(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240927BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240927BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 114
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2021017742
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和久
(72)【発明者】
【氏名】北島 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】吉本 哲博
(72)【発明者】
【氏名】今野 裕信
(72)【発明者】
【氏名】須田 健之
(72)【発明者】
【氏名】土士田 享彬
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 慎一
(72)【発明者】
【氏名】三上 亮
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-025359(JP,A)
【文献】特開平09-244343(JP,A)
【文献】特開2020-144289(JP,A)
【文献】特開2018-191071(JP,A)
【文献】米国特許第9152095(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエローのトナーを用いてイエロー画像を現像する第1の現像部と、マゼンタのトナーを用いて
マゼンタ画像を現像する第2の現像部と、シアンのトナーを用いてシアン画像を現像する第3の現像部とを有し、画像を形成する画像形成手段と、
転写電圧
に基づき前記画像をシートに転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記画像を
前記シートに定着させる定着手段と、
レッドのカラーフィルタと、ブルーのカラーフィルタと、グリーンのカラーフィルタとを有し、前記シートを搬送しながら該シートの画像を読み取る読取手段と、
前記画像形成手段に複数のテスト画像を形成させ、前記転写手段に前記複数のテスト画像を複数の異なる転写電圧に基づき転写させ、前記定着手段に前記複数のテスト画像を定着させ、前記読取手段に前記複数のテスト画像を読み取らせ、前記画像形成手段により形成される画像を前記転写手段が転写する際の前記転写電圧を前記読取手段により読み取られた前記複数のテスト画像の読取結果に基づいて決定する制御手段と
、を有し、
前記複数のテスト画像の各々は、マゼンタのトナーとシアンのトナーとの両方を用いて形成される有彩色の画像であり、
前記制御手段は、前記複数のテスト画像の中のあるテスト画像を、前記レッドのカラーフィルタを用いて前記読取手段が読み取った結果に基づいて、前記シート上の前記複数のテスト画像のサンプリングタイミングを決定し、
前記制御手段は、前記複数のテスト画像を前記ブルーのカラーフィルタを用いて前記読取手段が読み取った結果と前記サンプリングタイミングとに基づき、前記転写電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数のテスト画像の各々の色とブルーとの色相差は、前記複数のテスト画像の各々の色とレッドとの色相差よりも小さく、且つ、前記複数のテスト画像の各々の色とグリーンとの色相差よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数のテスト画像の中の前記あるテスト画像は、前記シートが搬送される搬送方向において前記複数のテスト画像の中の先頭のテスト画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記読取手段は、前記レッドのカラーフィルタを介して光を受光する第1ラインセンサと、前記ブルーのカラーフィルタを介して光を受光する第2ラインセンサと、前記グリーンのカラーフィルタを介して光を受光する第3ラインセンサと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記複数のテスト画像の中の前記あるテスト画像に対応する読取信号値と閾値とを比較した結果に基づいて前記サンプリングタイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
イエローのトナーを用いてイエロー画像を現像する第1の現像部と、マゼンタのトナーを用いてマゼンタ画像を現像する第2の現像部と、シアンのトナーを用いてシアン画像を現像する第3の現像部とを有し、画像を形成する画像形成手段と、
転写電圧に基づき前記画像をシートに転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記画像を前記シートに定着させる定着手段と、
レッドのカラーフィルタと、ブルーのカラーフィルタと、グリーンのカラーフィルタとを有し、前記シートを搬送しながら該シートの画像を読み取る読取手段と、
前記画像形成手段に複数のテスト画像を形成させ、前記転写手段に前記複数のテスト画像を複数の異なる転写電圧に基づき転写させ、前記定着手段に前記複数のテスト画像を定着させ、前記読取手段に前記複数のテスト画像を読み取らせ、前記画像形成手段により形成される画像を前記転写手段が転写する際の前記転写電圧を前記読取手段により読み取られた前記複数のテスト画像の読取結果に基づいて決定する制御手段と、を有し、
前記複数のテスト画像の各々は、マゼンタのトナーとシアンのトナーとの両方を用いて形成される有彩色の画像であり、
前記制御手段は、前記複数のテスト画像の中のあるテスト画像を、前記グリーンのカラーフィルタを用いて前記読取手段が読み取った結果に基づいて、前記シート上の前記複数のテスト画像のサンプリングタイミングを決定し、
前記制御手段は、前記複数のテスト画像を前記ブルーのカラーフィルタを用いて前記読取手段が読み取った結果と前記サンプリングタイミングとに基づき、前記転写電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記複数のテスト画像の各々の色とブルーとの色相差は、前記複数のテスト画像の各々の色とレッドとの色相差よりも小さく、且つ、前記複数のテスト画像の各々の色とグリーンとの色相差よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記複数のテスト画像の中の前記あるテスト画像は、前記シートが搬送される搬送方向において前記複数のテスト画像の中の先頭のテスト画像であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記読取手段は、前記レッドのカラーフィルタを介して光を受光する第1ラインセンサと、前記ブルーのカラーフィルタを介して光を受光する第2ラインセンサと、前記グリーンのカラーフィルタを介して光を受光する第3ラインセンサと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記複数のテスト画像の中の前記あるテスト画像に対応する読取信号値と閾値とを比較した結果に基づいて前記サンプリングタイミングを決定することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は原稿の画像データに基づいて中間転写体にトナー画像を形成し、中間転写体からシートにトナー画像を転写する。トナー画像を効率よく転写するために転写電圧が転写ローラに印加される。この転写電圧の適正値は、シートの種類(表面性、厚み、坪量)と環境条件(温度、湿度)に応じて変化する。そのため、画像形成装置は、テストパターンをシートに形成し、それをRGBセンサで読み取って転写電圧の適正値を決定する(特許文献1)。RGBは光の三原色であるレッド、グリーン、ブルーの略称である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置は、イエロー(Y)のトナー画像、マゼンダ(M)のトナー画像、シアン(C)のトナー画像、およびブラック(K)のトナー画像を重畳させることでカラー画像を形成する。つまり、YMCKのトナーを混色することで様々なカラー画像が再現される。このようなカラー画像のうち、単色のブラック(K)の画像と、ブルー(B)(マゼンダ(M)とシアン(C)の混色)の画像は、目視で濃度不良が確認しやすいため、テスト画像としてシートに形成されることがある。RGBタイプの画像センサが普及していることから、画像形成装置は、このような画像センサによりテスト画像の読取を行う。とりわけ、画像形成装置は、シートを搬送しながらテスト画像を読み取って行く。ここで、テスト画像の読取の高速化とメモリを削減するために、シートに形成されたテスト画像の先端が画像センサの読取位置に到着したことを精度よく検知し、テスト画像の適切な範囲を読み取ることが必要となる。ここで、転写電圧を調整するためには複数のトナーを用いて形成されたテスト画像が用いられる。例えば、ブルー(B)のテスト画像が読み取られる場合、ブルー(B)の成分の反射光に対応する読取信号を用いることが一般的である。これは、ブルーのテスト画像が読み取られる場合にはブルーの読取信号値のダイナミックレンジが他の色成分の読取信号値のダイナミックレンジよりも大きくなるためである。しかし、シートの状態と画像形成装置の状態によっては、ブルー(B)の読取信号値を用いると、ブルー(B)のテスト画像が読取位置に到着したことを精度よく検知することが困難となる場合がある。そこで、本発明は、転写電圧を調整するために用いられるテスト画像の読取エラーを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
イエローのトナーを用いてイエロー画像を現像する第1の現像部と、マゼンタのトナーを用いてマゼンタ画像を現像する第2の現像部と、シアンのトナーを用いてシアン画像を現像する第3の現像部とを有し、画像を形成する画像形成手段と、
転写電圧に基づき前記画像をシートに転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記画像を前記シートに定着させる定着手段と、
レッドのカラーフィルタと、ブルーのカラーフィルタと、グリーンのカラーフィルタとを有し、前記シートを搬送しながら該シートの画像を読み取る読取手段と、
前記画像形成手段に複数のテスト画像を形成させ、前記転写手段に前記複数のテスト画像を複数の異なる転写電圧に基づき転写させ、前記定着手段に前記複数のテスト画像を定着させ、前記読取手段に前記複数のテスト画像を読み取らせ、前記画像形成手段により形成される画像を前記転写手段が転写する際の前記転写電圧を前記読取手段により読み取られた前記複数のテスト画像の読取結果に基づいて決定する制御手段と、を有し、
前記複数のテスト画像の各々は、マゼンタのトナーとシアンのトナーとの両方を用いて形成される有彩色の画像であり、
前記制御手段は、前記複数のテスト画像の中のあるテスト画像を、前記レッドのカラーフィルタを用いて前記読取手段が読み取った結果に基づいて、前記シート上の前記複数のテスト画像のサンプリングタイミングを決定し、
前記制御手段は、前記複数のテスト画像を前記ブルーのカラーフィルタを用いて前記読取手段が読み取った結果と前記サンプリングタイミングとに基づき、前記転写電圧を決定することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転写電圧を調整するために用いられるテスト画像の読取エラーを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】テスト画像、転写電圧および測定結
果を説明する図
【
図7】パターン番号、転写電圧および濃度データを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
<実施例1>
●画像形成装置
図1は画像読取装置50を有する画像形成装置100を示している。四つの画像形成ステーション10a~10dはそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー画像を形成する。画像形成ステーション10a~10dの内部構造は同一または類似しているため、ここでは、画像形成ステーション10aの構造が代表して説明される。つまり、画像形成ステーション10aの説明は、画像形成ステーション10b~10dの説明として援用される。以下において、同一または類似の構造を有する複数の物には同一の参照符号が付与されている。複数の物に共通する事項が説明される際には、参照符号に付与されている小文字のアルファベットが省略されることがある。
【0010】
感光体ドラム1aは、円筒状の感光体であり、矢印Rの方向に回転する。一次帯電器2aは感光体ドラム1aの表面を一様に帯電させる帯電ローラまたは帯電部材である。露光器3aは、画像信号に応じた光で感光体ドラム1aの表面を走査することで、静電潜像を形成する光学走査装置。現像器4aはトナーを用いて静電潜像を現像してトナー画像を形成する。一次転写ローラ5aは、イエロートナー画像を中間転写体7に転写する。一次転写ローラ5bは、マゼンタトナー画像を中間転写体7に転写する。一次転写ローラ5cは、シアントナー画像を中間転写体7に転写する。一次転写ローラ5dは、ブラックトナー画像を中間転写体7に転写する。このように、中間転写体7の表面には、それぞれ色の異なる複数のトナー画像が重畳的に転写され、フルカラーのトナー画像が形成される。たとえば、シアントナー画像とマゼンタトナー画像とを重畳させることで、ブルーのトナー画像が形成される。中間転写体7は回転することでトナー画像を二次転写部8へ搬送する。
【0011】
給送部30は、シート収容庫に収容されているシートを搬送路へ給送する。搬送機構31は、複数の搬送ローラを有し、給送部30により給送されたシートPをレジストレーションローラ32へ搬送する。レジストレーションローラ32は、シートPを二次転写部8に搬送する。
【0012】
二次転写部8は、内ローラ18と外ローラ19とを有している。内ローラ18と外ローラ19は、中間転写体7とシートPとを挟持しながら搬送する。これにより、トナー画像がシートPに転写される。定着器9は、熱と圧力とをシートPおよびトナー画像に加えることでトナー画像をシートP上に定着させる。搬送機構21は、複数の搬送ローラを有し、トナー画像が定着したシートPを画像読取装置50へ搬送する。
【0013】
画像読取装置50は、入口ローラ51、バッキングローラ52、出口ローラ53、および、画像センサユニット55を有している。入口ローラ51は、搬送機構21から受け渡されたシートPをさらに下流側へ搬送する搬送ローラである。バッキングローラ52は、画像センサユニット55とシートPとの距離を所定範囲内に維持しながら、シートPを搬送する搬送ローラである。出口ローラ53はシートPを排紙トレイ60へ排出する搬送ローラである。
【0014】
画像センサユニット55は、たとえば、CIS(接触型イメージセンサ)である。ただし、画像センサユニット55は、他の方式の画像センサであってもよい。
【0015】
●画像センサユニット
図2が示すように、画像センサユニット55は、原稿台ガラス200上を搬送されるシートPに形成された画像を読み取る。Lは画像センサユニット55の読取位置L(読取ライン)である。光源201、202はシートPを照明するための光を出力する白色LEDなどである。LEDは発光ダイオードの略称である。導光体203は、光源201から出力された光を読取位置Lへ誘導する。導光体204は、光源202から出力された光を読取位置へ誘導する。これらの光は読取位置を通過するシートPの表面またはトナー画像で反射し、ロッドレンズアレイ205に向かう。ロッドレンズアレイ205は、この光をセンサチップ群206に結像させる結像光学系である。センサチップ群206は、それぞれRカラーフィルタ、GカラーフィルタまたはBカラーフィルタを有する複数の光電変換素子を有している。複数の光電変換素子は、シートPの搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に延在するように並んでいる。Rカラーフィルタを有する一列に並んだ光電変換素子はR用のラインセンサと呼ばれてもよい。Gカラーフィルタを有する一列に並んだ光電変換素子はG用のラインセンサと呼ばれてもよい。Bカラーフィルタを有する一列に並んだ光電変換素子はB用のラインセンサと呼ばれてもよい。各光電変換素子は、入射した光の量(受光量、輝度値)に応じたアナログの画像信号を出力する。ここでは、センサチップ群206から出力される信号は、R画像信号、G画像信号およびB画像信号と呼ばれてもよい。
【0016】
●コントローラ基板
図3が示すようにコントローラ基板300は、CPU301、メインメモリ302、および、画像メモリ303r、303g、303bを有している。CPU301は、画像センサユニット55に設けられた駆動回路307を制御し、光源201、202の発光量(照射光量)を調整する。
【0017】
センサチップ群206はRGBに対応したラインセンサ308r、308b、308gを有している。ラインセンサ308rが出力するR画像信号はADC309によりデジタルデータ(R画像データ)に変換される。ADCはアナログデジタルコンバータの略称である。R画像データは画像メモリ303rに記憶される。ラインセンサ308bが出力するB画像信号はADC309によりデジタルデータ(B画像データ)に変換される。B画像データは画像メモリ303bに記憶される。ラインセンサ308gが出力するG画像信号はADC309によりデジタルデータ(G画像データ)に変換される。G画像データは画像メモリ303gに記憶される。
【0018】
CPU301は、テスト画像の読取結果に基づき転写条件(とりわけ、転写電圧)を決定し、転写電源310に設定する。転写電源310は、設定された転写電圧を生成して、外ローラ19に印加する。なお、内ローラ18の回転軸は金属製であり、接地されている。
【0019】
●トナーパターンの先端を検知する方法
図4(A)は転写電圧の変化を示している。
図4(B)はシートPに形成された四つのブルーパターンi~ivを含むテスト画像を示している。
図4(C)は四つのブルーパターンi~ivの読取結果を示している。ブルーパターンi~ivは、シアントナー画像とマゼンタトナー画像とを混色することで生成されたトナーパターン(テストパターン)である。適切な転写電圧を見つけるために、四つのブルーパターンi~ivはそれぞれ異なる転写電圧Vi~Vivを用いてシートPに転写されている。ブルーパターンi~ivの元になった画像データは同一である。しかし、転写電圧Vi~Vivが異なるために、ブルーパターンi~ivの濃度も異なっている。なお、ブルーパターンの元データの濃度値は固定値である。たとえば、元データが256階調の場合、最大値である255が選択される。なお、テスト画像に含まれるブルーパターンの数は2以上であれば十分であろう。
【0020】
画像センサユニット55は、シートPが搬送されている間に、軌跡400に沿ってテスト画像を読み取って行く。
図4(B)からわかるように、画像センサユニット55の読取位置Lに最初に到着するのはブルーパターンiである。ここで、画像メモリ303r、303g、303bの記憶容量を削減するために、画像メモリ303r、303g、303bにはブルーパターンの読み取り結果が少なくとも保存されることが求められる。それを実現するためには、ブルーパターンの読み取り結果を格納するためのトリガが必要となる。CPU301は、ブルーパターンiの先端部が読取位置Lに到着したことを、R画像信号に基づき判定または検知する。
【0021】
図4(C)が示すように、ブルーバターンi~ivから取得されたB画像データ、G画像データおよびR画像データを比較すると、R画像データが先端部の検知に有利であることがわかる。R画像データは、G画像データおよびB画像データと比較して、ブルーパターンの濃度変化に対して鈍感だからである。つまり、転写電圧の変化に依存してブルーパターンの濃度が変化しても、R画像データの変化が小さい。したがって、CPU301は、R画像データが閾値Th-Rを下回ったかどうかを監視することで、精度よくブルーバターンi~ivの先端部の到着を検知できる。
【0022】
CPU301は、ブルーパターンiの先端部が読取位置Lに到着したことをトリガとして、ブルーパターンiについてのB画像信号のサンプリングを開始する。これにより、ブルーパターンiについてはn個のサンプリング値(B画像データ)が得られる。ブルーパターンii~ivについても同様に先端部が検知されて、サンプリングが開始される。
【0023】
●CPUの機能
図5はCPU301が制御プログラム511を実行することで実現する機能を示している。これらの機能の一部またはすべてがASIC(特定用途集積回路)またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などのハードウエア回路により実現されてもよい。
【0024】
パターン発生器501は、テスト画像を形成するための元画像データを発生し、露光器3a-3dに供給する。先端検知部502は、R画像データを監視することで、テスト画像におけるブルーパターンの先端部の到着を検知する。統計部503は、ブルーパターンから取得されたサンプリング値(B画像データ)について統計処理を実行して、測定結果の精度を向上させる。たとえば、統計部503は、n個のサンプリング値のうち、最大値と最小値とを除外した残りのn-2個のサンプリング値の平均値を演算してもよい。平均処理は、重みづけ平均処理または単純平均処理などであってもよい。濃度演算部504は、統計部503から出力されるB画像データの統計値に基づきブルーパターンの濃度データ521を演算する。なお、濃度演算部504は、ブルーパターンi~ivの識別情報であるパターン番号(例:i~iv)と、濃度データ521と、転写電圧Vi~Vivとを紐付けてメインメモリ302に記憶してもよい。決定部505は、濃度データ521に基づき適切な転写電圧を決定する。適切な転写電圧は、ユーザにより用意されたユーザ画像(原稿画像)をシートPに形成するために使用される。決定部505は、操作部510の表示装置に、ブルーパターンi~ivのうちどれを選択するかをユーザに問い合わせるためのメッセージを表示してもよい。決定部505は、操作部510の入力装置から入力されたブルーパターンi~ivの識別情報に紐づけられている転写電圧を適切な転写電圧に決定してもよい。この場合、ブルーパターンi~ivの識別情報もシートPに印刷されてもよい。これによりユーザは適切なブルーパターンを選択し、その識別情報を入力しやすくなるであろう。決定部505は、予め設定された濃度値に最も近い濃度データ521に紐づけられている転写電圧522を適切な転写電圧に決定してもよい。あるいは、決定部505は、予め設定された濃度値に近い二つの濃度データ521に紐づけられている転写電圧522を補間演算して適切な転写電圧を決定してもよい。
【0025】
図5には切替部506が破線で示されているが、これはオプションであることを示している。切替部506の詳細は実施例2で説明される。
【0026】
●フローチャート
図6はCPU301が制御プログラム511にしたがって実行する転写電圧の調整方法を示している。S601でCPU301は調整開始条件が満たされたかどうかを判定する。ここで、調整開始条件とは、操作部510から調整開始の指示が入力されたこと、新規のシートPの登録処理が指示されたこと、または、中間転写体7の耐久値(画像形成回数)が閾値に到達したこと、などである。調整開始条件が満たされると、CPU301は、処理をS602に進める。
【0027】
S602でCPU301はシートPにテスト画像を形成する。CPU301は画像形成ステーション10a~10dを制御してシートPにテスト画像を形成する。上述されたように、パターン発生器501はテスト画像の元になる画像データを発生して、露光器3a~3dに供給する。これにより、シートP上にブルーパターンi~ivを含むテスト画像が形成される。
【0028】
S603でCPU301はR画像データに基づきブルーパターンの先端部が検知されたかどうかを判定する。この判定は、ブルーパターンの先端部が読取位置Lに到着したかどうかを判定することに相当する。なお、シートPが読取位置Lを通過することで、画像センサユニット55により取得されたRGBの各画像データが画像メモリ303r、303g、303bに格納されて行く。CPU301は、先端部を検知するための画像メモリ303rに格納されたR画像データを監視する。CPU301は、R画像データが閾値Th-Rを下回ると、ブルーパターンの先端部が読取位置Lに到着したと判定し、処理をS604に進める。
【0029】
S604でCPU301はB画像データ(B画像信号)のサンプリングを開始する。S605でCPU301はサンプリングによりn個のデータ(サンプリング値)が取得されたかどうかを判定する。n個のデータが取得されると、CPU301は、処理をS606に進める。
【0030】
S606でCPU301は、m個のパターン(例:4個のブルーパターン)が読み取られたかどうかを判定する。m個のパターンの読み取りが完了していなければ、CPU301は処理をS607に進める。S607でCPU301はエラー条件が満たされているかどうかを判定する。エラー条件とは、所定時間内にm個のパターンの読み取りが完了しなかったこと、または、シートPの後端が読取位置Lを通過してしまったこと、などである。エラー条件が満たされていなければ、CPU301は処理をS603に進める。エラー条件が満たされていれば、CPU301は処理をS620に進める。S620でCPU301は、操作部510にエラーメッセージを表示し、転写電圧の調整方法を終了する。
【0031】
S606でm個のパターンの読み取りが完了したと判定されると、CPU301は処理をS608に進める。S608でCPU301はm個のブルーパターンの読取結果に基づき適切な転写電圧を決定する。上述されたようにCPU301は、m個のブルーパターンのそれぞれについて濃度データ521を演算し、パターン番号およち転写電圧と紐づけてメインメモリ302に格納する。さらに、CPU301は、上述されたいずれかの決定手法を用いて適切な転写電圧を決定する。
【0032】
図7は、ブルーパターンi~ivの識別情報であるパターン番号(例:i~iv)と、濃度データ521と、転写電圧Vi~Vivとの一例を示している。これらのデータが相互に紐付けられてメインメモリ302に記憶される。CPU301はこの紐づけにしたがって適切な転写電圧を決定する。
【0033】
実施例1によればブルーの反対色に近いレッドの読取結果に基づきブルーパターンの先端部が読取位置Lに到着したことが検知される。ブルーパターンの先端部の検知精度が向上するため、ブルーパターンの読み取り精度が向上し、さらには濃度調整(転写電圧調整)の精度も向上する。
【0034】
<実施例2>
実施例1では、三つの画像メモリ303r、303g、303bが使用されている。実施例2では画像メモリをさらに削減する構造が説明される。
【0035】
図8は実施例2のコントローラ基板300を示している。
図3と比較して、
図8では、画像メモリ303r、303g、303bが共有メモリ800とデータ選択回路801とに置換されている。共有メモリ800の記憶容量は、三つの画像メモリ303r、303g、303bのうち一つの画像メモリの記憶容量と等しい。そのため、CPU301(切替部506)は、データ選択回路801を制御して、共有メモリ800に記憶される画像データを選択する。たとえば、上述されたブルーパターンの先端部を検知する期間においては、CPU301(切替部506)は、R画像データが共有メモリ800に格納されるよう、データ選択回路801を制御する。CPU301は共有メモリ800に記憶されているR画像データに基づきブルーパターンの先端部を検知する。
【0036】
ブルーパターンをサンプリングする期間においては、CPU301(切替部506)は、B画像データが共有メモリ800に格納されるよう、データ選択回路801を制御する。
【0037】
このように、R画像データからB画像データへの切り替えは、たとえば、S603でYesと判定されたときに実行される。B画像データからR画像データへの切り替えは、たとえば、S606でNoと判定されたときに実行される。これにより、画像データを保存するための画像メモリのサイズが削減される。
【0038】
<実施例から導き出される技術思想>
図1が示すように、画像形成ステーション10bはマゼンタのトナーを用いて画像を形成する第1の画像形成手段の一例である。画像形成ステーション10cは、シアンのトナーを用いて画像を形成する第2の画像形成手段の一例である。中間転写体7は、第1の画像形成手段により形成されたマゼンタの画像と、第2の画像形成手段により形成されたシアンの画像とが転写される中間転写体の一例である。二次転写部8は、中間転写体に転写された画像をシートに転写するために転写電圧が印加される転写手段の一例である。定着器9は、画像をシートに定着させる定着手段の一例である。バッキングローラ52は、シートを搬送する搬送手段の一例である。画像読取装置50は、搬送手段により搬送されたシート上のテスト画像を読み取る画像読取手段の一例である。CPU301は、画像読取手段の読取結果に基づき、転写電圧を制御する制御手段の一例である。画像読取手段は、テスト画像からの反射光を受光して、R成分の反射光に対応する出力値を出力するR素子と、G成分の反射光に対応する出力値を出力するG素子と、B成分の反射光に対応する出力値を出力するB素子とを有する。テスト画像は、それぞれマゼンタの画像とシアンの画像とを重畳して生成されるブルーパターンを有する。シートが搬送されるにつれて変化するよう転写電圧が制御されることで、ブルーパターンは、複数の異なる転写電圧を用いて、シートに転写されて行く。つまり、シートが搬送されるのと並行して転写電圧が変化して行く。たとえば、転写電圧は、ステップ状に変化してもよい。CPU301は、R素子から出力される出力値に基づきB素子から出力される出力値の取得条件を決定する。さらに、CPU301は、B素子から出力される出力信号を取得条件に基づいて取得した結果に基づいて転写電圧を制御する。これにより、転写電圧を調整するために用いられるテスト画像の読取エラーが抑制されよう。
【0039】
複数の異なる転写電圧は、第1転写電圧と当該第1転写電圧よりも大きい第2転写電圧とを含んでもよい。
図4(A)が示すように、第1転写電圧に基づき第1ブルーパターンが転写される。第2ブルーパターンは、第2転写電圧に基づき転写される。
図4(B)が示すように、シートが搬送される方向において、第1ブルーパターンは第2ブルーパターンよりも先に画像読取手段の読取位置を通過してもよい。
【0040】
図1が示すように、感光体ドラム1は感光体の一例である。一次帯電器2は、感光体を一様に帯電させる帯電手段の一例である。露光器3は、感光体に光を照射して静電潜像を形成する露光手段の一例である。現像器4は、感光体に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー画像を形成する現像手段の一例である。一次転写ローラ5は、トナー画像を中間転写体に転写する一次転写手段の一例である。二次転写部8は、トナー画像を中間転写体(例:中間転写ベルト)からシー
トPに転写する二次転写手段の一例である。転写電源310は、二次転写手段に転写電圧を供給する電源手段の一例である。コントローラ基板300およびCPU301は、転写電圧を制御する制御手
段の一例である。バッキングローラ52は、シートPを搬送する搬送手段の一例である。画像センサユニット55は、搬送手段により搬送されるシートPに転写されているテスト画像を読み取る画像読取手段の一例である。画像センサユニット55は、転写電圧を調整するためのテスト画像を読み取るRGBタイプの画像読取手段の一例である。ラインセンサ308rは、テスト画像からの反射光を受光して、R成分の信号を出力するR素子の一例である。ラインセンサ308gは、テスト画像からの反射光を受光して、G成分の信号を出力するG素子の一例である。ラインセンサ308bは、テスト画像からの反射光を受光して、B成分の信号を出力するB素子の一例である。
図4(B)が示すように、テスト画像は、それぞれマゼンタトナーとシアントナーとを混色して生成される複数のブルーパターンを有している。
図4(A)が示すように、複数のブルーパターンは、それぞれ異なる転写電圧によりシートに転写されてもよい。CPU301は、複数のブルーパターンのうちのいずれかのブルーパターンが画像読取手段の読取位置Lに到着したかどうかを、R素子から出力される信号のレベルに基づき判定する。R素子に代えてG素子が使用されてよい。CPU301は、いずれかのブルーパターンが画像読取手段の読取位置Lに到着すると、B素子から出力される信号を取得し、当該取得されたB素子から出力される信号に応じて転写電圧を調整する。このように、R素子またはG素子が使用されることで、精度よくブルーのテスト画像の到着が検知される。その結果、ブルーのテスト画像の読み取り精度が向上するため、精度よく転写電圧が調整される。
【0041】
CPU301は、複数のブルーパターンについてそれぞれB素子から出力される信号に基づき濃度データを取得してもよい。CPU301は、複数のブルーパターンのそれぞれについて取得された濃度データと、当該濃度データを取得するために読み取られたブルーパターンに適用された転写電圧とを紐付けて記憶手段に記憶させる。
【0042】
操作部510は、シートPに形成された複数のブルーパターンのそれぞれに付与された識別情報(例:パターン番号)を入力する入力手段の一例である。CPU301は、記憶手段に記憶されている複数の転写電圧のうち、入力手段から入力された識別情報に対応する転写電圧を二次転写手段に供給するよう電源手段を設定してもよい。
【0043】
CPU301は、記憶手段に記憶されている複数の濃度データのうち、所定の濃度データに近い濃度データを選択し、当該選択された濃度データに紐づけられている転写電圧を記憶手段から読み出してもよい。CPU301は、読み出された転写電圧を二次転写手段に供給するよう電源手段を設定してもよい。
【0044】
ADC309はR素子から出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換する第一変換手段の一例である。画像メモリ303rは、第一変換手段から出力されるデジタルデータであるRデータを記憶する第一メモリの一例である。ADC309はB素子から出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換する第二変換手段の一例である。画像メモリ303bは、第二変換手段から出力されるデジタルデータであるBデータを記憶する第二メモリの一例である。CPU301は、第一メモリに記憶されるRデータに基づきいずれかのブルーパターンが画像読取手段の読取位置に到着したことを検知する。CPU301は、第二メモリに記憶されるBデータに基づき濃度データを演算する。
【0045】
データ選択回路801は、第一変換手段から出力されるデジタルデータであるRデータまたは第二変換手段から出力されるデジタルデータであるBデータを選択する選択手段の一例である。共有メモリ800は選択手段により選択されたデジタルデータを記憶する共有メモリの一例である。CPU301は、共有メモリに記憶されるRデータに基づきいずれかのブルーパターンが画像読取手段の読取位置Lに到着したことを検知する。CPU301は、共有メモリに記憶されるBデータに基づき濃度データを演算する。
【0046】
データ選択回路801は、先端部を検知する検知期間において、Rデータを選択する。検知期間とは、検知開始から、共有メモリに記憶されるデジタルデータが、いずれかのブルーパターンが画像読取手段の読取位置に到着したことに相当するデータになるまで、の期間である。データ選択回路801は、読取開始条件が満たされると、Bデータを選択する。読取開始条件は、共有メモリに記憶されるデジタルデータが、いずれかのブルーパターンが画像読取手段の読取位置に到着したことに相当するデータになることである。
【0047】
CPU301は、複数のブルーパターンのそれぞれについてB素子から出力される信号をサンプリングして複数のサンプリング値を取得してもよい。CPU301は、各ブルーパターンについて複数のサンプリング値を統計処理することで濃度データを取得してもよい。
【0048】
CPU301は、各ブルーパターンについて複数のサンプリング値のうち最大値と最小値とを除外して残りのサンプリング値を取得してもよい。CPU301は、残りのサンプリング値について統計処理することで濃度データを取得してもよい。これにより、ノイズが除去されるため、濃度データの取得精度が向上する。
【0049】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0050】
1:感光体ドラム、2:一次帯電器、3:露光器、4:現像器、5:一次転写ローラ、8:二次転写部、50:画像センサユニット