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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リニアモータ及びリニア搬送システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021037481
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137806
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】大熊 雅史
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 隆史
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/056841(WO,A1)
【文献】特許第5313561(JP,B2)
【文献】特開2004-166331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の永久磁石を有する可動子と、
コイルを有する固定子と、
前記コイルの電流を制御するためのモータドライバと、
二つ以上の平行な搬送ラインとを備え、
前記コイルと前記可動子を含む平面内には前記モータドライバが配置されず、
二つの平行な搬送ラインの中間に前記固定子の前記コイルが一つだけ配置されている
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記可動子が有する前記複数の永久磁石の極配置と異なる極配置の複数の永久磁石を有する第2の可動子を更に備える
ことを特徴とする請求項に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記可動子の前記固定子の側の面に配置されている複数の永久磁石の極配置は、前記可動子の前記面の反対側の面に配置されている複数の永久磁石の極配置と一つの磁極分ずれている
ことを特徴とする請求項に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記可動子は、一つだけスケール磁石を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記二つ以上の平行な搬送ラインの個数がMである場合、Mが偶数であるとき、M/2個の前記固定子が前記二つ以上の平行な搬送ラインの進行方向に垂直な平面に配置され、Mが奇数であるとき、(M+1)/2個の前記固定子が前記二つ以上の平行な搬送ラインの進行方向に垂直な平面に配置され、
Mは、2以上の整数であり、
前記進行方向は、前記可動子の進行方向である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のリニアモータを備える
ことを特徴とするリニア搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータ及びリニア搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータを使用した搬送システムは、高精度な位置決めによる軌道上での製品の加工及び組立が可能であるという特徴と、可動子毎の速度制御が可能であるという特徴とを有するため、当該搬送システムの用途が拡大している。以下では、搬送システムは「リニア搬送システム」と記載される。リニア搬送システムには、可動子を動かすための電磁石が必要なため固定子及び可動子が大型になってしまうという課題があり、可動子間の距離の狭ピッチ化によるフットプリントの低減が求められている。
【0003】
従来、進行方向に対して前側と後側とでローラの位置を異ならせることにより、隣り合う可動子のローラの接触を回避して進行方向の可動子の狭ピッチ化を実現するリニア搬送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また従来、一つのフレームに対して二つの搬送ライン用の磁石が配置され、これにより進行方向に対して平行な二つの搬送ライン間の可動子の狭ピッチ化を実現するリニアモータも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/145214号
【文献】特許第5313561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定子がコイルを有していて可動子が永久磁石を有する従来のリニア搬送システムには、二つの平行な搬送ライン間の固定子の狭ピッチ化が実現できていないという課題がある。特許文献1が開示している技術では、コイルを流れる電流を制御する基板がコイルと可動子が重なる平面に配置されているため、複数の搬送ラインを配置した場合、二つの平行な搬送ライン間の固定子の狭ピッチ化は困難である。特許文献2が開示している技術では、固定子がコイルを有して可動子が永久磁石を有する構造とした場合、一般に磁石よりもコイルが大きいため固定子が大きくなり、複数の搬送ラインを配置したとき、二つの平行な搬送ライン間の固定子の狭ピッチ化は困難である。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、二つの平行な搬送ライン間の可動子の狭ピッチ化を実現するリニアモータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るリニアモータは、複数の永久磁石を有する可動子と、コイルを有する固定子と、コイルの電流を制御するためのモータドライバと、二つ以上の平行な搬送ラインとを有する。コイルと可動子を含む平面内にはモータドライバが配置されない。二つの平行な搬送ラインの中間に固定子のコイルが一つだけ配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るリニアモータは、二つの平行な搬送ライン間の可動子の狭ピッチ化を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るリニア搬送システムの構成を示す平面図
図2】実施の形態1に係るリニア搬送システムの構成を示す第1の断面図
図3】実施の形態1に係るリニア搬送システムの構成を示す第2の断面図
図4】実施の形態1に係るリニア搬送システムの構成を示す第3の断面図
図5】実施の形態2に係るリニア搬送システムの構成を示す第1の断面図
図6】実施の形態2に係るリニア搬送システムの構成を示す第2の断面図
図7】実施の形態3に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図
図8】実施の形態4に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図
図9】実施の形態5に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図
図10】実施の形態6に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係るリニアモータ及びリニア搬送システムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1の構成を示す平面図である。図1は、リニア搬送システム1の構成を模式的に示している。リニア搬送システム1は、リニアモータ2を有する搬送システムである。リニアモータ2は、可動子3と、トラックモジュール4とを有する。リニアモータ2は、搬送ライン5aと、搬送ライン5aに続く二つの平行な搬送ライン5b,5cとを更に有する。つまり、リニアモータ2は、二つの平行な搬送ライン5b,5cを有する。図1では、搬送ライン5a,5b,5cは一点鎖線の矢印によって示されている。
【0012】
リニア搬送システム1は、搬送ライン5aを移動する可動子3を搬送ライン5bと搬送ライン5cとのうちのいずれかに進行させる分岐構造6を更に有する。トラックモジュール4は、固定子7を有する。図1には示されていないが、固定子7は、複数のコイルを有する。
【0013】
リニア搬送システム1は、直線のリニアモータ2をつなげたもの、又は、直線のリニアモータ2と曲線のリニアモータ2とをつなげてトラック状にしたものであってもよい。分岐構造6は、左右のコイルからの吸引力の切り替えによって、可動子3がひきつけられるコイルを切り替える。分岐構造6は、直線のリニアモータ2が移動した搬送ラインを当該搬送ラインと別の搬送ラインにつなげてもよいし、ガイドレール11が切り替え時に機械的につなぎ変わることで一つの搬送ラインを分岐させてもよい。ガイドレール11は、図2に示されている。
【0014】
上述の二つの平行な搬送ライン5b,5cは、リニアモータ2が有する可動子3が動く二つの軌跡である。上述の通り、分岐構造6は、搬送ライン5aを移動する可動子3を搬送ライン5bと搬送ライン5cとのうちのいずれかに進行させる。分岐構造6が存在しなくても、二つの搬送ライン5b,5cが近接していればよい。ここでの近接とは、搬送ライン5bと搬送ライン5cのコイルの間にモータドライバを設置できる隙間を有さないほど近いということである。
【0015】
上述の通り、リニアモータ2は、可動子3と、トラックモジュール4とを有する。可動子3は可動側の構成要素であり、トラックモジュール4は固定側の構成要素である。複数のトラックモジュール4がつなぎ合わされることによって、搬送ライン5a,5b,5cが形成される。複数の可動子3が搬送ライン5a,5b,5cを移動することでリニア搬送システム1が形成される。
【0016】
図2は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1の構成を示す第1の断面図である。図2は、図1のII-II線の矢視図である。更に言うと、図2は、実施の形態1における分岐直後の搬送方向に対して垂直な断面を模式的に示している。図3は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1の構成を示す第2の断面図である。図3は、図1のIII-III線の矢視図である。更に言うと、図3は、実施の形態1における二つの平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して垂直な断面を模式的に示している。
【0017】
可動子3は、ローラ8と、モータ磁石9と、スケール磁石10とを有する。モータ磁石9は、複数の永久磁石を有する。トラックモジュール4は、固定子7と、ガイドレール11と、モータドライバ12と、スケール13とを有する。
【0018】
図4は、実施の形態1に係るリニア搬送システム1の構成を示す第3の断面図である。図4は、図3のIV-IV線の矢視図である。更に言うと、図4は、実施の形態1における平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して平行な断面を示している。固定子7は、搬送方向に並んだ複数のコイルを有している。図4では、複数のコイルのうちの3個のコイルに符号7a,7b,7cが割り当てられている。具体的には、当該3個のコイルのうちの一つのコイルに符号7aが割り当てられており、当該3個のコイルのうちの別の一つのコイルに符号7bが割り当てられており、当該3個のコイルのうちの更に別の一つのコイルに符号7cが割り当てられている。3個のコイル7a,7b,7cは、固定子7が有する複数のコイルの一部である。
【0019】
モータドライバ12は、固定子7が有する複数のコイルの各々に流れる電流を制御する。つまり、モータドライバ12は、コイルの電流を制御するための構成要素である。固定子7が有する複数のコイルの各々に流れる電流により磁界が発生し、当該磁界が可動子3のモータ磁石9に推進力を与えることで可動子3は動作する。
【0020】
モータドライバ12は、固定子7が有する複数のコイルの各々に流れる電流を制御するための基板を有する構成要素である。モータドライバ12は、スケール13との通信と、隣り合うモータドライバ12との通信と、上位のコントローラとの通信とを行う機能も有する。実施の形態1では、モータドライバ12は、固定子7と、ガイドレール11と、スケール13と一体となってトラックモジュール4を形成している。モータドライバ12は、固定子7及びスケール13を有するトラックモジュール4に含まれていなくてもよい。
【0021】
スケール13は、可動子3の位置を測定するための器機である。スケール13は、複数のホール素子を有する。実施の形態1では、複数の磁極を有するスケール磁石10が可動子3に含まれており、スケール13の内部の複数のホール素子が可動子3の位置を検出する。可動子3の位置は、光学系を用いる方法によって検出されてもよい。可動子3の位置を検出する方法は、限定されない。実施の形態1では、スケール磁石10が可動子3の両面に取り付けられており、分岐時にどちらの面からでも可動子3の位置を測定可能な構造が採用されている。
【0022】
ローラ8及びガイドレール11は、可動時に進行方向以外の方向に可動子3が動かないように可動子3の動作を規制するための構成要素であり、ローラ8及びガイドレール11の形状は実施の形態1の形状に限定されない。例えば、ローラ8は、Vローラ又は平ローラであってもよい。
【0023】
上述の通り、モータ磁石9は複数の永久磁石を有する。図4では、複数の永久磁石のうちの3個の永久磁石に符号9a,9b,9cが割り当てられている。具体的には、当該3個の永久磁石のうちの一つの永久磁石に符号9aが割り当てられており、当該3個の永久磁石のうちの別の一つの永久磁石に符号9bが割り当てられており、当該3個の永久磁石のうちの更に別の一つの永久磁石に符号9cが割り当てられている。3個の永久磁石9a,9b,9cは、モータ磁石9が有する複数の永久磁石の一部である。
【0024】
複数の永久磁石については、進行方向にS極とN極とが交互に並んでおり、モータ磁石9は、固定子7が有する複数のコイルからの磁界を受けて推進力を発生させる。実施の形態1では、可動子3は、モータ磁石9の一つの取り付け面の反対面にもモータ磁石9を有する。これにより、可動子3は、分岐時にどちらの面からでもコイルからの推進力を受けることができる。
【0025】
実施の形態1では、二つの平行な搬送ライン5b,5cの固定子7のコイルと可動子3のモータ磁石9が重なる面よりも鉛直方向の下にモータドライバ12が配置されている。つまり、実施の形態1では、従来ではモータ磁石9の隣りに配置されているモータドライバ12はモータ磁石9の隣りに存在しない。そのため、モータ磁石9のすぐ隣に平行する搬送ライン5b,5cを設置することができる。これにより、搬送路の設置面積の省スペース化及びトラック上で加工を行う場合の加工機の小型化が可能となる。モータドライバ12の設置位置は、コイルとモータ磁石9が重なる面以外であれば実施の形態1の位置でなくてもよい。
【0026】
実施の形態1に係るリニアモータ2のコイルに流れる電流を制御するための基板は、コイルと可動子3が重なる平面上以外に配置されている。つまり、コイルと可動子3を含む平面内にはモータドライバ12は配置されない。これにより、リニアモータ2は、二つの平行な搬送ライン5b,5c間の可動子3の狭ピッチ化を実現することができる。上記の平面は、可動子3の進行方法に対して水平な平面であって、例えば図3のIV-IV線の平面である。
【0027】
実施の形態1では、リニアモータ2は、可動子3が永久磁石を有して固定子7がコイルを有する構造を有する。当該構造は、可動子3がコイルを有して固定子7が永久磁石を有する構造と比較し、可動子3の小型化を実現することを可能にし、可動子3への配線も不要となり配線により可動子3の移動が制限されないという特徴を有する。
【0028】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係るリニア搬送システムの構成を示す第1の断面図である。図5は、図1のIII-III線の矢視図に対応する図である。更に言うと、図5は、実施の形態2における平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して垂直な断面を模式的に示している。図6は、実施の形態2に係るリニア搬送システムの構成を示す第2の断面図である。図6は、図5のVI-VI線の矢視図である。更に言うと、図6は、実施の形態2における平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して平行な断面を模式的に示している。実施の形態2では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
【0029】
実施の形態2に係るリニア搬送システムは、実施の形態1に係るリニア搬送システム1と同様に、二つの平行な搬送ライン5b,5cを有する。実施の形態2でも、リニアモータ2のコイルに流れる電流を制御するための基板は、コイルと可動子3が重なる平面上以外に配置されている。実施の形態2では、二つの平行な搬送ライン5b,5cの中間に固定子7のコイルが一つだけ配置されている。
【0030】
二つの平行な搬送ライン5b,5cの中間に配置された固定子7は一つのコイルを有し、当該コイルは、二つの搬送ライン5b,5cの双方に対して磁界を発生させることが可能である。例えば、当該コイルは、搬送ライン5bに対してN極となる磁界と、搬送ライン5cに対してS極となる磁界とを同時に発生させることができる。
【0031】
実施の形態2の構成によれば、一つのコイルが二つの搬送ライン5b,5cを駆動することが可能であるため、二つの搬送ライン5b,5c間の距離を短くすることができ、搬送路の設置面積の省スペース化及びトラック上で加工を行う場合における加工機の小型化が可能となる。また、実施の形態2の構成によれば、固定子7を二つの搬送ライン5b,5cの各々について設置する場合に比べて固定子7の個数も半分に少なくなるため、低コスト化が可能である。
【0032】
実施の形態3.
図7は、実施の形態3に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図である。図7は、図5のVI-VI線の矢視図に対応する図である。更に言うと、図7は、実施の形態3における平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して平行な断面を模式的に示している。実施の形態3では、実施の形態2との相違点を主に説明する。
【0033】
実施の形態3に係るリニア搬送システムは、二つの平行な搬送ライン5b,5cを有する。リニアモータ2のコイルに流れる電流を制御するための基板は、コイルと可動子3が重なる平面上以外に配置されている。二つの平行な搬送ライン5b,5cの中間に固定子7が一つだけ配置されている。実施の形態3に係るリニアモータ2は、複数の永久磁石の極配置が異なる2種の可動子3を有する。
【0034】
実施の形態3に係るリニア搬送システムは、極配置の種類により搬送ライン5bと搬送ライン5cとを使い分けることを特徴とするリニア搬送システムである。極配置は、可動子3が有する複数の永久磁石のS極及びN極の配置のことである。可動子3の進行方向に対して、永久磁石のS極とN極とが交互に配置されている。実施の形態3に係るリニアモータ2は、進行方向に対してS極から永久磁石が配置されている可動子3と、N極から永久磁石が配置されている可動子3との2種類の可動子3を有する。
【0035】
上述の極配置の種類により搬送ライン5bと搬送ライン5cとを使い分けるとは、搬送ライン5b,5cを、永久磁石がS極から配置されている可動子3が流れる搬送ラインと、永久磁石がN極から配置されている可動子3が流れる搬送ラインとに分けることを意味する。
【0036】
実施の形態3の構成によれば、二つの平行な搬送ライン5b,5cの中央に配置された一つのコイルが同時に二つの搬送ライン5b,5cの可動子3を動作させる場合、例えば一つのコイルは、搬送ライン5bにS極となる磁界を発生させると共に搬送ライン5cにN極となる磁界を発生させるため、極配置が異なる二つの可動子3の一方が搬送ライン5bに配置されて当該二つの可動子3の他方が搬送ライン5cに配置されることで、二つの可動子3の進行方向の位置を一つの磁極分ずれることなく揃えることが可能となる。
【0037】
実施の形態4.
図8は、実施の形態4に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図である。図8は、図5のVI-VI線の矢視図に対応する図である。更に言うと、図8は、実施の形態4における平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して平行な断面を模式的に示している。実施の形態4では、実施の形態3との相違点を主に説明する。
【0038】
実施の形態4に係るリニア搬送システムは、二つの平行な搬送ライン5b,5cを有する。リニアモータ2のコイルに流れる電流を制御するための基板は、コイルと可動子3が重なる平面上以外に配置されている。二つの平行な搬送ライン5b,5cの中間に固定子7が一つだけ配置されている。
【0039】
実施の形態4に係るリニアモータ2は、固定子7の側の面に配置されている複数の永久磁石の極配置とガイドレール11の側の面に配置されている複数の永久磁石の極配置とが異なる可動子3を有する。つまり、可動子3の固定子7の側の面に配置されている複数の永久磁石の極配置は、可動子3の上記の面の反対側の面に配置されている複数の永久磁石の極配置と一つの磁極分ずれている。上記の面と上記の反対側の面とは、平行である。
【0040】
極配置は、可動子3が有する複数の永久磁石のS極及びN極の配置のことである。可動子3の進行方向に対して、複数の永久磁石のS極とN極とが交互に配置されている。実施の形態4の可動子3は、進行方向に対して永久磁石がS極から配置されている面と、永久磁石がN極から配置されている面とを有する。
【0041】
実施の形態4の構成によれば、二つの平行な搬送ライン5b,5cの中央に配置された一つのコイルが二つの搬送ライン5b,5cの各々の可動子3を同時に動作させる場合、例えば一つのコイルは、搬送ライン5bにS極となる磁界を発生させると共に搬送ライン5cにN極となる磁界を発生させるため、極配置が異なる二つの可動子3の一方が搬送ライン5bに配置されて当該二つの可動子3の他方が搬送ライン5cに配置されることで、二つの可動子3の進行方向の位置を一つの磁極分ずれることなく揃えることが可能となる。加えて、実施の形態3の構成と比較した場合、実施の形態4の構成では、可動子3の種類は1種類であるため、可動子3の種類及び数を少なくすることができ、ひいては低コスト化を実現することができる。
【0042】
実施の形態5.
図9は、実施の形態5に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図である。図9は、図1のII-II線の矢視図に対応する図である。更に言うと、図9は、実施の形態5における平行な搬送ライン5b,5cでの搬送時の搬送方向に対して垂直な断面を模式的に示している。実施の形態5では、実施の形態1から3との相違点を主に説明する。
【0043】
実施の形態5では、可動子3が有するスケール磁石10は一つだけであり、スケール磁石10の位置は左右どちらのトラックモジュール4からも測定可能である。実施の形態5では、スケール13はスケール磁石10に対し横に配置されているが、左右どちらのトラックモジュール4からも位置を測定することが可能であればよく、スケール13はスケール磁石10に対し縦に配置されてもよい。
【0044】
実施の形態5の構造によれば、可動子3が有するスケール磁石10は一つでよく、可動子3の小型化と低コスト化とを実現することができる。
【0045】
実施の形態6.
図10は、実施の形態6に係るリニア搬送システムの構成を示す断面図である。実施の形態6に係るリニア搬送システムは、二つ以上の平行な搬送ラインを有する。リニアモータ2のコイルに流れる電流を制御するための基板は、コイルと可動子3が重なる平面上以外に配置されている。搬送ラインの個数がMである場合、Mが偶数であるとき、M/2個の固定子7が二つ以上の平行な搬送ラインの進行方向に垂直な平面に配置され、Mが奇数であるとき、(M+1)/2個の固定子7が二つ以上の平行な搬送ラインの進行方向に垂直な平面に配置される。Mは、2以上の整数である。進行方向は、可動子3の進行方向である。可動子3では、固定子7の側の面に配置されている永久磁石の極配置とガイドレール11の側の面に配置されている永久磁石の極配置とが異なる。
【0046】
実施の形態6の構造によれば、複数の平行な搬送ライン間のピッチを狭くすることが可能であり、加工でのバッチ処理及び一括加工を実施するためのラインにおいて搬送ラインの省スペース化と装置の小型化とが可能であり、可動子3を待機させておく待機スペースの省スペース化が可能となる。
【0047】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 リニア搬送システム、2 リニアモータ、3 可動子、4 トラックモジュール、5a,5b,5c 搬送ライン、6 分岐構造、7 固定子、7a,7b,7c コイル、8 ローラ、9 モータ磁石、9a,9b,9c 永久磁石、10 スケール磁石、11 ガイドレール、12 モータドライバ、13 スケール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10