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特許7561677電力半導体装置、電力半導体装置の製造方法及び電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力半導体装置、電力半導体装置の製造方法及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240927BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/34 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021070532
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2022165251
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田上 兼士
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125678(JP,A)
【文献】特開2011-142172(JP,A)
【文献】特開2019-220648(JP,A)
【文献】特開2019-040971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0067214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子を搭載している回路パターンと、
前記回路パターンを搭載している絶縁層と、
前記絶縁層を搭載している放熱フィンと、
前記放熱フィンの周縁に接着され、前記半導体素子、前記回路パターン及び前記絶縁層を囲んでいるケースと、
前記絶縁層と前記回路パターンと前記ケースとに囲まれた領域に、封止されている封止樹脂と、
前記半導体素子及び前記回路パターンに接合され、平板形状部を含み、一対の支持部を有する内部電極と、
前記内部電極に接合され、前記ケースと一体成型されている外部電極と、
を備え
前記支持部は、金属から形成され、前記半導体素子と前記内部電極の前記平板形状部とが平行配置になるように、前記支持部の一端部が前記回路パターンと接合され、前記支持部の他端部が前記内部電極に接合され、
各前記支持部は、前記内部電極の一方の先端部および他方の先端部にそれぞれ設けられている電力半導体装置。
【請求項2】
前記内部電極は、少なくとも1つの前記半導体素子と接合されている請求項1記載の電力半導体装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記半導体素子が搭載されていない前記回路パターンに接合されている請求項1または請求項2に記載の電力半導体装置。
【請求項4】
前記内部電極の前記平板形状部に、貫通孔と前記貫通孔の周辺にエンボス部が設けられ、前記貫通孔と前記エンボス部と前記半導体素子とが接合されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置。
【請求項5】
前記貫通孔と前記エンボス部と前記半導体素子との接合は、前記エンボス部の前記半導体素子と反対側の面にも接合され、凸状に覆われている請求項記載の電力半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子と前記回路パターンとの接合、前記支持部と前記回路パターンとの接合、前記貫通孔と前記エンボス部と前記半導体素子との接合、前記内部電極と前記外部電極との接合のいずれかは、Snを含むはんだ、または金属の微粒子にて形成された焼結材のいずれかである請求項または請求項に記載の電力半導体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記電力半導体装置を駆動する駆動信号を前記電力半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【請求項8】
半導体素子と放熱フィンに絶縁層を介して搭載された回路パターンとを接合し、一対の支持部材と前記回路パターンとを接合する工程と、
前記半導体素子と平板形状部を含む内部電極とを接合し、前記支持部材と前記内部電極とを接合する工程と、
前記放熱フィンとケースとを接着する工程と、
前記内部電極と前記ケースに一体成型された外部電極とを接合する工程と、
前記半導体素子と前記ケースに一体成型された制御端子とを金属ワイヤにてワイヤボンドし配線接続する工程と、
前記絶縁層と前記回路パターンと前記ケースに囲まれた領域に樹脂封止する工程と、
を備え
前記支持部材は、金属から形成され、前記半導体素子と前記内部電極の前記平板形状部とが平行配置になるように、前記支持部材の一端部が前記回路パターンと接合され、前記支持部材の他端部が前記内部電極に接合され、
各前記支持部材は、前記内部電極の一方の先端部および他方の先端部にそれぞれ設けられている電力半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力半導体装置、電力半導体装置の製造方法及び電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力半導体装置は、アルミフィンの上に設けられた絶縁基板の回路パターンに半導体チップが搭載され、絶縁基板及び半導体チップをケースで囲み、ケースの内側が封止樹脂にて封止されている。ケースと一体化された第1リードフレームが、半導体チップの上にはんだを介して接合され、絶縁性を有した樹脂から形成された第1スペーサが、絶縁基板の回路パターンと第1リードフレームに挟まれ、接着剤を介して設けられている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-125678号公報(段落0013~0022、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1スペーサを回路パターン及び第1リードフレームに接着するため、新たに接着剤の準備及び接着工程が必要となる。また、半導体チップと第1リードフレームとをはんだを介して接合するとき、はんだを溶融させるため、リフローなどにて、はんだ、半導体チップ及び第1リードフレームを加熱し昇温させる必要がある。特に、構造上、第1リードフレームに対して、所望の温度まで昇温させることが難しく、さらに、第1スペーサが絶縁性を有した樹脂であり、熱伝導率が小さいため、昇温が不十分となり、はんだ厚が確保され、良好なはんだ接合部を得ることが難しい場合があった。
【0005】
本開示は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、接合厚が確保され、高品質で高信頼性の接合部を有する電力半導体装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本開示は、生産性向上を図った容易な製造方法で、接合厚を確保し、高品質で高信頼性な接合部を有する電力半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電力半導体装置は、半導体素子と、半導体素子を搭載している回路パターンと、回路パターンを搭載している絶縁層と、絶縁層を搭載している放熱フィンと、放熱フィンの周縁に接着され、半導体素子、回路パターン及び絶縁層を囲んでいるケースと、絶縁層と回路パターンとケースとに囲まれた領域に封止されている封止樹脂と、半導体素子及び回路パターンに接合され、平板形状部を含み、一対の支持部を有する内部電極と、内部電極に接合され、ケースと一体成型されている外部電極を備え、支持部は、金属から形成され、半導体素子と内部電極の平板形状部とが平行配置になるように、支持部の一端部が回路パターンと接合され、支持部の他端部が内部電極に接合され、各支持部は、内部電極の一方の先端部および他方の先端部にそれぞれ設けられている電力半導体装置である。
【0008】
また、本開示に係る電力半導体装置の製造方法は、半導体素子と放熱フィンに絶縁層を介して搭載された回路パターンとを接合し、一対の支持部材と回路パターンとを接合する工程と、半導体素子と平板形状部を含む内部電極とを接合し、支持部材と内部電極とを接合する工程と、放熱フィンとケースとを接着する工程と、内部電極とケースに一体成型された外部電極とを接合する工程と、半導体素子とケースに一体成型された制御端子とを金属ワイヤにてワイヤボンドし配線接続する工程と、絶縁層と回路パターンとケースとに囲まれた領域に樹脂封止する工程と、を備え、支持部材は、金属から形成され、半導体素子と内部電極の平板形状部とが平行配置になるように、支持部材の一端部が回路パターンと接合され、支持部材の他端部が内部電極に接合され、各支持部材は、内部電極の一方の先端部および他方の先端部にそれぞれ設けられている電力半導体装置の製造方法。

【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電力半導体装置によれば、接合厚が確保され、高品質及び高信頼性の接合部を得ることができる。
【0010】
本開示に係る電力半導体装置の製造方法によれば、生産性向上を図った容易な製造方法で、接合厚が確保され、高品質及び高信頼性の接合部を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電力半導体装置の外観を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る電力半導体装置の構成を示す断面図である。
図3】実施の形態1に係る電力半導体装置の構成を示す封止樹脂を封止する前の平面図である。
図4】実施の形態1に係る電力半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5】実施の形態1に係る電力半導体装置の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る電力半導体装置の外観を示す平面図である。
図7】実施の形態2に係る電力半導体装置の構成を示す断面図である。
図8】実施の形態2に係る電力半導体装置の構成を示す封止樹脂を封止する前の平面図である。
図9】実施の形態2に係る電力半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図10】実施の形態3に係る電力変換装置を含む電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係る電力半導体装置100aの構成について、図面を用いながら説明する。図1は、電力半導体装置100aの外観を示す平面図である。図2は、図1のA-A線における断面図である。図3は、封止樹脂10にて封止する前の電力半導体装置100aの構成を示す平面図である。なお、図1のA-A線に該当する位置を図3にも記している。
【0013】
平面視にて電力半導体装置100aの上面の外観を図1に示す通り、電力半導体装置100aの周縁はケース8により囲まれており、ケース8の内側は封止樹脂10に覆われ、ケース8と一体成型された外部電極7及び制御端子12が外部と電気的に入出力するため、外部と接続できるよう延在し露出している。
【0014】
図2に示すように、電力半導体装置100aは、半導体素子1、放熱フィン3c、内部電極4、外部電極7、ケース8及び封止樹脂10を含む。
【0015】
放熱フィン3cとケース8は、放熱フィン3cの周縁部にて接着剤9により接着され、固定されている。また、半導体素子1の下面は、半導体素子1と平行に配置され、接合材2aを介して放熱フィン3cに設けられた回路パターン3aと接合されている。半導体素子1の上面は、半導体素子1と平行に配置され、接合材2cを介して内部電極4と接合されている。内部電極4と外部電極7とは、接合材2dを介して接合されている。ここで、半導体素子1の下面とは、放熱フィン3cに設けられた回路パターン3a側の面であり、また、半導体素子1の上面とは、半導体素子1の内部電極4側の面を示している。
【0016】
図2に示すように、放熱フィン3cには絶縁層3bが設けられ、絶縁層3bの放熱フィン3cと反対側の面には回路パターン3aが設けられ、放熱フィン3c、絶縁層3b及び回路パターン3aが平行に配置され一体化されており、発熱した半導体素子1を放熱するための冷却器としての機能を有している。
【0017】
放熱フィン3cは、CuまたはAlのいずれかを含む熱伝導率に優れた金属であり、突起状のフィンを含めた厚さは、8~15mmである。絶縁層3bは、窒化アルミニウム(AlN)または窒化珪素(Si)のいずれかを含む厚さ0.1~0.8mmである。回路パターン3aは、CuまたはAlのいずれかを含む導電性材料で、厚さ0.2~1.5mmである。
【0018】
また、絶縁層3bは、BNまたはAlのいずれかを含むフィラーが入ったエポキシ樹脂であってもよい。熱伝導率は、6~18W/(m・K)であり、電力半導体装置100aに必要な放熱仕様に応じることができる。
【0019】
半導体素子1は、電力を制御するいわゆる電力半導体素子である。例えば、SiまたはSiと比べて大きなバンドギャップを有するワイドバンドギャップ半導体を材料として含む。ワイドバンドギャップ半導体とは、例えば、SiC、GaN、ダイヤモンド等である。半導体素子1は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、ショットキーバリアダイオード等である。また、例えば、半導体素子1は、IGBTおよび還流ダイオードが1つの半導体チップに集積されたRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)であってもよい。
【0020】
図2及び図3に示す通り、半導体素子1は、少なくとも1つ搭載されている。電力半導体装置100aの仕様に応じて必要な個数の半導体素子1を搭載することができる。
【0021】
また、半導体素子1を回路パターン3aに接合している接合材2aは、Snを含む導電性金属であり、所謂はんだである。なお、半導体素子1は発熱するため、接合材2aは、はんだに限定するものではなく、はんだより熱伝導率が大きく、放熱性を有するAgまたはCuを含む金属の微粒子を用いた焼結材であってもよい。
【0022】
なお、接合材2aが、特にはんだの場合、はんだとの濡れ性を確保するため、回路パターン3aにおいて、接合材2aと接合される少なくとも一部の面に、Niめっきを施してもよい。
【0023】
ケース8は、PPS(Poly Phenylene Sulfide)樹脂またはPBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂のいずれかを含むものである。
【0024】
図2及び図3に示すように、外部電極7は、CuまたはCuを含む材料であり、ケース8とともにインサート成型され一体化されており、外部電極7の一部はケース8内に埋め込められている。図2に示すように、外部電極7は、屈曲しており、外部電極7の一方の先端部は、外部と電気的に入出力するため、ケース8から露出している。外部電極7の他方の先端部は、平面視にてケース8の内側の方向に向かって、内部電極4の平板形状部4aと平行に配置され、平坦面状に突出し露出している。
【0025】
図2及び図3に示すように、内部電極4は、CuまたはCuを含む材料であり、半導体素子1と平行になるように配置される平板形状部4aを含む。内部電極4の厚さは、大電流が流れるように、0.5~1.2mmの均一厚さである。内部電極4は、半導体素子1、回路パターン3a及び外部電極7に対し平行に配置され、半導体素子1の上面、回路パターン3a及び外部電極7と接合されている。
【0026】
また、内部電極4には、内部電極4の平板形状部4aの厚み方向に貫通孔6が形成されている。貫通孔6の周囲には、プレス等により、半導体素子1側に向かって突起状に0.5mm程の段差が設けられたエンボス部11が形成されている。
【0027】
半導体素子1の上面には電極が備えられており(図示省略)、半導体素子1の上面と、内部電極4の貫通孔6と、貫通孔6の周辺に設けられたエンボス部11とが、接合材2cを介して接合されている。エンボス部11により、接合材2cが、特にはんだの場合、内部電極4に対し十分にはんだが濡れ広がるため、はんだ濡れ性を確保することができる。接合材2cの接合厚は、0.2~1.0mmである。
【0028】
また、図2及び図3に示す通り、内部電極4において、一方の先端部及び他方の先端部には、回路パターン3aに向かって一対の屈曲し傾斜形状を有した支持部4bが形成されており、内部電極4の一方の先端部及び他方の先端部が接合材2bを介して回路パターン3aと接合されている。
【0029】
これにより、内部電極4は、内部電極4の一方の先端部及び他方の先端部に設けられた一対の支持部4bにより、回路パターン3aに対し安定して支持され、固定することができる。従って、半導体素子1の上面と内部電極4との間にある接合材2cの厚さを確保することができる。図2及び図3に示すように、複数の半導体素子1の上面に対し接合された同一の内部電極4が、各半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保し良好な接合を得るとともに、電力半導体装置100aが使用される環境下にて生じる接合材2cの熱応力及び熱ひずみを抑制することができる。従って、高品質な接合を得るとともに、接合材2cの信頼性を向上させることができる。
【0030】
なお、接合材2cは、半導体素子1の上面から貫通孔6に充填され、エンボス部11の上側の面にも接合され、覆われて、例えば凸状となりドーム形状に盛り上がっていてもよい。エンボス部11の上側とは、エンボス部11の半導体素子1と反対側の面である。これにより、さらに接合材2cに生じる熱応力及び熱ひずみを緩和させることができる。
【0031】
また、内部電極4において、一方の先端部及び他方の先端部には、一対の屈曲し傾斜形状を有した支持部4bが形成されている。内部電極4の一方の先端部及び他方の先端部が接合材2bを介して回路パターン3aと接合されているため、発熱する半導体素子1に対し、半導体素子1の下面への放熱に加えて、半導体素子1の上面から内部電極4を介して回路パターン3a、絶縁層3b、放熱フィン3cへと、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する半導体素子1の放熱性向上を図ることができる。
【0032】
さらに、内部電極4に流れる大電流による発熱に対しても、同様に、内部電極4から回路パターン3aを介して絶縁層3b、放熱フィン3cへと、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する内部電極4の放熱性向上を図ることができる。従って、半導体素子1は、高温になることを抑制されるため、安定した動作をすることができる。
【0033】
図2及び図3に示すように、内部電極4は、接合材2dを介して外部電極7に接合されている。これにより、特許文献1と異なり、内部電極4は、ケース8とインサート成型にて一体化されていないため、半導体素子1の上面の接合材2cの接合厚を確保することができ、接合材2cに対して熱応力及び熱ひずみを緩和させることができる。また、半導体素子1及び内部電極4の発熱に対し外部電極7に接続された外部へと放熱することができる。
【0034】
なお、接合材2b、接合材2c及び接合材2dは、Snを含む導電性金属であり、所謂はんだである。なお、半導体素子1は発熱するため、接合材2b、接合材2c及び接合材2dは、はんだに限定するものではなく、はんだより熱伝導率が大きく、放熱性を有するAgまたはCuを含む金属の微粒子を用いた焼結材であってもよい。
【0035】
なお、接合材2b、接合材2c及び接合材2dが、特にはんだの場合、はんだとの濡れ性を確保するため、回路パターン3a、内部電極4及び外部電極7において、接合材2b、接合材2c及び接合材2dと接合される少なくとも一部の面に、Niめっきを施してもよい。
【0036】
図3に示すように、制御端子12は、CuまたはCuを含む材料であり、ケース8とともにインサート成型され一体化されており、制御端子12の一部はケース8内に埋め込められている。制御端子12の一方の先端部は、外部と電気的に入出力するため、ケース8から露出し延在している。制御端子12の他方の先端部は、図3に示すように、ケース8から露出し、金属ワイヤ13により、半導体素子1と電気的に接続されている。金属ワイヤ13は、AlまたはCuのいずれかを含む材料である。金属ワイヤ13の直径は、0.1~0.5mmである。
【0037】
図2に示すように、ケース8にて囲まれた領域である、絶縁層3b及び回路パターン3aの半導体素子1が搭載されている側の面であって、半導体素子1、内部電極4及びケース8の内側にある外部電極7の周囲を、封止樹脂10が充填され封止されている。封止樹脂10は、熱硬化性を有し、SiOを含むフィラーが入ったエポキシ樹脂であるが、これに限定するものでなく、必要な弾性率、熱伝導率、耐熱性、絶縁性及び接着性を有した樹脂であればよい。例えば、エポキシ樹脂の他に、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等であってもよい。
【0038】
接着剤9により、放熱フィン3cとケース8が接着され、固定されているので、封止樹脂10がケース8に囲まれた領域に充填されるとき、封止樹脂10が外部に漏れるのを防ぐことができ、電力半導体装置100aの内部にて絶縁性を確保することができる。接着剤9は、シリコーン樹脂である。または、封止樹脂10と同一材料であってもよい。
【0039】
このように、内部電極4に貫通孔6及び一対の屈曲し傾斜形状を有した支持部4bを設け、放熱フィン3c及び絶縁層3bと一体化された回路パターン3aに、接合材2bを介して内部電極4の支持部4bが接合されることにより、回路パターン3aに対し内部電極4が安定して支持され、固定することができる。これにより、複数の半導体素子1の上面に対し接合された同一の内部電極4が、各半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保し良好な接合を得るとともに、電力半導体装置100aが使用される環境下にて生じる接合材2cの熱応力及び熱ひずみを抑制することができる。従って、高品質な接合を得るとともに、接合材2cの信頼性を向上させることができる。
【0040】
また、発熱する半導体素子1に対し、半導体素子1の下面への放熱に加えて、半導体素子1の上面から内部電極4を介して回路パターン3a、絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する半導体素子1の放熱性向上を図ることができる。
【0041】
さらに、内部電極4に流れる大電流による発熱に対しても、同様に、内部電極4から回路パターン3aを介して絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する内部電極4の放熱性向上を図ることができる。従って、半導体素子1は、高温になることを抑制されるため、安定した動作をすることができる。
【0042】
次に、電力半導体装置100aの製造方法について説明する。
【0043】
図4は、実施の形態1における電力半導体装置100aの製造方法を示すフローチャートである。ここでは、はんだによって接合される例、すなわち、接合材2a、接合材2b、接合材2c及び接合材2dが、はんだである例を示す。各工程であるステップS101~S106について詳細に述べる。
【0044】
ステップS101にて、半導体素子1の下面を回路パターン3aに、接合材2aによって接合する。接合材2aは、ペースト状はんだもしくは板状はんだである。この際、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。加熱温度は、Snを含むはんだの融点に対応するよう230~300℃である。なお、図示は省略するが、回路パターン3aに対して半導体素子1の搭載位置を固定するため、専用治具を用いている。
【0045】
ステップS102にて、貫通孔6及びエンボス部11を有した内部電極4を半導体素子1の上面に、接合材2cによって接合し、内部電極4の支持部4bを回路パターン3aに、接合材2bによって接合する。接合材2b及び接合材2cは、ペースト状はんだもしくは板状はんだである。接合材2b及び接合材2cは、接合材2aと同一材料、または接合材2aより融点が低い温度となる組成を有したSnを含むはんだである。ステップS101同様、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。なお、図示は省略するが、内部電極4の搭載位置を固定するため、専用治具を用いている。
【0046】
接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱されるため、半導体素子1だけでなく、接合材2bを介して伝熱され、内部電極4及び接合材2cを所望の温度まで昇温させることができる。これにより、半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保でき、良好な接合を得ることができる。
【0047】
ステップS103にて、放熱フィン3cの周縁に接着剤9を塗布し、ケース8を放熱フィン3cに接着する。シリコーンを含む接着剤9、または封止樹脂10と同一材料の接着剤9が塗布される。塗布後、接着面を加熱することにより、接着剤9が硬化し、放熱フィン3c及びケース8は接着剤9を介して接着することができる。これにより、後述する封止樹脂10を注入し充填して樹脂封止する工程にて、封止樹脂10を外部に漏らすことはない。
【0048】
ステップS104にて、外部電極7を内部電極4に、接合材2dによって接合する。ステップS101同様、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。半導体素子1だけでなく、接合材2bを介して伝熱され、内部電極4、外部電極7及び接合材2dを所望の温度まで昇温させることができ、良好な接合を得ることができる。なお、ステップS103の接着剤9を硬化させ接着する工程を、外部電極7を内部電極4に接合材2dによって接合するために加熱する工程にて一括して同時に行ってもよい。これにより、外部電極7を内部電極4に接合材2dによって接合するとともに、放熱フィン3c及びケース8を接着することができる。従って、加熱する工程回数を抑制することができ、生産性を向上させることができる
【0049】
ステップS105にて、半導体素子1と制御端子12とを、AlまたはCuのいずれかを含む材料から形成される金属ワイヤ13にてワイヤボンドし配線接続する。金属ワイヤ13に対し超音波ツール(図示省略)が加圧しながら超音波振動を印可することにより、半導体素子1及び制御端子12に金属ワイヤ13が超音波接合され、配線接続する。
【0050】
ステップS106にて、ケース8に囲まれた、絶縁層3b及び回路パターン3aの上側に、半導体素子1、内部電極4及びケース8の内側にある外部電極7を埋めるように、封止樹脂10を注入し充填して樹脂封止する。樹脂封止後、加熱により封止樹脂10を硬化させる。これにより、接合材2a、接合材2b、接合材2c、接合材2d及び金属ワイヤ13の接合箇所に対し、周囲を封止樹脂にて覆われて固定されるため、絶縁性が確保されるとともに、信頼性を向上させることができる。
【0051】
このように、内部電極4に貫通孔6及び一対の屈曲し傾斜形状を有した支持部4bを設け、放熱フィン3c及び絶縁層3bと一体化された回路パターン3aに、接合材2bを介して内部電極4の支持部4bが接合されることにより、回路パターン3aに対し内部電極4が安定して支持され、固定することができる。これにより、複数の半導体素子1の上面に接合された同一の内部電極4が、各半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保でき、良好な接合を得ることができるとともに、電力半導体装置100aが使用される環境下にて生じる接合材2cの熱応力及び熱ひずみを抑制することができる。従って、高品質な接合を得るとともに、接合材2cの信頼性を向上させることができる。
【0052】
また、発熱する半導体素子1対し、半導体素子1の下面への放熱に加えて、半導体素子1の上面から内部電極4を介して回路パターン3a、絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する半導体素子1の放熱性向上を図ることができる。
【0053】
さらに、内部電極4に流れる大電流による発熱に対しても、同様に、内部電極4から回路パターン3aを介して絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する内部電極4の放熱性向上を図ることができる。従って、半導体素子1は、高温になることを抑制されるため、安定した動作をすることができる。
【0054】
実施の形態1における電力半導体装置100aの製造方法の変形例として、図5にフローチャートを示す。図4同様、ここでは、はんだによって接合される例、すなわち、接合材2a、接合材2b、接合材2c及び接合材2dが、はんだである例を示す。各工程であるステップS201~S205について詳細に述べる。
【0055】
ステップS201にて、半導体素子1の下面を回路パターン3aに、接合材2aによって接合する接合工程と、貫通孔6及びエンボス部11を有した内部電極4を半導体素子1の上面に、接合材2cによって接合する接合工程と、内部電極4の支持部4bを回路パターン3aに、接合材2bによって接合する接合工程を、一括して同時に接合する。この際、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。なお、図示は省略するが、半導体素子1及び内部電極4の搭載位置を固定するため、専用治具を用いている。従って、加熱する工程回数を抑制することができ、生産性を向上させることができる。
【0056】
ステップS202にて、放熱フィン3cの周縁に接着剤9を塗布し、ケース8を放熱フィン3cに接着する。シリコーンを含む接着剤9、または封止樹脂10と同一材料の接着剤9が塗布される。塗布後、接着面を加熱することにより、接着剤9が硬化し、放熱フィン3c及びケース8は接着剤9を介して接着することができる。これにより、後述する封止樹脂10を注入し充填して樹脂封止する工程にて、封止樹脂10を外部に漏らすことはない。
【0057】
ステップS203にて、外部電極7を内部電極4に、接合材2dによって接合する。ステップS201同様、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。なお、ステップS202の接着剤9を硬化させ接着する工程を、外部電極7を内部電極4に接合材2dによって接合するために加熱する工程にて一括して同時に行ってもよい。これにより、外部電極7を内部電極4に接合材2dによって接合するとともに、放熱フィン3c及びケース8を接着することができる。従って、加熱する工程回数を抑制することができ、生産性を向上させることができる。
【0058】
ステップS204にて、半導体素子1と制御端子12とを、AlまたはCuのいずれかを含む材料から形成される金属ワイヤ13にてワイヤボンドし配線接続する。金属ワイヤ13に対し超音波ツール(図示省略)が加圧しながら超音波振動を印可することにより、半導体素子1及び制御端子12に金属ワイヤ13が超音波接合され、配線接続する。
【0059】
ステップS205にて、ケース8に囲まれた、半導体素子1、絶縁層3b及び回路パターン3aの上側に、半導体素子1、内部電極4及びケース8の内側にある外部電極7を埋めるように、封止樹脂10を注入し充填して樹脂封止する。樹脂封止後、加熱により封止樹脂10を硬化させる。これにより、接合材2a、接合材2b、接合材2c、接合材2d及び金属ワイヤ13の接合箇所に対し、周囲を封止樹脂にて覆われて固定されるため、絶縁性が確保されるとともに、信頼性を向上させることができる。
【0060】
これにより、リフローへの投入回数削減、加熱時間を抑制することができ、生産性向上とともに、放熱フィン3c、絶縁層3b、回路パターン3a、半導体素子1、内部電極4及びケース8と一体化された外部電極7といった各構成部材の反りの影響を最小限に抑制することができる。
【0061】
なお、図4及び図5に示したフローチャートにおいて、接合材2a、接合材2b、接合材2c及び接合材2dが、はんだである例を示したが、はんだに限定するものではなく、はんだより熱伝導率が大きく、放熱性を有するAgまたはCuを含む金属の微粒子を用いた焼結材であってもよい。
【0062】
実施の形態1では、半導体素子1が絶縁層3b及び放熱フィン3cと一体化された回路パターン3aに接合され、ケース8が半導体素子1、回路パターン3a及び絶縁層3bを囲むように放熱フィン3cの周縁に接着され、半導体素子1、内部電極4及びケース8の内側にある外部電極7の周辺を覆うように、絶縁層3bと回路パターン3aとケース8とに囲まれた領域に封止樹脂10が封止されている。内部電極4に接合材2dを介して接合され、ケース8と一体成型されている外部電極7を備えている。
【0063】
内部電極4は、平板形状部4aを含み、貫通孔6及び一対の屈曲し傾斜形状を有した支持部4bが設けられ、接合材2bを介して内部電極4の支持部4bが接合されることにより、回路パターン3aに対し内部電極4が安定して支持され、固定することができる。これにより、複数の半導体素子1の上面に対し接合された同一の内部電極4が、各半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保し良好な接合を得るとともに、電力半導体装置100aが使用される環境下にて生じる接合材2cの熱応力及び熱ひずみを抑制することができる。以上のような構成としたことにより、接合厚を確保し、高品質な接合を得るとともに、接合材2cの信頼性を向上させることができる。
【0064】
また、発熱する半導体素子1に対し、半導体素子1の下面への放熱に加えて、半導体素子1の上面から内部電極4を介して回路パターン3a、絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する半導体素子1の放熱性向上を図ることができる。
【0065】
さらに、内部電極4に流れる大電流による発熱に対しても、同様に、内部電極4から回路パターン3aを介して絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する内部電極4の放熱性向上を図ることができる。従って、半導体素子1は、高温になることを抑制されるため、安定した動作をすることができる。
【0066】
内部電極4において、一方の先端部及び他方の先端部には、一対の屈曲し傾斜形状を有した支持部4bが形成され、接合材2bを介して、回路パターン3aと接合されているが、支持部4bは一対であることに限定せず、同一の内部電極4に対し3つ以上の支持部4bを備えていてもよい。これにより、回路パターン3aに対し内部電極4がさらに安定して支持され、固定することができる。
【0067】
なお、放熱フィン3c、絶縁層3b及び回路パターン3aが一体化された冷却器に限定することなく、放熱フィン3cと、絶縁層3bの厚さ方向に対し絶縁層3bの上面及び下面に各々回路パターン3aが設けられた絶縁層3bとが、別部材であってもよい。この場合、放熱フィン3cに絶縁層3bに設けられた回路パターン3aが接合されている。
【0068】
内部電極4と外部電極7とは別部材である。接合材2dを介して、別部材から構成された内部電極4と外部電極7とを接合するため、リフローへの複数回投入による加熱の繰り返しにより、放熱フィン3c、絶縁層3b、回路パターン3a、半導体素子1、内部電極4、ケース8及び外部電極7といった各構成部材の反りが発生しても、半導体素子1の上面の接合材2cに生じる熱応力及び熱ひずみを緩和させることができる。
【0069】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る電力半導体装置100bの外観を示す平面図である。図7は、図6のB-B線における断面図である。図8は、封止樹脂10にて封止する前の電力半導体装置100bの構成を示す平面図である。なお、図6のB-B線に該当する位置を図8にも記している。なお、本実施の形態における電力半導体装置100bは、多くの構成が実施の形態1と共通する。このため、実施の形態1と異なる点について説明するとともに、同一または対応する構成については同じ符号を付けて示し、その説明を省略する。実施の形態1とは、図7及び図8に示すように、支持部4bにかわって、内部電極5の全体が平板形状であり、熱伝導率が高い金属から形成された支持部材14を備え、半導体素子1と内部電極5とが平行配置になるように、支持部材14の一端部は接合材2bを介して回路パターン3aに接合され、支持部材14の他端部は接合材2eを介して内部電極5と接合されている構成が相違している。
【0070】
内部電極5は、平板形状であり、CuまたはCuを含む材料である。内部電極5の厚さは、大電流が流れるように、0.5~1.2mmの均一厚さである。内部電極5は、半導体素子1、回路パターン3a及び外部電極7に対し平行に配置され、半導体素子1の上面、支持部材14及び外部電極7と接合されている。
【0071】
また、内部電極5には、内部電極5の厚み方向に貫通孔6が形成されている。貫通孔6の周囲には、プレス等により、半導体素子1側に向かって突起状に0.5mm程の段差が設けられたエンボス部11が形成されている。
【0072】
半導体素子1の上面には電極が備えられており(図示省略)、半導体素子1の上面と、内部電極5の貫通孔6と、貫通孔6の周辺に設けられたエンボス部11とが、接合材2cを介して接合されている。エンボス部11により、接合材2cが、特にはんだの場合、内部電極5に対し十分にはんだが濡れ広がるため、はんだ濡れ性を確保することができる。接合材2cの接合厚は、0.2~1.0mmである。
【0073】
支持部材14は、高熱伝導率を有した金属である。例えば、CuまたはAlのいずれかを含む金属材料である。図7及び図8に示すように、支持部材14は、内部電極5の一方の先端部及び他方の先端部に、一対の支持部材14が設けられている。接合材2bを介して回路パターン3aと接合された一対の支持部材14が、接合材2eを介して内部電極5の一方の先端部及び他方の先端部とそれぞれ接合されている。
【0074】
また、支持部材14は、内部電極5の回路パターン3a及び内部電極5のサイズに応じて可能な限り最大サイズで直方体の形状をしている。なお、支持部材14は、直方体に限定されず、内部電極5と回路パターン3aとの間における方向に対し、S字状のように曲線部を有する形状、支持部材14の両端部の幅と中央部の幅が異なった形状であってもよい。これにより、回路パターン3aに対して、内部電極5が安定し支持され、固定することができる、また、熱容量大となり放熱性向上を図ることができる。
【0075】
また、支持部材14を回路パターン3aに接合している接合材2b及び支持部材14を内部電極5に接合している接合材2eは、Snを含む導電性金属であり、所謂はんだである。なお、内部電極5は流れる大電流により発熱するため、接合材2aは、はんだに限定するものではなく、はんだより熱伝導率が大きく、放熱性を有するAgまたはCuを含む金属の微粒子を用いた焼結材であってもよい。
【0076】
接合材2b及び接合材2eが、特にはんだの場合、はんだとの濡れ性を確保するため、回路パターン3a及び内部電極5において、接合材2b及び接合材2eと接合される少なくとも一部の面に、Niめっきを施してもよい。
【0077】
次に、電力半導体装置100bの製造方法について説明する。
【0078】
図9は、実施の形態2における電力半導体装置100bの製造方法を示すフローチャートである。ここでは、はんだによって接合される例、すなわち、接合材2a、接合材2b、接合材2c、接合材2d及び接合材2eが、はんだである例を示す。各工程であるステップS301~S305について詳細に述べる。
【0079】
ステップS301にて、半導体素子1の下面を回路パターン3aに、接合材2aによって接合し、支持部材14の一端部を回路パターン3aに、接合材2bによって接合する。接合材2a及び接合材2bは、ペースト状はんだもしくは板状はんだである。この際、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。加熱温度は、Snを含むはんだの融点に対応するよう230~300℃である。なお、図示は省略するが、回路パターン3aに対して半導体素子1及び支持部材14の搭載位置を固定するため、専用治具を用いている。
【0080】
ステップS302にて、貫通孔6及びエンボス部11を有した内部電極5を半導体素子1の上面に、接合材2cによって接合し、支持部材14の他端部を内部電極5に、接合材2eによって接合する。接合材2c及び接合材2eは、ペースト状はんだもしくは板状はんだである。接合材2c及び接合材2eは、接合材2aと同一材料、または接合材2aより融点が低い温度となる組成を有したSnを含むはんだである。ステップS301同様、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。なお、図示は省略するが、内部電極5の搭載位置を固定するため、専用治具を用いている。
【0081】
接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱されるため、半導体素子1だけでなく、接合材2bを介して伝熱され、内部電極5及び接合材2cを所望の温度まで昇温させることができる。これにより、半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保でき、良好な接合を得ることができる。
【0082】
ステップS303にて、放熱フィン3cの周縁に接着剤9を塗布し、ケース8を放熱フィン3cに接着する。シリコーンを含む接着剤9、または封止樹脂10と同一材料の接着剤9が塗布される。塗布後、接着面を加熱することにより、接着剤9が硬化し、放熱フィン3c及びケース8は接着剤9を介して接着することができる。これにより、後述する封止樹脂10を注入し充填して樹脂封止する工程にて、封止樹脂10を外部に漏らすことはない。
【0083】
ステップS304にて、外部電極7を内部電極5に、接合材2dによって接合する。ステップS301同様、接合は、放熱フィン3cからの熱伝導及びリフロー内の熱風によって加熱され、その後の冷却を経て接合が完了する。半導体素子1だけでなく、接合材2bを介して伝熱され、内部電極5、外部電極7及び接合材2dを所望の温度まで昇温させることができ、良好な接合を得ることができる。なお、ステップS303の接着剤9を硬化させ接着する工程を、外部電極7を内部電極5に接合材2dによって接合するために加熱する工程にて一括して同時に行ってもよい。これにより、外部電極7を内部電極5に接合材2dによって接合するとともに、放熱フィン3c及びケース8を接着することができる。従って、加熱する工程回数を抑制することができ、生産性を向上させることができる。
【0084】
ステップS305にて、半導体素子1と制御端子12とを、AlまたはCuのいずれかを含む材料から形成される金属ワイヤ13にてワイヤボンドし配線接続する。金属ワイヤ13に対し超音波ツール(図示省略)が加圧しながら超音波振動を印可することにより、半導体素子1及び制御端子12に金属ワイヤ13が超音波接合され、配線接続する。
【0085】
ステップS306にて、ケース8に囲まれた、絶縁層3b及び回路パターン3aの上側に、半導体素子1、内部電極5及びケース8の内側にある外部電極7を埋めるように、封止樹脂10を注入し充填して樹脂封止する。樹脂封止後、加熱により封止樹脂10を硬化させる。これにより、接合材2a、接合材2b、接合材2c、接合材2d、接合材2e及び金属ワイヤ13の接合箇所に対し、周囲を封止樹脂にて覆われて固定されるため、絶縁性が確保されるとともに、信頼性を向上させることができる。
【0086】
実施の形態2では、半導体素子1が絶縁層3b及び放熱フィン3cと一体化された回路パターン3aに接合され、ケース8が半導体素子1、回路パターン3a及び絶縁層3bを囲むように放熱フィン3cの周縁に接着され、半導体素子1、内部電極5及びケース8の内側にある外部電極7の周辺を覆うように、絶縁層3bと回路パターン3aとケース8とに囲まれた領域に封止樹脂10が封止されている。内部電極5に接合材2dを介して接合され、ケース8と一体成型されている外部電極7を備えている。
【0087】
内部電極5は、平板形状であり、貫通孔6が設けられている。支持部材14の一端部が接合材2bを介して回路パターン3aに接合され、支持部材14の他端部が接合材2eを介して内部電極5に接合されることにより、回路パターン3aに対し内部電極5が安定して支持され、固定することができる。これにより、複数の半導体素子1の上面に対し接合された同一の内部電極5が、各半導体素子1の上面において接合材2cの接合厚を容易に確保し良好な接合を得るとともに、電力半導体装置100bが使用される環境下にて生じる接合材2cの熱応力及び熱ひずみを抑制することができる。以上のような構成としたことにより、接合厚を確保し、高品質な接合を得るとともに、接合材2cの信頼性を向上させることができる。
【0088】
また、発熱する半導体素子1に対し、半導体素子1の下面への放熱に加えて、半導体素子1の上面から内部電極5及び支持部材14を介して回路パターン3a、絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する半導体素子1の放熱性向上を図ることができる。
【0089】
さらに、内部電極5に流れる大電流による発熱に対しても、同様に、内部電極5から支持部材14及び回路パターン3aを介して絶縁層3b、放熱フィン3cへと、放熱経路を拡大し、熱を集中させることなく、全体的にバランスよく効率的に放熱を図ることができる。なお、回路パターン3aとは、半導体素子1が搭載されていない回路パターン3aを含む。これにより、発熱する内部電極5の放熱性向上を図ることができる。従って、半導体素子1は、高温になることを抑制されるため、安定した動作をすることができる。
【0090】
なお、図7及び図8に示すように、内部電極5の一方の先端部及び他方の先端部に、接合材2eを介して一対の支持部材14が接合されているが、支持部材14は一対であることに限定せず、同一の内部電極5に対し3つ以上の支持部材14が、同一の内部電極5に接合され、回路パターン3aに接合されてもよい。これにより、回路パターン3aに対し内部電極5がさらに安定して支持され、固定することができる。
【0091】
なお、支持部材14は、接合材2c、内部電極5及び外部電極7がリフローにて所望の温度に昇温できる熱伝導率を有していればよく、弾性率を下げた材料、もしくはばね性を有していてもよい。
【0092】
また、リフローは、加熱により、回路パターン3a、内部電極5及び外部電極7の酸化防止を図るため、還元雰囲気でもよい。
【0093】
実施の形態3.
本実施の形態は、上述した実施の形態1~2に係る電力半導体装置100aまたは100bを電力変換装置に適用したものである。本実施の形態は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態3として、三相のインバータに適用した場合について説明する。
【0094】
図10は、本実施の形態に係る電力変換装置200を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0095】
図10に示す電力変換システムは、電源101、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源101は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源101は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源101を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0096】
電力変換装置200は、電源101と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源101から供給され、入力された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、図10に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路202と、駆動回路202を制御する制御信号を駆動回路202に出力する制御回路203とを備えている。
【0097】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0098】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源101から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1~2のいずれかに係る電力半導体装置を適用する。なお、ここでは実施の形態1に係る電力半導体装置100aによって構成した場合について説明する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0099】
駆動回路202は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0100】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路202に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路202は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0101】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1に係る電力半導体装置を適用するため、信頼性向上を実現することができる。
【0102】
本実施の形態では、2レベルの電力変換装置200を説明したが、本実施の形態は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置200としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本実施の形態1~2を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本実施の形態1~2を適用することも可能である。
【0103】
また、本実施の形態1~2を適用した電力変換装置200は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0104】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 半導体素子
3a 回路パターン
3b 絶縁層
3c 放熱フィン
4、5 内部電極
4a 平板形状部
4b 支持部
6 貫通孔
7 外部電極
8 ケース
10 封止樹脂
11 エンボス部
12 制御端子
13 金属ワイヤ
14 支持部材
100a、100b 電力半導体装置
200 電力変換装置
201 主変換回路
202 駆動回路
203 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10