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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】回転機械及び回転機械の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20240927BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F04D29/28 L
F04D29/62 C
F04D29/28 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021028524
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129728
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】永尾 英樹
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-023220(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる円筒状をなすとともに、前記軸線方向の両側に端面を有する回転軸と、
前記回転軸内で前記軸線方向に延びているとともに、両端に形成された締結部を有するボルト本体を有する締結ボルトと、
該締結ボルトの前記軸線方向両側に設けられているとともに、前記軸線方向の端部で前記締結部に固定される被締結部、及び、前記回転軸の前記端面と当接する当接面をそれぞれ有する一対の回転体と、
前記ボルト本体を前記軸線方向に一時的に伸張させるボルト伸張機構と、
を備え
前記締結ボルトは、前記ボルト本体の外周面から張り出すように前記軸線方向に離間して一対が設けられて、前記回転軸の内周面に対して前記軸線方向に摺動可能に当接するつば部をさらに有し、
前記ボルト伸張機構は、一対の前記つば部に対してこれらつば部が前記軸線方向に互いに離間するように外力を付与する回転機械。
【請求項2】
前記ボルト伸張機構は、前記回転軸内における一対のつば部によって区画された空間に流体圧を供給する流体圧供給部である請求項に記載の回転機械。
【請求項3】
前記ボルト伸張機構は、前記回転軸内における一対のつば部によって区画された空間に設けられて、前記軸線方向に伸張することで一対の前記つば部を離間させる伸縮部である請求項に記載の回転機械。
【請求項4】
軸線方向に延びる円筒状をなすとともに、前記軸線方向の両側に端面を有する回転軸と、
前記回転軸内で前記軸線方向に延びているとともに、両端に形成された締結部を有するボルト本体を有する締結ボルトと、
該締結ボルトの前記軸線方向両側に設けられているとともに、前記軸線方向の端部で前記締結部に固定される被締結部、及び、前記回転軸の前記端面と当接する当接面をそれぞれ有する一対の回転体と、
前記ボルト本体を前記軸線方向に一時的に伸張させるボルト伸張機構と、
を備え
前記ボルト伸張機構は、前記回転軸内に設けられて前記ボルト本体を加熱する加熱部である回転機械。
【請求項5】
前記回転体は、中実構造とされている請求項1からのいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項6】
軸線方向に延びるとともに前記軸線方向の両端に形成された締結部を有するボルト本体を有する締結ボルトを、前記締結部に回転体が固定されていない状態で、前記軸線方向に延びる円筒状をなすとともに前記軸線方向の両側に端面を有する回転軸内に配置するステップと、
前記ボルト本体を前記軸線方向に伸長させるステップと、
前記ボルト本体を伸張させた状態で、各前記締結部のそれぞれに前記回転体を取り付け固定するステップと、
を含む回転機械の組立方法。
【請求項7】
各前記締結ボルトのそれぞれに前記回転体を取り付け固定するステップの後に、前記ボルト本体の前記軸線方向への伸張を停止するステップをさらに含む請求項6記載の回転機械の組立方法。
【請求項8】
前記締結ボルトは、前記ボルト本体の外周面から張り出すように前記軸線方向に離間して設けられた一対のつば部を有し、
前記締結ボルトを前記回転軸内に配置するステップでは、
一対の前記つば部が前記回転軸の内周面に対して前記軸線方向に摺動可能に当接するように前記締結ボルトを配置し、
前記ボルト本体を伸長させるステップでは、
一対の前記つば部が前記軸線方向に互いに離間するように、前記回転軸内における一対の前記つば部の間に区画された内部空間内に流体圧を付与し、
前記回転体を取り付け固定するステップでは、
前記内部空間内に前記流体圧を付与した状態で各前記締結部のそれぞれに前記回転体を取り付け固定する請求項6に記載の回転機械の組立方法。
【請求項9】
各前記締結ボルトのそれぞれに前記回転体を取り付け固定するステップの後に、前記内部空間への前記流体圧の付与を停止するステップをさらに含む
請求項8記載の回転機械の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械及び回転機械の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、回転軸の端部に回転体としてのインペラが固定された回転機械が開示されている。インペラには軸線方向に貫通する貫通孔が設けられている。この貫通孔に挿入されたボルトが回転軸の端部に締結されることで、インペラと回転軸とが一体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9500201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記回転体としてのインペラを高速回転させると、インペラに負荷される遠心荷重もまた大きくなる。上記特許文献1に記載の回転機械では、インペラを軸線方向に貫通する貫通孔が形成されているため、当該貫通孔の分だけインペラの強度は低下する。
一方で、インペラ等の回転体は回転軸に対して強固に固定する必要がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、回転体を回転軸に対して強固に固定しながら、回転体の遠心荷重に対する強度を向上させることができる回転機械を及び回転機械の組立方法提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械は、線方向に延びる円筒状をなすとともに、前記軸線方向の両側に端面を有する回転軸と、前記回転軸内で前記軸線方向に延びているとともに、両端に形成された締結部を有するボルト本体を有する締結ボルトと、該締結ボルトの前記軸線方向両側に設けられているとともに、前記軸線方向の端部で前記締結部に固定される被締結部、及び、前記回転軸の前記端面と当接する当接面をそれぞれ有する一対の回転体と、前記ボルト本体を前記軸線方向に一時的に伸張させるボルト伸張機構と、を備える。
本開示に係る回転機械の組立方法は、軸線方向に延びるとともに前記軸線方向の両端に形成された締結部を有するボルト本体を有する締結ボルトを、前記締結部に回転体が固定されていない状態で、前記軸線方向に延びる円筒状をなすとともに前記軸線方向の両側に端面を有する回転軸内に配置するステップと、前記ボルト本体を前記軸線方向に伸長させるステップと、前記ボルト本体を伸張させた状態で、各前記締結部のそれぞれに前記回転体を取り付け固定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回転軸に対して回転体を強固に固定しながら、回転体の遠心荷重に対する強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る回転機械の模式的な側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る回転機械における要部の縦断面図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る回転機械における要部の縦断面図である。
図4】本開示の第三実施形態に係る回転機械における要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る回転機械について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
【0010】
<ギアド圧縮機の概略構成>
図1に示すように、回転機械としてのギアド圧縮機1は、回転軸10、ラジアル軸受20、スラスト軸受30、第一インペラ40、第二インペラ60及び動力伝達部80を有している。
【0011】
回転軸10は、水平方向に延びる軸線Oを中心として延びている。
ラジアル軸受20は、回転軸10を軸線O回りに回転可能に支持している。ラジアル軸受20は、軸線O方向に離間して一対が設けられている。一対のラジアル軸受20は、それぞれ回転軸10の軸線O方向の端部に近接した位置で回転軸10を支持している。
スラスト軸受30は、回転軸10の軸線O方向に付与される荷重を支持している。スラスト軸受30は、一対のラジアル軸受20の間で、軸線O方向に離間して一対が設けられている。
【0012】
第一インペラ40は、回転軸10の軸線O方向一方側(図1における左側)に該回転軸10と一体に固定されている。第一インペラ40は、第一ディスク50及び第一ブレード58を有している。
第一ディスク50は、軸線Oを中心とした円盤状をなしている。第一ディスク50における軸線O方向一方側を向く面は、軸線O方向他方側(図1における右側)に向かうにしたがって径方向外側に延びるように湾曲している。
第一ブレード58は、第一ディスク50の軸線O方向一方側を向く面に、周方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0013】
第二インペラ60は、回転軸10の軸線O方向他方側に該回転軸10と一体に固定されている。第二インペラ60は、第二ディスク70及び第二ブレード78を有している
第二ディスク70は、軸線Oを中心とした円盤状をなしている。第二ディスク70における軸線O方向他方側を向く面は、軸線O方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かって延びるように湾曲している。
第二ブレード78は、第二ディスク70の軸線O方向他方側を向く面に、周方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0014】
動力伝達部80は、外部から付与される駆動力を回転軸10に伝達し、該回転軸10を回転させる。動力伝達部80は、ピニオンギア81及び大径ギア82を有している。
ピニオンギア81は、回転軸10における一対のスラスト軸受30の間で、該回転軸10に一体に固定されている。ピニオンギア81の外周面にはギア歯が形成されている。
【0015】
大径ギア82は、外部から付与される駆動力によって回転されるギアである。大径ギア82の外周面のギア歯は、ピニオンギア81のギア歯とかみ合っている。図示しない駆動部によって大径ギア82が駆動されると、これに連動してピニオンギア81及び該ピニオンギア81に一体に固定されて回転軸10が回転する。これによって、回転軸10と一体とされた第一インペラ40及び第二インペラ60も回転し、これら第一インペラ40及び第二インペラ60に軸線O方向から流入されるガスが径方向外側に向かって圧送される。
【0016】
<回転軸及び回転体との固定構造>
以下、図2を参照して、回転軸10と第一インペラ40及び第二インペラ60との固定構造の詳細を説明する。ギアド圧縮機1は、固定構造に係る構成として上記回転軸10、第一インペラ40及び第二インペラ60に加えて、締結ボルト90と、ボルト伸張機構の一例としての流体圧供給部120とをさらに備えている。
【0017】
<回転軸>
回転軸10は、軸線Oを中心とした円筒状をなしている。即ち、回転軸10は、軸線O方向の両端にわたって延びてこれら両端に開口する貫通孔を有する中空構造とされている。回転軸10の外周面11と内周面12との径方向の寸法は一様とされている。回転軸10は一対の端面として第一端面13a及び第二端面13bを有している。第一端面13aは、回転軸10の軸線O方向一方側の端面であって、軸線Oに直交する平面状をなしている。第二端面13bは、回転軸10の軸線O方向他方側の端面であって、第一端面13a同様、軸線Oに直交する平面状をなしている。
【0018】
<締結ボルト90>
締結ボルト90は、円筒状をなす回転軸10の内側に設けられている。締結ボルト90は、ボルト本体91と、一対のつば部としての第一つば部100及び第二つば部110、一対のシール部としての第一シール部102及び第二シール部112と、を有している。
【0019】
<ボルト本体91>
ボルト本体91は、回転軸10内で軸線Oを中心として軸線O方向に延びる棒状をなしている。ボルト本体91の直径は回転軸10の内径よりも小さい。これによって、ボルト本体91の外周面と回転軸10の内周面12とは離間している。
【0020】
ボルト本体91の軸線O方向の端部には、一対の締結部としての第一締結部92及び第二締結部93が設けられている。
第一締結部92は、ボルト本体91における軸線O方向一方側の端部に設けられている。第一締結部92は、ボルト本体91の外周面に形成された雄ネジを有している。第二締結部93は、ボルト本体91における軸線O方向他方側の端部に設けられている。第二締結部93は、第一締結部同様、ボルト本体91の外周面に形成された雄ネジを有している。本実施形態では第一締結部92及び第二締結部93は回転軸10内に位置している。第一締結部92は、回転軸10から軸線O方向一方側に突出していてもよい。第二締結部93は回転軸10から軸線O方向他方側に突出していてもよい。
【0021】
<つば部>
第一つば部100及び第二つば部110は、ボルト本体91の外周面から径方向外側に張り出すように形成された円盤状をなしている。第一つば部100及び第二つば部110は、第一締結部92及び第二締結部93の間で、軸線O方向に互いに離間して設けられている。
第一つば部100は、ボルト本体91における軸線O方向一方側寄りの部分に設けられている。第二つば部110はボルト本体91における軸線O方向他方側寄りの部分に設けられている。
【0022】
第一つば部100及び第二つば部110の外周面は、それぞれ円筒面状をなしている。第一つば部100及び第二つば部110の外周面の外径は、回転軸10の内周面12の内径と同等の寸法とされており、または回転軸10の内周面12の内径よりもわずかに小さい寸法とされている。これにより、第一つば部100及び第二つば部110の外周面は、回転軸10の内周面12に対して軸線O方向に摺動可能とされている。
【0023】
第一つば部100における軸線O方向他方側を向く面は、軸線Oに直交する平面状をなす第一受圧面101とされている。第二つば部110における軸線O方向一方側を向く面は、軸線Oに直交する平面状をなす第二受圧面111とされている。第一受圧面101及び第二受圧面111は、軸線O方向に互いに対向している。
<シール部>
第一シール部102は、第一つば部100の外周面に設けられている。第二シール部112は第二つば部110の外周面に設けられている。第一シール部102及び第二シール部112は、周方向にわたって設けられた例えばOリングやCリング等のシールリングである。第一シール部102及び第二シール部112は、回転軸10の内周面12に対して軸線O方向に摺動可能とされている。
【0024】
第一シール部102及び第二シール部112は、第一つば部100、第二つば部110の外周面と回転軸10の内周面12とのクリアランスを周方向全域にわたって液密にシールする。これによって、回転軸10内の第一つば部100と第二つば部110との間には、回転軸10内の他の空間と液密に隔てられた内部空間Rが区画形成されている。
【0025】
ここで回転軸10における内部空間Rに対応する軸線O方向位置には、回転軸10の内外を貫通する流体圧供給孔14が設けられている。内部空間Rは、流体圧供給孔14を介して回転軸10の外部と連通している。
<第一インペラ>
第一インペラ40の第一ディスク50における軸線O方向他方側を向く面には、軸線Oを中心として軸線O方向他方側に突出する第一凸部51が設けられている。第一凸部51は、軸線O方向一方側の基端部となる第一大径部52と、該第一大径部52よりも小径とされて軸線O方向他方側の先端部となる第一小径部53とを有している。第一大径部52及び第二小径部73は、それぞれ軸線Oを中心としながら互いに直径の異なる円柱状とされている。
【0026】
第一インペラ40の軸線O方向他方側の端部となる第一小径部53の先端面には、第一被締結部54が設けられている。第一被締結部54は、軸線Oを中心として軸線O方向一方側に凹むボルト固定孔である。第一被締結部54の内周面には、ボルト本体91の第一締結部92の雄ネジと締結される雌ネジが形成されている。
【0027】
第一被締結部54は、第一インペラ40を軸線O方向に貫通していない。そのため、第一インペラ40は中実構造とされている。
第一被締結部54の底部の軸線O方向位置は、第一小径部53の形成範囲とされている。第一被締結部54の底部の軸線O方向位置は、第一大径部52の形成範囲、即ち、第一凸部51の形成範囲とされていてもよい。また、第一被締結部54の底部の軸線O方向位置は、例えば、第一ディスク50における最外径部分よりも軸線O方向他方側の位置とされていてもよい。
【0028】
第一凸部51における第一大径部52と第一小径部53と間の段差面は、軸線O方向他方側を向くとともに軸線Oに直交する平面状とされた第一当接面55とされている。第一当接面55は、回転軸10の第一端面13aと軸線O方向に対向している。第一インペラ40と回転軸10とが固定一体化された状態では、第一インペラ40の第一当接面55と回転軸10の第一端面13aとは強固に密着している。
【0029】
<第二インペラ60>
第二インペラ60の第二ディスク70における軸線O方向一方側を向く面には、軸線Oを中心として軸線O方向一方側に突出する第二凸部71が設けられている。第二凸部71は、軸線O方向他方側の基端部となる第二大径部72と、該第二大径部72よりも小径とされて軸線O方向一方側の先端部となる第二小径部73とを有している。第二大径部72及び第二小径部73は、それぞれ軸線Oを中心としながら互いに直径の異なる円柱状とされている。
【0030】
第二インペラ60の軸線O方向一方側の端部となる第二小径部73の先端面には、第二被締結部74が設けられている。第二被締結部74は、軸線Oを中心として軸線O方向他方側に凹むボルト固定孔である。第二被締結部74の内周面には、ボルト本体91の第二締結部93の雄ネジと締結される雌ネジが形成されている。
【0031】
第二被締結部74は、第二インペラ60を軸線O方向に貫通していない。そのため、第二インペラ60は中実構造とされている。
第二被締結部74の底部の軸線O方向位置は、第二小径部73の形成範囲とされている。第二被締結部74の底部の軸線O方向位置は、第二大径部72の形成範囲、即ち、第二凸部71の形成範囲とされていてもよい。また、第二被締結部74の底部の軸線O方向位置は、例えば、第二ディスク70における最外径部分よりも軸線O方向一方側の位置とされていてもよい。
【0032】
第二凸部71における第二大径部72と第二小径部73と間の段差面は、軸線O方向一方側を向くとともに軸線Oに直交する平面状とされた第二当接面75とされている。第二当接面75は、回転軸10の第二端面13bと軸線O方向に対向している。第二インペラ60と回転軸10とが固定一体化された状態では、第二インペラ60の第二当接面75と回転軸10の第二端面13bとは強固に密着している。
【0033】
<流体圧供給部>
流体圧供給部120は、流体圧供給孔14を介して回転軸10内の内部空間Rに流体圧を供給可能とされている。流体圧供給部120は、例えば油圧ポンプによって内部空間Rに作動油を供給する。これによって、内部空間Rが作動油によって満たされると、第一つば部100の第一受圧面101、第二つば部110の第二受圧面111に対して作動油による油圧(流体圧)が作用する。流体圧供給部120による作動油の供給が停止されると、第一受圧面101及び第二受圧面111に作用する油圧がなくなる。即ち、流体圧供給部120は、内部空間Rへの油圧の供給と停止とを切り替えられるように構成されている。
なお、流体圧供給部120としては、油圧を供給する構成ではなく、他の液体、気体等を供給する構成であってもよい。
【0034】
<作用効果>
次に上記構成のギアド圧縮機1において、回転軸10と第一インペラ40及び第二インペラ60とを固定一体化する手順について説明する。
まず、第一インペラ40及び第二インペラ60が固定されていない締結ボルト90を回転軸10内に配置した状態で、流体圧供給部120により流体圧供給孔14を介して内部空間Rへの作動油の供給を行う。これによって、締結ボルト90の第一つば部100の第一受圧面101、第二つば部110の第二受圧面111には作動油による油圧が作用する。即ち、第一受圧面101には軸線O方向一方側に向かっての外力が付与され、第二受圧面111には軸線O方向他方側に向かっての外力が付与される。これによって、第一つば部100、第二つば部110には軸線O方向に互いに離間させようとする外力が付与することになる。
【0035】
すると、第一つば部100、第二つば部110と一体とされたボルト本体91が、第一つば部100、第二つば部110の離間動作に伴って、軸線O方向一方側及び他方側に引っ張られる。これにより、ボルト本体91は軸線O方向に一時的に伸張した状態となる。この際、ボルト本体91の第一締結部92は、当初よりも軸線O方向一方側に位置した状態となり、第二締結部93は当初よりも軸線O方向他方側に位置した状態となる。
【0036】
この状態で締結ボルト90に第一インペラ40及び第二インペラ60を取り付け固定する。即ち、ボルト本体91の第一締結部92に第一インペラ40の第一被締結部54を締結する。さらに、ボルト本体91の第二締結部93に第二インペラ60を締結する。これにより、締結ボルト90に対して第一インペラ40及び第二インペラ60が固定一体化される。このようにボルト本体91に第一インペラ40、第二インペラ60を締結させた状態では、第一インペラ40の第一当接面55と回転軸10の第一端面13aとは離間しており、第二インペラ60の第二当接面75と回転軸10の第二端面13bとは離間している。
【0037】
そして、上記状態で流体圧供給部120による作動油の供給を停止すると、第一つば部100の第一受圧面101、第二つば部110の第二受圧面111への油圧の作用が解除される結果、これら第一つば部100及び第二つば部110により引っ張られていたボルト本体91が元の寸法に戻ろうとする。これにより、ボルト本体91の伸張が解除される。同時に、それまで互いに離間していた第一インペラ40の第一当接面55と回転軸10の第一端面13a、第二インペラ60の第二当接面75と回転軸10の第二端面13bとが当接・密着する。これによって、回転軸10と第一インペラ40及び第二インペラ60とが、互いの当接箇所における面圧を介して強固に固定一体化された状態となる。回転軸10のトルクは、面圧による摩擦力を介して第一インペラ40及び第二インペラ60に確実に伝達される。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、ボルト伸張機構としての流体圧供給部120によってボルト本体91を軸線O方向に伸張させた状態で該ボルト本体91に第一インペラ40及び第二インペラ60を締結する。そして、その後に流体圧供給部120によるボルト本体91の伸張を解除すると、該ボルト本体91が元の寸法に戻り、第一インペラ40及び第二インペラ60が回転軸10に当接・密着する。これにより、回転体と回転軸10とを強固に固定一体化することができる。
【0039】
また、ボルト本体91への第一インペラ40及び第二インペラ60の締結は、ボルト本体91が伸張した状態となるため、ボルト本体91の第一締結部92、第二締結部93のそれぞれに外部からアクセスし易い状態で締結作業を行うことができる。これにより、ボルト本体91への第一インペラ40、第二インペラ60の取り付けを容易に行うことができる。
【0040】
さらに、ボルト本体91に固定されるのは第一インペラ40及び第二インペラ60の端部であるため、第一インペラ40、第二インペラ60にこれらを貫通する貫通孔等を設ける必要はない。そのため、第一インペラ40、第二インペラ60の強度を担保することができる。したがって、ギアド圧縮機1を高速で運転した際の遠心応力に対しても十分に耐えることが可能となる。
【0041】
また、ボルト本体91の伸張を流体圧供給部120により行うことで、回転軸10内の狭い内部空間Rに別途装置を設ける必要はない。したがって、ボルト本体91を伸張させる際に煩雑な作業を行う必要はない。よって、回転軸10への第一インペラ40、第二インペラ60の固定を容易に行うことが可能となる。
【0042】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態について図3を参照して説明する。図3では図2と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
第一実施形態におけるボルト伸張機構が流体圧供給部120であったのに対して、本実施形態ではボルト伸張機構として伸縮部200を備えている。
伸縮部200は、回転軸10の内部空間Rに設けられている。伸縮部200は、軸線O方向に延びる筒状をなすシリンダ201と、該シリンダ201から軸線O方向に進退可能なロッド202とを有するシリンダロッド機構である。本実施形態では、シリンダ201の軸線O方向他方側の端部が第二受圧面111に当接しており、シリンダ201から軸線O方向一方側に突出するロッド202の軸線方一方側の端部が第一受圧面101に当接している。
【0044】
ロッド202は、シリンダ201に外部から供給される流体圧、または、シリンダ201内に設けられたアクチュエータによって、軸線O方向に任意に進退可能とされている。これによって、シリンダ201からロッド202を前進させると、伸縮部200の軸線O方向の寸法が長くなる結果、これに伴って第一つば部100及び第二つば部110が離間し、ボルト本体91を伸張させることができる。したがって、第一形態同様の作用効果を得ることができる。
なお、伸縮部200としてはシリンダロッド機構以外の構成を採用してもよく、例えば、ボールねじを備えた直動機構等を採用してもよい。
【0045】
<第三実施形態>
次に本発明の第三実施形態について図4を参照して説明する。図4では図2と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第一実施形態におけるボルト伸張機構が流体圧供給部120であったのに対して、本実施形態ではボルト伸張機構として加熱部300を備えている。
【0046】
加熱部300は、ボルト本体91を加熱可能な構成とされている。加熱部300としては、例えば図4に示すように、ボルト本体91に巻きつけられた電熱線を採用することができる。外部から電熱線に通電されることで、電熱線がジュール熱により発熱する。これによって、該電熱線が巻き付けられたボルト本体91が加熱されると、ボルト本体91が熱膨張することで軸線O方向に伸張する。よって、第一、第二実施形態同様の作用効果を得ることができる。
なお、加熱部300としては電熱線の他、その他の熱源や誘導加熱装置等、種々の構成を採用してよい。
【0047】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施形態では、回転体として第一インペラ40、第二インペラ60を採用した例について説明したがこれに限定されることはない。一対の回転体のうちの一方が、カウンタウェイトであってもよい。これによっても同様の作用効果を奏する。
【0048】
さらに、実施形態では、締結ボルト90のボルト本体91を伸張させた後に第一インペラ40、第二インペラ60の双方を取り付ける例について説明したが、例えば、ボルト本体91を伸張させる前に一方の回転体をボルト本体91に取り付けてもよい。この場合、一方の回転体をボルト本体91に取り付けた状態でボルト本体91を伸張させ、残りの他方の回転体をボルト本体91に取り付ける。これによっても、他方の回転体を容易に取り付けることができる他、実施形態同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、実施形態では本発明をギアド圧縮機1に適用した例について説明したが、他の構成の圧縮機や他の回転機械に本発明を適用してもよい。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載の回転機械は、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様は、軸線O方向に延びる円筒状をなすとともに、前記軸線O方向の両側に端面を有する回転軸10と、前記回転軸10内で前記軸線O方向に延びているとともに、両端に形成された締結部を有するボルト本体91を有する締結ボルト90と、該締結ボルト90の前記軸線O方向両側に設けられているとともに、前記軸線O方向の端部で前記第一締結部92及び前記第二締結部93に固定される第一被締結部54、第二被締結部74、及び、前記回転軸10の前記端面と当接する当接面をそれぞれ有する第一インペラ40及び第二インペラ60と、前記ボルト本体91を前記軸線O方向に一時的に伸張させるボルト伸張機構と、を備える。
【0052】
上記構成によれば、ボルト伸張機構によってボルト本体91を軸線O方向に伸張させた状態で該ボルト本体91の第一締結部92、第二締結部93に第一インペラ40の第一被締結部54、第二インペラ60の第二被締結部74を締結させる。そして、その後にボルト伸張機構によるボルト本体91の伸張を解除すると、該ボルト本体91が元の寸法に戻り、第一インペラ40の第一当接面55、第二インペラ60の第二当接面75が回転軸10の端面に当接する。これにより、第一インペラ40、第二インペラ60と回転軸10が強固に密着し、第一インペラ40、第二インペラ60と回転軸10とが一体に固定された状態となる。
また、ボルト本体91に固定されるのは第一インペラ40、第二インペラ60の端部であるため、第一インペラ40、第二インペラ60に貫通孔等を設ける必要はない。そのため、第一インペラ40、第二インペラ60の強度を担保することができる。
【0053】
(2)第2の態様は、上記第1の態様に係る回転機械において、前記締結ボルト90は、前記ボルト本体91の外周面から張り出すように前記軸線O方向に離間して一対が設けられて、前記回転軸10の内周面12に対して前記軸線O方向に摺動可能に当接する第一つば部100及び第二つば部110をさらに有し、前記ボルト伸張機構は、第一つば部100及び第二つば部110に対してこれら第一つば部100及び第二つば部110が前記軸線O方向に互いに離間するように外力を付与する回転機械である。
【0054】
第一つば部100及び第二つば部110を軸線O方向に離間させることによって、これらつば部に一体に固定されたボルト本体91を軸線O方向に伸張させることができる。
【0055】
(3)第3の態様は、上記第2の態様に係る回転機械において、前記ボルト伸張機構は、前記回転軸10内における一対のつば部によって区画された空間に流体圧を供給する流体圧供給部120である回転機械である。
【0056】
これによって、回転軸10内における第一つば部100及び第二つば部110が設けられた狭い空間で、これら第一つば部100及び第二つば部110を容易に離間させることができる。
【0057】
(4)第4の態様は、上記第2の態様に係る回転機械において、前記ボルト伸張機構は、前記回転軸10内における第一つば部100及び第二つば部110によって区画された内部空間Rに設けられて、前記軸線O方向に伸張することで一対の第一つば部100及び第二つば部110を離間させる伸縮部200である回転機械である。
【0058】
これによって、第一つば部100及び第二つば部110を容易に離間させることができる。
【0059】
(5)第5の態様は、上記第1の態様に係る回転機械において、前記ボルト伸張機構は、前記回転軸10内に設けられて前記ボルト本体91を加熱する加熱部300である回転機械である。
【0060】
加熱部300によりボルト本体91を加熱して熱膨張させることで、該ボルト本体91を一時的に伸張させることができる。
【0061】
(6)第6の態様は、上記第1から第5のいずれかの態様の回転機械において、第一インペラ40、第二インペラ60は、中実構造とされている回転機械である。
【0062】
これによって、遠心荷重に対する回転体の強度を担保することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ギアド圧縮機
10 回転軸
11 外周面
12 内周面
13a 第一端面
13b 第二端面
14 流体圧供給孔
20 ラジアル軸受
30 スラスト軸受
40 第一インペラ(回転体
50 第一ディスク
51 第一凸部
52 第一大径部
53 第一小径部
54 第一被締結部(被締結部)
55 第一当接面(当接面)
58 第一ブレード
60 第二インペラ(回転体
70 第二ディスク
71 第二凸部
72 第二大径部
73 第二小径部
74 第二被締結部(被締結部)
75 第二当接面(当接面)
78 第二ブレード
80 動力伝達部
81 ピニオンギア
82 大径ギア
90 締結ボルト
91 ボルト本体
92 第一締結部(締結部)
93 第二締結部(締結部)
100 第一つば部100
101 第一受圧面
102 第一シール部
110 第二つば部110
111 第二受圧面
112 第二シール部
120 流体圧供給部(ボルト伸張機構)
200 伸縮部(ボルト伸張機構)
201 シリンダ
202 ロッド
300 加熱部(ボルト伸張機構)
R 内部空間
O 軸線
図1
図2
図3
図4