(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、溶接方法、給湯器の製造方法、圧縮機の製造方法、及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240927BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240927BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
B23K26/21 P
B23K26/00 M
B23K26/064 K
B23K26/064 A
(21)【出願番号】P 2021069625
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】神谷 宏文
(72)【発明者】
【氏名】石井 智洋
(72)【発明者】
【氏名】物種 武士
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6592547(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/180960(WO,A1)
【文献】特開2005-028428(JP,A)
【文献】特開2019-098373(JP,A)
【文献】特開昭59-101291(JP,A)
【文献】特開昭59-101290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/00
B23K 26/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から出射されるレーザ光を伝送する伝送ケーブルと、
前記伝送ケーブルが接続される接続口と前記レーザ発振器から出射される前記レーザ光を被加工物へ向けて照射するための射出口とが形成されている光学ヘッドとを備え、
前記光学ヘッドは、
前記伝送ケーブルから出射されたレーザ光をコリメート光に変換するコリメートレンズと、
前記コリメートレンズによって得られた前記コリメート光を断面の形状が円環であるレーザ光に変換するアキシコンレンズと、
前記アキシコンレンズによって断面の形状が円環に変換されたレーザ光を断面の形状を維持したまま平行光に変換する光学レンズと、
前記伝送ケーブルから出射されたレーザ光が前記コリメートレンズ、前記アキシコンレンズ及び前記光学レンズを通る光路と、
前記コリメートレンズと前記アキシコンレンズとの間に位置し、前記コリメートレンズによって得られた前記コリメート光の光軸の位置を前記光軸に直交する平面において調整する機能と前記アキシコンレンズの中心軸の位置を前記中心軸に直交する平面において調整する機能とを有するスライド機構とを有する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記光学ヘッドは、前記アキシコンレンズ、前記光学レンズ及び前記射出口の位置の関係を保持したまま、前記コリメートレンズによってコリメート光に変換されたレーザ光の光軸を任意の角度に変更する機能を有する回転機構を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
演算回路を更に備え、
前記光学ヘッドは、
前記アキシコンレンズによって断面の形状が円環に変換されたレーザ光の一部を分岐させる分光レンズと、
前記分光レンズによって分岐されたレーザ光を受光するフォトセンサとを更に有し、
前記演算回路は、前記フォトセンサの出力信号をもとに前記被加工物に照射されるレーザ光のエネルギ密度を推定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
円筒又は開口円の開口部が形成された部材の前記開口部に前記開口部の内径よりも小さな外径を持つ円筒部材を挿入する工程と、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置によってレーザを照射する工程とを
含むことを特徴とする溶接方法。
【請求項5】
円筒部材の開口部に椀状の部材を嵌め合わせる工程と、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置によってレーザを照射する工程とを
含むことを特徴とする溶接方法。
【請求項6】
貯湯タンクと、配管と前記貯湯タンクとを接続するための配管接手部品とを準備する工程と、
請求項4に記載の溶接方法により前記配管接手部品を前記貯湯タンクに接合する工程とを
含むことを特徴とする給湯器の製造方法。
【請求項7】
形状が円筒形状である圧力容器の側面部材と、前記側面部材の両端の開口部を覆うための形状が椀形状である上下部材とを準備する工程と、
請求項5に記載の溶接方法により前記側面部材と前記上下部材とを接合する工程とを
含むことを特徴とする圧縮機の製造方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置を用いてレーザ加工を行う
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置、溶接方法、給湯器の製造方法、圧縮機の製造方法、及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば溶接、切断、又は穴あけという加工に用いられる従来のレーザ加工装置は、レーザ発振器と、レーザ光を伝送するケーブルと、光学ヘッドとを有する。一般的に、レーザ発振器から射出されて光学ヘッドを介して被加工物へ照射されるレーザ光は、シングルモード又はマルチモードといったエネルギ密度の分布の違いがあるものの、マクロ的には点状の光である。レーザ加工装置を用いて加工を行う場合、光学ヘッドを固定して被加工物を動かす方法、被加工物を固定して光学ヘッドを走査する方法、光学ヘッドにガルバノスキャナを搭載してレーザ光を走査する方法、及び、光学ヘッドの走査とガルバノスキャナによるレーザ光の走査とを併用する方法が考えられる。
【0003】
特許文献1は、ガルバノスキャナが搭載された光学ヘッドを多軸ロボットの先端に固定し、多軸ロボット及びガルバノスキャナを用いてレーザ光を走査する方法を開示している。
【0004】
レーザ発振器の一つであって、レーザ光の高出力化を見込むことができるファイバレーザ装置は、複数の励起レーザダイオードを有し、各励起レーザダイオードで生成された励起光を集めて増幅してレーザ光として射出する。ファイバレーザ装置は複数の励起光を集約するため、ファイバレーザ装置から射出されるレーザ光はマルチモードのレーザ光であり、ファイバレーザ装置から射出されるレーザ光のエネルギ密度の分布はミクロ的には不均一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザ加工装置は、円環状の軌跡を加工する場合、軌跡に沿ってレーザ光を走査する必要がある。そのため、従来のレーザ加工装置には、軌跡に沿ってレーザ光を走査するために時間を要するという問題がある。加えて、ガルバノスキャナ又は多軸ロボットのようなレーザ光を走査するための駆動部品を要するという問題もある。さらに、マルチモードのレーザ光はエネルギ密度の分布が不均一であるという問題もある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、断面の形状が円環であるレーザ光を生成し、被加工物の円環状の軌跡の全域を同時に一括して加工し、かつ、レーザ発振器から射出されるレーザ光のエネルギ密度の分布が不均一であっても、被加工物の円環状の加工対象範囲の全域に渡ってエネルギ密度の不均一化が抑制されたレーザ光を照射するレーザ加工装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るレーザ加工装置は、レーザ発振器から出射されるレーザ光を伝送する伝送ケーブルと、伝送ケーブルが接続される接続口とレーザ発振器から出射されるレーザ光を被加工物へ向けて照射するための射出口とが形成されている光学ヘッドとを有する。光学ヘッドは、伝送ケーブルから出射されたレーザ光をコリメート光に変換するコリメートレンズと、コリメートレンズによって得られたコリメート光を断面の形状が円環であるレーザ光に変換するアキシコンレンズと、アキシコンレンズによって断面の形状が円環に変換されたレーザ光を断面の形状を維持したまま平行光に変換する光学レンズと、伝送ケーブルから出射されたレーザ光がコリメートレンズ、アキシコンレンズ及び光学レンズを通る光路と、コリメートレンズとアキシコンレンズとの間に位置し、コリメートレンズによって得られたコリメート光の光軸の位置を光軸に直交する平面において調整する機能とアキシコンレンズの中心軸の位置を中心軸に直交する平面において調整する機能とを有するスライド機構とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るレーザ加工装置は、断面の形状が円環であるレーザ光を生成し、被加工物の円環状の軌跡の全域を同時に一括して加工し、かつ、レーザ発振器から射出されるレーザ光のエネルギ密度の分布が不均一であっても、被加工物の円環状の加工対象範囲の全域に渡ってエネルギ密度の不均一化が抑制されたレーザ光を照射することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す概略図
【
図2】実施の形態1に係るレーザ加工装置が有する光学ヘッドの構成を示す概略図
【
図3】実施の形態1に係るレーザ加工装置の光学ヘッドが有するスライド機構の外観を示す三面図
【
図4】実施の形態1に係るレーザ加工装置の光学ヘッドが多軸ロボットに固定された様子を示す図
【
図7】実施の形態2に係るレーザ加工装置が有する光学ヘッドの構成の断面を示す概略図
【
図8】実施の形態2に係るレーザ加工装置が有する光学ヘッドを射出口から見た場合の平面図
【
図9】実施の形態3に係るレーザ加工装置の一部の構成を示す概略図
【
図19】実施の形態3に係るレーザ加工装置が有する演算回路がプロセッサによって実現される場合のプロセッサを示す図
【
図20】実施の形態3に係るレーザ加工装置が有する演算回路が処理回路によって実現される場合の処理回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施の形態に係るレーザ加工装置、溶接方法、給湯器の製造方法、圧縮機の製造方法、及びレーザ加工方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレーザ加工装置1の構成を示す概略図である。レーザ加工装置1は、レーザ加工に用いられる装置であって、レーザ光3を生成して出射するレーザ発振器2と、レーザ発振器2から出射されるレーザ光3を伝送する伝送ケーブル4と、光学ヘッド5と、光学ヘッド5を保持する固定治具6とを有する。
図1には、レーザ光3及び被加工物9も示されている。
【0013】
図2は、実施の形態1に係るレーザ加工装置1が有する光学ヘッド5の構成を示す概略図である。光学ヘッド5には、伝送ケーブル4が接続される接続口7と、レーザ発振器2から出射されるレーザ光3を被加工物9へ向けて照射するための射出口8とが形成されている。
図2には、レーザ光3及び伝送ケーブル4も示されている。
【0014】
光学ヘッド5は、光学ヘッド5の構成部品を保持すると共に固定する筐体10と、伝送ケーブル4から射出されたレーザ光3を任意の外径に拡張し、外径が拡張されたレーザ光3を平行状態に調整されたコリメート光11に変換するコリメートレンズ12と、コリメートレンズ12によって得られたコリメート光11を断面の形状が円環であるレーザ光3に変換するアキシコンレンズ13とを有する。
図2には、コリメート光11も示されている。
【0015】
光学ヘッド5は、アキシコンレンズ13によって断面の形状が円環に変換されたレーザ光3を断面の形状を維持したまま平行光に変換する光学レンズ14と、コリメートレンズ12とアキシコンレンズ13との間に位置するスライド機構48とを更に有する。スライド機構48は、コリメートレンズ12によって得られたコリメート光11の光軸の位置を当該光軸に直交する平面において調整する機能と、アキシコンレンズ13の中心軸の位置を当該中心軸に直交する平面において調整する機能とを有する。スライド機構48は、円環状のレーザ光3のエネルギ密度を均一にする機能を有する。光学ヘッド5は、伝送ケーブル4から出射されたレーザ光3がコリメートレンズ12、アキシコンレンズ13、光学レンズ14及びスライド機構48を通って被加工物9へ照射される光路15を更に有する。
【0016】
実施の形態1では、コリメートレンズ12は、1枚の平凹レンズ16と、1枚の平凸レンズ17とで構成されている。例えば光学ヘッド5の筐体10において、伝送ケーブル4の接続口7の側の筐体10の内側に設けられた平凹レンズ16の中心軸の方向と直交する端面を基準面として、平凹レンズ16の凹側を当該基準面に押し当て、レーザ光3の光路15になる光学ヘッド5の内側の側面にねじ山を設け、円筒の外側の側面にねじ山を設けたねじリング18を平凹レンズ16の中心軸と直交する平面側から、光学ヘッド5の内側の側面に回し入れ、平凹レンズ16の平面側へねじリング18を押し当てることで、平凹レンズ16の光軸の方向の位置を固定することができる。
【0017】
平凹レンズ16の外径の寸法が任意の精度内に収まるよう成形し、かつ、光学ヘッド5の内側の側面を、平凹レンズ16の外径の寸法の成形と同様に、任意の外径の寸法に収まるよう加工することで、光学ヘッド5の筐体10の内側の側面と、平凹レンズ16の外径の側面とで嵌め合いの関係を構築し、機械的に規制することによって、平凹レンズ16の側面の位置決めが行われている。
【0018】
平凹レンズ16を固定しているねじリング18をあらかじめ決められた高さの寸法及び公差で加工し、平凸レンズ17を光学ヘッド5の内側に配置し、平凹レンズ16の平面側をねじリング18に押し当て、さらに平凸レンズ17の凸面側から別のねじリング18を光学ヘッド5の内側に回し入れ、凸面に対して当該ねじリング18を押し当てることで平凸レンズ17の光軸の方向の位置を固定することができる。
【0019】
平凹レンズ16の外径の側面を位置決めする方法と同様に、光学ヘッド5の内側の側面と、平凸レンズ17の外径の側面とで嵌め合いの関係を構築することによって、平凸レンズ17の外径の側面の位置決めは機械的に規制されている。平凸レンズ17の光軸の方向の位置決めは、光学ヘッド5の内側の側面に平凸レンズ17の平面側の当てとなる凸部を設けることによって行われてもよい。この場合、平凸レンズ17を光学ヘッド5に配置することができるように、光学ヘッド5は、例えば平凸レンズ17の基準面又は凸部を分割する構造を有していてもよい。
【0020】
コリメートレンズ12は、2枚の平凸レンズ17を用い、2枚の平凸レンズ17の各々の平面側を向かい合わせて2枚の平凸レンズ17を配置することによって構成されてもよい。さらに言えば、コリメートレンズ12は、伝送ケーブル4から射出されたレーザ光3を、任意の外径に拡張し、平行状態に調整することが目的であり、この目的を達することができれば、コリメートレンズ12の製造方法は、上述の二つの例の限りではない。
【0021】
アキシコンレンズ13及び光学レンズ14の位置決め及び固定方法については、上述のコリメートレンズ12の位置決め及び固定方法を利用すればよい。
図2では、アキシコンレンズ13によって断面が円環に変換されたレーザ光3を平行光に変換する光学レンズ14は1個の凸レンズであるが、光学レンズ14は、被加工物9への照射距離に依存して、焦点距離が異なる複数個の光学レンズで構成されてもよい。
【0022】
コリメートレンズ12、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14の各々は、例えば合成石英ガラスによって形成される。光学ヘッド5の筐体10及びねじリング18の各々は、例えば表面処理及び熱処理が施されたアルミ材、鉄材又はステンレス材によって形成される。筐体10には、レーザ光3による蓄熱を除去する目的で、筐体10を水冷するための流路、又は放熱用のフィンが設けられてもよい。
【0023】
図2に示されている通り、平行光に変換された円環状のレーザ光3を光学ヘッド5の筐体10の内部から被加工物9へ照射させる際、光学レンズ14を保護することと、異物が光学ヘッド5の内部に流入することを防止することとを目的に、筐体10の射出口8に保護レンズ19が設けられている。保護レンズ19は、設けられなくてもよい。図示されていないが、スライド機構48とコリメートレンズ12との間と、スライド機構48とアキシコンレンズ13との間とに、レンズを保護することと、異物が光学ヘッド5の内部に流入することを防止することとを目的に、保護レンズが設けられてもよい。
【0024】
コリメートレンズ12とアキシコンレンズ13との間の光路15には、スライド機構48が配置されている。スライド機構48は、コリメートレンズ12及びアキシコンレンズ13の各々の中心軸に直交する仮想平面において、仮想平面の内部で直交する2軸の各方向に移動可能である。当該2軸は、X軸及びY軸である。
【0025】
図3は、実施の形態1に係るレーザ加工装置1の光学ヘッド5が有するスライド機構48の外観を示す三面図である。スライド機構48は、主に4枚の平板から構成されている。いずれの平板にも、レーザ光3の光軸と同じ方向に中心軸を持つ円形の開口が形成されている。説明の都合上、便宜的に4枚の平板はY軸上板20、Y軸下板21、X軸上板22及びX軸下板23である。
図3には、X軸及びY軸も示されている。
図3に示したX軸及びY軸は
図3右上の平面図に対応している。
【0026】
Y軸下板21及びX軸下板23には、各軸の方向に延びるレール24が設けられており、Y軸上板20及びX軸上板22には、レール24と嵌め合いの関係となる溝が設けられている。レール24と溝とが嵌り合うことで、Y軸上板20及びY軸下板21がY軸の方向に移動可能となり、X軸上板22及びX軸下板23がX軸の方向に移動可能となる。
【0027】
Y軸下板21及びX軸上板22は、複数のボルトで固定されている。Y軸下板21及びX軸下板23の側面には、ボルトを保持するためのリブ板25が固定されている。リブ板25は、X軸下板23及びY軸下板21と接しているリブ板25のベース面に座繰りを設け、リブ板25がX軸下板23及びY軸下板21にねじで止められることによって固定されている。リブ板25には、ボルトのねじ径に対応するねじ穴が加工されており、ねじ穴にボルトを回し入れることで、一つのボルトの軸の方向がX軸の方向に向き、別の一つのボルトの方向がY軸の方向に向く。
【0028】
X軸上板22及びY軸上板20の側面には、当て板50がねじで固定されている。当て板50には、ボルトのねじ径よりも大きな貫通孔が設けられており、リブ板25によって保持されたX軸の方向及びY軸の方向のボルトのねじ端部が当て板50の貫通孔を通っている。さらに、上述のボルトに溝を加工して、当て板50を挟むように止め輪26がボルトに取り付けられている。
【0029】
このような構成により、X軸の方向及びY軸の方向の各々で、上板と、上板に取り付けられた当て板50と、ボルトとの相対位置が固定されるため、例えばX軸の方向に配置されたボルトを回すことで、X軸上板22、Y軸下板21及びY軸上板20がX軸下板23に対して、X軸の方向に相対的に移動することができる。同様に、Y軸の方向に配置されたボルトを回すことで、Y軸下板21、X軸上板22及びX軸下板23が、Y軸上板20に対して、Y軸の方向に相対的に移動することができる。
【0030】
スライド機構48を構成する4枚の平板の各々には円形の開口27が形成されている。開口27の直径は、コリメートレンズ12によって平行光に変換されたレーザ光3がスライド機構48を構成する4枚の平板の各々に接触しないほど十分に大きい。スライド機構48を境に、筐体10の接続口7が位置する側を筐体上28とし、筐体10の射出口8が位置する側を筐体下29とする場合、筐体上28は、スライド機構48のY軸上板20にねじで固定されている。筐体下29は、スライド機構48のX軸下板23にねじで固定されている。
【0031】
光学ヘッド5を保持する固定治具6は、リニアガイドレールと、ボールねじと、ピニオンギヤと、ハンドルと、光学ヘッド5を含む構成部品を保持するベース材とを有する。被加工物9の表面に対するレーザ光3の集光位置は、被加工物9の表面から光学ヘッド5までの距離に対応して変化する。そこで、任意の加工条件に対応して被加工物9に対するレーザ光3の集光位置を変更することができるよう、固定治具6は、被加工物9の表面に対する光学ヘッド5の距離を変えることができる機能を有する。反対に、光学ヘッド5と被加工物9との距離が固定されるよう、固定治具6は簡素化されてもよい。
【0032】
図4は、実施の形態1に係るレーザ加工装置1の光学ヘッド5が多軸ロボット30に固定された様子を示す図である。例えば、光学ヘッド5は、
図4に示される通り、多軸ロボット30に固定される。光学ヘッド5を多軸ロボット30に固定し、多軸ロボット30を制御して動作させることで、レーザ加工装置1は、一つの被加工物9に対して複数個所の加工を行うことができる。複数の被加工物9が固定された場合、レーザ加工装置1は、複数の被加工物9の各々に対して加工を行うことができる。光学ヘッド5を移動することができれば、多軸ロボット以外の駆動方式および機構を用いてもよい。
【0033】
光学ヘッド5を固定治具6で保持し、被加工物9を固定させる固定部品である定盤又は架台に駆動モータを設けると共に、被加工物9を可動して搬送できる仕掛けを設け、被加工物9を動かしてもよい。光学ヘッド5の被加工物9へ照射するレーザ光3の出口の側には、被加工物9を加工する際に発生する火花、金属蒸気又は粉塵が光学レンズ14を含む光学ヘッド5の構成要素に付着することを回避する目的で、例えば工場エアーといった圧縮空気を用いたエアナイフの吐出部品が設けられてもよい。
【0034】
レーザ加工装置1は、
図1に示す構成品の他に、被加工物9を水平に配置して固定することが可能な定盤と、光学ヘッド5を保持する固定治具6の設置面となる架台と、レーザ発振器2を冷却するためのチラーと、作業者の安全を確保するために光学ヘッド5から照射されたレーザ光3を外周から遮蔽する安全柵と、レーザ光3で被加工物9を加工する際に発生する火花、金属蒸気及び粉塵の一部若しくは全部を吸気して排気する排気装置とのうちの一部又は全部を有してもよい。上述の定盤と架台とは、一つの構成部品によって実現されてもよい。
【0035】
実施の形態1に係るレーザ加工装置1により、レーザ発振器2から射出されたレーザ光3は光学ヘッド5を通ることでコリメート光11になり、レーザ光3の断面の形状はアキシコンレンズ13によって円環状になり、最後に光学レンズ14によって形状が円環状でかつ平行なレーザ光3に変換される。そのため、レーザ加工装置1は、被加工物9の円環形状部に対して同時に一括して溶接又は除去といった加工を行うことができる。加えて、スライド機構48に設けられたボルトが回されることで、レーザ加工装置1は、レーザ光3の光軸に対して直交する仮想平面内で筐体上28と筐体下29との相対位置を変えることができる。
【0036】
つまり、レーザ加工装置1は、コリメートレンズ12と、アキシコンレンズ13と、円環状に変換されたレーザ光3を平行光に変換する光学レンズ14との相対位置を、筐体上28及び筐体下29と同様に、レーザ光3の光軸に対して直交する仮想平面内で変えることができる。すなわち、レーザ加工装置1は、コリメート光11がアキシコンレンズ13に入射する位置を変えることができるため、マルチモードのようなエネルギ密度の分布が不均一なレーザ光3であっても、アキシコンレンズ13を通過して光学レンズ14によって平行光に変換された、被加工物9に照射される円環状のレーザ光3について、円環の全周に渡ってエネルギ密度の不均一化を抑制するよう分布を均一に調整することができる。
【0037】
したがって、実施の形態1に係るレーザ加工装置1は、断面の形状が円環であるレーザ光3を生成し、被加工物9の円環状の軌跡の全域を同時に一括して加工し、かつ、レーザ発振器2から射出されるレーザ光3のエネルギ密度の分布が不均一であっても、被加工物9の円環状の加工対象範囲の全域に渡ってエネルギ密度の不均一化が抑制されたレーザ光3を照射することができる。
【0038】
図5は、実施の形態1に係るヘリ継手33を示す図である。
図5に示されている形状のヘリ継手33を溶接する場合を考える。
図5は、円形状の開口部と開口部の周囲に立ち上がりが形成された、いわゆるバーリング加工31が施された平板と、円筒管32とで構成されているヘリ継手33を示している。バーリング加工31が施された端面と円筒管32の端面とが面一に配置されて、バーリング加工31が施された平板と円筒管32とが固定されている。
図6は、実施の形態1に係る溶接形状34を示す図である。
図6には、レーザ光3も示されている。
【0039】
レーザ加工装置1を用いてヘリ継手33を溶接する際、光学ヘッド5のスライド機構48がコリメート光11の位置とアキシコンレンズ13の位置とを調整しない場合、言い換えると、光学ヘッド5から射出される円環状のレーザ光3の全周に渡ってエネルギ密度の分布が不均一なままヘリ継手33を溶接しようとする場合、ヘリ継手33の円周において、ヘリ継手33の溶融に偏りが生じ、接手を同時に一括して加工することができたとしても、ヘリ継手33の溶接部の形状は円周に渡って不均一な形状となる。
【0040】
反対に、コリメート光11の位置とアキシコンレンズ13の位置とを調整し、光学ヘッド5から射出される円環状のレーザ光3の全周に渡ってエネルギ密度の分布の不均一化を抑制するよう調整して
図5のヘリ継手33を溶接すると、ヘリ継手33を同時に一括して、かつ、溶融の偏りを抑制して、
図6に示されるような円周に渡って形状の偏りが抑制された溶接形状34を得ることができる。
【0041】
スライド機構48は、スライド動作を実現するため、ボルトに代わってマイクロメータが取り付けられたものであってもよい。スライド機構48を構成するY軸上板20及びX軸上板22の内部にばねを設け、当て板50の穴と止め輪26とを廃し、ボルト又はマイクロメータが当て板50から離れる方向に動作する場合、ばねの復元力を用いてボルト又はマイクロメータの端部に対して当て板50が追随する構造が採用されてもよい。ボルト又はマイクロメータにモータを接続し、ボルト又はマイクロメータを電気的に駆動する手段が用いられてもよい。
【0042】
被加工物9、および、ヘリ継手33に対しては、溶融部から大気を遮断するためのシールドガスを吹き付けてもよい。シールドガスは例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素、これらの混合ガスなどが考えられる。シールドガスの吹き付け機構は、レーザ発振器2と同期してレーザ光3の照射に応じて任意のタイミングでシールドガスを吹き付ける機構であってもよい。
【0043】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係るレーザ加工装置が有する光学ヘッドの構成の断面を示す概略図である。
図7における一点鎖線は、実施の形態2の光学ヘッドの中心線である。
図7には、射出口8も示されている。
図8は、実施の形態2に係るレーザ加工装置が有する光学ヘッドを射出口8から見た場合の平面図である。実施の形態2に係るレーザ加工装置は、実施の形態1に係るレーザ加工装置1の光学ヘッド5が実施の形態2の光学ヘッドに置き換えられた装置である。実施の形態2の光学ヘッドは、アキシコンレンズ13と光学レンズ14との位置関係を保持しつつ、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14をコリメート光11の軸に対して傾斜させることができる。
【0044】
実施の形態2の光学ヘッドは、
図2の筐体下29の範囲の構造を変更し、筐体下29のうち、レーザ光3を被加工物9へ射出する射出口8の近傍を押し引きして、筐体下29の範囲をアキシコンレンズ13と光学レンズ14との位置関係を保持しつつ、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14をコリメート光11の軸に対して傾斜させることができる構造を有する。
【0045】
実施の形態2の光学ヘッドの構造を説明する。
図7に示されるように、実施の形態2の光学ヘッドは、レンズ鏡筒35、アタッチメント36、ロッド37、第1ホルダ38、第2ホルダ39、段付きボルト40、ワッシャ41、ばね42、パッキン43、フランジ44、ボルト、押しねじ45、保護レンズ19及びねじリング18を有する。
【0046】
レンズ鏡筒35の形状は円筒形状であって、図示されていないが、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14がレンズ鏡筒35の内部に固定されている。アキシコンレンズ13及び光学レンズ14の固定方法は、例えば
図2を用いて説明した方法である。レンズ鏡筒35は、アタッチメント36にあらかじめ決められた隙間及び深さで嵌め合わされている。第1ホルダ38は、ロッド37を介してアタッチメント36に固定されている。ロッド37は、アタッチメント36の側の端部におねじが加工されている構成要素であって、第1ホルダ38の側の端部にはめねじが加工されている。第1ホルダ38は、レンズ鏡筒35の中心軸と同軸に、レンズ鏡筒35の外径よりも大きな内径を有する穴が加工されており、レンズ鏡筒35は第1ホルダ38の穴を通っている。
【0047】
アタッチメント36にはめねじが加工されており、ロッド37のおねじがアタッチメント36に回し入れられる。第1ホルダ38の側には穴が加工されており、ボルトとロッド37のめねじとが第1ホルダ38を挟み込むように、第1ホルダ38は固定されている。3本又は4本のロッド37が、レンズ鏡筒35の周囲に配置されている。第2ホルダ39の形状は円筒の形状であって、第2ホルダ39の外周には座繰り穴が設けられている。座繰り穴は第2ホルダ39の円周を等分した4か所に設けられている。2枚のワッシャ41で挟み込まれたばね42が段付きボルト40に挿入され、おねじが加工された段付きボルト40が座繰り穴に挿入され、おねじが第1ホルダ38のめねじに回し入れられる。
【0048】
第2ホルダ39の円筒の内部には段差が設けられており、段付きボルト40が締め込まれると、第2ホルダ39の円筒の内部の段差がレンズ鏡筒35の端面に接触し、さらに段付きボルト40が締め込まれると、段付きボルト40に挿入されたばね42が圧縮され、ばね42への圧縮荷重によってアタッチメント36の嵌め合い部でレンズ鏡筒35が挟まれて、レンズ鏡筒35の中心軸の方向でレンズ鏡筒35が固定される。
【0049】
第1ホルダ38の外周の側面の四方90°に等分された箇所にねじ穴が設けられており、ボルトが挿入され、ボルトによって第2ホルダ39の側面が押し引きされると、段付きボルト40に取り付けられたワッシャ41と第2ホルダ39の座繰り穴との隙間の分だけ第2ホルダ39が動く。これによって、アタッチメント36とレンズ鏡筒35との嵌め合い部を起点にしてレンズ鏡筒35の光学レンズ14側が傾斜するため、実施の形態2の光学ヘッドは、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14をコリメート光11の軸に対して傾斜させることができる。すなわち、実施の形態2の光学ヘッドは、アキシコンレンズ13、光学レンズ14及び射出口8の位置の関係を保持したまま、コリメートレンズ12によってコリメート光11に変換されたレーザ光3の光軸を任意の角度に変更する機能を有する回転機構を更に有する。
【0050】
実施の形態2の光学ヘッドには、光学レンズ14を保護する目的で、第2ホルダ39の円筒の内側にねじ山が設けられており、レンズ鏡筒35のレーザ光3が射出される側に保護レンズ19が配置されており、ねじリング18で保護ガラスが固定されている。さらに、レンズ鏡筒35と第2ホルダ39との嵌め合い部にパッキン43が配置されており、フランジ44がパッキン43を固定している。上述の構造により、実施の形態2の光学ヘッドは、例えば粉塵といった異物が光学レンズ14に付着し、光学レンズ14が損傷することを防止することができる。アタッチメント36は、例えば固定用の平板が別途用意されてスライド機構48にねじで止められる。
図7にはスライド機構48は示されていないが、実施の形態2の光学ヘッドはスライド機構48を有する。
【0051】
一般的に、伝送ケーブル4は、筐体上28に対して、機械的な精度で軸合わせされているが、実際は伝送ケーブル4の軸と筐体上28の軸とについては微小な傾きがある。このため、コリメート光11がアキシコンレンズ13の中心軸に対して傾いて入射すると、実施の形態1に係るレーザ加工装置1の構成では、円環状に変換されたレーザ光3のエネルギ密度の偏りを調整することができない場合がある。
【0052】
レーザ光3のエネルギ密度の偏りを解決するため、実施の形態2では、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14をコリメート光11の光軸に対して傾斜できる構造と、実施の形態1において説明されたスライド機構48とが組み合わせられている。これにより、実施の形態2に係るレーザ加工装置は、筐体上28に対する伝送ケーブル4の傾きが存在しても円環状に変換されたレーザ光3のエネルギ密度の不均一化を抑制することができる。
【0053】
アキシコンレンズ13と光学レンズ14との位置関係を保持しつつ、アキシコンレンズ13及び光学レンズ14をコリメート光11の光軸に対して傾斜することを可能にするために、筐体下29のアキシコンレンズ13の側を起点に筐体下29の全体を傾斜させることができる構造が採用されてもよい。例えば、スライド機構48と筐体下29との間に2個のゴニオステージが配置されて2個のゴニオステージの各々が直交する方向に配置された構造が採用されてもよい。ゴニオステージは、角度調整機構である。
【0054】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3に係るレーザ加工装置の一部の構成を示す概略図である。実施の形態3に係るレーザ加工装置は、実施の形態1に係るレーザ加工装置1又は実施の形態2に係るレーザ加工装置が有する構成要素を有する。実施の形態3に係るレーザ加工装置が有する光学ヘッドは、実施の形態1の光学ヘッド5又は実施の形態2の光学ヘッドである。以下では、実施の形態3の光学ヘッドは、「光学ヘッド5A」と記載される。
【0055】
光学ヘッド5Aは、アキシコンレンズ13によって断面の形状が円環に変換されたレーザ光の一部を分岐させる分光レンズ49と、分光レンズ49によって分岐されたレーザ光を受光するフォトセンサ46とを更に有する。実施の形態3に係るレーザ加工装置は、フォトセンサ46の出力信号をもとに被加工物に照射されるレーザ光のエネルギ密度を推定する演算回路47を更に有する。
【0056】
図9に示される通り、アキシコンレンズ13によって円環形状に変換されたレーザ光は分光レンズ49によって分岐され、分岐された一方のレーザ光は光学レンズ14へ進行し、分岐された他方のレーザ光はフォトセンサ46に進行する。演算回路47は、フォトセンサ46の出力信号を受け取り、被加工物に照射されるレーザ光のエネルギ密度を推定する。演算回路47によるレーザ光のエネルギ密度の推定結果は、モニタに出力されてもよいし、パーソナルコンピュータに出力されてもよい。
【0057】
円環状のレーザ光のエネルギ密度の分布を確認するためには、一般的には、例えば金属板にレーザ光を照射して溶け込み形状を製作し、金属板の表面の溶け込みの幅を測定すること、又は、円環状の溶け込みの複数の断面を観察し、溶け込みの深さを確認することが必要になる。
【0058】
しかし、実施の形態3に係るレーザ加工装置はフォトセンサ46及び演算回路47を介してレーザ光のエネルギ密度を推定することができるため、作業者は、レーザ光による溶け込み状態を確認してから光学ヘッド5Aを調整し、さらに調整後のレーザ光による溶け込みの状態を確認し、調整が不足していたら光学ヘッド5Aを再度調整するといった手間を省くことができる。
【0059】
実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置を用いることにより、レーザ加工を行うことができる。
【0060】
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置を用いた溶接方法を説明する。実施の形態1でも
図5及び
図6を用いて説明した通り、鋼板に穴を開けるとともに、穴の周囲に立ち上がりを設けるバーリング加工31を行い、当該穴の内径よりも小さな外径を有する円筒管32又は中実軸部材51を穴に挿入し、実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置によって、鋼板の開口部と、円筒管32又は中実軸部材51とにレーザ光3を照射し、2つの部材を接合することができる。
【0061】
上述の溶接方法によれば、被加工物9の接合軌跡に対応してレーザ光3を走査するための多軸ロボット若しくは駆動機構又は被加工物9を動かすための多軸ロボット若しくは駆動機構が不要になるか、1か所の接合部に対して多軸ロボット又は駆動機構を動作させる必要が無くなるため、当該溶接方法に対する設備投資額を安価にすることができる、又は当該溶接方法による加工時間を短くすることができる。
【0062】
接合部材の形状は、鋼板にはバーリング加工31が施されておらず、単純な開口円の形状でもよい。接合する2つの部材の配置については、バーリング加工31が施された開口円の立ち上がり又は単純な開口円の端部と、円筒管32又は中実軸部材51の端面とを面一に配置してもよいし、任意の段差を設けてもよい。接合する二つの部材の内径及び外径は、接合部の円周に渡って、溶融の偏りを抑制することを補助する目的で、あらかじめ決められた形状に加工されていてもよい。具体的には、
図10から
図16までに示される継手が考えられる。
【0063】
図10は、実施の形態4における第1の継手を示す図である。
図11は、実施の形態4における第2の継手を示す図である。
図12は、実施の形態4における第3の継手を示す図である。
図13は、実施の形態4における第4の継手を示す図である。
図14は、実施の形態4における第5の継手を示す図である。
図15は、実施の形態4における第6の継手を示す図である。
図16は、実施の形態4における第7の継手を示す図である。
図10から
図14に示されるように、第1から第5までの各継手は、バーリング加工31が施された部材と円筒管32とによって形成されている。
図15及び
図16に示されるように、第6及び第7の各継手は、バーリング加工31が施された部材と中実軸部材51とによって形成されている。
【0064】
すなわち、実施の形態4に係る第1の溶接方法は、円筒又は開口円の開口部が形成された部材の開口部に開口部の内径よりも小さな外径を持つ円筒部材を挿入する工程と、実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置によってレーザを照射する工程とを含む。
【0065】
図17は、実施の形態4における第8の継手を示す図である。
図17に示されている継手の通り、円筒部材52に対して椀形状53の部材を組付けて二つの部材を接合することもできる。すなわち、実施の形態4に係る第2の溶接方法は、円筒部材の開口部に椀状の部材を嵌め合わせる工程と、実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置によってレーザを照射する工程とを含む。
【0066】
実施の形態5.
実施の形態5では、実施の形態1から3に係るレーザ加工装置を用いて給湯器を製造する方法を説明する。給湯器の貯湯タンクの形状は円筒形状であって、貯湯タンクの上下部は椀形状の薄板で構成されている。貯湯タンクには配管が接続されており、配管を通じて貯湯タンクの内部から湯が取り出され、又は貯湯タンクの内部に湯及び水が供給される。一般的に、貯湯タンクに配管を接続するため、貯湯タンクに配管接続用のニップルが組付けられている。
【0067】
貯湯タンク及びニップルは例えばステンレスといった鋼板で形成されており、例えばニップルは
図5(又は
図14)に示されるヘリ継手33が用いられる。接合軌跡に対応して、貯湯タンク及びニップル、又は接合用の熱源側が、多軸ロボット又は駆動装置によって動作し、貯湯タンクとニップルとが接合される。
【0068】
すなわち、実施の形態5に係る給湯器の製造方法は、貯湯タンクと、配管と貯湯タンクとを接続するための配管接手部品とを準備する工程と、実施の形態4の第1の溶接方法により配管接手部品を貯湯タンクに接合する工程とを含む。
【0069】
実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置を用いることで、貯湯タンクとニップルとを接合するための駆動装置又は駆動動作を削減することができ、給湯器の製造コスト又は、給湯器の製造時間を低減することができる。
【0070】
実施の形態6.
実施の形態6では、実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置を用いて圧縮機を製造する方法を説明する。家庭用エアーコンディショナ又は業務用エアーコンディショナに用いられる圧縮機の筐体である圧力容器は、一般的に、上述の給湯器の貯湯タンクと同様に円筒形状の側面部材と、椀形状の上下部材とで構成される。圧力容器は、貯湯タンクよりも厚い板で構成されている。
図18は、圧力容器54の外観の例を示す図である。圧力容器54は、
図17に示される継手を用いて、側面部材と上下部材とを実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置を用いて接合することによって形成される。
【0071】
すなわち、実施の形態6に係る給湯器の製造方法は、形状が円筒形状である圧力容器54の側面部材と、側面部材の両端の開口部を覆うための形状が椀形状である上下部材とを準備する工程と、実施の形態4の第2の溶接方法により側面部材と上下部材とを接合する工程とを含む。
【0072】
実施の形態6に係る圧縮機の製造方法によれば、実施の形態1から3のいずれか一つに係るレーザ加工装置を用いることで、圧力容器54の製造過程において、実施の形態5の貯湯タンクと同様に、製造設備の駆動装置又は駆動動作を削減することができ、圧力容器54の製造コスト又は圧力容器54の製造時間を低減することができる。
【0073】
図19は、実施の形態3に係るレーザ加工装置が有する演算回路47がプロセッサ91によって実現される場合のプロセッサ91を示す図である。つまり、演算回路47の機能は、メモリ92に格納されるプログラムを実行するプロセッサ91によって実現されてもよい。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。
図19には、メモリ92も示されている。
【0074】
演算回路47の機能がプロセッサ91によって実現される場合、当該機能は、プロセッサ91と、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせとによって実現される。ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、演算回路47の機能を実現する。
【0075】
演算回路47の機能がプロセッサ91によって実現される場合、実施の形態3に係るレーザ加工装置は、演算回路47によって実行されるステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を有する。メモリ92に格納されるプログラムは、演算回路47をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0076】
メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク又はDVD(Digital Versatile Disk)等である。
【0077】
図20は、実施の形態3に係るレーザ加工装置が有する演算回路47が処理回路93によって実現される場合の処理回路93を示す図である。つまり、演算回路47は、処理回路93によって実現されてもよい。処理回路93は、専用のハードウェアである。処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0078】
演算回路47の複数の機能について、当該複数の機能の一部がソフトウェア又はファームウェアで実現され、当該複数の機能の残部が専用のハードウェアで実現されてもよい。このように、演算回路47の複数の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって実現することができる。
【0079】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 レーザ加工装置、2 レーザ発振器、3 レーザ光、4 伝送ケーブル、5,5A 光学ヘッド、6 固定治具、7 接続口、8 射出口、9 被加工物、10 筐体、11 コリメート光、12 コリメートレンズ、13 アキシコンレンズ、14 光学レンズ、15 光路、16 平凹レンズ、17 平凸レンズ、18 ねじリング、19 保護レンズ、20 Y軸上板、21 Y軸下板、22 X軸上板、23 X軸下板、24 レール、25 リブ板、26 止め輪、27 開口、28 筐体上、29 筐体下、30 多軸ロボット、31 バーリング加工、32 円筒管、33 ヘリ継手、34 溶接形状、35 レンズ鏡筒、36 アタッチメント、37 ロッド、38 第1ホルダ、39 第2ホルダ、40 段付きボルト、41 ワッシャ、42 ばね、43 パッキン、44 フランジ、45 押しねじ、46 フォトセンサ、47 演算回路、48 スライド機構、49 分光レンズ、50 当て板、51 中実軸部材、52 円筒部材、53 椀形状、54 圧力容器、91 プロセッサ、92 メモリ、93 処理回路。