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特許7561631癌免疫療法のための活性化および拡張ナチュラルキラー細胞と組み合わせた抗CXCR4抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】癌免疫療法のための活性化および拡張ナチュラルキラー細胞と組み合わせた抗CXCR4抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240927BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240927BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K9/10
C07K16/28 ZNA
C12N5/0783
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020571917
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 IB2019052042
(87)【国際公開番号】W WO2019175802
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】62/642,313
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520353798
【氏名又は名称】フンダシオン・パラ・ラ・インベスティガシオン・ビオメディカ・デル・オスピタル・ウニベルシタリオ・ラ・パス
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION PARA LA INVESTIGACION BIOMEDICA DEL HOSPITAL UNIVERSITARIO LA PAZ
(73)【特許権者】
【識別番号】520352517
【氏名又は名称】フンダシオン・デル・セクトル・プブリコ・エスタタル・セントロ・ナシオナル・デ・インベスティガシオネス・オンコロヒカス・カルロス・テルセロ(エフェ・エセ・ペ・セエネイオ)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION DEL SECTOR PUBLICO ESTATAL CENTRO NACIONAL DE INVESTIGACIONES ONCOLOGICAS CARLOS III (F.S.P. CNIO)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ベラ・クエンカ
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・ゴンサレス・ナバロ
(72)【発明者】
【氏名】ハイメ・バレンティン・キロガ
(72)【発明者】
【氏名】アデラ・エスクデロ・ロペス
(72)【発明者】
【氏名】ルシア・フェルナンデス・カサノバ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ペレス・マルティネス
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525899(JP,A)
【文献】国際公開第2017/049228(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/201425(WO,A1)
【文献】ONCOIMMUNOLOGY,VOL. 5, NO. 12, e1250051 (9 pages),2016年,http://dx.doi.org/10.1080/2162402X.2016.1250051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/17
A61K 39/395
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の以下の組み合わせを含む、C-X-Cケモカイン受容体4(CXCR4)を過剰発現する転移性癌に罹患している対象を治療するための医薬組成物であって、当該治療が当該医薬組成物を当該対象に投与することおよび転移負荷を軽減すること、を含む、前記医薬組成物:
(a)活性化および拡張されたナチュラルキラー(NKAE)細胞の単離された集団;および
(b)癌細胞の表面に発現するCXCR4に特異的に結合し、そしてCXCR4 + 癌細胞の転移を阻害する単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
癌細胞の表面に発現するC-X-Cケモカイン受容体4(CXCR4)に特異的に結合し、そしてCXCR4 + 癌細胞の転移を阻害する単離された抗体またはその抗原結合部分の治療有効量を含む医薬組成物と組み合わせられる、活性化および拡張されたナチュラルキラー(NKAE)細胞の単離された集団の治療有効量を含む、CXCR4を過剰発現する転移性癌に罹患している対象を治療するための医薬組成物であって、当該治療が当該医薬組成物を当該対象に投与することおよび転移負荷を軽減すること、を含む、前記医薬組成物。
【請求項3】
活性化および拡張されたナチュラルキラー(NKAE)細胞の単離された集団の治療有効量を含む医薬組成物と組み合わせられる、癌細胞の表面に発現するC-X-Cケモカイン受容体4(CXCR4)に特異的に結合し、そしてCXCR4 + 癌細胞の転移を阻害する単離された抗体またはその抗原結合部分の治療有効量を含む、CXCR4を過剰発現する転移性癌に罹患している対象を治療するための医薬組成物であって、当該治療が当該医薬組成物を当該対象に投与することおよび転移負荷を軽減すること、を含む、前記医薬組成物。
【請求項4】
NKAE細胞が、NK細胞をフィーダー細胞と組み合わせてIL-2、IL-12、IL-15、および/またはIL-21で刺激することによって産生される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
NKAE細胞が、健康なドナーからの末梢血単核細胞を、(i)インターロイキン-15(IL-15)の膜結合型および41BBリガンドを発現するように改変された照射βリンパ芽球様細胞、および(ii)インターロイキン-2(IL-2)と共培養することによって産生される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
改変された照射βリンパ芽球様細胞がK562-mb15-41BBL細胞である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
NKAE細胞が、静脈内、動脈内、腹腔内または髄腔内注射、または腫瘍切除腔への注射により対象に投与されるべきものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
約106~約1014の範囲の用量のNKAE細胞が対象に毎週投与されるべきものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合部分が以下の特徴のうちの一つまたはそれ以上を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物:
(a)モノクローナル抗体またはその抗原結合部分である;
(b)ヒトCXCR4受容体に結合し、対象がヒトである;
(c)表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定されるように、約1×10-8M以下のKDで癌細胞表面上のCXCR4に結合する;
(d)CXCR4とC-X-Cモチーフケモカイン受容体12(CXCL12)との間の相互作用を妨害し、CXCR4/CXCL12シグナル伝達を阻害する;
(e)約30nM以下のEC50でCXCL12のCXCR4への結合を阻害する;
(f)約1nM以下のEC50でCXCR4を発現する細胞におけるCXCL12誘導性カルシウム流動を阻害する;
(g)約20nM以下のEC50でCXCR4を発現する細胞のCXCL12誘導性遊走を阻害する;
(h)ヒト臍帯静脈内皮細胞による毛細管形成を阻害する;
(i)CXCR4を発現する細胞にアポトーシスを誘導する;
(j)インビトロでCXCR4+腫瘍細胞の増殖を阻害する;
(k)インビボでCXCR4+腫瘍細胞増殖を阻害し、および/またはCXCR4+腫瘍細胞アポトーシスを誘導する;
(l)CXCR4+担癌対象の生存期間を延長する;
(m)ヒトCXCR4への結合についてウロクプルマブと交差競合する;
(n)ウロクプルマブと実質的に同じヒトCXCR4のエピトープに結合する;
(o)キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である;
(p)ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む;
(q)ウロクプルマブまたはその抗原結合部分である;
(r)ウロクプルマブのヒトIgG1変異体またはその抗原結合部分である;および
(s)c414H5、c515H7、抗体I、6C7、およびh3G10.A57.A58と指定された抗体から選択されるか、またはそれらの抗原結合部分である。
【請求項10】
抗CXCR4抗体またはその抗原結合部分が、配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、および配列番号29に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗CXCR4抗体またはその抗原結合部分が、配列番号1に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号9に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号13に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号17に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2、および配列番号21に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗CXCR4抗体またはその抗原結合部分が、配列番号25または33に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号29または37に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
CXCR4を過剰発現する転移性癌が固形腫瘍である、および/またはCXCR4を発現する腫瘍細胞の遊走がCXCR4/CXCL12シグナル伝達によって媒介される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
固形腫瘍が小児腫瘍である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
小児腫瘍が、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、またはユーイング肉腫である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
固形腫瘍が、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、扁平上皮癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、男性乳癌、黒色腫、甲状腺癌、口腔癌、口癌、食道癌、胃腸癌、胃癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、腎臓癌、腎細胞癌、脳癌、小児固形腫瘍、小児肉腫、転移性癌、および前記固形腫瘍の任意の組み合わせよりなる群から選択される癌である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
CXCR4を過剰発現する転移性癌が血液悪性腫瘍である、および/またはCXCR4を発現する癌細胞の遊走がCXCR4/CXCL12シグナル伝達によって媒介される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、および上記の血液悪性腫瘍の任意の組み合わせよりなる群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗体またはその抗原結合部分が
(a)約50~約2000mgの均一用量で、およそ毎週1回または2回、およそ2週間に1回、またはおよそ3週間に1回;
(b)約200、約400、約800、約1600、または約2000mgの均一用量で、およそ毎週またはおよそ約2週間に1回;および/または
(c)静脈内または皮下投与により対象へ
投与されるべきものである、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
(a)NKAE細胞および抗体またはその抗原結合部分が対象に連続して投与されるべきものである;
(b)NKAE細胞が抗体またはその抗原結合部分の前に投与されるべきものである;
(c)抗体またはその抗原結合部分がNKAE細胞の前に投与されるべきものである;
(d)NKAE細胞および抗体またはその抗原結合部分が別々の組成物で同時に投与されるべきものである;または
(e)NKAE細胞および抗体またはその抗原結合部分を単一の組成物に混合し、同時に投与するべきものである
請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
CXCR4を過剰発現する転移性癌に罹患している対象を治療するのに使用するためのキットであって、
(a)約50から約2000mgの範囲の1つまたはそれ以上の投与量の、癌細胞の表面に発現したCXCR4に特異的に結合し、そしてCXCR4 + 癌細胞の転移を阻害する抗体またはその抗原結合部分;
(b)約106から約1014の範囲の1つまたはそれ以上の投与量のNKAE細胞の集団;および
(c)請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物において抗体またはその一部およびNKAE細胞を使用するための説明書
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願全体を通して、様々な出版物が括弧内に著者名と日付によって、または特許番号または特許公開番号によって参照されている。これらの出版物の完全な引用は、特許請求の範囲の直前の明細書の最後に見られる。これらの刊行物の開示は、本明細書に記載され、特許請求される本発明の日付の時点での当業者に既知の最新技術をより完全に説明するために、参照により全体が本出願に組み込まれる。しかしながら、これらの開示は、組み込まれた情報と本明細書の明示的な開示によって提供された情報との間に矛盾が存在しない範囲でのみ、参照により本出願に組み込まれる。さらに、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【0002】
関連出願の相互参照:
この出願は、2018年3月13日に提出された米国仮出願第62/642,313号の利益を主張しており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表:
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ASCIIコピーは2019年3月11日に作成され、20190311_SEQL_13108WOPCT.txtという名前であり、サイズは26,678バイトである。
【0004】
本発明は、対象に抗C-X-Cケモカイン受容体4(CXCR4)抗体(Ab)を活性化および拡張ナチュラルキラー(NKAE)細胞免疫療法と組み合わせて投与することを含む、対象において癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
原発腫瘍から周辺組織および遠隔臓器への癌細胞の広がりである転移は、癌の罹患率および死亡率の主な原因であり、癌による死亡の約90%の原因であると推定されている(ChafferおよびWeinberg、2011;SeyfriedおよびHuysentruyt、2013)。肉腫は主に子供と若い成人に影響を及ぼすが、積極的な治療にもかかわらず、横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、および神経芽細胞腫などの固形腫瘍のある子供のほぼ半分が進行性疾患を患っている。少なくとも3分の2が疾患の進行を示している転移性疾患のある患者の予後は特に不良である(Oberlinら、2008;Heareら、2009;Matthayら、2009)。したがって、特に転移性疾患などのリスクの高い特徴を有する患者にとって、薬剤耐性の細胞メカニズムを迂回する新しい治療アプローチが緊急に必要とされている。
【0006】
転移は、転移性細胞の局所組織浸潤、循環におけるそれらの生存、二次器官への「ホーミング」および血管外遊出、および転移部位での増殖/成長を含む複雑な多段階プロセスである(Nguyenら、2009)。転移性腫瘍細胞によって発現されるケモカイン受容体と相互作用するケモカインは、遊走細胞を二次器官に向ける際に重要な役割を果たす。これは、ケモカインCXCL12とその受容体であるCXCR4について十分に文書化されている。Muellerとその共同研究者たちは当初、癌転移におけるCXCL12-CXCR4ホーミング軸を仮定し、発見した(Muellerら、2001)。彼らは、CXCR4を発現する乳癌細胞が、CXCL12を豊富に発現する肺のタンパク質抽出物に向かって優先的に遊走することを示した。
【0007】
本明細書に開示されるのは、NKAE細胞療法と組み合わせて抗CXCR4 Abを癌患者に投与することを含む、転移性癌を含む癌を治療するための新規の免疫療法的アプローチである。
【0008】
CD184としても知られるCXCR4は、7回膜貫通ドメインのGタンパク質共役型細胞表面受容体であり、大多数のヒトの癌で過剰発現しており、その内因性リガンドCXCL12とともに、腫瘍の成長と増殖、癒着、浸潤、転移、血管新生および生存への寄与を含む、癌の病因に基本的な役割を果たしている(Domanskaら、2013;Dudaら、2011;Balkwill、2004;Pittら、2015;Passoroら、2015;WO 2008/060367)。CXCL12のCXCR4への結合は、細胞内カルシウムフラックスを刺激し、AKTおよびERKシグナル伝達経路を活性化し、接着斑の形成をアップレギュレートし、最終的に局所的に発現および分泌されるケモカインの勾配に沿った遊走の増加をもたらす(Chatterjeeら、2014)。それはまた、細胞の生存と増殖を促進する遺伝子転写にもつながる。CXCR4はさまざまな組織に見られるが、BおよびT細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)、および樹状細胞、並びにCD34+骨髄前駆細胞を含む造血系細胞で主に発現している(Leeら、1999)。
【0009】
ウロクプルマブ(Ulocuplumab)(以前はBMS-936564またはMDX-1338と呼ばれ、WO2008/060367ではF7GLと呼ばれた)は、細胞の表面で発現されるCXCR4に特異的に結合する完全ヒトIgG4(S224P)モノクローナル抗体(mAb)である。ウロクプルマブは、それぞれ配列番号33および37として示される配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むVHおよびVL領域を含む。ウロクプルマブによるCXCR4シグナル伝達の遮断は、腫瘍間質相互作用を妨害し、腫瘍細胞を細胞毒性物質に感作させ、転移負荷を軽減する。さらに、ウロクプルマブは、CXCR4を発現する腫瘍細胞の腫瘍の成長と増殖を直接阻害し、アポトーシスを誘導する(WO2008/060367;WO2013/071068;Kuhneら、2013)。
【0010】
免疫細胞が腫瘍細胞を認識して殺す既知の潜在能力は、抗癌治療におけるそれらの潜在的な役割を示唆している。これは、キラーT細胞の細胞毒性を増強するチェックポイント阻害剤の開発によって最近実現された(ChenおよびMellman、2013;Lesokhinら、2015)。ナチュラルキラー(NK)細胞は、免疫および宿主免疫監視システムに関与する単核リンパ球の亜集団である。それらの生物学的特性には、「自己」主要組織適合複合体(MHC)/ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を発現できない細胞、および/またはNK受容体を活性化するためのリガンドを発現する腫瘍細胞または他の病変細胞を標的とし殺すことが含まれる。これらの細胞が、健康な細胞への耐性を維持しながら、事前の免疫や活性化を必要とせずに、癌幹細胞や遺伝毒性が変化した細胞を正確に標的とし、殺す能力により、転移を含むすべての癌形態に対し魅力的な治療エフェクターになる(Vivierら、2011)。さらに、それらを化学療法薬および局所照射と組み合わせることは、免疫寛容を破壊し、養子細胞療法のための好ましい微小環境を作り出すのに役立つことが報告されている(Zhengら、2015)。しかしながら、NK細胞の活性は、刺激信号と抑制信号の両方を含む複雑なメカニズムによって制御されており、活性化受容体と抑制性受容体のバランスが、NK細胞による腫瘍の認識と殺傷において、それゆえ、治療効果において役割を果たしている。膜結合キラー細胞活性化受容体(Membrane bound Killer-cell Activation Receptors;KAR)は、HLAクラスI対立遺伝子の異型変異体をキラー細胞免疫グロブリン様受容体リガンド(KIRL)として認識する阻害受容体と活性化受容体の両方を含む、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(Killer-cell Immunoglobulin-like Receptors;KIR)と連携して作動して、NK細胞機能を調節する(Lanier、2005;Pegramら、2011;Longら、2013)。腫瘍に見られる活性化/阻害性リガンドのパターンは、NK細胞療法に対するその応答の予測において重要な要素であると仮定されている。
【0011】
NK細胞の活性化状態の増加、抑制シグナルの減少(例えば、MHCクラスIの変更または不一致を使用)、またはその両方により、NK細胞の細胞毒性が高まるはずである。さらに、NK細胞の細胞毒性の大きさは、NK細胞と標的細胞の数の比(すなわち、エフェクター/標的比またはE:T)に正比例する。したがって、NK細胞療法の文脈では、事前に活性化された同種NK細胞を大量に注入すると、最大の抗癌効果が得られると予測される。この目的のため、末梢血からのヒトNK細胞を特異的に活性化および拡張するための方法が開発されている(例えば、Imaiら、2005;Fujisakiら、2009;SomanchiおよびLee、2016を参照)。これらのグループは、膜結合型インターロイキン(IL)-15および4.1-BBリガンド(K562-mb15-4.1BBL)を発現するように遺伝子改変されたK562白血病細胞株がヒトNK細胞を特異的に活性化し、細胞周期に駆動して細胞毒性の高いNK細胞に導くことを報告している。さらに、大規模な臨床グレードの条件下でK562-mb15-4.1BBL細胞を刺激する方法が、臨床GMPガイドラインを使用して確立され、細胞毒性の高いNKAE細胞を大量に生成した。さらに、これらデータは、ハプロタイプ一致のドナーNK細胞が、同種造血幹細胞移植を受けている固形腫瘍の患者に、KIR-HLAドナーとレシピエントのミスマッチに関連する同種移植片対腫瘍効果に部分的に基づいて抗腫瘍活性を発揮することを示唆している(Pendeら、2009;Morettaら、2011)。したがって、NKAE細胞の使用は、血液悪性腫瘍および固形腫瘍の患者を対象とした臨床試験で積極的に検討されている(例えば、Clinical Trials Website、https://www.clinicaltrials.gov/ct2/results?term=activated+and+expanded+NK+cells&cond=cancerを参照)。これらの研究は、さまざまな種類の腫瘍の治療のための安全で効果的な治療法としてのNKAEの可能性を実証することを目的としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
開示された発明は、腫瘍細胞の遊走、浸潤、移植および転移の防止におけるNKAE細胞療法と抗CXCR4 Abによる治療との間の相乗効果を示すインビトロおよびインビボ前臨床研究に関する。この併用療法がCXCR4+腫瘍細胞の遊走と浸潤を阻害する能力をインビトロで分析した。免疫不全マウスにおける胞巣状横紋筋肉腫の同所性モデルを使用して、インビボで抗腫瘍および抗転移相乗効果を評価した。さらに、CXCR4の発現を、小児の横紋筋肉腫患者の腫瘍で分析した。ここに提示されたデータは、この併用免疫療法が多様な癌の治療と転移の予防に有効であることを示唆している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、治療有効量の以下の組み合わせを癌に罹患している対象に投与することを含む、癌に罹患している対象を治療するための方法を提供する:(a)NK細胞の単離された集団;および(b)癌細胞の表面に発現するCXCR4に特異的に結合する単離されたAbまたはその抗原結合部分。特定の好ましい実施形態において、NK細胞の集団は、活性化および拡張されたNK(NKAE)細胞を含む。他の好ましい実施形態では、Abまたはその抗原結合部分は、CXCR4とC-X-Cモチーフケモカイン12(CXCL12)との間の相互作用を妨害し、CXCR4/CXCL12シグナル伝達を阻害する。さらに好ましい実施形態では、Abはウロクプルマブであり、それぞれ配列番号33および37として示されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。
【0014】
開示された方法の特定の実施形態では、癌は、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、またはユーイング肉腫などの小児腫瘍を含む固形腫瘍である。他の実施形態では、癌は血液悪性腫瘍である。
【0015】
本開示はまた、癌に罹患している対象を治療するためのキットを提供し、該キットは、以下を含む:(a)約50~約2000mgの範囲の1またはそれ以上の投与量の、癌細胞の表面に発現されたCXCR4に特異的に結合するAbまたはその抗原結合部分;(b)106~1014の範囲の1またはそれ以上の投与量のNKAE細胞の集団;および(c)本明細書に開示される方法のいずれかでAbまたはその部分およびNKAE細胞を使用するための説明書。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、限定的であると解釈されるべきではない以下の詳細な説明および実施例から明らかになるであろう。この出願を通して引用された科学論文、GenBankエントリー、特許および特許出願を含むすべての引用された参考文献の全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれるが、参照により組み込まれる情報と本出願における明示的な開示によって提供される情報との間に矛盾が存在しない場合に限る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、フローサイトメトリーによる6つの肉腫細胞株(RH30、CW9019、A4573、A673、MG-63および143B)におけるCXCR4発現の分析を示す。胞巣状横紋筋肉腫RH30細胞株は最も高いCXCR4発現を示した。
図1B図1Bは、定量的逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)による6つの肉腫細胞株(RH30、CW9019、A4573、A673、MG-63および143B)におけるCXCR4発現の分析を示す。胞巣状横紋筋肉腫RH30細胞株は最も高いCXCR4発現を示した。
【0018】
図2A図2Aは、さまざまな肉腫細胞株(RH30、CW9019、A4573、A673、MG-63および143B)のウシ胎児血清(FBA)(100ng/ml)への遊走能および浸潤能を示す。遊走能は、8μmポアメンブレントランスウェルアッセイ(pore membranes Transwell assays)を使用して試験し、浸潤能は、マトリゲルコーティングされたトランスウェルメンブレンを使用して同じ条件下で測定した。
図2B図2Bは、さまざまな肉腫細胞株(RH30、CW9019、A4573、A673、MG-63および143B)のCXCL12(100ng/ml)への遊走能および浸潤能を示す。RH30細胞株は、CXCL12に対する最も高い遊走および浸潤指数を示した(図2B)。遊走能は、8μmポアメンブレントランスウェルアッセイを使用して試験し、浸潤能は、マトリゲルコーティングされたトランスウェルメンブレンを使用して同じ条件下で測定した。
【0019】
図3A図3Aは、インビトロでの横紋筋肉腫(RH30)細胞に対する、NKAEと抗CXCR4療法の個別または組み合わせによる細胞毒性と遊走および浸潤の阻害を示す。NKAE細胞はRH30細胞に対して高い細胞毒性を示した。ウロクプルマブ(MDX1338;100μg/ml)またはIgG4対照mAb(100μg/ml)を用いたAbの非存在下での特異的溶解を、示されたNKAE:RH30(エフェクター:標的)(E:T)比で測定した。
図3B-C】図3B-Cは、インビトロでの横紋筋肉腫(RH30)細胞に対する、NKAEと抗CXCR4療法の個別または組み合わせによる細胞毒性と遊走および浸潤の阻害を示す。ウロクプルマブ(MDX1338)およびNKAE細胞はそれぞれ、RH30細胞のCXCL12への遊走と浸潤を効率的に減少させたが、両方の薬剤の組み合わせのみが完全にそれを無効にした。ヒト組換えCXCL12ケモカインの勾配に対するRH30細胞の遊走を、トランスウェルプレートを使用して試験した。Ab濃度は100μg/mlで、NKAE:RH30(E:T)比は5:1であった(B)。浸潤能は、マトリゲルでコーティングされたトランスウェルメンブレンを使用して同じ条件下で測定した(C)。
【0020】
図4図4は、免疫不全NSGマウスの腹部領域におけるGFP+Luc+RH30横紋筋肉腫腫瘍インプラントの増殖に対するNKAE細胞および抗CXCR4療法の個別または組み合わせの効果を示す。A:RH30腫瘍インプラントの増殖。5つの治療群が確立された。未処理;IgG4;ウロクプルマブ(MDX1338);NKAE細胞;NKAE細胞とウロクプルマブの組み合わせ。マウスは、6回のmAb(15mg/kg、週2回)と3回のNKAE(5x106細胞、週1回)を受けた。発光腫瘍を35日間モニターした。B:処理されたマウスに移植されたGFP+Luc+RH30細胞の発光によって測定された腫瘍細胞の存在の定量。ウロクプルマブ治療のみではRH30腫瘍インプラントの増殖が中程度に抑制されたが、NKAE治療では完全に抑制された。
【0021】
図5A図5Aは、マウスのRH30腫瘍からの肺微小転移巣の形成に対するNKAE細胞およびウロクプルマブの個別または組み合わせの効果を示す。ヒトCXCR4特異的プローブを使用したqRT-PCRによって測定されたマウスのRH30肺転移病変におけるヒトCXCR4の相対的発現。示された値は、106個のRH30細胞ペレットによる示された遺伝子の発現と比べたものである。ウロクプルマブ(MDX1338)は、RH30肺微小転移の発生率を低下させたが、ウロクプルマブとNKAEの併用により完全に排除された。
図5B図5Bは、マウスのRH30腫瘍からの肺微小転移巣の形成に対するNKAE細胞およびウロクプルマブの個別または組み合わせの効果を示す。qRT-PCRによって測定されたマウスのRH30肺転移病変におけるヒトGUSの相対的発現。インビボでRH30肺微小転移を完全に抑制するには、NKAE細胞療法とウロクプルマブ(MDX1338)による治療の両方の組み合わせが必要である。
【0022】
図6図6は、組織学的方法による横紋筋肉腫RH30微小転移巣の阻害の確認を示す。未処理のマウス肺における肺微小転移巣は、ヘマトキシリンおよびエオシン染色(a)、Alu配列原位置ハイブリダイゼーション(b)、およびCXCR4特異的mAb染色(c)によって同定された。矢印は、検出された微小転移巣を識別する。インビボでRH30肺微小転移を完全に抑制するには、NKAE細胞療法とウロクプルマブによる治療の両方の組み合わせが必要である(d)。
【0023】
図7A図7Aは、横紋筋肉腫患者の腫瘍におけるCXCR4発現のレベルを示す。陰性(a)、中程度(b)、および高い(c)CXCR4細胞質発現の試料に対応する代表的染色。核CXCR4染色が高い検体をも示す(d)。中央値±SDを示す。ノンパラメトリックな対になっていないマンホイットニー検定を適用した。
図7B-C】図7B-Cは、横紋筋肉腫患者の腫瘍におけるCXCR4発現のレベルを示す。B:診断時の検体のCXCR4発現スコア。C:診断対化学療法後および再発検体。中央値±SDを示す。ノンパラメトリックな対になっていないマンホイットニー検定を適用した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、NKAE細胞免疫療法と抗CXCR4 Abとの組み合わせを対象に投与することを含む、対象の癌を治療するための方法に関する。
【0025】
用語:
本開示をより容易に理解できるようにするため、特定の用語をまず定義する。本出願で使用される場合、本明細書で明示的に規定される場合を除き、以下の各用語は、以下に記載される意味を有するものとする。追加の定義は、出願全体に記載されている。
【0026】
「投与」は、当業者に知られている様々な方法および送達システムのいずれかを使用して、治療薬を含む組成物を対象に物理的に導入することを指す。抗CXCR4 Abなどの治療用Abの投与のための好ましい経路は、静脈内または皮下投与である。他の投与経路には、筋肉内、腹腔内、または他の非経口投与経路、例えば注射または注入によるものが含まれる。本明細書で使用される「非経口投与」という用語は、経腸および局所投与以外の投与様式を意味する。NKAE細胞の投与のための好ましい経路は、静脈内投与である。他の投与経路には、動脈内、大腿内、腹腔内、または髄腔内注射、腫瘍内または腫瘍切除腔への注射が含まれる。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1またはそれ以上の長期間にわたって実施することができる。
【0027】
「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)鎖および2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質免疫グロブリン(Ig)、またはその抗原結合部分を含むが、これらに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域を含む。IgG Abの重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つの定常ドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。IgG Abの軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化でき、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散りばめられている。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順序で配置された3つのCDRと4つのFRで構成されている:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0028】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むがこれらに限定されない、一般的に知られているアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスも当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれるが、これらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされるAbクラスまたはサブクラス(例えば、IgM、IgG1、またはIgG4)を指す。「抗体」という用語は、例として、天然に存在するAbおよび天然に存在しないAbの両方;モノクローナルAbおよびポリクローナルAb;キメラAbおよびヒト化Ab;ヒトAbまたは非ヒトAb;完全合成Ab;および一本鎖Abを含む。非ヒトAbは、組換え法によって部分的または完全にヒト化してヒトにおけるその免疫原性を低下させることができる。明示的に述べられていない場合、および文脈が別段の指示をしない限り、「抗体」という用語はまた、前記免疫グロブリンのいずれかの抗原結合フラグメントまたはその抗原結合部分を含み、一価および二価のフラグメントまたは部分、ならびに一本鎖Abを含む。
【0029】
「単離された」Abは、異なる抗原特異性を有する他のAbを実質的に含まないAbを指す(例えば、CXCR4に特異的に結合する単離されたAbは、CXCR4以外の抗原に特異的に結合するAbを実質的に含まない)。しかしながら、例えば、ヒトCXCR4に特異的に結合する単離されたAbは、異なる種からのCXCR4分子などの他の抗原に対して交差反応性を有していてよい。さらに、「単離された」Abはまた、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないように精製されたAbを指し得る。
【0030】
「モノクローナル」Ab(mAb)という用語は、単一分子組成のAb分子、すなわち、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す一次配列が本質的に同一であるAb分子の天然に存在しない調製物を指す。mAbは、単離されたAbの例である。mAbは、ハイブリドーマ法、組換え法、トランスジェニック法、または当業者に知られている他の技術によって産生され得る。
【0031】
「キメラ」Abは、可変領域が1つの種に由来し、定常領域が別の種に由来するAbを指し、例えば、可変領域がマウスAbに由来し、定常領域がヒトAbに由来するAbなどである。
【0032】
「ヒト」mAb(HuMAb)は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有するmAbを指す。さらに、Abが定常領域を含む場合、定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒトAbは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト」抗体という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。「ヒト」Abと「完全にヒト」Abという用語は同義語として使用される。
【0033】
「ヒト化」mAbは、非ヒトmAbのCDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんど、またはすべてが、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置き換えられているmAbを指す。ヒト化形態のAbの一実施形態では、CDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんど、またはすべてがヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置き換えられているが、1またはそれ以上のCDR領域内のいくつか、ほとんど、またはすべてのアミノ酸は変化していない。アミノ酸の小さな追加、欠失、挿入、置換または修飾は、特定の抗原に結合するAbの能力を無効にしない限り許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持している。
【0034】
「抗抗原」Abは、抗原に特異的に結合するAbを指す。たとえば、抗CXCR4Abは、CXCR4に特異的に結合するAbである。
【0035】
Abの「抗原結合部分」(「抗原結合フラグメント」とも呼ばれる)は、全体のAbによって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持するAbの1またはそれ以上のフラグメントを指す。
【0036】
「癌」とは、体内の異常な細胞の制御されない増殖を特徴とするさまざまな疾患の幅広いグループを指す。制御されない細胞分裂および増殖分裂および増殖は、隣接する組織に浸潤し、リンパ系または血流を介して体の離れた部分に転移する可能性がある悪性腫瘍の形成をもたらす。
【0037】
「CXCケモカイン受容体4」(CXCR4;例えば、LSTR、FusinまたはCD184としても当技術分野で知られている)は、白血球、血小板、および腫瘍間質微小環境を含む他の非造血細胞上に発現される7回膜貫通Gタンパク質共役受容体を指す。それはまた、大多数のヒト癌や、TregおよびMDSCでも過剰発現している。CXCR4は単一のリガンドCXCL12に結合する。本明細書で使用される「CXCR4」という用語は、ヒトCXCR4(hCXCR4)、hCXCR4の変異体、アイソフォーム、および種相同体、ならびにhCXCR4と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全なhCXCR4アミノ酸配列は、GENBANKR受託番号CAA12166の下にあり、配列番号43に記載されている。
【0038】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘発、増強、抑制、または他の仕方で改変することを含む方法による、疾患に罹患している、または疾患に罹患または再発するリスクがある対象の治療を指す。対象の「治療」または「療法」は、症状、合併症または状態、または、または疾患に関連する生化学的兆候の発症、進行、発達、重症化または再発を逆転、緩和、改善、阻害、減速または予防する目的で対象に行われる、あらゆる種類の介入またはプロセス(活性剤を対象に投与することを含む)を指す。
【0039】
「対象」には、ヒトまたはヒト以外の動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、およびマウス、ラット、モルモットなどのげっ歯類などの脊椎動物が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、対象はヒトである。「対象」および「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0040】
薬物または治療薬の「治療有効量」または「治療有効投与量」は、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて使用される場合に、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度と期間の増加、または疾患の苦痛による機能障害(impairment)または身体障害(disability)の予防または軽減によって証明される、対象を疾患の発症から保護するか、または疾患の退行を促進する薬物または治療剤の量である。さらに、治療に関する「有効」および「有効性」という用語には、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性とは、患者の疾患の退行、例えば癌の退行を促進する薬剤の能力を指す。生理学的安全性とは、許容可能なレベルの毒性、または薬物の投与に起因する細胞、器官、および/または生物レベルでの他の有害な生理学的影響(有害作用)を指す。治療薬の有効性は、インビトロアッセイ、ヒトにおける有効性を予測する動物モデルシステム、または臨床試験中のヒト対象における薬剤の活性をアッセイすることよるなど、熟練した実践者に知られている様々な方法を使用して評価することができる。
【0041】
腫瘍の治療の例として、治療有効量の抗癌剤は、好ましくは、細胞増殖または腫瘍増殖を未治療の対象と比較して少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより一層好ましくは少なくとも約80%阻害する。本発明の他の好ましい実施形態では、腫瘍退縮が観察され、少なくとも約20日、より好ましくは少なくとも約40日、またはさらにより好ましくは少なくとも約60日間継続し得る。治療有効性のこれらの究極の測定にもかかわらず、免疫療法薬の評価はまた、「免疫関連」応答パターンを考慮に入れなければならない。
【0042】
治療有効量の薬物は、予防有効量を含み、これは、単独でまたは別の治療薬と組み合わせて、疾患を発症するリスクのある対象(例えば、癌を発症するリスクがある前癌状態の対象)または疾患の再発を患うリスクのある対象に投与される場合に、疾患(例えば、癌)の発症または再発を抑制する薬剤の量である。好ましい実施形態において、予防有効量は、疾患の発症または再発を完全に防止する。 疾患の発症または再発を「抑制する」とは、疾患の発症または再発の可能性を減らすか、または疾患の発症または再発を完全に防ぐことを意味する。
【0043】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、引用または列挙された構成要素の「1つまたはそれ以上」を指すと理解されるべきである。
【0044】
「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値、組成または特性の許容誤差範囲内にある値、組成または特性を指し、これは、値、組成または特性がどのように測定または決定されるかに一部依存する、すなわち、測定系の限界である。例えば、「約」は、当該技術における実践ごとに標準偏差が1以内または1を超えるものであることを意味することができる。あるいは、プラスマイナス20%の範囲、より一般的にはプラスマイナス10%の範囲を意味することができる。特定の値、組成または特性が明細書および特許請求の範囲で提供される場合、特に明記しない限り、「約」の意味は、その特定の値、組成または特性の許容誤差範囲内にあると想定されるべきである。薬物投与レジメンの投薬頻度において、「約毎週1回」、「約2週間に1回」という用語、または本明細書で使用される他の同様の投薬間隔用語は、おおよその数を意味する。例えば、「約毎週1回」には、7日±1日ごと、すなわち、6日ごと~8日ごとを含めることができる。「約2週間に1回」には、14日±3日ごと、すなわち、11日ごと~17日ごとを含めることができる。同様の近似値は、例えば、約3週間に1回、約4週間に1回、または約毎月1回に適用される。
【0045】
「実質的に同じ」または「本質的に同じ」という用語は、2つまたはそれ以上の数値、組成または特性の間の十分に高度な類似性を指し、当業者はこれらの数値、組成または特性の間の違いについて、 測定される特性の文脈で生物学的および/または統計的有意性がほとんどまたは全くないと考える。測定される数値間の差は、例えば、約30%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満であり得る。
【0046】
本明細書に記載されるように、いかなる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、特に断りのない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0047】
本発明の様々な側面は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
治療方法:
主にユーイング肉腫、骨肉腫および軟部組織肉腫を含む肉腫は、比較的まれな一群の間葉系腫瘍である(Stillerら、2013)。ヒトの悪性腫瘍の中で発生率が低く、補助化学療法と外科的切除の進歩にもかかわらず、主として肉腫患者の主な死亡原因である肺転移の傾向が高いため、予後は依然として不良である。
【0048】
ケモカインおよびその対応する受容体との相互作用が、癌の発生と転移の出現のメカニズムにおいて基本的な役割を果たすことが示されている(Velaら、2015)。ケモカインおよびその受容体の発現レベルは、悪性細胞で変化する。これは、腫瘍細胞で最も頻繁に過剰発現されるケモカイン受容体であるCXCR4の場合である。CXCR4とそのリガンドであるCXCL12との相互作用は、細胞シグナル伝達のカスケードを活性化し、それを発現する腫瘍細胞の生存、増殖、接着および遊走を促進する。これはすべて、原発腫瘍の再発、および該リガンドが分泌される臓器、特に骨髄および肺において遠隔転移を生成する能力の増加につながり得る(Chatterjeeら、2014;Dudaら、2011) 。
【0049】
転移およびアポトーシスからの保護のための腫瘍細胞によるCXCL12/CXCR4シグナル伝達経路の強奪(usurping)は、はるか以前にこの軸の遮断を癌治療の新しい機会として特定した。Muellerら(2001)による先駆的な報告は、癌療法のための標的としてのCXCR4のインビボ関連性を示し、乳癌におけるCXCR4の発現を局所リンパ節および肺転移を生成するそれらの能力と結びつけた。これらのデータは、中和マウス抗ヒトCXCR4 mAb、クローン44717.111が、肺、鼠径部および腋窩リンパ節転移の有意な減少をもたらした実験によって裏付けられた。その後、同様の結果が、ヒト非ホジキンリンパ腫(Bertoliniら、2002)および原発性ヒト急性骨髄性白血病(Tavorら、2004)の異種移植片を別のマウス抗ヒトCXCR4 Ab(クローン12G5)で治療して得られた。両方のモデルで、腫瘍の進行の有意な減少が報告された。子宮内膜癌の異種移植片では、12G5mAbによる治療により、肝臓と肺の自然転移が完全に抑制され、腹膜の転移指数が28分の1に減少した(Gelminiら、2009)。興味深いことに、脛骨内のヒト骨肉腫異種移植モデルでは、12G5mAbは肺への転移の広がりを減少させた(Brenneckeら、2014)。
【0050】
適合移植されたNK細胞、主に休止NK細胞(Rubnitzら、2010;Curtiら、2011)またはIL-2培養NK細胞(Bachanovaら、2014;Shiら、2013;Millerら、2005)が臨床試験で使用されている。ヒト由来の抗原提示細胞と共培養された活性化され拡張されたNK細胞の使用は、新たな選択肢である(Szmaniaら、2015;Leivasら、2016;Ishikawaら、2004;Velaら、2018)。これらの試験の結果は、自家およびハプロタイプ一致の両方のNKAEが深刻な有害作用のない安全な治療法であり、さまざまな種類の癌の治療に実行可能なアプローチであることを示している。
【0051】
本明細書に提示されたデータは、CXCR4/CXCL12軸を遮断するヒトmAbであるウロクプルマブが、インビトロ実験で転移性横紋筋肉腫RH30細胞の遊走および浸潤指数を効率的に低下させることを示すが、遊走および浸潤を完全に阻止するにはウロクプルマブとNKAE細胞の組み合わせが必要である。同様に、インビボ実験では、移植されたRH30腫瘍の増殖だけでなく、それらの播種能力も排除し、肺微小転移形成を抑制するために、ウロクプルマブとNKAE療法の組み合わせが必要であった。したがって、本開示は、治療有効量の以下の組み合わせを対象に投与することを含む、癌に罹患した対象を治療するための方法を提供する:(a)NK細胞、好ましくはNKAE細胞の単離された集団;および(b)癌細胞の表面に発現するCXCR4に特異的に結合する単離されたAbまたはその抗原結合部分。本発明の方法のいずれかの好ましい実施形態では、対象はヒト患者である。
【0052】
実施例3に示すように、単剤療法として投与される抗CXCR4 Ab(ウロクプルマブ)およびNKAE細胞療法は、それぞれインビトロでのRH30胞巣状横紋筋肉腫細胞のCXCL12への遊走(図3B)およびインビトロでのこれら細胞の浸潤能力(図3C)の両方を強力に減少させた。特に、RH30細胞の遊走と浸潤のさらに高いレベルの抑制が、抗CXCR4とNKAE細胞療法の組み合わせによって示された、すなわち、抗CXCR4はNKAE細胞療法と相乗的に相互作用して、遊走と浸潤の両方を完全に無効にした(図3BおよびC)。2つの療法の組み合
わせは、その組み合わせの抗腫瘍効果が、より効果的な治療法を使用した単剤療法で観察された効果よりも大きいか、各治療法が個別に示す抑制レベルの合計よりも大きい場合、相乗的であるとみなされる。抗CXCR4Abであるウロクプルマブは、癌細胞の成長と増殖を直接阻害し、アポトーシスを誘導することが実証されており(WO2008/060367;WO2013/071068;Kuhneら、2013)、これらの腫瘍抑制特性は本明細書に開示される併用療法の有効性に寄与する。
【0053】
抗CXCR4とNKAE細胞療法との間の同様の相乗効果がインビボで実証された(実施例4)。単剤療法または併用療法として投与された抗CXCR4AbおよびNKAE細胞療法の抗腫瘍活性を、RH30胞巣状横紋筋肉腫のマウスモデルで測定した。ウロクプルマブは腫瘍増殖に対して中程度の抑制効果を示したが、NKAE細胞療法はこのマウス腫瘍モデルで腫瘍増殖を完全に抑制した(図4)。しかしながら、qRT-PCR分析(図5)と免疫組織化学的染色および原位置ハイブリダイゼーション(図6)により、NKAE処理マウスにおけるRH30肺微小転移が明らかになった。NKAE療法は肺転移に対してごくわずかな効果しかなく、ウロクプルマブはより顕著な効果があったが(図5)、両方の療法の組み合わせは完全に排除された肺転移において強力な相乗効果を示した(図5および6)。
【0054】
NK細胞集団:
NK細胞活性の調節に基づいて、様々な治療およびワクチン戦略が提案されてきた。しかしながら、NK細胞の活性は、刺激信号と抑制信号の両方を含む複雑なメカニズムによって制御されている。調節受容体の重要なセットは、HLAクラスI対立遺伝子のアロタイプ変異体をKIRリガンド(KIRL)として認識する抑制性および活性化ファミリー成員の両方を含むHLAクラスI制限キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーである。単一の個体のNK細胞は通常、KIRのさまざまな組み合わせを発現し、HLAクラスI分子に対してさまざまな特異性を持つNK細胞のレパートリーを提供する。
【0055】
膜結合キラー細胞活性化受容体(KAR)は、KIRと連携してNK細胞機能を制御する(Lanier、2005)。 当初は1つのKARと1つのKIR(2つの受容体モデル)しかないと考えられていたが、過去10年間で、活性化NKp46およびNKG2D受容体や抑制性KIR2DL受容体などの複数の異なるKARおよびKIR(表1を参照)が発見されている(反対信号モデル)。多くのヒトの癌はNKG2Dリガンド(NKG2DL)を発現する(NauschおよびCerwenka、2008;Perez-Martinezら、2012;Fernandezら、2013)。実際、NKG2D/NKG2DL相互作用によって媒介される抗腫瘍効果は、多発性骨髄腫モデルと肉腫モデルの両方で、主に腫瘍開始細胞または幹腫瘍細胞を標的とすることが最近示された(Fernandezら、2015)。腫瘍に見られる活性化リガンド/抑制性リガンドのパターンは、NK細胞療法に対するその応答の予測における重要な要素であると仮定されている。
【0056】
表1:NK細胞における活性化(KAR)受容体および抑制性(KIR)受容体の要約
【0057】
NK細胞は白血病細胞を殺すことができ、急性白血病患者の化学療法の効果を高めるために造血幹細胞移植の状況かまたは非骨髄破壊的免疫抑制療法の後のいずれかに投与され、、有望な結果をもたらした(Hsuら、2005;Millerら、2005;Rubnitzら、2010)。Millerらの研究では、急性骨髄性白血病(AML)の予後不良患者19人中5人が、ハプロタイプ一致のNK細胞療法後に完全寛解を達成した。Rubnitzら(2010)による研究では、結果はさらに良好であり、中リスクおよび低リスクのAML患者10人の100%寛解を報告している。
【0058】
NK細胞はまた、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫および肝細胞癌細胞株に対するNK細胞の細胞毒性をインビトロおよびインビボで示す報告によって示されるように、悪性の非造血細胞を溶解することもできる(Fernandezら、2015;Choら、2010;Verhoevenら、2008;Perez-Martinezら、2015b;Kamiyaら、2016)。さらに、臨床データは、ハプロタイプ一致のドナーNK細胞が、KIR-HLAドナー-レシピエントのミスマッチに関連する同種移植片対腫瘍効果に部分的に基づいて、同種異系造血幹細胞移植を受けている固形腫瘍の小児において抗腫瘍活性を発揮することを示唆している(Perez-Martinezら、2009;Perez-Martinezら、2015a)。
【0059】
本発明の方法は、腫瘍に対するNK細胞の実証された細胞毒性を、抗CXCR4 AbによるCXCR4/CXCL12シグナル伝達の遮断と組み合わせるものである。本明細書に開示される治療方法の特定の好ましい実施形態では、NK細胞の集団はNKAE細胞を含む。IL-2および他のサイトカイン(IL-12、IL-15および/またはIL-21を含む)は、ヒトNK細胞で増殖反応を誘発するが、継続的な増殖を維持するのはごくわずかである(Londonら、1986;Lanierら、1988)。NK細胞の持続的な拡張には、βリンパ芽球様細胞の存在などの追加のシグナルが必要であることが示されている(Londonら、1986;Rabinowichら、1991;Igarashiら、2004)。末梢血からのヒトNK細胞の特異的活性化および拡張を可能にする方法、例えば、NK細胞集団の拡張および活性化を可能にする、健康なドナーの末梢単核細胞のフィーダーとして遺伝子組換えK562細胞の使用に基づく方法が開発されている(Imaiら、2005;Fujisakiら、2009;Somanchiら、2016)。
【0060】
開示された本発明の特定の実施形態において、NKAE細胞は、健康なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を、(i)インターロイキン-15(IL-15)またはインターロイキン-21(IL-21)などの活性化サイトカインの膜結合型を発現するように改変された照射βリンパ芽球様細胞、および(ii)インターロイキン-2(IL-2)と共培養することによって産生される。特定の好ましい実施形態において、β-リンパ芽球様細胞は、K562-mb15-41BBL細胞である(Fujisakiら、2009)。K562-mb15-41BBL細胞株は、抑制性KIR NK細胞受容体のMHC-Iリガンドを欠いており、膜結合型のNK活性化サイトカインIL-15とNK細胞上の4-1BB受容体の活性化リガンドCD137を発現するように修飾されたK562細胞を含む。本明細書に記載の実験(実施例3および4を参照)において、NKAE細胞は、健康なドナーのPBMCをK562-mb15-41BBL細胞(Fujisakiら、2009)およびIL-2と共培養することによって得られた(実施例3を参照)。他の好ましい実施形態において、NKAE細胞を調製するために使用されるβリンパ芽球様細胞は、K562mb.IL21細胞(SomanchiおよびLee、2016)であり、これは、膜結合型のIL-21を発現するように改変されたK562細胞を含む。
【0061】
開示された方法での使用に適した抗CXCR4 Ab:
本発明は、抗CXCR4療法を、インビトロおよびインビボでの腫瘍に対するNK細胞の実証された細胞毒性と組み合わせることによって、転移性癌を含む癌を治療するための新規の免疫療法アプローチを提供する。この併用療法は、抗CXCR4 Abを使用してCXCR4/CXCL12シグナル伝達を遮断し、それによって腫瘍間質相互作用を破壊し、肉腫細胞をNK細胞の細胞毒性に感作させ、腫瘍増殖と転移負荷を軽減する。
【0062】
CXCR4は、23を超えるヒトの癌で過剰発現しており、その過剰発現は、腫瘍の成長、浸潤、血管新生、転移、再発、および治療抵抗性に寄与している。CXCR4発現またはCXCR4/CXCL12経路に関連する癌の種類の非限定的な例には、乳癌(Dewanら、2006)、卵巣癌(Kajiyamaら、2008)、前立腺癌(Hirataら、2007;Mikiら、2007)、肺癌(Cavallaro、2013;Gangadharら、2010)、膵臓癌(Billadeauら、2006)、腎臓癌(Jonesら、2007;Panら、2006)、口腔癌(Ishikawaら、2006;Onoueら、2006)、食道癌(Wuら、2014)、胃癌(Hanら、2014)、結腸直腸癌(Lvら、2014)、肝臓癌(Schimanskiら、2006)、脳癌(Bianら、2007)、および甲状腺癌(De Falcoら、2007)などの固形腫瘍、黒色腫(Scalaら、2005)、横紋筋肉腫(Liburaら、2002)、および骨肉腫(Laverdiereら、2005)、ならびに急性リンパ芽球性白血病(Crazzolaraら、2001)、急性骨髄性白血病(Kalinkovichら、2006)、多発性骨髄腫(Alsayedら、2007;Azabら、2009)および慢性骨髄性白血病(Jinら、2008)が含まれる。
【0063】
CXCR4とCXCL12の間の相互作用は、BM微小環境内の造血幹細胞のホーミングと維持に不可欠である(Mohleら、1998)。骨および軟部組織肉腫の患者におけるCXCR4の予後的意義は広く研究されている。特定の状況では、CXCR4発現と患者の予後または生存との間に逆相関が確立されており、臨床研究では、CXCR4は転移の傾向の増加および生存の減少と関連している。997人の肉腫患者を対象とした12件の研究を含む最近のメタアナリシスでは、CXCR4の発現が低い全生存率と有意に関連していることがわかった(HR2.37、95%CI 1.86-3.01;P<0.001)。臨床病理学的特徴に関しては、CXCR4発現はより高い転移率(OR6.97、95%CI 2.28-21.31;P=0.001)およびより高い腫瘍ステージ(OR7.55、95%CI 1.25-45.47;P=0.027)と有意に関連していた(Liら、2015))。実施例5に記載されている小児横紋筋肉腫患者の短いコホートでは、診断時および再発時のより高いCXCR4発現と致命的な結果との間にわずかな相関関係があった。腫瘍開始細胞(TIC)は、腫瘍の再発と転移を引き起こすことが示されている化学療法抵抗性の腫瘍細胞の亜集団であり、CXCR4のアップレギュレーションはこれらの細胞の特徴の1つである(Dudaら、2011)。化学療法後も成長する腫瘍と、外科的アプローチと化学療法アプローチを組み合わせた後に現れる腫瘍は、CXCR4レベルが最も高いことを明確に示す腫瘍であることが一貫して観察された(図7C)。したがって、TICのターゲティングと排除は、新しい治療パラダイムの開発の優先事項である。
【0064】
実施例1は、試験した6つの異なる肉腫細胞株のうち、RH30胞巣状横紋筋肉腫細胞株が最高レベルのCXCR4発現を示し(図1)、CXCL12への遊走および浸潤指数が最高であることを示している(図2)。転移は肉腫患者の20~55%で発生し、他の癌と同様に(ChafferおよびWeinberg、2011;SeyfriedおよびHuysentruyt、2013)、依然として主たる死因である。本明細書ではNKAEと抗CXCR4の組み合わせの有効性を横紋筋肉腫細胞株で実証しているが、当業者は、癌を治療するための本発明の方法がCXCR4を過剰発現するあらゆる癌に適用可能であることを容易に認識するであろう。
【0065】
開示された方法での使用に適した抗CXCR4 Abは、高い特異性および親和性でCXCR4に特異的に結合するAbまたはその抗原結合部分である。特定の好ましい実施形態では、Abまたはその抗原結合部分は、mAbまたはその抗原結合部分である。特定の実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、キメラAb、好ましくはヒト化Ab、またはより好ましくはヒトAbまたはその一部である。そのようなキメラ、ヒト化またはヒトmAbは、例えば、WO2008/060367に記載されているように、当技術分野で周知の方法によって調製および単離することができる。好ましい実施形態では、対象はヒトであり、AbまたはそのフラグメントはヒトCXCR4受容体に結合する。さらに好ましい実施形態では、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、CXCR4およびCXCL12の結合を遮断し、CXCR4の活性を阻害する、すなわち、Abまたはその抗原結合部分は、CXCR4とCXCL12との間の相互作用を妨害し、CXCR4/CXCL12シグナル伝達を阻害する。特定の他の実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、アポトーシスを誘導し、および/またはインビボでCXCR4+腫瘍細胞の成長を抑制する(WO2013/071068に記載されるように)。
【0066】
高親和性でCXCR4に特異的に結合する抗CXCR4mAb、具体的にはmAb F7GL(ウロクプルマブ;以前はBMS-936564およびMDX-1338とも呼ばれていた)、F7、F9、F9GL、D1、D1GL、E2およびE2GLが、WO2008/060367に例示および詳細に記載されている。これらのAbを使用して血液悪性腫瘍を治療する方法も、例えば、WO2008/060367、WO2013/071068およびWO2015/069874に記載されている。NKAE細胞と組み合わせて本治療法で使用するのに適した他の抗CXCR4 mAbは、例えば、WO2008/142303、WO2010/037831、WO2009/140124、WO2013/013025、および米国公開2015/0037328に記載されている。
【0067】
本発明の方法での使用に適した抗CXCR4 Abは、好ましくは、治療用途に望ましい以下の特徴の1つまたはそれ以上を示す:
(a)細胞表面上のヒトCXCR4に高親和性で結合する;(b)CXCL12のCXCR4への結合を阻害する;(c)CXCR4を発現する細胞におけるCXCL12誘導性カルシウム流動を阻害する;(d)CXCR4を発現する細胞のCXCL12誘導性遊走を阻害する;(e)ヒト臍帯静脈内皮細胞による毛細管形成を阻害する;(f)CXCR4を発現する細胞にアポトーシスを誘導する;(g)インビトロでCXCR4+腫瘍細胞の増殖を阻害する;(h)インビボでCXCR4+腫瘍細胞増殖を阻害し、および/またはCXCR4+腫瘍細胞アポトーシスを誘導する;(i)CXCR4+腫瘍細胞の転移を阻害する;および(j)CXCR4+担癌対象の生存期間を延長する。
【0068】
本発明の方法での使用に適した、WO2008/060367に開示された抗CXCR4 mAbは、以下の特徴のうちの1つまたはそれ以上を示すことが実証されている:(a)細胞の表面に発現するヒトCXCR4に約100nM未満(例えば、約20~80nM)のEC50で結合する;(b)SDF-1のCXCR4への結合を約30nM以下(例えば、約1~30nM)のEC50で阻害する;(c)CXCR4を発現する細胞のSDF-1誘導性カルシウム流動を約1nM以下(例えば、約0.1~1.0nM)のEC50で阻害する;(d)CXCR4を発現する細胞のSDF-1誘導性遊走を約20nM以下(例えば、約10~20nM)のEC50で阻害する;(e)ヒト臍帯静脈内皮細胞による毛細管形成を阻害する;(f)CXCR4を発現する細胞にアポトーシスを誘導する;(g)インビトロでCXCR4+腫瘍細胞の増殖を阻害する;(h)インビボでCXCR4+腫瘍細胞増殖を阻害し、および/またはCXCR4+腫瘍細胞アポトーシスを誘導する;(i)CXCR4+腫瘍細胞の転移を阻害する;および(j)CXCR4+担癌対象の生存期間を延長する。
【0069】
本発明の方法で使用可能な抗CXCR4 Abには、細胞表面に発現されるヒトCXCR4に高い親和性で、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定されるように1×10-8M以下のKDで、好ましくは5×10-9M以下のKDで特異的に結合し、他の上記特性の少なくとも5つ、好ましくはすべてを示すmAbが含まれる。
【0070】
例えば、開示された治療方法での使用に適した抗CXCR4 Abは、(a)表面プラズモン共鳴(Biacore)によって決定されるように、約5×10-9から1×10-10MのKDでヒトCXCR4に結合する;(b)CXCL12のCXCR4への結合を約10nM未満(例えば、約1~10nM)のEC50で阻害する;(c)CXCR4を発現する細胞にアポトーシスを誘導する;(d)インビトロでCXCR4+腫瘍細胞の増殖を阻害する;(e)インビボでCXCR4+腫瘍細胞増殖を阻害し、および/またはCXCR4+腫瘍細胞アポトーシスを誘導する;および(f)CXCR4+腫瘍細胞の転移を阻害する。
【0071】
したがって、本開示は、治療有効量の以下の組み合わせを対象に投与することを含む、癌に罹患している対象を治療する方法を提供する:(a)NKAE細胞の単離された集団;および(b)(i)癌細胞の表面に発現するCXCR4に高い親和性で、例えば、約5x10-9M以下のKDで特異的に結合し、(ii)CXCL12のCXCR4への結合を例えば約10nM未満のEC50で阻害し、および(iii)CXCR4/CXCL12シグナル伝達を阻害し、例えばCXCR4を発現する細胞のCXCL12誘導性遊走を約20nM以下のEC50で阻害する、単離されたAbまたはその抗原結合部分。特定の実施形態において、Abまたはその抗原結合部分はまた、CXCR4を発現する細胞においてアポトーシスを誘導する。
【0072】
特定の側面において、治療的使用のために本明細書に開示される抗CXCR4 Abは、F7、F9、D1またはE2の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはそれらの組み合わせを含む。F7、F9、D1およびE2のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号1~4にそれぞれ示してある。F7、F9、D1およびE2のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号5~8にそれぞれ示してある。F7、F9、D1およびE2のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号9~12にそれぞれ示してある。F7、F9、D1およびE2のVk CDR1のアミノ酸配列は配列番号13~16にそれぞれ示してある。F7、F9、D1およびE2のVk CDR2のアミノ酸配列は配列番号17~20にそれぞれ示してある。F7、F9、D1およびE2のVk CDR3のアミノ酸配列は配列番号21~24にそれぞれ示してある。生殖細胞の復帰変異した「GL」変異体、すなわちF7GL、F9GL、D1GL、およびE2GLは、それぞれF7、F9、D1、およびE2と同じCDRを有する。本開示を通して同定されたCDR領域は、カバットシステムを使用して描出された(Kabatら、1991)。
【0073】
特定の他の側面において、治療的使用のために本明細書に開示される抗CXCR4 Abは、以下を含む:
(a)配列番号25または33に記載の配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、および配列番号29または37に記載の配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン;
(b)配列番号26または34に記載の配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、および配列番号30または38に記載の配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン;
(c)配列番号27または35に記載の配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、および配列番号31または39に記載の配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン;または
(d)配列番号28または36に記載の配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、および配列番号32または40に記載の配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン。
【0074】
他の好ましい実施形態では、本開示の抗CXCR4 Abは、以下を含む:
(a)配列番号1に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号5に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号9に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号13に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号17に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号21に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;
(b)配列番号2に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号6に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号10に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号14に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号18に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号22に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;
(c)配列番号3に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号7に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号11に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号15に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号19に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号23に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;または
(d)配列番号4に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号12に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号16に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号20に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号24に記載の配列またはその保存的修飾を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0075】
特定の好ましい実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、配列番号1に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号5に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号9に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号13に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号17に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2、および配列番号21に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0076】
他の実施形態では、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、以下を含む:
(a)配列番号2に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号6に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号10に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号14に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号18に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号22に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;
(b)配列番号3に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号7に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号11に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号15に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号19に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号23に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;または
(c)配列番号4に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号12に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号16に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号20に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号24に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0077】
特定の実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、F7GL、F7、F9GL、F9、D1GL、D1、E2GLおよびE2 mAbの重鎖および軽鎖可変領域を含む。特定の好ましい実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、配列番号25または33に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号29または37に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む。
【0078】
他の実施形態では、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、以下を含む:
(a)配列番号25または33に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号29または37に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号26または34に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号30または38に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号27または35に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号31または39に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域;または
(c)配列番号28または36に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む重鎖可変領域および配列番号32または40に記載の配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含む軽鎖可変領域。
【0079】
開示された方法の特定の実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。さらなる実施形態において、該Abまたはその抗原結合部分は、ADCC、ADCPおよび/またはCDCを含むエフェクター機能を有する重鎖定常領域(例えば、ヒトIgG1またはIgG3)を含み、例えば、それは、ヒトIgG3または好ましくはヒトIgG1アイソタイプのものであり、またはエフェクター機能を増加させ、免疫抑制性制御性T細胞(Treg)および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の枯渇を媒介する変異(例えば、E333AまたはE333S;Idusogieら、2001)を含む。これらの免疫抑制細胞はCXCR4を過剰発現することが知られており(WO2016/201425)、抗CXCR4を介したTregおよび/またはMDSCの枯渇が抗腫瘍効果の増強に寄与する。
【0080】
特定の他の実施形態において、抗CXCR4 Abは、エフェクター機能を有さない重鎖定常領域(例えば、ヒトIgG2または、好ましくは、IgG4)を含む。さらなる実施形態において、抗CXCR4 AbのIgG4重鎖定常領域またはその抗原結合部分は、ヒンジ領域のセリン残基を、通常IgG1アイソタイプAbsの対応する位置に認められるプロリン残基で置き換えるS228P変異(カバットシステムを使用して番号付けされた;Kabatら、1991)を含む。この変異はウロクプルマブに存在するものであり、野生型IgG4 Abに関連するFc受容体を活性化するための低い親和性を維持しながら、内因性IgG4AbとのFabアーム交換を防ぐ。
【0081】
他の実施形態では、該Abは、ヒトカッパまたはラムダ定常領域である軽鎖定常領域を含む。
【0082】
本明細書に開示される方法で使用するための適切な抗CXCR4 Abは、ウロクプルマブである。ウロクプルマブは、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含むさまざまな血液悪性腫瘍の対象における2つの第1相臨床試験において安全で許容できるプロファイルで評価されている。AMLおよびMMコホートからの有効性データが提示されており、標準療法、およびAMLおよび変異型のCXCR4ワルデンストレームのマクログロブリン血症(進行中の患者を参照(臨床試験ウェブサイトhttp://www.clinicaltrials.govのNCT02305563およびNCT03225716を参照)における第1/2相臨床試験へのウロクプルマブの追加(Beckerら、2014;Ghobrialら、2014)の有望な結果が示されている。特定の実施形態では、ウロクプルマブのヒトIgG1変異体が使用される。
【0083】
他の適切な抗CXCR4 Abには、例えば、c414H5およびc515H7(WO2010/037831)と称するAb、抗体I、抗体II、抗体III、抗体IV、および抗体V(米国特許第7,892,546号)と称するAb、6C7(WO2013/013025)と称するAb、およびヒト化3G10 Ab、例えば、h3G1 0.A57.A58、h3G10.1.91.A58Aおよびh3G10.1.91.A58Bと称するAb(米国公開2015/0037328)が含まれる。
【0084】
本発明の方法で使用可能な抗CXCR4 Abはまた、上記のAbの抗原結合部分を含む。Abの抗原結合機能は、全長Abのフラグメントによって実行され得ることが十分に実証されている。Abの「抗原結合部分」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;および(iv)Abの単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメントが含まれる。
【0085】
これらのフラグメントは、最初はパパインやペプシンなどの酵素によるタンパク質分解によって得られたが、その後、一価および多価の抗原結合フラグメントに加工された。例えば、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLとVHは別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を使用して、それらを、合成リンカーペプチド(VL領域とVH領域がペアになって一本鎖可変フラグメント(scFv)として知られる一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作成できる)によって結合することができる。二価(divalent)または二価(bivalent)のscFv(di-scFvsまたはbi-scFvs)は、2つのVH領域および2つのVL領域を含むタンデムscFvとして知られる単一のペプチド鎖内で2つのscFvを連結することによって操作できる。scFvダイマーおよびより高いマルチマーは、2つの可変領域が一緒に折りたたまれるには短すぎる10未満のアミノ酸のリンカーペプチドを使用して作成することもでき、これにより、scFvはダイマー化してダイアボディを生成するか、他のマルチマーを形成する。ダイアボディは、対応するscFvよりもはるかに高い親和性で同族の抗原に結合することが示されており、scFvのKD値よりも最大40倍低い解離定数を有している。非常に短いリンカー(<3アミノ酸)は、ダイアボディよりも抗原に対してさらに高い親和性を示す3価のトリアボディまたは4価のテトラボディの形成につながる。他の変異体には、scFv-CH3ダイマーであるミニボディおよびより大きなscFv-Fcフラグメント(scFv-CH2-CH3ダイマー)が含まれ、単離されたCDRでさえ抗原結合機能を示す可能性がある。
【0086】
したがって、特定の実施形態において、Abフラグメントは、Fab、F(ab')2、FdおよびFvフラグメント、単一ドメインAb(sdAb)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二価(divalent)scFv(di-scFv)および二価(bivalent)scFv(bi-scFv)、ダイアボディ、ミニボディおよび単離されたCDRから選択される。特定の好ましい実施形態では、Abフラグメントは、Fab、F(ab')2、FdおよびFvフラグメントおよび一本鎖可変フラグメント(scFv)から選択される。これらのAbフラグメントは、当業者に知られている従来の組換え技術を使用して操作され、該フラグメントは、無傷のAbと同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。Abおよび関連する変異体の上記のタンパク質分解および操作されたフラグメントのすべては(詳細については、HollingerおよびHudson、2005;OlafsenおよびWu、2010を参照)、Abの「抗原結合部分」という用語に含まれることを意図している。
【0087】
交差競合するAb:
開示された方法で使用可能な追加の抗CXCR4抗体には、ヒトCXCR4に特異的に結合し、参照抗体、例えば、ウロクプルマブ(F7GL)またはF7、F9、D1およびE2と称するAbのいずれかとヒトCXCR4への結合について交差競合する抗体が含まれる(例えば、WO2008/060367;WO2013/071068を参照)。抗原に結合するために一対のAbが「交差競合」する能力は、第1のAbが第2のAbと実質的に同じ抗原のエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への第2のAbの結合を減少させること、および逆に第2のAbが第1のAbと実質的に同じ抗原のエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への第1のAbの結合を減少させることを示す。それゆえ、被験Abが、例えば、ウロクプルマブのヒトCXCR4への結合を競合的に阻害する能力は、被験Abがウロクプルマブと実質的に同じヒトCXCR4のエピトープ領域に結合することを実証する。したがって、開示された方法で使用可能な抗CXCR4 Abは、参照Ab、例えば、ウロクプルマブと実質的に同じ抗原のエピトープ領域に特異的に結合するAbを含む。
【0088】
第1のAbが第2のAbの抗原への結合を少なくとも約40%減少させる場合、第1のAbは、第2のAbと「実質的に同じエピトープ」または「実質的に同じ決定基」に結合するとみなされる。好ましくは、第1のAbは、第2のAbの抗原への結合を約50%を超えて(例えば、少なくとも約60%または少なくとも約70%)減少させる。より好ましい実施形態では、第1のAbは、第2のAbの抗原への結合を約70%を超えて(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%)減少させる。第1および第2のAbの順序を逆にすることができる、すなわち、「第2の」Abを最初に表面に結合させ、その後、「第1の」Abを「第2の」Abの存在下で表面と接触させることができる。Abが抗原に添加される順序に関係なく、抗原への結合の競合的減少が観察された場合、Abは「交差競合」するとみなされる。
【0089】
交差競合するAbは、CXCR4受容体などの抗原の実質的に同じエピトープ領域に結合するため、同様の機能特性を有すると予想される。交差競争の程度が高いほど、機能特性はより類似するであろう。例えば、2つの交差競合するAbは、それぞれが他方のエピトープへの結合を少なくとも約80%阻害する場合、本質的に同じ機能特性を有すると予想される。交差競合する抗体が、解離定数(KD)で測定した場合に、エピトープへの結合に対して同様の親和性を示す場合、この機能の類似性はさらに近くなると予想される。
【0090】
交差競合する抗抗原Abは、組換え抗原分子または細胞表面発現抗原分子のいずれかを使用して、表面プラズモン共鳴(BIAcoreR)分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーを含む標準的な抗原結合アッセイで検出可能に競合する能力に基づいて容易に識別できる。例として、被験AbがヒトCXCR4への結合についてウロクプルマブと競合するかどうかを同定するための単純な競合アッセイは、以下を含む:(1)飽和濃度で適用されたウロクプルマブの、ヒトCXCR4が固定化されているBIAcoreチップ(または表面プラズモン共鳴分析に適した他の媒体)への結合を測定する、および(2)被験Abが前もって結合されたヒトCXCR4コーティングBIAcoreチップ(または他の適切な媒体)へのウロクプルマブの結合を測定する。被験Abの存在下および非存在下でのCXCR4コーティング表面へのウロクプルマブの結合を比較する。被験Abの存在下でのウロクプルマブの結合の有意な(例えば、約40%を超える)減少は、両方のAbが実質的に同じエピトープを認識し、CXCR4標的への結合について競合することを示す。第1のAbの抗原への結合が第2のAbによって阻害されるパーセンテージは、以下のように計算することができる:[1-(第2のAbの存在下での第1のAbの検出された結合)/(第2のAb非存在下での第1のAbの検出された結合)]x100。これらAbが交差競合するかどうかを決定するため、ウロクプルマブの存在下でのCXCR4コーティングチップへの被験Abの結合を測定することを除いて、競合結合アッセイを繰り返す。
【0091】
一態様では、本開示の方法で使用するための抗CXCR4 Abは、CXCR4への結合について、mAb F7GL(ウロクプルマブ;それぞれ配列番号33および37に記載のVHおよびVL配列を有する)、F7(それぞれ配列番号25および29に記載のVHおよびVL配列を有する)、mAb 79GL(それぞれ配列番号34および38に記載のVHおよびVL配列を有する)、mAb F9(それぞれ配列番号26および30に記載のVHおよびVL配列を有する)、mAb D1GL(それぞれ配列番号35および39に記載のVHおよびVL配列を有する)、mAb D1(それぞれ配列番号27および31に記載のVHおよびVL配列を有する)、mAb E2GL(それぞれ配列番号36および40に記載のVHおよびVL配列を有する)、およびmAb E2(それぞれ配列番号28および32に記載のVHおよびVL配列を有する)のいずれかと交差競合する。CXCR4への結合について交差競合する抗体は、CXCR4の同じエピトープ領域(すなわち、同じまたは重複するエピトープ)に結合する。
【0092】
特定の実施形態において、交差競合する抗CXCR4 mAbは、配列番号41に記載のヒトVH 3-48生殖系列配列に由来する配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むVH領域および/または配列番号42に記載のヒトVK L15生殖系列配列に由来する配列を有する連続的に連結されたアミノ酸を含むVL領域を含む。
【0093】
開示された方法による治療に適した広範囲の癌:
免疫系の柔軟性を利用して癌細胞を攻撃および破壊することに依存する免疫腫瘍学は、非常に広範囲の癌の治療に適用可能である(例えば、Guillereyら、2016;LowryおよびZehring、2017;Callahanら、2016;Kamtaら、2017;Farkonaら、2016を参照)。したがって、CXCR4/CXCL12シグナル伝達経路の遮断と組み合わせたNK細胞、好ましくはNKAE細胞の投与を使用する開示された方法は、多種多様な固形腫瘍および液体腫瘍の両方の治療に適用可能である。
【0094】
特定の実施形態において、開示された併用療法は、固形腫瘍である癌を治療するために使用され得る。特定の好ましい実施形態では、固形腫瘍は小児腫瘍である。さらなる実施形態において、小児腫瘍は、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、またはユーイング肉腫である。積極的な治療にもかかわらず、そのような腫瘍を持つ子供のほぼ半数は進行性疾患を有している。転移性疾患の患者の予後は特に不良であり、その少なくとも3分の2は疾患が進行している。再発後の転帰は一般的に悲惨である。例えば、再発性ユーイング肉腫の患者の場合、長期生存の可能性は現在20%未満であり、再発が2年以内に発生した場合は10%未満である(Leaveyら、2008)。それゆえ、特に転移性疾患や再発性疾患などのリスクの高い特徴を持つ患者には、薬剤耐性の細胞メカニズムをバイパスする新しい治療アプローチが緊急に必要とされている。
【0095】
他の実施形態では、固形腫瘍は、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮NSCLC、非扁平上皮NSCLC、扁平上皮癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、卵巣癌、頸部癌、ファロピウス管の癌腫、子宮(子宮内膜)癌、子宮内膜の癌腫、子宮肉腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、尿道癌、尿管癌、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)、精巣癌、陰茎癌、膀胱癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、男性乳癌、胚細胞腫瘍、肉腫、皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、メルケル細胞癌、骨癌、黒色腫、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、甲状腺癌、口腔癌、口癌、唾液腺癌、喉癌、食道癌、胃腸癌、胃癌、小腸癌、胆嚢および胆管癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、肝癌、肝細胞腫、腎臓癌、腎細胞癌、内分泌系の癌、胸腺の腫瘍、胸腺腫、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織肉腫、中皮腫、腎骨盤の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳癌、神経膠腫、脳幹神経膠腫、神経膠芽細胞腫、多形性神経膠芽細胞腫(GBM)、神経芽細胞腫、下垂体腺腫、類表皮癌、小児固形腫瘍、小児肉腫、転移性癌、未知の原発性癌、環境誘発性癌、ウイルス関連癌、AIDS関連癌、カポシ肉腫、ウイルス起源の癌、進行性、難治性および/または再発性固形腫瘍、および前記固形腫瘍の任意の組み合わせから選択される癌である。特定の実施形態では、癌は、進行性で、切除不能な、転移性の、難治性の癌、および/または再発性の癌である。
【0096】
特定の他の実施形態において、本発明の併用療法は、血液悪性腫瘍である癌を治療するために使用され得る。血液悪性腫瘍には、すべてのタイプの白血病、リンパ腫、および骨髄腫を含む、2つの主要な血液細胞系統、すなわち骨髄細胞株(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生する)またはリンパ系細胞株(B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞を産生する)に由来する液体腫瘍が含まれる。本発明の併用療法を使用して治療できる血液悪性腫瘍には、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、AML、CLL、慢性骨髄性白血病(CML)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、MM、くすぶり型骨髄腫、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、進行性、転移性、難治性および/または再発性の血液悪性腫瘍、および上記の血液悪性腫瘍の任意の組み合わせから選択される癌が含まれる。
【0097】
他の実施形態では、血液悪性腫瘍は、急性、慢性、リンパ性(リンパ芽球性)および/または骨髄性白血病、例えば、ALL、AML、CLL、およびCML;リンパ腫、例えば、HL、NHL、そのうち約85%がDLBCL、FL、CLL/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、リンパ節辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫)を含むB細胞リンパ腫である、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL;Waldenstroemマクログロブリン血症(WM)としても知られる)、毛状細胞リンパ腫、および原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢T細胞リンパ腫、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC、すなわち、真菌性真菌症、セザリー症候群など)、成人T細胞リンパ腫/白血病、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、結節外ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫鼻型、腸症関連腸T細胞リンパ腫(EATL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、および詳細不明の末梢T細胞リンパ腫を含むT細胞リンパ腫であるNHL、急性骨髄性リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、真組織球性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、および前駆Bリンパ芽球性リンパ腫;骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無痛性骨髄腫とも呼ばれる)、意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、孤立性形質細胞腫、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、およびアミロイドーシス;および前記血液悪性腫瘍の任意の組み合わせから選択される癌である。本発明の方法はまた、進行性、転移性、難治性および/または再発性の血液悪性腫瘍の治療に適用可能である。
【0098】
医薬組成物および投与計画:
本明細書に開示される方法で使用されるAbおよびNK細胞は、組成物、例えば、AbまたはNKAE細胞の集団および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で構成され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性のあるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、Abを含む組成物の担体は、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適している。
【0099】
SC注射のオプションは、Halozyme TherapeuticsのENHANZERドラッグデリバリーテクノロジーに基づいており、Abと組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素(rHuPH20)を共製剤化することで、細胞外マトリックスによる皮下に送達できる生物製剤や薬物の量に関する従来の制限を取り除く(米国特許第7,767,429号)。
【0100】
好ましくは、NK細胞を含む組成物の担体は、静脈内、動脈内、腹腔内、大腿内、髄腔内、または腫瘍内注射、または腫瘍切除腔への注射に適している。
【0101】
本発明の医薬組成物は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性の担体、および/または防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含み得る。
【0102】
投与計画は、最適な所望の応答、例えば、最大の治療応答および/または最小の副作用を提供するように調整される。抗CXCR4 Abの投与量は、対象の体重の約0.01から約20mg/kg、好ましくは約1.0から約15mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、約0.1、0.3、1、2、3、5、10、15または20mg/kg体重、好ましくは、約1、3、5、10または15mg/kg体重であり得る。あるいは、体重に基づく用量の代わりに、固定用量または均一用量、例えば、約50から約2000mgのAbを投与することができる。例えば、投与量は、約200、約400、約800、約1600、または約2000mg、好ましくは、約400、約800、約1600mgであり得る。NKAE細胞は、約106から約1014細胞の範囲の細胞の絶対数に基づく用量で患者に投与され得る。例えば、細胞は、約1x105、5x105、1x106、5x106、1x107、5x107、1x108、5x108、1x109、5x109、1x1010、5x1010、1x1011、5x1011、1x1012、5x1012、1x1013、5x1013、または1x1014細胞の用量で対象に投与することができる。好ましい実施形態では、NKAE細胞は、約1×107から5×1010細胞、好ましくは1×108から5×109細胞、より好ましくは約5×108細胞の用量で対象に投与される。他の実施形態では、NKAE細胞は、約1×105から1×108細胞/kg体重、好ましくは約1×106から5×107細胞/kg、より好ましくは約7.5×106細胞/kgの用量で対象に投与される。NKAE細胞は、患者に複数回投与され得る。例えば、患者は、1から4回の注入、典型的には2回または3回の注入を受けることができる。これらの注入は、通常、少なくとも1週間の間隔が開けられる。
【0103】
Abの投与スケジュールは、通常、Abの典型的な薬物動態特性に基づいて持続的な受容体占有率(RO)をもたらす曝露を達成するように設計されている。例示的な治療レジメンは、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分の投与を、およそ毎週2回、およそ毎週1回、およそ2週間に1回、およそ3週間に1回、およそ4週間に1回、またはおよそ1月に1回行うことを伴う。特定の好ましい実施形態において、抗CXCR Abは、ほぼ毎週対象に投与される。他の実施形態では、Abは、約2週間に1回、または約3週間に1回投与される。特定の好ましい実施形態において、NK細胞は、患者にほぼ毎週投与される。他の実施形態では、NK細胞は、およそ毎週2回またはおよそ2週間に1回患者に投与される。投与量とスケジュールは、治療の過程で変わってよい。
【0104】
明細書に開示される方法のいずれかの特定の実施形態において、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、静脈内または皮下投与によって患者に投与される。さらなる実施形態において、NK細胞およびAbまたはその抗原結合部分は、対象に連続して投与される。「連続」投与とは、NK細胞および抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分の一方が他方の前に投与されることを意味する。どちらの治療薬も最初に投与することができる。すなわち、特定の実施形態では、NK細胞は、Abまたはその抗原結合部分の前に投与され、一方、他の実施形態では、抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分は、NK細胞の前に投与される。通常、Abは約60分間の静脈内注入によって投与される。
【0105】
特定の実施形態では、NK細胞およびAbまたはその抗原結合部分は、別々の組成物で同時に投与され、一方、他の実施形態では、NK細胞およびAbまたはその抗原結合部分は、単一の組成物で混合され、同時に投与される。
【0106】
本明細書に開示される治療方法のいずれかの特定の実施形態において、NK細胞とAbまたはその抗原結合部分との組み合わせの投与は、臨床的利益が観察される限り、または管理不能な毒性または疾患の進行が生じるまで継続される。
【0107】
NK細胞と抗CXCR4 Abの組み合わせの医学的使用:
本開示はまた、癌に罹患した対象を治療する際に組み合わせて使用するための、NK細胞、好ましくはNKAE細胞の集団、および抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分を提供する。これらの治療薬は、本明細書に開示される全範囲の癌の併用療法で使用することができる。特定の好ましい実施形態において、癌は、小児腫瘍、例えば、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、またはユーイング肉腫である。
【0108】
本発明の一態様は、癌に罹患した対象の治療用薬剤の調製のための、NK細胞、好ましくはNKAE細胞の集団と抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分との併用である。薬剤の調製のためのそのようなNKAE細胞および抗CXCR4 Abの任意の組み合わせの使用は、本明細書に開示される全範囲の癌に広く適用可能である。これらの使用の特定の好ましい実施形態において、癌は、小児腫瘍、例えば、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、またはユーイング肉腫である。
【0109】
本開示はまた、本明細書に記載の治療薬のこの組み合わせを使用する治療方法のすべての実施形態に対応する抗CXCR4 Abと組み合わせたNKAE細胞の集団の医学的使用を提供する。
【0110】
キット:
本発明の範囲内にはまた、治療的使用のための、NK細胞、好ましくはNKAE細胞の集団、および抗CXCR4 Abまたはその抗原結合部分を含むキットが含まれる。キットには通常、キットの内容の使用目的および使用説明を示すラベルが含まれる。ラベルという用語には、キット上またはキットとともに提供される、または他の仕方でキットに付属している、書き込み、または記録された資料が含まれる。したがって、本開示は、癌に罹患している対象を治療するためのキットを提供し、該キットは、(a)約50から約2000mgの範囲の1つまたはそれ以上の投与量の、癌細胞の表面に発現したCXCR4に特異的に結合するAbまたはその抗原結合部分;(b)約106から約1014の範囲の1つまたはそれ以上の投与量の、NK細胞、好ましくはNKAE細胞の集団;および(c)本明細書に開示される併用療法のいずれかにおいてAbまたはその一部およびNK細胞を使用するための説明書を含む。特定の実施形態において、Abは、単位剤形で同時包装され得る。ヒト患者を治療するための特定の好ましい実施形態では、キットは、本明細書に開示される抗ヒトCXCR4 Ab、例えば、ウロクプルマブまたはヒトCXCR4への結合についてウロクプルマブと競合するAbのいずれか1つを含む。
【0111】
本発明は、さらなる限定として解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本出願を通して引用されたすべての参考文献の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0112】
実施例1
異なる肉腫細胞株によるCXCR4の発現:
CXCR4の表面発現を、異なる肉腫細胞株;2つの横紋筋肉腫細胞株(RH30およびCW9019)、2つのユーイング肉腫細胞株(A4573およびA673)および2つの骨肉腫細胞株(MG-63および143B)のコンフルエントな細胞培養でフローサイトメトリーによって分析した。143B(CRL-8303)、MG-63(CRL-1427)およびA673(CRL1598)細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手した。RH30(ACC-489)は、ライプニッツ研究所DSMZから入手した。A4573およびCW9019は、それぞれ、Javier Alonso博士(カルロス3世保健研究所)とJosep Roma博士(ヴァルデブロン研究所)からの親切な贈り物であった。染色のため、2×105細胞/ウェルをV底96ウェルプレートで遠心分離し、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA、Lonza)、1%FBSおよび0.1%アジ化ナトリウム(PBSst)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Lonza)で洗浄した。非特異的結合は、細胞を40μg/mlのラットIgG(Sigma;最終容量100μl、20分、4℃)とプレインキュベートすることによって遮断した。細胞を抗CXCR4-APCmAb(BD Pharmingen;クローン12G5)またはアイソタイプが一致したmAbとともにインキュベートした(30分、4℃)。試料をNaviosサイトメーター(Beckman Coulter)で分析した。
【0113】
qRT-PCRのため、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を製造元のプロトコルに従って使用して細胞培養RNAを取得した。260nmでの抽出物の吸光度を測定することによってRNAを定量した。内部対照としてGUS遺伝子発現を使用するqRT-PCRにより、ヒトCXCR4をコードするmRNAの相対的発現レベルを決定した。Superscript IV First-Strand Synthesis System(Invitrogen)と供給元のプロトコルを使用して、1μgのトータルRNAからcDNAを合成した。ヒトCXCR4のプライマー(Hs00237052_m1、Applied Biosystems)およびヒトGUSのプライマー(Fw:5'-GAAAATATGTGGTTGGAGAGCTCATT-3'、Rv:5'-CCGAGTGAAGATCCCCTTTTTA-3';プローブ:5'-[6FAM]CCAGCACTCTCGTCGGTGACTGTTCA[TAMRA]-3';すべてSigmaから)を使用してcDNAを2回増幅した。Roche LightCycler480で6-FAM色素で標識されたFastStart TaqMan Probe Master(Roche)および非蛍光クエンチャーを使用して増幅(50サイクル;95℃で15秒、60℃で1分)をモニターした。2-ΔCT法(ここで、ΔCT=(対象のCt遺伝子-Ct内部対照)を使用して相対発現を分析した。
【0114】
図1Aに示すように、CXCR4+細胞の割合が最も高いのは、RH30胞巣状横紋筋肉腫細胞培養であり、CXCR4の発現は98.6±0.7%の細胞で検出された。
【0115】
これらの結果は、qRT-PCR分析によって決定されたCXCR4 mRNAの発現と一致していた。RH30培養物は、GUS対照遺伝子発現と比較して1.38±0.014を示した(図1B)。
【0116】
実施例2
CXCL12勾配に向けた異なる肉腫細胞株の遊走および浸潤:
異なる肉腫細胞株(RH30、CW9019、A4573、A673、MG-63、および143B)のCXCL12(100ng/ml)またはウシ胎児血清(FBS、10%)への遊走能を、トランスウェルアッセイ(48時間)で試験した。これは、インビボ遊走能のインビトロ指標とされる。細胞を飢餓緩衝液(starving buffer)(DMEM-1%FBS)で24時間インキュベートした。次に、2x105の細胞を80μlの遊走緩衝液[DMEM-1%ヒト血清アルブミン(HSA);Grifols]に懸濁し、96ウェルトランスウェルプレート(8.0μmポアサイズ、Neuroprobe)の上部コンパートメントに配置した。下部コンパートメントには、300μlの遊走緩衝液のみ(無条件培地(unconditioned medium))、100ng/mlのCXCL12(R&D Systems)を含む遊走緩衝液、または10%FBSを含む遊走緩衝液を充填した。浸潤能は、トランスウェル膜の上部を20μlの0.2mg/mlのマトリゲル(Corning)でコーティングして、同じ条件下で測定した。
【0117】
細胞が膜を通って遊走/浸潤できるように48時間インキュベートした後、脱脂綿棒を使用して膜の上面に残っている細胞を除去し、一方、膜の下側の細胞はメタノールで固定してクリスタルバイオレットで染色した。PBSで洗浄した後、Carl Zeiss Axiovert200顕微鏡を使用して遊走/浸潤細胞の数を測定した。ウェルあたり4つのフィールドを200倍でカウントした。遊走および浸潤指数を以下の式に従って計算した:指数=100×[(馴化培地に対するカウント細胞の数-無条件培地に対するカウント細胞の数)/(100-無条件培地に対するカウント細胞の数)] 。
【0118】
結果を図2に示す。異なる肉腫細胞株は、高度に走化性のFBSに向かって中程度のレベルの遊走および浸潤能を示したが(図2A)、アッセイの条件下では無視できる程度の遊走および浸潤能を示した(図2B)。比較的高レベルのCXCR4発現に付随して、RH30細胞のみが、特にCXCR4リガンドであるCXCL12に向かって遊走および浸潤することができた(図2B)。CXCL12へのRH30の遊走および浸潤指数は、それぞれ35.23±8.3および104.04±16.4であった。
【0119】
GraphPad Prism7ソフトウェアを使用して統計分析を行った。統計的有意性は、特に明記しない限り、対応のないスチューデントのt検定によって評価されたp<0.05で確立された。特に明記しない限り、結果は平均±SEMとして示されている。
【0120】
実施例3
NKAE細胞はRH30細胞に対して細胞毒性があり、抗CXCR4はNKAE細胞との組み合わせでインビトロでのRH30細胞の遊走および浸潤能を相乗的に無効にする:
ウロクプルマブは完全ヒトIgG4抗CXCR4 mAbであるため、ADCCを誘発することは予期されていない(DaviesおよびSutton、2015)。NKAE細胞の細胞溶解活性を、ウロクプルマブでプレコーティングした、アイソタイプ対照mAbでプレコーティングした、またはmAbでプレコーティングしないRH30細胞の死滅のパーセンテージとして測定した。健康なドナーからのNK細胞を、照射されたK562-mb15-41BBL細胞(Fujisakiら、2009)およびIL-2で活性化および拡張した。簡単に説明すると、健康なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配(Ficoll-Paque、GE Healthcare)での遠心分離(400g、30分)によって分離した。D. Campana教授(シンガポール国立大学)からの好意で提供された遺伝子組み換えK562mbIL15-41BBL細胞株に、100Gyを照射した。1:1.5の比率のドナーPBMCおよび照射されたK562-mb15-41BBL細胞プラス100U/mlのIL-2を、10%ヒトAB血清(Sigma)および100IU/mL IL-2(Miltenyi)を加えた幹細胞増殖培地(SCGM、Cellgenix)中で14~21日間共培養することによってNKAE細胞を得た。新鮮な培地を2~3日ごとに添加して1x106細胞/mlの最終濃度とした。NK細胞(CD3-、CD56+)、T細胞(CD3+、CD56-)およびNKT細胞(CD3+、CD56+)のパーセンテージと表現型をフローサイトメトリー(Navios、Beckman Coulter)によって毎週モニターした。この研究で使用した標識Abを表2に示す。
【0121】
表2:研究で使用した標識Ab
【0122】
横紋筋肉腫細胞に対するさまざまな治療の効果を研究するため、EF1aプロモーター下でネオマイシン耐性マーカー(Amsbio)とともに緑色蛍光タンパク質(GFP)とホタルルシフェラーゼ(Luc)をコードする組換えレンチウイルスを感染させて生物発光RH30細胞(RH30-GFP-Luc)を生成した。高いGFPレベルを発現する感染細胞を、蛍光活性化セルソーティングによって分離し、クローニングし、拡張し、インビボ生物発光アッセイに使用した。RH-30-GFP-Luc細胞は、表面のCXCR4発現を保持し、親RH30細胞と同様の増殖動態を示した。細胞を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS、Gibco)、2mMのL-グルタミン、50U/mlのペニシリン、および50μg/mlのストレプトマイシンを添加した(完全培地)ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Lonza)で培養した。
【0123】
RH30-GFP-Luc細胞を、示されたmAb濃度とプレインキュベートした(30分)。NKAE細胞および標的細胞をDMEM-10%FBS中、20:1または5:1の比率で共培養(4時間)し、ついで7-AADで染色し(10分、4℃)、フローサイトメトリーで分析した。GFP+集団内の7-AAD陽性細胞をゲーティングすると、死んだ標的細胞の割合が示された。比殺傷(specific killing)は、100×[(試料中の死んだ標的細胞%-自然死の標的細胞%)/(100-自然死の標的細胞%)]]として計算した。エフェクター細胞なしでインキュベートした標的細胞を使用して、自然細胞死を評価した。
【0124】
図3Aに見られるように、NKAE細胞は20:1のE:T比で23.0±1.8の特異的RH30細胞死滅を誘導したが、ウロクプルマブおよび対照mAbは観察された細胞毒性にほとんどまたは全く影響を与えなかった。
【0125】
ウロクプルマブ(MDX1338)およびNKAE細胞の効果を、個別にまたは組み合わせて、RH30胞巣状横紋筋肉腫細胞のヒト組換えCXCL12の勾配への遊走についても試験し、これらの細胞のインビトロでの浸潤能をTranswellプレートおよびMatrigelを使用して試験した。これらの実験では、105のRH30細胞を、示された最終濃度のウロクプルマブ、対照IgG4 mAbおよび/または500,000 NKAE細胞(エフェクター:ターゲット比、E:T=5:1)と最終容量90μlの遊走緩衝液中で混合し、アッセイを上記のようにして行った。
【0126】
ウロクプルマブおよびNKAEのそれぞれは、インビトロRH30細胞の遊走(図3B)および浸潤(図3C)を効率的に減少させたが、2つの治療法の組み合わせは相乗的に相互作用して、遊走と浸潤の両方を完全に無効にした(図3Bおよび3C)。観察された抗腫瘍効果が、単剤療法として投与された抗CXCR4またはNKAE細胞療法のいずれかで観察された効果よりも大きく、それぞれの個別の治療によって示される阻害レベルの合計よりも大きいため、抗CXCR4およびNKAE細胞療法のこの組み合わせは相乗的であると見なされる。
【0127】
実施例4
抗CXCR4は転移性肉腫マウス腫瘍モデルにおいてNKAE細胞のインビボ抗腫瘍活性を増強する:
単独または抗CXCR4 Abと組み合わせてのNKAE細胞療法の抗腫瘍活性を評価するため、CXCR4+RH30胞巣状横紋筋肉腫細胞を使用して転移性肉腫のinvivoモデルを作成した。該細胞は、免疫不全NSGTMマウスに移植すると腹膜異種移植片として増殖する。NSGTMマウス(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ、Charles River Laboratories)は、アルベルトソルズ生物医学研究所の動物施設で飼育された。すべての手順は、Comunidad de Madrid Animal Protection Area(マドリッドの動物保護地域)(PROEX 220/16)およびCSIC倫理委員会によって承認された。
【0128】
NKAE細胞は、実施例3に記載されているように、K562-mb15-41BBL細胞を使用してPBMCから調製された。
【0129】
GFPおよびルシフェラーゼを発現するレンチウイルス粒子を使用して、RH30胞巣状横紋筋肉腫細胞に形質導入した。6週齢の雌マウスに、0日目に0.5x106のRH30-GFP+Luc+細胞を静脈内(i.v.)接種して、転移性肉腫のインビボモデルを作成した。5つの治療群を確立した(5匹のマウス/群):未処置;アイソタイプ対照IgG4mAb;抗CXCR4ウロクプルマブ;NKAE細胞;ウロクプルマブとNKAEの組み合わせ。0日目(腫瘍移植の日)、7日目および14日目に、3回分のNKAE細胞(各5x106細胞、毎週)をマウスに投与し;6回分のウロクプルマブ(15mg/kgを週2回)を0、3、7、10、14および18日目に投与した。発光シグナルによって決定される発生中の腫瘍のサイズを35日目に測定し、この日にマウスを屠殺した。
【0130】
簡単に説明すると、D-ルシフェリン(150mg/kg;Perkin Elmer)を分析の10分前に腹腔内(i.p.)投与した。造影中、IVIS-Lumina II(Caliper Lifesciences)を使用して、遮光チャンバー内でマウスをイソフルランで麻酔した。露光時間は100秒であった。Living Image v4.5.2(Perkin Elmer)を使用してデータを定量し、疑似カラー画像を生成した。
【0131】
続いて、ヒトCXCR4特異的プローブおよびヒトGUS TaqMANプローブを使用したqRT-PCRにより、肺、肝臓、骨髄および脾臓の微小転移を検出および量化した。RNAeasy Miniキット(Qiagen)を製造元のプロトコルに従って使用して、マウスの解剖された臓器の3分の1をトータルRNA抽出に使用した。260nmでの抽出物の吸収を測定することにより、RNAを定量した。ヒトCXCR4およびヒトGUSをコードするmRNAの相対的発現レベルは、半定量的RT-PCRによって決定した。cDNA合成およびヒトCXCR4およびヒトGUS増幅は、実施例1に記載されるようにして実施した。示した値は、106のRH30細胞のペレットによるhCXCR4およびhGUS発現と比べたものである。
【0132】
微小転移はまた、ヘマトキシリン-エオジン染色およびhCXCR4特異的Abを使用する免疫組織化学によって、およびプローブとしてAlu-DNAを使用する蛍光原位置ハイブリダイゼーションによっても検出した。マウスの解剖した臓器を4%パラホルムアルデヒド(pH7.4)で一晩固定し、PBSで洗浄し、パラフィンに包埋した。連続切片を切断し(3μm)、標準的な手順を使用してヘマトキシリン/エオシンで染色した。肺におけるRH30細胞の存在を、抗ヒトCXCR4 Ab(R&D Systems、クローン44716、希釈率1:50)、EnVision FLEX+視覚化システム(マウス、高pH、Agilent)を使用した免疫染色によって調べ、ヘマトキシリン/エオシンで対比染色した。原位置ハイブリダイゼーションのため、低pH緩衝液(RiboCC、Roche)およびプロテアーゼIII(Roche)を使用して抗原賦活化をまず行った。次に、スライドをプローブAluポジティブ対照プローブII(Ventana、Roche 05272041001)とともにインキュベートした。3回のストリンジェンシー洗浄を行い、スライドを中間のウサギ抗DNPとともにインキュベートした。視覚化には、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したOmniRabbit(Ventana、Roche)を使用した。色原体として銀を使用して(Silver kit、Ventana、Roche)免疫組織化学反応を発色させ、Carazziのヘマトキシリンで核を対比染色した。すべての画像は、AxioCam ERC5Sデジタルカメラを備えたCarl Zeiss Lab.A1顕微鏡(Carl Zeiss)で捉えた。
【0133】
発光腫瘍の成長に対する治療の効果を図4Aに、定量的には図4Bに示す。図4Bが示すように、ウロクプルマブ(MDX1338)単独では、対照と比較してRH30腫瘍インプラントの増殖が中程度に抑制された(未治療マウスでは992.8x103±416.0x103、MDX1338処置マウスでは394.7x103±192.1x103、p=0.035)のに対し、NKAE治療はそれを完全に防ぐのに十分であった(p=0.0003)。
【0134】
RH30腹膜原発腫瘍は発光検出システムを使用して容易にモニターできるが、その感度は遠隔臓器におけるRH30 GFP+Luc+微小転移の存在を判断するには不十分である。それゆえ、ヒト細胞の存在は、マウスの肺、肝臓、脾臓および骨髄におけるヒトGUSまたはヒトCXCR4 mRNAの増幅によるqRT-PCRによって評価した。ヒト遺伝子の発現はマウスの肺でのみ検出され、この器官にRH30が存在することを示していた(図5)。hCXCR4(図5A)とhGUS(図5B)の相対的発現によって測定されるように、NKAE療法は肺転移に対して最小限の効果しかなかったが、単剤療法として投与されたウロクプルマブは、肺微小転移の発生率を減らすのにより顕著な効果があった。ヒトCXCR4の相対的発現レベルでは、未処理のマウスは、2.0x10-3±0.6x10-3のウロクプルマブ(MDX1338)処理マウスに対して11.4x10-3±4.7x10-3を示した。ヒトGUSの相対的発現は、未処理のマウスでは14.5x10-3±5.4x10-3であったが、ウロクプルマブで処理したマウスでは2.5x10-3±1.1x10-3であった。しかしながら、ウロクプルマブとNKAEの両方の組み合わせは、分析したマウスの肺において検出不可能なレベルのヒトCXCR4とヒトGUS遺伝子の両方をもたらし(図5Aおよび5B)、この組み合わせが肺転移を完全に排除したことを示した。したがって、抗CXCR4とNKAE細胞療法の組み合わせは、RH30胞巣状横紋筋肉腫の増殖の抑制と肺転移の破棄において強力な相乗効果を示す。
【0135】
免疫組織化学的および原位置ハイブリダイゼーション分析により、これらの結果がさらに確認された(図6)。肉腫肺微小転移巣は、ヘマトキシリンおよびエオシン染色(図6a)、Alu配列ハイブリダイゼーション(図6b)、およびCXCR4特異的Ab染色(図6c)によって未治療マウスの肺で同定されたが、NKAEとウロクプルマブの組み合わせで治療されたマウスは微小転移の欠如を示した(図6d)。
【0136】
実施例5
小児横紋筋肉腫患者の試料におけるCXCR4発現は診断試料よりも化学療法後および再発後の試料の方が高い:
2010年から2017年にラパス大学病院バイオバンクに寄託された23の小児横紋筋肉腫標本での免疫組織化学により、CXCR4の発現を評価した。追跡期間の中央値は7.9年(範囲0.6~18.4)であり、患者の年齢の中央値は6.6歳(範囲0.2~14.1)であった。14検体は診断試料であり、5検体は化学療法治療後に採取され、4検体は再発試料であった。ヒト細胞試料は、ヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセントを行った後に採取した。研究は、臨床研究のためのラパス病院倫理委員会(PI-2295)によって承認された。腫瘍CXCR4免疫組織化学のため、ホルマリン固定しパラフィン包埋した腫瘍スライドを脱パラフィンし、水和し、抗ヒトCXCR4 mAb(希釈1:10;クローン44716:R&D Systems)およびEnVision FLEX+視覚化システム(マウス、高pH;Agilent)を使用して染色し、ヘマトキシリン-エオシンで対比染色した。
【0137】
Abの特異性は、扁桃腺組織の免疫染色によって確認した。CXCR4+腫瘍細胞の割合には0~5のスコアが割り当てられ、染色強度には0~3のスコアが割り当てられた。これら2つの値を加算して、最終的な染色スコアを作成した。一部の癌におけるCXCR4の核局在化を説明する最近の研究(Krookら、2014;Liら、2015)を踏まえて、細胞質染色と核染色の両方を評価し、均等に重み付けした。CXCR4の核染色は、試験したシリーズの症例の15%に存在し、細胞質染色は68%に存在した。
【0138】
診断試料では、胚性横紋筋肉腫と胞巣状横紋筋肉腫の間、または限局性腫瘍とすでに転移した原発腫瘍からの試料の間で、CXCR4発現に違いはなかった(図7A)。これらの患者の転帰に関しては、その後再発した患者および最終的に疾患で死亡した患者の試料で、わずかに高いCXCR4スコアが観察された。
【0139】
興味深いことに、診断試料のCXCR4発現スコア(2.8±2.1)を化学療法後の試料のCXCR4発現スコア(4.4±0.7)および再発試料のCXCR4発現スコア(6.1±4.4)と比較すると、後者の試料ではCXCR4発現が高くなる傾向が強く見られた(図7B)。
【0140】
配列表の要約:
配列番号 説明
1 F7の重鎖CDR1
2 F9の重鎖CDR1
3 D1の重鎖CDR1
4 E2の重鎖CDR1
5 F7の重鎖CDR2
6 F9の重鎖CDR2
7 D1の重鎖CDR2
8 E2の重鎖CDR2
9 F7の重鎖CDR3
10 F9の重鎖CDR3
11 D1の重鎖CDR3
12 E2の重鎖CDR3
13 F7の軽鎖CDR1
14 F9の軽鎖CDR1
15 D1の軽鎖CDR1
16 E2の軽鎖CDR1
17 F7の軽鎖CDR2
18 F9の軽鎖CDR2
19 D1の軽鎖CDR2
20 E2の軽鎖CDR2
21 F7の軽鎖CDR3
22 F9の軽鎖CDR3
23 D1の軽鎖CDR3
24 E2の軽鎖CDR3
25 F7のVHアミノ酸配列
26 F9のVHアミノ酸配列
27 D1のVHアミノ酸配列
28 E2のVHアミノ酸配列
29 F7のVLアミノ酸配列
30 F9のVLアミノ酸配列
31 D1のVLアミノ酸配列
32 E2のVLアミノ酸配列
33 F7GLのVHアミノ酸配列
34 F9GLのVHアミノ酸配列
35 D1GLのVHアミノ酸配列
36 E2GLのVHアミノ酸配列
37 F7GLのVLアミノ酸配列
38 F9GLのVLアミノ酸配列
39 D1GLのVLアミノ酸配列
40 E2GLのVLアミノ酸配列
41 VH 3-48生殖系列アミノ酸配列
42 VK L15生殖系列アミノ酸配列
43 ヒトCXCR4アミノ酸配列
【0141】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B-C】
図4
図5A
図5B
図6
図7A
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【配列表】
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