCA4イントロンがイントロン24であり、変異がABCA4エキソン25~50またはイントロン24~49のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン25~50を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:30のヌクレオチド1~250、ヌクレオチド300~2,100またはヌクレオチド2,200~2,692のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン24に結合するように構成される。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド360~610のうちのいずれか1個または複数個を含む。他の態様では、結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド750~1,110のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0017】
別の局面において、本発明は、5'から3'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド60~570、600~800または900~1,350のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメイン;(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および(c)機能性ABCA4エキソン23~50を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン22とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン23~50が該機能性ABCA4エキソン23~50で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を特色とする。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:28のヌクレオチド70~250のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0018】
また別の局面において、本発明は、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1~510または880~1,350のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメイン;(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を特色とする。
【0019】
いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位(例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190を包含する1~200、6~150、12~100または20~80個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190を包含する1~6、6~12、12~18、18~24、24~50、50~100、100~150または150~200個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190を包含する少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個または少なくとも200個のヌクレオチドの結合部位)においてABCA4イントロン22に結合するように構成される。特定の態様では、結合部位がSEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちの6個またはそれより多くを含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的(例えば、アンチセンス)である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちの1個または複数個を有するABCA4の結合部位の対応する相補的ヌクレオチドセットに相補的である連続核酸残基セットを含み、ここで、該結合ドメインの該連続核酸残基セットは6~500個の残基の長さ(例えば、8~400、12~300、16~200、24~280または50~150個の残基の長さ、例えば、100~200、6~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~80、80~100、100~120、120~150、150~200または200~300個の残基の長さ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160個またはそれより多くの残基の長さ)である。
【0020】
いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320を包含する1~200、6~150、12~100または20~80個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320を包含する1~6、6~12、12~18、18~24、24~50、50~100、100~150または150~200個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320を包含する少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個または少なくとも200個のヌクレオチドの結合部位)に結合するように構成される。特定の態様では、結合部位がSEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちの6個またはそれより多くを含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的(例えば、アンチセンス)である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちの1個または複数個を有するABCA4の結合部位の対応する相補的ヌクレオチドセットに相補的である連続核酸残基セットを含み、ここで、該結合ドメインの該連続核酸残基セットは6~500個の残基の長さ(例えば、8~400、12~300、16~200、24~280または50~150個の残基の長さ、例えば、100~200、6~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~80、80~100、100~120、120~150、150~200または200~300個の残基の長さ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160個またはそれより多くの残基の長さ)である。
【0021】
いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350を包含する1~200、6~150、12~100または20~80個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350を包含する1~6、6~12、12~18、18~24、24~50、50~100、100~150または150~200個のヌクレオチドの結合部位、例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350の範囲内の、あるいはSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350を包含する少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個または少なくとも200個のヌクレオチドの結合部位)に結合するように構成される。特定の態様では、結合部位がSEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちの6個またはそれより多くを含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的(例えば、アンチセンス)である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちの1個または複数個を有するABCA4の結合部位の対応する相補的ヌクレオチドセットに相補的である連続核酸残基セットを含み、ここで、該結合ドメインの該連続核酸残基セットは6~500個の残基の長さ(例えば、8~400、12~300、16~200、24~280または50~150個の残基の長さ、例えば、100~200、6~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~80、80~100、100~120、120~150、150~200または200~300個の残基の長さ、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160個またはそれより多くの残基の長さ)である。
【0022】
前記の任意の態様では、結合ドメインが20~1,000個のヌクレオチドの長さ(例えば、25~900個のヌクレオチドの長さ、30~800個のヌクレオチドの長さ、40~700個のヌクレオチドの長さ、50~600個のヌクレオチドの長さ、75~500個のヌクレオチドの長さ、100~400個のヌクレオチドの長さ、125~200個のヌクレオチドの長さ、または約150個のヌクレオチドの長さ、例えば、20~30個のヌクレオチドの長さ、30~40個のヌクレオチドの長さ、40~50個のヌクレオチドの長さ、50~75個のヌクレオチドの長さ、75~100個のヌクレオチドの長さ、125~150個のヌクレオチドの長さ、150~175個のヌクレオチドの長さ、175~200個のヌクレオチドの長さ、200~250個のヌクレオチドの長さ、250~500個のヌクレオチドの長さ、500~750個のヌクレオチドの長さ、または750~1,000個のヌクレオチドの長さ)であり得る。
【0023】
いくつかの態様では、コードドメインがcDNA配列である。いくつかの態様では、コードドメインが、天然に存在する配列を含む。他の態様では、コードドメインがコドン最適化配列を含む。いくつかの態様では、トランススプライシング分子が、スペーサー配列を含む人工イントロンを含む。
【0024】
前記の任意の方法のいくつかの態様では、核酸トランススプライシング分子が3,000~4,000個のヌクレオチドの長さ(例えば、3,100~3,900個のヌクレオチドの長さ、3,200~3,800個のヌクレオチドの長さ、3,300~3,700個のヌクレオチドの長さ、3,400~3,600個のヌクレオチドの長さ、または約3,500個のヌクレオチドの長さ、例えば、3,000~3,100個のヌクレオチドの長さ、3,100~3,200個のヌクレオチドの長さ、3,200~3,300個のヌクレオチドの長さ、3,300~3,400個のヌクレオチドの長さ、3,400~3,500個のヌクレオチドの長さ、3,500~3,600個のヌクレオチドの長さ、3,600~3,700個のヌクレオチドの長さ、3,800~3,900個のヌクレオチドの長さ、または3,900~4,000個のヌクレオチドの長さ)である。
【0025】
いくつかの態様では、ABCA4遺伝子における変異がスターガルト病と関連している。いくつかの態様では、スターガルト病と関連しているABCA4遺伝子における変異が光受容体細胞において発現される。
【0026】
別の局面では、本明細書において、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を提供する。
【0027】
別の局面において、本発明により、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を提供する。
【0028】
別の局面では、本明細書において、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を提供する。
【0029】
別の局面において、本発明により、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を提供する。
【0030】
別の局面において、本発明は、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を特色とする。
【0031】
また別の局面では、本明細書において、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、核酸トランススプライシング分子を提供する。
【0032】
別の局面において、本発明は、前記の任意の態様の核酸トランススプライシング分子を含むプロウイルスプラスミドを特色とする。
【0033】
また別の局面において、本発明は、前記の任意の態様の核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)を特色とする。いくつかの態様では、AAVが光受容体細胞を優先的に標的とする。いくつかの態様では、AAVがAAV5カプシドタンパク質、AAV8カプシドタンパク質、AAV8(b)カプシドタンパク質またはAAV9カプシドタンパク質を含む。
【0034】
別の局面において、本発明は、前記の任意の局面の核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミドまたはAAVを含む薬学的組成物を特色とする。
【0035】
別の局面では、本明細書において、前記の任意の態様の任意の5'核酸トランススプライシング分子および前記の任意の態様の3'核酸トランススプライシング分子を有する薬学的組成物を提供する。
【0036】
また別の局面において、本発明は、前記の任意の局面の薬学的組成物を対象に投与することにより対象の標的細胞内のABCA4遺伝子における変異を修正する方法を特色とする。
【0037】
別の局面では、本明細書において、前記の任意の態様の核酸トランススプライシング分子を有する薬学的組成物を対象に投与することにより、それを必要とする対象においてABCA4エキソン1~24のうちのいずれか1つまたは複数における変異を修正する方法を提供する。特定の態様では、本発明のABCA4トランススプライシング分子によって修正される変異型ABCA4エキソンがエキソン2である。付加的または代替的に、本発明のABCA4トランススプライシング分子によって修正される変異型ABCA4エキソンはエキソン3である。付加的または代替的に、本発明のABCA4トランススプライシング分子によって修正される変異型ABCA4エキソンはエキソン4である。
【0038】
別の局面において、本発明は、前記の任意の態様の核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を対象に投与することにより、それを必要とする対象においてABCA4エキソン23~50のうちのいずれか1つまたは複数における変異を修正する方法を含む。
【0039】
別の局面において、本発明は、前記の任意の態様の5'核酸トランススプライシング分子および前記の任意の態様の3'核酸トランススプライシング分子を有する薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象においてABCA4エキソン1~24のうちのいずれか1つにおける変異およびエキソン23~50のうちのいずれか1つにおける第2の変異を修正する方法を特色とする。
【0040】
また別の態様では、本発明は、前記の任意の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、ABCA4内における変異と関連している障害を有する対象を処置する方法を特色とする。いくつかの態様では、ABCA4エキソン1~24またはイントロン1~24のうちのいずれか1つまたは複数における変異と関連している障害を有する対象が、前記の任意の態様の核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を投与することによって処置される。いくつかの態様では、ABCA4エキソン23~50またはイントロン22~49のうちのいずれか1つまたは複数における変異と関連している障害を有する対象が、前記の任意の態様の核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を投与することによって処置される。
【0041】
別の局面において、本発明は、前記の任意の態様の5'核酸トランススプライシング分子および前記の任意の態様の3'核酸トランススプライシング分子を有する薬学的組成物を対象に投与することにより、ABCA4エキソン1~24のうちのいずれか1つにおける第1の変異とエキソン23~50のうちのいずれか1つにおける第2の変異とに関連している障害を有する対象を処置する方法を特色とする。
【0042】
前記の任意の方法において、対象はスターガルト病を有し得る。いくつかの態様では、該組成物が網膜下注射、硝子体内注射または静脈内注射によって投与される。
【0043】
前記の任意の方法のいくつかの態様では、対象が、投与後においてABCA4タンパク質発現の少なくとも1%の増大(例えば、投与後において、例えば投与前の同じ対象におけるABCA4タンパク質発現と比べて、あるいは参照試料、参照対象または参照対象群と比べてABCA4タンパク質発現の1~5%の増大、5~10%、10~15%の増大、15~20%の増大、20~25%の増大、25~50%の増大または50~100%の増大)を示す。
【0044】
CEP290
別の局面において、本発明はCEP290トランススプライシング分子を特色とする。例えば、本発明により、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)SEQ ID NO:85のヌクレオチド4,800~5,838のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてCEP290イントロン26に結合するように構成された結合ドメイン;(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および(c)機能性CEP290エキソン2~26を含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性CEP290エキソン27とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性CEP290エキソン2~26が該機能性CEP290エキソン2~26で置き換えられ、病原性点変異が修正される、核酸トランススプライシング分子を提供する。いくつかの態様では、病原性点変異は、SEQ ID NO:85のヌクレオチド1,655におけるAからGへの変異である。
【0045】
いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:85のヌクレオチド4,980~5,838のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,348~5,838のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,348~5,700のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,400~5,600のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,460~5,560のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,500を含む。
【0046】
別の局面において、本発明は、3'から5'の方向に機能的に連結された、(a)標的イントロン27、28、29または30のうちのいずれか1つにおいてCEP290に結合するように構成された結合ドメイン;(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および(c)該標的イントロンの5'側の機能性CEP290エキソンを含むコードドメインを含む、核酸トランススプライシング分子であって、該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性CEP290とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、該標的イントロンの5'側の内在性CEP290エキソンが該機能性CEP290エキソンで置き換えられ、病原性点変異が修正される、核酸トランススプライシング分子を特色とする。いくつかの態様では、病原性点変異は、SEQ ID NO:85のヌクレオチド1,655におけるAからGへの変異である。
【0047】
いくつかの態様では、標的イントロンがイントロン27であり、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~27を含み、核酸トランススプライシング分子が、内在性CEP290エキソン2~27を機能性CEP290エキソン2~27で置き換えるように構成される。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:86のヌクレオチド120~680、ヌクレオチド710~2,200またはヌクレオチド2,670~2,910のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン27に結合するように構成される。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:86のヌクレオチド790~2,100のうちのいずれか1つまたは複数、例えばSEQ ID NO:86のヌクレオチド1,020~1,630のうちのいずれか1個または複数個を含む。他の態様では、結合部位がSEQ ID NO:86のヌクレオチド1,670~2,000のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0048】
いくつかの態様では、標的イントロンがイントロン28であり、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~28を含み、核酸トランススプライシング分子が、内在性CEP290エキソン2~28を機能性CEP290エキソン2~28で置き換えるように構成される。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:87のヌクレオチド1~390、ヌクレオチド410~560またはヌクレオチド730~937のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン28に結合するように構成される。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:87のヌクレオチド1~200のうちのいずれか1個または複数個を含む。他の態様では、結合部位がSEQ ID NO:87のヌクレオチド720~900のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0049】
いくつかの態様では、標的イントロンがイントロン29であり、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~29を含み、核酸トランススプライシング分子が、内在性CEP290エキソン2~29を機能性CEP290エキソン2~29で置き換えるように構成される。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:88のヌクレオチド1~600、ヌクレオチド720~940またはヌクレオチド1,370~1,790のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン29に結合するように構成される。
【0050】
いくつかの態様では、標的イントロンがイントロン30であり、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~30を含み、核酸トランススプライシング分子が、内在性CEP290エキソン2~30を機能性CEP290エキソン2~30で置き換えるように構成される。いくつかの態様では、結合ドメインが、SEQ ID NO:89のヌクレオチド880~1,240のうちのいずれか1つまたは複数、例えばSEQ ID NO:89のヌクレオチド950~1,240のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:89のヌクレオチド1,060~1,240のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン29に結合するように構成される。
【0051】
前記の任意の態様では、結合ドメインが20~1,000個のヌクレオチドの長さ(例えば、25~900個のヌクレオチドの長さ、30~800個のヌクレオチドの長さ、40~700個のヌクレオチドの長さ、50~600個のヌクレオチドの長さ、75~500個のヌクレオチドの長さ、100~400個のヌクレオチドの長さ、125~200個のヌクレオチドの長さ、または約150個のヌクレオチドの長さ、例えば、20~30個のヌクレオチドの長さ、30~40個のヌクレオチドの長さ、40~50個のヌクレオチドの長さ、50~75個のヌクレオチドの長さ、75~100個のヌクレオチドの長さ、125~150個のヌクレオチドの長さ、150~175個のヌクレオチドの長さ、175~200個のヌクレオチドの長さ、200~250個のヌクレオチドの長さ、250~500個のヌクレオチドの長さ、500~750個のヌクレオチドの長さ、または750~1,000個のヌクレオチドの長さ)である。
【0052】
いくつかの態様では、コードドメインがcDNA配列である。いくつかの態様では、コードドメインが、天然に存在する配列である。他の態様では、コードドメインがコドン最適化配列である。
【0053】
いくつかの態様では、人工イントロンが、人工イントロンとスペーサー配列で構成されている。
【0054】
前記の任意の態様では、核酸トランススプライシング分子が3,000~4,000個のヌクレオチドの長さであり得る。
【0055】
前記の任意の態様では、変異型CEP290エキソンがLCA 10と関連し得る。いくつかの態様では、LCA 10と関連している変異型CEP290エキソンが光受容体細胞において発現される。
【0056】
本発明の別の局面では、本明細書において、前記の任意の局面の核酸トランススプライシング分子を含むプロウイルスプラスミドを提供する。
【0057】
また別の局面において、本発明により、前記の任意の局面の核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)を提供する。いくつかの態様では、AAVが光受容体細胞を優先的に標的とする。いくつかの態様では、AAVがAAV5カプシドタンパク質、AAV8カプシドタンパク質、AAV8(b)カプシドタンパク質またはAAV9カプシドタンパク質を含む。
【0058】
別の局面において、本発明は、前記の任意の局面の核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミドまたはAAVを含む薬学的組成物を特色とする。
【0059】
別の局面では、本明細書において特色とするのは、前記の任意の局面の核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミド、AAVまたは薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象の標的細胞内のCEP290イントロン26における病原性点変異を修正する方法である。いくつかの態様では、対象がLCA 10を有する。
【0060】
また別の局面において、本発明により、前記の任意の局面の核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミド、AAVまたは薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、CEP290イントロン26における病原性点変異によって引き起こされるLCA 10を有する対象を処置する方法を提供する。
【0061】
前記の任意の方法において、病原性点変異はCEP290イントロン26(SEQ ID NO:85)のヌクレオチド1,655におけるAからGへの変異であり得る。いくつかの態様では、核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミド、AAVまたは薬学的組成物が網膜下注射、硝子体内注射または静脈内注射によって投与される。
【0062】
別の局面において、本発明により、前述の核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミド、AAVまたは薬学的組成物のうちのいずれか1種類または複数種を備えたキットであって、対象のCEP290遺伝子における変異(例えば、障害、例えばLCA 10と関連している変異)を修正するための該1種類または複数の核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミド、AAVまたは薬学的組成物を使用するための使用説明書をさらに含むキットを提供する。
[本発明1001]
3'から5'の方向または5'から3'の方向のいずれかで機能的に連結された、
(a)イントロン19、23または24からなる群より選択される標的ABCA4イントロンに結合するように構成された結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および
(c)機能性ABCA4エキソンを含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと該標的ABCA4イントロンに隣接している内在性ABCA4エキソンとをトランススプライシングするように構成されており、それにより、該内在性ABCA4エキソンが該機能性ABCA4エキソンで置き換えられ、ABCA4における変異が修正される、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1002]
結合ドメインが変異の3'側の標的ABCA4イントロンに結合し、該変異がABCA4エキソン1~24またはイントロン1~24のうちのいずれか1つに存在している、本発明1001の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1003]
標的ABCA4イントロンがイントロン19であり、変異がABCA4エキソン1~19またはイントロン1~19のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン1~19を含む、本発明1002の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1004]
結合ドメインが、SEQ ID NO:25のヌクレオチド990~2,174のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン19に結合するように構成されている、本発明1003の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1005]
結合部位がSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,670~2,174のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1004の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1006]
結合部位がSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,810~2,000のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1005の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1007]
結合部位がSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,870~2,000のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1006の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1008]
結合部位がSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,920~2,000のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1007の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1009]
標的ABCA4イントロンがイントロン23であり、変異がABCA4エキソン1~23またはイントロン1~23のうちのいずれか1つまたは複数に存在している、本発明1002の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1010]
コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~23を含む、本発明1009の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1011]
結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド80~570またはヌクレオチド720~1,081のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン23に結合するように構成されている、本発明1010の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1012]
結合ドメインが、
(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちのいずれか1個もしくは複数個;
(b)SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちのいずれか1個もしくは複数個;または
(c)SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちのいずれか1個もしくは複数個
を含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成されている、
本発明1011の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1013]
結合部位が、
(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちの6個またはそれより多く;
(b)SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちの6個またはそれより多くのヌクレオチド;あるいは
(c)SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちの6個またはそれより多くのヌクレオチド
を含む、
本発明1012の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1014]
結合ドメインが、結合部位の前記6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、本発明1013の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1015]
標的ABCA4イントロンがイントロン24であり、変異がABCA4エキソン1~24またはイントロン1~24のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン1~24を含む、本発明1002の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1016]
結合ドメインが、SEQ ID NO:30のヌクレオチド600~1,250またはヌクレオチド1,490~2,660のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン24に結合するように構成されている、本発明1011の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1017]
結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド1,000~1,200のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1012の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1018]
結合ドメインが変異の5'側の標的ABCA4イントロンに結合し、該変異がABCA4エキソン23~50またはイントロン22~49のうちのいずれか1つに存在している、本発明1001の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1019]
標的ABCA4イントロンがイントロン23であり、変異がABCA4エキソン24~50またはイントロン23~49のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン24~50を含む、本発明1014の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1020]
結合ドメインが、SEQ ID NO:29のヌクレオチド80~1,081のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン23に結合するように構成されている、本発明1015の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1021]
結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド230~1,081のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1016の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1022]
結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド250~400のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1017の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1023]
結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド690~850のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1017の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1024]
標的ABCA4イントロンがイントロン24であり、変異がABCA4エキソン25~50またはイントロン24~49のうちのいずれか1つに存在しており、コードドメインがABCA4エキソン25~50を含む、本発明1014の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1025]
結合ドメインが、SEQ ID NO:30のヌクレオチド1~250、ヌクレオチド300~2,100またはヌクレオチド2,200~2,692のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてイントロン24に結合するように構成されている、本発明1020の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1026]
結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド360~610のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1021の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1027]
結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド750~1,110のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1021の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1028]
5'から3'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド60~570、600~800または900~1,350のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および
(c)機能性ABCA4エキソン23~50を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン22とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン23~50が該機能性ABCA4エキソン23~50で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1029]
結合部位がSEQ ID NO:28のヌクレオチド70~250のうちのいずれか1個または複数個を含む、本発明1024の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1030]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1~510または880~1,350のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1031]
結合ドメインが、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちのいずれか1個または複数個;
(b)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちのいずれか1個または複数個;
(c)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちのいずれか1個または複数個
を含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成されている、
本発明1030の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1032]
結合部位が、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちの6個またはそれより多く;
(b)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちの6個またはそれより多く;
(c)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちの6個またはそれより多く
を含む、
本発明1031の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1033]
結合ドメインが、結合部位の前記6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、本発明1032の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1034]
結合ドメインが、100~200個のヌクレオチドの長さである、本発明1001~1033のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1035]
コードドメインがcDNA配列である、本発明1001~1034のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1036]
コードドメインが、天然に存在する配列を含む、本発明1001~1034のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1037]
コードドメインがコドン最適化配列を含む、本発明1001~1034のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1038]
人工イントロンがスペーサー配列を含む、本発明1001~1037のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1039]
3,000~4,000個のヌクレオチドの長さである、本発明1001~1038のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1040]
ABCA4遺伝子における変異がスターガルト病と関連している、本発明1001~1039のいずれかの核酸トランススプライシング分子。
[本発明1041]
スターガルト病と関連しているABCA4遺伝子における変異が光受容体細胞において発現されている、本発明1040の核酸トランススプライシング分子。
[本発明1042]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド261~410のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1043]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド801~950のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1044]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:29のヌクレオチド841~990のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン23に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン24とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~23が該機能性ABCA4エキソン1~23で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1045]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1041~1190のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1046]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1171~1320のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1047]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:28のヌクレオチド1201~1350のうちの6個またはそれより多くを含む結合部位においてABCA4イントロン22に結合するように構成された結合ドメインであって、該結合部位の該6個またはそれより多くのヌクレオチドに相補的である6個またはそれより多くの連続核酸残基を含む、結合ドメイン;
(b)スプライシングドメインを含む人工イントロン;および
(c)機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性ABCA4エキソン23とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性ABCA4エキソン1~22が該機能性ABCA4エキソン1~22で置き換えられる、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1048]
本発明1001~1047のいずれかの核酸トランススプライシング分子を含む、プロウイルスプラスミド。
[本発明1049]
本発明1001~1048のいずれかの核酸分子を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)。
[本発明1050]
光受容体細胞を優先的に標的とする、本発明1049のAAV。
[本発明1051]
AAV5カプシドタンパク質、AAV8カプシドタンパク質、AAV8(b)カプシドタンパク質またはAAV9カプシドタンパク質を含む、本発明1049または1050のAAV。
[本発明1052]
本発明1001~1047のいずれかの核酸トランススプライシング分子、本発明1048のプロウイルスプラスミドまたは本発明1049~1051のいずれかのAAVを含む、薬学的組成物。
[本発明1053]
5'核酸トランススプライシング分子と3'核酸トランススプライシング分子とを含む薬学的組成物であって、該5'核酸トランススプライシング分子が本発明1002~1013または1030~1047のいずれかの核酸トランススプライシング分子であり、該3'核酸トランススプライシング分子が本発明1014~1025のいずれかの核酸トランススプライシング分子である、前記薬学的組成物。
[本発明1054]
本発明1052または1053の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象の標的細胞内のABCA4遺伝子における変異を修正する方法。
[本発明1055]
本発明1002~1013または1030~1047のいずれかの核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象においてABCA4エキソン1~24のうちのいずれか1つまたは複数における変異を修正する方法。
[本発明1056]
本発明1014~1025のいずれかの核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象においてABCA4エキソン23~50のうちのいずれか1つまたは複数における変異を修正する方法。
[本発明1057]
本発明1053の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象においてABCA4エキソン1~24のうちのいずれか1つにおける変異およびエキソン23~50のうちのいずれか1つにおける第2の変異を修正する方法。
[本発明1058]
本発明1052または1053の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、ABCA4における変異と関連している障害を有する対象を処置する方法。
[本発明1059]
本発明1002~1013または1030~1047のいずれかの核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、ABCA4エキソン1~24またはイントロン1~24のうちのいずれか1つまたは複数における変異と関連している障害を有する対象を処置する方法。
[本発明1060]
本発明1014~1025のいずれかの核酸トランススプライシング分子を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、ABCA4エキソン23~50またはイントロン22~49のうちのいずれか1つまたは複数における変異と関連している障害を有する対象を処置する方法。
[本発明1061]
本発明1053の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、ABCA4エキソン1~24のうちのいずれか1つにおける第1の変異とエキソン23~50のうちのいずれか1つにおける第2の変異とに関連している障害を有する対象を処置する方法。
[本発明1062]
対象がスターガルト病を有している、本発明1054~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
前記組成物が網膜下注射、硝子体内注射または静脈内注射によって投与される、本発明1054~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
AAV 5'ITR、調節配列の機能的制御下の本発明1001~1047のいずれかの核酸分子およびAAV3'ITRを含むゲノムベクターが内部にパッケージングされているアセンブルされたカプシドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)。
[本発明1065]
対象が投与後においてABCA4タンパク質発現の少なくとも10%の増大を示す、本発明1054~1063のいずれかの方法。
[本発明1066]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)SEQ ID NO:32のヌクレオチド4,800~5,838のうちのいずれか1個または複数個を含む結合部位においてCEP290イントロン26に結合するように構成された結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および
(c)機能性CEP290エキソン2~26を含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性CEP290エキソン27とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、内在性CEP290エキソン2~26が該機能性CEP290エキソン2~26で置き換えられ、病原性点変異が修正される、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1067]
3'から5'の方向に機能的に連結された、
(a)標的イントロン27、28、29または30のうちのいずれか1つにおいてCEP290に結合するように構成された結合ドメイン;
(b)トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン;および
(c)該標的イントロンの5'側の機能性CEP290エキソンを含むコードドメイン
を含む、核酸トランススプライシング分子であって、
該核酸トランススプライシング分子が、該コードドメインと内在性CEP290とをトランススプライシングするように構成されており、それにより、該標的イントロンの5'側の内在性CEP290エキソンが該機能性CEP290エキソンで置き換えられ、病原性点変異が修正される、
前記核酸トランススプライシング分子。
[本発明1068]
本発明1066または1067の核酸トランススプライシング分子を含む、プロウイルスプラスミド。
[本発明1069]
本発明1066~1068のいずれかの核酸分子を含む、AAV。
[本発明1070]
本発明1066もしくは1067の核酸トランススプライシング分子、本発明1068のプロウイルスプラスミドまたは本発明1069のAAVを含む、薬学的組成物。
[本発明1071]
本発明1066または1067の核酸トランススプライシング分子、本発明1068のプロウイルスプラスミド、本発明1069のAAVまたは本発明1070の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象の標的細胞内のCEP290イントロン26における病原性点変異を修正する方法。
[本発明1072]
本発明1066または1067の核酸トランススプライシング分子、本発明1068のプロウイルスプラスミド、本発明1069のAAVまたは本発明1070の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、CEP290イントロン26における病原性点変異によって引き起こされるLCA 10を有する対象を処置する方法。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、変異型ABCA4エキソンを機能性ABCA4エキソンを用いて修正するためのいくつかの例示的な核酸トランススプライシング分子の模式図である。濃い陰影のボックス部は天然状態のABCA4エキソンを表す。濃い陰影のボックス部を連接している点線は天然状態のイントロンを表す。濃い輪郭を有する薄い陰影のボックス部は核酸トランススプライシング分子内の機能性ABCA4エキソンを表す。曲線で示したスプライシングドメインは各機能性ABCA4エキソンの一端に結合され、ABCA4プレmRNAのイントロンとなる。
図2図2は、5'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン19(SEQ ID NO:25)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図3図3は、5'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン22(SEQ ID NO:28)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図4図4は、3'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン22(SEQ ID NO:28)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図5図5は、5'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン23(SEQ ID NO:29)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図6図6は、3'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン23(SEQ ID NO:29)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図7図7は、5'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン24(SEQ ID NO:30)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図8図8は、3'トランススプライシング分子を用いて10ヌクレオチドずつの間隔でABCA4イントロン24(SEQ ID NO:30)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号を示す。
図9図9は、転写活性化ドメインに連結されたDNA結合ドメインからなるTALENタンパク質を示す模式図である。VP64転写活性化ドメインを示す。右パネルは、ABCA4の5'非翻訳領域(5'-UTR)部分を示す。TATAボックスおよび推定転写開始部位も示す。また、TALENの3つの異なるDNA結合ドメインによって標的とされる配列も示す。図示のように、TALEN 1は第1の下線部配列に結合し、TALEN 2は第2の下線部配列に結合し、TALEN 3は第3の下線部配列に結合する。
図10図10は、293T細胞を、内因性ABCA4発現を誘導するように設計したTALEN構築物でトランスフェクトしたことを示すゲルである。図9の3つのTALENはすべて293細胞内に安定的に導入され、単一クローン細胞を採取し、ウエスタンブロットによって解析した。陽性対照(+)は、ABCA4 cDNAを発現するプラスミドでトランスフェクトした細胞を示す。トランスフェクション後48時間目に細胞ライセートを作製し、膜画分をABCA4発現について抗体ab72955(Abcam)を用いて調べた。クローンZT-22およびZT-48がABCA4タンパク質発現を示した。
図11図11は、CAGプロモーター細胞株を示す模式図である。
図12A図12Aおよび12Bは、相同アーム(図12B)を用いてCAGプロモーターおよびピューロマイシン選択可能マーカーが挿入されるように設計した部位特異的ガイド(図12A)を示す。
図12B図12Aの説明を参照のこと。
図13図13は、CAGプロモーター細胞株を示す模式図である。
図14図14Aおよび14Bは、それぞれ、さらなる解析に選択したいくつかのクローン株での発現結果を示すグラフおよびゲルである。図14Aは細胞株のRNA発現を示し、図14Bはタンパク質発現を示す。表示した細胞株の膜調製物を、ABCA4タンパク質について、ABCA4に対するウサギポリクローナル抗体(Abcam,ab72955)を用いてプローブ検索した。露光時間は23秒間である。293細胞は、ABCA4を発現しない親細胞である。一番上のバンドはすべての細胞に存在する非特異的バックグラウンドである。
図15図15は、エキソン3および4を標的とするためのCRISPRガイドRNAを示す模式図である。
図16図16は、図15に示すようなCRISPR/Cas9を用いた処理後に誘導された単一クローン細胞のRNA発現を示すグラフおよびタンパク質プロファイルを示すゲルである。
図17A図17Aおよび17Bは、cDNAにおける変異解析のためのPCR(図17A)およびcDNAにおける遺伝子型判定のためのPCR(図17B)を示す模式図であり、エキソン3および4が標的とされて分断されたことが確認される。
図17B図17Aの説明を参照のこと。
図18図18は、図17Aおよび17Bの変異解析により、17+06細胞株および17+21細胞株内の対立遺伝子においてエキソン3および4が標的とされて分断されたことが確認されたことを示す一組の表である。
図19図19Aおよび19Bは、ABCA4プレmRNAを標的とするトランススプライシング分子の模式図である。図19Aは、コドン最適化エキソン(またはエキソンの組)、標的RNAにハイブリダイズする結合ドメインおよび人工イントロンリンカーを含む一般的なトランススプライシング分子を示す。図19Bは、ABCA4のイントロン22内およびイントロン23内の特定の領域を標的とする種々のトランススプライシング分子を示す。
図20A図20A~20Dは、トランススプライシング反応の結果を示すゲル(図20Aおよび20C)ならびにグラフ(図20Bおよび20D)である。図20Aおよび20Bは、それぞれ、イントロン22トランススプライシング反応のタンパク質レベルおよびRNAレベルを示し、図20Cおよび20Dは、それぞれ、イントロン23トランススプライシング反応のタンパク質レベルおよびRNAレベルを示す。
図20B図20Aの説明を参照のこと。
図20C図20Aの説明を参照のこと。
図20D図20Aの説明を参照のこと。
図21図21は、CEP290イントロン26内における変異をCEP290遺伝子の機能性5'部分を用いて修正するためのいくつかの例示的な核酸トランススプライシング分子の模式図である。濃い陰影のボックス部は天然状態のCEP290エキソンを表す。濃い陰影のボックス部を連接している点線は天然状態のイントロンを表す。濃い輪郭を有する薄い陰影のボックス部は核酸トランススプライシング分子内の機能性CEP290エキソンを表す。曲線で示したスプライシングドメインは各機能性CEP290エキソン配列の一端に結合され、CEP290プレmRNAのイントロンとなる。
図22図22は、10ヌクレオチドずつの間隔でCEP290イントロン26(SEQ ID NO:85)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号である「モチーフ番号」を示す。
図23図23は、10ヌクレオチドずつの間隔でCEP290イントロン27(SEQ ID NO:86)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。3つの線の各々は独立した実験を表す。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号である「モチーフ番号」を示す。
図24図24は、10ヌクレオチドずつの間隔でCEP290イントロン28(SEQ ID NO:87)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。3つの線の各々は独立した実験を表す。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号である「モチーフ番号」を示す。
図25図25は、10ヌクレオチドずつの間隔でCEP290イントロン29(SEQ ID NO:88)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。3つの線の各々は独立した実験を表す。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号である「モチーフ番号」を示す。
図26図26は、10ヌクレオチドずつの間隔でCEP290イントロン30(SEQ ID NO:89)全体に渡る150塩基長の結合ドメインよってもたらされるトランススプライシング効率(相対的変化倍率)を示すグラフである。3つの線の各々は独立した実験を表す。X軸ラベルは、イントロンの5'末端(すなわち、イントロン配列の最初のヌクレオチド)から始まる各結合部位の番号である「モチーフ番号」を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
詳細な説明
本明細書に記載の組成物および方法は、ABCA4遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害を処置するためのトランススプライシング分子(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)によって送達されるプレmRNAトランススプライシング分子)を伴う。本明細書に記載の方法および組成物では、ABCA4の変異によって引き起こされる疾患、例えばスターガルト病(例えば、スターガルト病1型)の処置のための遺伝子治療(例えば、エクスビボ遺伝子治療およびインビボ遺伝子治療)としてプレmRNAトランススプライシングを使用する。
【0065】
あるいはまた、本明細書に記載の組成物および方法は、CEP290遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害、例えばLCA 10を処置するためのトランススプライシング分子(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)によって送達されるプレmRNAトランススプライシング分子)を伴う。このような方法では、CEP290の変異によって引き起こされる疾患、例えばLCA 10の処置のための遺伝子治療(例えば、エクスビボ遺伝子治療およびインビボ遺伝子治療)としてプレmRNAトランススプライシングを使用する。
【0066】
本明細書において例示するトランススプライシング分子およびその使用方法は、慣用的な治療と比べていくつかの利点をもたらす。第1に、AAVによるトランススプライシング分子送達の使用では、遺伝子治療薬の光受容体への効率的で特異的な送達がもたらされるとともに、AAVのパッケージング限界と関連している問題が解決される。第2に、このような組成物および方法により遺伝子欠陥の根源での修正が可能である。さらに、本明細書において提供する組成物および方法は、ABCA4(または他の大きなcDNA/導入遺伝子カセット)内における任意の型の変異を処置するために有用である。光受容体の欠陥の修正により網膜色素上皮細胞に対して副次的救済がもたらされる。さらに、本発明の方法および組成物は一般的に免疫学的に無害である。網膜下送達の使用および他の特色により効果が標的細胞、例えば光受容体に特異的となり、そのため、オフターゲットスプライシングによる毒性が低減される。さらに、ヌクレアーゼとは異なり、トランススプライシングはゲノムの改変を必要としない。最後に、RNA修復は細胞分裂を必要としないが、DNA修復方法論(例えば、CRISPR-Cas9またはジンクフィンガー)は、相同組換え修復が起こるためには細胞が有糸分裂を行なうという必要条件を有し、これは、網膜のような有糸分裂後組織には不都合である。
【0067】
I.定義
特に定義していない限り、本明細書において使用する科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味、および本出願書類において使用している用語の多くの一般的指導を当業者に提供する出版物を参照することによって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に示しているものと参照刊行物のものとで定義に矛盾がある場合は、本明細書において提供する定義に支配されるものとする。
【0068】
「核酸トランススプライシング分子」または「トランススプライシング分子」は、3つの主要エレメント:(a)トランススプライシング分子をその標的遺伝子(例えば、プレmRNA)にテザリングすることによって特異性を付与する結合ドメイン;(b)スプライシングドメイン(例えば、3'スプライス部位または5'スプライス部位を有するスプライシングドメイン);および(c)該標的遺伝子において、該標的遺伝子内の1つまたは複数のエキソン(例えば、1つまたは複数の変異型エキソン)が置き換えられ得るトランススプライシングが起こるように構成されたコード配列を有する。「プレmRNAトランススプライシング分子」または「RTM」は、プレmRNAを標的とする核酸トランススプライシング分子を示す。いくつかの態様では、トランススプライシング分子、例えばRTMがcDNAを、例えば、変異型のABCA4エキソンまたはCEP290)の置き換えまたは修正用の機能性エキソン(例えば、機能性のABCA4エキソンまたはCEP290エキソン、例えばコドン最適化エキソン)の一部として含み得る。
【0069】
「トランススプライシング」により、1つまたは複数のエキソン(例えば、外来性エキソン、例えばトランススプライシング分子のコードドメインの一部であるエキソン)を含む核酸分子が、別個のRNA分子(例えば、プレmRNA分子、例えば内在性プレmRNA分子)の第1の部分に、該RNA分子の第2の部分がスプライセオソーム媒介性機構により置き換わることによって連接されることを意図する。
【0070】
結合ドメインと標的イントロン間の「結合」は、本明細書で用いる場合、トランススプライシング分子が標的遺伝子(例えば、プレmRNA)との会合に至ることによってトランススプライシングが媒介されるのに充分な度合の結合ドメインと標的イントロン間の水素結合を示す。いくつかの態様では、結合ドメインと標的イントロン間の水素結合が、互いに相補的でアンチセンスの向きである(例えば、互いにハイブリダイズされる)ヌクレオチド塩基間のものである。
【0071】
本明細書で用いる場合、「人工イントロン」は、結合ドメインをコードドメインに(直接または間接的に)連結する核酸配列を示す。人工イントロンはスプライシングドメインを含んでおり、1つまたは複数のスペーサー配列および/または他の調節エレメントをさらに含んでいてもよい。
【0072】
「スプライシングドメイン」は、本明細書で用いる場合、スプライセオソームによって認識され、トランススプライシングを媒介するモチーフを有する核酸配列を示す。スプライシングドメインは、3'スプライス部位であっても5'スプライス部位であってもよいスプライス部位(例えば、単一のスプライス部位、すなわち唯一のスプライス部位)を含む。スプライシングドメインは他の調節エレメントを含んでいてもよい。例えば、いくつかの態様では、スプライシングドメインが、スプライシング促進配列(例えば、エキソン内スプライシング促進配列(ESE)またはイントロン内スプライシング促進配列(ISE))を含む。いくつかの態様では、スプライシングドメインが、分岐点(例えば、高保存(strong conserved)分岐点)もしくは分岐部位配列および/またはポリピリミジントラクト(PPT)を含む。いくつかの態様では、5'トランススプライシング分子のスプライシングドメインが分岐点またはPPTを含んでいないが、5'スプライスアクセプターまたは3'スプライスドナーを含む。
【0073】
本明細書で用いる場合、「変異」は、欠陥性タンパク質産物(例えば、非機能性タンパク質産物、機能低下を有するタンパク質産物、異常な機能を有するタンパク質産物および/または通常より少ない量もしくは通常より多い量で産生されるタンパク質産物)をもたらす任意の異常な核酸配列を示す。変異としては、塩基対変異(例えば、一塩基多型)、ミスセンス変異、フレームシフト変異、欠失、挿入およびスプライス変異が挙げられる。いくつかの態様では、変異は、配列の1つまたは複数の部分が対応する野生型核酸配列またはその機能性バリアントと異なっている核酸配列を示す。いくつかの態様では、変異は、対応する野生型タンパク質またはその機能性バリアントと異なるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしている核酸配列を示す。「変異型エキソン」(例えば、変異型ABCA4エキソン)は、変異を含んでいるエキソンまたは異なる領域内における変異が反映されているエキソン配列、例えばイントロン内における変異により生じる隠れエキソンを示す。
【0074】
本明細書で用いる場合、用語「ABCA4」は、網膜特異的ATP結合カセット輸送体をコードしているポリヌクレオチド(例えば、RNA(例えば、プレmRNAもしくはmRNA)またはDNA)を示す。機能性ヒトABCA4遺伝子の例示的なプレmRNA配列をSEQ ID NO:6に示す。機能性(野生型)ヒトABCA4遺伝子の例示的なゲノムDNA配列はNCBI Reference Sequence:NG_009073に示されている。例示的なABCA4タンパク質のアミノ酸配列はProtein Accession No.P78363に示されている。
【0075】
ABCA4のエキソンおよびイントロンは、本明細書において以下の表1に示すように識別し、SEQ ID NO:6のABCA4プレmRNA分子上にマッピングされ得る。ABCA4の各エキソンおよびイントロンは本明細書において、第1(左側の)列の参照番号に従って識別する。各エキソンおよびイントロンのサイズ(塩基対;bp)を2列目および3列目に示す。4列目は、対応するイントロン番号の5'側のエキソンに対応するcDNA分子の長さを示す。5列目は、対応するイントロン番号の3'側のmRNAに対応するcDNA分子の長さを示す。
【0076】
(表1)ABCA4のエキソンおよびイントロンの概要
【0077】
本明細書で用いる場合、「標的ABCA4イントロン」は、上記の表1において識別される49のABCA4イントロンのうちの1つを示す。各ABCA4イントロン配列の核酸配列識別表示を以下の表2に示す。用語「標的ABCA4イントロン」の範囲には、本明細書において提供するABCA4イントロンのバリアント、例えば、本明細書において提供する配列と90~100%の相同性(例えば、本明細書において提供する配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性)を有するイントロン配列も包含され、ここで、ABCA4遺伝子上のバリアントイントロンの位置は本明細書において提供するものに対応している(例えば、表1に示すような隣接するエキソンに関して)ことは理解されよう。
【0078】
(表2)ABCA4イントロン配列
【0079】
本明細書で用いる場合、用語「CEP290」は、中心体タンパク質290をコードしているポリヌクレオチド(例えば、RNA(例えば、プレmRNAもしくはmRNA)またはDNA)を示す。機能性ヒトCEP290遺伝子の例示的なプレmRNA配列をSEQ ID NO:113に示す。機能性(野生型)ヒトCEP290遺伝子の例示的なゲノムDNA配列はNCBI Reference Sequence:NG_008417に示されている。例示的なヒト中心体タンパク質290タンパク質のアミノ酸配列はProtein Accession No.O15078に示されている。
【0080】
CEP290のエキソンおよびイントロンは、本明細書において以下の表3に示すように識別し、SEQ ID NO:112のCEP290プレmRNA分子上にマッピングされ得る。CEP290の各エキソンおよびイントロンは本明細書において、第1(左側の)列の参照番号に従って識別する。各エキソンおよびイントロンのサイズ(塩基対;bp)を2列目および3列目に示す。4列目は、対応するイントロン番号の5'側のエキソンに対応するcDNA分子の長さを示す。5列目は、対応するイントロン番号の3'側のmRNAに対応するcDNA分子の長さを示す。
【0081】
(表3)CEP290のエキソンおよびイントロンの概要
【0082】
本明細書で用いる場合、「標的CEP290イントロン」は、上記の表3において識別される53のCEP290イントロンのうちの1つを示す。各CEP290イントロン配列の核酸配列識別表示を以下の表4に示す。用語「標的CEP290イントロン」の範囲には、本明細書において提供するCEP290イントロンのバリアント、例えば、本明細書において提供する配列と90~100%の相同性(例えば、本明細書において提供する配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性)を有するイントロン配列も包含され、ここで、CEP290遺伝子上のバリアントイントロンの位置は本明細書において提供するものに対応している(例えば、表3に示すような隣接するエキソンに関して)ことは理解されよう。
【0083】
(表4)CEP290イントロン配列
【0084】
本明細書で用いる場合、用語「対象」は、このような処置方法または予防方法を必要とする任意の哺乳動物、例えばヒトを含む。かかる処置または予防を必要とする他の哺乳動物としては、イヌ、ネコまたは他の飼養化動物、ウマ、家畜、実験動物、例えば非ヒト霊長類などが挙げられる。対象は雄(男性)であっても雌(女性)であってもよい。一態様では、対象が、ABCA4遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害(例えば、スターガルト病、例えばスターガルト病1型)あるいはCEP290遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害(例えば、常染色体性劣性障害、例えばLCA 10)を有している。別の態様では、対象に、ABCA4遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害あるいはCEP290遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害を発症するリスクがある。別の態様では、対象が、ABCA4遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害(例えば、スターガルト病)あるいはCEP290遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害(例えば、LCA 10)の臨床徴候を示している。対象は、処置または予防的治療が有益であり得る任意の年齢であり得る。例えば、いくつかの態様では、対象が0~5歳、5~10歳、10~20歳、20~30歳、30~50歳、50~70歳であるか、または70歳を超えている。別の態様では、対象が12ヶ月齢もしくはそれより上、18ヶ月齢もしくはそれより上、2歳もしくはそれより上、3歳もしくはそれより上、4歳もしくはそれより上、5歳もしくはそれより上、6歳もしくはそれより上、7歳もしくはそれより上、8歳もしくはそれより上、9歳もしくはそれより上、または10歳もしくはそれより上である。別の態様では、対象が生存網膜細胞を有している。
【0085】
本明細書で用いる場合、用語「変異と関連している障害」または「障害と関連している変異」は障害と変異の相関関係を示す。いくつかの態様では、変異と関連している障害が完全に、または一部において、あるいは直接的または間接的に該変異によって引き起こされることがわかっているか、あるいは完全に、または一部において、あるいは直接的または間接的に該変異によって引き起こされることが疑われる。例えば、該変異を有する対象は該障害を発症するリスクがあるかもしれないし、そのリスクはさらに、他の要因、例えば他の(例えば、無関係の)変異(例えば、同じ遺伝子内または異なる遺伝子内の)あるいは環境要因に依存するかもしれない。
【0086】
本明細書で用いる場合、用語「処置」またはその文法的派生形は、疾患の進行を低減させること、疾患症状の重症度を低減させること、疾患症状の進行を遅滞させること、疾患症状を取り去ること、または疾患の発症を遅延させることと定義する。
【0087】
本明細書で用いる場合、障害の「予防」という用語またはその文法的派生形は、例えば変異と関連している障害を発症するリスクがある対象に対する予防的治療として、疾患の発症リスクを低減させることと定義する。対象は障害を発症する「リスクがある」と、当技術分野において公知または本明細書に記載の任意の適当な方法に従って該障害と関連している変異を同定することによって特性評価され得る。いくつかの態様では、障害を発症するリスクがある対象が、該障害と関連している1つまたは複数のABCA4変異またはCEP290変異を有する。付加的または代替的に、対象は、障害の家族歴を有するならば、該障害を発症する「リスクがある」と特性評価され得る。
【0088】
対象の障害の処置または予防は、トランススプライシング分子(例えば、AAVベクター内またはAAV粒子内にて)を該対象に直接投与することによって行なわれ得る。あるいはまた、トランススプライシング分子を内包する宿主細胞を対象に投与してもよい。
【0089】
用語「投与すること」またはその文法的派生形は、本明細書に記載の方法において用いる場合、組成物またはエクスビボ処理済細胞を、それを必要とする、例えば標的とされる対象遺伝子に変異または欠陥を有する対象に、送達することを示す。例えば、眼球系細胞(ocular cell)が標的とされる一態様では、該方法が、組成物を網膜下注射によって光受容体細胞または他の眼球系細胞に送達することを伴う。別の態様では、眼球系細胞への硝子体内注射または眼瞼静脈経由での眼球系細胞への注射が使用され得る。別の態様では、組成物が静脈内投与される。本開示に鑑みて当業者により、さらに他の投与方法が選択され得る。
【0090】
コドン最適化は、コードされたアミノ酸になんら変化をもたらすことなく個々の核酸を変更するために核酸配列を修飾することを示す。このようにして修飾された配列を本明細書において「コドン最適化された」と称する。この過程は、発現または安定性を促進するために本明細書に記載の任意の配列に対して行なわれ得る。コドン最適化は、例えば、各々が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,561,972号、同第7,561,973号および同第7,888,112号に記載されているものなどの様式で行なわれ得る。翻訳開始部位周囲の配列はコンセンサスコザック配列に、公知の方法に従って変換され得る。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるKozak et al,Nucleic Acids Res.15(20):8125-8148を参照のこと。
【0091】
用語「相同な」は、2つの核酸配列の配列間の同一性の度合を示す。相同な配列の相同性は、最適な条件下でアラインメントされた2つの配列を比較対象の配列全体にわたって比較することにより求められる。本明細書における比較対象の配列は、最適なアラインメント状態の2つの配列内に付加または欠失(例えば、ギャップなど)を有し得る。かかる配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,1994,22(22):4673 4680)を用いてアラインメントを行なうことにより計算され得る。また、一般的に利用可能な配列解析ソフトウェア、例えばVector NTI、GENETYX、BLAST、または公開データベースによって提供される解析ツールも使用され得る。
【0092】
用語「薬学的に許容される」は、哺乳動物、例えばヒトへの投与が安全であることを意味する。いくつかの態様では、薬学的に許容される組成物が連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、あるいは米国薬局方または、動物、より特別にはヒトにおける使用のための他の一般的に認知された薬局方に記載されている。
【0093】
用語「担体」は、治療用分子(例えば、本発明のトランススプライシング分子またはトランススプライシング分子を含むベクターもしくは細胞)とともに投与される希釈剤、佐剤、賦形剤またはビヒクルを示す。好適な薬学的担体の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PA.,2nd edition,2005に記載されている。
【0094】
語「1つの(a)」および「1つの(an)」は「1または複数の(one or more of)」を意味する。例えば、「遺伝子(a gene)」は1つまたは複数のかかる遺伝子を表していると理解されたい。そのため、用語「1つの(a)」および「1つの(an)」、「1または複数の(one or more of a (or an))」ならびに「少なくとも1の(at least one of a (or an))」は本明細書において互換的に用いられる。
【0095】
本明細書で用いる場合、用語「約」は、特に指定のない限り、基準値から±10%の変動以内の値を示す。
【0096】
II.トランススプライシング分子
本明細書において、ABCA4トランススプライシング分子およびCEP290トランススプライシング分子を提供する。
【0097】
ABCA4トランススプライシング分子
本発明は、ABCA4遺伝子(例えば、変異型ABCA4エキソンを有するABCA4遺伝子)内の1つまたは複数のエキソンを置き換えることにより、ABCA4遺伝子内における変異と関連している疾患および障害を処置するために有用な核酸トランススプライシング分子を特色とする。いくつかの態様では、核酸トランススプライシング分子がプレRNAトランススプライシング分子(RTM)である。トランススプライシング分子の設計は、プレmRNAエキソン(1つまたは複数)の欠陥部分または変異部分を核酸配列、例えば該変異のない機能性の(例えば、正常な)配列を有するエキソン(1つまたは複数)で置き換えることを可能にするものである。機能性配列は、野生型の天然に存在する配列であっても、いくつかの他の修飾、例えばコドン最適化を有する修正された配列であってもよい。
【0098】
一態様では、トランススプライシング分子が、ABCA4遺伝子の3'部分に位置する1つまたは複数の変異を修正するように構成される。一態様では、トランススプライシング分子が、ABCA4遺伝子の5'部分に位置する1つまたは複数の変異を修正するように構成される。本明細書において提供するトランススプライシング分子は、欠陥性のプレmRNA遺伝子配列を置き換えて標的プレmRNAの欠陥部分を除去し、該細胞内で機能性遺伝子産物の転写を行なうことができる機能性ABCA4遺伝子をもたらすことにより、対象の標的細胞内の欠陥遺伝子を修復する機能を果たす。
【0099】
本発明により、標的ABCA4イントロンに結合するように構成された結合ドメイン、トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン、および1つまたは複数の機能性ABCA4エキソンを有するコードドメインを有するトランススプライシング分子を提供する。5'トランススプライシング分子では、コードドメイン、スプライス部位および結合ドメインが5'から3'の方向に、内在性遺伝子の5'末端が、変異型ABCA4エキソンと置き換わる機能性ABCA4エキソンを含むコードドメインで置き換えられるように該トランススプライシング分子が構成されるように機能的に連結される。逆に、3'トランススプライシング分子では、コードドメイン、スプライス部位および結合ドメインが3'から5'の方向に、内在性遺伝子の3'末端が、変異型ABCA4エキソンと置き換わる機能性ABCA4エキソンを含むコードドメインで置き換えられるように該トランススプライシング分子が構成されるように機能的に連結される。いくつかの態様では、スプライシングドメインを、結合ドメインをコードドメインに連結する人工イントロン内に存在させる。人工イントロンは、さらなる構成成分、例えばスペーサーを含んでいてもよい。
【0100】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子またはそのコードドメインが最大で4,700個までのヌクレオチド塩基の長さ(例えば、200~300個のヌクレオチド塩基の長さ、300~400個のヌクレオチド塩基の長さ、400~500個のヌクレオチド塩基の長さ、500~600個のヌクレオチド塩基の長さ、600~700個のヌクレオチド塩基の長さ、700~800個のヌクレオチド塩基の長さ、800~900個のヌクレオチド塩基の長さ、900~1,000個のヌクレオチド塩基の長さ、1,000~1,500個のヌクレオチド塩基の長さ、1,500~2,000個のヌクレオチド塩基の長さ、2,000~2,500個のヌクレオチド塩基の長さ、2,500~3,000個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,000~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば3,100~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,300~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば3,000~3,100個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,200個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,300個のヌクレオチド塩基の長さ、3,300~3,400個のヌクレオチド塩基の長さ、3,400~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、3,500~3,600個のヌクレオチド塩基の長さ、3,600~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、3,700~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,800~3,900個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,900~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば約2,918個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,328個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,522個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,607個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,632個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,494個のヌクレオチド塩基の長さ、または約3,300個のヌクレオチド塩基の長さ)である。
【0101】
ABCA4遺伝子の大きなサイズおよびAAV送達のサイズ制約のため、AAVベクター内へのパッケージングのために構成された単一トランススプライシング分子が、障害と関連し得るABCA4遺伝子内のすべての変異の範囲に及ばない場合があり得、それにより、変異の修正がABCA4遺伝子の全長にわたって行なわれ得ない場合があり得る。したがって、本発明のトランススプライシング分子を、ABCA4遺伝子の全長範囲に及ぶ複数の変異を修正するための後述する方法の一部として適合させてもよい。
【0102】
本明細書に記載のトランススプライシング分子によって標的とされるABCA4遺伝子は、疾患、例えばスターガルト病(例えば、スターガルト病1型)と関連している(例えば、引き起こす、あるいは相関している)1つまたは複数の変異を含む。機能性(野生型)ヒトABCA4遺伝子の例示的なDNA配列はNCBI Reference Sequence:NG_009073に示されている。ABCA4によって発現される例示的な網膜特異的ATP結合カセット輸送体タンパク質のアミノ酸配列はProtein Accession No.P78363に示されている。
【0103】
このような公開された配列に加えて、後に獲得されるあらゆる修正あるいはヒト集団または他の哺乳動物集団に存在する天然に存在する保存的非疾患発症性バリアント配列もまた含まれる。さらなる保存的ヌクレオチド置換またはコドン最適化を引き起こすものもまた含まれる。また、データベースのアクセッション番号によって得られる配列を、同じ哺乳動物生物体または別の哺乳動物生物体における相同配列を検索するために使用してもよい。
【0104】
ABCA4核酸配列および得られる切断型タンパク質またはアミノ酸断片が、例えば、サイレントなヌクレオチド塩基に対する修飾、例えば選好(preference)コドンを含むようにある特定の軽微な核酸レベルの修飾を許容し得ることが予想される。他の態様では、例えば得られるペプチド/タンパク質の発現を改善するためにアミノ酸を変更する核酸塩基修飾(例えば、コドン最適化)が予想される。また、断片の同様の修飾として、遺伝コードの天然の縮重によって引き起こされる対立遺伝子変異も含まれる。
【0105】
また、ABCA4遺伝子の修飾体として本明細書において提供するコードタンパク質断片のアナログまたは修飾形も含まれる。典型的には、かかるアナログは、具体的に識別したタンパク質とただ1つ~4つのコドン変化によって異なっている。保存的置換は、側鎖および化学的特性が関連しているアミノ酸ファミリー内で起こるものである。
【0106】
機能性ABCA4遺伝子の核酸配列は、機能性の網膜特異的ATP結合カセット輸送体を天然状態で発現する任意の哺乳動物に由来するもの、またはそのホモログであり得る。他の態様では、ABCA4遺伝子配列に対して標的細胞内での発現を促進するために、ある特定の修飾が行なわれる。かかる修飾としてはコドン最適化が挙げられる。
【0107】
いくつかの態様では、ABCA4内における変異と関連している障害が常染色体性劣性疾患、例えばスターガルト病である。常染色体性劣性障害を有する対象が関与する一部の特定の例では、対象がABCA4内における変異を両方の対立遺伝子に有する。トランススプライシング分子を含む組成物は、ABCA4遺伝子内における変異の位置に関係なく両方の対立遺伝子の変異を修正し得る。例えば、第1の対立遺伝子に変異型ABCA4エキソン1および第2の対立遺伝子に変異型ABCA4エキソン30を有する対象に対しては、本明細書において、変異型ABCA4エキソン1を置き換える5'トランススプライシング分子および変異型ABCA4エキソン30を置き換える3'トランススプライシング分子を有する組成物を提供する。かかる態様では、この2つのトランススプライシング分子が同じAAVベクターの一部として共送達され得るか、または別々のAAVベクターで送達され得る(例えば、両方のトランススプライシング分子がAAVのパッケージング限界を超える場合)。
【0108】
あるいはまた、同じトランススプライシング分子によって置き換えることができる2つ以上の変異がABCA4遺伝子の一部分に位置する態様では、機能性ABCA4エキソンを含むコード領域を有する単一トランススプライシング分子で、該変異を含む1つまたは複数のエキソンを置き換えることができる。具体的なABCA4エキソン内における変異は、参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願公開公報第2017/087900号にも記載されている。
【0109】
ABCA4コードドメイン
いくつかの態様では、5'トランススプライシング分子のコードドメインが、標的ABCA4イントロンの5'側に存在するすべてのABCA4エキソン(例えば、機能性ABCA4エキソン)を含む。例えば、5'トランススプライシング分子がABCA4イントロン19を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~19を含む。機能性ABCA4エキソン1~19を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約2918 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がABCA4イントロン22を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~22を含む。機能性ABCA4エキソン1~22を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,328 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がABCA4イントロン23を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~23を含む。機能性ABCA4エキソン1~23を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,522 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がABCA4イントロン24を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~24を含む。機能性ABCA4エキソン1~24を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,607 bpの長さである。ABCA4を標的とする5'トランススプライシング分子の前述の態様の実例を図1の左下側部分に示す。
【0110】
いくつかの態様では、3'トランススプライシング分子のコードドメインがABCA4エキソン20~50のうちのいずれか1つまたは複数を含む。例えば、3'トランススプライシング分子がABCA4イントロン22を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン23~50を含む。機能性ABCA4エキソン23~50を含むコードドメインを有する3'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,632 bpの長さである。3'トランススプライシング分子がABCA4イントロン23を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン24~50を含む。機能性ABCA4エキソン24~50を含むコードドメインを有する3'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,494 bpの長さである。3'トランススプライシング分子がABCA4イントロン24を標的とする態様では、コードドメインが機能性ABCA4エキソン25~50を含む。機能性ABCA4エキソン25~50を含むコードドメインを有する3'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,300 bpの長さである。ABCA4を標的とする3'トランススプライシング分子の前述の態様の実例を図1の右上側部分に示す。
【0111】
いくつかの態様では、コードドメインが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28の機能性ABCA4エキソンを含む。
【0112】
いくつかの例では、両方の変異が標的遺伝子の5'部分に存在し、両方の変異が修正されるような5'トランススプライシング分子が選択される。一態様では、結合ドメインがイントロン19に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~19を含む。一態様では、結合ドメインがイントロン22に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~22を含む。一態様では、結合ドメインがイントロン23に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~23を含む。一態様では、結合ドメインがイントロン24に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~24を含む。あるいはまた、両方の変異が標的遺伝子の3'部分に存在する例では、両方の変異が修正されるような3'トランススプライシング分子が選択される。一態様では、結合ドメインがイントロン22に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン23~50を含む。一態様では、結合ドメインがイントロン23に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン24~50を含む。一態様では、結合ドメインがイントロン24に結合し、コードドメインが機能性ABCA4エキソン25~50を含む。
【0113】
一例として、プレmRNA ABCA4 3'トランススプライシング分子は以下のとおりに機能を果たす:内在性標的プレmRNAの5'スプライス部位とトランススプライシング分子の3'スプライス部位とのキメラmRNAが、スプライセオソームによって媒介されるトランススプライシング反応によって作出される。トランススプライシング分子は特異的塩基対合によって内在性標的プレmRNAの標的ABCA4イントロンに結合し、内在性ABCA4遺伝子の標的とされるイントロンの上流側の3'配列全体を、機能性ABCA4エキソン配列を有するトランススプライシング分子のコードドメインで置き換える。
【0114】
3'トランススプライシング分子は、変異または欠陥の5'側の標的ABCA4イントロンに結合する結合ドメイン、任意のスペーサーと3'スプライス部位を含む人工イントロン、および標的に対する該結合ドメインの結合の3'側の眼の標的遺伝子のすべてのエキソンをコードしているコードドメインを含む。5'トランススプライシング分子は、変異または欠陥の3'側の標的ABCA4イントロンに結合する結合ドメイン、5'スプライス部位、任意のスペーサー、および標的に対する該結合ドメインの結合の5'側の眼の標的遺伝子のすべてのエキソンをコードしているコードドメインを含む。
【0115】
いくつかの態様では、コードドメインが相補的DNA(cDNA)配列を含む。例えば、コードドメイン内の1つまたは複数の機能性ABCA4エキソンがcDNA配列であり得る。いくつかの態様では、コードドメイン全体がcDNA配列である。付加的または代替的に、コードドメインの全部もしくは一部分またはその1つもしくは複数の機能性ABCA4エキソンが、天然に存在する配列(例えば、内在性ABCA4エキソンと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列)であり得る。
【0116】
いくつかの態様では、コードドメインの全部もしくは一部分またはその1つもしくは複数の機能性ABCA4エキソンが、例えばコードされたアミノ酸の変更をもたらすことなく発現または安定性を促進するように核酸配列が修飾されているコドン最適化配列である。コドン最適化は、例えば、各々が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,561,972号、同第7,561,973号および同第7,888,112号に記載されているものなどの様式で行なわれ得る。本明細書に記載のような組換えAAVによる送達のためには、一態様では、コードドメインが、最大で4,000個までのヌクレオチド塩基の長さ(例えば、3,000~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,300~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば3,000~3,100個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,200個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,300個のヌクレオチド塩基の長さ、3,300~3,400個のヌクレオチド塩基の長さ、3,400~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、3,500~3,600個のヌクレオチド塩基の長さ、3,600~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、3,700~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,800~3,900個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,900~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ)の核酸配列であり得る。
【0117】
ABCA4結合ドメイン
本発明のトランススプライシング分子は、標的ABCA4イントロンに結合するように構成された結合ドメインを特色とする。一態様では、結合ドメインは、標的ABCA4プレmRNA(例えば、標的ABCA4イントロン)の配列に相補的な核酸配列であり、トランススプライシング分子と標的ABCA4プレmRNA間のトランススプライシングを促進しつつ、内因性標的シススプライシングを抑制し、例えば、内在性ABCA4 mRNAの一部分と1つまたは複数の機能性ABCA4エキソンを有するコードドメインとを有するキメラ分子を作出する。いくつかの態様では、結合ドメインは、標的ABCA4イントロンの配列に対してアンチセンスの向きである。
【0118】
5'トランススプライシング分子は一般的に変異の3'側の標的ABCA4イントロンに結合するが、3'トランススプライシング分子は一般的に変異の5'側の標的ABCA4イントロンに結合する。一態様では、結合ドメインは、標的ABCA4イントロンに相補的な配列の一部を含む。本明細書における一態様では、結合ドメインは、修正しようとしているエキソン配列に最も近い(すなわち、隣接している)イントロンに相補的な核酸配列である。
【0119】
別の態様では、結合ドメインが、標的イントロンの3'スプライスシグナル配列または5'スプライスシグナル配列に近接しているイントロン配列を標的とするようにされる。さらに別の態様では、結合ドメイン配列が標的イントロンに加えて隣接するエキソンの一部にも結合し得る。
【0120】
したがって、いくつかの例では、結合ドメインが内在性の変異型標的プレmRNAに特異的に結合し、トランススプライシング分子のコードドメインをプレmRNAにアンカリングして、トランススプライシングが標的ABCA4遺伝子内の正確な位置で起こることを可能にする。次いで、核でのスプライセオソームによるプロセッシング機構により、疾患を引き起こす変異型エキソンに対する修正エキソンとの成功裡のトランススプライシングが媒介され得る。
【0121】
一部の特定の態様では、トランススプライシング分子が、標的プレmRNA上の1ヶ所より多くに結合する配列を含む結合ドメインを特色とする。結合ドメインは、標的プレmRNAに安定的に結合してコードドメインとのトランススプライシングを起こすことを可能にするのに必要な任意の数のヌクレオチドを含み得る。一態様では、結合ドメインが、得られ得るループについてのmFOLD構造解析を用いて選択される(Zuker,Nucleic Acids Res.2003,31(13):3406-3415)。
【0122】
好適な標的結合ドメインは10~500個のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの態様では、結合ドメインが20~400個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが50~300個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが100~200個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが10~20個のヌクレオチドの長さ(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個のヌクレオチドの長さ)、20~30個のヌクレオチドの長さ(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30個のヌクレオチドの長さ)、30~40個のヌクレオチドの長さ(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40個のヌクレオチドの長さ)、40~50個のヌクレオチドの長さ(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個のヌクレオチドの長さ)、50~60個のヌクレオチドの長さ(例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59もしくは60個のヌクレオチドの長さ)、60~70個のヌクレオチドの長さ(例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69もしくは70個のヌクレオチドの長さ)、70~80個のヌクレオチドの長さ(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79もしくは80個のヌクレオチドの長さ)、80~90個のヌクレオチドの長さ(例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89もしくは90個のヌクレオチドの長さ)、90~100個のヌクレオチドの長さ(例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100個のヌクレオチドの長さ)、100~110個のヌクレオチドの長さ(例えば、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109もしくは110個のヌクレオチドの長さ)、110~120個のヌクレオチドの長さ(例えば、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119もしくは120個のヌクレオチドの長さ)、120~130個のヌクレオチドの長さ(例えば、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129もしくは130個のヌクレオチドの長さ)、130~140個のヌクレオチドの長さ(例えば、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139もしくは140個のヌクレオチドの長さ)、140~150個のヌクレオチドの長さ(例えば、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149もしくは150個のヌクレオチドの長さ)、150~160個のヌクレオチドの長さ(例えば、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159もしくは160個のヌクレオチドの長さ)、160~170個のヌクレオチドの長さ(例えば、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169もしくは170個のヌクレオチドの長さ)、170~180個のヌクレオチドの長さ(例えば、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179もしくは180個のヌクレオチドの長さ)、180~190個のヌクレオチドの長さ(例えば、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189もしくは190個のヌクレオチドの長さ)、190~200個のヌクレオチドの長さ(例えば、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199もしくは200個のヌクレオチドの長さ)、200~210個のヌクレオチドの長さ、210~220個のヌクレオチドの長さ、220~230個のヌクレオチドの長さ、230~240個のヌクレオチドの長さ、240~250個のヌクレオチドの長さ、250~260個のヌクレオチドの長さ、260~270個のヌクレオチドの長さ、270~280個のヌクレオチドの長さ、280~290個のヌクレオチドの長さ、290~300個のヌクレオチドの長さ、300~350個のヌクレオチドの長さ、350~400個のヌクレオチドの長さ、400~450個のヌクレオチドの長さ、または450~500個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが約150個のヌクレオチドの長さである。別の態様では、標的結合ドメインが最大で750個までのヌクレオチドの長さの核酸配列を含み得る。別の態様では、標的結合ドメインが最大で1000個までのヌクレオチドの長さの核酸配列を含み得る。別の態様では、標的結合ドメインが最大で2000個まで、またはそれより多くのヌクレオチドの長さの核酸配列を含み得る。
【0123】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子の特異性が、標的結合ドメインの長さを増大することにより増大し得る。トランススプライシング分子のその他の構成成分の長さに応じて他の長さが使用され得る。
【0124】
結合ドメインは、標的イントロンと安定的にハイブリダイズできるように該標的イントロンに80%~100%相補的であり得る。例えば、いくつかの態様では、結合ドメインが標的イントロンに80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的である。相補性の度合は当業者により、トランススプライシング分子ならびに発現に必要な配列およびrAAV内に含めるのに必要な配列を含む核酸構築物を3,000個または最大で4,000個までのヌクレオチド塩基制限内に維持する必要性に基づいて選択される。この配列およびハイブリダイゼーション強度の選択は核酸の相補性および長さに依存する。
【0125】
前述の任意の結合ドメインは、イントロン19(SEQ ID NO:25)、イントロン22(SEQ ID NO:28)イントロン23(SEQ ID NO:29)またはイントロン24(SEQ ID NO:30)内の結合部位に結合し得る。
【0126】
本発明の一部の特定の例では、トランススプライシング分子が5'トランススプライシング分子であり、ABCA4のイントロン19(SEQ ID NO:25)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性ABCA4エキソン1~19を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:25のヌクレオチド990~2,174のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,670~2,174のうちのいずれか1個もしくは複数個、SEQ ID NO:25のヌクレオチド1,810~2,000のうちのいずれか1個もしくは複数個、SEQ ID NO:25のヌクレオチド1,870~2,000のうちのいずれか1個もしくは複数個、またはSEQ ID NO:25のヌクレオチド1,920~2,000のうちのいずれか1個もしくは複数個)を含む。
【0127】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子が5'トランススプライシング分子であり、ABCA4のイントロン22(SEQ ID NO:28)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性ABCA4エキソン1~22を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:28のヌクレオチド60~570、ヌクレオチド600~800またはヌクレオチド900~1,350のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:28のヌクレオチド70~250のうちのいずれか1個または複数個)を含む。
【0128】
あるいはまた、トランススプライシング分子は3'トランススプライシング分子であり得、ABCA4のイントロン22(SEQ ID NO:28)に結合する結合ドメインを特色とし得る。このトランススプライシング分子は、機能性ABCA4エキソン23~50を有するコードドメインを含み得る。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:28のヌクレオチド1~510または880~1,350のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0129】
他の態様では、トランススプライシング分子が5'トランススプライシング分子であり、ABCA4のイントロン23(SEQ ID NO:29)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性ABCA4エキソン1~23を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド80~570または720~1,081のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0130】
あるいはまた、トランススプライシング分子は3'トランススプライシング分子であり得、ABCA4のイントロン23(SEQ ID NO:29)に結合する結合ドメインおよび機能性ABCA4エキソン24~50を有するコードドメインを特色とし得る。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:29のヌクレオチド80~1,081のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド230~1,081のうちのいずれか1個もしくは複数個、SEQ ID NO:29のヌクレオチド250~400のうちのいずれか1個もしくは複数個、またはSEQ ID NO:29のヌクレオチド690~850のうちのいずれか1つもしくは複数)を含む。
【0131】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子が5'トランススプライシング分子であり、ABCA4のイントロン24(SEQ ID NO:30)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性ABCA4エキソン1~24を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:30のヌクレオチド600~1,250または1,490~2,660のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:30のヌクレオチド1,000~1,200のうちのいずれか1個または複数個)を含む。
【0132】
他の態様では、トランススプライシング分子が3'トランススプライシング分子であり、ABCA4のイントロン24(SEQ ID NO:30)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性ABCA4エキソン25~50を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:30のヌクレオチド1~250、ヌクレオチド300~2,100またはヌクレオチド2,200~2,692のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:30のヌクレオチド360~610のうちのいずれか1個もしくは複数個またはSEQ ID NO:30のヌクレオチド750~1,110のうちのいずれか1個もしくは複数個)を含む。
【0133】
CEP290トランススプライシング分子
本発明は、CEP290遺伝子(例えば、イントロン26内に変異を有するCEP290遺伝子)内の1つまたは複数のエキソンを置き換えることにより、CEP290遺伝子内における変異と関連している疾患および障害を処置するために有用な核酸トランススプライシング分子を特色とする。いくつかの態様では、核酸トランススプライシング分子がプレRNAトランススプライシング分子(RTM)である。トランススプライシング分子の設計は、プレmRNAの欠陥部分または変異部分を核酸配列、例えば、該変異のない機能性の(例えば、正常な)配列を有するエキソン(1つまたは複数)で置き換えることを可能にするものである。機能性配列は、野生型の天然に存在する配列であっても、いくつかの他の修飾、例えばコドン最適化を有する修正された配列であってもよい。
【0134】
一態様では、トランススプライシング分子が、CEP290遺伝子の5'部分に位置する1つまたは複数の変異を修正するように構成される。本明細書において提供するトランススプライシング分子は、欠陥性のプレmRNA遺伝子配列を置き換えて、該細胞内で機能性遺伝子産物の転写を行なうことができる機能性CEP290遺伝子をもたらすことにより、対象の標的細胞内の欠陥遺伝子を修復する機能を果たす。
【0135】
本発明により、標的CEP290イントロンに結合するように構成された結合ドメイン、トランススプライシングを媒介するように構成されたスプライシングドメイン、および1つまたは複数の機能性CEP290エキソンを有するコードドメインを有するトランススプライシング分子を提供する。5'トランススプライシング分子では、コードドメイン、スプライス部位および結合ドメインが5'から3'の方向に、内在性遺伝子の5'末端が、変異型CEP290プレmRNAを修正するための機能性CEP290エキソンを含むコードドメインで置き換えられるように該トランススプライシング分子が構成されるように機能的に連結される。いくつかの態様では、スプライシングドメインを、結合ドメインをコードドメインに連結する人工イントロン内に存在させる。人工イントロンは、さらなる構成成分、例えばスペーサーを含んでいてもよい。
【0136】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子が最大で4,700個までのヌクレオチド塩基の長さ(例えば、3,000~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,300~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば3,000~3,100個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,200個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,300個のヌクレオチド塩基の長さ、3,300~3,400個のヌクレオチド塩基の長さ、3,400~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、3,500~3,600個のヌクレオチド塩基の長さ、3,600~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、3,700~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,800~3,900個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,900~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば約2,991個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,103個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,309個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,461個のヌクレオチド塩基の長さ、または約3,573個のヌクレオチド塩基の長さ)である。
【0137】
本明細書に記載のトランススプライシング分子によって標的とされるCEP290遺伝子は、疾患、例えばレーバー先天性黒内障(例えば、LCA 10)と関連している(例えば、引き起こす、あるいは相関している)1つまたは複数の変異を含む。機能性(野生型)ヒトCEP290遺伝子の例示的なDNA配列はNCBI Reference Sequence:NG_008417に示されている。例示的な中心体タンパク質290のアミノ酸配列はProtein Accession No.O15078に示されている。
【0138】
このような公開された配列に加えて、後に獲得されるあらゆる修正あるいはヒト集団または他の哺乳動物集団に存在する天然に存在する保存的非疾患発症性バリアント配列もまた含まれる。さらなる保存的ヌクレオチド置換またはコドン最適化を引き起こすものもまた含まれる。また、データベースのアクセッション番号によって得られる配列を、同じ哺乳動物生物体または別の哺乳動物生物体における相同配列を検索するために使用してもよい。
【0139】
CEP290核酸配列および得られる切断型タンパク質またはアミノ酸断片が、例えば、サイレントなヌクレオチド塩基に対する修飾、例えば選好コドンを含むようにある特定の軽微な核酸レベルの修飾を許容し得ることが予想される。他の態様では、例えば得られるペプチド/タンパク質の発現を改善するためにアミノ酸を変更する核酸塩基修飾(例えば、コドン最適化)が予想される。また、断片の同様の修飾として、遺伝コードの天然の縮重によって引き起こされる対立遺伝子変異も含まれる。
【0140】
また、CEP290遺伝子の修飾体として本明細書において提供するコードタンパク質断片のアナログまたは修飾形も含まれる。典型的には、かかるアナログは、具体的に識別したタンパク質とただ1つ~4つのコドン変化によって異なっている。保存的置換は、側鎖および化学的特性が関連しているアミノ酸ファミリー内で起こるものである。
【0141】
機能性CEP290遺伝子の核酸配列は、機能性の中心体タンパク質290を天然状態で発現する任意の哺乳動物に由来するもの、またはそのホモログであり得る。他の態様では、CEP290遺伝子配列に対して標的細胞内での発現を促進するために、ある特定の修飾が行なわれる。かかる修飾としてはコドン最適化が挙げられる。
【0142】
CEP290の変異については、CCHMC Molecular Genetics Laboratory Mutation Database,LOVD v.2.0をみるとよい。具体的なCEP290エキソン内における変異は、参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願公開公報第2017/087900号にも記載されている。上記の表3に、CEP290の各エキソンおよびイントロンのサイズおよび位置に関する情報を示す。
【0143】
いくつかの態様では、CEP290内における変異と関連している障害が常染色体性劣性疾患、例えばLCA 10である。
【0144】
コードドメイン
いくつかの態様では、5'トランススプライシング分子のコードドメインが、標的CEP290イントロンの5'側に存在するすべてのCEP290エキソン(例えば、機能性CEP290エキソン)を含む。例えば、5'トランススプライシング分子がCEP290イントロン26を標的とする態様では、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~26を含む。機能性CEP290エキソン2~26を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約2,991 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がCEP290イントロン27を標的とする態様では、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~27を含む。機能性CEP290エキソン2~27を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,103 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がCEP290イントロン28を標的とする態様では、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~28を含む。機能性CEP290エキソン2~28を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,309 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がCEP290イントロン29を標的とする態様では、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~29を含む。機能性CEP290エキソン2~29を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,461 bpの長さである。5'トランススプライシング分子がCEP290イントロン30を標的とする態様では、コードドメインが機能性CEP290エキソン2~30を含む。機能性CEP290エキソン2~30を含むコードドメインを有する5'トランススプライシング分子を特色とするかかる態様では、該コードドメインが約3,573 bpの長さである。CEP290を標的とする5'トランススプライシング分子の前述の態様の実例を図21に示す。
【0145】
いくつかの態様では、コードドメインが25、26、27、28または29の機能性CEP290エキソンを含む。
【0146】
いくつかの態様では、コードドメインが相補的DNA(cDNA)配列を含む。例えば、コードドメイン内の1つまたは複数の機能性CEP290エキソンがcDNA配列であり得る。いくつかの態様では、コードドメイン全体がcDNA配列である。付加的または代替的に、コードドメインの全部もしくは一部分またはその1つもしくは複数の機能性CEP290エキソンが、天然に存在する配列(例えば、内在性CEP290エキソンと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列)であり得る。
【0147】
いくつかの態様では、コードドメインの全部もしくは一部分またはその1つもしくは複数の機能性CEP290エキソンが、例えばコードされたアミノ酸の変更をもたらすことなく発現または安定性を促進するように核酸配列が修飾されているコドン最適化配列である。コドン最適化は、例えば、各々が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,561,972号、同第7,561,973号および同第7,888,112号に記載されているものなどの様式で行なわれ得る。本明細書に記載のような組換えAAVによる送達のためには、一態様では、コードドメインが、最大で4,000個までのヌクレオチド塩基の長さ(例えば、3,000~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,300~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば3,000~3,100個のヌクレオチド塩基の長さ、3,100~3,200個のヌクレオチド塩基の長さ、3,200~3,300個のヌクレオチド塩基の長さ、3,300~3,400個のヌクレオチド塩基の長さ、3,400~3,500個のヌクレオチド塩基の長さ、3,500~3,600個のヌクレオチド塩基の長さ、3,600~3,700個のヌクレオチド塩基の長さ、3,700~3,800個のヌクレオチド塩基の長さ、3,800~3,900個のヌクレオチド塩基の長さ、または3,900~4,000個のヌクレオチド塩基の長さ、例えば約3,108個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,285個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,375個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,503個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,630個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,540個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,363個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,273個のヌクレオチド塩基の長さ、約3,145個のヌクレオチド塩基の長さ、または約3,018個のヌクレオチド塩基の長さ)の核酸配列であり得る。
【0148】
結合ドメイン
本発明のトランススプライシング分子は、標的CEP290イントロンに結合するように構成された結合ドメインを特色とする。一態様では、結合ドメインは、標的CEP290プレmRNA(例えば、標的CEP290イントロン)の配列に相補的な核酸配列であり、トランススプライシング分子と標的CEP290プレmRNA間のトランススプライシングを促進しつつ、内因性標的シススプライシングを抑制し、例えば、内在性CEP290 mRNAの一部分と1つまたは複数の機能性CEP290エキソンを有するコードドメインとを有するキメラ分子を作出する。いくつかの態様では、結合ドメインは、標的CEP290イントロンの配列に対してアンチセンスの向きである。
【0149】
5'トランススプライシング分子は一般的に変異の3'側の標的CEP290イントロンに結合する。一態様では、結合ドメインは、標的CEP290イントロンに相補的な配列の一部を含む。
【0150】
別の態様では、結合ドメインが、標的イントロンの3'スプライスシグナル配列または5'スプライスシグナル配列に近接しているイントロン配列を標的とするようにされる。さらに別の態様では、結合ドメイン配列が標的イントロンに加えて隣接するエキソンの一部にも結合し得る。
【0151】
したがって、いくつかの例では、結合ドメインが内在性の変異型標的プレmRNAに特異的に結合し、トランススプライシング分子のコードドメインをプレmRNAにアンカリングして、トランススプライシングが標的CEP290遺伝子内の正確な位置で起こることを可能にする。次いで、核でのスプライセオソームによるプロセッシング機構により、疾患を引き起こす変異型エキソンに対する修正エキソンとの成功裡のトランススプライシングが媒介され得る。
【0152】
一部の特定の態様では、トランススプライシング分子が、標的プレmRNA上の1ヶ所より多くに結合する配列を含む結合ドメインを特色とする。結合ドメインは、標的プレmRNAに安定的に結合してコードドメインとのトランススプライシングを起こすことを可能にするのに必要な任意の数のヌクレオチドを含み得る。一態様では、結合ドメインが、得られ得るループについてのmFOLD構造解析を用いて選択される(Zuker,Nucleic Acids Res.2003,31(13):3406-3415)。
【0153】
好適な標的結合ドメインは10~500個のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの態様では、結合ドメインが20~400個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが50~300個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが100~200個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが10~20個のヌクレオチドの長さ(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個のヌクレオチドの長さ)、20~30個のヌクレオチドの長さ(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30個のヌクレオチドの長さ)、30~40個のヌクレオチドの長さ(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40個のヌクレオチドの長さ)、40~50個のヌクレオチドの長さ(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個のヌクレオチドの長さ)、50~60個のヌクレオチドの長さ(例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59もしくは60個のヌクレオチドの長さ)、60~70個のヌクレオチドの長さ(例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69もしくは70個のヌクレオチドの長さ)、70~80個のヌクレオチドの長さ(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79もしくは80個のヌクレオチドの長さ)、80~90個のヌクレオチドの長さ(例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89もしくは90個のヌクレオチドの長さ)、90~100個のヌクレオチドの長さ(例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100個のヌクレオチドの長さ)、100~110個のヌクレオチドの長さ(例えば、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109もしくは110個のヌクレオチドの長さ)、110~120個のヌクレオチドの長さ(例えば、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119もしくは120個のヌクレオチドの長さ)、120~130個のヌクレオチドの長さ(例えば、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129もしくは130個のヌクレオチドの長さ)、130~140個のヌクレオチドの長さ(例えば、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139もしくは140個のヌクレオチドの長さ)、140~150個のヌクレオチドの長さ(例えば、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149もしくは150個のヌクレオチドの長さ)、150~160個のヌクレオチドの長さ(例えば、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159もしくは160個のヌクレオチドの長さ)、160~170個のヌクレオチドの長さ(例えば、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169もしくは170個のヌクレオチドの長さ)、170~180個のヌクレオチドの長さ(例えば、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179もしくは180個のヌクレオチドの長さ)、180~190個のヌクレオチドの長さ(例えば、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189もしくは190個のヌクレオチドの長さ)、190~200個のヌクレオチドの長さ(例えば、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199もしくは200個のヌクレオチドの長さ)、200~210個のヌクレオチドの長さ、210~220個のヌクレオチドの長さ、220~230個のヌクレオチドの長さ、230~240個のヌクレオチドの長さ、240~250個のヌクレオチドの長さ、250~260個のヌクレオチドの長さ、260~270個のヌクレオチドの長さ、270~280個のヌクレオチドの長さ、280~290個のヌクレオチドの長さ、290~300個のヌクレオチドの長さ、300~350個のヌクレオチドの長さ、350~400個のヌクレオチドの長さ、400~450個のヌクレオチドの長さ、または450~500個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、結合ドメインが約150個のヌクレオチドの長さである。別の態様では、標的結合ドメインが最大で750個までのヌクレオチドの長さの核酸配列を含み得る。別の態様では、標的結合ドメインが最大で1000個までのヌクレオチドの長さの核酸配列を含み得る。別の態様では、標的結合ドメインが最大で2000個まで、またはそれより多くのヌクレオチドの長さの核酸配列を含み得る。
【0154】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子の特異性が、標的結合ドメインの長さを増大することにより増大し得る。トランススプライシング分子のその他の構成成分の長さに応じて他の長さが使用され得る。
【0155】
結合ドメインは、標的イントロンと安定的にハイブリダイズできるように該標的イントロンに80%~100%相補的であり得る。例えば、いくつかの態様では、結合ドメインが標的イントロンに80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的である。相補性の度合は当業者により、トランススプライシング分子ならびに発現に必要な配列およびrAAV内に含めるのに必要な配列を含む核酸構築物を3,000個または最大で4,000個までのヌクレオチド塩基制限内に維持する必要性に基づいて選択される。この配列およびハイブリダイゼーション強度の選択は核酸の相補性および長さに依存する。
【0156】
前述の任意の結合ドメインはイントロン26(SEQ ID NO:85;例えば、イントロン26のヌクレオチド1,655における変異、例えば置換である変異の箇所あるいはイントロン26のヌクレオチド1,655における変異、例えば置換である変異の3'側)、イントロン27(SEQ ID NO:86)、イントロン28(SEQ ID NO:87)、イントロン29(SEQ ID NO:88)またはイントロン30(SEQ ID NO:89)内の結合部位に結合し得る。
【0157】
本発明の一部の特定の例では、トランススプライシング分子が、CEP290のイントロン26(SEQ ID NO:85)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性CEP290エキソン2~26を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:85のヌクレオチド4,980~5,383のうちのいずれか1個または複数個を含む。一態様では、結合部位が、SEQ ID NO:85のヌクレオチド5,348~5,838のうちのいずれか1個または複数個(例えばSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,348~5,700のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,400~5,600のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:85のヌクレオチド5,460~5,560のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:85の少なくともヌクレオチド5,500)を含む。
【0158】
他の態様では、トランススプライシング分子が、CEP290のイントロン27(SEQ ID NO:86)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性CEP290エキソン2~27を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:86のヌクレオチド120~680、ヌクレオチド710~2,200またはヌクレオチド2,670~2,910のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:86のヌクレオチド790~2,100のうちのいずれか1つまたは複数、例えばSEQ ID NO:86のヌクレオチド1,020~1,630のうちのいずれか1個または複数個を含む。他の態様では、結合部位がSEQ ID NO:86のヌクレオチド1,670~2,000のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0159】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子が、CEP290のイントロン28(SEQ ID NO:87)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性CEP290エキソン2~28を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:87のヌクレオチド1~390、ヌクレオチド410~560またはヌクレオチド730~937のうちのいずれか1個または複数個を含む。いくつかの態様では、結合部位がSEQ ID NO:87のヌクレオチド1~200のうちのいずれか1個または複数個を含む。他の態様では、結合部位がSEQ ID NO:87のヌクレオチド720~900のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0160】
いくつかの態様では、トランススプライシング分子が、CEP290のイントロン29(SEQ ID NO:88)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性CEP290エキソン2~29を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:88のヌクレオチド1~600、ヌクレオチド720~940またはヌクレオチド1,370~1,790のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0161】
他の態様では、トランススプライシング分子が、CEP290のイントロン30(SEQ ID NO:89)に結合する結合ドメインを特色とし、機能性CEP290エキソン2~30を有するコードドメインを含む。いくつかの態様では、結合部位が、SEQ ID NO:89のヌクレオチド880~1,240のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:89のヌクレオチド950~1,240のうちのいずれか1個または複数個、例えばSEQ ID NO:89のヌクレオチド1,060~1,240のうちのいずれか1個または複数個を含む。
【0162】
スプライシングドメイン
以下のスプライシングドメインは、本発明の任意のトランススプライシング分子(例えば、本明細書に記載の任意のABCA4トランススプライシング分子またはCEP290トランススプライシング分子)に使用され得る。
【0163】
スプライシングドメインには、スプライス部位、分岐点および/またはトランススプライシングを媒介するPPTトラクトが含まれ得る。いくつかの態様では、スプライシングドメインが単一のスプライス部位を有し、これは、該スプライス部位は、対応するスプライス部位がないためトランススプライシングは可能であるが、シススプライシングは可能でないことを表す。いくつかの態様では、3'トランススプライシング分子のスプライシングドメインに、高保存分岐点または分岐部位配列、ポリピリミジントラクト(PPT)ならびに3'スプライスアクセプター(AGもしくはYAG)部位および/または5'スプライスドナー部位が含まれる。5'トランススプライシング分子のスプライシングドメインには分岐点またはPPTは含まれていないが、5'スプライスアクセプター/または3'スプライスドナースプライス部位は含まれている。
【0164】
スプライシングドメインは当業者により、公知の方法および原則に従って選択され得る。スプライシングドメインは、スプライセオソームによって認識される必須のコンセンサスモチーフを提供する。分岐点およびPPTの使用は、トランススプライシングに関与する2つのリン酸基転移反応の遂行に必要とされるコンセンサス配列に従う。一態様では、哺乳動物における分岐点コンセンサス配列がYNYURAC(Y=ピリミジン;N=任意のヌクレオチド)である。ポリピリミジントラクトは、分岐点とスプライスアクセプター部位との間に位置し、異なる分岐点の利用および3'スプライス部位の認識に重要である。RNAスプライシングに使用される5'スプライスドナー部位および3'スプライス領域のコンセンサス配列は当技術分野において周知である。また、5'ドナースプライス部位および3'スプライス領域として機能を果たす能力を維持している修飾型コンセンサス配列も使用され得る。簡単には、一態様では、5'スプライス部位のコンセンサス配列が核酸配列AG/GURAGU(ここで、/はスプライス部位を示す)である。別の態様では、スプライシング調節シグナル配列があれば、これを維持するために、スプライス部位に近位のエキソンに対応する内在性スプライス部位が使用され得る。
【0165】
一態様では、スペーサーを有する好適な5'スプライス部位は、
である。一態様では、好適な5'スプライス部位は、AGGTである。
【0166】
一態様では、好適な3'トランススプライシング分子の分岐部位は、5'-TACTAAC-3'である。一態様では、好適な3'スプライス部位は、
である。一態様では、好適な3'トランススプライシング分子のPPTは、
である。
【0167】
さらなる構成成分および修飾
本発明の任意のトランススプライシング分子(例えば、本明細書に記載の任意のABCA4トランススプライシング分子またはCEP290トランススプライシング分子)のいくつかの態様では、スプライシングドメインが、1つまたは複数のさらなる構成成分を含み得る人工イントロンの一部として含められる。例えば、人工イントロン内には、トランススプライシング分子内でスプライシングドメインを標的結合ドメインから離隔するためのスペーサー領域が含められ得る。スペーサー領域は、(i)スプライシングされていないトランススプライシング分子があればその翻訳をブロックする機能を果たすであろう終止コドンおよび/または(ii)標的プレmRNAに対するトランススプライシングを促進する配列などの特色を含むように設計され得る。スペーサーは、トランススプライシング分子のその他の構成成分の長さおよびrAAVの制限に応じて3~25個またはそれより多くのヌクレオチドであり得る。一態様では、好適な5'トランススプライシング分子のスペーサーは、
である。一態様では、好適な3'スペーサーは、
である。
【0168】
トランススプライシング分子のさらに他の任意の構成成分(例えば、人工イントロンの一部としての)としては、ミニイントロンおよびイントロン内もしくはエキソン内エンハンサー(例えば、イントロン内スプライスエンハンサー、例えば下流イントロン内スプライスエンハンサー)またはトランススプライシングを調節するであろうサイレンサーが挙げられる。
【0169】
別の態様では、トランススプライシング分子が、(例えば、人工イントロンの一部として)スペーサー内、結合ドメイン内またはトランススプライシング分子のどこかに組み込まれた非特異的トランススプライシングを抑制するための少なくとも1つのセーフティ(safety)配列をさらに含む。これは、比較的弱い相補性によってトランススプライシング分子の3'スプライス部位および/または5'スプライス部位のエレメントをカバー(cover)し、非特異的トランススプライシングを抑制するトランススプライシング分子の一領域である。トランススプライシング分子は、該トランススプライシング分子の結合部分/ターゲティング部分(1つまたは複数)のハイブリダイゼーションが起こると、3'スプライス部位または5'スプライス部位が露出(uncover)され、充分に活性となるような様式に設計される。かかるセーフティ配列は、トランススプライシング分子の分岐点の片側もしくは両側、ピリミジントラクト、3'スプライス部位および/または5'スプライス部位(スプライシングエレメント)に結合するか、あるいはスプライシングエレメント自体の一部に結合する場合もあり得るシス配列(あるいは別個の第2の核酸鎖の場合もあり得る)の相補鎖を含む。セーフティ配列の結合は、トランススプライシング分子の標的結合領域が標的プレmRNAに結合し、したがって、そのスプライシングエレメントが露出して活性化されること(標的プレmRNAとのトランススプライシングが利用可能となること)によって破壊され得る。別の態様では、トランススプライシング分子が、3'UTR配列または3'末端もしくは5'末端に付加されたリボザイム配列を有する。
【0170】
一態様では、スプライシング促進配列、例えばエキソン内スプライシング促進配列と称される配列なども人工イントロンの構造内に含められ得る。さらなる構造部、例えば、RNA発現/安定性を修飾するためのポリアデニル化シグナル配列、またはスプライシングを促進するための5'スプライス配列、さらなる結合領域、セーフティ自己相補的領域、さらなるスプライス部位、あるいは分子の安定性を調節して分解を抑制するための保護基を人工イントロンに付加してもよい。また、スプライシングされていないトランススプライシング分子の翻訳を抑制するためにトランススプライシング分子構造内に(例えば、人工イントロンの一部として)終止コドンが含められ得る。核局在化およびスプライセオソームの組み込みならびに細胞内の安定性を促進または助長するためのさらなるエレメント、例えば3'ヘアピン構造、環状化RNA、ヌクレオチド塩基修飾または合成アナログがトランススプライシング分子内に組み込まれ得る。
【0171】
いくつかの態様では、標的プレmRNAに対するトランススプライシング分子の結合が、相補性(すなわち、核酸の塩基対合特性に基づいて)、三重らせんの形成またはタンパク質-核酸相互作用(本明細書に挙げた文献に記載のような)によって媒介される。一態様では、核酸トランススプライシング分子としてDNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッド分子が挙げられ、ここで、DNAまたはRNAは一本鎖または二本鎖のいずれかである。また、本明細書において、前述のRNAまたはDNAのうちの1つに、好ましくはストリンジェント条件下で、例えば2.5×SSCバッファー中で60℃および低バッファー濃度、例えば0.5×SSCバッファーにて37℃での数回の洗浄の条件でハイブリダイズし得るRNAまたはDNAも包含される。このような核酸は、脂質リン酸ホスファターゼ活性および/または原形質膜との結合を示すタンパク質をコードし得る。トランススプライシング分子をインビトロで合成する場合、かかるトランススプライシング分子は、例えば、該分子の安定性、標的mRNAとのハイブリダイゼーション、細胞内への輸送、細胞内での酵素による切断に対する安定性などを改善するために塩基部分、糖鎖部分またはリン酸主鎖が修飾され得る。例えば、全電荷を低減させるためのトランススプライシング分子の修飾により、該分子の細胞内取込みが促進され得る。また、ヌクレアーゼまたは化学分解に対する感受性を低減させるための修飾を行なってもよい。該核酸分子は、別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発切断剤などとコンジュゲートされるような様式で合成され得る。
【0172】
該核酸分子に対する種々の他の周知の修飾が、細胞内での安定性および半減期を高める手段として導入され得る(オリゴヌクレオチドに関する上記もまた参照のこと)。考えられ得る修飾は当技術分野で公知である。合成トランススプライシング分子の構造に対して行なわれ得る修飾としては主鎖修飾が挙げられる。
【0173】
III.組換えAAV分子
任意の適当な核酸ベクターが本発明の組成物および方法との関連において、トランススプライシング分子および組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の構成成分を設計およびアセンブルするために使用され得る。一態様では、ベクターが、トランススプライシング分子を担持しており、対象の選択された細胞内でトランススプライシング分子を発現させるプロモーターによって駆動される組換えAAVである。組換えベクターのアセンブリのための方法は当技術分野において公知である。例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1989;Kay,M.A.et al.,Nat.Medic,2001,7(l):33-40;およびWalther W.and Stein U.,Drugs 2000,60(2):249-71を参照のこと。
【0174】
本明細書に記載の一部の特定の態様では、ABCA4遺伝子の結合ドメインとコードドメインを担持しているトランススプライシング分子が、AAVベクターによる処置を必要とする選択された細胞、例えば光受容体細胞に送達される。30種より多くの天然に存在するAAV血清型が利用可能である。AAVカプシドには多くの天然バリアントが存在し、眼球系細胞に特異的に適した特性を有するAAVの同定および使用が可能である。AAVウイルスは慣用的な分子生物学手法によって改変操作され、このような粒子を、トランススプライシング分子核酸配列の細胞特異的送達のため、免疫原性の最小限化のため、安定性および粒子寿命の微調整のため、効率的な分解のため、核への正確な送達のためなどに最適化することが可能となり得る。
【0175】
本明細書に記載のトランススプライシング分子の発現は、選択された細胞内で、所望のトランススプライシング分子をコードしている配列を含む組換え改変操作型AAVまたは人工AAVによる送達によって行なわれ得る。AAVの使用は、これが比較的無毒性であり、効率的な遺伝子導入をもたらし、特定の目的のために容易に最適化できるため、DNAの外来性送達の一般的な様式である。ヒトまたは非ヒト霊長類から分離され、充分に特性評価されたAAV血清型の中でもヒト血清型2型は、いろいろな標的組織および動物モデルでの効率的な遺伝子導入実験に広く使用されている。他のAAV血清型としては、非限定的にAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9が挙げられる。特に指定のない限り、AAV ITRおよび本明細書に記載の他の選択されたAAV構成成分が、非限定的にAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9または他の既知および未知のAAV血清型を含む任意のAAV血清型の中から容易に選択され得る。一態様では、ITRがAAV2に由来する。このようなITRまたは他のAAV構成成分は、当業者に利用可能な手法を用いてAAV血清型から容易に単離され得る。かかるAAVは分離されたものであっても、学術団体、市販または公の供給元(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)から入手したものであってもよい。あるいはまた、AAV配列は、例えば文献またはデータベース、例えばGenBank、PubMedなどにおいて入手可能なものなどの公開された配列を参照することにより合成手段または他の適当な手段によって得られ得る。
【0176】
ベクター内へのアセンブリのために望ましいAAV断片としては、vp1、vp2、vp3および超可変領域を含むcapタンパク質、rep 78、rep 68、rep 52およびrep 40を含むrepタンパク質ならびにこれらのタンパク質をコードしている配列が挙げられる。このような断片はさまざまなベクター系および宿主細胞に容易に使用され得る。かかる断片は単独で、他のAAV血清型の配列もしくは断片との組み合わせで、または他のAAVウイルス配列もしくは非AAVウイルス配列に由来するエレメントとの組み合わせで使用され得る。本明細書で用いる場合、人工AAV血清型としては、非限定的に、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVが挙げられる。かかる人工カプシドは任意の適当な手法により、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、選択された異なるAAV血清型、同じAAV血清型の非連続部分から得られ得る異種配列、非AAVウイルス供給源から得られ得る異種配列または非ウイルス供給源から得られ得る異種配列との組み合わせで用いて作出され得る。人工AAV血清型は、非限定的にシュードタイプ化AAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシドまたは「ヒト化」AAVカプシドであり得る。あるAAVのカプシドが異なるカプシドタンパク質を有するAAV由来のITRとともに使用されたシュードタイプ化ベクターが本発明において有用である。一態様では、AAVがAAV2/5(すなわち、AAV2 ITRとAAV5カプシドを有するAAV)である。別の態様では、AAVがAAV2/8(すなわち、AAV2 ITRとAAV8カプシドを有するAAV)である。一態様では、AAVがAAV8カプシドを含む。かかるAAV8カプシドはNCBI Reference Sequence:YP_077180.1(SEQ ID NO:56)にみられるアミノ酸配列を含む。別の態様では、AAV8カプシドがGenBank accession:AF513852.1(SEQ ID NO:57)のnt 2121~4337にコードされたカプシドを含む。
【0177】
一態様では、AAVが、AAV8に由来するカプシド配列を含む。いくつかの態様では、AAV8に由来するAAVが、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第9,567,376号に記載されたAAV8(b)である。AAV(b)(SEQ ID NO:58)は、野生型AAV8と比較するとアミノ酸位置587~595にPro-Glu-Arg-Thr-Ala-Met-Ser-Leu-Proのアミノ酸配列を含む。別の態様では、AAV8(b)カプシドがSEQ ID NO:59にコードされたものである。
【0178】
一態様では、本明細書に記載の組成物および方法に有用なベクターは最低限、選択されたAAV血清型カプシド、例えばAAV2カプシドをコードしている配列またはその断片を含む。別の態様では、有用なベクターは最低限、選択されたAAV血清型のrepタンパク質、例えばAAV2 repタンパク質をコードしている配列またはその断片を含む。任意に、かかるベクターはAAVのcapタンパク質とrepタンパク質の両方を含み得る。AAVのrepとcapの両方を備えているベクターでは、AAV repおよびAAV capの配列はどちらも1つの血清型起源、例えばAAV2起源のものであり得る。
【0179】
あるいはまた、rep配列がcap配列を得たものと異なるAAV血清型由来のものであるベクターが使用され得る。一態様では、rep配列とcap配列を別々の供給源(例えば、別々のベクター、または宿主細胞とベクター)で発現させる。別の態様では、このようなrep配列をインフレームで異なるAAV血清型のcap配列と融合させ、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,282,199号に記載のキメラAAVベクターを形成する。
【0180】
適当な組換えAAV(rAAV)は、本明細書において定義しているAAV血清型カプシドタンパク質をコードしている核酸配列またはその断片;機能性rep遺伝子;例えば、AAV ITRとトランススプライシング分子核酸配列で構成されたミニジーン;および該AAVカプシドタンパク質内への該ミニジーンのパッケージングを可能にするのに充分なヘルパー機能部を含む宿主細胞を培養することにより作出される。AAVミニジーンがAAVカプシド内にパッケージングされるように宿主細胞内で培養されるのに必要とされる構成成分は、宿主細胞に対してトランスに供給される。あるいはまた、必要とされる構成成分(例えば、ミニジーン、rep配列、cap配列および/またはヘルパー機能部)のうちのいずれか1つまたは複数が、必要とされる構成成分のうちの1つまたは複数を含むように当業者に公知の方法を用いて改変操作されている安定な宿主細胞によって供給されてもよい。
【0181】
一態様では、AAVがプロモーター(またはプロモーターの機能性断片)を含む。rAAVに使用すべきプロモーターの選択は、選択された導入遺伝子を所望の標的細胞内において発現させ得るいくつかの広範な構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの中から行なわれ得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願公開公報第2014/012482号において確認されるプロモーターのリストを参照のこと。一態様では、プロモーターが細胞特異的である。用語「細胞特異的」は、組換えベクター用に選択された具体的なプロモーターが、選択された導入遺伝子の特定の細胞型での発現を指令できることを意味する。一態様では、プロモーターが光受容体細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、プロモーターが杆体および/または錐体における発現に特異的である。別の態様では、プロモーターが、網膜色素上皮(RPE)細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、プロモーターが神経節細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、プロモーターがミュラー細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、プロモーターが双極細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、プロモーターが水平細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、プロモーターがアマクリン細胞内での導入遺伝子の発現に特異的である。別の態様では、導入遺伝子が上記の任意の細胞内で発現される。
【0182】
別の態様では、プロモーターが、標的遺伝子が発現される天然状態のプロモーターである。有用なプロモーターとしては、非限定的に、杆体オプシンプロモーター、赤緑オプシンプロモーター、青オプシンプロモーター、cGMP-ホスホジエステラーゼプロモーター、マウスオプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、錐体伝導路(transducing)のアルファサブユニット、ベータホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症プロモーター、NXNL2/NXNL 1プロモーター、RPE65プロモーター、網膜緩慢変性(RDS)/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモーター、およびVMD2プロモーターが挙げられる。
【0183】
ミニジーンまたはrAAV内に含められる他の慣用的な調節配列は、WO 2014/124282などの文献および本明細書に挙げた参照により本明細書に組み入れられる他のものにも開示されている。当業者により、本明細書に記載の範囲から逸脱することなく、これらおよび他の発現制御配列の中から選択が行なわれ得よう。
【0184】
AAVミニジーン内には、本明細書に記載のトランススプライシング分子およびその調節配列ならびに5'AAV ITRおよび3'AAV ITRが含まれ得る。一態様では、AAV血清型2型のITRが使用される。別の態様では、AAV血清型5型または8型のITRが使用される。しかしながら、他の適当な血清型由来のITRを選択してもよい。いくつかの態様では、ミニジーンがカプシドタンパク質内にパッケージングされ、選択された宿主細胞に送達される。
【0185】
rAAVを作製するのに必要とされるミニジーン、rep配列、cap配列およびヘルパー機能部をパッケージング宿主細胞に、自身に担持された配列を転移する任意の遺伝子エレメントの形態で送達してもよい。選択された遺伝子エレメントは、任意の適当な方法、例えば本明細書に記載のものによって送達され得る。本明細書に記載の任意の態様を構築するために使用される方法は、核酸操作の技術分野の当業者に公知であり、遺伝子改変操作、組換え改変操作および合成手法が挙げられる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。同様に、rAAVビリオンの作出方法は周知であり、適当な方法の選択は本発明に対する限定ではない。例えば、各々、参照により本明細書に組み入れられるK.Fisher et al.,J.Virol.,1993 70:520-532および米国特許5,478,745を参照のこと。
【0186】
別の態様では、トランススプライシング分子のミニジーンが、参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願公開公報第2012/158757号に開示されているものなどのプロウイルスプラスミド内に調製される。かかるプロウイルスプラスミドは、機能的に関連した状態で含まれる、野生型5'AAV2 ITRの即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた前記ITR配列;サイトメガロウイルス(CMV)-ニワトリベータアクチン配列の上流の49個の核酸のサイトメガロウイルス配列を含むプロモーター、または光受容体特異的プロモーター/エンハンサー、プロモーター配列全体の即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた該プロモーター、およびプロモーター配列の上流のCMV配列もしくはエンハンサー配列のみの即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた該上流配列を含むモジュール型組換えAAVゲノムを含んでいる。本明細書に記載のトランススプライシング分子はマルチクローニングポリリンカーの部位内に挿入され得、このとき、該トランススプライシング分子はプロモーターに、該プロモーターの調節的制御下で機能的に連結される。前記ポリA配列の即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされたウシ成長ホルモン由来ポリアデニル化配列;および野生型3'AAV2 ITRの即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた該3'ITR配列;もまたこのプラスミドの一部である。プラスミド骨格は、細菌細胞内での複製に必要なエレメント、例えばカナマイシン耐性遺伝子を含み、該骨格自体が転写ターミネーター/インスレーター配列にフランキングされている。
【0187】
一態様では、プロウイルスプラスミドが、(a)機能的に関連した状態で含まれる(i)野生型5'AAV2 ITRの即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた前記ITR配列;(ii)(A)CMV-ニワトリベータアクチン配列の上流の49個の核酸のCMV配列を含むプロモーター;(b)光受容体特異的プロモーター/エンハンサー;または(c)神経細胞特異的プロモーター/エンハンサーを含むモジュール型組換えAAVゲノムを含む。プロモーターは、該プロモーター配列全体の即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位、および該プロモーター配列の上流のCMV配列もしくはエンハンサー配列のみの即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた該上流配列にフランキングされる。また、トランススプライシング分子の配列、例えば本明細書に記載の任意のものの挿入を可能にするマルチクローニングポリリンカー配列、このとき、該トランススプライシング分子は、プロモーターに、該プロモーターの調節的制御下で機能的に連結される;前記ポリA配列の即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされたウシ成長ホルモン由来ポリアデニル化配列;および野生型3'AAV2 ITRの即時の除去もしくは置き換えを可能にするユニークな制限部位にフランキングされた該3'ITR配列もこのプロウイルスプラスミドの一部である。該プロウイルスプラスミドはまた、細菌細胞内での複製に必要なエレメントを含み、カナマイシン耐性遺伝子をさらに含むプラスミド骨格も含んでおり、前記プラスミド骨格は転写ターミネーター/インスレーター配列にフランキングされている。本明細書に記載のプロウイルスプラスミドはまた、そのプラスミド骨格内に、骨格長を増大させるため、および非機能性AAVゲノムの逆パッケージングを抑制するためのラムダファージの5.1 kbの非コードスタッファー配列も含んでいてもよい。
【0188】
いくつかの態様では、プロウイルスプラスミドが、複数コピーのトランススプライシング分子を含んでいる。例えば、本発明は、AAVのパッケージング限界の半分未満であり、したがって、1つのプロウイルスプラスミドにおいて1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回またはそれより多く反復され得るトランススプライシング分子を特色とする。
【0189】
またさらなる局面において、プロウイルスプラスミドのプロモーターは、大型のトランススプライシング分子の配列がrAAV内に挿入されることを可能にするために該プロモーターのサイズが縮小されるように修飾される。一態様では、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる国際特許出願公開公報第2017/087900号に記載のように、通常、合計で約1,000塩基対の非コードエキソンとイントロンを含むCMV/CBAハイブリッドプロモーターが、130塩基対のキメライントロンで置き換えられる。
【0190】
このようなプロウイルスプラスミドは次いで、該プロウイルスプラスミドに担持されたトランススプライシング分子の導入遺伝子を発現する組換えウイルスを作出するために、現在使用されている慣用的なパッケージング方法論において使用される。好適な産生細胞株は当業者によって容易に選択される。例えば、好適な宿主細胞は、任意の生物有機体、例えば原核生物(例えば、細菌)細胞ならびに真核生物細胞、例えば昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞から選択され得る。簡単には、プロウイルスプラスミドを選択されたパッケージング細胞にトランスフェクトし、この場合、これは一過的に存在し得る。あるいはまた、フランキングITRを有するミニジーンまたは遺伝子発現カセットを宿主細胞のゲノム内に、染色体上に、またはエピソームとしてのいずれかで安定的に組み込む。好適なトランスフェクション手法は公知であり、組換えAAVゲノムを宿主細胞に送達するために容易に使用され得る。典型的には、プロウイルスプラスミドは、capタンパク質および/またはrepタンパク質を発現する宿主細胞内で培養される。宿主細胞内では、フランキングAAV ITRを有するトランススプライシング分子からなるミニジーンが救済されてカプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質内にパッケージングされ、感染性のウイルス粒子が形成される。したがって、組換えAAV感染性粒子は、プロウイルスプラスミドを担持しているパッケージング細胞を、感染性AAVのエンベロープまたはカプシド内への遺伝子発現カセットウイルスゲノムのパッケージングを可能にするのに充分なウイルス配列の存在下で培養することにより作製される。
【0191】
IV.薬学的組成物およびキット
本明細書において、核酸トランススプライシング分子、プロウイルスプラスミド、または本明細書に記載の核酸トランススプライシング分子を含むrAAVを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの態様では、薬学的組成物が本明細書に記載の任意の5'トランススプライシング分子を含む。他の態様では、薬学的組成物が本明細書に記載の任意の3'トランススプライシング分子を含む。いくつかの態様では、薬学的組成物が5'トランススプライシング分子および3'トランススプライシング分子を含み、例えば、このとき、該5'トランススプライシング分子と該3'トランススプライシング分子が総合的に機能性ABCA4エキソン1~50を含んでおり、同じ標的ABCA4イントロンに結合する。
【0192】
本明細書に記載の薬学的組成物は、夾雑物について慣用的な方法によって評価され、次いで適当な投与経路に意図された薬学的組成物に製剤化され得る。トランススプライシング分子を含んでいるさらに他の組成物、例えば裸のDNAまたはタンパク質としての組成物も、適当な担体とともに同様に製剤化され得る。かかる製剤化は、標的細胞への投与のために具体的に指示される薬学的および/または生理学的に許容されるビヒクルまたは担体の使用を伴う。一態様では、標的細胞への投与に適した担体としては、緩衝生理食塩水、等張性塩化ナトリウム溶液、またはpHを適切な生理学的レベルに維持するための他のバッファー、例えばHEPES、ならびに任意で他の薬効薬剤、薬学的薬剤、安定化剤、バッファー、担体、佐剤、希釈剤などが挙げられる。
【0193】
いくつかの態様では、担体が注射用液である。例示的な生理学的に許容される担体としては、滅菌されたパイロジェンフリー水および滅菌されたパイロジェンフリーリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。かかる公知のさまざまな担体が、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,629,322号に示されている。一態様では、担体が等張性塩化ナトリウム溶液である。別の態様では、担体が緩衝塩類溶液である。一態様では、担体がtweenを含む。ウイルスが長期保存される場合、これはグリセロールまたはTween20の存在下で凍結され得る。
【0194】
他の態様では、本明細書に記載のトランススプライシング分子を含む組成物が界面活性剤を含む。有用な界面活性剤、例えばPluronic F68(Poloxamer 188,LUTROL(登録商標)F68としても公知)は、AAVが不活性表面に固着するのを抑制し、したがって所望の用量の送達を確実にするため含められ得る。一例として、本明細書に記載の眼疾患の処置のために設計された実例の組成物の一例は、本明細書に記載のような3'トランススプライシング分子をコードしている核酸配列が該トランススプライシング分子を哺乳動物対象の眼球系細胞内で発現させる調節配列の制御下に担持された組換えアデノ随伴ベクターと、薬学的に許容される担体とを含む。担体は等張性塩化ナトリウム溶液であり、界面活性剤Pluronic F68を含む。一態様では、トランススプライシング分子が本明細書に記載の任意のものである。
【0195】
また別の例示的な態様では、組成物が、ABCA4遺伝子の置き換えのための3'トランススプライシング分子または5'トランススプライシング分子を担持している組換えAAV2/5シュードタイプ化アデノ随伴ウイルスを含み、該核酸配列は前記光受容体細胞内での該トランススプライシング分子の発現を指令するプロモーターの制御下にあり、このとき、該組成物は、網膜下注射に適した担体およびさらなる構成成分とともに製剤化される。さらに別の態様では、この組成物の作製またはアセンブリのための組成物または構成成分、例えば担体、rAAV粒子、界面活性剤および/またはrAAVを作出するための構成成分ならびに該組成物を調製するための適当な研究室用ハードウェアがキットに組み込まれ得る。
【0196】
いくつかの例では、組成物が、CEP290遺伝子の置き換えのための5'トランススプライシング分子を担持している組換えAAV2/5シュードタイプ化アデノ随伴ウイルスを含み、該核酸配列は前記光受容体細胞内での該トランススプライシング分子の発現を指令するプロモーターの制御下にあり、このとき、該組成物は、網膜下注射に適した担体およびさらなる構成成分とともに製剤化される。さらに別の態様では、この組成物の作製またはアセンブリのための組成物または構成成分、例えば担体、rAAV粒子、界面活性剤および/またはrAAVを作出するための構成成分ならびに該組成物を調製するための適当な研究室用ハードウェアがキットに組み込まれ得る。
【0197】
さらに本明細書において、5'トランススプライシング分子を含む第1の薬学的組成物と3'トランススプライシング分子を含む第2の薬学的組成物とを含んでいるキットであって、例えば該5'トランススプライシング分子と該3'トランススプライシング分子が総合的に機能性ABCA4エキソン1~50を含んでおり、同じ標的ABCA4イントロンに結合する(例えば、該トランススプライシング分子が本明細書に記載の任意のAAVベクター内にパッケージングされる)キットを提供する。いくつかの態様では、キットに、投与前に該2つの薬学的組成物を混合するための使用説明書が含められる。
【0198】
さらに本明細書において、標的CEP290イントロンに結合する5'トランススプライシング分子を含む第1の薬学的組成物を含んでいるキットを提供する。
【0199】
V.方法
ABCA4トランススプライシングを伴う上記の組成物は、ABCA4遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害、例えばスターガルト病(例えば、スターガルト病1型)を処置する方法、例えば本明細書に記載の該疾患と関連している症状を遅延または軽快させる方法に有用である。かかる方法は、標的細胞内でのABCA4の発現を修正するために、標的ABCA4遺伝子(例えば、ABCA4プレmRNA)を、本明細書に記載のようなトランススプライシング分子(例えば、1つもしくは複数の本明細書に記載のような3'トランススプライシング分子、5'トランススプライシング分子または3'トランススプライシング分子と5'トランススプライシング分子の両方)と、該トランススプライシング分子のコードドメインと標的ABCA4遺伝子とのスプライシングが起こり、1つまたは複数の欠陥または変異を有する標的とされる遺伝子の一部が、該標的とされる遺伝子の機能性の(すなわち、健常な)、または正常もしくは野生型もしくは修正型のmRNAで置き換わる条件下で接触させることを伴う。したがって、該方法および組成物は、特定の変異および/または遺伝子発現と関連している眼疾患/病態を処置するために使用される。
【0200】
一態様では、該接触が罹患対象への直接投与を伴う。別の態様では、該接触が、培養細胞および対象に再移植される処置済み眼球系細胞に対してエクスビボで行なわれ得る。一態様では、該方法が、3'トランススプライシング分子を担持しているrAAVを投与することを伴う。別の態様では、該方法が、5'トランススプライシング分子を担持しているrAAVを投与することを伴う。さらに別の態様では、該方法が、3'トランススプライシング分子を担持しているrAAVと5'トランススプライシング分子を担持しているrAAVの混合物を投与することを伴う。このような方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の任意のものの有効濃度の組成物を投与することを含む。
【0201】
いくつかの態様では、該方法が、ABCA4内における変異と関連している障害、例えばスターガルト病(例えば、スターガルト病1型)を有する対象を処置するための1種類または複数種のトランススプライシング分子を選択することを含む。かかる選択は対象の遺伝子型に基づいてなされ得る。いくつかの態様では、ABCA4と関連している障害が常染色体性劣性障害であり得る。いくつかの例では、対象がABCA4内における変異に関してホモ接合型または複合ヘテロ接合型である。ABCA4内における具体的な変異のスクリーニングおよび同定の方法は当技術分野において公知である。
【0202】
他の例では、CEP290トランススプライシングを伴う上記の組成物が、CEP290遺伝子内における変異によって引き起こされる疾患または障害、例えばレーバー先天性黒内障(例えば、LCA 10)を処置する方法、例えば本明細書に記載の該疾患と関連している症状を遅延または軽快させる方法に有用である。かかる方法は、標的細胞内でのCEP290の発現を修正するために、標的CEP290遺伝子(例えば、CEP290プレmRNA)を、本明細書に記載のようなトランススプライシング分子(例えば、5'トランススプライシング分子)と、該トランススプライシング分子のコードドメインと標的CEP290遺伝子とのスプライシングが起こり、1つまたは複数の欠陥または変異を有する標的とされる遺伝子の一部が、該標的とされる遺伝子の機能性の(すなわち、健常な)、または正常もしくは野生型もしくは修正型のmRNAで置き換わる条件下で接触させることを伴う。したがって、該方法および組成物は、特定の変異および/または遺伝子発現と関連している眼疾患/病態を処置するために使用される。本発明の方法は、5'トランススプライシング分子(例えば、本明細書に記載の任意の5'トランススプライシング分子)またはその薬学的組成物を投与することにより、CEP290のイントロン26内(例えば、イントロン26のヌクレオチド1,655における)病原性点変異を修正することを含む。したがって、本発明により、本明細書に記載のトランススプライシング分子を投与することによって、CEP290内における変異と関連している疾患または障害(例えば、CEP290のイントロン26内、例えばイントロン26のヌクレオチド1,655における変異と関連している疾患または障害)を有する対象を処置する方法を提供する。前述の任意のトランススプライシング分子が、薬学的組成物(例えば、予備調製済みであるか、または投与前に混合されるかのいずれかの両方の分子を含む、例えばキットの一部としての単一の薬学的組成物)中に含められ得る。
【0203】
一態様では、該接触が罹患対象への直接投与を伴う。別の態様では、該接触が、培養細胞および対象に再移植される処置済み眼球系細胞に対してエクスビボで行なわれ得る。一態様では、該方法が、5'トランススプライシング分子を担持しているrAAVを投与することを伴う。このような方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の任意のものの有効濃度の組成物を投与することを含む。
【0204】
いくつかの態様では、該方法が、CEP290内における変異と関連している障害、例えばLCA 10を有する対象を処置するための1種類または複数種のトランススプライシング分子を選択することを含む。かかる選択は対象の遺伝子型に基づいてなされ得る。いくつかの態様では、CEP290と関連している障害が常染色体性劣性障害であり得る。いくつかの例では、対象がCEP290内における変異に関してホモ接合型または複合ヘテロ接合型である。CEP290内における具体的な変異のスクリーニングおよび同定の方法は当技術分野において公知である。
【0205】
単一変異を修正するための単一トランススプライシング分子
本発明の方法は、ABCA4内における単一変異(例えば、対象の一方の対立遺伝子の変異)の場所に基づいて単一トランススプライシング分子を選択することを含む。常染色体性劣性変異の状況におけるいくつかの例では、2つの変異のうちの1つの修正だけで機能性タンパク質の活性を回復させるのに充分であり得、例えば、このとき、第2の対立遺伝子は、第1の変異が修正されるように構成された単一のAAV送達トランススプライシング分子の範囲外のABCA4遺伝子の対向する部分に変異を有する。
【0206】
したがって、いくつかの態様では、本発明の方法は、標的遺伝子の5'部分における単一変異を修正するための単一トランススプライシング分子を、例えば他方の対立遺伝子内における変異の場所に関係なく選択することを含む。一態様では、変異型エキソンがエキソン1であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1を含む。一態様では、エキソン1またはエキソン2が変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1および2を含む。一態様では、エキソン1、2および3のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~3を含む。一態様では、エキソン1、2、3および4のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~4を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4および5のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~5を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5および6のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~6を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6または7のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~7を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7または8のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~8を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8または9のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~9を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~10を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~11を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~12を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~13を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~13を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~14を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~15を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~16を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~17を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~18を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~19を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~20を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~21を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~22を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~23を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~24を含む。
【0207】
あるいはまた、変異が標的遺伝子の3'部分に存在する例では、3'トランススプライシング分子が、例えば他方の対立遺伝子内における変異の場所に関係なく該変異が修正されるように選択される。一態様では、エキソン23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン23~50を含む。一態様では、エキソン24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22または23であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン24~50を含む。一態様では、エキソン25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン25~50を含む。一態様では、エキソン26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン26~50を含む。一態様では、エキソン27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン27~50を含む。一態様では、エキソン28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン28~50を含む。一態様では、エキソン29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン29~50を含む。一態様では、エキソン30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン30~50を含む。一態様では、エキソン31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン31~50を含む。一態様では、エキソン32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン32~50を含む。一態様では、エキソン33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン33~50を含む。一態様では、エキソン34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン34~50を含む。一態様では、エキソン35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン35~50を含む。一態様では、エキソン36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン36~50を含む。一態様では、エキソン37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン37~50を含む。一態様では、エキソン38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン38~50を含む。一態様では、エキソン39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン39~50を含む。一態様では、エキソン40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン40~50を含む。一態様では、エキソン41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン41~50を含む。一態様では、エキソン42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン42~50を含む。一態様では、エキソン43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン43~50を含む。一態様では、エキソン44、45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン44~50を含む。一態様では、エキソン45、46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン45~50を含む。一態様では、エキソン46、47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン46~50を含む。一態様では、エキソン47、48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン47~50を含む。一態様では、エキソン48、49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン48~50を含む。一態様では、エキソン49または50のうちの1つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン49または50を含む。一態様では、エキソン50が変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン50を含む。
【0208】
複数の変異を修正するための単一トランススプライシング分子
本発明の方法は、2つの変異が遺伝子の5'部分または遺伝子の3'部分のいずれかに存在する場合、AAVベクター内にパッケージングされることができる単一トランススプライシング分子が両方の変異の範囲に及び、それにより両方の変異修正することができるように、対象の各対立遺伝子内におけるABCA4内における変異の場所に基づいて単一トランススプライシング分子を選択することを含む。
【0209】
例えば、両方の変異が標的遺伝子の5'部分に存在する例では、両方の変異が修正されるような5'トランススプライシング分子が選択される。一態様では、変異型エキソンがエキソン1であり(すなわち、両方の変異がエキソン1に存在する)、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1を含む。一態様では、エキソン1および/またはエキソン2が変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1および2を含む。一態様では、エキソン1、2および3のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~3を含む。一態様では、エキソン1、2、3および4のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~4を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4および5のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~5を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5および6のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~6を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6または7のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~7を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7または8のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~8を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8または9のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~9を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~10を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~11を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~12を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~13を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~13を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~14を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~15を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~16を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~17を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~18を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン19、22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~19を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~20を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~21を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~22を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~23を含む。一態様では、エキソン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン1~24を含む。
【0210】
あるいはまた、両方の変異が標的遺伝子の3'部分に存在する例では、両方の変異が修正されるような3'トランススプライシング分子が選択される。一態様では、エキソン23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン23~50を含む。一態様では、エキソン24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22または23であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン24~50を含む。一態様では、エキソン25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン25~50を含む。一態様では、エキソン26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン26~50を含む。一態様では、エキソン27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン27~50を含む。一態様では、エキソン28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン28~50を含む。一態様では、エキソン29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン29~50を含む。一態様では、エキソン30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン30~50を含む。一態様では、エキソン31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン31~50を含む。一態様では、エキソン32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン32~50を含む。一態様では、エキソン33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン33~50を含む。一態様では、エキソン34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン34~50を含む。一態様では、エキソン35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン35~50を含む。一態様では、エキソン36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン36~50を含む。一態様では、エキソン37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン37~50を含む。一態様では、エキソン38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン38~50を含む。一態様では、エキソン39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン39~50を含む。一態様では、エキソン40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン40~50を含む。一態様では、エキソン41、42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン41~50を含む。一態様では、エキソン42、43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン42~50を含む。一態様では、エキソン43、44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン43~50を含む。一態様では、エキソン44、45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン44~50を含む。一態様では、エキソン45、46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン45~50を含む。一態様では、エキソン46、47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン46~50を含む。一態様では、エキソン47、48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン47~50を含む。一態様では、エキソン48、49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン48~50を含む。一態様では、エキソン49または50のうちの1つまたは2つが変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン49または50を含む。一態様では、エキソン50が変異型であり、標的イントロンがイントロン22、23または24であり、コードドメインが機能性ABCA4エキソン50を含む。
【0211】
複数の変異を修正するための2種類のトランススプライシング分子
さらに、本明細書において、ABCA4遺伝子内における複数の変異を、5'トランススプライシング分子と3'トランススプライシング分子の2種類のトランススプライシング分子を用いて修正する方法を提供する。いくつかの態様では、両方のトランススプライシング分子が結合するとABCA4遺伝子全体が置き換えられ、例えば、この場合、5'トランススプライシング分子および3'トランススプライシング分子は同じ標的ABCA4イントロンに結合し、それぞれ、該標的イントロンの上流のエキソンおよび下流のエキソンを置き換える。
【0212】
例えば、本発明のいくつかの態様では、5'トランススプライシング分子および3'トランススプライシング分子が各々、標的ABCA4イントロン22に結合し;5'トランススプライシング分子が内在性エキソン1~22を機能性エキソン1~22で置き換え;3'トランススプライシング分子が内在性エキソン23~50を機能性エキソン23~50で置き換える。他の態様では、5'トランススプライシング分子および3'トランススプライシング分子が各々、標的ABCA4イントロン23に結合し;5'トランススプライシング分子が内在性エキソン1~23を機能性エキソン1~23で置き換え;3'トランススプライシング分子が内在性エキソン24~50を機能性エキソン24~50で置き換える。他の態様では、5'トランススプライシング分子および3'トランススプライシング分子が各々、標的ABCA4イントロン24に結合し;5'トランススプライシング分子が内在性エキソン1~24を機能性エキソン1~24で置き換え;3'トランススプライシング分子が内在性エキソン25~50を機能性エキソン25~50で置き換える。5'トランススプライシング分子と3'トランススプライシング分子の前述の任意の組み合わせが、薬学的組成物(例えば、予備調製済みであるか、または投与前に混合されるかのいずれかの両方の分子を含む、例えばキットの一部としての単一の薬学的組成物)中に含められ得る。
【0213】
投薬、モニタリングおよび併用療法
本明細書に記載のようなトランススプライシング分子を担持している組換えアデノ随伴ウイルスの有効濃度は約108~1013ゲノムベクター/ミリリットル(vg/mL)の範囲である。rAAV感染単位は、McLaughlin et al.,J.Virol.1988,62:1963に記載のようにして測定される。一態様では、濃度が109~1013 vg/mLの範囲である。別の態様では、有効濃度が約1.5×1011 vg/mLである。一態様では、有効濃度が約1.5×1010 vg/mLである。別の態様では、有効濃度が約2.8×1011 vg/mLである。別の態様では、有効濃度が約5×1011 vg/mLである。また別の態様では、有効濃度が約1.5×1012 vg/mLである。別の態様では、有効濃度が約1.5×1013 vg/mLである。
【0214】
望ましくない効果、例えば毒性、ならびに目への投与に関連する他の問題、例えば網膜形成異常および網膜剥離のリスクを低減させるため、最も低い有効投薬量(送達される全ゲノムコピー数)のウイルスを使用することが望ましい。本明細書に記載のようなトランススプライシング分子を担持している組換えアデノ随伴ウイルスの有効投薬量は約108~1013ゲノムベクター(vg)/投薬(すなわち、/注射)の範囲である。一態様では、投薬量が109~1013 vgの範囲である。別の態様では、有効投薬量が約1.5×1011 vgである。別の態様では、有効投薬量が約5×1011 vgである。一態様では、有効投薬量が約1.5×1010 vgである。別の態様では、有効投薬量が約2.8×1011 vgである。また別の態様では、有効投薬量が約1.5×1012 vgである。別の態様では、有効濃度が約1.5×1013 vgである。これらの範囲内または他の単位内のさらに他の投薬量が担当医により、処置される対象の身体的状態、例えば対象の年齢;投与される組成物、および具体的な障害;標的とされる細胞および障害が進行性である場合はその進展度合を考慮して選択され得る。
【0215】
組成物は、処置される領域の大きさ、使用されるウイルス価、投与経路およびその方法の所望の効果に応じて約50μL~約1 mLの体積で送達され得、該体積はこの範囲内のあらゆる数値を含む。一態様では、体積が約50μLである。別の態様では、体積が約70μLである。別の態様では、体積が約100μLである。別の態様では、体積が約125μLである。別の態様では、体積が約150μLである。別の態様では、体積が約175μLである。また別の態様では、体積が約200μLである。別の態様では、体積が約250μLである。別の態様では、体積が約300μLである。別の態様では、体積が約350μLである。別の態様では、体積が約400μLである。別の態様では、体積が約450μLである。別の態様では、体積が約500μLである。別の態様では、体積が約600μLである。別の態様では、体積が約750μLである。別の態様では、体積が約850μLである。別の態様では、体積が約1,000μLである。
【0216】
一態様では、rAAV組成物の体積および濃度が、標的細胞を有する特定の解剖学的領域のみが影響を受けるように選択される。別の態様では、rAAV組成物の体積および/または濃度が、目のより広範な部分に達するようにするために高量である。同様に、投薬量は他の器官への投与のために調整される。
【0217】
別の態様では、本発明により、対象において光受容体の機能低下を抑制もしくは停止するため、または光受容体の機能を高めるための方法を提供する。組成物は疾患の発症の前または後に投与され得る。例えば、光受容体の機能は、当技術分野において慣用的な機能試験、例えばERGまたは視野検査を用いて評価され得る。本明細書で用いる場合、「光受容体の機能低下」は、罹病状態でない正常な目またはより早期の時点の同じ目と比べたときの光受容体の機能の低下を意味する。本明細書で用いる場合、「光受容体の機能を高める」とは、罹病状態の目(同じ眼疾患を有する)、より早期の時点の同じ目、同じ目の非処置部分または同じ対象の反対側の目と比べて光受容体の機能を改善すること、または機能性光受容体の数もしくは割合を増やすことを意味する。
【0218】
本記載の方法の各々では、処置が、さらなる損傷の発生を抑制するため、または軽度もしくは進行期の疾患を有する組織を救済するために使用され得る。本明細書で用いる場合、用語「救済する」とは、疾患の進行を抑制すること、傷ついていない細胞への損傷の拡延を抑制すること、または傷ついた細胞の損傷を改善することを意味する。
【0219】
したがって、一態様では、組成物が疾患の発症前に投与される。別の態様では、組成物が症状の発現前に投与される。別の態様では、組成物が症状の発現後に投与される。また別の態様では、組成物が、例えば参照組織と比べたとき標的細胞の90%未満が機能性であるか、または残存している場合に投与される。また別の態様では、組成物が、例えば参照組織と比べたとき標的細胞の10%より多くが機能性であるか、または残存している場合に投与される。また別の態様では、組成物が、標的細胞の20%より多くが機能性であるか、または残存している場合に投与される。また別の態様では、組成物が、標的細胞の30%より多くが機能性であるか、または残存している場合に投与される。
【0220】
また別の態様では、上記の任意の方法が別の治療または二次治療との組み合わせで行なわれる。治療は、現在公知であるか、またはまだ知られていない任意のもの、このような変異もしくは欠陥あるいは該変異もしくは欠陥に付随する任意の効果を抑制、停止もしくは軽快させるのを補助する治療であり得る。二次治療は、上記のトランススプライシング分子の投与の前、該投与と同時または該投与後に施行され得る。一態様では、二次治療が、網膜細胞の健常性を維持するための非特異的アプローチ、例えば神経栄養因子、酸化防止剤、抗アポトーシス剤の投与を伴う。非特異的アプローチは、タンパク質、組換えDNA、組換えウイルスベクター、幹細胞、胎生組織または遺伝子修飾細胞の注射によって行なわれる。後者には、封入されている遺伝子修飾細胞も包含され得よう。
【0221】
別の態様では、該方法が、処置の有効性を判定するために機能試験および画像診断試験を行なうことを含む。このような試験としては、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,147,823号;国際特許出願公開公報第2014/011210号または同第2014/124282号に記載のような網膜電図(ERG)およびインビボ網膜画像診断が挙げられる。また、視野試験、視野検査およびマイクロペリメトリー、運動機能検査、視力および/または色覚の検査も行なわれ得る。
【0222】
一部の特定の態様では、治療のために標的とされる光受容体の保持領域を特定するための非侵襲的な網膜の画像診断および機能試験を行なうことが望ましい。このような態様では、1回または複数回の網膜下注射のための正確な場所(1つまたは複数)を調べるために臨床診断検査が使用される。このような検査としては、ERG、視野検査、網膜の層のトポグラフィック(topographical)マッピングならびに走査型共焦点レーザー検眼鏡検査(cSLO)および光干渉断層撮影(OCT)によるその層の厚さの測定、補償光学(AO)による錐体密度のトポグラフィックマッピング、目の機能検査などが挙げられ得る。画像診断および機能試験に鑑みて、いくつかの態様では、光受容体の異なる保持領域を標的とするために同じ目に1回または複数回の注射が行なわれる。
【0223】
このような方法における使用のため、各注射の体積およびウイルス価は個々に決定され、同じ目または反対側の目に行なわれる他の注射と同じであっても異なっていてもよい。別の態様では、目全体を処置するために単回の大容量注射が行なわれる。投薬量、投与およびレジメンは、本開示の教示を受けた担当医によって決定され得る。
【実施例
【0224】
本発明は、少なくとも一部において、ABCA4の特定のイントロンおよび該イントロン内の特異的領域がトランススプライシング分子の結合ドメインに対して非常に効率的な結合部位を提供し、トランススプライシングを効率的に媒介するという本出願人の知見に基づく。本出願人は、(i)関心対象のABCA4イントロン(イントロン19および22~24)ならびに(ii)関心対象のCEP290イントロン(イントロン26~30)の対応する一連の150塩基対の結合部位配列にハイブリダイズするように設計した150塩基長の結合ドメインを有する一連のモックトランススプライシング分子を作出した。ABCA4系列およびCEP290系列の各結合ドメインは、140個のヌクレオチドが重複し、各連続的試験結合ドメイン間で各イントロンのヌクレオチド10個ごとのスキャンが可能となるように設計した。トランススプライシング効率を、ABCA4イントロン19および22~24およびCEP290イントロン26~30の各々における各結合ドメインについて定量した。ABCA4のスクリーニングを実施例1に記載し、結果を図1~8に示す。CEP290のスクリーニングを実施例2に記載し、結果を図21~26に示す。
【0225】
実施例1.ABCA4
この実施例では、例えば特定のABCA4イントロン内の有効な結合部位についてのスクリーニングによるABCA4トランススプライシング分子の開発、トランススプライシング分子を試験するためのABCA4細胞株の開発、およびABCA4タンパク質発現の回復についての種々のABCA4トランススプライシング分子の試験を記載する。
【0226】
結合部位のスクリーニング
ABCA4イントロン19(SEQ ID NO:25)に連続的結合部位で結合するように構成した一連の結合ドメインのスクリーニングにより、5'トランススプライシング分子のトランススプライシングの際に優先的に効率的であるABCA4イントロン19の3'部分の領域、すなわちイントロン19のヌクレオチド990~2,174の領域が明らかになった(図2)。1,670~2,174、1,810~2,000、1,870~2,000または1,920~2,000のヌクレオチド範囲内の結合部位が、イントロン19における5'トランススプライシングの媒介において特に非常に効率的であることが明らかになった。
【0227】
イントロン22内の5'トランススプライシング分子に対する好適な結合部位も同様に特定された(図3)。イントロン22のヌクレオチド1~150またはヌクレオチド880~1,350の範囲内の結合部位が該イントロンの残部と比べて特に効率的であった。
【0228】
図4は、3'トランススプライシング分子でのABCA4イントロン22(SEQ ID NO:28)についての同様のスクリーニングの結果を示す。ヌクレオチド60~570、ヌクレオチド600~800またはヌクレオチド900~1,350を有する結合部位が、3'トランススプライシング分子のトランススプライシングに優先的に好適であると特定された。特に、ヌクレオチド70~250の範囲内の結合部位を標的とするようにされた結合ドメインが3'トランススプライシングの際に非常に効率的であった。
【0229】
イントロン23内では、5'トランススプライシング分子に対する比較的効率的な結合部位がSEQ ID NO:29のヌクレオチド80~570またはヌクレオチド720~1,081の範囲内の結合部位であると特定された(図5)。3'トランススプライシング分子では、特に良好な効率を有する結合部位としては、図6に示されるように、SEQ ID NO:29のヌクレオチド80~1,081内(例えばSEQ ID NO:29のヌクレオチド230~1,081、SEQ ID NO:29のヌクレオチド250~400またはSEQ ID NO:29のヌクレオチド690~850)の結合部位が挙げられた。
【0230】
ABCA4のイントロン24(SEQ ID NO:30)での同様のスクリーニングにより、ヌクレオチド600~1,250またはヌクレオチド1,490~2,660の範囲内の結合部位が5'トランススプライシングの際に効率的であることが明らかになった(図7)。特に、ヌクレオチド1,000~1,200の範囲内の結合部位では最大の5'トランススプライシング効率が示された。図8は3'トランススプライシング効率のスクリーニングの結果を示し、これにより、ヌクレオチド1~250、ヌクレオチド300~2,000またはヌクレオチド2,200~2,692の範囲内の結合部位(特に、ヌクレオチドまたはヌクレオチド750~1,110の範囲内の結合部位)が最も効率的であることが明らかになった。
【0231】
ABCA4細胞株
まず、ABCA4を発現している細胞株を作出した。ABCA4遺伝子は生体の網膜の光受容体に発現されることしかわかっておらず、ABCA4の完全長のプレmRNAおよびタンパク質は一般的に、培養細胞中においてインビトロでは検出可能でない。したがって、ABCA4に対するトランススプライシングストラテジーを試験するため、細胞を、その1番染色体上の天然状態のゲノム遺伝子座(1p22.1)からABCA4を発現するように改変操作した。2つのストラテジーを遂行した。第1の場合では、安定な細胞株を、VP64ウイルストランスアクチベーターと融合させた部位特異的(ABCA4転写開始部位の上流の)DNA結合TALENを発現するように誘導した。第2の場合では、真核生物の構成的プロモーターを、ABCA4転写開始部位のすぐ上流のゲノム遺伝子座内に直接挿入した(CRISPR/Cas9を使用)。どちらの場合の結果も、ABCA4のプレmRNAおよびタンパク質をロバストに発現する安定な細胞株となった。
【0232】
TALEN細胞株
ABCA4転写開始部位の上流の特異的ドメインを標的とするTALENを設計し、VP-64トランスアクチベーター配列と融合させた(図9)。この3つのTALENの組み合わせで293細胞をトランスフェクトし、安定な単一クローン細胞を誘導した。2種類のクローンがABCA4タンパク質の発現を指令することが示された(図10)。
【0233】
CAGプロモーター細胞株
CAGプロモーター細胞株を誘導するための一般的なストラテジーの概要を図11~13に示す。CAGプロモーターおよびピューロマイシン選択可能マーカーを挿入するための部位特異的ガイド(図12A)を、相同アームを用いて設計した(図12B)。ピューロマイシン耐性細胞をクローニングし、PCRにより所望の挿入について解析した。いくつかのクローン株をさらなる解析のために選択した。2つの株(B6およびC3)でのRNAおよびタンパク質の発現を図14Aおよび14Bに示す。RNAおよびタンパク質の解析によって実証されたように、どちらの株にも、プロモーター挿入が明白に含まれていた。
【0234】
ABCA4ノックアウト細胞株
培養細胞において安定なABCA4発現が確立されたら、ABCA4タンパク質発現が回復するように設計したABCA4トランススプライシング分子の試験のためのABCA4発現ノックアウト体を作出した。一般に、ガイドRNAとCas9タンパク質をB6細胞(CAG-プロモーターがABCA4遺伝子座内にノックインされており、ABCA4発現を媒介する)内でコトランスフェクトした。9日後、ガイドRNAとCas9タンパク質を用いた第2のトランスフェクションを行なった。エキソン3および4を標的とする基本的設計を図15に示す。単一細胞を限界希釈によってプレーティングして1回培養し、ABCA4のタンパク質発現についてウエスタンブロットによって評価した。
【0235】
図16は、単一クローン細胞の図15に示すようなCRISPR/Cas9を用いた処置後に誘導されたRNAおよびタンパク質のプロファイルを示す。さまざまな度合のRNA除去およびタンパク質除去がみられた。完全なABCA4タンパク質ノックアウトが示されたため、クローン17+06および17+21を選出した。変異解析(図17A~17Bおよび18)により、エキソン3および4が標的とされて分断されたことが確認された。
【0236】
ABCA4トランススプライシング媒介性のタンパク質の回復
上記のハイスループット結合部位スクリーニングに基づいて8種類のトランススプライシング分子を選択した。これらの試験の方法および結果を以下に記載する。
【0237】
方法
ウエスタンブロットアッセイのため、17+06細胞または17+21細胞を106細胞/ウェルの密度で12ウェルプレートの各ウェル内に播種した。個々のウェルについて1μgのプラスミド(RTMx)を用いてトランスフェクションを行なった。48時間目、細胞を収集し、Mem-PER Plus Membrane Protein Extraction Kit(Thermo Fisher 89842)を製造業者のプロトコルに従って使用し、すべてのバッファーにおいて1×HALT(商標)Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktail(Thermo Fisher 78440)の添加を伴う標準的なウエスタンブロッティングによる解析用の膜調製物を加工処理した。また、RNAも後述する解析用に加工処理した。膜ライセートを、10%の還元剤TCEP 0.5M(Sigma 646547)を含む4×Laemmli Sample Buffer(Biorad 161-0737)を用いて室温で30分間変性させた。試料をNuPage Precast 3~8%のTris-Acetateゲル(Thermo Fisher)上で泳動させ、タンパク質を、iBlot 2 Mini PVDF Transfer Packsを用いて転写し、iBlot 2を用いて25Vで10分間実施した。ABCA4用の一次抗体はウサギポリクローナルAbcam ab72955であった(1:2500の希釈率の)。二次抗体は抗ウサギであった(1:5000の希釈率の)。ブロットを、シグナルの強度に応じて種々の時間露光した。
【0238】
RNA試料のqPCRのため、RNAを、qPCR解析について上記のようにしてRNeasy Plus Miniキット(Qiagen)を用いて収集した。cDNAを、400 ngのRNAから20μlの反応容量でSuperScript IV VILO Master Mix(Thermo 11756500;水で1:4に希釈)を用いて合成した。天然状態のABCA4(Thermo社製の市販のアッセイHs00979594_m1)はエキソン49~50の範囲に及ぶ。対照としてのハウスキーパー遺伝子では、RNF20のアッセイを使用した(Thermo社製の市販のアッセイHs00219623_m1)。キメラABCA4コドン最適化エキソン22-天然状態のエキソン23--qPCR用のプライマーおよびプローブは以下のものであった。
【0239】
RNF20を有する二本鎖のアッセイのqPCR用のプライマーおよびプローブは以下のものであった。
【0240】
PCT反応は、QuantiFast 2×qPCR Mastermixを用いて実施した。
【0241】
結果
イントロン19、22、23および24に結合するトランススプライシング分子を試験した。イントロン19および24に結合するトランススプライシング分子ではタンパク質の回復は観察されなかった(データは示さず)が、イントロン22および23に結合するトランススプライシング分子は、以下に論考するように、ABCA4のタンパク質およびRNAの発現の回復がもたらされた(図19Aおよび19B)。
【0242】
図20Aは、5種類の異なる結合ドメイン(結合ドメインなし(NBD)対照、図3のRTM#に対応する番号92、99、105、118および121、ここで、結合ドメイン92はイントロン22のヌクレオチド911~1060に結合し、結合ドメイン99はイントロン22のヌクレオチド981~1130に結合し、結合ドメイン105はイントロン22のヌクレオチド1041~1190に結合し、結合ドメイン118はイントロン22のヌクレオチド1171~1320に結合し、結合ドメイン121はイントロン22のヌクレオチド1201~1350に結合する(上記のイントロン22全体に渡る150塩基長の10塩基シフト間隔に従って))にテザリングさせたモックGFP対照または5'A4In22を有する2種類の異なる細胞株(17+06および17+21)のトランススプライシング反応に起因するABCA4タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。これらのイントロン22結合構築物のうち4種類の99、105、118および121でタンパク質の回復がもたらされ、105、118および121では特に回復の促進が示され、118では両方の細胞株において最大量のタンパク質発現が示された。mRNA発現プロファイルでも同様のパターンが示され、118構築物では両方の細胞株において最も高レベルのABCA4 mRNAがもたらされた(図20B)。単位はRNF20ハウスキーピング遺伝子に対する相対量である。
【0243】
図20Cは、3種類の異なる結合ドメイン(NBD対照、図5のRTM#に対応する番号27、81および85、ここで、結合ドメイン27はイントロン23のヌクレオチド261~410に結合し、結合ドメイン81はイントロン23の801~950に結合し、結合ドメイン85はイントロン23の841~990に結合する(上記のイントロン23全体に渡る150塩基長の10塩基シフト間隔に従って))にテザリングさせたモックGFP対照または5'A4In23を有する2種類の異なる細胞株(17+06および17+21)のトランススプライシング反応に起因するABCA4タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。両方の細胞株におけるタンパク質発現量によって示されるように、3種類のイントロン23結合構築物すべてでトランススプライシングがもたらされた。mRNA発現プロファイルでも同様の結果が得られ、3種類の構築物すべてで、両方の細胞株においてロバストなABCA4 mRNA発現がもたらされた(図20D)。単位はRNF20ハウスキーピング遺伝子に対する相対量である。
【0244】
総合すると、イントロン22結合トランススプライシング分子およびイントロン23結合トランススプライシング分子で得られたABCA4のタンパク質およびRNAの発現データは上記の結合ドメインスクリーニングと相関している。特に、イントロン22結合構築物105、118および121ならびにイントロン23結合構築物27、81および85は高効率で結合することが予測された(図3および5)。本ABCA4タンパク質の回復データは、これらの構築物の結合部位を含むABCA4イントロン領域が、タンパク質およびRNAの回復をもたらすためにABCA4トランススプライシング分子に結合させるのに適していることを示す。本実施例では、タンパク質発現が10~20%回復し、イントロン22結合トランススプライシング分子とイントロン23結合トランススプライシング分子では回復は同等であった。重要なことに、ABCA4関連疾患(例えば、スターガルト病)は劣性であるため、該疾患の無症候性キャリアではおそらく通常より少ないABCA4が発現され、理論に拘束されることを望まないが、本明細書に示すようなタンパク質の一部回復は、おそらく有意義な臨床的有益性をもたらす。
【0245】
実施例2.CEP290
CEP290イントロン26(SEQ ID NO:85)に連続的結合部位で結合するように構成した一連の結合ドメインのスクリーニングにより、5'トランススプライシング分子のトランススプライシングに優先的に適しているCEP290イントロン26の3'部分の領域、すなわちイントロン26のヌクレオチド4,980~5,838の領域が明らかになった(図22)。5,348~5,838、5,348~5,700、5,400~5,600、5,460~5,560または5,500のヌクレオチド範囲内の結合部位が、トランススプライシングの媒介において特に非常に効率的であることが明らかになった。
【0246】
図23は、CEP290イントロン27(SEQ ID NO:86)での同様のスクリーニングの結果を示す。ヌクレオチド120~680、710~2,200、2,670~2,910を有する結合部位が5'トランススプライシング分子のトランススプライシングに優先的に好適であると特定された。特に、ヌクレオチド790~2,100、ヌクレオチド1,020~1,630またはヌクレオチド1,670~2,000の範囲内の結合部位を標的とするようにされた結合ドメインがトランススプライシングの際に非常に効率的であった。
【0247】
イントロン27(SEQ ID NO:87)では、ヌクレオチド1~390(例えば、ヌクレオチド1~200)、ヌクレオチド410~560またはヌクレオチド720~937の範囲内の結合部位がトランススプライシングの比較的高効率性を有すると特定された(図24)。
【0248】
イントロン28(SEQ ID NO:88)も同様に特性評価し、ヌクレオチド1~600、ヌクレオチド720~940またはヌクレオチド1,370~1,790内に比較的効率的な結合部位を有することが示された(図25)。
【0249】
イントロン29(SEQ ID NO:89)では、該イントロンの3'部分が、5'トランススプライシングの媒介の際に該イントロンの残部と比べて有意により効率的であった(図26)。特に、ヌクレオチド95~1,240、例えばヌクレオチド1,060~1,240の範囲内の結合部位を標的とする結合ドメインでは最大のトランススプライシング効率が示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【配列表】
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