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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20240927BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60R21/36 310
B60R21/36
B60R21/36 353
B60R21/36 354
B62D6/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021052737
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150232
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 英俊
(72)【発明者】
【氏名】小森 賢二
(72)【発明者】
【氏名】岡村 憲有
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209923(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006532(WO,A1)
【文献】特開2020-147088(JP,A)
【文献】特開2019-209824(JP,A)
【文献】特開2006-264416(JP,A)
【文献】特開平08-258668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも車両のフード上に膨張するエアバッグと、
前記車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部により認識された交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する指標値導出部と、
前記指標値導出部により導出された指標値に基づいて、前記エアバッグを膨張させるタイミングを制御するエアバッグ制御部と、を備え、
前記エアバッグは、前記ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、車体の前頭部を覆うように膨張する第1チャンバと、前記車両のフード上に膨張する第2チャンバとを備え、
前記エアバッグ制御部は、前記指標値が閾値未満である場合に、前記第2チャンバを膨張させるタイミングを、前記第1チャンバを膨張させるタイミングよりも遅延させる、
御装置。
【請求項2】
前記エアバッグ制御部は、前記指標値が閾値未満である場合に、前記エアバッグを膨張させるタイミングを、前記指標値が閾値以上である場合に比して遅らせる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車両の乗員の操作に依らずに前記車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御する運転制御部を更に備え、
前記運転制御部は、前記指標値が閾値未満である場合に、少なくとも前記車両の操舵を制御する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記車両と前記交通参加者とが接触する位置が前記車両の中央に寄るように前記車両の操舵を制御する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも車両のフード上に膨張するエアバッグと、
前記車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部により認識された交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する指標値導出部と、
前記指標値導出部により導出された指標値に基づいて、前記エアバッグを膨張させるタイミングを制御するエアバッグ制御部と、
前記車両の乗員の操作に依らずに前記車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御する運転制御部と、を備え、
前記運転制御部は、
前記指標値が閾値未満である場合に、少なくとも前記車両の操舵を制御し、
前記車両と前記交通参加者とが接触する位置が前記車両の中央に寄るように前記車両の操舵を制御する、
御装置。
【請求項6】
制御装置のコンピュータが、
車両の周辺状況を認識し、
認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出し、
導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御
前記エアバッグは、前記ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、車体の前頭部を覆うように膨張する第1チャンバと、前記車両のフード上に膨張する第2チャンバとを備え、
前記指標値が閾値未満である場合に、前記第2チャンバを膨張させるタイミングを、前記第1チャンバを膨張させるタイミングよりも遅延させる、
制御方法。
【請求項7】
制御装置のコンピュータが、
車両の周辺状況を認識し、
認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出し、
導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御
前記車両の乗員の操作に依らずに前記車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御し、
前記指標値が閾値未満である場合に、少なくとも前記車両の操舵を制御し、
前記車両と前記交通参加者とが接触する位置が前記車両の中央に寄るように前記車両の操舵を制御する、
制御方法。
【請求項8】
制御装置のコンピュータに、
車両の周辺状況を認識させ、
認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出させ、
導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御させ、
前記エアバッグは、前記ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、車体の前頭部を覆うように膨張する第1チャンバと、前記車両のフード上に膨張する第2チャンバとを備え、
前記指標値が閾値未満である場合に、前記第2チャンバを膨張させるタイミングを、前記第1チャンバを膨張させるタイミングよりも遅延させる、
プログラム。
【請求項9】
制御装置のコンピュータに、
車両の周辺状況を認識させ、
認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出させ、
導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御させ、
前記車両の乗員の操作に依らずに前記車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御させ、
前記指標値が閾値未満である場合に、少なくとも前記車両の操舵を制御させ、
前記車両と前記交通参加者とが接触する位置が前記車両の中央に寄るように前記車両の操舵を制御させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、他車両との接触を検知した場合に車両のバンパーから展開するマルチチャンバ式のバンパエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2004-535967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、歩行者等の交通参加者が車両と接触する場合に、車両と交通参加者との接触状況に基づいて、エアバッグの膨張タイミング等を適切に制御することについては考慮されていなかった。したがって、車両と接触する交通参加者の負荷を低減させることができない場合があった。
【0005】
本発明の態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、車両と接触する交通参加者の負荷を、より軽減させることができる制御装置、制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る制御装置、制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る制御装置は、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも車両のフード上に膨張するエアバッグと、前記車両の周辺状況を認識する認識部と、前記認識部により認識された交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する指標値導出部と、前記指標値導出部により導出された指標値に基づいて、前記エアバッグを膨張させるタイミングを制御するエアバッグ制御部と、を備える制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記エアバッグ制御部は、前記指標値が閾値未満である場合に、前記エアバッグを膨張させるタイミングを、前記指標値が閾値以上である場合に比して遅らせるものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記エアバッグは、前記ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、車体の前頭部を覆うように膨張する第1チャンバと、前記車両のフード上に膨張する第2チャンバとを備え、前記エアバッグ制御部は、前記指標値が閾値未満である場合に、前記第2チャンバを膨張させるタイミングを、前記第1チャンバを膨張させるタイミングよりも遅延させるものである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のうち何れか一つの態様において、前記車両の乗員の操作に依らずに前記車両の操舵または加減速のうち一方または双方を制御する運転制御部を更に備え、前記運転制御部は、前記指標値が閾値未満である場合に、少なくとも前記車両の操舵を制御するものである。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記運転制御部は、前記車両と前記交通参加者とが接触する位置が前記車両の中央に寄るように前記車両の操舵を制御するものである。
【0011】
(6):この発明の他の態様に係る制御方法は、制御装置のコンピュータが、車両の周辺状況を認識し、認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出し、導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御する、制御方法である。
【0012】
(7):この発明の他の態様に係るプログラムは、制御装置のコンピュータに、車両の周辺状況を認識させ、認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出させ、導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)~(7)の態様によれば、車両と接触する交通参加者への負荷を、より軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る制御装置100を含む車両システム1の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るエアバッグ装置50の外観斜視図である。
図3】実施形態に係る第1チャンバ51の膨張状態を示す断面模式図である。
図4】実施形態に係る第2チャンバ52および第3チャンバ53の膨張状態を示す断面模式図である。
図5】接触判定部120および指標値導出部130について説明するための図である。
図6】エアバッグの膨張タイミングによる交通参加者の位置の違いについて説明するための図である。
図7】運転制御部150の運転制御による車両Mの挙動について説明するための図である。
図8】制御装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の制御装置、制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。なお、以下では、制御装置を含む車両システムについて説明する。車両システムが搭載される車両は、例えば四輪や三輪、二輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。また、以下の説明において、前後、左右及び上下の向きは、車両の前後、左右及び上下の向きに相当するものとし、左右方向を車幅方向または横方向と称する場合があるものとする。
【0016】
図1は、実施形態に係る制御装置100を含む車両システム1の一例を示す図である。車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、車両センサ40と、エアバッグ装置50と、運転操作子80と、制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、を備える。
【0017】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載された車両(以下、車両M)の任意の箇所に取り付けられる。車両Mの前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面、車体の前頭部等に取り付けられる。後方を撮像する場合、カメラ10は、リアウインドシールド上部やバックドア等に取り付けられてよいし、ドアミラー等に取り付けられてもよい。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0018】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0019】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0020】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、車両Mの周辺に存在する物体の位置、種類、速度等を認識する。物体には、例えば、交通参加者、周辺車両、道路構造物等が含まれる。交通参加者とは、例えば、少なくとも歩行者を含み、自転車や車椅子、自動二輪車両に搭乗した人を含んでもよい。以下では、交通参加者が歩行者であるものとして説明する。道路構造物には、例えば、道路標識や交通信号機、踏切、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス等が含まれる。また、道路構造物には、例えば、路面に描画または貼付された道路区画線や横断歩道、自転車横断帯、一時停止線等の路面標識が含まれてもよい。また、物体には、道路上の落下物(例えば、他車両の積み荷や道路周辺に設置されていた看板)等の障害物が含まれてよい。物体認識装置16は、認識結果を制御装置100に出力する。なお、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま制御装置100に出力してよい。この場合、制御装置100は、物体認識装置16の機能を有していてもよい。
【0021】
車両センサ40は、例えば、接触センサ42を備える。接触センサ42は、車両Mと物体との接触を検知するセンサである。接触センサ42は、例えば、車体の前方、後方、または側方の任意の位置に複数設けられる。接触センサ42は、車体への荷重を検出し、検出した荷重が所定値以上である場合に、車両Mと物体とが接触したことを検知してもよい。
【0022】
また、車両センサ40は、接触センサ42に加えて、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、車両Mの重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含んでいてもよい。また、車両センサ40は、車両Mの位置を検出する位置センサを含んでいてもよい。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。車両センサ40は、各種センサによる検出結果を制御装置100に出力する。
【0023】
エアバッグ装置50は、車両Mと接触した物体(例えば、歩行者)の負荷を軽減させる車外用エアバッグ装置である。エアバッグ装置50の詳細については、後述する。
【0024】
運転操作子80は、例えば、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0025】
制御装置100は、例えば、認識部110と、接触判定部120と、指標値導出部130と、エアバッグ制御部140と、運転制御部150と、記憶部160とを備える。認識部110と、指標値導出部130と、エアバッグ制御部140と、運転制御部150とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置100のHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0026】
記憶部160は、上記の各種記憶装置、或いはSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部160には、例えば、本実施形態におけるエアバッグ制御および運転制御等の各種制御を実行するために必要な情報、プログラム、その他の各種情報等が格納される。
【0027】
認識部110は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、車両Mの周辺状況を認識する。車両Mの周辺とは、例えば、車両Mを中心とした所定距離以内の範囲である。例えば、認識部110は、車両Mの周辺に存在する物体の位置、および速度、加速度、移動方向等の状態を認識する。車両Mの周辺とは、車両Mを中心とした所定距離以内の範囲である。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、例えば、物体が他車両等の移動体である場合、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0028】
また、認識部110は、例えば、カメラ10の撮像画像に含まれる物体の形状、輪郭、大きさ、色等の特徴情報に基づいて、物体の種類(具体的には、物体が歩行者であるか否か)を認識してもよい。
【0029】
接触判定部120は、認識部110の認識結果に基づいて、車両Mと物体とが接触するか否かを判定する。例えば、接触判定部120は、車両Mの位置および速度に基づく将来の走行予測軌道と、物体の位置および速度に基づく将来の予測軌道とに基づいて、車両Mと物体とが接触するか否かを判定する。また、接触判定部120は、接触センサ42の検出結果等に基づき、車両Mと物体とが接触したか否かを判定してもよく、加速度センサにより検出された車両Mの加速度の変化量に基づいて車両Mと物体とが接触するか否かを判定してもよい。
【0030】
指標値導出部130は、接触判定部120により車両Mと物体とが接触する(または接触した)と判定された場合であって、且つ物体が歩行者である場合に、歩行者と車両Mとの車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する。
【0031】
エアバッグ制御部140は、接触判定部120により車両Mと物体とが接触すると判定された場合に、エアバッグ装置50の動作を制御する。また、エアバッグ制御部140は、歩行者と車両Mとが接触する場合に、指標値導出部130により取得される車両Mの接触位置に基づいて、エアバッグ装置50の動作を制御する。
【0032】
運転制御部150は、車両Mの乗員の操作に依らず車両Mの操舵または加減速のうち、一方または双方を制御する運転制御を実行する。例えば、運転制御部150は、認識部110により認識された結果に基づいて、ADAS(Advanced Driver Assistance System)機能として、ACC(Adaptive Cruise Control System)やLKAS(Lane Keeping Assist System)等の運転制御を実行する。
【0033】
また、運転制御部150は、例えば、車両Mと歩行者とが接触と判定された場合に、接触判定部120により導出された指標値および指標値導出部130により取得された接触位置に基づいて、車両Mの乗員の操作に依らず車両Mの操舵または加減速のうち、少なくとも車両Mの操舵を制御する。接触判定部120、指標値導出部130、エアバッグ制御部140、および運転制御部150の機能の詳細については、後述する。
【0034】
走行駆動力出力装置200は、車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、運転制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0035】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、運転制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、運転制御部150から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0036】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、運転制御部150から入力される情報、或いは運転操作子80のステアリングホイール82から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0037】
[エアバッグ装置の構造]
次に、実施形態に係るエアバッグ装置50の構造について説明する。なお、以下ではエアバッグが車体の前方部で膨張展開する車外用エアバッグ装置であるものとして説明する。図2は、実施形態に係るエアバッグ装置50の外観斜視図である。図3は、実施形態に係る第1チャンバ51の膨張状態を示す断面模式図である。図4は、実施形態に係る第2チャンバ52および第3チャンバ53の膨張状態を示す断面模式図である。図3および図4は、xy平面における断面模式図である。また、図3および図4に示す「×」は、結合部分を示している。
【0038】
図2図4において、エアバッグ装置50は、例えば、車体の前頭部を覆うように膨張する第1チャンバ51と、車体のフード(ボンネットフード)HDの上方を覆うように膨張する第2チャンバ52と、第3チャンバ53とを備える。第1チャンバ51、第2チャンバ52、および第3チャンバ53は、「エアバッグ」の一例である。また、エアバッグ装置50は、第1ガス供給部54と、第2ガス供給部55と、連通部56と、を備える。エアバッグ装置50は、第1ガス供給部54や第2ガス供給部55に各チャンバにガスを供給させる。各チャンバは、供給されるガスの充填により膨張し、所定位置で所定形状に展開される。以下、チャンバが膨張によって所定形状に展開されることを「膨張展開」と称する場合があるものとする。エアバッグ装置50は、フードHDの内側、例えばエンジンルーム内に収納されている。
【0039】
第1チャンバ51は、膨張する前の状態において、折りたたまれた状態で車両MのフードHDの内側に収納されている。第1チャンバ51は、例えば基布を縫製して袋状に形成されている。第1チャンバ51は、高圧のガスを発生する第1ガス供給部54と接続されている。第1ガス供給部54は、例えば、インフレータを用いることができる。第1チャンバ51は、第1ガス供給部54からガスが充填されることにより、例えば第1チャンバ51が収容されるフードHDとバンパーとの隙間等から車両Mの前方(図中x軸方向)に向かって膨張し、所定の形状に展開される。
【0040】
第2チャンバ52は、第1チャンバ51と同様に、膨張する前の状態において、折りたたまれた状態でフードHDの内側に収納されている。また、第2チャンバ52は、第1チャンバ51と同様の基布を縫製して袋状に形成されている。第2チャンバ52は、第1チャンバ51と接続されて第1チャンバ51と一体的に形成されている。第2チャンバ52は、連通部56を通じて第1チャンバ51の内部と連通している。そのため、第2チャンバ52は、連通部56を通じて第1チャンバ51からガスが流入されることで、フードHDとバンパーとの隙間等からフードHD上方(図中z軸方向)に向かって膨張する。連通部56は、例えば車幅方向(図中y軸方向)に間隔をあけて複数設けられている。
【0041】
第3チャンバ53は、例えば、第1チャンバ51と第2チャンバ52との間に設けられている。例えば、第3チャンバ53は、第1チャンバ51内に収容され、連通部56を覆うように配置されている。第3チャンバ53は、第1チャンバ51と同様の基布を縫製して袋状に形成されている。第3チャンバ53は、第2ガス供給部55から供給されるガスによって膨張展開する。第2ガス供給部55は、例えば、MGG(Micro Gas Generator)等である。また、第3チャンバ53は、蓋体56b(図3参照)に対して仮縫いされていてもよい。また、第3チャンバ53は、リテーナー等の金属部品に取り付けられていてもよく、第1チャンバ51に内縫されていてもよい。
【0042】
第3チャンバ53は、第1チャンバ51内において、車体の前方に向かって膨張する。第3チャンバ53は、車体の前方方向とは反対側(連通部56側)には膨張しない。第3チャンバ53の膨張時の体積は、第1チャンバ51の膨張時の体積より小さい。
【0043】
第1ガス供給部54および第2ガス供給部55は、エアバッグ制御部140の制御によって、所定のタイミングでガスをチャンバに供給する。また、第1ガス供給部54および第2ガス供給部55は、エアバッグ制御部140の制御によって、供給するガスの量が調整されてもよい。
【0044】
連通部56は、例えば、開口部56aと、蓋体56bと、結合部材56cとを備える。連通部56は、第1チャンバ51の内部と第2チャンバ52の内部とを連通可能に構成されている。図3および図4の例において、開口部56aは、第1チャンバ51側に設けられ、第1チャンバ51の内部と第2チャンバ52の内部とを連通する。第2チャンバ52は、開口部56a全体を取り囲むように第1チャンバ51と接続される。なお、開口部56aは、第2チャンバ52側に設けられてもよく、この場合には、第1チャンバ51は、開口部56a全体を取り囲むように第2チャンバ52と接続される。
【0045】
蓋体56bは、開口部56aの全体を覆うものであり、蓋体56bの開閉によって、第1チャンバ51からのガスを第2チャンバ52側へ流入させたり、ガスの流入を抑制させたりする。蓋体56bは、例えば、図3および図4に示すように、第1蓋体56b-1と第2蓋体56b-2とを備える。例えば、第3チャンバ53が膨張する前の状態(図3に示す状態)の場合、第1蓋体56b-1および第2蓋体56b-2は、開口部56a全体を覆う閉塞状態となり、第1チャンバ51から第2チャンバ52へのガスの流入を抑制する。また、第3チャンバ53が膨張した状態(図4に示す状態)の場合、第1蓋体56b-1および第2蓋体56b-2は開口部56aを開放する開放状態となる。この状態において、第1チャンバ51のガスが、開口部56aから第2チャンバ52に流入される。
【0046】
結合部材56cは、第3チャンバ53が膨張する前の状態において、一端が第3チャンバ53に接続され、他端が蓋体56bに接続されることで、第3チャンバ53と蓋体56bとを結合する。結合部材56cは、第1蓋体56b-1と、第2蓋体56b-2とが重なり合う部分に接続される。結合部材56cは、図4に示すように第3チャンバ53が膨張すると、第3チャンバ53との接続部分が引っ張られて切断される。また、結合部材56cは、第3チャンバ53の膨張時に予め設けられた電動カッターが作動することで切断されてもよい。結合部材56cが切断されることで第1蓋体56b-1および第2蓋体56b-2が開放状態になる。
【0047】
上述したエアバッグ装置50の構造により、第1チャンバ51および第2チャンバ52を同時(誤差範囲を含む)に膨張展開させたり、第2チャンバ52を第1チャンバ51の膨張タイミングよりも遅延させることができる。
【0048】
なお、エアバッグ装置50は、上述した構成に加えて、ポップアップフードシステム(以下、PUHシステムと称する)を備えていてもよい。PUHシステムは、車両Mと物体(例えば、歩行者)とが接触する場合に、フードHDを上方に持ち上げる機構を備える。これにより、車両Mに搭載されたエンジン等との間に空間を設け、歩行者の頭部等に与える負荷(衝撃等)を軽減させることができる。PUHシステムは、例えば、エアバッグ制御部140の制御によって作動する。
【0049】
[接触判定部120、指標値導出部130]
次に、接触判定部120および指標値導出部130の機能の詳細について説明する。以下では、車両Mの進行方向に存在する物体が歩行者であるものとして説明する。図5は、接触判定部120および指標値導出部130について説明するための図である。図5の例において、車両Mは、図中X軸方向に延伸する車線L1を速度VMで進行方向に走行しているものとする。また、車両Mの進行方向には歩行者P1が存在しているものとする。歩行者P1は、道路区画線RLから道路区画線LL(道路幅方向、-Y軸方向)に向かって速度VP1で歩行(車線L1を横断歩行)しているものとする。なお、図5は、例えばカメラ10によって撮像された三次元画像をXY平面座標に変換した図(トップビュー画像の図)を示している。
【0050】
例えば、接触判定部120は、時系列における車両Mの位置および速度VMに基づいて、車両Mの速度VMおよび操舵角が一定であると仮定した場合の車両Mの将来の走行予測軌道を設定する。図5の例では、車両Mの左右端から車両Mの中心軸方向で、且つ車両Mの前方に延出させた二本の仮想線VL11およびVL12で挟まれた領域AR1を走行予測軌道として設定されている。車両Mの左右端の距離は、例えば車幅αに相当する。走行予測軌道は、例えば操舵角等を考慮して曲がりを持って設定されてもよい。また、接触判定部120は、時系列における歩行者P1の位置および速度VP1に基づいて、速度VP1および移動方向が一定であると仮定した場合の歩行者P1の将来の予測軌道を導出する。そして、接触判定部120は、歩行者P1が存在する位置(X軸上の位置)に車両Mが到達すると予測される時刻において、歩行者P1の位置が領域AR1内である場合に、車両Mと歩行者P1とが接触すると判定し、歩行者P1の位置が領域AR1内でない場合に、車両Mと歩行者P1とが接触しないと判定する。
【0051】
また、接触判定部120は、接触センサ42により所定値以上の荷重が検出された場合に、車両Mと歩行者P1とが接触したと判定してもよく、加速度センサにより所定量以上の減速量が検出された場合に車両Mと歩行者P1とが接触したと判定してもよい。
【0052】
指標値導出部130は、接触判定部120により車両Mと歩行者P1とが接触する(接触した)と判定された場合に、歩行者P1と車両Mとの車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する。指標値とは、例えば、ラップ量またはラップ率である。例えば、指標値導出部130は、車両Mが歩行者P1の位置に到達すると予測される時刻での歩行者P1の領域の左右端(横幅)から車両方向(車幅方向に垂直な方向)に延伸させた仮想線VL21およびVL22とで挟まれる領域AR2を設定する。そして、接触判定部120は、領域AR1と領域AR2との車幅方向における重なり量(図5の例では、仮想線VL12とVL22との車幅方向の距離)をラップ量βとして導出する。また、指標値導出部130は、ラップ量βを車幅αで除算した値に100を乗じた値((β/α)×100)をラップ率[%]として導出する。
【0053】
また、指標値導出部130は、ラップ量またはラップ率に基づいて歩行者P1と接触する車両Mの位置を推定してもよい。例えば、指標値導出部130は、ラップ量が第1閾値未満である場合に、歩行者P1が車両Mの側部で接触すると推定し、ラップ量が第1閾値以上である場合に、歩行者P1が車両Mの中央で接触すると推定する。また、指標値導出部130は、ラップ率が第2閾値未満である場合に、歩行者P1が車両Mの側部で接触すると推定し、ラップ率が第2閾値以上である場合に、歩行者P1が車両Mの中央で接触すると推定する。また、指標値導出部130は、複数の接触センサ42の設置位置と各接触センサ42の荷重分布に基づいて歩行者P1と接触した車両Mの位置を検出してもよい。
【0054】
[エアバッグ制御部]
次に、エアバッグ制御部140の機能の詳細について説明する。エアバッグ制御部140は、接触判定部120により車両Mと物体とが接触すると判定された場合に、エアバッグ装置50を作動させる。この場合、エアバッグ制御部140は、例えば、車両Mと物体とが接触すると予測される時間(TTC;Time-To-Collision)を導出し、導出した時間が所定時間未満である場合にエアバッグ装置50を作動させる。TTCとは、例えば、車両Mと物体との距離を相対速度(接近する側に限定する)で除算した値である。図5の例において、エアバッグ制御部140は、車両Mと歩行者P1との距離を、両者が接近する側の相対速度(VM)を除算してTTCを導出する。また、エアバッグ制御部140は、例えば、車両Mと接触する物体の種類、大きさ、車両Mや物体の速度等に基づいて、第1ガス供給部54および第2ガス供給部55から供給されるガスの量を調整してもよい。
【0055】
また、エアバッグ制御部140は、エアバッグ装置50を作動させる場合に、車両Mが物体と接触すると判定された場合であって、且つ物体が歩行者である場合、ラップ量やラップ率等の指標値に基づいてエアバッグ(第1チャンバ51、第2チャンバ52、第3チャンバ53)を膨張させるタイミング(以下、膨張タイミングと称する)を制御する。例えば、エアバッグ制御部140は、指標値が閾値未満である場合に、少なくともフードHD上に膨張展開する第2チャンバ52の膨張タイミングを、指標値が閾値以上である場合に比して遅延させる。また、エアバッグ制御部140は、指標値が閾値未満である場合に、少なくともフードHD上に膨張展開する第2チャンバ52の膨張タイミングを、第1チャンバの膨張タイミングよりも遅延させる。
【0056】
また、エアバッグ制御部140は、上記の条件以外の場合に第1チャンバ51と第2チャンバ52とを同じタイミングで膨張させる。上記の条件以外の場合とは、例えば、車両Mと接触すると判定された物体が歩行者(交通参加者を含む)でない場合、または、上記物体が歩行者であるが指標値が閾値以上である場合等である。
【0057】
[第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させる場合のエアバッグ装置50の動作]
第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させる場合のエアバッグ装置50の動作について説明する。まず、エアバッグ制御部140は、第1ガス供給部54から第1チャンバ51にガスを供給させる。これにより、第1チャンバ51は、図3に示すように車両Mの前方に向かって膨張する。このとき、結合部材56cによって蓋体56bの閉塞状態は保持されるため、第2チャンバ52の膨張は抑制される。
【0058】
第1チャンバ51が膨張した後、第2ガス供給部55から第3チャンバ53にガスが充填される。第3チャンバ53が膨張すると、第3チャンバ53と蓋体56bとを結合する結合部材56cは、引っ張られて所定の張力に達した時点で切断される。
【0059】
結合部材56cが切断されると、蓋体56bが開放状態となる。これにより、第1チャンバ51に充填されたガスが、連通部56の開口部56aを通じて、第2チャンバ52に流入する。そして、図4に示すように第2チャンバ52が膨張する。このように、第2チャンバ52は、第1チャンバ51よりも遅れて(所定の時間差を有して順に)膨張展開される。
【0060】
なお、エアバッグ制御部140は、上述した連通部56による膨張タイミングの制御に代えて(または加えて)、第1ガス供給部54から供給されるガスの量を制御して、第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させてもよい。供給されるガスの量を制御することで、遅延時間を調整することができる。
【0061】
[第1チャンバ51と第2チャンバ52とを同時に膨張させる場合のエアバッグ装置50の動作]
次に、第1チャンバ51と第2チャンバ52とを同時に膨張させる場合のエアバッグ装置50の動作について説明する。エアバッグ制御部140は、第1ガス供給部54から第1チャンバ51にガスを供給させると共に、第2ガス供給部55から第3チャンバ53にガスを供給させる。これにより、第1チャンバ51は、車両Mの前方に向かって膨張すると共に、第3チャンバ53も第1チャンバ51の膨張の開始と同じタイミングで膨張を開始する。第3チャンバ53が膨張展開すると、結合部材56cが切断され、蓋体56bが開放状態となる。これにより、第1チャンバ51に充填されたガスが、連通部56の開口部56aを通じて、第2チャンバ52に流入する。これにより、第1チャンバ51と、第2チャンバ52とは、時間差を有することなく(同じタイミングで)膨張展開される。
【0062】
上述したエアバッグの膨張制御を行うことで、歩行者P1をより安全な位置で車両Mと接触させることができる。図6は、エアバッグの膨張タイミングによる歩行者P1の位置の違いについて説明するための図である。図6の例では、車両Mの車体前方に膨張展開される第1チャンバ51と、フードHD上に膨張展開される第2チャンバ52とを概略的に示している。また、図6の例では、歩行者P1が車両Mの前方側部に接触した場合(車両Mと歩行者P1とのラップ量(またはラップ率)が閾値未満である場合)において、第1チャンバ51と第2チャンバ52とが同時に膨張した場合(図中の同時膨張)と、少なくとも第2チャンバ52を第1チャンバ51よりも膨張タイミングを遅延させた場合(図中、遅延膨張)とにおける接触後の歩行者P1の位置を示している。
【0063】
図6に示すように、車両Mと歩行者P1とが、車両Mの前方側部で接触するような状況下において、仮に第1チャンバ51と第2チャンバ52とを同時に膨張させた場合、歩行者P1は、第1チャンバ51および第2チャンバ52のガス圧による反動(反力)や第2チャンバ52上の滑り等により、車両Mの窓柱の一つであるAピラーAPL付近にまで到達する可能性がある。その結果、歩行者P1の頭部がAピラーAPLに接触する可能性があり、歩行者P1の接触時の負荷(衝撃リスク)が大きくなる可能性が生じる。
【0064】
そこで、エアバッグ制御部140は、第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させることで、第2チャンバ52のガス圧により反動や第2チャンバ52上での滑りによる歩行者P1の車両後方側への移動量を減らし、歩行者P1がAピラーAPLに到達することを抑制することができる。図6の例では、歩行者P1の車両後方への移動距離が、第2チャンバ52が膨張展開された場合に比して距離D1だけ短くなっていることを示している。なお、第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させた場合でも、接触時に第1チャンバ51は膨張展開されているため歩行者P1の負荷を軽減することができる。また、第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させた場合、歩行者P1はフードHDに直接接触するか、ガス圧が小さい第2チャンバ52と接触することになるが、フードHDは、車体内部のエンジン等を外部からの衝撃から保護するために衝撃吸収構造等を有しているため、Aピラーよりも歩行者P1への負荷を軽減させることができる。また、エアバッグ装置50にPUHシステムを備えている場合には、車両Mと歩行者P1とが接触する場合、エアバッグ制御部140は、第1チャンバ51を膨張させるタイミングでPUHシステムを作動させることで、歩行者P1への負荷をより軽減させることができる。
【0065】
[運転制御部]
次に、運転制御部150の機能の詳細について説明する。例えば、運転制御部150は、接触判定部120により車両Mと歩行者P1とが接触すると判定された場合であって、且つ、指標値導出部130により導出された指標値が閾値未満である場合に、車両Mの操舵および加減速のうち、少なくとも操舵を制御する。図7は、運転制御部150の運転制御による車両Mの挙動について説明するための図である。図7の例では、時刻t1と、時刻t1よりも遅い時刻t2における車両Mの挙動を示している。車両Mは、車線L1を速度VMで走行し、車両Mの進行方向に歩行者P1が存在しているものとする。また、時刻t1において接触判定部120により車両Mと歩行者P1とが接触すると判定されているものとする。
【0066】
時刻t1において、運転制御部150は、車両Mと歩行者P1とが接触する位置が、車両Mの中央に寄るように車両Mの操舵を制御する。この場合、運転制御部150は、車両Mが歩行者P1側を向くように操舵を制御する。図7の例では、時刻t1において車両Mの現在の進行方向(図中、X軸方向)を基準として、歩行者P1側に角度θ1だけ傾ける操舵制御を行う。角度θ1は、固定角度でもよく、ラップ量やラップ率、車両Mの速度VM、道路形状等に応じて変更可能な可変角度であってもよい。また、運転制御部150は、上述した操舵制御に加えて、車両Mを減速させる速度制御を行ってもよい。上述した運転制御は、例えば、接触判定部120により車両Mと歩行者P1とが接触すると判定されたタイミングで実行されてもよく、エアバッグ制御部140により第1チャンバ51の膨張を開始させるタイミングで実行されてもよい。
【0067】
これにより、時刻t2において、歩行者P1が車両Mと接触する場合に、歩行者P1の位置を車両Mの中央側に寄せることができる。したがって、歩行者P1の頭部等がAピラーAPLに接触することを、より確実に抑制することができる。また、より確実に歩行者P1をフードHD上で受け止めることができるため、道路上に倒れるよりも歩行者P1の負荷を軽減させることができる。更に、仮に歩行者P1の頭部がフロントウインドシールドに到達した場合であってもAピラーAPLよりも低剛性であるため歩行者P1の負荷を軽減させることができる。
【0068】
[処理フロー]
図8は、制御装置100によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下では、制御装置100が実行する処理のうち、車両Mが物体との接触判定、エアバッグ制御、および運転制御処理を中心として説明する。本フローチャートの処理は、所定の周期で繰り返し実行されてよい。
【0069】
図8の例において、認識部110は、車両Mの周辺状況を認識する(ステップS100)。次に、接触判定部120は、車両Mと周辺に存在する物体との接触判定を行い(ステップS102)、車両Mが物体と接触する可能性があるか否かを判定する(ステップS104)。接触する可能性があると判定した場合、接触判定部120は、接触する可能性があると判定した物体が、交通参加者であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0070】
接触する可能性があると判定した物体が交通参加者であると判定された場合、指標値導出部130は、車両Mと物体との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する(ステップS108)。次に、エアバッグ制御部140は、指標値が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS110)。指標値が閾値未満であると判定した場合、エアバッグ制御部140は、エアバッグ装置50を作動させる。この場合、エアバッグ制御部140は、第1チャンバ51および第2チャンバ52のうち、少なくともフードHD上に膨張展開される第2チャンバ52の膨張タイミングを指標値が閾値以上である場合に比して遅延させる(ステップS112)。なお、ステップS112の処理では、少なくともフードHD上に膨張展開される第2チャンバ52の膨張タイミングを第1チャンバ51の膨張タイミングよりも遅延させてもよい。次に、運転制御部150は、車両Mを交通参加者側に向けて、車両Mのより中央側で交通参加者と接触するように操舵制御を行う(ステップS114)。
【0071】
また、ステップS106の処理において、物体が交通参加者でないと判定された場合、またはステップS110の処理において、指標値が閾値未満ではない(閾値以上である)と判定された場合、エアバッグ制御部140は、エアバッグ装置50を作動させ、第1チャンバ51と第2チャンバ52を同時に膨張させる(ステップS116)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。また、ステップS104の処理において、物体と接触する可能性がないと判定された場合、本フローチャートの処理は終了する。なお、実施形態では、図8に示す処理のうちステップS114の処理は省略されてもよい。
【0072】
<変形例>
実施形態のエアバッグ装置50は、上述した車外用エアバッグ装置に加えて、車両Mが物体と接触した場合に車室内の乗員の頭部または上半身を覆うように袋体を膨張させて、乗員の負荷を軽減させる室内用エアバッグ装置が含まれてもよい。室内用エアバッグ装置は、例えば、ステアリングホイールや車両用シート内に収納されている。エアバッグ制御部140は、車両Mと物体とが接触する判定され、且つTTCが所定時間未満である場合、または車両Mと物体とが接触した場合に、室内用エアバッグ装置を作動させる。また、実施形態のエアバッグ装置50は、第1チャンバ51や第3チャンバ53がない構成であってもよい。
【0073】
以上説明した実施形態によれば、制御装置100において、ガス供給部(例えば、第1ガス供給部54)から供給されるガスが充填されることで、少なくとも車両Mのフード上に膨張するエアバッグ(例えば、第2チャンバ52)と、車両Mの周辺状況を認識する認識部110と、認識部110により認識された交通参加者が車両Mと接触する場合の交通参加者と車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出する指標値導出部130と、指標値導出部130により導出された指標値に基づいて、エアバッグを膨張させるタイミングを制御するエアバッグ制御部140とを備えることにより、車両Mと接触する交通参加者の負荷を、より軽減させることができる。
【0074】
具体的には、実施形態によれば、交通参加者が車体の前方側部で接触すると判定した場合に、少なくともフード上に膨張する第2チャンバ52の膨張タイミングを遅延させることで、第2チャンバ52のガス圧による反動(反力)によって交通参加者が車両Mの後方側に移動してAピラー等の高剛性部位と接触することを回避することができる。また、実施形態によれば、交通参加者が車体の前方側部付近で接触すると判定した場合に、車体を交通参加者側に向ける操舵制御を行うことにより、交通参加者がAピラーと接触する可能性を低減させることができると共に、交通参加者をフードHDで受け止めることで、交通参加者の接触による負荷を軽減させることができる。
【0075】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の周辺状況を認識し、
認識した前記車両の周辺の交通参加者が前記車両と接触する場合の前記交通参加者と前記車両との車幅方向の重なり度合を示す指標値を導出し、
導出した前記指標値に基づいて、ガス供給部から供給されるガスが充填されることで、少なくとも前記車両のフード上に膨張するエアバッグを膨張させるタイミングを制御する、
ように構成されている、制御装置。
【0076】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…車両システム、10…カメラ、12…レーダ装置、14…LIDAR、16…物体認識装置、40…車両センサ、42…接触センサ、50…エアバッグ装置、51…第1チャンバ、52…第2チャンバ、53…第3チャンバ、54…第1ガス供給部、55…第2ガス供給部、56…連通部、80…運転操作子、100…制御装置、110…認識部、120…接触判定部、130…指標値導出部、140…エアバッグ制御部、150…運転制御部、160…記憶部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8