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特許7561652レーザ加工システムおよびレーザ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レーザ加工システムおよびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240927BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20240927BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
B23K26/00 A
B23K26/02
B23K26/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021024571
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126471
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小久保 英之
(72)【発明者】
【氏名】茂知野 英子
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188408(JP,A)
【文献】特開2002-307179(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094408(WO,A1)
【文献】特開2007-090370(JP,A)
【文献】特開2007-090368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/02
B23K 26/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工装置と、前記レーザ加工装置を制御する制御装置と、前記制御装置に接続されレーザ加工の前処理を行う前処理装置とを備え、
前記前処理装置は、
加工対象の板金に対する前処理の実行位置の情報を取得し、加工対象の板金が積載されたパレットが設置されると、前記パレット上における所定の積載基準位置と前記パレット上の板金の位置とのずれ量を検出し、前記ずれ量に基づいて前記前処理の実行位置を補正するための補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値を用いて前記前処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対し、前記前処理を実行する前処理実行部とを含み、
前記制御装置は、
前記前処理が終了すると、前記前処理装置から前記補正値の情報を読み込む補正値読み込み部と、
前記加工対象の板金に対するレーザ加工処理の実行位置の情報を保持し、前記補正値読み込み部が読み込んだ前記補正値の情報を、保持しているレーザ加工処理の実行位置の情報に紐付け、前記パレットが前記レーザ加工装置に設置されると、前記レーザ加工装置に前記レーザ加工処理の実行位置の情報を送信するプログラムデータ処理部とを含み、
前記レーザ加工装置は、
前記制御装置から前記レーザ加工処理の実行位置の情報を取得すると、この情報に前記補正値の情報が紐づけられているか否かを判定し、前記補正値の情報が紐づけられていると判定すると、取得した前記補正値の情報を用いて前記レーザ加工処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対し、前記レーザ加工処理を実行するレーザ加工部を含むレーザ加工システム。
【請求項2】
前記前処理実行部は、前記前処理として、所定の情報を加工対象の板金の所定位置にマーキングするマーキング処理を実行する、請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記補正値算出部は、前記ずれ量として、前記パレット上における前記積載基準位置のx座標と前記板金の所定位置のx座標との差分、前記積載基準位置のy座標と前記板金の前記所定位置のy座標との差分、および、前記パレットの所定の1辺と、前記板金の所定の1辺とのなす角度を検出する、請求項1または2に記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
レーザ加工の前処理を行う前処理装置が、
加工対象の板金に対する前処理の実行位置の情報を取得し、加工対象の板金が積載されたパレットが設置されると、前記パレット上における所定の積載基準位置と前記パレット上の板金の位置とのずれ量を検出し、前記ずれ量に基づいて前記前処理の実行位置を補正するための補正値を算出し、
前記補正値を用いて前記前処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対して前記前処理を実行し、
前記前処理装置に接続され、前記加工対象の板金に対するレーザ加工処理の実行位置の情報を保持する制御装置が、
前記前処理が終了すると、前記前処理装置から前記補正値の情報を読み込み、読み込んだ前記補正値の情報を、保持しているレーザ加工処理の実行位置の情報に紐付け、前記パレットがレーザ加工装置に設置されると、前記レーザ加工装置に前記レーザ加工処理の実行位置の情報を送信し、
前記レーザ加工装置が、
前記制御装置から前記レーザ加工処理の実行位置の情報を取得すると、この情報に前記補正値の情報が紐づけられているか否かを判定し、前記補正値の情報が紐づけられていると判定すると、取得した前記補正値の情報を用いて前記レーザ加工処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対し、前記レーザ加工処理を実行するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システムおよびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置で板金(ワーク)をレーザ加工する際に、前処理として、加工により生成される製品の管理を行うための識別情報を加工対象のワークにマーキングする処理を行う。マーキングを行うマーキング装置はレーザ加工装置とは別個に設置され、ワークを加工する際には、当該ワークを所定のパレットに積載させた状態でマーキング装置においてマーキング処理を行った後、パレットごとレーザ加工装置に移動させて当該ワークに対してレーザ加工処理を行う。
【0003】
上述したようにパレット上のワークに対してマーキング装置とレーザ加工装置とで別個に処理を行う場合に、それぞれの処理工程においてパレット上のワークの位置を認識して所定の基準位置からのずれ量を測定し、ワーク上のマーキング処理位置の補正およびレーザ加工位置の補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5829777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したようにマーキング装置とレーザ加工装置との双方でパレット上のワーク位置のずれ量の測定および処理対象位置の補正を行うと、処理時間が長くなるとともに、相互の処理工程間でずれ量の測定に誤差が生じて製品の品質が低下する場合があるという問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、処理対象の板金をパレットに積載した状態で、レーザ加工の前処理とレーザ加工処理とを順次実行する際に、少ない処理負荷で精度良く、パレット上の板金位置のずれ量に対する各処理の実行位置の補正を行うことが可能なレーザ加工システムおよびレーザ加工方法にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のレーザ加工システムは、レーザ加工装置と、前記レーザ加工装置に接続されレーザ加工の前処理を行う前処理装置とを備え、前記前処理装置は、加工対象の板金に対する前処理の実行位置の情報を取得し、加工対象の板金が積載されたパレットが設置されると、前記パレット上における所定の積載基準位置と前記パレット上の板金の位置とのずれ量を検出し、前記ずれ量に基づいて前記前処理の実行位置を補正するための補正値を算出する補正値算出部と、前記補正値を用いて前記前処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対し、前記前処理を実行する前処理実行部とを含み、前記レーザ加工装置は、前記前処理装置で算出された補正値の情報を取得する加工データ処理部と、加工対象の板金に対するレーザ加工処理の実行位置の情報を取得し、前記前処理が実行された後に、前記板金が積載されたパレットが設置されると、前記加工データ処理部で取得された補正値を用いて前記レーザ加工処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対し、前記レーザ加工処理を実行するレーザ加工部とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様のレーザ加工方法は、レーザ加工の前処理を行う前処理装置が、加工対象の板金に対する前処理の実行位置の情報を取得し、加工対象の板金が積載されたパレットが設置されると、前記パレット上における所定の積載基準位置と前記パレット上の板金の位置とのずれ量を検出し、前記ずれ量に基づいて前記前処理の実行位置を補正するための補正値を算出し、前記補正値を用いて前記前処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対して前記前処理を実行し、前記前処理装置に接続されたレーザ加工装置が、前記前処理装置で算出された補正値の情報を取得し、加工対象の板金に対するレーザ加工処理の実行位置の情報を取得し、前記前処理が実行された後に、前記板金が積載されたパレットが設置されると、取得した補正値を用いて前記レーザ加工処理の実行位置の情報を補正し、前記パレット上の板金の補正された実行位置に対して前記レーザ加工処理を実行することを特徴とする。
【0009】
上述した構成のレーザ加工システムおよびレーザ加工方法は、レーザ加工の前処理とレーザ加工処理との間で、パレット上の板金位置のずれ量に対する各処理の実行位置を補正するための補正値を共有するため、少ない処理負荷で精度良く、レーザ加工の前処理とレーザ加工処理とを順次実行することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様のレーザ加工システムおよびレーザ加工方法によれば、処理対象の板金をパレットに積載した状態で、レーザ加工の前処理とレーザ加工処理とを順次実行する際に、少ない処理負荷で精度良く、パレット上の板金位置のずれ量に対する各処理の実行位置の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態のレーザ加工システムの構成を示す全体図である。
図2】一実施形態のレーザ加工システムの詳細な構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態のレーザ加工システムのCAMシステムに入力される、(a)ワークW1から製品を切り出すための切断加工線の位置および形状の情報、(b)ワークW2から製品を切り出すための切断加工線の位置および形状の情報を示す図である。
図4】一実施形態のレーザ加工システムのNC装置に入力される、パレット上のワークの積載基準位置を示す図である。
図5】一実施形態のレーザ加工システムでマーキング処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。
図6】一実施形態のレーザ加工システムの制御コントローラがパレット上で検出したワークの端面を示す説明図である。
図7】一実施形態のレーザ加工システムのマーキング装置により、パレット上のワークにマーキングで処理が施された状態を示す図である。
図8】一実施形態のレーザ加工システムでレーザ加工処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。
図9】一実施形態のレーザ加工システムでレーザ加工装置の切断処理により切り出された製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈一実施形態によるレーザ加工システムの構成〉
以下、一実施形態のレーザ加工システムについて、添付図面を参照して説明する。図1は、一実施形態のレーザ加工システムの構成を示す全体図であり、図2は、一実施形態のレーザ加工システムの詳細な構成を示すブロック図である。図1および図2において、レーザ加工システム1は、パレット収納装置10と、前処理装置としてのマーキング装置20および制御コントローラ30と、CAMシステム40と、NC装置50と、レーザ加工装置60と、パレット搬送装置70とを備える。また、パレット収納装置10とマーキング装置20とレーザ加工装置60との間には、レーザ加工対象の板金(ワーク)を積載したパレットを搬送するための搬送レールRが設置されている。
【0013】
パレット収納装置10は、加工対象のワークを積載するパレットを収納する複数の収納棚11と、収納棚11へのパレットの収納および収納棚11からのパレットの取り出しを行う収納・取り出し機構部12を有する。
【0014】
マーキング装置20は、レーザ加工の前処理として、レーザ加工により生成される製品を管理するための識別情報を、加工対象のワークの所定位置にマーキングする。
【0015】
制御コントローラ30はマーキング装置20を制御する装置であり、補正値算出部31と、前処理実行部としてのマーキング制御部32と、補正値記憶部33とを有する。
【0016】
補正値算出部31は、加工対象のワークが積載されたパレットが設置されると、当該パレット上にける所定の積載基準位置と当該パレット上のワークの位置とのずれ量を検出する。そして補正値算出部31は、検出したずれ量に基づいて、予め設定されたマーキング処理の実行位置の情報(以下、「マーキング位置情報」と記載する)を補正するための補正値を算出する。
【0017】
マーキング制御部32は、後述するようにNC装置50から、加工対象のワークに対するマーキング位置情報を含むマーキングプログラムデータ(以下、「マーキングデータ」と記載する)を取得して保持し、補正値算出部31で算出された補正値を用いてマーキング位置情報を補正する。そしてマーキング制御部32は、マーキング装置20に、当該ワーク上の補正されたマーキング位置に対するマーキング処理を実行させる。補正値記憶部33は、補正値算出部31で算出された補正値を記憶する。
【0018】
CAMシステム40は、オペレータの操作により、マーキングデータ、およびレーザ加工装置60によるワークのレーザ加工処理の実行位置の情報(以下、「レーザ加工位置情報」と記載する)を含むレーザ加工プログラムデータ(以下、「レーザ加工データ」と記載する)を生成し、NC装置50に送信する。
【0019】
NC装置50は、パレット収納装置10、制御コントローラ30、CAMシステム40、レーザ加工装置60、およびパレット搬送装置70に接続され、プログラムデータ処理部521と、積載基準位置情報処理部522と、補正値読み込み部523と、パレット搬送制御部524とを有する。
【0020】
プログラムデータ処理部521は、CAMシステム40で生成されたマーキングデータおよびレーザ加工データを取得して、取得したマーキングデータを制御コントローラ30に送信し、レーザ加工データをレーザ加工装置60に送信する。積載基準位置情報処理部522は、オペレータにより入力されたパレット上のワークの積載基準位置情報を、制御コントローラ30およびレーザ加工装置60に送信する。補正値読み込み部523は、マーキング装置20によるワークへのマーキング処理が終了したことを検知すると、制御コントローラ30に記憶された補正値情報を読み込んで、プログラムデータ処理部521に保持されたレーザ加工データに紐づける。パレット搬送制御部524はパレット収納装置10の動作およびパレット搬送装置70の動作を制御する。
【0021】
レーザ加工装置60は、加工データ処理部61と、レーザ加工部62とを有する。加工データ処理部61は、NC装置50から送信されたレーザ加工データおよび積載基準位置情報を取得する。レーザ加工部62は、加工対象のワークへのマーキング処理が実行された後に、当該ワークを積載したパレットが設置されると、加工データ処理部61で取得されたレーザ加工データおよび積載基準位置情報に基づいて、NC装置50の制御によりレーザ加工を実行する。
【0022】
パレット搬送装置70は、パレットをレールR上で移動させることで、パレット収納装置10とマーキング装置20とレーザ加工装置60との間で搬送する搬送機構部71を有する。
【0023】
〈一実施形態によるレーザ加工システムの動作〉
次に、本実施形態によるレーザ加工システム1の動作として、1つの長方形のパレットPに2つの長方形のワークW1、W2を積載し、これらのワークW1、W2それぞれに識別情報のマーキング処理およびレーザ加工処理を実行するレーザ加工方法について説明する。
【0024】
レーザ加工システム1でマーキング処理およびレーザ加工処理を行う前に、オペレータがCAMシステム40を操作して、処理対象のワークW1、W2それぞれについてマーキングデータおよびレーザ加工データを生成する。
【0025】
図3は、CAMシステム40に入力された、(a)ワークW1から製品Q1を切り出すための切断加工線L1の位置および形状の情報、(b)ワークW2から製品Q2を切り出すための切断加工線L2の位置および形状の情報を示す図である。本実施形態では、オペレータがこれらの情報を入力し、これらに基づいてCAMシステム40でワークW1のレーザ加工データR1が生成される。
【0026】
またオペレータが、ワークW1内の製品Q1部分にマーキングする識別情報M1「マーキングA」および当該識別情報M1のマーキング位置を示す情報、製品Q2部分にマーキングする識別情報M2「マーキングB」および当該識別情報M2のマーキング位置を示す情報、製品Q3部分にマーキングする識別情報M3「マーキングB」および当該識別情報のマーキング位置を示す情報を入力し、これらに基づいてCAMシステム40でワークW1のマーキングデータS1が生成される。ここで、製品Q2と製品Q3とは、同一形状の製品であり、該当する識別情報M2およびM3は、同一の「マーキングB」である。
【0027】
またオペレータが図3(b)に点線で示すように、ワークW2から製品Q4を切り出すための切断加工線L4の位置および形状を示す情報、製品Q5を切り出すための切断加工線L5の位置および形状を示す情報、製品Q6を切り出すための切断加工線L6の位置および形状を示す情報を入力し、これらに基づいてワークW2のレーザ加工データR2が生成される。
【0028】
またオペレータが、ワークW2内の製品Q4部分にマーキングする識別情報M4「マーキング-001」および当該識別情報M4のマーキング位置を示す情報、製品Q5部分にマーキングする識別情報M5「マーキング-001」および当該識別情報M5のマーキング位置を示す情報、製品Q6部分にマーキングする識別情報M6「マーキング-001」および当該識別情報M6のマーキング位置を示す情報を入力し、これらに基づいてワークW2のマーキングデータS2が生成される。ここで、製品Q4、Q5、およびQ6は同一形状の製品であり、該当する識別情報M4、M5、およびM6は、同一の「マーキング-001」である。CAMシステム40で生成されたレーザ加工データデータR1、R2およびマーキングデータS1、S2はNC装置50に送信され、プログラムデータ処理部521で取得される。
【0029】
またオペレータは、予めNC装置50で、処理対象のワークW1、W2それぞれに関し、パレットP上に積載する際の積載基準位置E1、E2の情報を入力する。図4は、NC装置50に入力されるパレットP上の積載基準位置E1、E2の情報を示す図である。積載基準位置E1、E2は、オペレータがワークW1、W2を積載する際にそれぞれワークW1、W2の左下角を合わせる指標とするための位置である。ここでは、ワークW1の積載基準位置E1の情報として、パレットP内側の左下の角をパレット原点C(0,0)とし、パレットPの長辺方向をx軸、短辺方向をy軸としたときの積載基準位置E1の位置座標を入力する。また同様に、ワークW2の積載基準位置E2の情報として、当該積載基準位置E2の位置座標を入力する。入力したワークW1、W2の積載基準位置E1、E2の情報は、積載基準位置情報処理部522で取得される。
【0030】
オペレータは、ワークW1の左下角F1が積載基準位置E1になるべく近く、長辺がx軸になるべく平行で、短辺がy軸になるべく平行になるようにパレットPにワークW1を積載し、ワークW2の左下角F2が積載基準位置E2になるべく近く、長辺がx軸になるべく平行で、短辺がy軸になるべく平行になるようにパレットPにワークW2を積載して、パレット収納装置10の収納棚11に収納する。
【0031】
図5は、本実施形態のレーザ加工システム1でマーキング処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。図5を参照して、マーキング処理の動作について説明する。
【0032】
NC装置50の入力部51でパレットP上のワークW1、W2に対するマーキング処理の開始を指示する操作が行われると(S1の「YES」)、パレット搬送制御部524は、パレットPをマーキング装置20に搬送する指示を、パレット収納装置10およびパレット搬送装置70に送信する(S2)。パレット収納装置10の収納・取り出し機構部12は、取得した指示に基づいて収納棚11からパレットPを取り出す。そして、パレット搬送装置70の搬送機構部71が、取り出されたパレットPをマーキング装置20に搬送して所定のマーキング処理位置に設置する。
【0033】
次に、NC装置50のプログラムデータ処理部521がパレットP上のワークW1、W2のうちワークW1を処理対象として特定し(S3)、当該ワークW1のマーキングデータS1を制御コントローラ30に送信する(S4)。制御コントローラ30では、NC装置50から送信されたマーキングデータS1をマーキング制御部32が取得し、保持する(S5)。
【0034】
次に、NC装置50の積載基準位置情報処理部522が、処理対象のワークW1の積載基準位置E1の情報を制御コントローラ30に送信する(S6)。制御コントローラ30では、NC装置50から送信された積載基準位置E1の情報をマーキング制御部32が取得し、保持する(S7)。
【0035】
次に、パレットPがマーキング装置20に設置されたことを制御コントローラ30が認識すると(S8の「YES」)、補正値算出部31が、パレットP上のワークW1に対するマーキング処理位置の補正値N1を算出する(S9)。補正値N1の算出処理について、以下に説明する。
【0036】
補正値算出部31は、マーキング装置20に設置されたパレットP上のワークW1の端面を検出する。図6は、補正値算出部31がパレットP上で検出したワークW1の端面を示す図である。補正値算出部31は、ワークW1の端面上の所定位置、例えば、ワークW1の左下角F1から長辺の1/5の位置である点G1、左下角F1から長辺の3/5の位置である点G2、左下角F1から短辺の1/3の位置である点G3の3点の位置座標を特定することで、ワークW1の下方の長辺および左側の短辺の位置情報を取得し、左下角F1の位置座標を取得する。次に補正値算出部31は、マーキング制御部32に保持されたワークW1の積載基準位置E1の情報を取得し、図6に点線で示すように当該ワークW1の左下角を積載基準位置E1に一致させ、ワークW1の長辺をx軸方向(パレットPの長辺方向)に一致させ、且つワークW1の短辺をy軸方向(パレットPの短辺方向)に一致させた場合の位置W1-0と、パレットP上のワークW1の実際の積載位置とのずれ量を検出する。
【0037】
ここでは、ずれ量として、パレットP上における積載基準位置E1のx座標とワークW1の左下角F1のx座標との差分Dx、積載基準位置E1のy座標とワークW1の左下角F1のy座標との差分Dy、およびパレットPの所定の1辺とワークW1の所定の1辺とのなす角度θを検出する。ここでは、角度θとして、パレットPの長辺とワークW1の長辺とのなす角度を検出する。このずれ量としての3つの要素(Dx、Dy、およびθ)を検出することで、図6の点線の位置W1-0からワークW1の位置を認識することができる。補正値算出部31は、検出したずれ量に基づいて、マーキング位置情報を補正するための補正値N1を算出する。
【0038】
次に、マーキング制御部32が、算出された補正値N1および保持した積載基準位置E1の情報を用いて、保持したマーキングデータS1内の識別情報M1、M2、およびM3のマーキング位置情報を、パレットP上のワークW1の位置に合わせて補正する。そしてマーキング制御部32がマーキングデータS1によりマーキング装置20を制御し、マーキング装置20がワークW1上の補正されたマーキング位置に識別情報M1「マーキングA」、M2「マーキングB」、およびM3「マーキングB」をマーキングする。マーキング処理が実行されると、補正値算出部31で算出された補正値N1が、補正値記憶部33に書き込まれ記憶される(S10)。
【0039】
マーキング装置20によるマーキング処理が終了すると、マーキング制御部32がNC装置50にマーキング処理の終了を通知する(S11)。NC装置50は、通知を受け取ると、補正値読み込み部523が制御コントローラ30の補正値記憶部33から補正値N1を読み込んでプログラムデータ処理部521に送出する(S12)。プログラムデータ処理部521は、保持しているワークW1のレーザ加工データR1に、取得した補正値N1を紐づける(S13)。
【0040】
当該パレットPにはマーキング処理が未実行のワークW2があるためステップS3に戻り(S14の「NO」)、プログラムデータ処理部521がワークW2を処理対象として特定し、ワークW1の場合と同様にステップS3~S13の処理を実行する。そして、プログラムデータ処理部521に保持されているレーザ加工データR2には、ワークW2に関して算出された補正値N2が紐づけられる。図7は、マーキング装置20により、パレットP上のワークW1およびW2にマーキング処理が施された状態を示す図である。
【0041】
パレットP上のすべてのワークW1、W2に対する補正値N1、N2を取得すると(S14の「YES」)、プログラムデータ処理部521は、制御コントローラ30にこれを通知する(S15)。制御コントローラ30は、通知を受け取ると、レーザ加工処理の開始指示をNC装置50に送信する(S16)。
【0042】
図8は、レーザ加工システム1でレーザ加工処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。図8を参照して、レーザ加工処理の開始指示が送信されたときに実行される処理について説明する。NC装置50は、レーザ加工処理の開始指示を取得すると、パレットPをマーキング装置20からレーザ加工装置60に搬送する指示をパレット搬送装置70に送信する(S21)。パレット搬送装置70の搬送機構部71は、取得した指示に基づいて、ワークW1およびW2が、マーキング処理を行ったときと同じ位置に積載されたままパレットPをマーキング装置20からレーザ加工装置60に搬送して、レーザ加工処理位置に設置する。
【0043】
次に、NC装置50のプログラムデータ処理部521がパレットP上のワークW1、W2のうちワークW1を処理対象として特定し(S22)、当該ワークW1のレーザ加工データR1をレーザ加工装置60に送信する(S23)。レーザ加工装置60では、NC装置50から送信されたレーザ加工データR1を加工データ処理部61が取得し、保持する(S24)。
【0044】
次に、NC装置50の積載基準位置情報処理部522が、処理対象のワークW1の積載基準位置E1の情報をレーザ加工装置60に送信する(S25)。レーザ加工装置60では、NC装置50から送信された積載基準位置E1の情報を加工データ処理部61が取得し、保持する(S26)。
【0045】
次に、パレットPがレーザ加工装置60に設置されたことをレーザ加工部62が認識すると(S27の「YES」)、加工データ処理部61で取得したレーザ加工データR1に補正値の情報が紐づけられているか否かを判定する(S28)。ここで、レーザ加工データR1に補正値N1の情報が紐づけられていると判定すると(S28の「YES」)、レーザ加工部62は、加工データ処理部61に保持された積載基準位置E1の情報および補正値N1に基づいて、保持したレーザ加工データR1内のレーザ加工位置情報を、パレットP上のワークW1の位置に合わせて補正する。そして、レーザ加工部62がレーザ加工データR1に基づいて、ワークW1上の補正されたレーザ加工位置にレーザ加工処理(切断加工処理)を実行する(S29)。
【0046】
ワークW1のレーザ加工処理が終了すると、加工データ処理部61がNC装置50にレーザ加工処理の終了を通知する(S31)。ここで、当該パレットPにはレーザ加工処理が未実行のワークW2があるためステップS22に戻り(S32の「NO」)、プログラムデータ処理部521がワークW2を処理対象として特定し、ワークW1の場合と同様にステップS22~S32の処理を実行する。図9は、レーザ加工装置60の切断処理により切り出された製品Q1~Q6を示す図である。本実施形態では図9に示すように、識別情報M1がマーキングされた製品Q1、識別情報M2がマーキングされた製品Q2、識別情報M3がマーキングされた製品Q3、識別情報M4がマーキングされた製品Q4、識別情報M5がマーキングされた製品Q5、および識別情報M6がマーキングされた製品Q6が切り出される。
【0047】
パレットP上のすべてのワークに対するレーザ加工処理が完了すると(S32の「YES」)、レーザ加工システム1の動作を終了する。
【0048】
以上の実施形態によれば、処理対象のワークをパレットに積載した状態で、レーザ加工の前処理であるマーキング処理とレーザ加工処理とを順次実行する工程で、マーキング処理時に、パレット上のワークの積載位置のずれ量に基づいてマーキング位置を補正するために算出した補正値を、レーザ加工処理におけるレーザ加工位置の補正にも共有して用いることで、レーザ加工処理における演算負荷を低減させることができる。また、このように算出した補正値をマーキング処理とレーザ加工処理とで共有することで、ワークに対する双方の処理間で実行位置の補正に誤差が生じて、製品の精度が低下することを防止することができる。
【0049】
上述した実施形態では、レーザ加工システムにおいてレーザ加工の前処理を行う前処理装置として、識別情報のマーキング処理を行うマーキング装置を用いる場合について説明した。しかしこれには限定されず、レーザ加工処理時と同様にパレットにワークを積載させた状態でレーザ加工処理の前段にワークに処理を行う装置であれば、一態様のレーザ加工システムの前処理装置として用いることができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、マーキング装置20が、レーザ加工により生成される製品を管理するための識別情報を加工対象のワークにマーキングする場合について説明したが、マーキング装置がマーキングする情報はこれには限定されず、メーカ名等、様々な情報をマーキングすることができる。
【0051】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 レーザ加工システム
10 パレット収納装置
11 収納棚
12 収納・取り出し機構部
20 マーキング装置
30 制御コントローラ
31 補正値算出部
32 マーキング制御部
33 補正値記憶部
40 CAMシステム
50 NC装置
51 入力部
60 レーザ加工装置
61 加工データ処理部
62 レーザ加工部
70 パレット搬送装置
71 搬送機構部
521 プログラムデータ処理部
522 積載基準位置情報処理部
523 補正値読み込み部
524 パレット搬送制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9