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特許7561669磁気ギアードモータおよび磁気ギアードモータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁気ギアードモータおよび磁気ギアードモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20240927BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02K7/10 A
F16H49/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021051530
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149399
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】仲 興起
(72)【発明者】
【氏名】乙坂 純香
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-027234(JP,A)
【文献】特開2019-058039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0134815(US,A1)
【文献】特開2013-106401(JP,A)
【文献】国際公開第2012/093670(WO,A1)
【文献】特開2013-211949(JP,A)
【文献】特開2005-210829(JP,A)
【文献】特許第5723987(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/10
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に磁極対を有する回転子と、
前記回転子に対して径方向に隙間を介在して同軸上に配置され、電磁石として機能するコイルを有して、該コイルにより周方向に磁極対を形成して回転磁界を生じさせる固定子と、
前記固定子と前記回転子との間に設けられ、それぞれ周方向に設定された隙間を介して配置された複数の磁極片を有して、前記固定子と前記回転子との間の磁束を変調して前記回転磁界の回転速度を変化させて前記回転子に伝達する変調磁極群と、を備え、
前記変調磁極群は、断熱部を介して前記固定子に固定されて、該断熱部により前記固定子に対する前記変調磁極群の相対位置が固定され、
前記固定子により回転磁界が供給されて回転力が与えられる前記回転子のみを回転体として備える、
磁気ギアードモータ。
【請求項2】
前記断熱部は、
前記変調磁極群と前記固定子との間に樹脂がモールド成形されて設けられたモールド樹脂部、あるいは、前記変調磁極群と前記固定子との間に設けられる空隙部、の少なくとも一方の構成を有して構成される、
請求項1に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項3】
前記固定子は、環状のバックヨーク部と、該バックヨーク部から周方向に所定の間隔を隔てて径方向内側に突出する複数のティース部とを備えた固定子鉄心を有し、
前記コイルは前記ティース部に巻回されて構成され、
前記断熱部が前記モールド樹脂部を有する構成において、
前記モールド樹脂部は、前記ティース部の周方向端部および径方向内側端部を支持する第1支持部と、前記変調磁極群の周方向端部および径方向外側端部を支持する第2支持部と、を備える、
請求項2に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項4】
前記モールド樹脂部は、前記磁極片の軸方向端部を支持する第3支持部を備える、
請求項3に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項5】
前記モールド樹脂部の軸方向両端の端面の内、少なくとも一端側の端面は、前記固定子および前記磁極片の軸方向一端側の端面よりも軸方向他端側に形成される、
請求項3または請求項4に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項6】
前記断熱部として、前記モールド樹脂部と前記空隙部とを備える構成において、
前記空隙部は、前記モールド樹脂部内において軸方向に延在するよう形成され、該空隙部の少なくとも一方の端部が前記モールド樹脂部の軸方向端部側において開口する、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項7】
径方向内側から外側に向けて、前記回転子、前記変調磁極群、前記固定子の順に配置された、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項8】
前記回転子の回転軸に設けられるファンと、
軸方向の少なくとも一方側に形成される、前記回転子の周りの空間部と該磁気ギアードモータの外部空間部とを連通する孔と、を備える、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項9】
径方向内側から外側に向けて、前記固定子、前記変調磁極群、前記回転子の順に配置された、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項10】
前記回転子の径方向外側の端面において、径方向外側に延びる羽部が設けられた、
請求項9に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項11】
前記固定子の径方向中心部に設けられた軸方向に貫通する貫通孔に、前記回転子の回転軸が挿入され、
前記回転子の軸方向両端部において前記固定子を収納するファンボス部が設けられ、該ファンボス部は軸受けを介して前記回転軸により回転可能に支持され、該ファンボス部は前記回転子の回転に伴って回転する、
請求項10に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項12】
前記固定子の極対数、前記回転子の極対数、前記変調磁極群の前記磁極片の数は、以下関係式を満たすように構成される、
Ns=N1±Nh
但し、Nsは前記固定子の極対数、Nhは前記回転子の極対数、N1は前記変調磁極群の前記磁極片の数を示す、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の磁気ギアードモータ。
【請求項13】
請求項5に記載の磁気ギアードモータの製造方法であって、
軸方向一端側に突出する突出部を備えた金型を、該突出部が前記変調磁極群と前記固定子との間に挿入されるように前記変調磁極群の軸方向他端側に配置し、
前記金型の前記突出部により、前記ティース部の周方向端部および径方向内側端部と、前記変調磁極群の周方向端部および径方向外側端部と、を支持した状態で、
前記変調磁極群と前記固定子との間に樹脂をモールド成形して前記モールド樹脂部を形成して、該モールド樹脂部により前記固定子に対する前記変調磁極群の相対位置を固定する、
磁気ギアードモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁気ギアードモータおよび磁気ギアードモータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高トルク密度を実現した磁束変調型の磁気減速機である磁気ギアが研究開発されている。そして、この磁気ギアと巻線型固定子とを一体にした磁気歯車型回転電機である磁気ギアードモータが研究開発されている。この磁気ギアードモータでは、固定子コイルによって高速側ロータを回転させ、その高速側ロータに配置された磁石の磁束を変調磁極で変調させることで、低速側ロータを回転させる。これによって、低速側ロータは、高速側ロータの速度比(減速比)だけ増加したトルクを得られるため、高トルク密度化を図れる。このような高トルク密度化を図れる磁気ギアードモータとして、以下のような技術が開示されている。
【0003】
即ち、従来の磁気ギアードモータとしての磁気歯車型回転電機は、複数の永久磁石磁極を有する第1の永久磁石界磁と、それとは極数の異なる複数の永久磁石磁極を有する第2の永久磁石界磁と、複数の磁性極片を有する変調磁極と、第1の永久磁石界磁と相互作用する複数の巻線を有する巻線型固定子とからなる。巻線型固定子と変調磁極との間には第1の永久磁石界磁が設けられる。巻線型固定子のほかに変調磁極が固定された場合、第1の永久磁石界磁が巻線型固定子の作る回転磁界と同期して回転し、第2の永久磁石界磁はギヤ比により決まる速度で回転する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5723987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の磁気ギアードモータでは、高速側ロータである第1の永久磁石、低速側ロータである第2の永久磁石、変調磁極、巻線型固定子、の主に4つの構造体を備え、第1の永久磁石、第2の永久磁石、の回転する構造体を2つ備える。このように、回転する構造体が2つ以上存在しているため、これら回転する構造体を保持するための構造が複雑化するという課題があった。
更に、上記従来の磁気ギアードモータの構成では、巻線型固定子および変調磁極を回転しないように固定する場合において、固定子に対する変調磁極の相対位置ずれが生じる場合がある。この場合、トルク脈動が増大して性能が低下するという課題があった。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、構造が簡略化された高性能の磁気ギアードモータと、この磁気ギアードモータを製造するための磁気ギアードモータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される磁気ギアードモータは、
周方向に磁極対を有する回転子と、
前記回転子に対して径方向に隙間を介在して同軸上に配置され、電磁石として機能するコイルを有して、該コイルにより周方向に磁極対を形成して回転磁界を生じさせる固定子と、
前記固定子と前記回転子との間に設けられ、それぞれ周方向に設定された隙間を介して配置された複数の磁極片を有して、前記固定子と前記回転子との間の磁束を変調して前記回転磁界の回転速度を変化させて前記回転子に伝達する変調磁極群と、を備え、
前記変調磁極群は、断熱部を介して前記固定子に固定されて、該断熱部により前記固定子に対する前記変調磁極群の相対位置が固定され、
前記固定子により回転磁界が供給されて回転力が与えられる前記回転子のみを回転体として備える、
ものである。
また、本願に開示される磁気ギアードモータの製造方法は、
軸方向一端側に突出する突出部を備えた金型を、該突出部が前記変調磁極群と前記固定子との間に挿入されるように前記変調磁極群の軸方向他端側に配置し、
前記金型の前記突出部により、前記ティース部の周方向端部および径方向内側端部と、前記変調磁極群の周方向端部および径方向外側端部と、を支持した状態で、
前記変調磁極群と前記固定子との間に樹脂をモールド成形して前記モールド樹脂部を形成して、該モールド樹脂部により前記固定子に対する前記変調磁極群の相対位置を固定する、
ものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される磁気ギアードモータおよび磁気ギアードモータの製造方法によれば、構造が簡略化された高性能の磁気ギアードモータと、この磁気ギアードモータを製造するための磁気ギアードモータの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1による磁気ギアードモータの概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図2】実施の形態1による磁気ギアードモータの概略構成を示す軸方向に垂直な方向における断面図である。
図3】実施の形態1による磁気ギアードモータの概略構成を示す斜視図である。
図4】実施の形態1による固定子鉄心の概略構成を示す斜視図である。
図5】実施の形態1による固定子鉄心の概略構成を示す上面図である。
図6】実施の形態1による変調磁極群の概略構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態1による変調磁極群の概略構成を示す上面図である。
図8】実施の形態1による回転子の概略構成を示す斜視図である。
図9】実施の形態1による磁気ギアードモータの回転子の概略構成を示す上面図である。
図10】実施の形態1による磁気ギアードモータの回転子が有する磁極を説明するための図である。
図11】実施の形態2による磁気ギアードモータの概略構成を示す斜視図である。
図12】実施の形態2による磁気ギアードモータの固定子とモールド樹脂部の概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図13】実施の形態2による磁気ギアードモータのモールド樹脂部の概略構成を示す斜視断面図である。
図14】実施の形態2によるモールド樹脂部を形成する製造方法を説明するための、磁気ギアードモータの軸方向に平行な方向における断面図である。
図15】実施の形態2によるモールド樹脂部の構成を示すための磁気ギアードモータの一部拡大軸方向に垂直な方向における断面図である。
図16】実施の形態3による磁気ギアードモータの概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図17】実施の形態3による磁気ギアードモータの断熱部の構造例を示す軸方向に垂直な方向における断面図である。
図18】実施の形態4による磁気ギアードモータの概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図19】実施の形態5による磁気ギアードモータの概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図20】実施の形態5による磁気ギアードモータの概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の磁気ギアードモータおよび磁気ギアードモータの製造方法について図を用いて説明する。
なお、以下の実施の形態では、環状の回転子における各方向を、周方向S、径方向X、径方向内側X1、径方向外側X2、回転子のシャフトの軸心方向を軸方向Y、そして、図1の図面上における上側を軸方向上側Y1、図1の図面上における下側を軸方向下側Y2とし、他の図も当該方向を基準としてそれぞれを示す。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による磁気ギアードモータ100の概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図2は、実施の形態1による磁気ギアードモータ100の概略構成を示す軸方向に垂直な方向における断面図である。
図3は、実施の形態1による磁気ギアードモータ100の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態の磁気減速機構である磁気ギアードモータ100は、回転子10と、非回転子である固定子20と、変調磁極群30と、を備える。
【0012】
本実施の形態の磁気ギアードモータ100は、径方向内側X1から径方向外側X2に向けて、回転子10、変調磁極群30、固定子20、の順に配置されている。
以下、これら回転子10、変調磁極群30、固定子20、の構成についてそれぞれ説明する。
【0013】
先ず、固定子20の構成について説明する。
図1図3に示すように、固定子20は、電磁鋼板等から構成される固定子鉄心21と、コイル22と、固定子鉄心21とコイル22とを絶縁する図示しない絶縁材と、を備える。
図4は、実施の形態1による固定子鉄心21の概略構成を示す斜視図である。
図5は、実施の形態1による固定子鉄心21の概略構成を示す上面図である。
図4図5に示すように、固定子鉄心21は、環状のバックヨーク部21Yと、このバックヨーク部21Yから周方向Sに設定された間隔を隔てて、径方向内側X1に突出する複数のT字形状のティース部21Tと、を備える。各ティース部21Tの径方向内側X1には、周方向Sの両側にそれぞれ突出する突出部21T1が設けられる。
【0014】
本実施の形態の固定子鉄心21は、9個のティース部21Tを備える。各ティース部21Tに対して図示しない絶縁材で絶縁を確保しながら集中巻きにて巻線を巻回して、図1図3に示したコイル22が形成される。この各ティース部21Tのコイル22に対して3相交流電流を通電することで、コイル22を電磁石として機能させ、このコイル22により周方向Sに複数の磁極対を形成して、回転磁界を生じさせる。本実施の形態では、6極(3極対)の磁界を発生するように構成される。
【0015】
なお、本実施の形態では、全てのティース部21Tがバックヨーク部21Yと一体形成された固定子鉄心21を示したが、これに限定されることはない。例えば、固定子鉄心21は、ティース部21T毎に9個に分割された分割固定子鉄心を、最終的に環状になるように1つに組み立てた構成であっても良い。
【0016】
次に、変調磁極群30の構成について説明する。
図6は、実施の形態1による変調磁極群30の概略構成を示す斜視図である。
図7は、実施の形態1による変調磁極群30の概略構成を示す上面図である。
図6に示すように、変調磁極群30は、磁極片としての必要数の磁極片31を有して構成される。
本実施の形体では18個の磁極片31を有することで変調磁極群30を構成する。
【0017】
磁極片31は、それぞれが周方向Sに設定された隙間を介して均等間隔に配置されている。磁極片31は軸方向Yに同じ断面形状で延在するように構成される。そのため、例えば、磁極片31を薄板を軸方向Yに複数枚積層して構成する場合では、同一形状の薄板を用いることができるため、部品種類数が増えないというメリットを有する。
この変調磁極群30は、以下に説明するように、断熱部としてのモールド樹脂部40により固定子20と一体となって固定される。
【0018】
前述のように、固定子鉄心21は、絶縁材でコイル22との絶縁を確保されながら、そのティース部21Tにコイル22が巻回される。この後にコイル22は、樹脂材料によるモールド成形により固定子鉄心21と一体化されて固定子20が形成される。本実施の形態では、このモールド成形時において、固定子20の径方向内側X1に配置される変調磁極群30も、このコイル22と共に固定子鉄心21とモールド成形される。
このようにすることで、変調磁極群30と固定子20とを別々に固定することに比べて、作業工数を減らして、加工時間を削減できる。また固定子20と変調磁極群30を固定するための別の部材が不要となる。
【0019】
こうして、変調磁極群30は、断熱部としてのモールド樹脂部40により固定子20の径方向内側X1側に固定され、このモールド樹脂部40により固定子20に対する相対位置が固定される。そして固定子鉄心21のティース部21Tの径方向内側X1と、変調磁極群30の径方向外側X2とが径方向Xに対向した状態となる。
【0020】
次に、回転子10の構成について説明する。
図8は、実施の形態1による磁気ギアードモータ100の回転子10の概略構成を示す斜視図である。
図9は、実施の形態1による磁気ギアードモータ100の回転子10の概略構成を示す上面図である。
図10は、実施の形態1による磁気ギアードモータ100の回転子10が有する磁極を説明するための図である。
回転子10は、径方向内側X1の中心部において回転軸としてのシャフト11が設けられる。そのシャフト11の径方向外側X2において回転子鉄心12が固定される。さらに回転子鉄心12の径方向外側X2において、周方向Sに複数の永久磁石13が固定されている。
【0021】
図1に示すように、シャフト11は、軸受50Aと軸受50Bとで構成される一対の軸受50により、その軸方向Yの両端が回転可能に支持されている。
軸方向上側Y1に設けられる軸受50Aは、前述のモールド樹脂部40の一部に設けられた窪み部40H内に配置される。軸方向下側Y2側に設けられる軸受50Bは、軸方向下側Y2において設けられた、絶縁性の樹脂材料により構成されるブラケット51に形成された設けられた窪み部51H内に配置される。なおブラケット51はモールド樹脂部40と嵌め合わされることで、軸受50Aとの同軸を確保している。
また前述の固定子20は、この回転子10に対して、径方向Xに設定された隙間を介在して、同軸上に配置される。
また、図2では、説明の簡略化のために、軸受50A、軸受50B、ブラケット51等の図示を省略している。
【0022】
ここで、本実施の形態の回転子10が備える永久磁石13は、図10に示すように、15極対(30極)で構成されてラジアル方向に着磁されることで、周方向Sに複数の磁極対を形成する。
なお、永久磁石13の材料としては、希土類、フェライトが考えられる。また、焼結磁石であってもボンド磁石であっても良い。本実施の形態では、リング形状の希土類ボンド磁石を使用した。希土類磁石にすることでエネルギー密度を高め、より製品の小型化に寄与することができる。また、ボンド磁石としたことで、回転子鉄心12に直接成形する一体成形工法を採用することができ、接着材等で接着固定する場合に比べて、安価な製品を作ることができる。
【0023】
また、モールド樹脂部40、ブラケット51に使用した樹脂材料としては、PPS(Poly Phenylene Sulfide Resin)、PBT(Polybutyleneterephtalate)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が考えられる。この樹脂材料は、変調磁極群30の固定に使用されるため、非導電性材料とすることが望ましい。こうすることで渦電流を抑制し機器の効率向上に寄与することができる。またブラケット51は鉄部材、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)、S45C等であっても良い。
【0024】
回転子鉄心12、変調磁極群30、固定子鉄心21の材料は電磁鋼板、圧粉鉄心、アモルファス金属、パーメンジュールなどの軟磁性材料で構成される。但し、仕様上、問題がなければS45C、SS400などの強磁性材料であっても良い。アモルファス鉄心、電磁鋼板、S45C、SPCC等といった鉄板は、磁束変化による渦電流を防止するために、薄い板を複数枚積層して使用することが望ましい。
【0025】
このように構成された磁気ギアードモータ100においては、前述のように、固定子20の各ティース部21Tのコイル22に三相交流電流を通電させる。こうして、コイル22を電磁石として機能させ、コイル22により周方向に複数の磁極対を形成して、6極(3極対)の回転磁界を発生するように構成する。これにより、回転子10に対して回転力が与えられる。
【0026】
固定子20と回転子10との間の磁束は、変調磁極群30の磁極片31により変調され、回転速度が変化されたトルクが回転子10に伝達される。回転子10は、固定子20の回転磁束の回転速度に対し、設定された減速比Gでの回転速度で回転する。
本実施の形態において、固定子20のコイルが生じさせる磁極対数をNhとし、回転子10の永久磁石13により形成される磁極対数をNlとし、変調磁極群30の磁極片31の数をNsとするとき、以下の関係を得られる。
Nl=Ns±Nh
【0027】
このようなとき、減速比Gは、G=Nh/Nlとなる。これにより、固定子20で発生した力がG倍されて回転子10のトルクに付加される。
なお、またこれらの、固定子20の磁極対数Nh、回転子10の磁極対数Nl、磁極片31の周方向S間の隙間は、所望の減速比Gを生じさせるようにそれぞれ決定されている。本実施の形態1では、Nl=15、Ns=18、Nh=3である。つまり、減速比G=5となる。
【0028】
本実施の形態1では、一般的な磁気ギアードモータにおける高速側ロータの機能を、固定子に持たせた。つまり、固定子に設けたコイルを電磁石として機能させることで、一般的な高速側ロータと同等の磁束を発生させて固定子を回転させることなく回転磁界を発生させる。そして変調磁極群により磁束を変調して、減速比Gにより決まる速度で回転子を回転させる。こうして、回転する回転体を、回転子のみとする構成が可能となる。
【0029】
上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータは、
周方向に磁極対を有する回転子と、
前記回転子に対して径方向に隙間を介在して同軸上に配置され、電磁石として機能するコイルを有して、該コイルにより周方向に磁極対を形成して回転磁界を生じさせる固定子と、
前記固定子と前記回転子との間に設けられ、それぞれ周方向に設定された隙間を介して配置された複数の磁極片を有して、前記固定子と前記回転子との間の磁束を変調して前記回転磁界の回転速度を変化させて前記回転子に伝達する変調磁極群と、を備え、
前記変調磁極群は、断熱部を介して前記固定子に固定されて、該断熱部により前記固定子に対する前記変調磁極群の相対位置が固定される、
ものである。
【0030】
このように、回転子に対して径方向に隙間を介在して同軸上に配置され、電磁石として機能するコイルを有して周方向に磁極対を形成して回転磁界を生じさせる固定子を備える。このように、固定子を回転させることなく回転磁界を発生させて、回転子を回転させることができる。ここで、固定子と回転子との間の磁束を変調してこの回転磁界の回転速度を変化させて回転子に伝達する変調磁極群を備えることで、所望の減速比にて回転子を回転できる。こうして、回転子を回転させるためのモータ等の別の機器からの入力(回転力)である高速回転子を不要として、回転する構造体を保持するための軸受、磁極片の固定部品、等に関する構造を簡略化できる。これにより低コスト化を図れる。
以上のように、一般的にはモータと、磁気減速機構とを併用して構成されるものが、本実施形態では、磁気減速機構のみで構成できる。このため、磁気減速機構を含むシステム全体の小型化が可能となる。
【0031】
さらに、変調磁極群は、断熱部により固定子に対する相対位置が固定された状態で、固定子と一体化されている。これにより、変調磁極群と固定子との相対位置ずれが防止できる。こうして、製造ばらつきに起因するトルクの増減を抑制できる。
さらに、変調磁極が回転しないため、変調磁極と対向する固定子のティース部を常に同じ個体のティース部とできる。変調磁極群が回転する構造である場合、1つの変調磁極片はすべての固定子のティース部と対向し得る構成となる。通常、固定子の各ティース部は、製造ばらつき等により同じ寸法となっていることは難しく寸法誤差が生じ、相対位置のズレを招く。更には、回転による振れ、偏心によっても変調磁極群と固定子との相対位置は変化する。本実施の形態では、変調磁極群は、断熱部により固定子に対する相対位置が固定されているため、このような相対位置のズレに起因するトルク脈動を抑制でき、高性能の磁気ギアードモータを提供できる。
【0032】
ここで、本実施の形態では、変調磁極群は、固定子と一体化されているが、固定子のコイルには通電により熱が生じる。通常、変調磁極群の磁極片に使用する電磁鋼板は温度特性があり、温度が高くなると飽和磁束密度が低くなり、磁束を有効に使うことができないという特性を有する。そのため、温度変化を抑制するために、所望のトルクを得る目的で磁極片の軸方向の寸法を長くして対応すると、材料使用量が増加し、更に、磁気ギアードモータの体積が増加する問題点が生じる。さらには、変調磁極群の径方向内側に配置している回転子の永久磁石に対しても伝熱されると、永久磁石が減磁する可能性が生じる。減磁しないように固定子のコイルに流す電流を抑制することで発熱を抑制しようした場合、所望のトルクを得るために軸方向寸法を長くして対応する必要が生じる。この場合、材料使用量の増加、磁気ギアードモータの体積増加を招く。
【0033】
本実施の形態では、変調磁極群は、断熱部を介して固定子に固定される。このように変調磁極群と固定子との間に断熱部を介在させることで、固定子のコイルで発生した熱を変調磁極群まで伝熱させることを低減できる。これにより、所望のトルクを得ることができると共に、材料使用量の低減、磁気ギアードモータの体積縮小化を図れる。
【0034】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記断熱部は、
前記変調磁極群と前記固定子との間に樹脂がモールド成形されて設けられたモールド樹脂部を有して構成される、
ものである。
【0035】
このように、断熱部として、熱伝導率の低いモールド樹脂を用いることで、断熱性能を向上させることができる。
更に、モールド樹脂部を用いることで、固定子鉄心21とコイル22との一体化、変調磁極群30と固定子20との一体化とを同時に行える。これにより、作業工数を減らして加工時間を削減できる。また、固定部材と断熱部材とを別々に用意する必要がないため、コスト削減を図れる。
また、モールド樹脂部を絶縁性の樹脂で構成すれば、シャフトの軸受の内輪と外輪が導通する電食を防止することができ、磁気ギアードモータの品質をより高めることが可能である。これは、ブラケットに対しても同様である。
【0036】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータは、
径方向内側から外側に向けて、前記回転子、前記変調磁極群、前記固定子の順に配置された、
ものである。
【0037】
このような構成にすることで、インナーロータ型回転電機となり、回転子を径方向外側に配置する構成に比べて、回転子に用いる高価な永久磁石の使用量を抑制することが可能となり、ひいては安価な磁気ギアードモータを提供できる。
【0038】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータは、
前記固定子により回転磁界が供給されて回転力が与えられる前記回転子のみを回転体として備える、
ものである。
【0039】
回転子は、設定された減速比にて固定子により回転できるため、このように、回転する構造体を回転子のみとできる。これにより、例えば、摩耗部品である軸受の数を減らすことが可能となり、安価な磁気ギアードモータを提供できる。
【0040】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータは、
前記固定子の極対数、前記回転子の極対数、前記変調磁極群の前記磁極片の数は、以下関係式を満たすように構成される、
Ns=N1±Nh
但し、Nsは前記固定子の極対数、Nhは前記回転子の極対数、N1は前記変調磁極群の前記磁極片の数を示す、
ものである。
【0041】
こうして、固定子は、外部のモータ等からの回転力が与えられる高速回転子を不要として、設定された減速比にて回転子の回転を制御できる。
【0042】
実施の形態2.
以下、本願の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図11は、実施の形態2による磁気ギアードモータ200の概略構成を示す斜視図である。
図12は、実施の形態2による磁気ギアードモータ200の固定子20とモールド樹脂部440の概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図13は、実施の形態2による磁気ギアードモータ200のモールド樹脂部440の概略構成を示す斜視断面図である。
【0043】
本実施の形態の磁気ギアードモータ200において、実施の形態1と異なる点は、モールド樹脂部440の軸方向下側Y2側の端部の形状である。実施の形態1では、モールド樹脂部40は、変調磁極群30の軸方向下側Y2の端面と軸方向Yに同一位置まであった。本実施の形態では、図12に示すように、モールド樹脂部440の軸方向下側Y2の端面は、図12に示す長さYset分だけ、固定子20および磁極片31の軸方向下側Y2の端面よりも軸方向上側Y1に形成されている。これによりモールド樹脂部40は、軸方向上側Y1に長さYset分窪む、凹部としての切欠部440Kが形成される。
こうして、軸方向下側Y2において変調磁極群30と固定子220との間はモールド樹脂により封止されず、モールド樹脂部440の軸方向下側Y2の端面から変調磁極群30の一部が露出する構造となっている。
【0044】
以下、このような構成の本実施の形態の磁気ギアードモータ200の製造方法について説明する。
図14は、実施の形態2によるモールド樹脂部440を形成する製造方法を説明するための、磁気ギアードモータ200の軸方向に平行な方向における断面図である。
図15は、実施の形態2によるモールド樹脂部440の構成を示すための磁気ギアードモータ200の一部拡大軸方向に垂直な方向における断面図である。
【0045】
先ず、変調磁極群30の磁極片31を周方向に均等に配置し、その径方向外側X2において設定された間隔を隔てて固定子鉄心21を配置させる。この時、固定子鉄心21は、ティース部21Tにコイル22を巻き終わった状態である。
ここで、上側金型60Uと下側金型60Dとから構成される金型60を用意する。
下側金型60Dは、軸方向上側Y1側に、長さYset分突出する突出部60Pを備える。この突出部60Pが変調磁極群30と固定子20との間に挿入されるように、変調磁極群30と固定子20の軸方向下側Y2に下側金型60Dを配置する。
【0046】
ここで、図15に示すように、ティース部21Tの径方向内側X1端部の面を当接面A1とし、ティース部21Tの突出部21T1の周方向S側の端部の面を当接面A2とする。また、磁極片31の径方向外側X2の端部の面を当接面A3とし、磁極片31の周方向S側の端部面を当接面A4とする。
【0047】
下側金型60Dの突出部60Pは、このティース部21Tの当接面A1、A2と、磁極片31の当接面A3、A4とにそれぞれ当接する当接面を備える構造となっている。
そして、磁極片31とティース部21Tとの間の隙間において、下側金型60Dの突出部60Pが挿入されると、磁極片31は、隙間嵌めによりティース部21Tに対してその径方向Xと周方向Sが位置決めされる。そして、ティース部21Tの当接面A1、A2および、磁極片31の当接面A3、A4が、下側金型60Dの突出部60Pによりそれぞれ支持された状態で、変調磁極群30と固定子220との間に樹脂をモールド成形してモールド樹脂部440を形成する。
【0048】
こうして形成されたモールド樹脂部440は、図15に示すように、下側金型60Dの突出部60Pにより決められる寸法で、ティース部21Tの当接面A1、A2を支持する第1支持部B1、B2と、磁極片31の当接面A3、A4を支持する第2支持部B3、B4とを備える構成となる。こうして、変調磁極群30の固定子鉄心21に対する径方向Xおよび周方向Sの相対位置が確保される。
【0049】
上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータの製造方法は、
軸方向一端側に突出する突出部を備えた金型を、該突出部が前記変調磁極群と前記固定子との間に挿入されるように前記変調磁極群の軸方向他端側に配置し、
前記金型の前記突出部により、前記ティース部の周方向端部および径方向内側端部と、前記変調磁極群の周方向端部および径方向外側端部と、を支持した状態で、
前記変調磁極群と前記固定子との間に樹脂をモールド成形して前記モールド樹脂部を形成して、該モールド樹脂部により前記固定子に対する前記変調磁極群の相対位置を固定する、
ものである。
【0050】
このように、金型により、固定子のティース部に対する変調磁極群の位置決めを行うことができるため、相対位置のばらつきを抑制することが可能となり、トルク脈動の低減効果を得られ、性能の安定化に寄与できる。また、固定子のティース部に対する変調磁極群の位置決めを容易に行える。
なお、本実施の形態では、変調磁極群30と固定子220との間において軸方向下側Y2にのみ突出部60Pを挿入した例を示したが、軸方向上側Y1に突出部を挿入してもよいし、軸方向上側Y1と軸方向下側Y2の両方に突出部60Pを挿入してもよい。
【0051】
実施の形態3.
以下、本願の実施の形態3を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図16は、実施の形態3による磁気ギアードモータ300の概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
実施の形態1と比べ、変調磁極群30の固定方法が異なる。実施の形態1、2では、変調磁極群と固定子とを断熱する断熱部としてモールド樹脂部40、440を用いた。本実施の形態では、この断熱部として、変調磁極群と固定子との間に空隙部340を介在させる。
【0052】
この空隙部340を形成するために、変調磁極群30は、更に別の部材である断熱部としての連結部材340Aを用いる。
周方向Sに均等に配置された複数の変調磁極群30の軸方向上側Y1と連結部材340Aを接着剤等で固定する。この連結部材340Aは非磁性体から構成されており、例えばステンレス鋼材、樹脂等である。この連結部材340Aと、固定子20のモールド部をネジで固定している。さらに、変調磁極群30の軸方向Yの長さを固定子鉄心21の軸方向Yの長さよりも長くし、ブラケット51と変調磁極群30の軸方向下側Y2をネジで固定する。このようにすることで変調磁極群30の軸方向Yの両端を固定できる。これにより、変調磁極群30のより強固な固定が可能となる。
【0053】
上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記断熱部は、
前記変調磁極群と前記固定子との間に設けられる空隙部を有して構成される、
ものである。
【0054】
このように熱伝導性が低く断熱性の高い空隙部を、変調磁極群と固定子との間に設けることで、固定子のコイルで発生した熱を変調磁極群まで伝熱させることを低減でき、所望のトルクを得ることができると共に、材料使用量の低減、磁気ギアードモータの体積縮小化を図れる。さらには、この断熱部を構成する要素の1つとして、変調磁極群を固定子のモールド部分に固定する連結部材を用いることで、変調磁極群の固定子に対する相対位置を確保できる。
【0055】
以下、変調磁極群と固定子とを断熱する断熱部として、モールド樹脂部と空隙の両方を用いた構成例について説明する。
図17は、実施の形態3による磁気ギアードモータの断熱部の構造例を示す軸方向に垂直な方向における断面図である。
図に示すように、磁極片31と固定子鉄心21との間のモールド樹脂部40内において、軸方向Yに延在するよう形成される空隙部340Hを設けてもよい。
この空隙部340Hの軸方向Yの少なくとも一方の端部を、モールド樹脂部40の軸方向端部側において開口するように構成すれば、モールド樹脂部40内における熱を外部に放熱できる。
【0056】
上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記断熱部として、前記モールド樹脂部と前記空隙部とを備える構成において、
前記空隙部は、前記モールド樹脂部内において軸方向に延在するよう形成され、該空隙部の少なくとも一方の端部が前記モールド樹脂部の軸方向端部側において開口する、
ものである。
【0057】
このように軸方向に貫通する空隙部を、モールド樹脂部内に設ける構成とすることで、冷却用の風路ができモールド樹脂部における放熱性を向上できる。さらには、モールド樹脂の使用量が減るため、コスト低減を図れる。
【0058】
実施の形態4.
以下、本願の実施の形態4を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図18は、実施の形態4による磁気ギアードモータ400の概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
実施の形態4による磁気ギアードモータ400では、回転子10にファン415が設けられている。また、モールド樹脂部40において、磁気ギアードモータ400の外部空間と、回転子10の周囲の空間とを連通する孔440Hを設けている。また、ブラケット51においても、磁気ギアードモータ400の外部空間と、回転子10の周囲の空間とを連通する孔451Hを設けている。
【0059】
更に、モールド樹脂部40において、磁極片31の軸方向下側Y2を支持する第3支持部540Kが形成されている。この第3支持部540Kは、その周方向Sの両端部分が、磁極片31間を埋めているモールド樹脂部40に連結されている。
【0060】
まずファン415は、モールド樹脂部40により軸受50Aを収納するハウジングがある軸方向上側Y1に設けた。このようにすることで、回転子10の回転と共にファン415により流体を回すことができ、磁気ギアードモータ400の冷却に有利となる。
さらに、このファン415を設けた付近のモールド樹脂部40に、磁気ギアードモータ400の外部空間と回転子10の周囲の空間とを連通する孔440Hを設けているので、回転子10の周辺で温度が高くなった流体を外部に出すことができ、より冷却に効果的となる。
【0061】
さらに、ブラケット51に設けられた孔451Hにより、ファン415が回転することで、磁気ギアードモータ400の軸方向下側Y2から軸方向上側Y1に向かって流体を連続的に流すことができ、より磁気ギアードモータ400の冷却効率を向上することができる。
【0062】
上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記回転子の回転軸に設けられるファンと、
軸方向の少なくとも一方側に形成される、前記回転子の周りの空間部と該磁気ギアードモータの外部空間部とを連通する孔と、を備える、
ものである。
【0063】
これにより、磁気ギアードモータの冷却効率をより向上できる。こうして、熱が生じるコイルに対して変調磁極を固定した場合においても、固定子のコイルで発生した熱を効率よく冷却でき、所望のトルクを得ることができる。
また、磁気ギアードモータを効率よく冷却することで、同一体積でより出力を高めること、同一出力で体積を抑制できることができる。また永久磁石の耐熱グレードを下げること、コイルの断面積を小さくして材料費を抑制することも可能となる。
【0064】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記モールド樹脂部は、前記磁極片の軸方向端部を支持する第3支持部を備える、
ものである。
【0065】
実施の形態2に示したモールド樹脂部440では、変調磁極群30の固定子20に対する径方向X、周方向Sの位置決めを行った切欠部440Kが形成されていた。そのため、変調磁極群30の軸方向下側Y2の端面よりも軸方向下側Y2にはモールド樹脂が存在していなかったが、本実施の形態では、図18に示したように、変調磁極群30の軸方向下側Y2の端部を指示する第3支持部540Kが形成されている。このような構成とすることで、例えば、回転の振動等による変調磁極群30の軸方向Yの位置ずれを防止できる。また、変調磁極群30のより広い範囲をモールド樹脂により固定することができ、変調磁極群30の固定強度を増やしたり、冷却効率を増加することが可能となる。
【0066】
実施の形態5.
以下、本願の実施の形態5を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図19は、実施の形態5による磁気ギアードモータ500の概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
【0067】
実施の形態1の磁気ギアードモータ100は、径方向内側X1から径方向外側X2に向けて、回転子10、変調磁極群30、固定子20、の順に配置されたインナーロータ型の構成を示した。
本実施の形態の磁気ギアードモータ500、500Aは、径方向内側X1から径方向外側X2に向けて、固定子20、変調磁極群30、回転子10の順に配置されたアウターロータ型の構成を有する。固定子20が発生する磁界の回転数は、回転子10の回転数よりも高速である。
【0068】
固定子20の径方向中心部側には、軸方向に貫通する貫通孔が設けられ、シャフト11が挿入される。そして、このシャフト11の径方向外側X2において固定子鉄心21が固定されている。実施の形態1と同様に、固定子20においては、固定子鉄心21にコイル22を巻くことによって電磁石が構成される。また、固定子鉄心21の径方向外側X2において、変調磁極群30が周方向Sに設定された隙間を介して複数個配置された磁極片31を有しており、モールド樹脂部40により固定子20と一体化して固定されている。
【0069】
変調磁極群30に対して、径方向Xに隙間を介して対向する位置に永久磁石13が配置されている。この永久磁石13は回転子鉄心12に固定されており、ラジアル方向に着磁されている。この回転子鉄心12の軸方向Yの両端側にブラケット51が配置され、そのブラケット51の軸中心部分に一対の軸受51A、51Bがある。つまり、本実施の形態では、最も径方向外側X2において回転子10が回転する。
【0070】
本実施の形態ではシャフト11は回転しない。シャフト11は中空円筒部品であり、その内径部に固定子20のコイル22に通電するためのケーブル等を通すことができる。このようにすることで、回転子10が回転しても通電用のケーブルが巻き込めるという懸念をなくすことができる。
【0071】
図20は、実施の形態5による磁気ギアードモータ500Aの概略構成を示す軸方向に平行な方向における断面図である。
図20に示す磁気ギアードモータ500Aは、ファン駆動体(換気扇)であり、図11に示した磁気ギアードモータ500の回転子10の径方向外側X2の端面において、径方向外側X2に延びる羽根部515を取り付けた構造である。
つまり回転子10を回転させてファンを駆動させることで空気を送り出すことができる。
【0072】
実施の形態1に示したインナーロータ型では、シャフト11を軸方向Yに伸ばした位置に羽根を取り付ける必要があるため、ファン駆動体としての軸方向長さが長くなってしまう。しかし本実施の形態では、回転子10の外径部に直接、羽根部515を取り付けるだけでよいため、軸方向Yの長さを短くしたい製品で有利となる。
【0073】
また、回転子10の軸方向Yの両端部において固定子20を収納するファンボス部516が設けられている。ファンボス部516は軸受51A、51Bを介してシャフト11により回転可能に支持され、ファンボス部516は、回転子10の回転に伴って回転する。
【0074】
上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
径方向内側から外側に向けて、前記固定子、前記変調磁極群、前記回転子の順に配置された、
ものである。
【0075】
このような構成にすることで、アウターロータ型回転電機となり、固定子を径方向外側に配置する場合に比べ、固定子に用いる材料の使用量を抑制できる。
【0076】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記回転子の径方向外側の端面において、径方向外側に延びる羽根部が設けられた、
ものである。
【0077】
こうして、回転子の径方向外側に別の部材を固定し、その部材と羽根部とを固定する場合にくらべ、部品点数を抑制することが可能である。こうして、構造が簡略化された高性能のファン駆動体を提供できる。
【0078】
また、上記のように構成された本実施の形態の磁気ギアードモータにおいては、
前記固定子の径方向中心部に設けられた軸方向に貫通する貫通孔に、前記回転子の回転軸が挿入され、
前記回転子の軸方向両端部において前記固定子を収納するファンボス部が設けられ、該ファンボス部は軸受けを介して前記回転軸により回転可能に支持され、該ファンボス部は前記回転子の回転に伴って回転する、
ものである。
【0079】
このように回転子の径方向外側に羽根部を設けて、磁気ギアードモータの固定子および回転子をファンボス部内に収納している。このように磁気ギアードモータを構成する各部品がファンボス部内に収納させることで、羽根部が回ったときの風路に磁気ギアードモータを構成する各部品がない。これによって、風の損失を大きくすることがなく、電気機器の高効率化を図ることができる。
【0080】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0081】
10 回転子、20 固定子、21 固定子鉄心、21Y バックヨーク部、
21T ティース部、22 コイル、30 変調磁極群、31 磁極片、
40,440 モールド樹脂部(断熱部)、340,340H 空隙部(断熱部)、
B1,B2 第1支持部、B3,B4 第2支持部、540K 第3支持部、
440K 切欠部(凹部)、415 ファン、440H,451H 孔、
515 羽根部、516 ファンボス部、
100,300,400,500,500A 磁気ギアードモータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20