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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】圃場作業車
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021015715
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118897
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 史也
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-92401(JP,A)
【文献】特開2018-50491(JP,A)
【文献】特開2018-117561(JP,A)
【文献】特開2020-99269(JP,A)
【文献】特開2021-43(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2984916(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
B62D 6/00
G05D 1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界領域によって包囲された圃場に設定された走行経路に沿って自動走行しながら農業資材を前記圃場に供給する圃場作業車であって、
前記走行経路として、前記圃場の外周領域を周回走行するための外周走行経路と、前記外周領域の内側を往復走行するための直線状の往復走行経路とを設定する走行経路設定部と、
自車位置を算出する自車位置算出部と、
前記自車位置と目標経路として設定された前記走行経路とに基づいて車体の走行を制御する走行制御部と、
前走行経路である前記往復走行経路から次走行経路である前記往復走行経路に移行するUターン移行走行において、前記境界領域で前記農業資材を補給するための補給走行モードを実行して、前記走行制御部に補給走行指令を与える補給モード実行部と、を備え、
前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での配置形態に応じて、第1補給走行モードまたは第2補給走行モードを実行し、
前記第1補給走行モードでは、前記車体は前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域まで後進走行を行い、補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行し、
前記第2補給走行モードでは、前記車体は前記次走行経路の始点に達する前に前記境界領域まで後進走行を行い、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する圃場作業車。
【請求項2】
前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での前記配置形態に応じて、さらに第3補給走行モードを実行し、
前記第3補給走行モードでは、前記車体が前記Uターン移行走行の途中で前記境界領域への後進走行を開始し、または前記車体が前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域への後進走行を開始し、当該後進走行の途中で前記補給作業が行われ、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する請求項1に記載の圃場作業車。
【請求項3】
境界領域によって包囲された圃場に設定された走行経路に沿って自動走行しながら農業資材を前記圃場に供給する圃場作業車であって、
前記走行経路として、前記圃場の外周領域を周回走行するための外周走行経路と、前記外周領域の内側を往復走行するための直線状の往復走行経路とを設定する走行経路設定部と、
自車位置を算出する自車位置算出部と、
前記自車位置と目標経路として設定された前記走行経路とに基づいて車体の走行を制御する走行制御部と、
前走行経路である前記往復走行経路から次走行経路である前記往復走行経路に移行するUターン移行走行において、前記境界領域で前記農業資材を補給するための補給走行モードを実行して、前記走行制御部に補給走行指令を与える補給モード実行部と、を備え、
前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での配置形態に応じて、第1補給走行モードまたは第3補給走行モードを実行し、
前記第1補給走行モードでは、前記車体は前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域まで後進走行を行い、補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行し、
前記第3補給走行モードでは、前記車体が前記Uターン移行走行の途中で前記境界領域への後進走行を開始し、または前記車体が前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域への後進走行を開始し、当該後進走行の途中で前記補給作業が行われ、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する圃場作業車。
【請求項4】
前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での配置形態に応じて、第4補給走行モードを実行し、
前記第4補給走行モードでは、前記Uターン移行走行において行われる前記後進走行を経て開始される前記次走行経路の始点への前進走行の途中で前記補給作業が行われ、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する請求項1から3のいずれか一項に記載の圃場作業車。
【請求項5】
前記補給モード実行部は、補給地点が設定されている前記境界領域と、前記前走行経路の終点と、前記次走行経路の始点との相互の位置関係に応じて、前記補給走行モードのいずれかを実行する請求項1から4のいずれか一項に記載の圃場作業車。
【請求項6】
前記補給モード実行部は、補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との距離が所定距離以下の場合、前記第1補給走行モードを実行し、前記所定距離を超えている場合、前記第2補給走行モードを実行する請求項1または2に記載の圃場作業車。
【請求項7】
前記補給モード実行部は、前記補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との間の距離が前記所定距離を超え、かつ前記補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との間の距離が、前記境界領域と前記前走行経路の終点との間の距離に比べて、判定距離を超えている場合、前記第2補給走行モードを実行する請求項6に記載の圃場作業車。
【請求項8】
前記農業資材の補給が必要となることが推定される前記前走行経路には補給フラグが付与され、前記補給フラグが付与されている前記前走行経路の終点から行われる前記Uターン移行走行において、前記補給走行モードが実行される請求項1から7のいずれか一項に記載の圃場作業車。
【請求項9】
前記Uターン移行走行での前記目標経路として、前記次走行経路の始点付近に設定された仮想旋回円への前記車体からの接線、及び前記仮想旋回円が用いられる請求項1から8のいずれか一項に記載の圃場作業車。
【請求項10】
前記接線が前記境界領域に干渉する場合、前記車体が前記境界領域と干渉することを回避する干渉回避走行が実行される請求項9に記載の圃場作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、境界領域によって包囲された圃場に設定された走行経路に沿って自動走行しながら農業資材を圃場に供給する圃場作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
走行しながら農業資材を圃場に供給する圃場作業車は、その作業走行中に農業資材を補給する必要がある。例えば、特許文献1に記載された圃場作業車は、圃場に供給する農業資材の残量が閾値レベルを下回ると、そのことを報知すると共に自動走行を停止させる機能と、必要資材の補給のために、走行機体が近くの畦まで自動走行するための非常走行経路を算出する機能を有する。
【0003】
特許文献2に記載された圃場作業車は、農業資材の搭載量と、農業資材の単位投入量と、走行経路とに基づいて、農業資材を補給するための補給位置及び補給のための積込量を算出する機能を有する。圃場への農業資材の供給は、圃場の外周領域に設定された外周走行経路に沿った周回走行、及び、外周領域の内側の中央領域に設定された往復走行経路に沿った往復走行によって実施される。往復走行経路は、直線状の往路と復路、及び往路と復路とを繋ぐUターン(180度)旋回経路からなる。補給位置は圃場境界領域(畦や農道)に設定され、補給位置に算出された必要積込量の農業資材が用意される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-112071号公報
【文献】特開2020-110108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による圃場作業車では、農業資材の残量が閾値レベルを下回ると、農業資材の補給のために近くの畦までの非常走行経路が算出される。非常走行経路の走行は非作業で行われるので、作業効率を考慮すれば、その走行時間は短いほど良い。しかしながら、特許文献1では、具体的な非常走行経路の算出方法は開示されていない。
【0006】
特許文献2による圃場作業車では、圃場境界領域に補給位置が推定され、その補給位置に農業資材が用意される。農業資材の補給位置と補給量が、実際の作業前に、車載ディスプレイに表示可能である。これにより、圃場作業車は、作業走行の途中で、補給位置に向かう補給走行を行うことができるが、特許文献2においても、補給走行の具体的な形態は、開示されていない。
【0007】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、作業走行の途中で、農業資材を効率よく補給するための自動走行が可能な圃場作業車を提供することである。
【0008】
本発明による圃場作業車は、境界領域によって包囲された圃場に設定された走行経路に沿って自動走行しながら農業資材を前記圃場に供給する作業車であり、
前記走行経路として、前記圃場の外周領域を周回走行するための外周走行経路と前記外周領域の内側を往復走行するための直線状の往復走行経路とを設定する走行経路設定部と、自車位置を算出する自車位置算出部と、前記自車位置と目標経路として設定された前記走行経路とに基づいて車体の走行を制御する走行制御部と、前走行経路である前記往復走行経路から次走行経路である前記往復走行経路に移行するUターン移行走行において、前記境界領域で前記農業資材を補給するための補給走行モードを実行して、前記走行制御部に補給走行指令を与える補給モード実行部と、を備え、
前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での配置形態に応じて、第1補給走行モードまたは第2補給走行モードを実行し、前記第1補給走行モードでは、前記車体は前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域まで後進走行を行い、補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行し、前記第2補給走行モードでは、前記車体は前記次走行経路の始点に達する前に前記境界領域まで後進走行を行い、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する。
【0009】
この構成では、往復走行経路での走行中に、農業資材の補給が必要になった場合、2つの補給走行モードからより適切なものが選択される。その1つが第1補給走行モードであり、このモードでは、圃場作業車は、予定通りに前走行経路の終点からUターン移行走行を実行して次走行経路の始点まで走行し、その後に次走行経路の延長線または延長線に平行な線に沿って、圃場の境界領域まで後進して停車する。圃場の境界領域に停車した圃場作業車は、農業資材の補給を受けることができる。補給作業が完了すると、圃場作業車は、そのまま次走行経路の始点まで前進し、次走行経路の始点に達すると、予定通りの次走行経路に沿った作業走行を行う。この第1補給走行モードは、通常のUターン移行走行に続いて、次走行経路を作業走行する前に、後進で補給地点に移動し、補給後に前進して、次走行経路に入って作業走行する。このため、補給走行の制御負担が軽いという利点がある。但し、次走行経路の始点から圃場の境界領域までの距離が長い場合、その距離の後進及び前進に無駄な時間を費やすという問題がある。この問題を解決するために用意されている補給走行モードが第2補給走行モードである。この第2補給走行モードでは、圃場作業車は、前走行経路の終点から開始されるUターン移行走行の途中で停車し、次走行経路の延長線または延長線に平行な線に沿って、圃場の境界領域まで後進して停車する。そこで、補給作業が行われ、補給作業が完了すると、圃場作業車は、次走行経路の始点まで前進し、次走行経路の始点に達すると、予定通りの次走行経路に沿った作業走行を行う。つまり、第2補給走行モードでは、Uターン移行走行において次走行経路の始点に達する前に境界領域への後進を行うので、次走行経路の始点から圃場の境界領域までの距離が長い場合でも、第1補給走行モードに比べて無駄となる前進と後進との走行距離が短くなる。
【0010】
圃場形状が矩形でなく、凹凸のある形状の場合、車体が車体走行方向の先に位置する補給地点となる境界領域に向かって後進する途中において、車体の側方近くに、車体走行方向に沿って延びる境界領域部分が存在することがある。このようなケースでは、車体は、車体走行方向の先に位置する境界領域ではなく、この車体走行方向に沿って延びる境界領域部分に横付けして、補強作業を行うことが好ましい。このことから、好適な実施形態では、前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での前記配置形態に応じて、さらに第3補給走行モードを実行し、前記第3補給走行モードでは、前記車体が前記Uターン移行走行の途中で前記境界領域への後進走行を開始し、または前記車体が前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域への後進走行を開始し、当該後進走行の途中で前記補給作業が行われ、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する。
【0011】
圃場の形状や作業の種類によっては、上述した第1補給走行モードと第3補給走行モードとが優先的に必要となる場合がある。このことから、本発明による別な圃場作業車は、境界領域によって包囲された圃場に設定された走行経路に沿って自動走行しながら農業資材を前記圃場に供給する圃場作業車であり、
前記走行経路として、前記圃場の外周領域を周回走行するための外周走行経路と、前記外周領域の内側を往復走行するための直線状の往復走行経路とを設定する走行経路設定部と、自車位置を算出する自車位置算出部と、前記自車位置と目標経路として設定された前記走行経路とに基づいて車体の走行を制御する走行制御部と、前走行経路である前記往復走行経路から次走行経路である前記往復走行経路に移行するUターン移行走行において、前記境界領域で前記農業資材を補給するための補給走行モードを実行して、前記走行制御部に補給走行指令を与える補給モード実行部と、を備え、
前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での配置形態に応じて、第1補給走行モードまたは第3補給走行モードを実行し、前記第1補給走行モードでは、前記車体は前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域まで後進走行を行い、補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行し、前記第3補給走行モードでは、前記車体が前記Uターン移行走行の途中で前記境界領域への後進走行を開始し、または前記車体が前記次走行経路の始点に達した後に前記境界領域への後進走行を開始し、当該後進走行の途中で前記補給作業が行われ、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する。
【0012】
さらに、圃場の形状や作業の種類によっては、Uターン移行走行の途中またはUターン移行走行の終了後に行われる後進走行によって補給地点に向かうのではなく、当該後進走行の後に、さらに前進走行を行うことで補給地点に向かう補給走行が好適な場合がある。このことから、好適な実施形態では、前記補給モード実行部は、前記走行経路の前記圃場での配置形態に応じて、第4補給走行モードを実行し、前記第4補給走行モードでは、前記Uターン移行走行において行われる前記後進走行を経て開始される前記次走行経路の始点への前進走行の途中で前記補給作業が行われ、前記補給作業の後に前記次走行経路の始点に前進走行する。
【0013】
補給地点が設定されている境界領域と、前走行経路の終点と、次走行経路の始点との相互の位置関係によって、Uターン移行走行の経路、補給地点に向かう経路、補給地点から次走行経路の始点に向かう経路が、実行可能な操舵で無駄の少ない走行を条件として求められる。このことから、好適な実施形態では、前記補給モード実行部は、補給地点が設定されている境界領域と、前記前走行経路の終点と、前記次走行経路の始点との相互の位置関係に応じて、前記補給走行モードのいずれかを実行する。
【0014】
第2補給走行モードは、第1補給走行モードを実行した場合に生じうる、次走行経路の始点と補給地点が設定されている境界領域との間の無駄な走行を低減させるものであり、次走行経路の始点と境界領域との間の距離が短い場合、その効果は低い。また、第1補給走行モードでは、通常行われる補給を伴わないUターン移行走行の全てがそのまま流用され、次走行経路の始点と補給地点が設定されている境界領域との間の往復走行が補給走行として用いられるので、その走行制御が容易である。したがって、無駄な走行が少ない場合には、第1補給走行モードが好ましい。このことから、好適な実施形態では、前記補給モード実行部は、補給地点が設定されている境界領域と前記次走行経路の始点との距離が所定距離以下の場合、前記第1補給走行モードを実行し、前記所定距離を超えている場合、前記第2補給走行モードを実行する。さらに、より具体的に第1補給走行モードと第2補給走行モードとの違いを考慮して選択する場合には、前記補給モード実行部は、前記補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との間の距離が、前記境界領域と前記前走行経路の終点との間の距離に比べて、わずかに大きな場合、前記第1補給走行モードを実行し、かつ前記補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との間の距離が、前記境界領域と前記前走行経路の終点との間の距離に比べて、かなり大きな場合、前記第2補給走行モードを実行することが好ましい。あるいは、前記補給モード実行部は、前記補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との間の距離が前記所定距離を超え、かつ前記補給地点が設定されている前記境界領域と前記次走行経路の始点との間の距離が、前記境界領域と前記前走行経路の終点との間の距離に比べて、判定距離を超えている場合、前記第2補給走行モードを実行する。この判定距離は、無駄になる走行距離をどの程度許容するかどうかに基づいて決定される。
【0015】
境界領域で農業資材の補給を行うための補給走行モードは、前走行経路の終点と次走行経路の終点を繋ぐUターン移行走行において、実行される。このため、Uターン移行走行の開始直後に、または開始前に、補強モード実行部は、農業資材の補給が要求されていることを知らなければならない。このことから、好適な実施形態では、前記農業資材の補給が必要となることが推定される前記前走行経路には補給フラグが付与され、前記補給フラグが付与されている前記前走行経路の終点から行われる前記Uターン移行走行において、前記補給走行モードが実行される。この構成では、補強モード実行部は、前走行経路に補給フラグ付与されているかチェックすることで、当該前走行経路から次走行経路へUターン移行走行時に補給走行モードを実行する必要があるかどうかを知ることができる。走行経路設定部が走行経路を設定する際に、その走行経路の走行順番も決定される場合には、農業資材の補給が必要となる走行経路を算出することができるので、当該走行経路に該当する前走行経路に補給フラグを付与することができる。あるいは、単位走行当たりの農業資材の消費量が設定されていれば、走行距離から農業資材の補給時期が算出できるので、補給が必要となったタイミング走行する前走行経路に補給フラグを付与することができる。
【0016】
Uターン移行走行において、前走行経路からの離脱は単純な操舵制御で可能であるが、次走行経路への進入制御は高精度の操舵制御が必要となる。その際、車体が次走行経路の始点にスムーズに到達するためには、演算が容易な円弧が目標経路として用いられると、好都合である。このことから、好適な実施形態では、前記Uターン移行走行での前記目標経路として、前記次走行経路の始点付近に設定された仮想旋回円への前記車体からの接線、及び前記仮想旋回円が用いられる。この構成では、円弧(仮想旋回円)である目標経路への進入においても、圃場作業車から円弧への接線が用いられるので、スムーズに行われる。また、安定した姿勢で次走行経路の始点に到達するために、仮想旋回円は次走行経路の始点ではなく、その延長線に接するように設定されることが好ましい。さらに、圃場の状態や圃場作業車の操向特性に適合する仮想旋回円半径を設定すれば、よりスムーズなUターン移行走行が可能となる。
【0017】
圃場形状が矩形でなく、凹凸のある形状の場合、Uターン移行走行において、仮想旋回円への進入するための接線(直線状の目標経路)が、境界領域と交わることがある。そのような場合、実際に車体が境界領域に干渉する可能性が検知されると、緊急停車が行われ、自動走行が停止する。このような緊急事態を避けるために、好適な実施形態では、前記接線が前記境界領域に干渉する場合、前記車体が前記境界領域と干渉することを回避する干渉回避走行が実行される。具体的には、圃場作業車は、接線が境界領域に干渉しなくなるまで、当該境界領域と平行に走行する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】圃場作業車の一例であるトラクタの側面図である。
図2】自動走行するトラクタのための補給経路を含む走行経路の一部を示す模式図である。
図3】前走行経路から次走行経路への基本的な旋回走行におけるトラクタの動きを示す模式図である。
図4】禁止境界線とトラクタとの位置関係を説明する説明図である。
図5】補給走行を伴うUターン移行走行におけるトラクタの動きを示す模式図である。
図6】干渉回避走行を含むUターン移行走行と補給走行とにおけるトラクタの動きを示す模式図である。
図7】第1補給走行モードと第2補給走行モードとを比較する模式図である。
図8】第1補給走行モードと第3補給走行モードとを比較する模式図である。
図9】補給走行を含むトラクタの自動走行に関する機能ブロック図である。
図10】補給走行を含むトラクタの自動走行におけるデータの流れを示すブロック図である。
図11】補給走行と往復走行とにおけるフローチャート図である。
図12】切り返し旋回を説明するための模式図である。
図13】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例1を示す模式図である。
図14】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例2を示す模式図である。
図15】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例3を示す模式図である。
図16】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例4を示す模式図である。
図17】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例5を示す模式図である。
図18】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例6を示す模式図である。
図19】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例7を示す模式図である。
図20】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例8を示す模式図である。
図21】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例9を示す模式図である。
図22】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例10を示す模式図である。
図23】補給走行を伴うUターン移行走行の種々の応用例11を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を用いて、本発明による自動走行可能な圃場作業車の実施形態の1つを説明する。図1は、そのような圃場作業車の一例であるトラクタの側面図である。図1に示されているように、このトラクタは、走行装置10によって対地支持された車体1と、原動機13と、変速装置15とを備えている。走行装置10は、前輪11と後輪12とを含む。前輪11は、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。同様に、後輪12もタイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機13は、ディーゼルエンジンや電動モータ等によって構成される。変速装置15は、変速によって走行装置10の推進力を調節するとともに、走行装置10の前進と後進の切替が可能である。車体1にはキャビン21が設けられ、キャビン21内には運転室が形成されている。
【0020】
車体1の後部には、3点リンク機構等で構成された昇降装置16が設けられている。昇降装置16には、作業装置30が装備される。作業装置30には、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、苗を移植する苗移植装置、種を散布する播種装置などが含まれる。肥料、農薬、苗、種、などが、作業装置30によって圃場に供給される農業資材である。
【0021】
この作業装置30は、農業資材を収容可能な容器31と、容器31内の農業資材を圃場に供給する供給機構32とを備えている。供給機構32による農用資材の供給量及び供給幅は調節可能である。この調節を車速と連動することにより、単位走行距離(単位走行時間)当たりの供給量である単位供給量は制御可能である。
【0022】
前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。または、走行装置10の左右速度差によってトラクタの走行方向が変更されてもよい。この実施形態では、自動走行における前輪11の操舵角は、図示されていない電動操舵機構を通じて調整可能である。手動走行における前輪11の操舵は、運転室に配置されているステアリングホイール22の操作によって行われる。このトラクタは、自車位置検出機能を実現するために、キャビン21の天井領域に、測位モジュールとして衛星測位モジュール7を備えている。衛星測位モジュール7には、GNSS信号などの衛星測位信号を受信するための衛星用アンテナが含まれている。なお、この衛星測位モジュール7には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール7とは別の場所に設けてもよい。なお、ここでの車体位置は、作業装置30を含むトラクタの特定部分の位置を意味し、複数であってもよい。
【0023】
図2には、圃場におけるトラクタの単純化された作業走行と補給走行とが、模式的に示されている。この圃場は、畦や農道壁面などの境界領域によって包囲されているので、トラクタの進入を禁止する禁止境界線BLは、境界領域の内側境界線である。禁止境界線BLに位置は、トラクタが境界領域に近接しながら周回走行する際に、衛星測位モジュール7からの測位データから逐次算出される自車位置(走行軌跡)に基づいて得られる。この周回走行の経路は、外周走行経路CLであり、この周回走行により外周領域が形成される。なお、周回走行の経路を算出する際の自車位置のサンプリングは、コンピュータによって自動的に行われてもよいし、運転者の任意操作による手動サンプリングが用いられてもよい。
【0024】
禁止境界線BLによって規定される圃場の外形領域が決定されると、この外形領域の内側領域を作業走行するための走行経路が演算される。その際、トタクタが農業資材を補給するために停車する補給地点が、境界領域に設定可能である。補給地点は、所定の長さを有する補給領域であってもよい。図2で示された例では、トラクタは、往復走行経路である直線状走行経路(図2では符号SLで示されている)に沿って走行する直進走行と、1つの直線状走行経路(前走行経路Ls)から他の直線状走行経路(次走行経路Ln)に移行するためのUターン移行走行(その経路は図2では符号TLで示されている)とを繰り返す。一般に、Uターン移行走行は、1つ以上の直線状走行経路を挟むように行われるが、隣接する直線状走行経路同士を繋ぐ走行であってもよい。境界領域で農業資材を補給するための補給走行(その経路は図2では符号GSLで示されている)は、主に、Uターン移行走行の終了時またはその途中において行われる。補給走行では、後進と前進とが用いられ、トラクタは、補給地点での補給作業に適した位置で、停車する。本願発明での、Uターン移行走行は、厳密な180度方向転換走行を意味するわけではなく、1つの直線状走行経路から他の直線状走行経路への移行のための方向転換を意味しており、180度以外の方向転換走行も含まれる。
【0025】
このトラクタは衛星測位モジュール7を装備しているので、車体1の任意の点、例えば車体基準点Pvの地図座標(地球座標系や圃場座標系など)が算出可能である。トラクタと禁止境界線BLとの位置関係を検知するため、図4に示すように、トラクタと禁止境界線BLとの距離が演算される。この例では、トラクタは、所定サイズの四角形(トラクタの輪郭を包囲する四角形)で示されており、その各角部から禁止境界線BLに下ろした垂直線の長さが、四角形の各角部から禁止境界線BLまでの距離として演算される。図4では、横方向に延びた禁止境界線BLまでの最短距離は、左前角部から禁止境界線BLまでの距離であり、縦方向に延びた禁止境界線BLまでの最短距離は、左後角部から禁止境界線BLまでの距離である。各角部の地図座標は、車体基準点Pvの地図座標から算出される。
【0026】
図3に、Uターン移行走行における自動操舵の基本的な例が、模式的に示されている。この例では、符号Lsで示した直線状走行経路(移行元)の終点(図3では記号EPが付与されている)から符号Lnで示した直線状走行経路(移行先)の始点(図3では記号SPが付与されている)へ移行する単純旋回走行が示されている。この出願では、移行元となる直線状走行経路を前走行経路Lsと呼び、移行先となる直線状走行経路を次走行経路Lnと呼ぶ。
【0027】
トラクタは前走行経路Lsの終点に達すると、前走行経路Lsを離脱して次走行経路Lnに向かう離脱旋回走行を行う。この離脱旋回走行の走行軌跡がTr1で示されている。図3の例では、作業装置30が前走行経路Lsの終点を通過するまで、直進走行している。
【0028】
前走行経路Lsを離脱する離脱旋回走行は、予め設定された操舵角度で行われ、離脱旋回走行の途中で、接線追従走行に移行する。次走行経路Lnの始点またはその延長線上の始点近傍の位置に、前走行経路Ls側で接する仮想旋回円VCが設定されている。離脱旋回走行を行っているトラクタの車体基準点Pvから仮想旋回円VCへの接線が算出される。ここで、車体基準点Pvは、実質的にはトラクタの中心点であるが、任意の位置に設定可能である。車体基準点Pvを通ってトラクタの進行方向に向かう線の向きが走行方位である。トラクタは、算出された接線の方位を目標方位として、接線追従走行を行う。接線追従走行の途中で、算出された接線と走行方位とのなす角度が所定角以内になれば、当該接線が基準接線RTとして設定される。基準接線RTが設定されると、トラクタは、基準接線RTを移行目標経路とするとともに、仮想旋回円VCを旋回目標経路として、次走行経路Lnに進入するための進入旋回走行を行う。基準接線RTを移行目標経路とした走行軌跡はTr2で示されている。移行目標経路での走行が進み、トラクタの車体基準点Pvが仮想旋回円VCに接近すれば、仮想旋回円VCに沿って走行する円弧旋回走行に入る。最終旋回走行の走行軌跡がTr3で示されている。円弧旋回走行が進み、トラクタの車体基準点Pvが次走行経路Lnの始点または始点から延びた次走行経路Lnの延長線に達すると、トラクタは、円弧旋回走行を終了し、次走行経路Lnまたはその延長線を目標経路とする直進走行に入る。
【0029】
図5に、Uターン移行走行の終了後に、境界領域で農業資材を補給するために行われる補給走行の基本的な例が、模式的に示されている。ここでは、Uターン移行走行が終了して、車体1が次走行経路Lnに沿った作業走行を行う姿勢になった時に、トラクタは一時停車し、次に、次走行経路Lnの延長線に沿って、境界領域まで後進する。この後進経路は、後進補給経路として、図5では記号GSL1が付与されている。作業装置30が境界領域に寄せられると、農業資材の補給作業が行われる。なお、このように、車体1の後進によって、車体1の後方部(作業装置30)を境界領域に向き合わせる走行を縦寄せと称する。補給作業が終了すると、トラクタは、前進補給経路に沿って前進する。この前進経路は、前進補給経路として、図5では記号GSL2が付与されている。トラクタが次走行経路Lnの始点に達すると、次走行経路Lnに沿った作業走行が開始される。この補給走行は、次走行経路Lnの延長線に沿って、直線状の後進と前進とを行うだけであり、簡単な走行制御で実現可能である。
【0030】
次に、前走行経路Lsの終点と次走行経路Lnの始点とに向き合う禁止境界線BLに生じている突起部分を避けるUターン移行走行を説明する。図6から明らかなように、前走行経路Lsの終点を過ぎた車体1の車体基準点Pvから仮想旋回円VCにひかれた接線は、禁止境界線BLの突起部分と交差する。このため、図6に示された境界領域の形態では、図3で示されたような移行走行をすると、トラクタは禁止境界線BLに干渉する。この干渉を避けるために、トラクタは、禁止境界線BLとの干渉回避する干渉回避走行を行う。ここでは、トラクタと干渉する禁止境界線BLは、干渉境界線と称する。
【0031】
図6には、この干渉回避走行を伴うUターン移行走行での車体1の動きが示されている。トラクタは、前走行経路Lsの終点を過ぎると、次走行経路Lnの始点付近に設定された仮想旋回円VCに向けて離脱旋回走行を開始する(#a)。離脱旋回走行が開始された車体1の仮想旋回円VCに向かう方位には、干渉境界線が存在している(#b)。このため、この干渉境界線との干渉を避けるための干渉回避経路ALが設定される。干渉回避経路ALは、干渉境界線から安全走行のために必要な間隔をあけて延びている走行経路である。実質的には、干渉回避経路ALは、禁止境界線BLに平行となる。干渉回避走行では、トラクタは干渉回避経路ALを走行目標経路として自動走行する(#c)。
【0032】
トラクタは、干渉回避経路ALを走破すると、仮想旋回円VCの方に旋回し(#d)、仮想旋回円VCに向かって接線追従走行を行う(#e)。その後、トラクタが仮想旋回円VCに到達すれば、仮想旋回円VCを旋回目標経路として旋回走行し(#f)、次走行経路Lnの始点または始点付近に達する(#g)。その後、補給前の後進と補給後の前進とからなる補給走行が行われ、農業資材が補給される(#h)。
【0033】
図7には、段差を有する境界領域における、補給走行を伴うUターン移行走行の2例が示されている。図7の(a)に示されたUターン移行走行に伴う補給走行は、図5図6で示されたものと同じであり、第1補給走行モードと称せられる基本的な補給走行である。図7の(b)に示されたUターン移行走行に伴う補給走行は、第2補給走行モードと称せられる補給走行である。この実施形態での第2補給走行モードが選択される選択条件は、補給地点が設定されている境界領域と次走行経路Lnの始点との間の距離が前もって設定可能な第1の所定距離を超え、かつ補給地点が設定されている境界領域と次走行経路Lnの始点との間の距離が、境界領域と前走行経路Lsの終点との間の距離に比べて、第2の所定距離(判定距離)を超えていることである。この選択条件が満たされていると、第2補給走行モードが実行される。
【0034】
図7の(a)から明らかなように、第1補給走行モードでは、トラクタは、前走行経路Lsの終点からUターン移行走行を行って、次走行経路Lnの始点に到達する。さらに、トラクタは、次走行経路Lnの始点から補給走行を開始し、次走行経路Lnの延長線に沿って後進で境界領域に向かい、境界領域の手前の停車位置で停車する。停車中に、補給作業が行われる。補給作業が終了すれば、トタクタは、次走行経路Lnの延長線に沿って前進で次走行経路Lnの始点に向かう。トタクタが次走行経路Lnの始点に到達すると、補給走行が終了し、次走行経路Lnに沿った作業走行が開始される。
【0035】
この第1補給走行モードでは、図7の(a)から明らかなように、補給地点が設定されている境界領域と次走行経路Lnの始点との間の距離が、当該境界領域と前走行経路Lsの終点との間の距離に比べて大きい場合、補給走行において、前走行経路Lsの終点と次走行経路Lnの始点との経路延び方向での距離差だけ、前進と後進との両方で、無駄な走行が生じる。この無駄な走行は、図7の(b)に示す第2補給走行モードによって避けることができる。
【0036】
第2補給走行モードでは、トラクタは、前走行経路Lsの終点からUターン移行走行を行って、次走行経路Lnの始点に到達する前に、前走行経路Lsの延長線に達すると、補給走行を開始する。トラクタは、次走行経路Lnの延長線に沿って後進で境界領域に向かい、境界領域の手前の停車位置で停車する。停車中に、補給作業が行われる。補給作業が終了すれば、第1補給走行モードと同様に、トタクタは、次走行経路Lnの延長線に沿って前進で次走行経路Lnの始点に向かう。トタクタが次走行経路Lnの始点に到達すると、補給走行が終了し、次走行経路Lnに沿った作業走行が開始される。つまり、第2補給走行モードでは、トタクタは、次走行経路Lnの延長線に到達すれば、次走行経路Lnの始点まで走行するのではなく、そこから補給走行が開始される。トタクタは、境界領域まで後進し、補給作業の後に次走行経路Lnの始点に前進する。図7から明らかなように、前走行経路Lsの終点から補給停車位置までの距離が、第1補給走行モードに比べて、第2補給走行モードでは短くなっている。
【0037】
図8には、段差を有する境界領域における、補給走行を伴うUターン移行走行の2つの例が示されている。図8の(a)には、Uターン移行走行の終了後に補給走行が行われる第1補給走行モードが示されており、図8の(b)には、第3補給走行モードが示されている。第3補給走行モードでは、次走行経路Lnの始点に達した後に行われる境界領域に向かう後進走行の途中で、補給作業が行われ、補給作業の後に次走行経路Lnの始点に前進走行する。
【0038】
第3補給走行モードでは、図8の(b)に示されているように、トラクタは、前走行経路Lsの終点からUターン移行走行を行って、次走行経路Lnの始点に到達する。次に、トラクタは、次走行経路Lnの始点から補給走行を開始するが、第1補給走行モードとは、異なり、次走行経路Lnの延長線の先に位置する境界領域まで後進しない。この例では、段差を有する境界領域に、次走行経路Lnの延長線にほぼ平行に延びている境界領域部分が含まれており、当該境界領域部分は補給作業が可能であるとする。このため、トラクタは、図8においてGSL1の符号が付与されている後進補給経路に沿った後進の途中で、この境界領域部分に横付けして停車する。この停車位置で、トラクタの横方向から補給作業が行われる。補給作業が終了すれば、トタクタは、後進補給経路と実質的に同一である前進補給経路(図8においてGSL2の符号が付与されている)に沿った前進で次走行経路Lnの始点に向かう。トタクタが次走行経路Lnの始点に到達すると、補給走行が終了し、次走行経路Lnに沿った作業走行が開始される。
【0039】
なお、次走行経路Lnの延長線にほぼ平行に延びている禁止境界線BLと次走行経路Lnの延長線との間隔が大きい場合には、後進補給経路GSL1には、当該禁止境界線BLに横寄せするための横寄せ操舵が行われる。この横寄せ操舵は、リモコン等を用いて手動操作で行われてもよい。
【0040】
第1補給走行モード、第2補給走行モード、第3補給走行モードなどの補給走行モードの選択は、補給地点が設定されている境界領域と、前走行経路Lsの終点と、次走行経路Lnの始点との相互の位置関係、つまり、往復走行経路の圃場での配置形態に基づいて、決定される。
【0041】
上述したトラクタの自動走行を制御するための制御系を説明する。図9に、トラクタの自動走行制御系を示す機能ブロック図が示されている。この制御系には、ユーザインターフェースを有する第1制御ユニット4と、車体1の種々の制御機器を制御する第2制御ユニット5と、主にUターン移行走行及び補給走行を制御する第3制御ユニット6と、入出力信号処理ユニット90とが含まれている。第1制御ユニット4と第2制御ユニット5と第3制御ユニット6と入出力信号処理ユニット90との間は、車載LANまたは制御信号線等によってデータ伝送可能に接続されている。第1制御ユニット4は、タッチパネル40を備えたタブレット型コンピュータであり、運転室に備えられている。第1制御ユニット4は、運転室から持ち出されて、無線通信によって車載LANと接続することで、トラクタの外部で、例えば、境界領域にいる操作者によって使用可能である。
【0042】
入出力インタフェースとして機能する入出力信号処理ユニット90は、データ・信号ライン、車載LAN、無線通信回線、有線通信回線と接続する機能を有する。車両走行機器群91、作業装置機器群92、報知デバイス93、などは、入出力信号処理ユニット90を介して、第1制御ユニット4や第2制御ユニット5と接続されている。このため、入出力信号処理ユニット90は、出力信号処理機能、入力信号処理機能、データ・信号ラインや無線回線や有線回線を介してデータ伝送を行う通信機能、などを備えている。車両走行機器群91には、電動操舵機構を構成する操舵機器、エンジン制御機器、変速操作機器などが含まれている。作業装置機器群92には、作業装置30への動力伝達クラッチや作業装置30の資材投与幅や投与量を調節する機器などが含まれている。報知デバイス93には、計器やブザーやランプや液晶ディスプレイなどが含まれている。さらに、入出力信号処理ユニット90には、走行状態検出センサ群81、作業状態検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などのスイッチやボタンも接続されている。
【0043】
上述した衛星測位モジュール7からの測位データは、自車位置算出部70で処理され、このトラクタの所定箇所の地図座標または圃場座標における位置が、自車位置として出力される。
【0044】
第1制御ユニット4は、タッチパネル40、データ通信部43、外形取得管理部44、補給管理部45、補給位置設定部46、走行経路生成部47を備えている。第1制御ユニット4は、タッチパネル40を通じて、運転者による各種操作入力の受け入れ、及び運転者へ種々の情報を報知することができる。ユーザによる入力操作は、ソフトウエアスイッチやハードウエアスイッチなどからなる情報入力操作具41を用いて行われる。データ通信部43は、外部のコンピュータまたは記憶メディアから、作業地である圃場の位置や当該圃場で行う作業種類などを含む作業走行情報を取得する。農業資材の収容量、投与量、投与幅などの情報は、補給管理部45で管理される。
【0045】
データ通信部43は、遠隔地のクラウドサービスなどとの交信、第1制御ユニット4が運転室から持ち出された際のトラクタの車載LANとの交信などを行う。これにより、第1制御ユニット4は、トラクタを遠隔操作するリモコンとしても利用可能である。
【0046】
外形取得管理部44は、農道や畦などの境界領域によって包囲された圃場に進入したトラクタが、境界領域の内側境界線に近接しながら、周回走行することで得られた走行軌跡に基づいて、圃場の外形を決定する。なお、外形取得管理部44は、先行して行われた圃場作業等で得られた圃場の外形を流用することも可能である。
【0047】
外形取得管理部44は、圃場外形情報に基づいて、トラクタの進入を禁止する禁止境界線BLを設定する。なお、外形取得管理部44は、鉄塔や水施設などの車体1の進入を禁止する領域が圃場内部にある場合、当該領域の境界線も、禁止境界線BLとして設定することができる。
【0048】
走行経路生成部47は、圃場の外形などの圃場情報を参照し、予めインストールされている走行経路生成プログラムを実行させて、走行経路及び仮想旋回円VCを生成する。なお、走行経路生成部47は、外部で生成された走行経路を受け取って、管理することも可能である。
【0049】
補給位置設定部46は、走行経路生成部47で管理されている走行経路と、作業装置30の農業資材の積込量及び単位投入量とから、農業資材を補給するための補給位置を境界領域の特定位置に設定する。設定位置は、タッチパネル40を通じて確認可能であり、必要な場合、変更可能である。また、設定された補給位置に最も近い前走行経路Lsに、補給フラグを付与する。補給フラグが付与されている前走行経路Lsの終点から行われるUターン移行走行時に、上述した補給走行が行われる。
【0050】
第2制御ユニット5は、トラクタが自動作業走行するための基本的な制御機能部として、走行制御部51と作業制御部52とを備えている。走行制御部51には、操舵制御部53が含まれている。
【0051】
走行制御部51は、手動走行制御モードと自動走行制御モードとを有する。手動走行制御モードが選択されると、走行制御部51は、運転者によるアクセルペダルや変速レバーに対する操作に基づいて車両走行機器群91に走行制御信号を与える。自動走行制御モードが選択されると、走行制御部51は、自動走行パラメータで規定されたエンジン回転数や車速でもって車体1を走行させる。手動走行制御モードと自動走行制御モードとの間のモード切替には自動/手動切替操作具83が用いられるが、トラクタの作業走行状態に応じて、自動的にモード切替が行われることもある。
【0052】
作業制御部52も、自動作業制御モードと手動作業制御モードとを有する。手動作業制御モードが選択されると、作業制御部52は、運転者による作業操作具に対する操作に基づいて作業装置機器群92に作業制御信号を与える。自動作業制御モードが選択されると、作業制御部52は、自動作業パラメータに基づいて作業装置機器群92に信号を与え、自動作業パラメータで規定された作業装置30の姿勢維持や農業資材の投与量や投与幅などを調節する。
【0053】
操舵制御部53は、第3制御ユニット6から出力された、経路追従走行指令、方向転換走行指令、補給走行指令などの操舵指令に基づいて、車両走行機器群91に含まれている電動操舵機構に動作制御信号を出力する。
【0054】
第3制御ユニット6は、走行経路設定部61によって設定した目標経路と、自車位置算出部70から送られてくる自車位置及び継時的な自車位置から算出される走行方位とに基づいて、トラクタを目標経路に追従させるための経路追従走行指令を生成し、操舵制御部53に与える。さらに、第3制御ユニット6は、上述したUターン移行走行を行うための方向転換走行指令、上述した各種補給走行モードでの補給走行指令を生成し、操舵制御部53に与える。
【0055】
第3制御ユニット6は、図2及び図5を用いて説明したような、前走行経路Lsから旋回走行を介して次走行経路Lnに移行するための自動走行制御、及び各種補給走行モードでの補給走行を行う自動走行制御を管理する。このため、第3制御ユニット6は、走行経路設定部61、経路追従走行管理部62、補給管理モジュール63、方向転換管理モジュール64を備えている。
【0056】
以下に、図9図10とを用いて、第2制御ユニット5の機能を説明する。走行経路設定部61は、走行経路生成部47で生成または管理されている走行経路を、自動走行のための目標となる目標経路として設定する。経路追従走行管理部62は、走行経路設定部61によって設定された目標経路や補給管理モジュール63によって設定された目標経路を追従するように自車位置を用いて車体1を操舵する経路追従走行指令を走行制御部51に与える。
【0057】
方向転換管理モジュール64は、Uターン移行走行などの車体1の方向転換を行うための走行経路の管理及び設定を行う。方向転換管理モジュール64は、設定した方向転換経路を追従するように自車位置を用いて車体1を操舵する方向転換走行指令を走行制御部51に与える。このため、方向転換管理モジュール64は、旋回円設定部641、接線追従走行管理部642、旋回円走行管理部643、干渉検知部644、干渉回避走行管理部645を備える。
【0058】
旋回円設定部641は、前走行経路Lsから旋回走行を介して次走行経路Lnに移行する前に、当該次走行経路Lnに進入する進入旋回走行の目標経路として仮想旋回円VCを設定する。
【0059】
接線追従走行管理部642は、走行中に算出される車体基準点Pvから仮想旋回円VCへの接線を算出する。具体的には、接線追従走行管理部642は、所定時間間隔または所定走行距離間隔で、車体基準点Pvから仮想旋回円VCへの接線を算出し、その接線と車体1の操向方位(走行方位線)とがなすずれ角度を算出する。このずれ角度が、予め設定されている所定角(例えば30度)以内になった時の接線は、基準接線RT(図3参照)として設定され、当該基準接線を移行目標経路とし、車体1の走行を制御する。
【0060】
接線追従走行管理部642は、接線追従走行において、ずれ角度が所定角以内になった場合、車体1が仮想旋回円VCに達すると、旋回円走行管理部643は、仮想旋回円VCを旋回目標経路として、車体1の走行を制御する。
【0061】
干渉検知部644は、前走行経路Lsの走行が終了して仮想旋回円VCに向かう走行において、または接線追従走行管理部642による接線追従走行において、車体進行方向に存在する禁止境界線BLを干渉境界線として検知する。
【0062】
干渉回避走行管理部645は、トラクタが干渉検知部644によって干渉境界線とみなされた禁止境界線BLと干渉(越境)することを回避する干渉回避走行を制御する。干渉回避走行管理部645は、干渉回避走行ための目標経路として、干渉回避経路ALを算出して、設定する。干渉回避経路ALは、トラクタが干渉境界線から間隔をとって走行できる経路であり、干渉境界線と同じまたはほぼ同じ長さを有する。干渉回避走行管理部645による干渉回避走行が終了すると、再び、仮想旋回円VCに向かって車体1を操舵する接線追従走行制御が開始される。
【0063】
補給管理モジュール63は、補給モード実行部631と補給停車位置決定部632とを備えている。補給モード実行部631は、上述した各種補給走行モードを実行して、補給走行指令を走行制御部51に与える。補給停車位置決定部632は、補給位置設定部46によって設定された補給位置に基づいて、車体1が境界領域に干渉せず、かつ補給作業に適した位置に、車体1を停車させる停車位置を決定する。
【0064】
次に、図11のフローチャートを用いて、このトラクタによる圃場に農業資材を投与する作業走行の一例を説明する。この作業走行は、往復走行経路を用いた作業走行とする。
【0065】
まず、自動運転で作業走行を行うための各種の走行パラメータ及び作業パラメータなどを初期設定する(#01)。さらに、トラクタは作業走行の開始位置となる最初の直線状走行経路の始点に移動する(#02)。操作者が、自動運転の開始操作を行うことで(#03Yes分岐)、往復走行経路を用いた自動作業走行が開始される(#04)。作業走行が開始されると、トラクタが走行中の直線状走行経路(前走行経路Ls)の終点に達したかどうか(正確には作業装置30の作業基準点が終点に達したかどうか)がチェックされる(#05)。トラクタが走行中の直線状走行経路(前走行経路Ls)の終点に達すると(#05Yes分岐)、次に走行すべき直線状走行経路(次走行経路Ln)が残っているかどうかチェックされる(#06)。次に走行すべき直線状走行経路が残っていなければ(#06No分岐)、この作業は完了したことになり、このフローは終了する(#07)。
【0066】
次に走行すべき直線状走行経路である次走行経路Lnが残っていれば(#06Yes分岐)、Uターン移行走行が実行され、トラクタは、次走行経路Lnの始点に移動する。このため、Uターン移行走行のための各種パラメータ(旋回半径や仮想旋回円VCなど)が設定される(#11)。さらに、前走行経路Lsに付与されている補給フラグの内容が読み出されて、農業資材の補給が必要かどうかチェックされる(#12)。
【0067】
この実施形態では、補給フラグの内容は、(1)補給なし、(2)第1補給、(3)第2補給、(4)第3補給である。以下に、補給フラグの内容ごとのトラクタの動きを説明する。
【0068】
(1)補給なし
補給フラグの内容が、「補給なし」であれば、図3で示したような、前走行経路Lsから次走行経路LnへのUターン移行走行だけが行われる。つまり、Uターン移行走行が開始されると(#21)、トラクタが次走行経路Lnの始点に達することで(#22Yes分岐)、Uターン移行走行が終了し、ステップ#04に戻り、次走行経路Lnを目標経路とする経路追従走行が行われる。
【0069】
(2)第1補給
補給フラグの内容が、「第1補給」では、図5図7の(a)で示したような第1補給走行モードが実行される。第1補給走行モードでは、前走行経路Lsから次走行経路LnへのUターン移行走行の終了時に補給走行が開始される。つまり、Uターン移行走行が開始されると(#31)、トラクタが次走行経路Lnの始点に達すると(#32Yes分岐)、Uターン移行走行が終了し、補給走行のための後進が行われる(#33)。境界領域に向かう後進は、トラクタが補給停車位置に達するまで行われる。トラクタが補給停車位置に達すると(#34Yes分岐)、ステップ#60の補給作業処理が行われる。この補給作業処理では、まず、トラクタが補給停車位置で停車する(#61)。次いで、補給作業が行われる(#62)。補給作業が終了すると、後進経路を戻って、次走行経路Lnの始点に向かう前進が行われる(#63)。トラクタが次走行経路Lnの始点に達すると(#64Yes分岐)、補給走行としての前進が終了し、ステップ#04に戻り、次走行経路Lnを目標経路とする経路追従走行が行われる。
【0070】
(3)第2補給
補給フラグの内容が、「第2補給」では、図7の(b)で示したような第2補給走行モードが実行される。第2補給走行モードではトラクタと次走行経路Lnの延長線との交点が補給走行の開始点(補給開始点)となる。したがって、前走行経路Lsから次走行経路LnへのUターン移行走行の途中において、トラクタが次走行経路Lnの延長線付近に達すると、補給走行が開始される。Uターン移行走行が開始され(#41)、トラクタが次走行経路Lnの延長線に達すると、つまり、トラクタが補給開始点に達すると(#42Yes分岐)、Uターン移行走行が終了し、補給走行のための後進が行われる(#43)。トラクタが境界領域手前に設定された補給停車位置に達すると(#44Yes分岐)、上述したステップ#60の補給作業処理が行われる。補給作業処理が終了すると、ステップ#04に戻り、次走行経路Lnを目標経路とする経路追従走行が行われる。
【0071】
(4)第3補給
補給フラグの内容が、「第3補給」では、図8の(b)で示したような第3補給走行モードが実行される。第3補給走行モードでは、後進での補給走行において、次走行経路Lnの延長線にほぼ平行に延びている境界領域部分で補給作業が行われる。つまり、Uターン移行走行が開始され(#51)、トラクタが次走行経路Lnの始点に達すると、あるいはトラクタがUターン移行走行の途中で次走行経路Lnの延長線に達すると(#52Yes分岐)、Uターン移行走行が終了し、補給走行のための後進が行われる(#53)。さらに、境界領域部分で補給作業を行うために、トラクタを境界領域部分に横寄せ走行する必要があるかどうかチェックされる(#54)。横寄せ走行が不要の場合(#54不要分岐)、そのまま直進での後進が続行され、トラクタが境界領域手前の補給停車位置に達すると(#55Yes分岐)、上述したステップ#60の補給作業処理が行われる。横寄せ走行が必要の場合(#54必要分岐)、トラクタが境界領域部分に近接するように、方向転換操舵を用いた後進での横寄せ走行が行われる(#56)。さらに、後進が続行され、トラクタが境界領域手前の補給停車位置に達すると(#55Yes分岐)、上述したステップ#60の補給作業処理が行われる。なお、横寄せ走行が行われた場合には、次走行経路Lnの始点に向かう補給前進走行において、横寄せ走行による横ずれを修正する操舵が行われる。補給作業処理が終了すると、ステップ#04に戻り、次走行経路Lnを目標経路とする経路追従走行が行われる。
【0072】
図5図6で示されているように、通常のUターン移行走行では、前進のみの旋回走行が用いられるが、前走行経路Lsと次走行経路Lnとの間隔が短い場合やトラクタが袋小路に入ったような場合では、Uターン移行走行において、後進を用いた切り返し旋回が必要となる。図12に、切り返し旋回を用いたUターン移行走行の一例が示されている。この例では、トラクタが前走行経路Lsの終点を過ぎた後に、次走行経路Lnの方に90度内外の操舵角での第1の旋回が行われる。その後、切り返し操舵角で後進が行われる。最後に、次走行経路Lnの始点付近に設定された仮想旋回円VCに向かって前進した後、仮想旋回円VCを用いた旋回が行われ、次走行経路Lnに進入する。
【0073】
次に、上述した切り返し旋回を含むUターン移行走行時に行われる補給走行の種々の応用例が、図13から図21に示されている。なお、図13から図21では、トタクタの走行順序が丸囲み数字で示されている。
【0074】
応用例1:図13参照
応用例1では、前走行経路Lsの終点と次走行経路Lnの始点とが、経路横方向で揃っている。まず、トラクタは、次走行経路Lnの方に90度旋回を行い、その位置から、走行経路の横断方向で後進を行う。ここまでが、切り返し旋回である。その後、トラクタは、仮想旋回円VCへの接線を目標経路として前進し、さらに仮想旋回円VCに沿って90度旋回を行い、次走行経路Lnの始点に向かう。ここまでがUターン移行走行である。補給走行が開始され、トラクタは、次走行経路Lnの始点から後進で境界領域に向かい、そこで補給作業が行われる。補給作業が終了すると、トラクタは、前進で次走行経路Lnの始点に向かい、次走行経路Lnに進入する。これは、往復走行経路と境界領域との距離が短い場合、つまり外周領域の幅が狭い場合に適した、補給走行を伴うUターン移行走行である。
【0075】
応用例2:図14参照
応用例2では、応用例1に比べ、境界領域(禁止境界線BL)に次走行経路Lnの方にはみ出した段差があることから、次走行経路Lnは前走行経路Lsより短くなっており、次走行経路Lnの始点が、前走行経路Lsの終点より、図14において下方に位置ずれている。また、段差のはみ出し長さが大きい場合、トラクタは、切り返し旋回からUターン移行走行に移行する際に、このはみ出した段差を作り出している境界領域との干渉回避を考慮する必要がある。干渉が生じる場合には、干渉回避走行が行われる。
【0076】
応用例3:図15参照
応用例3では、境界領域(禁止境界線BL)が走行経路に対して斜めに延びており、実質的には応用例2と同様な走行が行われる。
【0077】
応用例4:図16参照
応用例4の境界領域(禁止境界線BL)の形状は応用例3に類似している。しかしながら、応用例4では、切り返し旋回での後進終了点が境界領域と近いので、同所を補給停車位置として停車し、そこで、補給作業が行われる。補給作業が終了すると、前進で次走行経路Lnの始点に向かい、次走行経路Lnに進入する。つまり、切り返し旋回の最終行程とUターン移行走行の最初の行程が重なっている。
【0078】
応用例5:図17参照
応用例5では、境界領域(禁止境界線BL)に次走行経路Lnの延長線に平行に延びている境界領域部分を有する段差がある。この境界領域部分と次走行経路Lnの延長線との間の距離が短いので、トラクタは、切り返し旋回後の後進補給走行の途中で、経路方向で延びている境界領域部分に横寄せして、そこで補給作業が行われる。つまり、この応用例5は、切り返し旋回を含むUターン移行走行と第3補給走行モードとの組み合わせである。
【0079】
応用例6:図18参照
応用例6の境界領域(禁止境界線BL)の形状は応用例5に類似している。しかしながら、この応用例6では、経路方向で延びている境界領域部分と前走行経路Ls及び次走行経路Lnとの距離が長いので、当該境界領域部分での補給作業は行われずに、前走行経路Ls及び次走行経路Lnの延び方向の先にある境界領域で補給作業が行われる。
【0080】
応用例7:図19参照
応用例7では、境界領域(禁止境界線BL)に次走行経路Lnに沿って延びた強化領域部分を有する段差があり、次走行経路Lnが前走行経路Lsより長く延びている。このため、トラクタは、境界領域に段差に沿った方向転換操舵を伴う前進を次走行経路Lnの始点付近まで行った後に、応用例1と同様な走行を行う。
【0081】
応用例8:図20参照
応用例8の境界領域の形状は、応用例7の左右対称形である。応用例8では、トラクタは、前走行経路Lsの終点を超えた後、切り返し旋回を行い、次走行経路Lnの始点に向かう。この次走行経路Lnの始点への前進の途中で、トラクタは、経路方向で延びている境界領域部分に設定された補給停車位置に横寄せして停車して、そこで補給作業が行われる。その後、向き変更を含む前進で次走行経路Lnの始点に向かい、次走行経路Lnに進入する。このように、前進での横寄せで補給停車位置に向かい、その補給停車位置で停止して、補給作業を行う補給走行を第4補給走行モードと称する。
【0082】
応用例9:図21参照
応用例9は、応用例8の変形である。応用例9では、トラクタは、前走行経路Lsの終点を超えた後、切り返し旋回を行い、次走行経路Lnの始点に向かう。この次走行経路Lnの始点への前進の途中で、一旦後進を行って、トラクタは、経路方向で延びている境界領域部分に設定された補給停車位置に横寄せして停車して、そこで補給作業が行われる。その後、向き変更を含む前進で次走行経路Lnの始点に向かい、次走行経路Lnに進入する。
【0083】
応用例10:図22参照
応用例10は、応用例9の変形である。応用例10では、トラクタは、前走行経路Lsの終点を超えた後、切り返し旋回を行い、次走行経路Lnの始点に向かう。この次走行経路Lnの始点への前進の途中で、さらに後進を行って、境界領域に設定された補給停車位置に縦寄せして停車する。そこで補給作業が行われる。その後、向き変更を含む前進で次走行経路Lnの始点に向かい、次走行経路Lnに進入する。
【0084】
応用例11:図23参照
応用例11には、既に作業が行われた領域に対して重複して作業されることを避ける走行経路が示されている。図23では、既作業走行経路による既作業領域が斜線で示され、符号WLが付与されている。具体的には、干渉回避走行管理部645が、既作業領域の輪郭を禁止境界線BLとして設定し、このトラクタがこの禁止境界線BLの内側に進入しないように、干渉回避走行制御を行う。なお、既作業領域は、同一のトラクタによって既に作業された領域に限定されず、別なトラクタまたは別なトラクタによって既に作業された領域を既作業領域とすることも可能である。応用例11では、前走行経路Lsの終点を超えた後、既作業領域の2つのコーナ付近に仮想旋回円VCが設定され、トラクタは、既作業領域(既作業走行経路)を迂回するようにUターン移行走行を行う。2つ目の仮想旋回円VCを用いた旋回が行われる。トラクタが次走行経路Lnの延長線に達すると、そこから後進で境界領域に向かい、そこで補給作業が行われる。補給作業が終了すると、前進で次走行経路Lnの始点に向かい、次走行経路Lnに進入する。つまり、既作業領域を迂回するUターン移行走行と第2補給走行モードとの組み合わせである。もちろん、2つ目の仮想旋回円VCと次走行経路Lnの始点との距離が短い場合、第1補給走行モードが用いられてもよい。
【0085】
〔別実施の形態〕
(1)図4で示したような、禁止境界線BLとトラクタとの位置関係は、上述した実施形態では、衛星測位モジュール7の衛星測位データから算出されたトラクタの地図座標に基づいて定められている。これに代えて、あるいはこれとともに、トラクタに装備された距離測定機器の測定データから禁止境界線BLとトラクタとの位置関係が定められてもよい。
(2)図9で示された機能ブロック図における各機能部の区分け、及び第1制御ユニット4、第2制御ユニット5、第3制御ユニット6の区分けは、説明を分かりやすくするための一例であり、種々の機能部を統合したり、単一の機能部を複数に分割したりすることは自由である。
【0086】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、自動走行しながら、農業資材を圃場に供給する圃場作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1 :車体
7 :衛星測位モジュール
30 :作業装置
40 :タッチパネル
41 :情報入力操作具
45 :補給管理部
46 :補給位置設定部
47 :走行経路生成部
51 :走行制御部
61 :走行経路設定部
62 :経路追従走行管理部
63 :補給管理モジュール
64 :方向転換管理モジュール
70 :自車位置算出部
631 :補給モード実行部
632 :補給停車位置決定部
641 :旋回円設定部
642 :接線追従走行管理部
643 :旋回円走行管理部
644 :干渉検知部
645 :干渉回避走行管理部
AL :干渉回避経路
BL :禁止境界線
Ln :次走行経路
Ls :前走行経路
VC :仮想旋回円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図22
図23